【実施例1】
【0033】
図1は、実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子の構成を示した図である。III 族窒化物半導体発光素子は、
図1のように、導電性の支持体10と、支持体10上に、接合層20を介して接合されたp電極30と、p電極上に位置し、III 族窒化物半導体からなる半導体層40と、を有している。半導体層40は、p電極30側から順に、p型層41、発光層42、n型層43の3層が積層された構造である。n型層43表面(発光層42側とは反対側の面)には、透明電極60が形成されている。また、半導体層40の端部(平面視において素子の外周にあたる領域)には、素子分離溝70が形成されている。素子分離溝70は、半導体層40を貫通している。また、その素子分離溝70の底面70a、側面70bのうちn型層43の一部を除く領域に連続して、絶縁体である保護膜80(本発明の第1保護膜に相当する)が形成されている。n電極50は、素子分離溝70の側面70bであって、保護膜80が形成されずにn型層43側面が露出した領域に、そのn型層43に接して形成されている。n型層43上部の領域にはn電極50は位置していない。この実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子は、支持体10裏面(接合層20側とは反対側の面)に設けられた裏面電極(図示しない)とn電極50間に電圧を印加して素子主面に垂直な方向に導通させて発光させ、n型層43側から光を取り出す構造である。
【0034】
支持体10は、Si、GaAs、Cu、Ge、Cu−Wなどからなる導電性基板を用いることができる。接合層20には、Au−Sn層、Au−Si層、Ag−Sn−Cu層、Sn−Bi層などの金属共晶層を用いることができ、低融点金属ではないが、Au層、Sn層、Cu層などを用いることもできる。なお、接合層を用いて支持体101とp電極103とを接合するのではなく、p電極30上に直接めっきやスパッタなどによってCuなどの金属層を形成して支持体10としてもよい。p電極30には、Ag、Rh、Pt、Ruやこれらの金属を主成分とする合金などの高光反射率で低コンタクト抵抗な金属や、Ni、Ni合金、Au合金などを用いることができる。また、p電極30は透明電極膜と高反射金属膜からなる複合層(半導体層40と接触する側が透明電極膜)であってもよい。透明電極膜にはITO(スズドープの酸化インジウム)、ICO(セリウムドープの酸化インジウム)、IZO(亜鉛ドープの酸化インジウム)などの透明導電性酸化物や、Auなどの金属薄膜を用いることができる。
【0035】
p電極30は、p型層41表面(発光層42側とは反対側の面)のほぼ全面(素子外周部を除くすべての領域)に接して形成する。従来は、平面視においてn電極50と対向する領域にはp電極30を設けないようにしていた。これは、そのような領域はn電極によって光が吸収・反射されて光取り出しを阻害してしまう領域であるから、その領域にp電極30を設けないことでその領域の発光層42が発光しないようにし、発光効率の向上を図るものである。しかし、実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子では、n型層43上部にn電極50が位置していないため、p電極30をほぼ全面に形成することができ、発光面積を拡大して発光効率を向上させることができる。
【0036】
半導体層40を構成するp型層41、発光層42、n型層43は、いずれも従来のIII 族窒化物半導体発光素子の構成として知られている任意の構成を用いることができる。たとえば、p型層41は、支持体10側から順に、MgがドープされたGaNからなるpコンタクト層、MgがドープされたAlGaNからなるpクラッド層が積層された構造である。発光層42は、たとえば、GaNからなる障壁層とInGaNからなる井戸層が繰り返し積層されたMQW構造である。n型層43は、たとえば、発光層42側から順に、GaNからなるnクラッド層、GaNからなる高濃度にSiがドープされたn型コンタクト層、が積層された構造である。
【0037】
