(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本明細書で開示する実施例の技術的特徴の幾つかを記す。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
【0010】
(特徴1)
蓄電装置は、外部端子と、電極と、導電板を備えている。導電板は、外部端子と電極の双方に電気的に接続していてもよい。導電板を平面視したときに、外部端子に電気的に接続されている第1領域と、電極に電気的に接続されている第2領域との間に、導電板の材料が溶融して凝固した再溶融凝固部が設けられていてもよい。再溶融凝固部は、蓄電装置内の圧力が上昇したときの破断起点になり得る。また、再溶融凝固部は、第1領域と第2領域の少なくとも一方を囲う形態であってもよい。あるいは、再溶融凝固部は、第1領域と第2領域を結ぶ線と交差するとともに、両端が導電板の端部に達する線を形成する形態であってもよい。
【0011】
(特徴2)
導電板を平面視したときに、再溶融凝固部が、第1領域と第2領域の少なくとも一方を囲っていてもよい。再溶融凝固部が破断したときに、第1領域と第2領域が分断されやすい。蓄電装置内の圧力が上昇したときに、外部端子に接続されている第1リードと電極に接続されている第2リードとが非導通になりやすい。
【0012】
(特徴3)
導電板を平面視したときに、再溶融凝固部が、第1領域と第2領域の少なくとも一方を、連続した線の形状を有して囲っていてもよい。すなわち、導電板が溶融・凝固した部分が、線状に連続して、第1領域と第2領域の少なくとも一方を囲っていてもよい。再溶融凝固部が破断したときに、第1領域、及び/又は、第2領域が導電板から確実に分断される。そのため、第1リードと第2リードがより非導通になりやすい。
【0013】
(特徴4)
溶融凝固部が、導電板の表面から突出していてもよい。すなわち、溶融凝固部の厚みが、溶融凝固部が形成されていない部分の導電板の厚みより厚くてもよい。溶融凝固部の電流経路が、溶融凝固部以外の導電板の電流経路より狭くなることを確実に防止することができる。
【0014】
(特徴5)
一端が導電板の第1領域に接続されているとともに他端が外部端子に接続される第1リードと、一端が導電板の第2領域に接続されているとともに他端が電極に接続される第2リードを備えていてもよい。この場合、第1リードが導電板の表面に接触しており、第2リードが導電板の裏面に接触していてもよい。すなわち、第1リードが、第2リードが接触している面とは反対側の面で導電板に接触していてもよい。この形態によると、第1リードは外部端子に接続され、第2リードは電池構造体の電極に接続される。また、電流遮断構造(導電板)は、外部端子と電池構造体の間に配置される。導電板に対して第1リードと第2リードが異なる面で接触することにより、第1リードと第2リードが分断されたときに、第1リードと第2リードが接触することを抑制することができる。
【0015】
(特徴6)
第1リードが中央に突出部が形成された反転板を有していてもよい。この場合、反転板の突出部の先端部が、導電板の第1領域に固定されていてもよい。「反転板」とは、反転板の表裏面の差圧により、突出部が突出する向きが変化するものであり、一例としてダイアフラムが挙げられる。この形態によると、突出部の周囲の導電板が破断することにより、突出部が導電板から離れる方向に移動する。その結果、第1リードと第2リードが接触することを抑制することができる。
【0016】
本明細書で開示する蓄電装置は、例えば車両に搭載され、モータに電力を供給することができる。以下、本明細書に開示する実施形態について詳細に説明する。
【0017】
(蓄電装置)
蓄電装置の一例として、二次電池、キャパシタ等が挙げられる。二次電池の一例として、セパレータを介して対向する電極対(正極電極及び負極電極)を有するセルが複数積層された積層タイプの二次電池、セパレータを介して対向する電極対を有するシート状のセルが渦巻状に加工された捲回型の二次電池、1枚の電極集電体の片面に正極活物質が塗布されており他方の面に負極活物質が塗布されているバイポーラ電池等が挙げられる。
【0018】
(第1実施形態)
図1を参照し、第1実施形態の蓄電装置100の構造を説明する。蓄電装置100は、ケース4と、電極構造体2と、正極端子30と、負極端子10と、電流遮断装置50を備えている。正極端子30及び負極端子10は、外部端子の一例である。ケース4は、金属製であり、略直方体形状である。ケース4の内部には、電極構造体2と電流遮断装置50が収容されている。電流遮断装置50の詳細については後述する。
【0019】
ケース4の内部は、電解液で満たされている。ケース4の端面4aにおいて、正極端子30と負極端子10が、ケース4の外部に露出している。換言すると、正極端子30と負極端子10が、同一方向に配置されている。ケース4の端面4aには、貫通孔4b,4cが形成されている。正極端子30が貫通孔4bを通過しており、負極端子10が貫通孔4cを通過している。貫通孔4bには、絶縁性の第1シール部材42が取り付けられている。貫通孔4cには、絶縁性の第2シール部材22が取り付けられている。なお、ケース4の形状に制限はなく、例えば、円筒状、直方体状、あるいは、フィルムで形成されているシート状であってもよい。
