特許第5729341号(P5729341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ車体株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5729341-貨物車両のデッキ構造 図000002
  • 特許5729341-貨物車両のデッキ構造 図000003
  • 特許5729341-貨物車両のデッキ構造 図000004
  • 特許5729341-貨物車両のデッキ構造 図000005
  • 特許5729341-貨物車両のデッキ構造 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5729341
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】貨物車両のデッキ構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 33/02 20060101AFI20150514BHJP
【FI】
   B62D33/02 S
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-75684(P2012-75684)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-203290(P2013-203290A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康次
【審査官】 鹿角 剛二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−115823(JP,A)
【文献】 特開2006−035936(JP,A)
【文献】 実開平07−011488(JP,U)
【文献】 特開平11−034930(JP,A)
【文献】 実開平06−057769(JP,U)
【文献】 特開2000−085636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物車両のデッキの構造であって、左右サイドメンバ間に結合されたクロスメンバの上面に沿ってデッキフロアが結合され、該クロスメンバの端部に結合したシルクロスの端部とホイールハウスとの間に跨って補強板が結合されており、該補強板に、車両前側から後ろ側に切り込み形成された吸収凹部と、該吸収凹部の下側において車幅方向内側へ屈曲して前記シルクロスに結合される応力緩和縁部を設けた構造。
【請求項2】
請求項1記載の構造であって、前記補強板は、前記応力緩和縁部の折り曲げ角部に沿って断面半円形で車両前側に膨出するビード部を備えた構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばピックアップと称される貨物車両のデッキ(荷台)の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両前部にキャビン(乗員室)を有し、その後方にデッキ(荷台)を備える貨物車両(トラック、ピックアップ)では、エンジンやサスペンション等を支持する左右のサイドメンバ間に跨って複数のクロスメンバが結合され、その上面にキャビンやデッキのフロアパネルが結合されたデッキ構造を備えている。
上記デッキ構造のうち、デッキのフロアパネルを支持する複数のクロスメンバのうち最前列のクロスメンバについては、その左右端部にシルクロスと称される補強部材を結合し、このシルクロスに対してデッキのフロアパネルとホイールハウスの端部を結合した構造とされる場合がある。この場合には上記3者の結合部を補強するためにシルクロス端部とホイールハウスとの間に跨ってシェアパッチと称される補強板がスポット溶接等によって結合されている。この補強板を結合しておくことによってシルクロス端部に対するフロアパネルのスポット打点(溶接結合部)のはく離若しくは亀裂の発生が防止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−34930号公報
【特許文献2】実開平6−57769号公報
【特許文献3】特開2000−85636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、走行中等、シルクロスには、左右のサイドメンバ及び車輪等の懸架装置を経てロードノイズ等の振動(外力)が入力され、この外力がシルクロスに対するデッキフロアのスポット打点をはく離する方向に作用するため、上記補強板による結合強度が不足する場合も想定され、当該結合強度をより高める必要があった。この結合強度不足は、補強板を大型化してシルクロス及びホイールハウスに対するスポット打点を追加することにより解消されるが、これではコスト増及び重量増大を招く。
本発明は、コスト増若しくは重量増大を招くことなく、シェアパッチと称される補強板による結合強度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は下記の発明により解決される。