n型層43の表面(発光層42側とは反対側の面)には、KOH、NaOH、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、リン酸などの水溶液によるウェットエッチングによって凹凸形状44が形成されている。凹凸形状44は微細な角錐が多数形成されたものであり、その角錐の側面は、素子主面に対して約60度の角を成している。この凹凸形状44により、光取り出し効率の向上を図っている。なお、凹凸形状44を形成することは必ずしも必要ではなく、凹凸形状44を形成せずにn型層43表面を平坦なままとしてもよい。
【0038】
透明電極60は、凹凸形状44を有したn型層43表面の全面に形成されている。また、透明電極60は端部においてn電極60に接続している。透明電極60には、透明導電性酸化物や金属薄膜などを用いることができる。透明導電性酸化物は、たとえば、ITO(スズドープの酸化インジウム)、ICO(セリウムドープの酸化インジウム)、IZO(亜鉛ドープの酸化インジウム)などである。金属薄膜は、たとえば、Auなどである。
【0039】
なお、透明電極60に替えて、透光性の絶縁膜(本発明の第2保護膜に相当する)をn型層43表面を保護するために設けるようにしてもよい。また、透明電極60上にさらに保護膜を有する構造としてもよい。これら保護膜には、後述する保護膜80と同様の材料を用いることができる。一例として、
図3に、n型層43表面に凹凸形状を設けず、透明電極60に替えて保護膜90をn型層表面に設けた例を示す。
【0040】
素子分離溝70は、実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子の製造工程において、成長基板上に形成された半導体層40を各素子ごとに分離するために設ける溝であり、素子製造後においては、
図1のように、半導体層40をメサ状とするように素子の外周部に形成された溝である。この素子分離溝70は、半導体層40を貫通している。素子分離溝70は、素子外周部に沿った枠状の平面パターンに形成されている。
【0041】
保護膜80には、SiO
2 、TiO
2 、ZrO
2 、Al
2 O
3 、Si
x N
y 、SiO
x N
y などを用いることができる。また、これらの材料の複合層であってもよい。保護膜80は、
図1に示すように、素子分離溝70側面70bに露出する半導体層43側面のうち、n型層43の発光層12近傍からp型層41にわたる領域と、素子分離溝70底面70aである接合層20上と、に連続して膜状に形成されている。この保護膜80によって、素子分離溝70側面に露出したp型層41とn型層43との間で電流のリークやショートが生じてしまうのを防止している。素子分離溝70によって露出する半導体層43側面のうち、発光層42近傍以外のn型層43側面については、保護膜80に覆われず露出している。つまり、素子分離溝70側面のうち、素子分離溝70底面から発光層42近傍のn型層43までの高さの領域は保護膜80に覆われ、それよりも高い領域は保護膜80に覆われていない。なお、n型層43をコンタクト層とクラッド層とで構成する場合、保護膜80によってクラッド層まで覆われ、n型層43のうちコンタクト層のみが露出していることが望ましいが、クラッド層が露出していてもかまわない。
【0042】
n電極50は、半導体層43側面、および保護膜80上に位置している。また、n電極50は、保護膜80に覆われず露出したn型層43側面に直接接するとともに、透明電極60にも接続している。n電極50全体としての形状は、素子外周部に沿ったリング状である。n電極50の材料には、III 族窒化物半導体発光素子のn電極の材料として従来用いられてきた材料を用いることができる。たとえば、V/Ni、Ti/Al、V/Au、Ti/Au、Ni/Auである。ここで記号「/」は積層であることを意味し、A/BはAを成膜したのちBを成膜する意味する。以下において同じである。ここではn型層43側から順に積層させた構造を示すものである。なお、実施例1ではn電極50は保護膜80上にも形成しているが、保護膜80上に形成する必要はない。ただし、形成の容易さの点などから、実施例1のように、保護膜80上にn電極50が位置するようにしてもかまわない。
【0043】
図7は、実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子を上方(光取り出し側であるn型層43表面側)から見た図である。