【0020】
正極端子30は、外部ナット36と、内部ナット32と、ボルト34を備えている。外部ナット36は、正極端子30と正極配線(図示省略)との結線に用いられる。内部ナット32は、第1シール部材42に取り付けられている。内部ナット32の一部は、貫通孔4bを通過している。ボルト34は、内部ナット32に締結されている。ボルト34とケース4の間には、第3シール部材40が介在している。正極端子30は、シール部材40,42によってケース4から絶縁されている。内部ナット32には、第1正極リード44が固定されている。内部ナット32と第1正極リード44は、電気的に接続している。第1正極リード44は、第1シール部材42によってケース4から絶縁されている。正極端子30は、第1正極リード44、電流遮断装置50及び第2正極リード45を介して、電極構造体2の正極電極と導通している。なお、電流遮断装置は、負極電極と負極端子の間に接続してもよいし、正極電極と正極端子の間、及び負極電極と負極端子の間の双方に接続してもよい。
【0021】
負極端子10は、外部ナット16と、内部ナット12と、ボルト14を備えている。外部ナット16は、負極端子10と負極配線(図示省略)との結線に用いられる。内部ナット12は、第2シール部材22に取り付けられている。内部ナット12の一部は、貫通孔4cを通過している。ボルト14は、内部ナット12に締結されている。ボルト14とケース4の間には、第4シール部材20が介在している。負極端子10は、シール部材20,22によってケース4から絶縁されている。内部ナット12には、負極リード24が固定されている。内部ナット12と負極リード24は、電気的に接続している。負極リード24は、第2シール部材22によってケース4から絶縁されている。負極端子10は、負極リード24を介して、電極構造体2の負極電極と導通している。
【0022】
(電極構造体)
電極構造体2は、正極電極と、負極電極と、正極電極と負極電極の間に介在しているセパレータを備えている。正極電極、負極電極及びセパレータの図示は省略する。正極電極は、正極集電体と、正極集電体上に形成されている正極活物質層を有する。正極電極には、正極集電タブ46が固定されている。正極集電タブ46は、正極活物質層が塗布されていない正極集電体に相当する。負極電極は、負極集電体と、負極集電体上に形成されている負極活物質層を有する。負極電極には、負極集電タブ26が固定されている。負極集電タブ26は、負極活物質層が塗布されていない負極集電体に相当する。なお、活物質層に含まれる材料(活物質、バインダ、導電助剤等)には特に制限がなく、公知の蓄電装置等の電極に用いられる材料を用いることができる。
【0023】
(電流遮断装置)
図1及び
図2に示すように、電流遮断装置50は、第1正極リード44と、導電板54と、第2正極リード45と、絶縁性を有する支持部材52を備えている。第1正極リード44は、金属製のダイアフラム56を備えている。ダイアフラム56は、反転板の一例である。電流遮断装置50は、正極端子30と正極集電タブ(正極電極)46の間に接続されている。支持部材52が、ダイアフラム56と導電板54を支持している。ダイアフラム56の導電板54側(以下、ダイアフラム56の下側と称す)の端部は、支持部材52によって、導電板54から絶縁されている。
【0024】
ダイアフラム56の中央に、導電板54に向けて突出している突出部57が形成されている。ダイアフラム56の下側の中央部56a(すなわち、突出部57の導電板54側)は、導電板54に固定されている。ダイアフラム56と導電板54は、電気的に接続している。その結果、導電板54は、正極端子30と正極集電タブ(正極電極)46の双方に電気的に接続している。より詳細には、第1正極リード44の一端が正極端子30に接続され、第1正極リード44の他端(ダイアフラム56)が導電板54の第1領域(中央部56a)に接続され、第2正極リード45の一端が導電板54の第2領域45a(
図4も参照)に接続され、第2正極リード45の他端が正極集電タブ(正極電極)46に接続されている。なお、ダイアフラム56の下側の中央部56aは、第1領域に相当する。導電板54には、導電板54が溶融して凝固した再溶融凝固部55が形成されている。再溶融凝固部55には引張応力が残存しており、ケース4内の内圧が上昇したときに導電板54が破断する起点となる。再溶融凝固部55の詳細については後述する。
【0025】
図2に示す状態では、正極端子30と正極集電タブ46(正極電極)が導通しており、負極端子10と負極集電タブ26(負極電極)が導通している(
