(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するティーチングシステムおよびティーチング方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
また、以下では、ディスプレイ等の表示部に対し、ロボットの3次元モデルのグラフィック画像を表示するティーチングシステムを例に挙げて説明を行う。なお、かかる3次元モデルのグラフィック画像については、以下、「仮想画像」と記載する場合がある。
【0017】
また、以下では、溶接ロボットおよびポジショナを含む溶接ロボットシステムを例に挙げて説明を行うが、溶接ロボットシステムに限定されるものではなく、たとえばシーリングロボットおよびポジショナを含むシーリングロボットシステムにも置換可能である。以下では、溶接ロボットについては「ロボット」と、溶接ロボットシステムについては「ロボットシステム」と、それぞれ記載する。
【0018】
図1は、実施形態に係るティーチングシステム10を含むロボットシステム1の全体構成を示す模式図である。
【0019】
図1に示すように、ロボットシステム1は、ティーチングシステム10と、ロボット制御装置20と、ロボット30と、ポジショナ40とを備える。また、ティーチングシステム10は、ティーチング制御装置11と、表示部12と、操作部13と、ジョブ情報DB(データベース)14とを備える。
【0020】
ティーチング制御装置11は、ティーチングシステム10全体を制御するコントローラであり、演算処理処置や記憶装置などを含んで構成される。また、ティーチング制御装置11は、表示部12をはじめとするティーチングシステム10の各種装置と情報伝達可能に接続される。
【0021】
また、ティーチング制御装置11は、操作部13を介したオペレータの操作に基づいてその動作をシミュレート演算したロボット30およびポジショナ40を含む仮想画像を表示部12に対して出力する。
【0022】
また、ティーチング制御装置11は、同じく操作部13を介したオペレータの操作に基づいて仮想画像からロボット30およびポジショナ40を動作させるジョブプログラムを生成し、ジョブ情報DB14へ登録する。
【0023】
表示部12は、いわゆるディスプレイ等の表示デバイスである。また、操作部13は、マウス等のポインティングデバイスである。なお、操作部13は、必ずしもハードウェア部品として構成される必要はなく、たとえば、タッチパネルディスプレイに表示されたタッチキーなどのソフトウェア部品であってもよい。
【0024】
ジョブ情報DB14は、ロボット30およびポジショナ40を動作させるジョブプログラムやかかるジョブプログラムに含まれる「教示点」等、ティーチングに関する情報が登録されるデータベースである。
【0025】
ここで、「教示点」とは、ロボット30およびポジショナ40を再生動作させる際にこれらの各関節や回転機構が経由するべき目標位置となる情報であり、たとえば、ロボット30やポジショナ40の各軸を駆動させるサーボモータに設けられた各エンコーダのパルス値として記憶される。ロボット30およびポジショナ40は、複数の教示点の情報に基づいて動作するため、ジョブ情報DB14にはロボット30やポジショナ40の動き(ジョブ)毎に複数の教示点が関連付けられて記憶されている。
【0026】
換言すると、ロボット30およびポジショナ40のジョブプログラムには、複数の教示点および各教示点間の補間動作命令やエンドエフェクタへの動作命令などの組合せ情報が含まれている。なお、ジョブ情報DB14は、ロボット30およびポジショナ40のジョブプログラム毎にそれに含まれる教示点の情報を記憶するようになっており、たとえばロボット30を再生動作させる際には、かかるジョブプログラムに基づいてロボット30が動作される。
【0027】
ジョブ情報DB14は、実際のロボット30およびポジショナ40の動作を制御するコントローラであるロボット制御装置20と情報伝達可能に接続されており、ロボット制御装置20は、かかるジョブ情報DB14に登録されたジョブプログラムに基づいてロボット30およびポジショナ40の各種動作を制御する。
【0028】
なお、
図1では、ジョブ情報DB14(ティーチングシステム10)とロボット制御装置20とを接続しているが、ティーチングシステム10にて生成されたジョブプログラムをロボット制御装置20内の所定の記憶部(図示略)に保存できるよう構成されていれば、ジョブ情報DB14(ティーチングシステム10)とロボット制御装置20とは必ずしも接続されている必要はない。