図7のように、実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子は、平面視で正方形である。素子分離溝70は、素子外周に沿って正方形の枠状のパターンに形成されている。半導体層40およびその上に形成された透明電極60の平面視での領域は、素子分離溝70の正方形の枠状パターンに囲まれた内部領域であり、正方形である。n電極50の平面視でのパターンは、素子分離溝70とおよそ一致しており、透明電極60に接した正方形の枠状のパターンである。
【0044】
以上に説明した実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子では、n電極50をn型層43側面に設け、n型層43表面には設けないようにしている。そのため、光取り出し面であるn型層43表面には光取り出しを阻害するものがなく、光取り出し効率の向上が図られている。
【0045】
また、n型層43上の全面に、n電極50と接続する透明電極60が形成されているため、その透明電極60によって電子を素子面方向に効率的に拡散させることができ、発光の均一性および発光効率が向上されている。
【0046】
また、p電極30をp型層41のほぼ全面に形成することができるため、発光面積を拡大することができ、発光効率を向上させることができる。
【0047】
また、実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子は、小型の素子や平面視で長方形の素子などに特に有効である。それらのIII 族窒化物半導体発光素子では、素子主面の面積に対する半導体層側面の面積の割合が大きいため、電子を効率的にn型層側面から注入することができ、また側面から素子中央部までの距離が短くなるため、電流拡散性が向上して発光の均一性を高めることができる。
【0048】
次に、実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子の製造工程について、図を参照に説明する。
【0049】
(半導体層40形成工程)
まず、サファイア基板90を用意し、サーマルクリーニングを行ってサファイア基板90表面の不純物を除去する。そして、サファイア基板90上に、AlNからなるバッファ層(図示しない)を介してMOCVD法によってIII 族窒化物半導体からなるn型層43、活性層42、p型層41を順に積層させ、半導体層40を形成する(
図2.A)。MOCVD法において用いる原料ガスは、窒素源として、アンモニア(NH
3 )、Ga源として、トリメチルガリウム(Ga(CH
3 )
3 )、In源として、トリメチルインジウム(In(CH
3 )
3 )、Al源として、トリメチルアルミニウム(Al(CH
3 )
3 )、n型ドーピングガスとして、シラン(SiH
4 )、p型ドーピングガスとしてシクロペンタジエニルマグネシウム(Mg(C
5 H
5 )
2 )、キャリアガスとしてH
2 、N
2 である。成長基板としてサファイア基板90以外にも、SiC、ZnO、スピネル、などの基板を用いることができる。
【0050】
(p電極30形成工程)
次に、p型層41上であって素子外周部を除いた領域に、スパッタ法によってp電極30を形成する。他に蒸着法を用いてもよい。さらにp電極30上に接合層20を形成する(
図2.B)。なお、p電極30と接合層20との間に、接合層20を構成する金属元素がp電極30やp型層41に拡散するのを防止するために、拡散防止層を形成しておくことが望ましい。拡散防止層には、Ti/Ni/AuなどのTi/Niを含む多層膜や、W/Pt/AuなどのW/Ptを含む多層膜を用いることができる。
【0051】
(支持体10接合工程)
次に、支持体10を用意し、接合層20を介して、支持体10とp電極30を接合する(
図2.C)。この際、支持体10の一方の表面にも接合層20を形成し、支持体10の接合層20とp電極30上の接合層20とを合わせて加熱プレスすることで接合している。
【0052】
(レーザーリフトオフ工程)
そして、レーザーリフトオフにより、サファイア基板90を分離除去する(
図2.D)。すなわち、サファイア基板90側から、サファイアは透過しIII 族窒化物半導体では吸収される波長のレーザー光(たとえばKrFなどのエキシマレーザ)を照射し、サファイア基板90と半導体層40との界面近傍の半導体層40を分解することで、半導体層40からサファイア基板90を剥離して除去する。
