【実施例】
【0019】
図1〜
図5に、実施例の搬送システムとその変形とを示す。各図において、2は搬送システムで、4は処理装置で、例えば半導体処理装置及び半導体の検査装置などである。また搬送システム2はクリーンルーム内に設けられている。処理装置4は1個あるいは複数個のロードポート6を備え、その直上部に天井走行車12の軌道10が設けられて、天井から支柱11で支持されている。天井走行車12はホイスト14を備えて、昇降台16を物品18と共に昇降させる。物品18は例えば半導体ウェハーを収容したFOUPであるが、物品18の種類は任意である。また天井走行車12は、ホイスト14以外に、ホイスト14を横送りする装置及びホイスト14を鉛直軸回りに回動させる装置などを備えていてもよい。軌道10と天井走行車12により天井走行車システムを構成し、このシステム自体は公知である。
【0020】
軌道10の例えば直下にローカル軌道20が設けられ、ローカル軌道20は例えば個々の処理装置毎に設ける。ローカル軌道20を設ける範囲はロードポート6の直上部と例えばその左右両側であるが、ロードポート6の上部とその左右一方のみでもよい。22はローカル台車で、ローカル軌道20に沿って往復動し、昇降台23をベルト,ワイヤ,ロープなどの吊持材24により昇降させる。ロードポート6から見て、ローカル台車22の走行方向の例えば前後双方に、各々2種類のバッファ25a,b,26a,bを設ける。天井走行車12は
図1の矢印の方向に走行し、例えば一対のロードポート6,6の上流側のバッファ25a,26bが第1のバッファで、下流側のバッファ25b,26bが第2のバッファである。
【0021】
バッファ25a,bは、その上部を物品18を支持したローカル台車22が干渉せずに通過できる高さ位置に設け、ロードポート6に対して平面視で隣接した位置に設ける。言い換えると、ローカル台車22が支持する物品18の底面と、バッファ25a,bでの物品載置面との間に、物品18の1個分超の高さの差を設ける。バッファ26a,bは第2のバッファで、バッファ25a,bから見てロードポート6の反対側に設け、その上部を物品18を支持していないローカル台車22は走行できるが、物品18を支持しているローカル台車22は走行できない高さに設ける。言い換えると、ローカル台車22が支持する物品18の底面と、バッファ26a,bでの物品載置面との間の高さの差を、物品18の1個分以下の高さとする。例えばバッファ26a,bはバッファ25a,bよりも物品18の1個分の高さだけ高い位置に設けられ、バッファ25a,b,26a,bで段差が1段の階段を構成している。そしてバッファ25a,b,26a,bは支柱27,28により支持され、支柱27は例えばローカル軌道20の支柱を兼ねているが、ローカル軌道20の支柱とは別体としてもよい。
【0022】
実施例ではロードポート6の左右両側(天井走行車12の走行方向を基準とすると、ロードポート6の前後両側)にバッファ25a,b,26a,bを設けたが、片側にのみ設けてもよい。バッファの容量が不足する場合、
図1に鎖線で示すように、バッファ26a,bをバッファ31の位置へ移動させ、元のバッファ26a,bの下部にバッファ30を設けると良い。そしてこの場合、ローカル軌道20もバッファ31の上部まで延長する。
【0023】
以上のようにバッファ25a,b,26a,b等を配置すると、天井走行車12とローカル台車22は任意のバッファ25a,b,26a,bとの間で物品18を受け渡しできる。バッファ25a,bは低い位置にあるので、天井走行車12とローカル台車22とが自由にアクセスできるが、物品18を受け渡す際の昇降量が大きい。バッファ26a,bが空の場合、実荷のローカル台車22と実荷の天井走行車12がアクセスできる。バッファ26a,bに物品18が置かれている場合、空荷のローカル台車22と空荷の天井走行車12がアクセスできる。なお天井走行車12は、一対の走行レールから成るローカル軌道20の間隙を介して、物品18を昇降させ、この機構については後述する。
【0024】