【0029】
たとえば、ティーチングシステム10にて生成されたジョブプログラムを、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の媒体にコピーした後、かかる媒体をロボット制御装置20に接続して、所定の操作によりロボット制御装置20内の所定の記憶部(図示略)に保存するようにしてもよい。
【0030】
なお、
図1では、説明を分かりやすくする観点から、ジョブ情報DB14とティーチング制御装置11とを別体で構成した例を示しているが、ジョブ情報DB14をティーチング制御装置11内部の記憶部に記憶させることとしてもよい。
【0031】
ロボット30は、基台部31と、第1アーム32と、第2アーム33と、手首部34と、エンドエフェクタ35とを備える。基台部31は、床面などに固定され、第1アーム32の基端部を軸Sまわりに回転可能に(図中の矢印101参照)、かつ、軸Lまわりに回転可能に(図中の矢印102参照)支持する。
【0032】
第1アーム32は、基端部を基台部31に上述のように支持されるとともに、その先端部において、第2アーム33の基端部を軸Uまわりに回転可能に支持する(図中の矢印103参照)。
【0033】
第2アーム33は、基端部を第1アーム32に上述のように支持されるとともに、その先端部において、手首部34の基端部を軸Bまわりに回転可能に支持する(図中の矢印105参照)。また、第2アーム33は、軸Rまわりに回転可能に設けられている(図中の矢印104参照)。
【0034】
手首部34は、基端部を第2アーム33に上述のように支持されるとともに、その先端部において、エンドエフェクタ35の基端部を軸Tまわりに回転可能に支持する(図中の矢印106参照)。
【0035】
本実施形態におけるエンドエフェクタ35は溶接トーチであり、基端部を手首部34に上述のように支持されている。
【0036】
ポジショナ40は、基台部41と、載荷台42とを備える。基台部41は、床面などに固定され、載荷台42を軸EX1まわりに傾動可能に支持する(図中の矢印107参照)。
【0037】
載荷台42は、溶接対象であるワークWを載荷する荷台であり、軸EX2まわりに回転可能に設けられ(図中の矢印108参照)、載荷された状態のワークWを回転させる。なお、ポジショナ40の軸EX1、EX2は、ロボット30の外部軸として取り扱われ、ロボット制御装置20に制御される。
【0038】
なお、ロボット30の各関節や、ポジショナ40の有する回転機構には、サーボモータのような駆動源が搭載されており、ロボット制御装置20からの動作指示に基づいてロボット30の各関節やポジショナ40の回転機構を駆動する。
【0039】
次に、実施形態に係るティーチングシステム10のブロック構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、実施形態に係るティーチングシステム10のブロック図である。なお、
図2では、ティーチングシステム10の説明に必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0040】
また、
図2を用いた説明では、主としてティーチング制御装置11の内部構成について説明することとし、既に
図1で示した表示部12、操作部13およびジョブ情報DB14については説明を簡略化する場合がある。
【0041】
図2に示すように、ティーチング制御装置11は、制御部111と、記憶部112とを備える。制御部111は、画像生成部111aと、表示制御部111bと、操作受付部111cと、溶接線生成部111dと、水平維持演算部111eと、シミュレート指示部111fと、ジョブ生成部111gとをさらに備える。記憶部112は、モデル情報112aと、教示点情報112bとを記憶する。
【0042】
画像生成部111aは、モデル情報112aに基づき、ロボット30、ワークWおよびかかるワークWを保持するポジショナ40を含むロボットシステム1の仮想画像を生成する。モデル情報112aは、ロボット30やポジショナ40、ワークWの種別ごとにあらかじめ定義された描画情報を含む情報である。
【0043】
また、画像生成部111aは、生成したロボットシステム1の仮想画像を表示制御部111bに対して出力する。表示制御部111bは、画像生成部111aから受け取ったロボットシステム1の仮想画像を表示部12へ表示させる。
