(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ステータの径方向外側にロータマグネットが配置される、いわゆるアウターロータ型のブラシレスモータは、OA機器のメインモータや送風機などに用いられる。
【0003】
この種のブラシレスモータには、厳しい環境下での信頼性が求められる。この種のブラシレスモータには、耐荷重、耐衝撃性について高い信頼性が求められる。この特性を達成するためには、大径の軸受を用いることが望ましい。
【0004】
その一方で、ブラシレスモータが搭載される装置の小型化に伴い、ブラシレスモータ自体を小径化することが求められている。
【0005】
ブラシレスモータの外径を規定する要素としては、ロータハブの径方向の長さ、ロータマグネットの径方向の長さ、ステータコアのティースの径方向の長さ、ステータコアのコアバック部の径方向の長さ、ハウジングの径方向の長さ、およびベアリングの外径がある。ここで、ロータハブの径方向の長さ、ロータマグネットの径方向の長さ、およびステータコアのティースの径方向の長さを短くして、ブラシレスモータの小径化を図ろうとすると、ブラシレスモータの磁気的特性が低下してしまう。
【0006】
したがって、ブラシレスモータにおいて磁気的特性を低下させることなく小径化するためには、ステータのコアバック部の径方向の長さ、ハウジングの径方向の長さ、およびベアリングの外径のいずれかを小さくしなければならない。他方で、前述のとおり、ベアリングの外径を小さくしてしまうと、耐荷重、耐衝撃性についての信頼性が低下してしまう。
【0007】
特開2006−158013号公報の
図1に開示の構成では、ステータコア50と、ハウジング56の一部と、軸受70bとが、軸方向で同じ位置において径方向に連なってしまう。このことは、ブラシレスモータを小径化する際の妨げとなっていた。
【0008】
特開2009−100573号公報の
図1に開示の構成では、ステータコア34をセンターピース16に、かしめなどの構造的な固定をすることができず、ステータコアが軸方向上側に抜ける虞があった。
【0009】
特開2001−298893号公報の
図2に開示の構成においても、コア6をハウジング1に、かしめなどの構造的な固定をすることができず、コア6が軸方向上側に抜ける虞があった。
【特許文献1】特開2006−158013号公報
【特許文献2】特開2009−100573号公報
【特許文献3】特開2001−298893号公報
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明において、「上側」とは、例えば
図1において、ロータハブ32の円筒部212に対する底部322側を指し、「下側」とは、ロータハブ32の底部322に対する開口側を指すものとする。また、図面の上下方向も、上記上下方向の定義と一致させている。ただし、これら「上側」、「下側」は、あくまで説明の便宜のために上下方向を定義したものである。したがって、本発明のブラシレスモータが、実際の機器に搭載されたときの設置姿勢等を限定するものではない。
【0015】
図1は、本発明の例示的な一実施形態に係るブラシレスモータ1の全体構成を示した断面図である。
図1を参照して、ハウジング21は、亜鉛めっき鋼鈑がプレス法により成型されて形成される。ハウジング21は、全体として略円筒形状であり、基部211と、基部211の上側に延びる円筒部212と、を備える。基部211の内側には、下側軸受部材42を収容する収容部213が設けられ、下側軸受部材42が収容される。
【0016】
ステータ22は、ハウジング21の円筒部212外側に保持される。ステータ22は、ステータコア221と、ステータコア221のティース2212に巻回されたコイル222と、を備える。ステータコア221は、強磁性体である薄い鋼鈑を複数積層されてなる。ステータコア221は、環状のコアバック部2211と、環状のコアバック部2211から径方向外側に延びる複数のティース2212と、を備える。各ティース2212には、導電線を巻回することによりコイル222が形成される。ステータコア221において、導電線の巻回される部位とその周辺とには、絶縁塗装が行われる。
【0017】
上側軸受部材41(軸受部材4)は、その外周面がステータコア221のコアバック部2211の内周面に保持される。上側軸受部材41は玉軸受である。
【0018】