図1も参照)。そのため、正極端子30と負極端子10の間が通電可能である。なお、再溶融凝固部55の厚みは、再溶融凝固部55が形成されていない部分の導電板54の厚みよりも厚い。そのため、再溶融凝固部55の通電経路が、導電板54の他の部分よりも狭くなることはない。すなわち、再溶融凝固部55によって、導電板54の導電性が低下することはない。
【0026】
図2に示すように、第1正極リード44とダイアフラム56と第1シール部材42により囲まれた空間43は、密閉されている。ケース4内の内圧が上昇すると、空間43とケース4内の空間43以外の空間との間に差圧が生じる。その結果、
図3に示すように、再溶融凝固部55が破断し、ダイアフラム56の突出部57が上側に反転する。ダイアフラム56(第1正極リード44)と第2正極リード45が非導通となる。それにより、正極端子30と正極集電タブ46が非導通となり、正極端子30と負極端子10の間で電流が遮断される。
【0027】
図4に示すように、導電板54は、略円形の破断部54aと、破断部54aの端部から伸びている延長部54bを含んでいる。第2正極リード45が、導電板54の延長部54bに固定されている。中央部(第1領域)56aと、第2正極リード45が導電板54に接触している第2領域45aとの間には隙間が設けられている。再溶融凝固部55が、中央部(第1領域)56aの周りを、連続した線の形状を有して囲っている。換言すると、再溶融凝固部55によって、中央部(第1領域)56aと第2領域45aが完全に分断されている。ケース4内の内圧が上昇すると、再溶融凝固部55が破断し、中央部(第1領域)56aと第2領域45aが非導通となる。すなわち、正極端子30と負極端子10の間の電流が遮断される。なお、導電板54と第2正極リード45は、一体であってもよい。すなわち、導電板54から伸びている延長部54bが、正極集電タブ(正極電極)46に接続されていてもよい。この場合、延長部54bが第2正極リードに相当する。
【0028】
図5〜
図7に示すように、再溶融凝固部55は、中央部(第1領域)56aと第2領域45aの隙間に形成されていればよく、様々な形状を取り得る。
図5及び
図6は、導電板54が溶融・凝固した部分再溶融凝固部55a,55bが、導電板54内に複数形成されている。複数の部分再溶融凝固部55a,55bは、間隔をおいて中央部(第1領域)56aを囲っている。複数の部分再溶融凝固部55a(55b)によって、1つの再溶融凝固部55が形成されている。中央部(第1領域)56aは、複数の部分再溶融凝固部55a(55b)によって囲われている。
図5及び
図6に示す形態も、「再溶融凝固部55が、中央部(第1領域)56aを囲っている」といえる。
図5及び
図6に示す形態のように、部分再溶融凝固部55a(55b)が中央部(第1領域)56aの周りに間隔をおいて並んでいても、ケース4内の内圧が上昇すると、再溶融凝固部55が破断する。その結果、中央部(第1領域)56aと第2領域45aが非導通となり、正極端子30と負極端子10の間の電流が遮断される。
【0029】
再溶融凝固部55は、中央部(第1領域)56aを囲っていてもよいし、第2領域45aを囲っていてもよい。また、再溶融凝固部55が、中央部(第1領域)56aと第2領域45aの各々を囲っていてもよい。重要なことは、再溶融凝固部55が、中央部(第1領域)56aと第2領域45aとを結ぶ線と交差することである。
【0030】
図7に示す再溶融凝固部55は、中央部(第1領域)56aと第2領域45aの間を直線的に伸びている。この再溶融凝固部55は、中央部(第1領域)56aと第2領域45aとを結ぶ線と交差するとともに、両端が導電板54の端部に達している。このような形態であっても、ケース4内の内圧が上昇すると、再溶融凝固部55が破断し、中央部(第1領域)56aと第2領域45aが非導通となる。このように、再溶融凝固部55は、破断したときに中央部(第1領域)56aと第2領域45aを分断するように設けられていれば、中央部(第1領域)56aを囲っていなくてもよい。なお、
図7では、連続した1つの再溶融凝固部55が、中央部(第1領域)56aと第2領域45aを完全に分断している。しかしながら、
図5及び
図6のように、複数の部分再溶融凝固部が直線的に並び、1つの再溶融凝固部が形成されていてもよい。
【0031】
再溶融凝固部55の形成方法について説明する。再溶融凝固部55は、導電板54の材料(金属)を溶融させることができる方法であれば、あらゆる方法を用いて形成することができる。例えば、溶接棒を使用しないで、公知の溶接技術を用いて導電板54を溶融・凝固させるなめし溶接技術を用いることができる。また、導電板54にレーザ等の高密度エネルギーを照射してもよい。一例として、大気中で、導電板54にフェムト秒レーザ,ファイバーレーザ,第2高調波を含むYAGレーザ,CO
2レーザ,TIGアーク等を照射して、再溶融凝固部55を形成することができる。また、
図2において、再溶融凝固部55は導電板54の上面に形成していたが、下面に形成しても良い。
【0032】
(第2実施形態)
図8及び