【0044】
操作受付部111cは、操作部13を介して入力されるオペレータの入力操作を受け付け、かかる入力操作がシミュレート指示に関するものであれば、受け付けた入力操作を溶接線生成部111dに対して通知する。なお、ここに言うシミュレート指示に関する入力操作とは、表示部12上のワークWの稜線を選択する選択操作である。
【0045】
ここで、ワークWの稜線について述べておく。
図3は、ワークWの稜線の選択操作の説明図である。なお、
図3に示すワークWは、表示部12へ表示された仮想画像のワークWであるものとする。
【0046】
一般的に「稜線」とは、
図3にr1として示すような尾根に相当する部分を指すが、本実施形態では、面と面との継ぎ目部分も便宜上「稜線」と表現している。
【0047】
よって、本実施形態における「稜線」は、たとえば、
図3のr2のように尾根と尾根とに挟まれた谷に相当する継ぎ目(継ぎ手)部分であってもよい。また、図示していないが、面と面とが重なっている場合の継ぎ目部分であってもよい。
【0048】
かかる稜線r1およびr2は、表示部12にワークWの仮想画像が表示された際に、操作部13等を用いて選択操作可能な形式で表示される。たとえば、マウスカーソルをワークWに近づけた際に、すべての稜線の色がたとえば青色に変わったり、点滅などしたりしてもよい。
【0049】
そして、オペレータが、稜線r1およびr2のうち、たとえば、稜線r2上の一点をクリックしたものとする。かかる場合、
図3に示すように、稜線r2が明らかに他の稜線に比べて太く表示されるなど、選択されたことが明示されるのが好ましい。また、太さを変えるのではなく、たとえば青色から黄色に変わるなど、色分けによって識別されてもよい。
【0050】
なお、仮想画像からワークWの稜線を抽出する処理は、モデル情報112aを参照して制御部111にて行われるが、こうした処理は公知のものであるので詳細な説明は省略する。
【0051】
また、
図3に示すワークWは、あくまで一例であって、その形状や稜線の数などを限定するものではない。また、本実施形態では、オペレータが、
図3に示すワークWの稜線r2を選択したものとして説明を進める。
【0052】
図2の説明に戻り、引き続き、操作受付部111cについて説明する。操作受付部111cはまた、入力操作がジョブ生成を指示するものであれば、受け付けた入力操作をジョブ生成部111gに対して通知する。なお、ここに言うジョブ生成を指示する入力操作とは、一例として、表示部12へ表示された「ジョブ生成」ボタンといった操作部品をクリックする操作である。
【0053】
溶接線生成部111dは、操作受付部111cからワークWの稜線r2の選択操作を受け付けた旨の通知を受けた場合に、かかる稜線r2におけるティーチングの目標点の各点を抽出し、目標点群である溶接線を生成する。
【0054】
また、水平維持演算部111eは、溶接線生成部111dによって生成された溶接線に基づき、上記目標点の各点における溶接線のベクトル方向が水平方向に略平行となるように、上記各点ごとのポジショナ40の回転機構の各軸の位置についての教示値を演算する。
【0055】
また、水平維持演算部111eは、演算した上記目標点の各点に対応するポジショナ40の教示値を、教示点情報112bへ登録する。
【0056】
なお、水平維持演算部111eは、たとえば、3次元座標系における上記目標点の各点の座標値をポジショナ40の位置とし、各点における溶接線のベクトル方向をポジショナ40の姿勢として、ポジショナ40の姿勢が水平方向に略平行で、ポジショナ40の位置がロボットによる溶接作業に適した位置になるよう、各点ごとに逆キネマティクス演算によって、ポジショナ40の有する軸EX1、EX2に対する教示値を演算する。
【0057】
さらに、水平維持演算部111eは、ポジショナ40が各教示値をとった場合の、上記目標点の各点に溶接トーチ先端が到達するように、ロボット30の各関節軸に対する教示値を逆キネマティクス演算によって演算し、演算した教示値を教示点情報112bへ登録する。
【0058】
また、水平維持演算部111eは、シミュレーション動作を指示する入力操作を受け取った場合に、ポジショナ40およびロボット30の各教示値をシミュレート指示部111fに対して通知する。
【0059】
シミュレート指示部111fは、水平維持演算部111eから通知された上記目標点の各点に対応するポジショナ40の教示値に応じて姿勢を変更したポジショナ40の仮想画像、およびポジショナ40に対応して位置や姿勢を変更したロボット30の仮想画像を再生成させるシミュレート指示を、画像生成部111aに対して通知する。