上側軸受部材41および下側軸受部材42の内周面には、回転中心軸を中心として回転し、回転中心軸に対して上下に延びるシャフト31が固定される。シャフト31は、上側軸受部材41と下側軸受部材42とにより、ハウジング21に対して回転可能に支持される。上側軸受部材41および下側軸受部材42と、シャフト31とは、挿入、接着、またはこれらの併用によって固定される。
【0019】
ロータハブ32は、略カップ形状をしており、シャフト31の上側軸受部材41の固定される部位より上側に固定される。ロータハブ32とシャフト31とは、接着するか圧入する、または両者の併用によって固定される。ロータハブ32の筒部の内周面には、環状のロータマグネット33が固定される。ロータマグネット33の内周面とステータ22とは、径方向に間隙を介して対向する。ロータハブ32とロータマグネット33とは、接着するか圧入する、または両者の併用によって固定される。
【0020】
ステータコア221のコアバック部2211は、小径孔形成部分2211aと、小径孔形成部分2211aよりも上側に位置し内径が大きな大径孔形成部分2211bと、を備える。
【0021】
ハウジング21の円筒部212は、当接部2121と、当接部2121よりも上側に位置するステータ対向部2122と、ステータ対向部2122よりも上側に位置する抜け止め部2123と、を備える。
【0022】
小径孔形成部分2211aの径方向内側には、ハウジング21の円筒部212が配置される。小径孔形成部分2211aの内周面は、ハウジング21の円筒部212と接触するか、微小な間隙を介して対向する。小径孔形成部分2211aの軸方向高さと、円筒部212のステータ対向部2122の上端の軸方向高さとは、ほぼ一致させる。
【0023】
小径孔形成部分2211aの上面は、少なくともその一部が、ハウジング21の抜け止め部2123と接する。これにより、ステータコア221が軸方向上側へ抜けることが防止される。また、ステータコア221のコアバック部2211の下面は、ハウジング21の当接部2121と接する。以上の構成にすることより、前記ステータ22は、抜け止め部2123と当接部2121とによって、円筒部212に挟持される。
【0024】
大径孔形成部分2211bの内周面は、上側軸受部材41の外周面を保持する。具体的には、大径孔形成部分2211bの内側に上側軸受部材41が挿入され、接着剤にて固定される。この構成により、ステータ22と軸受部材4との間に、ハウジング21を介在させる必要がない。したがって、ハウジング21の分だけ上側軸受部材41の径方向のスペースを広く確保できる。その結果、ステータコア221のティース2212の径方向の長さを短くすることなく、相対的に外径の大きな軸受部材を用いることができる。
【0025】
上記の構成とすることより、本発明によるブラシレスモータ1は、磁気的特性を低下させることなく、相対的に大径の軸受を備え、ハウジング21とステータ22とを構造的に締結し、かつ、ブラシレスモータ1を小径化できる。
【0026】
図2は、本発明に係る別の実施形態のブラシレスモータ1の全体構成を示す断面図である。
図2を参照して、ブラシレスモータ1は、回転部3と、静止部2と、軸受部材4と、からなる。回転部3は、シャフト31と、ロータハブ32と、ロータマグネット33と、を備える。静止部2は、ハウジング21と、ステータ22と、回路基板24と、を備える。軸受部材4は、上側軸受部材41と、下側軸受部材42と、を備える。上側軸受部材41はステータ22に保持され、下側軸受部材42はハウジング21に保持される。
【0027】
ハウジング21は、全体として略円筒形状であり、基部211と、基部211の上側に延びる円筒部212と、を備える。ハウジング21は、亜鉛合金製であり、ダイカスト法によって成型される。基部211の内周面は、回転中心軸に垂直な面で切った断面形状が円形状であり、下側軸受部材42を収容する収容部213を備える。
【0028】
下側軸受部材42は、玉軸受であり、ハウジング21の収容部213の内側に挿入、接着、もしくはそれらの併用によって固定される。下側軸受部材42の上面とハウジング21との間には、軸受部材に予圧を加える予圧ばね23が配置されている。
【0029】
ハウジング21の円筒部212は、径方向に広がる面を有する当接部2121と、当接部2121の径方向内側から軸方向上側に延びるステータ対向部2122と、ステータ対向部2122の上側に位置する抜け止め部2123と、を備える。
【0030】
