特許第5729511号(P5729511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5729511
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】R−T−B系永久磁石、及び、回転機
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/057 20060101AFI20150514BHJP
   H01F 1/08 20060101ALI20150514BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20150514BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   H01F1/04 H
   H01F1/08 B
   H02K15/03 A
   C22C38/00 303D
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-87381(P2014-87381)
(22)【出願日】2014年4月21日
【審査請求日】2014年5月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 龍司
(72)【発明者】
【氏名】榎戸 靖
(72)【発明者】
【氏名】西川 健一
【審査官】 田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−074084(JP,A)
【文献】 特開2010−045068(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/090765(WO,A1)
【文献】 特開2011−159981(JP,A)
【文献】 特表2007−524986(JP,A)
【文献】 特開2013−135542(JP,A)
【文献】 再公表特許第2011/030387(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/00
H01F 1/032 − 1/04
H01F 1/055 − 1/057
H01F 1/06 − 1/117
H01F 1/40
H01F 7/00 − 7/02
H01F 41/00 − 41/04
H01F 41/08 − 41/10
H02K 1/17
H02K 1/27
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成が(R11−xR214B(R1はY、La、Ceを含まない希土類元素の少なくとも1種であり、R2はY、La、Ceの1種以上からなる希土類元素であり、TはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の遷移金属元素、0.1≦x≦0.5)である主相粒子を含み、さらにM(MはAl、Cu、Zr、Hf、Tiの少なくとも1種)を2at%〜10at%含み、前記Mの粒界相における単位面積あたりの重量mと、前記主相粒子表面から30nm粒子内の位置における同じ単位面積あたりの重量nの比n/mが、1/3以上0.60以下であることを特徴とするR−T−B系永久磁石。
【請求項2】
請求項1に記載のR−T−B系永久磁石であって、前記n/mが、0.51以上0.60以下であることを特徴とするR−T−B系永久磁石。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のR−T−B系永久磁石を備える回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、R−T−B系永久磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
正方晶R14B化合物を主相とするR−T−B系永久磁石(Rは希土類元素、TはFeまたはその一部がCoによって置換されたFe)は優れた磁気特性を有することが知られており、1982年の発明(特許文献1:特開昭59−46008号公報)以来、代表的な高性能永久磁石である。
【0003】
希土類元素RがNd、Pr、Dy、Ho、TbからなるR−T−B系磁石は異方性磁界Haが大きく永久磁石材料として好ましい。中でも希土類元素RをNdとしたNd−Fe−B系磁石は、飽和磁化Is、キュリー温度Tc、異方性磁界Haのバランスが良く、資源量、耐食性において他の希土類元素Rを用いたR−T−B系磁石よりも優れているために広く用いられている。
【0004】