これらの結果、バッファ25a,b,26a,bに対し、ローカル台車22及び天井走行車12とがアクセスできる。バッファ26a,bはバッファ25a,bに比べて高い位置にあるので、天井走行車12及びローカル台車22は移載時間を短縮できる。とくにローカル台車22は、物品18を移載する際の昇降量が短く、移載時間を短縮できる。またバッファ25a,b,26a,bはロードポート6の付近に置かれているので、ローカル台車22は短時間でロードポート6とバッファ25a,b,26a,b間で物品18を搬送できる。
【0025】
図2は
図1のII−II線に沿って下側を見た図であり、天井走行車12と軌道10とを除いて、搬送システム2を表示してある。ローカル軌道20は
図2のように一対のレールから成り、レール間は間隙34である。この間隙34の幅は物品18の奥行きよりも大きく、物品18は間隙を鉛直方向に通過できる。またロードポート6の上部に充電装置36が設けられ、ローカル台車22に充電する。
図1,
図2では充電装置36を一方のロードポート6の直上部に配置したが、他方のロードポートの上部、あるいは一対のロードポート6,6の中間部などに配置してもよい。
【0026】
天井走行車12は、処理装置4が直ちに必要とする物品以外は、バッファ25a,b,26a,bで物品18を荷下ろしする。また次の処理装置が直ちに必要とする物品以外は、ロードポート6上の物品ではなく、天井走行車12はバッファ25a,b,26a,bの物品を搬出する。そしてロードポート6とバッファ25a,b,26a,b間の搬送は、基本的にローカル台車22が行う。この結果ロードポート6の上部でローカル台車22が充電のため停止しても、天井走行車12による物品の搬送と干渉しない。なお充電装置36はバッファ25a,b,26a,bに面した位置などに設けてもよい。その場合、この位置でローカル台車22が充電のため長時間停止すると、天井走行車12がバッファへアクセスすることが妨げられる。
【0027】
図3はローカル台車22の構造を示し、38は走行車輪で、走行モータ40により駆動され、42はバッテリーで、受電装置43を介して充電装置36による充電される。受電装置43への給電は、例えば非接触給電、コネクタあるいは充電カプラなどによる接触充電の何れでもよい。44はホイストで、昇降台23を昇降させ、45はチャックで、物品18の上部のフランジを把持及び解放する。
【0028】
図4は搬送システム内の通信を示し、天井走行車コントローラ50は天井走行車12と通信して搬送指令を割り付ける。例えば充電装置36がローカル台車22のコントローラを兼ね、通信ユニット51を介して天井走行車コントローラ50との間で通信することにより、バッファ25a,b,26a,bでの物品18の有無とそのIDなどを、天井走行車コントローラ50へ報告する。また充電装置36は、天井走行車コントローラ50から、バッファ25a,b,26a,bを経由しての、物品18の搬送について指示を受ける。通信ユニット52は天井走行車12と通信し、天井走行車12がバッファ25a,b,26a,bとの間で物品18を受け渡しする際のインターロックを行う。通信ユニット53はローカル台車22の通信ユニット54と通信し、ローカル台車22に対してバッファ25a,b,26a,bとロードポート6間の物品18の移載を指示する。
【0029】
搬送システム2の動作について説明する。処理装置4が丁度必要とする時刻に物品18をロードポート6へ供給し、ロードポート6へ物品18が内部から搬出されると、直ちに処理装置4の外部へ取り去ることが、搬送システムの目標である。このためには処理装置4に対して専属のローカル台車22とバッファ25a,b,26a,bとがあればよい。処理装置4が必要とする物品18を予めバッファ25a,b,26a,bに保持し、処理装置4が要求する時刻にロードポート6へ搬送すればよい。またロードポート6へ内部から搬出された物品18を、ローカル台車22で直ちにバッファ25a,b,26a,bへ移載すればよい。そしてバッファ25a,b,26a,bよりも遠方との搬送は天井走行車12が行い、天井走行車12はバッファ25a,b,26a,bの何れに対してもアクセスでき、緊急時等にはロードポート6に対しても直接アクセスできる。