ステータ22は、ハウジング21の円筒部212外側に保持される。ステータ22は、ステータコア221と、ステータコア221のティース2212に導電線が巻回されたコイル222と、を備える。ステータコア221は、強磁性体である薄い鋼鈑が複数積層されてなる。積層された各鋼鈑は、かしめ法により互いに固定される。ステータコア221は、環状のコアバック部2211と、環状のコアバック部2211から径方向外側に延びる複数のティース2212と、を備える。本実施形態では、ティース2212は6本であり、各ティース2212は周方向に等間隔に配置される。各ティース2212には、導電線の巻回によりコイル222が形成される。ステータコア221における、導電線の巻回される部位とその周辺とには、絶縁塗装が行われる。
【0031】
本実施形態のブラシレスモータ1は、U相,V相,W相を一つの中性点にて結線するスター結線の3相駆動方式を有している。したがって、本実施形態のティース2212は6本であるので、各相2つのティース2212を連続して巻回する。例えば、各ティース2212を周方向に順にa,b,c,d,e,fと並ぶとした場合、U相の導電線は、ティース2212aに巻回された後、ティース2212dに連続して巻回される。そして、ティース2212aからティース2212dに連続して巻回する際において、導電線の一部は、ティース2212aからティース2212dを繋ぐ渡り線223となる。この渡り線223は、コアバック部2211の軸方向上側もしくは下側に配置される。
【0032】
上側軸受部材41は、玉軸受であり、その外周面がステータコア221のコアバック部2211の内周面に保持される。上側軸受部材41は、ステータコア221のコアバック部2211に接着によって固定される。
【0033】
本実施形態では、上側軸受部材41の上端面よりもコアバック部2211の上端面のほうが、軸方向上側に位置している。このように構成することにより、各ティース2212に巻回されたコイル222が緩み、渡り線223が弛んだとしても、渡り線223が上側軸受部材41と接触しづらくなる。また、上側軸受部材41をステータコア221のコアバック部2211に固定する際、ステータコア221のコアバック部2211と上側軸受部材41との間に、渡り線223を挟み込み難くなる。
【0034】
ハウジング21の基部211の上側には、導電パターンとランドを有する回路基板24が載置される。基部211には、上側に開口する回路基板固定用のねじ穴2111が設けられている。回路基板24は、ねじ止めによりハウジング21に固定される。回路基板24のランドには、ステータから引き出されたU相,V相,W相の各相を構成する導電線が、それぞれ半田付けされる。
【0035】
ハウジング21の基部211の下側には、下側に開口する装置本体取付用のねじ穴2112が設けられている。ハウジング21は、ねじ止めにより装置本体に固定される。
【0036】
上側軸受部材41および下側軸受部材42の内周面には、回転中心軸を中心として回転し、回転中心軸に対して上下に延びるシャフト31が固定される。シャフト31は、上側軸受部材41と下側軸受部材42とにより、ハウジング21に対して回転可能に支持される。上側軸受部材41および下側軸受部材42とシャフト31とは、接着するか挿入する、または両者の併用によって固定される。
【0037】
ロータハブ32は、全体として略カップ形状であり、円筒状のマグネット保持部321と、マグネット保持部321から径方向内側に延びる平板上の底部322と、底部322の中央から軸方向下側に延びる円筒状の締結部323と、を有する。ロータハブ32は、磁性体の薄板であり、プレス法によって成型される。ロータハブ32の締結部323は、シャフト31の上側軸受部材41が固定される部位より上側に固定される。ロータハブ32の締結部323とシャフト31とは、接着するか圧入する、または両者の併用によって固定される。ロータハブ32の筒部は、ステータを径方向外側から囲う。
【0038】
ロータハブ32の筒部の内周面には、環状のロータマグネット33が固定される。本実施形態の場合、ロータマグネット33には、フェライト系のゴム磁石を用いている。ロータハブ32とロータマグネット33とは、接着するか圧入する、または両者の併用によって固定される。ロータハブ32は、ロータマグネット33に対してヨークの役割をする。ロータマグネット33の内周面とステータとは、径方向に間隙を介して対向する。また、ロータマグネット33の下面は、回路基板24の上面と軸方向に間隙を介して対向する。
【0039】