民生、産業、輸送機器の動力装置として、永久磁石同期モータが用いられてきた。しかしながら、永久磁石による界磁が一定である永久磁石同期モータは、回転速度に比例して誘導電圧が高くなるため、駆動が困難となる。そのため、永久磁石同期モータは中・高速域および軽負荷時において、誘導電圧が電源電圧以上とならぬよう、電機子電流による磁束にて永久磁石の磁束を相殺させる弱め界磁制御をおこなう必要があり、結果としてモータの効率を低下させてしまうという問題がある。
【0005】
このような問題を解決するために、外部から磁界を作用させることにより、磁力が可逆的に変化する磁石(可変磁力磁石)を用いた可変磁束モータが開発されている。可変磁束モータでは、中・高速域および軽負荷時において、可変磁力磁石の磁力を小さくすることによって、従来のような弱め界磁によるモータの効率低下を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−46008号公報
【特許文献2】特開2010−34522号公報
【特許文献3】特開2009−302262号公報
【0007】
可変磁束モータでは、磁力が一定である固定磁石と、磁力を変化させることのできる可変磁石が併用される。可変磁束モータの高出力化および高効率化のためには、可変磁石から固定磁石と同等の磁束を取り出せることが求められる。一方、可変磁石はモータに組み込まれた状態にて印加可能な小さい外部磁場にて磁化状態を制御する必要がある。すなわち、高残留磁束密度と低保磁力という磁気的性質が可変磁石には要求される。
【0008】
特許文献2にはSm−Co系永久磁石を可変磁石とした可変磁束モータが開示されており、Nd−Fe−B系永久磁石を固定磁石とした構成により、モータ効率の改善が得られるとしている。しかしながら、可変磁石であるSm−Co系永久磁石の残留磁束密度Brは1.0T程度であり、固定磁石であるNd−Fe−B系永久磁石の残留磁束密度Brである1.3T程度に及ばないことから、モータ出力および効率の低下の原因となる。
【0009】
特許文献3には希土類元素RとしてCeを必須としたR−T−B系永久磁石を可変磁石とした可変磁束モータが開示されており、固定磁石であるNd−Fe−B系永久磁石と同等の構造であるR−T−B系永久磁石を可変磁石とすることにより、固定磁石と同等の残留磁束密度Brが可変磁石からも得られることが期待される。しかしながら、特許文献3では保磁力を可変磁石として好適な低い値に制御するために、希土類元素RとしてCeを必須としており、残留磁束密度Brが0.80T〜1.25T程度と、固定磁石であるNd−Fe−B系永久磁石の残留磁束密度Brである1.3T程度に及ばない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、幅広い回転速度域にて高い効率を維持できる可変磁束モータに好適な、高残留磁束密度かつ低保磁力の可変磁石を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、組成が(R11−xR214B(R1はY、La、Ceを含まない希土類元素の少なくとも1種であり、R2はY、La、Ceの1種以上からなる希土類元素であり、TはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の遷移金属元素、0.1≦x≦0.5)である主相粒子を含み、さらにM(MはAl、Cu、Zr、Hf、Tiの少なくとも1種)を2at%〜10at%含むことを特徴とする。係る構成をとることによって、従来のR−T−B系永久磁石と比較して、可変磁束モータに好適な、高残留磁束密度かつ低保磁力の可変磁石が得られる。
【0012】
本発明者らは、R−T−B系永久磁石において、R−T−B系永久磁石組成と添加元素の組合せを適切に選択することよって、可変磁束モータ用の可変磁石として好適である、高残留磁束密度かつ低保磁力である永久磁石が得られることを見出した。尚、本発明に係るR−T−B系永久磁石は、可変磁束モータの他に発電機等の回転機全般に適用可能である。
【0013】
Nd−Fe−Bの等温断面図から、NdFe14Bは広い領域で存在し、比較的安定に存在すると考えられる。一方、Y−Fe−B、La−Fe−B、Ce−Fe−Bの等温断面図から、R2Fe14Bは複数の合金に囲まれ狭い領域にある。この差が添加元素の主相粒子内における割合を高めていると考えられ、その結果、異方性の低下および逆磁区形成が容易になり、低保磁力が達成できる。
【0014】
本発明に係るR−T−B系永久磁石は、M(MはAl、Cu、Zr、Hf、Tiの少なくとも1種)の粒界相における単位面積あたりの重量mと、主相粒子表面から30nm粒子内の位置における同じ単位面積あたりの重量nの比n/mが、1/3以上であることが好ましい。係る範囲とすることで、添加元素の主相粒子内における割合が十分な量となり、特に低い保磁力を得ることができる。
【0015】
