特許第5729517号(P5729517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5729517
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】反応焼結炭化珪素部材
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/00 20060101AFI20150514BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20150514BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   C04B37/00 A
   H01L21/30 531A
   G03F7/20 521
【請求項の数】19
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-220991(P2014-220991)
(22)【出願日】2014年10月30日
【審査請求日】2014年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2014-68728(P2014-68728)
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】天野 一貴
(72)【発明者】
【氏名】井出 貴之
(72)【発明者】
【氏名】島田 正吾
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−246319(JP,A)
【文献】 特開2008−137830(JP,A)
【文献】 特開2001−261459(JP,A)
【文献】 特表2011−530820(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/133068(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00
G03F 7/20
H01L 21/027
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応焼結炭化珪素を含む第1部材と、
第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、前記第1面と前記第2面とに繋がる第1端面と、を有し反応焼結炭化珪素を含む第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材とを接合する接合部であって、前記第1部材と前記第1端面とを接合し反応焼結炭化珪素からなる中間領域と、前記第1部材と前記第1面と前記中間領域とを接合し反応焼結炭化珪素からなる第1領域と、を含む接合部と、
を備え
前記第1領域における遊離珪素の濃度は、前記中間領域における遊離珪素の濃度よりも高い反応焼結炭化珪素部材。
【請求項2】
前記第1領域は、前記第1部材及び前記第1面と接する面とは異なる第1表面を有し、
前記第1表面は、前記第1面に対して傾斜している請求項1記載の反応焼結炭化珪素部材。
【請求項3】
前記第1表面は、凹状である請求項2記載の反応焼結炭化珪素部材。
【請求項4】
前記第1表面と前記第1面との間の角度は、前記第1表面と前記第1面との間の距離が拡大するにつれて大きくなる請求項3記載の反応焼結炭化珪素部材。
【請求項5】
前記第1表面と前記第1面との間の角度は、前記第1表面と前記第1面との間の距離が拡大するにつれて段階的に大きくなる請求項3記載の反応焼結炭化珪素部材。
【請求項6】
前記接合部は、前記第1部材と前記第2面と前記中間領域とを接合し反応焼結炭化珪素からなる第2領域をさらに含む請求項1〜5のいずれか1つに記載の反応焼結炭化珪素部材。
【請求項7】
前記第2部材は、前記第1面と前記第2面と前記第1端面とに繋がる第1側面を有し、
前記接合部は、前記第1部材と前記第1側面と前記中間領域とを接合し反応焼結炭化珪素をからなる第3領域をさらに含む請求項1〜6のいずれか1つに記載の反応焼結炭化珪素部材。
【請求項8】
前記第2部材は、前記第1面と前記第1端面との間に設けられたコーナー部を有し、
前記第1表面の曲率半径は、前記コーナー部の曲率半径以上である請求項2〜7のいずれか1つに記載の反応焼結炭化珪素部材。
【請求項9】
前記コーナー部の前記曲率半径は、0ミリメートルより大きく、1ミリメートル以下である請求項8記載の反応焼結炭化珪素部材。
【請求項10】
前記第1表面の曲率半径は、1ミリメートル以上10ミリメートル以下である請求項1〜9のいずれか1つに記載の反応焼結炭化珪素部材。
【請求項11】
前記第1面を含む平面と前記第1部材とが交差する位置から、前記第1表面までの最短距離の、前記第1部材と前記第1端面との間の距離に対する比は、0.1以上50以下である請求項2〜10のいずれか1つに記載の反応焼結炭化珪素部材。
【請求項12】
前記第1表面の曲率半径の、前記第2部材の厚さに対する比は、0.1以上1以下である請求項1〜11のいずれか1つに記載の反応焼結炭化珪素部材。
【請求項13】
前記第1部材と前記第2部材との間の距離は、0.1ミリメートル以上1ミリメートル以下である請求項1〜12のいずれか1つに記載の反応焼結炭化珪素部材。
【請求項14】
前記第1領域における遊離珪素の濃度は、前記第1部材における遊離珪素の濃度よりも高い請求項1〜13のいずれか1つに記載の反応焼結炭化珪素部材。
【請求項15】
前記第1部材の前記第2部材と対向する第1主面の表面粗さは、前記第1表面の表面粗さよりも平滑である請求項1〜14のいずれか1つに記載の反応焼結炭化珪素部材。
【請求項16】
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれ長さは、1メートルを超え、
前記第1部材及び前記第2部材は、複雑形状である請求項1〜15のいずれか1つに記載の反応焼結炭化珪素部材。
【請求項17】
EUV露光装置に用いられる請求項1〜16のいずれか1つに記載の反応焼結炭化珪素部材。
【請求項18】
EUV露光装置の測定支持体に用いられる請求項1〜16のいずれか1つに記載の反応焼結炭化珪素部材。
【請求項19】
前記接合部は、所定の形状に作製されSi含浸処理を行い反応焼結させて形成される請求項1〜18のいずれか1つに記載の反応焼結炭化珪素部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の様態は、一般的に、反応焼結炭化珪素部材に関する。
【背景技術】
【0002】
反応焼結炭化珪素部材は、比重が低く、かつヤング率が高い、つまりは比剛性(ヤング/比重)が高いため、その特性を生かして種々の用途に用いることができる。その用途の一例として、半導体露光装置用部材を挙げることができる。以下、一例として、極端紫外線リソグラフィ装置(EUV露光装置)(EUV:Extreme ultraviolet)の光学素子と、そのハウジングを取り囲む測定構造体について説明する。EUV露光装置では、複数の光学素子でEUV光を反射させて基板への露光を行っている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