【0060】
そして、画像生成部111aは、シミュレート指示部111fから受け取ったシミュレート指示に基づいてポジショナ40およびロボット30を含む仮想画像を再生成し、表示制御部111bを介して表示部12へ表示させる。これにより、ポジショナ40およびロボット30を含む仮想画像が連続して変化するシミュレーション動作が表示されることとなる。
【0061】
なお、稜線を選択する操作の際に、オペレータがクリックした稜線r2上の点を含む線分が水平方向と略平行となるようなポジショナ40の各軸位置をポジショナ40の初期位置とし、オペレータが稜線を選択すると、ポジショナ40の初期位置の仮想画像を生成して表示部12へ表示するようにしてもよい。
【0062】
次に、
図4A〜
図5Dを用いて、上述した操作受付部111c〜水平維持演算部111eまでの一連の処理について詳細に説明する。
【0063】
まず、
図4Aを用いて、画像生成部111aが生成し、表示制御部111bを介して表示部12へ表示される仮想画像の一例について説明しておく。
【0064】
図4Aは、表示部12へ表示される仮想画像の一例を示す模式図である。
図4Aに示すように、ロボット30およびポジショナ40を含むロボットシステム1の仮想画像は、表示部12の表示領域の一つである表示ウィンドウ120上に表示される。
【0065】
具体的には、仮想画像は、表示ウィンドウ120上の仮想画像領域121に表示される。また、表示ウィンドウ120は、ボタン122やダイアログボックス123などを含むGUI(Graphical User Interface)ウィジェットを有する。
【0066】
なお、仮想画像領域121の左下には直交座標系が表示されているが、これは仮想画像内の基準座標系であり、前述の3次元座標系に相当し、水平方向や垂直方向の基準となる。具体的には、基準座標系のX軸とY軸とで規定されるXY平面と平行な方向が水平方向となり、基準座標系のZ軸と平行な方向が垂直方向となる。
【0067】
オペレータは、かかるGUIウィジェットや仮想画像上の操作可能部品(たとえば、ワークWの稜線r2)を操作することによって、ティーチングシステム10に対する指示操作を行う。
【0068】
ティーチングシステム10は、オペレータの指示操作に従って、表示部12上の仮想画像であるロボット30の各関節やポジショナ40の回転機構を駆動させたり、仮想画像をどの方向からみた状態で表示するかといった視点の変更や表示の拡大/縮小を行ったりすることができる。
【0069】
また、仮想画像内の特定点にエンドエフェクタ35(本実施形態では溶接トーチ先端)が到達するようなロボット30の各関節位置を逆キネマティクス演算により求めて、到達した状態のロボット30の仮想画像を生成、表示することも可能である。
【0070】
さらに、オペレータの指示操作に従って、ジョブ情報DB14に登録された教示点やジョブプログラムを読み出し、特定の教示点に到達した状態のロボット30およびポジショナ40の仮想画像を表示したり、ジョブプログラムによるロボット30およびポジショナ40の一連の動作を表示部12上で再現したりすることもできる。
【0071】
ただし、ロボットのオフラインティーチングシステムにおける、このような機能は公知のものであるので、本実施形態に係る部分以外の詳細な説明は省略する。
【0072】
なお、上述した「ジョブ生成」ボタンなどは、たとえば、ダイアログボックス123のボタン123aなどに設けてもよい。
【0073】
ここで、オペレータが、ワークWの稜線r2を選択操作したものとする。かかる場合、上述の溶接線生成部111dで処理が実行され、稜線r2におけるティーチングの目標点の各点を抽出し、目標点群である溶接線が生成される。
【0074】
図4Bは、かかる目標点の各点を抽出して表示した仮想画像の一例を示す模式図である。
図4Bに示すように、抽出された目標点の各点は、稜線r2上に向けて表示された矢印によって指し示される。
【0075】
なお、目標点の抽出は自動的に行われるが、その間隔は通常は一定ではなく、溶接線のベクトル方向が変化する部分(稜線の曲がり角部分)ではより短い間隔で抽出されるように構成されている。
【0076】
また、溶接線のベクトル方向の変化に加え、あらかじめ入力された溶接条件(溶接速度、溶接電圧、溶接電流、溶接ワイヤの材質、径、送給速度など)に応じて間隔を決定するようになっていてもよい。