このように、NdFe14Bにおいては、主に粒界に存在して保磁力を向上させる添加元素であっても、適切な希土類元素Rと添加元素を組み合わせることにより、添加元素の主相粒子内における割合を増やすことができ、低保磁力が得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、R−T−B系永久磁石における希土類元素Rのうちの所定量をY、La、Ceの1種以上からなる希土類元素を選択し、さらにAl、Cu、Zr、Hf、Tiの少なくとも1種である添加元素を所定量加えることによって、可変磁束モータ用の可変磁石として好適である、高残留磁束密度かつ低保磁力である永久磁石を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0018】
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、組成が(R11−xR214B(R1はY、La、Ceを含まない希土類元素の少なくとも1種であり、R2はY、La、Ceの1種以上からなる希土類元素であり、TはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の遷移金属元素、0.1≦x≦0.5)である主相粒子を含み、さらにM(MはAl、Cu、Zr、Hf、Tiの少なくとも1種)を2at%〜10at%含むことを特徴とする。
【0019】
本実施形態において、主相粒子の組成に占めるR2の量xは0.1≦x≦0.5である。xが0.1未満であると十分な低保磁力が達成できない。これは、Y、La、Ceの比率が小さいため、添加元素の主相粒子内における割合が低下した結果と考えられる。xが0.5より大きいと、残留磁束密度Brが著しく低下する。これはR14B永久磁石中で、Ndより磁化や異方性が劣るY、La、Ceの影響が支配的になるためと考えられる。
【0020】
本実施形態において、M(MはAl、Cu、Zr、Hf、Tiの少なくとも1種)を2at%〜10at%含む。2at%未満であると主相粒子内の添加元素量が足りず、十分な低保磁力が達成できない。一方、10at%より大きいと配向性などの低下を招き、十分な残留磁束密度Brが得られない。
【0021】
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、希土類元素を11at%〜18at%含有する。Rの量が11at%未満であると、R−T−B系永久磁石に含まれるR14B相の生成が十分ではなく軟磁性を持つα−Feなどが析出し、保磁力が著しく低下する。一方、Rが18at%を超えるとR14B相の体積比率が低下し、残留磁束密度が低下する。
【0022】
本実施形態において、希土類元素は原料に由来する不純物を含んでもよい。なお、R1は高い異方性磁界を得ることを考慮すると、Nd、Pr、Dy、Ho、Tbであることが好ましく、また、原料価格と耐食性の観点から、Ndが更に好ましい。
【0023】
本実施形態に係るTはFeまたはFeおよびCoを必須とする1種以上の遷移金属元素である。Co量はT量に対して0at%以上10at%以下が望ましい。Co量の増加によってキュリー温度を向上させることができ、温度上昇に対する保磁力の低下を小さく抑えることが可能となる。また、Co量の増加によって希土類永久磁石の耐食性を向上させることができる。
【0024】
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、Bを5at%〜8at%含有する。Bが5at%未満の場合には高い保磁力を得ることができない。一方で、Bが8at%を超えると残留磁束密度が低下する傾向がある。したがって、Bの上限を8at%とする。また、Bはその一部をCで置換してもよい。Cの置換量はBに対して10at%以下とすることが好ましい。
【0025】
本実施形態の原料金属は希土類金属あるいは希土類合金、純鉄、フェロボロン、さらにはこれらの合金等を使用することができる。Al、Cu、Zr、Hf、Tiは単体あるいは合金等を使用することができる。ただし、Al、Cu、Zr、Hf、Tiは原料金属の一部に含有される場合があるため、原料金属の純度レベルを選定し、全体の添加元素含有量が所定の値になるように調整しなければならない。また、製造時に混入する不純物がある場合、その量も加味する必要がある。
【0026】
ここで好ましくは、M(MはAl、Cu、Zr、Hf、Tiの少なくとも1種)の粒界相における単位面積あたりの重量mと、主相粒子表面から30nm粒子内の位置における同じ単位面積あたりの重量nの比n/mが、1/3以上とする。係る範囲とすることで、添加元素の主相粒子内における割合が十分な量となり、特に低い保磁力を得ることができる。この添加元素の主相粒子内における割合は、組成および焼結工程の条件を適切に選択することにより十分に実現できる。
【0027】
以下、本件発明の製造方法の好適な例について説明する。