図9に示すように、蓄電装置200では、電流遮断装置250の形態が、蓄電装置100と相違する。電流遮断装置250は、第1正極リード244と、導電板254と、第2正極リード245と、絶縁性を有する支持部材252を備えている。第1正極リード244は、導電板254の表面に接触している。第1正極リード244は、ダイアフラムを有していない(
図2及び
図9を参照)。第2正極リード245は、導電板254の裏面に接触している。第1正極リード244が導電板254に接触する第1領域244aと、第2正極リード245が導電板254に接触する第2領域245aの間には隙間が設けられている。
【0033】
図10に示すように、導電板254は、略円形の形状を有している。第1正極リード244が導電板254の中央に固定されており、第2正極リード245が導電板254の端部に固定されている。第1領域244aの周囲を、再溶融凝固部255が連続した線の形状を有して囲っている。第1正極リード244は、可撓性を有している。また、導電板254と支持部材252と絶縁部材242により囲まれた空間243は、密閉されている。そのため、ケース4内の内圧が上昇すると、空間243とケース4内の空間243以外の空間との間に差圧が生じ、導電板254が再溶融凝固部255で破断し、第1領域244aが上側に移動する。これにより、第1領域256aと第2領域245aが非導通となる。なお、
図11〜
図13に示すように、再溶融凝固部255、部分再溶融凝固部255a、255bの形状は、様々な形状を取り得る。
図11〜
図13に示す再溶融凝固部255、部分再溶融凝固部255a、255bは、実質的に
図4〜
図7に示す再溶融凝固部55と同一なので、説明を省略する。
【0034】
図14を参照し、導電板54(254)と再溶融凝固部55(255)の関係について説明する。まず、導電板54の厚みT54について説明する。厚みT54(mm)は、下記式(1)に基づいて計算できる。
T54=A×α(1≦α≦20)・・・(1)
ここで、Aは蓄電装置の容量(Ah)、αは割合(%)を示す。
【0035】
上記式(1)は、蓄電装置の容量Aが大きい程、導電板54の厚みT54を厚くする必要があることを示している。すなわち、導電板54の厚みT54は、蓄電装置の容量Aに比例することを示している。また、導電板54の厚みT54は、容量Aの1〜20%の間で調整されることを示している。厚みT54が容量Aの1%未満の場合、電流通路を十分に確保することができないことがある。
【0036】
一方、厚みT54が容量Aの20%よりも厚い場合、再溶融凝固部55を形成する際に、導電板54に加えられる熱エネルギーが大きくなり、導電板54に歪みが生じたり、導電板54が変形したりすることがある。導電板54の厚みT54を上記式(1)に基づいて決定することにより、良好な電流特性を得ながら良質な導電板54(電流遮断構造)を得ることができる。なお、電流特性及び不具合を確実に抑制するという観点から、導電板54の厚みT54は、容量Aに対して2%以上10%以下であることが特に好ましい。
【0037】
次に、再溶融凝固部55の深さD55について説明する。深さD55(mm)は、下記式(2)に基づいて計算できる。
D55=T54×β(5≦β≦60)・・・(2)
ここで、βは割合(%)を示す。
【0038】
上記式(2)は、再溶融凝固部55の深さD55は、導電板54の厚みT54に比例することを示している。また、再溶融凝固部55の深さD55は、厚みT54の5〜60%の間で調整されることを示している。深さD55が厚みT54の5%未満の場合、溶融・凝固しなかった導電板54の割合が多くなり、ケース内の内圧が上昇したときに再溶融凝固部55が破断しないことがある。すなわち、電流遮断構造が十分な機能を発揮しないことがある。
【0039】
一方、深さD55が厚みT54の60%よりも厚い場合、再溶融凝固部55の残留応力が厚み方向でバランスをとり、ケース内の内圧が上昇したときに再溶融凝固部55が破断しないことがある。この場合も、電流遮断構造が十分な機能を発揮しないことがある。再溶融凝固部55の深さD55を上記式(2)に基づいて決定することにより、電流遮断構造としての機能を発揮しやすい。なお、電流遮断構造としての機能をより確実に発揮させるという観点から、再溶融凝固部55の深さD55は、厚みT54に対して10%以上50%以下であることが特に好ましい。
【0040】
次に、再溶融凝固部55の表層部の幅W55について説明する。幅W55(mm)は、上記深さD55の25%以下であることが好ましい。上記したように、再溶融凝固部55の深さD55は、導電板54の厚みT54の5%以上に設定される。また、
図13に示すように、再溶融凝固部55の幅は、表層部では大きく、深部では小さい。幅W55が深さD55の25%を超えると、再溶融凝固部55の表層部において、残留応力が過大となる。蓄電装置の通常動作中であっても、ケース内ではガスが生じ、導電板54に力が作用する。幅W55が深さD55の25%を超えると、通常動作中に生じたガスによって、導電板54に繰返し力が作用し、導電板54の耐久性が低下することがある。幅W55を深さD55の25%以下に調整することにより、導電板54の耐久性を向上させることができる。