【0077】
ここで、説明を分かりやすくするために、かかる矢印のうちの3本に符号TP1〜TP3を付し、つづく
図5A〜
図5Dでは、かかる符号TP1〜TP3のみを目標点の例として挙げ、説明を続ける。また、
図5A〜
図5Dは、
図4Bに示す矢視A図として示してある。
【0078】
図5Aは、ワークWの矢視A模式図ある。また、
図5B〜
図5Dは、水平維持演算部111eの説明図(その1)〜(その3)である。
【0079】
図5Aに示すように、ワークWの稜線r2の一部に沿って、目標点TP1〜TP3が抽出されたものとする。また、溶接される順序は、目標点TP1、TP2、TP3の順であるものとする。
【0080】
この場合、
図5Bに示すように、水平維持演算部111eはまず、目標点TP1における稜線r2の接線方向t1が水平方向と略平行となるように、ポジショナ40が有する軸EX1、EX2の位置を求解する逆キネマティクス演算を行う。
【0081】
さらに、水平維持演算部111eは、
図5BにおけるTP1に溶接トーチ先端が到達するように、ロボット30の各関節軸の位置を求解する逆キネマティクス演算を行う。なお溶接トーチの姿勢は、あらかじめ設定した前進角や傾斜角となるように構成してもよい。
【0082】
つづいて、
図5Cに示すように、水平維持演算部111eは、目標点TP2における稜線r2の接線方向t2が水平方向と略平行となるように、ポジショナ40が有する軸EX1、EX2の位置を求解する。
【0083】
さらに、水平維持演算部111eは、
図5CにおけるTP2に溶接トーチ先端が到達するように、ロボット30の各関節軸の位置を求解する。
【0084】
同様に、
図5Dに示すように、水平維持演算部111eは、目標点TP3における稜線r2の接線方向t3が水平方向と略平行となるように、ポジショナ40が有する軸EX1、EX2の位置を求解する。なお、
図5Dの例では、溶接トーチ先端がTP2からTP3へと到達するまでの間はポジショナ40の軸を特に動作させなくても、接線方向t3は水平方向と略平行となっている。
【0085】
さらに水平維持演算部111eは、
図5DにおけるTP3に溶接トーチ先端が到達するように、ロボット30の各関節軸の位置を求解する。
【0086】
すなわち、水平維持演算部111eは、すべての目標点TP1〜TP3における稜線r2の接線方向、言い換えれば、溶接線のベクトル方向がつねに水平方向に略平行となるように、ポジショナ40の回転機構の位置の演算を行い、さらにはそれらに対応するロボット30の各関節軸の位置についても演算を行う。
【0087】
すなわち、本実施形態によれば、複雑な形状の溶接線に対する溶接作業をティーチングする場合であっても、現在の溶接箇所が水平方向と略平行となるように、ポジショナ40の回転機構の各軸が自動的に駆動するジョブプログラムを生成することができ、オペレータのティーチングの負担を軽減するとともに、溶接品質を向上させることができる。
【0088】
ところで、水平維持演算部111eの逆キネマティクス演算処理によって、複数の解が求まる場合がある。かかる場合の操作手順について、
図6A〜
図6Cを用いて説明する。
図6Aは、第1の変形例に係る操作手順を示す図である。また、
図6Bおよび
図6Cは、第1の変形例に係る表示例を示す図(その1)および(その2)である。
【0089】
かかる場合、
図6Aに示すように、たとえば、表示ウィンドウ120上にダイアログボックス123を表示し、かかるダイアログボックス123に複数個の解をそのままリスト形式で示せばよい。そして、オペレータにリストアップされたうちの一つを選択させればよい。
【0090】
なお、
図6Aはポジショナ40について2つの解が求まった場合の例である。この場合、リストアップされた解の1つをクリックすると、その解に対応するポジショナ40の仮想画像を即座に表示するようにしてもよい。
【0091】
たとえば、
図6Aの番号「1」をクリックすると、
図6Bのようなポジショナ40の仮想画像が表示され、
図6Aの番号「2」をクリックすると、
図6Cのようなポジショナ40の仮想画像が表示される。
【0092】
これにより、水平維持演算部111eにおいて複数の解が求まってしまう場合でも、いずれの解が適切か、オペレータが仮想画像を見て即座に選択を行うことができる。
【0093】