本実施形態のR−T−B系永久磁石の製造においては、まず、所望の組成を有するR−T−B系磁石が得られるような原料合金を準備する。原料合金は、真空又は不活性ガス、望ましくはAr雰囲気中でストリップキャスト法、その他公知の溶解法により作製することができる。ストリップキャスト法は、原料金属をArガス雰囲気などの非酸化雰囲気中で溶解して得た溶湯を回転するロールの表面に噴出させる。ロールで急冷された溶湯は、薄板または薄片(鱗片)状に急冷凝固される。この急冷凝固された合金は、結晶粒径が1μm〜50μmの均質な組織を有している。原料合金は、ストリップキャスト法に限らず、高周波誘導溶解等の溶解法によって得ることができる。なお、溶解後の偏析を防止するため、例えば水冷銅板に傾注して凝固させることができる。また、還元拡散法によって得られた合金を原料合金として用いることもできる。
【0028】
本発明においてR−T−B系永久磁石を得る場合、原料合金として、1種類の合金から磁石を作成するいわゆるシングル合金法の適用を基本とするが、主相粒子であるR14B結晶を主体とする主相合金(低R合金)と、低R合金よりRを多く含み、粒界の形成に有効に寄与する合金(高R合金)とを用いる所謂混合法を適用することもできる。
【0029】
原料合金は粉砕工程に供される。混合法による場合には、低R合金および高R合金は別々に又は一緒に粉砕される。粉砕工程には、粗粉砕工程と微粉砕工程とがある。まず、原料合金を、粒径数百μm程度になるまで粗粉砕する。粗粉砕は、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用い、不活性ガス雰囲気中にて行なうことが望ましい。粗粉砕に先立って、原料合金に水素を吸蔵させた後に放出させることにより粉砕を行なうことが効果的である。水素放出処理は、希土類焼結磁石として不純物となる水素を減少させることを目的として行われる。水素吸蔵のための加熱保持の温度は、200℃以上、望ましくは350℃以上とする。保持時間は、保持温度との関係、原料合金の厚さ等によって変わるが、少なくとも30分以上、望ましくは1時間以上とする。水素放出処理は、真空中又はArガスフローにて行う。なお、水素吸蔵処理、水素放出処理は必須の処理ではない。この水素粉砕を粗粉砕と位置付けて、機械的な粗粉砕を省略することもできる。
【0030】
粗粉砕工程後、微粉砕工程に移る。微粉砕には主にジェットミルが用いられ、粒径数百μm程度の粗粉砕粉末を、平均粒径2.5μm〜6μm、望ましくは3μm〜5μmとする。ジェットミルは、高圧の不活性ガスを狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により粗粉砕粉末を加速し、粗粉砕粉末同士の衝突やターゲットあるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。
【0031】
微粉砕には湿式粉砕を用いても良い。湿式粉砕にはボールミルや湿式アトライタなどが用いられ、粒径数百μm程度の粗粉砕粉末を、平均粒径1.5μm〜5μm、望ましくは2μm〜4.5μmとする。湿式粉砕では適切な分散媒の選択により、磁石粉が酸素に触れることなく粉砕が進行するため、酸素濃度が低い微粉末が得られる。
【0032】
成形時の潤滑および配向性の向上を目的とした脂肪酸又は脂肪酸の誘導体や炭化水素、例えばステアリン酸系やオレイン酸系であるステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、炭化水素であるパラフィン、ナフタレン等を微粉砕時に0.01wt%〜0.3wt%程度添加することができる。
【0033】
微粉砕粉は磁場中成形に供される。磁場中成形における成形圧力は0.3ton/cm〜3ton/cm(30MPa〜300MPa)の範囲とすればよい。成形圧力は成形開始から終了まで一定であってもよく、漸増または漸減してもよく、あるいは不規則変化してもよい。成形圧力が低いほど配向性は良好となるが、成形圧力が低すぎると成形体の強度が不足してハンドリングに問題が生じるので、この点を考慮して上記範囲から成形圧力を選択する。磁場中成形で得られる成形体の最終的な相対密度は、通常、40%〜60%である。
【0034】
印加する磁場は、960kA/m〜1600kA/m程度とすればよい。印加する磁場は静磁場に限定されず、パルス状の磁場とすることもできる。また、静磁場とパルス状磁場を併用することもできる。
【0035】
成形体は焼結工程に供される。焼結は真空又は不活性ガス雰囲気中にて行われる。焼結保持温度および焼結保持時間は、組成、粉砕方法、平均粒径と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、凡そ1000℃〜1200℃で1分〜20時間であればよいが、10分以下であることが好ましい。一般に行われる焼結保持時間は2時間〜20時間であるが、極端に短くすることによって、主相粒子内における添加元素の濃度が高い状態に保たれ、低保磁力が実現できる。