【0053】
(素子分離溝70形成工程)
次に、n型層43表面側(発光層42側とは反対側の面)から、そのn型層43表面の素子分離する領域をRIE(反応性イオンエッチング)などのドライエッチングによってエッチングし、半導体層40を貫通して接合層20に達する深さの素子分離溝70を形成する(
図2.E)。素子分離溝70は、ドライエッチングの他、KOHなどによるウェットエッチングやレーザー光照射によって形成してもよい。
【0054】
(保護膜80形成工程)
次に、CVD法やスパッタを用いて、素子分離溝70側面70bに露出したn型層43側面の発光層42近傍の領域からp型層側面、および素子分離溝70底面70aに露出した接合層20に連続した膜状の保護膜80を形成する(
図2.F)。このようなパターンに保護膜80を形成することで、n型層43側面の発光層42近傍の領域からp型層側面にかけて保護膜80で覆われ、p型層41とn型層43との間での電流のリークやショートが防止されるとともに、n型層43側面の発光層42近傍以外の領域は保護膜80に覆われずに露出したままとなり、後工程でn電極50が接触する領域となる。
【0055】
(凹凸形状44形成工程)
次に、n型層43表面をTMAH水溶液によってウェットエッチングし、n型層43表面に凹凸形状44を形成する(
図2.G)。このウェットエッチングにはTMAH以外にもKOHやNaOH、リン酸などを用いることもできる。
【0056】
なお、これら、素子分離溝70形成工程、保護膜80形成工程、凹凸形状44形成工程は、上記順番に限るものではなく、以下のように順番が前後していてもよい。まず先に凹凸形状44を形成し、次に素子分離溝70を形成した後、保護膜80を形成してもよい。また、素子分離溝70を形成し、凹凸形状44を形成した後、保護膜80を形成してもよい。
【0057】
(透明電極60形成工程)
次に、凹凸形状44の形成されたn型層43表面の全面に、透明電極60をスパッタによって形成する(
図2.H)。なお、透明電極60の形成は、凹凸形状44の形成後であれば、素子分離溝70形成工程や保護膜80形成工程の前に行うようにしてもよい。また、透明電極60の形成にはスパッタ以外にも蒸着などによって形成してもよい。
【0058】
(n電極50形成工程)
次に、スパッタまたは蒸着とリフトオフ法を用いて、保護膜80に覆われずに露出したn型層43側面、および保護膜80上に連続した領域に、透明電極60に接するようにしてn電極50を形成する(
図2.I)。
【0059】
次に、支持体10を研磨して薄くし、支持体10裏面に裏面電極(図示しない)を形成し、レーザーダイシングによる素子分離を行う。以上によって、実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子が製造される。レーザーダイシング以外にも、スクライビングなどによって素子分離を行ってもよい。
【実施例3】
【0064】
図5は、実施例3のIII 族窒化物半導体発光素子の構成を示した図である。実施例3のIII 族窒化物半導体発光素子は、
図5のように、素子分離溝70に替えて、第1素子分離溝270Aと第2素子分離溝270Bとで構成された素子分離溝270を有し、保護膜80に替えて保護膜280、透明電極60に替えて透明電極260、n電極50に替えてn電極250を有している点で、実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子と異なっている。それ以外の構成については実施例1と同様である。以下、実施例1とは構成を替えた部分について説明する。
【0065】
第1素子分離溝270Aは、p型層41表面(発光層42側とは反対側の面)からn型層43に達する深さの溝である。この第1素子分離溝270Aは、素子外周部に沿った枠状である。また、第1素子分離溝270A側面270Abには、半導体層40のp型層41、発光層42、n型層43が露出している。この第1素子分離溝270Aは、半導体層40の形成直後に、半導体層40を各素子ごとにpn分離するために設けるものである。
【0066】