また、これまでは、水平維持演算部111eが、目標点TP1〜TP3の各点における溶接線のベクトル方向が水平方向に略平行となるように求解することとしたが、かかる溶接線のベクトル方向を調整することとしてもよい。
【0094】
図6Dは、第2の変形例の説明図である。また、
図6Eは、第2の変形例に係る操作手順を示す図である。なお、
図6Dでは、溶接線のベクトル方向tの傾斜角θ
1を、説明の便宜のために誇張して示している。
【0095】
図6Dに示すように、目標点TPから伸びる溶接線のベクトル方向tを、水平方向を基準とした任意の方向となるように調整することとしてもよい。たとえば、
図6Dには、溶接線のベクトル方向tを、傾斜角θ
1だけ下進方向にやや傾斜させた例を示している。
【0096】
このように、下進方向にやや傾斜させた場合、重力作用を受けて溶接方向前方にビードが伸びるため、ビードが汚く残りにくいというメリットを得ることができる。なお、この点、上進方向にやや傾斜させることを妨げるものではない。
【0097】
また、
図6Dに示すように、溶接線のベクトル方向tを回転角θ
2だけ回転させてもよい。この回転角θ
2を調節することによって、重力方向に対する稜線(継ぎ手)の姿勢を適切に設定し、溶接品質を向上させるメリットを得ることができる。
【0098】
この第2の変形例の場合、
図6Eに示すように、たとえば、ダイアログボックス123に傾斜角θ
1と回転角θ
2の指定値入力欄を設け、オペレータに指定させればよい。
【0099】
図2の説明に戻り、ティーチング制御装置11のジョブ生成部111gについて説明する。ジョブ生成部111gは、操作受付部111cからジョブ生成を指示する入力操作を受け取った場合に、教示点情報112bに基づいて、実際のロボット30およびポジショナ40を動作させるジョブプログラムを生成し、ジョブ情報DB14へ登録する。
【0100】
記憶部112は、ハードディスクドライブや不揮発性メモリといった記憶デバイスであり、モデル情報112aおよび教示点情報112bを記憶する。なお、モデル情報112aおよび教示点情報112bの内容については既に説明したため、ここでの記載を省略する。
【0101】
また、
図2を用いた説明では、ティーチング制御装置11が、あらかじめ登録されたモデル情報112aに基づいてロボット30およびポジショナ40を含む仮想画像を生成する例を示したが、ティーチング制御装置11と相互通信可能に接続された上位装置から画像生成に必要となる情報を逐次取得することとしてもよい。
【0102】
上述してきたように、実施形態に係るティーチングシステムは、表示部と、画像生成部と、表示制御部と、溶接線生成部(作業線生成部)と、水平維持演算部(演算部)と、ジョブ生成部とを備える。
【0103】
画像生成部は、ロボット、かかるロボットの作業対象であるワークおよびこのワークを保持するポジショナを含むロボットシステムの仮想画像を生成する。表示制御部は、画像生成部によって生成された仮想画像を表示部へ表示させる。
【0104】
溶接線生成部は、仮想画像におけるワークの稜線に対するオペレータの選択操作を受け付けた場合に、かかる稜線におけるティーチングの目標点の各点を抽出し、目標点群である溶接線(作業線)を生成する。
【0105】
水平維持演算部は、上記各点における溶接線のベクトル方向が水平方向に略平行となるように、上記各点ごとのポジショナの位置および姿勢についての教示値を演算する。ジョブ生成部は、水平維持演算部によって演算された教示値に基づいて実際のポジショナおよびロボットを動作させるジョブプログラムを生成する。
【0106】
したがって、実施形態に係るティーチングシステムによれば、容易に溶接線を水平に保ってオペレータの負担を軽減し、さらに溶接品質を向上させることができる。
【0107】
なお、上述した実施形態では、ロボットが、6軸の単腕ロボットである例を示しているが、軸数や腕の数を限定するものではない。また、上述した実施形態では、ポジショナが2軸を有している例を示しているが、3軸以上を有していてもよい。
【0108】
また、上述した実施形態では、主に操作部としてマウスを用い、かかるマウスによってワークの稜線の選択操作や入力操作を行う場合を例に挙げたが、これに限られるものではない。たとえば、表示部をいわゆるマルチタッチ対応のタッチパネルなどで構成し、かかるタッチパネルに対するオペレータのマルチタッチ操作によってワークの稜線の選択操作などを行なってもよい。
【0109】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。