【0036】
焼結後、得られた焼結体に時効処理を施すことができる。時効処理工程は保磁力を調整するに有効な工程であるが、時効処理工程にて調整可能な保磁力は400kA/m程度であり、Nd−Fe−B系永久磁石の高い保磁力を、時効処理工程のみにて、可変磁束モータ用の可変磁石として好適な保磁力へと減ずることは困難である。すなわち、保磁力の大まかな調整は組成に委ね、時効処理工程は保磁力の微調整程度にとどめることにより、比較的容易な製造工程にて、高残留磁束密度かつ低保磁力を有する、可変磁束モータ用の可変磁石として好適である永久磁石を得ることができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の内容を実施例および比較例を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
主相粒子の組成が(R11−xR214Bとなり、さらに所定の添加元素が添加されるように、希土類元素のメタル、電解鉄、フェロボロン、添加元素を所定量秤量し、ストリップキャスト法にて薄板状のR−T−B合金を作製した。この合金を水素気流中にて攪拌しながら熱処理することにより粗粉末にした後に、潤滑剤としてオレイン酸アミドを添加し、ジェットミルを用いて非酸化雰囲気中にて微粉末(平均粒径3μm)にした。得られた微粉末を金型(開口寸法:20mm×18mm)に充填し、加圧方向と直角方向に磁場(2T)を印加しながら2.0ton/cmの圧力にて1軸加圧成形した。得られた成形体を焼結温度まで昇温し、所定時間保持した後に、室温まで冷却した。ここで、焼結温度における保持時間は1分、10分、30分、150分の4水準とした。また、焼結温度は1090℃、1190℃の2水準とした。次いで、850℃−1時間、530℃−1時間の時効処理を行い、焼結体を得た。
【0039】
ここで、TはFeを選択した。R1、R2および添加元素の種類と量、焼結時間、焼結温度は表1に記載した種々の組合せで作製した。ここで、R2が複数含まれる場合、R2の各元素の数値はR2内での比率を表す。同様に、添加元素が複数含まれる場合、添加元素の各元素の数値は添加元素内での比率を表す。
【表1】
【0040】
作製した試料において、添加元素の分布状態を調べるため断面組成分析を行った。分析は先ず、収束イオンビーム装置を用いて試料の加工を行い、走査透過電子顕微鏡(STEM)を用いて観察した。さらに、エネルギー分散型X線分析(EDS)による元素分析を行った。M(MはAl、Cu、Zr、Hf、Tiの少なくとも1種)の粒界相における単位面積あたりの重量mと、主相粒子表面から30nm粒子内の位置における同じ単位面積あたりの重量nの比n/mを算出することで添加元素の分布を確認した。なお、複数の添加元素を有する場合は、各々の元素のn/mを算出し合計している。EDSのスポット径は2nmとし、主相粒子表面と平行方向に粒界相で50nm、主相粒子内で50nm定量分析し、nとmを算出した。各試料とも同様の測定を5箇所で行い結果は平均とした。尚、本測定よる値のばらつきは±10%未満であり、十分に検出できていると考えられる。結果を表2に示す。
【表2】
【0041】
実施例および比較例から明らかなように、請求項1の組成範囲にあり、さらに焼結保持時間が十分に短い場合には、添加元素の主相粒子内における割合が高くなっていることが分かる。
【0042】
焼結体の磁気特性はBHトレーサーにて測定した。測定はすべて23℃で行った。結果を表3に示す。
【0043】
実施例および比較例から明らかなように、請求項1、2の組成範囲と添加元素分布を有する場合に、高残留磁束密度と低保磁力が達成できていることが分かる。さらに、請求項1の組成範囲と添加元素分布を有する場合に、特に高残留磁束密度と低保磁力が達成できていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明に係るR−T−B系永久磁石は、高い残留磁束密度を具備し、かつ小さな外部磁界により磁力を可逆的に変化させることが可能であるため、民生・産業・輸送機器などの可変速が必要とされる運転において高い効率を得ることができる、可変磁束モータ用の可変磁力磁石として好適である。
【要約】
【課題】高残留磁束密度かつ低保磁力を具備し、小さな外部磁界により磁力を可逆的に変化させることが可能である、可変磁束モータ用の可変磁力磁石として好適なR−T−B系永久磁石を提供すること。
【解決手段】R−T−B系永久磁石における希土類元素Rのうちの所定量をY、La、Ceの1種以上からなる希土類元素を選択し、さらにAl、Cu、Zr、Hf、Tiの少なくとも1種である添加元素を所定量加えることによって、可変磁束モータ用の可変磁石として好適である、高残留磁束密度かつ低保磁力である永久磁石を得ることができる。
【選択図】なし