第2素子分離溝270Bは、n型層43表面(発光層42側とは反対側の面)から前記第1素子分離溝270Aに達する深さの溝である。この第2素子分離溝270Bは、素子外周部に沿った枠状である。これにより第1素子分離溝270Aと第2素子分離溝270Bとが素子分離溝270として一体に構成され、素子分離溝270は半導体層40を貫通している。この素子分離溝270により、各素子ごとに半導体層43が分離されている。また、第2素子分離溝270Bの底面270Baには保護膜280が露出し、側面270Bbには半導体層40のうちn型層43側面のみが露出する。
【0067】
保護膜280には、SiO
2 、TiO
2 、ZrO
2 、Al
2 O
3 、Si
x N
y 、SiO
x N
y などを用いることができる。また、これらの材料の複合層であってもよい。保護膜280は、第1素子分離溝270Aの底面および側面に沿って膜状に形成されている。これにより、第1素子分離溝270Aの側面に露出するp型層41、n型層43は保護膜280に覆われている。
【0068】
透明電極260は、凹凸形状44の形成されたn型層43表面全面と、第2素子分離溝270B側面270Bbおよび底面270Baと、に連続して膜状に形成されている。透明電極260の材料は、透明電極60と同様の材料を用いることができる。
【0069】
n電極250は、透明電極260上であってn型層43上部にあたる領域を除いた領域に形成されている。つまり、透明電極260の保護膜280上部にあたる領域上、および第2素子分離溝270Bの側面270Bbであって、透明電極260を挟んだ領域、に連続して形成されている。
【0070】
以上説明した実施例3のIII 族窒化物半導体発光素子は、実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子と同様の効果を得られる。つまり、光取り出し面であるn型層43上にn電極250が位置しないため、光取り出しを阻害するものがなく、光取り出し効率が向上されている。また、n型層43側面とn電極250との間に透明電極260が形成され、その透明電極260がn型層43上の全面にも連続しているため、透明電極260により電子を拡散させて効率的にn型層43へ電子を注入することができ、発光の均一性および発光効率が向上している。
【0071】
なお、実施例3のIII 族窒化物半導体発光素子では、n型層43表面に凹凸形状44を設けているが、設けずに平坦なままとしてもよい。また、透明電極260は第2素子分離溝270B側面270Bbにも形成し、n電極250とn型層43側面との間に透明電極260が位置するようにしているが、透明電極260をn型層43表面のみに設け、n電極250とn型層43が直接接触するように構成してもよい。
【0072】
次に、実施例3のIII 族窒化物半導体発光素子の製造工程について、図を参照に説明する。
【0073】
実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子の製造工程における半導体層40形成工程(
図2.Aの工程)までは、同一工程であるため説明を省略する。
【0074】
(第1素子分離溝270A形成工程)
半導体層40の形成工程後、半導体層40のpn分離する領域を、p型層41表面からn型層43に達するまでドライエッチングする。これにより、半導体層40を各素子ごとにpn分離する第1素子分離溝270Aを形成する(
図6.A)。
【0075】
(保護膜280形成工程)
次に、CVD法やスパッタとフォトリソグラフィを用いて、第1素子分離溝270A側面270Abおよび底面270Aaに沿って膜状に保護膜280を形成する(
図6.B)。p型層41表面には保護膜280を形成せず、露出した状態とする。
【0076】
(p電極30形成工程、支持体10接合工程、レーザーリフトオフ工程)
次に、p型層41上にp電極30を形成し、接合層20を介して支持体10とp電極30を接合し、レーザーリフトオフによりサファイア基板90を除去する(
図6.C)。これらの工程は実施例1の場合と同様であり、詳細は省略する。
【0077】
(第2素子分離溝270B形成工程)
次に、素子分離する領域(平面視で第1素子分離溝270Aと重なる領域)を、レーザーリフトオフにより露出したn型層43表面側から保護膜280に達するまでドライエッチングし、第2素子分離溝270Bを形成する(
図6.D)。この第2素子分離溝270Bと第1素子分離溝270Aとにより半導体層40は貫通し、各素子ごとに分離される。
【0078】
(凹凸形状44形成工程)