また、回路基板24には、3つのホール素子が配置される(不図示)。ホール素子を配置することにより、ブラシレスモータ1の回転を精度よく検知できる。なお、回路基板24のロータマグネット33の下面と対向する位置には、周波数発生用のパターン(以下、FGパターン)を設けてもよい。これにより、ブラシレスモータ1の回転をより高い精度で検知できる。
【0040】
ブラシレスモータ1を回転させる際には、回路基板24のランドを介してステータのコイル222に電流を流す。これにより、コイル222に磁場が発生し、この磁場とロータマグネット33との相互作用により、ロータマグネット33、ロータハブ32およびシャフト31が回転する。
【0041】
図3は、
図2におけるブラシレスモータ1の円筒部212近傍を拡大した拡大図である。
図4は、
図2におけるブラシレスモータ1のステータコア221を示した平面図である。
図3および
図4を参照して、ステータ22のコアバック部2211の内周面は、小径孔形成部分2211aと、小径孔形成部分2211aよりも軸方向上側に位置する位置決め部2211cと、位置決め部2211cよりも軸方向上側に位置する大径孔形成部分2211bと、を備える。
【0042】
図3を参照して、小径孔形成部分2211aの径方向内側には、ハウジング21の円筒部212が配置される。小径孔形成部分2211aの内周面は、ハウジング21の円筒部212と接触するか、微小な間隙を介して対向する。小径孔形成部分2211aと円筒部212との間には、接着剤が介在する。小径孔形成部分2211aの軸方向高さと、円筒部212のステータ対向部2122の上端の軸方向高さとは、ほぼ一致させる。
【0043】
小径孔形成部分2211aの上面の一部と抜け止め部2123の下面とは当接する。したがって、ステータコア221の軸方向上側への抜けが防止される。また、小径孔形成部分2211aの下面は、円筒部212の当接部2121に接する。これにより、小径孔形成部分2211aは、ハウジング21の当接部2121と抜け止め部2123とにより、挟持された状態で保持される。したがって、ハウジング21とステータ22とを構造的に締結できる。
【0044】
コアバック部2211の位置決め部2211cは、ハウジング21の抜け止め部2123と径方向に対向する。コアバック部2211の大径孔形成部分2211bは、その内側に上側軸受部材41を保持する。具体的には、大径孔形成部分2211bの内側に上側軸受部材41が挿入され、接着剤にて固定される。この構成により、ステータ22と軸受部材との間にハウジング21が介在しない。したがって、ステータコア221のティース2212に影響を及ぼすことなく、相対的に軸受部材4を大径化できる。
【0045】
また、位置決め部2211cの上端面と上側軸受部材41の下端面とは当接する。したがって、ステータ22と上側軸受部材41との軸方向の位置関係について、ステータ22とは別の部材や治具を要することなく、容易に位置決めできる。
【0046】
さらに、位置決め部2211cの軸方向高さは、抜け止め部2123の軸方向高さよりも高い。したがって、抜け止め部2123が、上側軸受部材41と接触することを防止できる。
【0047】
加えて、抜け止め部2123は、上側軸受部材41の内輪411よりも径方向外側に位置する。これにより、予圧または外力等により上側軸受部材41の内輪411が、軸方向下側に下がったとしても、上側軸受部材41の内輪411と抜け止め部2123との接触を防ぐことができる。
【0048】
なお、
図4を参照して、本実施形態のコアバック部2211において、小径孔形成部分2211a、位置決め部2211c、大径孔形成部分2211bにおける、内周面の径方向でのそれぞれの位置は、小径孔形成部分2211a、位置決め部2211c、大径孔形成部分2211bの順に、径方向の外側に位置する。これに対して、コアバック部2211の外周面(ティース2212との境界)の径方向の位置は、全て略一致している。
【0049】
したがって、大径孔形成部分2211bにおいては、ハウジング21が介在しない分だけ、上側軸受部材41の径方向のスペースを広く確保できる。その結果、ステータコア221のティース2212の径方向の長さを短くすることなく、相対的に軸受部材の径を大きくできる。
【0050】
図5は、本実施形態におけるブラシレスモータ1の玉軸受に加える予圧を説明した模式図である。以下では、本実施形態におけるブラシレスモータ1の組み立て工程を説明するとともに、玉軸受に予圧を加える仕組みを説明する。
図5を参照して、まず、ステータ22、ハウジング21、上側軸受部材41、下側軸受部材42、回転部3を用意する。
【0051】