【0030】
処理装置4が必要とする時点で、バッファ25a,b,26a,bに必要な物品18が置かれていないことがある。このような場合、天井走行車12が物品18をダイレクトにロードポート6へ荷下ろしできると、処理装置4の待ち時間を短縮できる。また次の処理装置が必要とする物品の搬出が遅れている場合、天井走行車12がロードポート6からダイレクトに物品18を取り去ると、次の処理装置の待ち時間を短縮できる。
【0031】
ローカル台車22はローカル軌道20に沿って短い距離を走行するので、簡単な台車でよい。コントローラとしての充電装置36との通信は、例えば導体のローカル軌道20を信号線に兼用する、ローカル軌道20に沿ってフィーダー線を設ける、もしくは台車22と充電装置36との間で無線通信する、などにより行う。そして充電装置36への電源と、天井走行車コントローラ50との通信線は、支柱27などを利用して配線できる。
【0032】
実施例ではローカル軌道20を軌道10の直下に配置する例を示したが、これには限らない。このような例を
図5に示し、実施例と同じ符号は同じものを表す。60は新たなローカル軌道で、軌道10の直下を避けるようにその下方に配置され、62は新たなローカル台車である。ローカル台車62はガイドローラ63〜65によりローカル軌道60に支持されて走行し、67,68は新たな支柱で、他の点では
図1〜
図4の実施例と同様である。
【0033】
参考例
図6に参考例を示し、
図1〜
図4と同じ記号は同じものを表し、特に指摘する点以外は
図1〜
図4の実施例と同様である。天井走行車12は
図6の矢印に沿って一方向に走行する。処理装置4は例えば一対のロードポート6,6を備えて、天井走行車12の走行方向で各ロードポート6,6の上流側に第1のバッファ70が、各ロードポート6,6の下流側に第2のバッファ71が設けられている。なお処理装置4当たりのロードポート6の数は任意である。ローカル軌道20は、ロードポート6、6の上流側の第1のバッファ70の上部から、下流側の第2のバッファ71の上部まで伸びている。72は水平なフレームで支柱27により支持され、ロードポート6,6の上部からその左右(上流側と下流側)とに伸びて、バッファ70,71を支持している。物品18を支持していないローカル台車22は上方を走行可能で、物品18を支持しているローカル台車22は上方を走行不能な高さに、バッファ70,71は配置されている。
【0034】
平面視で、軌道10及び軌道20とバッファ70,71が重なり、軌道10,20の直下にロードポート6,6がある。また軌道20は2本のレールから成り、レール間に物品18が鉛直方向に通過自在な隙間がある。軌道20に沿ってローカル台車22の停止位置が例えば4個所あり、各個所に充電カプラー等の充電装置74が設けられ、ローカル台車のリチウムイオン電池等のバッテリーあるいは電気二重層キャパシタ等の蓄電器に充電する。ローカル台車22は停止する都度充電を受けることができるので、小容量のバッテリーあるいは小容量のキャパシタにより駆動できる。なおロードポート6,6の直上の位置はローカル台車22の待機位置には適していないので、バッファ70,71の直上の位置にのみ充電装置74を設けても良い。
【0035】
73はコントローラで、ローカル台車22を制御すると共に、天井走行車12あるいは
図4の天井走行車コントローラ50と通信する。フレーム72は、ロードポート6,6の上部に例えば一対のルックダウンセンサ76,76を備え、ロードポート6,6の付近の干渉物、例えば作業者を監視している。ルックダウンセンサ76は例えばレーザ光源と、レーザ光の向きを変えて
図6の鎖線の範囲を走査する機構と、反射光の受光素子とを備えている。そして例えば
図6の鎖線の範囲内の物体を監視し、鎖線の範囲内に物体を検出すると、コントローラ73はローカル台車22と天井走行車12とに対し該当するロードポート6との移載を禁止する。なお1個のルックダウンセンサ76で複数個のロードポート6を監視するようにしても良い。またコントローラ73は天井走行車12と直接通信せずに、