次に、n型層43表面をTMAH水溶液によってウェットエッチングし、n型層43表面に凹凸形状44を形成する(
図6.E)。なお、凹凸形状44の形成は、レーザーリフトオフ工程後、第2素子分離溝270Bの形成前に行ってもよい。
【0079】
(透明電極260形成工程)
次に、透明電極260をスパッタによって、凹凸形状44の形成されたn型層43表面の全面、第2素子分離溝270B側面270Bbに露出したn型層43側面、および第2素子分離溝270B底面270Baに露出した保護膜280上に連続する膜状に形成する(
図6.F)。なお、透明電極260の形成は、凹凸形状44の形成後であれば、第2素子分離溝270Bの形成前に行ってもよい。
【0080】
(n電極250形成工程)
次に、スパッタまたは蒸着とリフトオフ法を用いて、透明電極260を挟んで第2素子分離溝270B側面270Bbにあたる領域、および保護膜280上に連続した領域に、透明電極60に接するようにしてn電極250を形成する(
図6.G)。
【0081】
次に、実施例1の支持体10を研磨して薄くし、支持体10裏面に裏面電極(図示しない)を形成し、レーザーダイシングによる素子分離を行う。以上によって、実施例3のIII 族窒化物半導体発光素子が製造される。
【0082】
以上述べた実施例3のIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法では、以下のような利点がある。実施例1では、n型層43側面の一部領域を覆い、他の領域を覆わずに露出するように保護膜80を形成していた。そのため、保護膜80のパターンを正確に制御する必要があった。一方、実施例3では、第1素子分離溝270A側面の全面に保護膜280を形成することができ、第1素子分離溝270A側面の一部を露出させる必要はない。そのため、実施例3では、実施例1の保護膜80の形成に比べて正確なパターン制御は必要なく、容易に保護膜280を形成することができる。また、第2素子分離溝270Bにより、その側面にn型層43側面のみを露出させることができるので、その側面にコンタクトをとるn電極250も容易に形成することができる。
【0083】
なお、実施例1〜3では、素子分離溝の平面パターンは外周部に沿った枠状としたが、必ずしもそのようなパターンに限るものではない。素子分離溝の平面パターンは、櫛歯状、ジグザグ状、ストライプ状、格子状などのパターンとすることもできる。一例として、実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子において、素子分離溝70のパターンを変形した例を
図8に示す。
図8は実施例1のIII 族窒化物半導体発光素子を上方から見た平面図であり、
図8(a)は、素子分離溝70を櫛歯状のパターン、
図8(b)は、ジグザグ状のパターン、
図8(c)はストライプ状のパターン、
図8(d)は格子状のパターンとした場合である。素子分離溝70をこれらのパターンとすると、
図7のように単に枠状のパターンとした場合よりも素子分離溝70側面の面積が増大する。そのため、n電極50がn型層43側面にコンタクトをとる面積も増大し、発光効率の向上を期待できる。また、素子分離溝7側面から素子中央部までの距離も短縮されるので、素子中央部への電流拡散性が向上し、電流を素子面方向へ効率的に拡散させることができ、発光の均一性の向上を期待できる。
【0084】
また、実施例1〜3では、成長基板であるサファイア基板の除去にレーザーリフトオフを用いているが、サファイア基板とn型層との間に薬液に溶解させることができるバッファ層を形成し、支持体との接合後に薬液によってバッファ層を溶解させてサファイア基板を分離除去するケミカルリフトオフを用いてもよい。
【0085】
また、実施例1〜3では、素子分離溝70、270は半導体層を貫通するものとしたが、必ずしも貫通している必要はなく、発光層を各素子ごとに分断するものであればよい。
【0086】
また、実施例1〜3では、p型層とn型層間の短絡を防止するための保護膜80、280を設けているが、n電極50、150、250がp型層からn型層にまたがって形成されず、n型層側面にのみ形成されるようにすれば、保護膜80、280は必ずしも必要ではない。
【0087】
また、本発明は、実施例1〜3においてp型層とn型層の位置を入れ替えた構造についても適用可能である。