次に、ステータコア221の小径孔形成部分2211aの内周面またはハウジング21のステータ対向部2122に、接着剤を塗布する。その後、ハウジング21のステータ対向部2122にステータコア221の小径孔形成部分2211aを挿入する。接着剤を塗布した状態でステータ対向部2122に、小径孔形成部分2211aを挿入することにより、接着剤がステータ対向部2122と小径孔形成部分2211aとの間に行き渡る。
【0052】
また、小径孔形成部分2211aの下端面が、ハウジング21の当接部2121に当接するまで挿入する。これにより、ステータ22を軸方向に位置決めできる。なお、この段階においては、抜け止め部2123は、その径方向の位置が小径孔形成部分2211aの径方向位置よりも径方向内側に位置している。
【0053】
つづいて、ステータ22とハウジング21とが、同軸になるように両者の位置関係を調整する。そして、この状態で抜け止め部2123を径方向外側に塑性変形させ、ハウジング21とステータ22とを、かしめ固定する。このかしめ固定は、周方向に間隔をあけて複数個所を塑性変形させる、いわゆる点かしめである。このようにすることで、ステータ22とハウジング21とを圧入により固定する場合と比較して、高い同軸精度を実現できる。また、かしめ固定と接着とを併用するので、ステータ22とハウジング21とを確実に締結できる。特に、小径孔形成部分2211aは、ハウジング21の当接部2121と抜け止め部2123とにより、挟持された状態で保持されるので、ハウジング21とステータ22とを構造的に締結できる。
【0054】
さらに、上側軸受部材41の外周面に接着剤を塗布する。そして、上側軸受部材41をステータ22の大径孔形成部分2211b内に挿入する。この際、上側軸受部材41の軸方向下端がステータ22の位置決め部2211cに突き当たるまで挿入する。これにより、上側軸受部材41を軸方向に位置決めできる。
【0055】
次に、回転体のシャフト31を上側軸受部材41の内側に挿入する。この際、回転体のロータハブ32の締結部323の下面は、上側軸受部材41の内輪の上面と当接するまで挿入する。これにより、締結部323が上側軸受部材41の内輪を上側から下側に向かって支持するので、上側軸受部材41に対して予圧を確実にかけることができる。ここで、抜け止め部2123は、上側軸受部材41の内輪411よりも径方向外側に位置する。したがって、この工程で上側軸受部材41の内輪が軸方向下側に下がったとしても、上側軸受部材41の内輪411と抜け止め部2123との接触を防ぐことができる。
【0056】
そして、ハウジング21の基部211の収容部213内に予圧ばね23を設置する。そして、下側軸受部材42をシャフト31の下側から挿入する。この際、収容部213の内周面または下側軸受部材42の外周面にあらかじめ接着剤を塗布しておき、挿入により接着剤が収容部213の内周面と下側軸受部材42の外周面との間に行き渡るようにしてもよい。
【0057】
この構成により、
図5に示すように、玉軸受である軸受部材に確実に予圧をかけることができる。
【0058】
図6は、本発明によるブラシレスモータ1を適用した送風機5である。
図6を参照して、ロータハブ32のマグネット保持部321の外周面には、円筒状でありその外周に複数枚のインペラ61を有するファン部材6が圧入と接着の併用により固定されている。本発明によるブラシレスモータ1を適用した送風機5は、相対的に大径の玉軸受を用いているので、信頼性が高い。また、ブラシレスモータ1を相対的に小径化できるので、送風スペースを広くとること、および、小型な装置に搭載することが可能となる。さらに、ステータの巻き線スペースが確保できるので、回転特性の高い送風機を提供できる。
【0059】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明してきたが、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、上述の実施形態ではハウジング21をダイカスト法により作製したが、これに限られるものではない。切削加工やプレス加工により作製してもよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、ハウジング21を亜鉛合金で作製したが、これに限られるものではない。アルミニウム合金や黄銅(真鍮)などの材料でも作製可能である。
【0061】