図4の天井走行車コントローラ50を介して通信しても良い。
【0036】
参考例の動作を説明する。天井走行車12はバッファ70,71へ物品18を荷下ろし(搬入)すると共に、ロードポート6,6上の物品18を搬出(荷積み)する。バッファ70に空きが有り、かつロードポート6に搬出すべき物品18がある場合、天井走行車12は搬送してきた物品18をバッファ70へ荷下ろしすると共に、ロードポート18から物品18を搬出する。従って1台の天井走行車12で搬入と搬出とを実行できる。ローカル台車22はバッファ70,71の物品をロードポート6,6へ搬入する。ローカル台車22の待機位置はバッファ70,71の上部で、待機位置を交互に変える。例えばバッファ71上の物品をロードポート6へ搬入すると、バッファ70上で待機し、次にバッファ70の物品を速やかにロードポート6へ搬入できるようにする。なおバッファ70,71のいずれにも物品18がない場合、天井走行車12がバッファ70へ物品18を荷下ろしできるように、バッファ71上で待機しても良い。ロードポート6,6が物品18でオーバーフローするおそれがある場合は、ローカル台車22がロードポート6からバッファ70,71へ物品を搬出しても良い。また特急品に対しては、天井走行車12が直接ロードポート6へ物品を搬入しても良い。
【0037】
参考例では、バッファ70,71はロードポート6,6に隣接し、軌道20とバッファ70,71との高さの差は小さい。従ってローカル台車22は短時間で物品18をバッファ70,71からロードポート6へ搬入できる。天井走行車12からすると、処理装置4は搬出専用の2個のロードポートと搬入専用の2個のロードポートを備えているのと同様になる。このため物品18をロードポート6へ荷下ろしできないトラブルを減らすことができる。また処理装置4からすると、バッファ70,71に最大2物品まで処理予定の物品を蓄積できる。
【0038】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 処理装置4の前面を塞がずにバッファ25a,b,26a,bを設けることができる。
(2) 天井走行車12が走行するスペースとローカル台車22が走行するスペースとを鉛直方向に重ねることができ、搬送システムが平面視で占める床面積を小さくできる。
(3) バッファ25a,b,26a,bを階段状に上下2段に配置するので、天井走行車12とローカル台車22は任意のバッファ25a,b,26a,bにアクセスできる。特に、バッファ26a,bは、ローカル軌道20との高さレベルの差が少ないので、小さな昇降量で物品18を供給搬出できる。
(4) ローカル軌道20に設けた間隙34を物品18が通過するので、ローカル軌道20とバッファ25a,b,26a,bを天井走行車12の軌道10の直下に配置できる。
(5) 処理装置4及び既存の天井走行車システムをほとんど改造せずに、ローカル軌道20とローカル台車22及びバッファ25a,b,26a,bから成る搬送システムを後付けできる。
(6) ローカル台車22は短いローカル軌道20を往復するので、ロードポート6とバッファ25a,b,26a,bとの間で速やかに物品を供給搬出できる。特にロードポート6の前後両側にバッファ25a,b,26a,bを設けると、ロードポート6の付近にバッファ25a,b,26a,bを多数設けることができる。
(7) ロードポート6の上部に充電装置36を設けると、天井走行車12のバッファ25a,b,26a,bへのアクセスを妨げずに、ローカル台車22のバッテリー42を充電できる。またバッテリー駆動なので、ローカル軌道20に給電レールを併設する必要がない。
【0039】
なお全ての処理装置4に対して、バッファ70,71とローカル軌道20及びローカル台車22からなるシステムを設ける必要はない。例えば物品18の処理量の多い処理装置4に対してのみ設けても良い。搬送する物品18の種類は任意で、例えば半導体露光用のレチクルを収容したカセット、フラットパネルディスプレイの基板等でも良い。