第1の発明は、貨物車両のデッキの構造であって、左右サイドメンバ間に結合されたクロスメンバの上面に沿ってデッキフロアが結合され、クロスメンバの端部に結合したシルクロスの端部とホイールハウスとの間に跨って補強板が結合されており、この補強板に、車両前側から後ろ側に切り込み形成された吸収凹部と、この吸収凹部の下側において車幅方向内側へ屈曲してシルクロスに結合される応力緩和縁部を設けた構造である。
第1の発明によれば、補強板によってホイールハウスのシルクロスに対する上方へはく離する方向の荷重が受けられて両者間の第1スポット打点(溶接結合部)のはく離若しくは亀裂の発生が防止される。また、この補強板の吸収凹部によって、ホイールハウスのシルクロスに対する主として上下方向の変位が吸収されて当該補強板のホイールハウスに対する第2スポット打点への応力集中が緩和されてそのはく離若しくは亀裂の発生が防止される。さらに、補強板に折り曲げ形成された応力緩和縁部がシルクロスに結合されることにより、補強板のホイールハウスに対する第2スポット打点と交差する車幅方向の荷重(第2スポット打点のはく離方向の荷重)を応力緩和縁部のシルクロスに対する第3スポット打点で受けることができ、この点でも第2スポット打点のはく離若しくは亀裂の発生を防止することができる。また、第2スポット打点と第3スポット打点との打点間距離を従来よりも大きくすることができるので、各スポット打点に付加される荷重を低減することができ、この点でも各スポット打点のはく離若しくは亀裂の発生を防止することができる。
このように補強板が吸収凹部と応力緩和縁部を備えることにより、第2スポット打点と第3スポット打点で効率よく荷重を受けて第1スポット打点のはく離若しくは亀裂の発生について当該補強板を大型化しあるいはスポット打点数を増加したのと同等の作用効果を得ることができる。
第2の発明は、第1の発明において、補強板は、応力緩和縁部の折り曲げ角部に沿って断面半円形で車両前側に膨出するビード部を備えた構造である。
第2の発明によれば、応力緩和縁部の車両前後方向及び車幅方向の変位をこのビード部で吸収して第2スポット打点及び第3スポット打点に対する荷重を低減しつつ当該補強板で荷重を効率よく吸収して第1スポット打点のはく離若しくは亀裂の発生をより確実に防止することができ、この点でも当該補強板を大型化しあるいはスポット打点数を増加させたのと同等の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】貨物車両のデッキの側面図である。本図では、キャビン及び車輪等の懸架装置の図示が省略されている。
図2】本実施形態に係る補強板取り付け部周辺の斜視図である。
図3】本実施形態に係る補強板取り付け部周辺の側面図である。
図4図3の(IV)-(IV)線断面矢視図であって、補強板取り付け部の縦断面図である。
図5図3の(V)-(V)線断面矢視図であって、補強板取り付け部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態を図1図5に基づいて説明する。図1は、ピックアップとも称される貨物車両のデッキ(荷台)1が示されている。このデッキ1は左右のサイドメンバ11,11上に搭載されており、デッキフロアと前部の前壁部2と左右の側壁部3,3と後部の開閉可能な後壁部4を備えた上方開放の底浅箱体形状を有している。図1では、前壁部2と左側の側壁部3と後壁部4が見えており、デッキフロアと右側の側壁部3は見えていない。左側の側壁部3の前部には、ホイールハウス10が設けられている。このホイールハウス10の内側に後輪(図示省略)が配置されている。
左右のサイドメンバ11,11間には、複数のクロスメンバが掛け渡し状態に結合されている。この複数のクロスメンバ上にデッキフロアを構成するフロアパネル9(図4参照)が結合されている。図1では前側の3本のクロスメンバ5〜7のみが見えている。最前列のクロスメンバ5の左右端部には、いわゆるシルクロス8と称される補強用のメンバがそれぞれ取り付けられている。クロスメンバ5の左右端部において、このシルクロス8とフロアパネル9と上記ホイールハウス10との結合状態が、シェアパッチと称される補強板20によってそれぞれ補強されている。本実施形態はこの補強板20について従来にない特徴を有している。この補強板20による補強構造は、左右対称に構成されているので、以下図1に示すように左側の補強構造について説明する。
【0008】
図2に示すように車両右側端部まで延びる最前列のクロスメンバ5の左端部にシルクロス8が結合されている。図4に示すようにフロアパネル9がこのシルクロス8の上面に結合されている。フロアパネル9の端縁は上方に折り曲げられて結合縁部9aが設けられている。フロアパネル9の上面にホイールハウス10の結合縁部10aが重ね合わせ状に結合されている。フロアパネル9とホイールハウス10の結合縁部10aは、複数箇所のスポット溶接によってシルクロス8の上面に結合されている。以下、このスポット溶接部を第1打点部21と言う。図では、スポット溶接による結合部位(スポット打点部)が×印で示されている。