さらに、上述の実施形態では、ロータハブ32を磁性体の薄板で作製したが、これに限られるものではない。ロータハブ32をアルミ材や樹脂材料などの非磁性材料で作製することも可能である。ただし、その場合、ロータハブ32とは別部材で、ロータマグネット33に対してヨークとなる部材を配置する必要がある。
【0062】
加えて、上述の実施形態では、軸受部材4に玉軸受を用いたが、これに限られるものではない。焼結含油軸受などを用いてもよい。焼結含油軸受を用いる際、シャフト31と軸受部材4とは微小な間隙を介して対向する。また、シャフト31には、軸方向の脱落を防止する抜け止め部材(不図示)が固定される。
【0063】
また、上述の実施形態では、抜け止め部2123を周方向に複数個所を塑性変形させて、点かしめにて固定しているが、これに限られるものではない。全周かしめなどの方法により、抜け止め部2123を部分的に径方向外側に塑性変形させてもよい。また、点かしめさせる箇所は、周方向に1箇所のみでもよい。
【0064】
さらに、上述の実施形態では、位置決め部2211cが環状に形成されているが、これに限られるものではない。
図7に示すように周方向の一部にのみ設けられてもよい。この際、位置決め部2211cが形成されなかった部位に、抜け止め部2123が位置してもよい。これにより、抜け止め部2123の小径孔形成部と接する面積を増加させることができるので、ステータ22とハウジング21とを、より強固に締結できる。なお、位置決め部2211cが周方向の一部にのみ設けられる場合、位置決め部2211cの径方向内端と小径孔形成部分2211aの内周面との中心軸からの距離は、一致してもよい。
【0065】
加えて、上述の実施形態では、ステータ22とハウジング21とを、かしめ法により固定したが、これに限られるものではない。例えば、
図8に示すように、ブラシレスモータ1aにおいて、ステータ22とハウジング21とを、ねじ214にて締結してもよい。この際、ステータ22は、ハウジング21の上側に保持される。また、円筒部212の上面には、当接部2121と、当接部2121から軸方向下側に窪む穴2124とが形成される。さらに、ステータコア221の小径孔形成部分2211aには、軸方向に貫通する孔、または前記小径孔形成部分2211aの内周面を径方向外側に切り欠いてなるねじ挿通部2211dが形成される。そして、ねじ挿通部2211dと穴2124にねじ214が挿通され、ねじ山と穴2124内周面に設けられたねじ溝とが螺合する。その結果、コアバック部2211は、下面にて当接部2121と接し、小径孔形成部分2211aの上面にてねじ頭214a(抜け止め部に相当)と接した状態で固定される。ステータ22とハウジング21とは、このようにして固定されてもよい。
【0066】
また、上述の実施形態では、当接部2121は径方向に広がる平面であるとしたが、これに限られるものではない。当接部2121は、その一部において、小径孔形成部分2211aであるか否かを問わず、ステータコア221の下面の一部と接していれば、どのような形状でもよい。
【0067】
さらに、上述の実施形態では、ステータコア221とコイル222との絶縁を絶縁塗装にて実現しているが、これに限られるものではない。例えば、インシュレータを用いて、ステータコア221とコイル222とを絶縁してもよい。
【0068】
加えて、上述の実施形態では、上側軸受部材41と下側軸受部材42とは同じ径であるが、これに限られるものではない。上側軸受部材41よりも下側軸受部材42のほうが大径でもよい。また、下側軸受部材42よりも上側軸受部材42のほうが大径でもよい。
【0069】
また、本発明では、上側軸受部材41の上端面よりもコアバック部2211の上端面のほうが、軸方向上側に位置しているとしたが、これに限られるものではない。上側軸受部材41の少なくとも一部が、コアバック部2211の大径孔形成部分2211bに保持されていればよい。
【0070】
さらに、上述の実施形態では、ステータコア221と上側軸受部材41との間に、接着剤が介在しているが、これに限られるものではない。ステータコア221と上側軸受部材41との間に、断熱材を介在させてもよい。断熱材を介在させることで、ステータ22で発生した熱が、上側軸受部材41に伝わりにくくなる。したがって、上側軸受部材41の軸受寿命を延ばすことができる。
【0071】
加えて、上述の実施形態ではブラシレスモータを送風機に適用したが、これに限られるものではない。
図1のようにシャフト31を軸方向に延伸し、その端部にギアやプーリーなど動力を外部に伝達する部材を設けて、OA機器のメインモータ等に適用してもよい。