【0041】
図15に示すように、再溶融凝固部55,255は、アンダーカット部60を備えていてもよい。アンダーカット部60は、導電板54,254の材料が溶融して生じた溝のうち、溶融材料が埋まっていない部分に相当する。アンダーカット部60は、ケース4内の内圧が上昇したときに、導電板54,254の破断の起点となり得る。アンダーカット部60を形成することにより、より確実に導電板54,254を破断することができる。なお、
図15に示す導電板54,254では、再溶融凝固部55,255の断面形状は、導電板54,254の表面に向かうに従って連続的に広くなっている。しかしながら、溶融条件を調整することにより、
図16に示すように、再溶融凝固部55,255の断面形状を、導電板54,254の表面に向かう途中で不連続に広くすることができる。すなわち、導電板54,254が溶融して生じる溝の形状を、ワインカップ状にすることができる。導電板54,254の表層部に、大きな引張応力を残存させることができる。
【0042】
上記した蓄電装置100,200では、電流遮断装置50,250の導電板54,254に再溶融凝固部55,255が形成されていればよく、蓄電装置100,200を構成する部品の材料は様々なものを使用することができる。以下に、蓄電装置100,200の一例であるリチウムイオン二次電池について、電極構造体2を構成する部品の材料を例示する。なお、第1正極リード44,第2正極リード45及び導電板54,254の材料は、以下に例示する正極集電体の材料と同じ材料であることが好ましい。また、負極リード24の材料は、以下に例示する負極集電体の材料と同じ材料であることが好ましい。
【0043】
(正極集電体)
正極集電体として、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、ステンレス鋼又はそれらの複合材料を用いることができる。特に、アルミニウム又はアルミニウムを含む複合材料であることが好ましい。
【0044】
(正極活物質)
正極活物質は、リチウムイオンが侵入及び脱離可能な材料であればよく、Li
2MnO
3、Li(NiCoMn)
0.33O
2、Li(NiMn)
0.5O
2、LiMn
2O
4、LiMnO
2、LiNiO
2、LiCoO
2、LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2、Li
2MnO
2、LiMn
2O
4等を使用することができる。また、正極活物質としてリチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、あるいは、硫黄などを用いることもできる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。正極活物質は、必要に応じて導電材,結着剤等とともに正極集電体に塗布される。
【0045】
(負極集電体)
負極集電体として、アルミニウム、ニッケル、銅(Cu)等、又はそれらの複合材料等を使用することができる。特に、銅又は銅を含む複合材料であることが好ましい。
【0046】
(負極活物質)
負極活物質として、リチウムイオンが侵入及び脱離可能な材料を用いる。リチウム(Li)、ナトリウム(Na)等のアルカリ金属、アルカリ金属を含む遷移金属酸化物、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、高配向性グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料、シリコン単体又はシリコン含有合金又はシリコン含有酸化物を使用することができる。なお、負極活物質は、電池容量を向上させるため、リチウム(Li)を含まない材料であることが特に好ましい。負極活物質は、必要に応じて導電材,結着剤等とともに負極集電体に塗布される。
【0047】
(セパレータ)
セパレータは、絶縁性を有する多孔質を用いる。セパレータとして、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、あるいは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布または不織布を使用することができる。
【0048】
(電解液)
電解液は、非水系の溶媒に支持塩(電解質)を溶解させた非水電解液であることが好ましい。非水系の溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状エステルを含んでいる溶媒、酢酸エチル、プロピロン酸メチルなどの溶媒、又はこれらの混合液を使用することができる。また、支持塩(電解質)として、例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6等を使用することができる。
【0049】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。