フロアパネル9の結合縁部9aは、ホイールハウス10の結合縁部10aの左側面に重ね合わされている。フロアパネル9の結合縁部9aを間に挟み込んだ状態で、ホイールハウス10の結合縁部10aとシルクロス8の左端面との間であって上下に跨って本実施形態の補強板20が結合されている。
補強板20の上部が、スポット溶接によりフロアパネル9の結合縁部9aとホイールハウス10の結合縁部10aに対して結合されている。以下、このスポット溶接部を第2打点部22と言う。
補強板20には、前端部が開口した吸収凹部20aが設けられている。図2に示すようにこの吸収凹部20aは、当該補強板20の前部から後部に向けて切り込まれて形成されており、その後部側端部は半円形に形成されて応力集中が生じないように形成されている。この吸収凹部20aの下側において、当該補強板20には応力緩和縁部20bが設けられている。この応力緩和縁部20bは、当該補強板20が車幅方向内側(右側)に折り曲げられて形成されている。この応力緩和縁部20bは、その上下2箇所においてスポット溶接によりシルクロス8の内面(前面)に結合されている。以下、このスポット溶接部を第3打点部23と言う。
図5に示すように補強板20は、応力緩和縁部20bの折り曲げ部に沿って断面半円形の膨らみであるビード部20cを備えている。このビード部20cにより主として応力緩和縁部20bの前後方向の変位が吸収されて、第2打点部22,22及び第3打点部23,23に対する応力の集中が緩和される。
【0009】
以上のように構成した本実施形態のデッキ構造によれば、ホイールハウス10の結合縁部10aとシルクロス8の端部との間であって上下に跨って補強板20が結合されていることにより、シルクロス8の上面に対するフロアパネル9の溶接結合部である第1打点部21〜21のはく離若しくは亀裂の発生が抑制されてその耐久性を高めることができる。
また、補強板20には、吸収凹部20aが設けれている。この吸収凹部20aの上側がホイールハウス10の結合縁部10aに結合され、下側がシルクロス8の端面に結合されている。この吸収凹部20aによれば、その上部側(ホイールハウス結合側)と下部側(シルクロス結合側)との上下方向及び左右方向の相対変位が許容されやすくなって図4に示すように路面から伝達される振動等の荷重Fを吸収しやすくなる。このため、第2打点部22,22及び第3打点部23,23に対する応力集中が緩和されてそのはく離若しくは亀裂の発生が抑制され、この点で第1打点部21〜21の耐久性をより一層高めることができる。
さらに、本実施形態の補強板20には、吸収凹部20aの下側が車幅方向に折り曲げて形成された応力緩和縁部20bが設けられている。補強板20は、この応力緩和縁部20bを介してシルクロス8に結合されている。この応力緩和縁部20bにより第2打点部22,22と第3打点部23,23との間の間隔(打点距離)を従来のシェアパッチ(応力緩和縁部に相当する折り曲げ部を有しない平板形状の補強板)に比して大きく設定することができ、これにより第2打点部22,22及び第3打点部23,23に対する応力集中を緩和することができる。
また、応力緩和縁部20bの折り曲げ部に沿って断面半円形に湾曲するビード部20cが形成されている。このビード部20cによってもサイドメンバ11,11から付加される荷重Fが吸収されて、第1〜第3打点部21〜23に対する応力集中が緩和され、ひいてはそのはく離若しくは亀裂の発生が抑制される。
このように、本実施形態の補強板20は、吸収凹部20aと応力緩和縁部20bとビード部20cを備えることにより、これらの相乗効果によって第1〜第3打点部21〜23に対する応力集中を緩和してその耐久性を高めることができる。このことから、補強板を大型化してそのホイールハウス10及びシルクロス8に対するスポット打点数を増加することなく、従って重量増大、コストアップを招くことなく第1打点部21〜21の耐久性を高めることができる。
【0010】
以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、ビード部20cを省略した構成としてもよい。
また、本実施形態では、図4に示すようにフロアパネル9の結合縁部9aを間に挟み込んだ状態でホイールハウス10の結合縁部10aと補強板20が第2打点部22,22により相互に結合された構成を例示したが、フロアパネル9の結合縁部9aを間に介在させないでホイールハウス10の結合縁部10aに直接補強板20を結合する構成としてもよい。
さらに、最前列のクロスメンバ5に結合したシルクロス8について結合強度を高める構成を例示したが、これに加えて若しくは代えて2列目以降のクロスメンバ6,7について同様の補強板20を適用することもできる。
【符号の説明】
【0011】
1…デッキ
2…前壁部
3…側壁部
4…後壁部
5…クロスメンバ(最前列)
6,7…クロスメンバ
8…シルクロス
9…フロアパネル、9a…結合縁部
10…ホイールハウス、10a…結合縁部
11…サイドメンバ
20…補強板(シェアパッチ)
20a…吸収凹部、20b…応力緩和縁部、20c…ビード部
21…第1打点部
22…第2打点部
23…第3打点部
図1
図2
図3
図4
図5