光学装置(EUV露光装置)は、ビームを伝達することができる複数の光学素子を備えており、更に光学素子のうちの少なくとも1つの光学素子の表面から、ビームが少なくとも1つの光学素子から出射する方向、またはビームが少なくとも1つの光学素子に入射する方向に延在する部分ハウジングを備える(特許文献1)。
【0004】
この場合、少なくとも1つの部分ハウジングは、機械的にまたは機械的且つ熱的にそれぞれ分離された測定構造体(センサフレーム)によって完全にまたは少なくとも部分的に取り囲まれている(特許文献1)。この測定構造体(センサフレーム)には、位置センサ及び/または測定システムが非作動鏡も含めて熱的且つ機械的にまたは動的に安定した様式で、互いに確実に固定されるとともに、システムの基準フレームに確実に固定されている(特許文献1)。光学素子が正確な位置に保持されるかどうかは、測定構造体の安定性に左右される(特許文献1)。
【0005】
光学素子が正確な位置に保持されるかどうかは、測定構造体(センサフレーム)の安定性に左右されるため、機械的特性や熱的特性に高いスペックが求められている。複数の光学素子は、複雑な位置関係で配置されていることから、測定構造体(センサフレーム)が複雑な形状であることは、容易に予想される。加えて、現在普及している露光装置(ArF液浸露光装置等)の大きさが数メートルレベルであることから、EUV露光装置ひいては測定構造体(センサフレーム)も1メートル超の大きさになることが予想される。また、素材として高い剛性を示し、熱膨張係数が小さく良好な熱伝導率を示す軽量建材が適しており、特にファインセラミックス素材があげられている(特許文献1)。しかし、従来のファインセラミックス製法では、1メートルレベルの大型かつ複雑な形状を製作することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2011−530820号公報
【特許文献2】特開2010−171031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、大型かつ複雑な形状のセラミック部材の作製を行うことができる、あるいはパーティクルの発生が抑えられる反応焼結炭化珪素部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、反応焼結炭化珪素を含む第1部材と、第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、前記第1面と前記第2面とに繋がる第1端面と、を有し反応焼結炭化珪素を含む第2部材と、前記第1部材と前記第2部材とを接合する接合部であって、前記第1部材と前記第1端面とを接合し反応焼結炭化珪素からなる中間領域と、前記第1部材と前記第1面と前記中間領域とを接合し反応焼結炭化珪素からなる第1領域と、を含む接合部と、を備え、前記第1領域における遊離珪素の濃度は、前記中間領域における遊離珪素の濃度よりも高い反応焼結炭化珪素部材である。
【0009】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、確実な接合とともに、コーナー形状により洗浄性が増し、パーティクルの発生が抑えられる(コーナー部の洗い残し等が低減される)。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記第1領域は、前記第1部材及び前記第1面と接する面とは異なる第1表面を有し、前記第1表面は、前記第1面に対して傾斜している反応焼結炭化珪素部材である。
【0011】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、確実な接合とともに、コーナー形状により洗浄性が増し、パーティクルの発生が抑えられる(コーナー部の洗い残し等が低減される)。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、前記第1表面は、凹状である反応焼結炭化珪素部材である。
【0013】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、確実な接合とともに、コーナー形状により洗浄性が増し、パーティクルの発生が抑えられる(コーナー部の洗い残し等が低減される)。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0014】
第4の発明は、第3の発明において、前記第1表面と前記第1面との間の角度は、前記第1表面と前記第1面との間の距離が拡大するにつれて大きくなる反応焼結炭化珪素部材である。
【0015】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、確実な接合とともに、コーナー形状により洗浄性が増し、パーティクルの発生が抑えられる(コーナー部の洗い残し等が低減される)。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0016】
第5の発明は、第3の発明において、前記第1表面と前記第1面との間の角度は、前記第1表面と前記第1面との間の距離が拡大するにつれて段階的に大きくなる反応焼結炭化珪素部材である。
【0017】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、確実な接合とともに、コーナー形状により洗浄性が増し、パーティクルの発生が抑えられる(コーナー部の洗い残し等が低減される)。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0018】
第6の発明は、第1〜5のいずれか1つの発明において、前記接合部は、前記第1部材と前記第2面と前記中間領域とを接合し反応焼結炭化珪素からなる第2領域をさらに含む第2領域をさらに含む反応焼結炭化珪素部材である。
【0019】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、確実な接合とともに、コーナー形状により洗浄性が増し、パーティクルの発生が抑えられる(コーナー部の洗い残し等が低減される)。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0020】
第7の発明は、第1〜6のいずれか1つの発明において、前記第2部材は、前記第1面と前記第2面と前記第1端面とに繋がる第1側面を有し、前記接合部は、前記第1部材と前記第1側面と前記中間領域とを接合し反応焼結炭化珪素からなる第3領域をさらに含む反応焼結炭化珪素部材である。
【0021】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、確実な接合とともに、コーナー形状により洗浄性が増し、パーティクルの発生が抑えられる(コーナー部の洗い残し等が低減される)。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0022】
第8の発明は、第2〜7のいずれか1つの発明において、前記第2部材は、前記第1面と前記第1端面との間に設けられたコーナー部を有し、前記第1表面の曲率半径は、前記コーナー部の曲率半径以上である反応焼結炭化珪素部材である。
【0023】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、第2曲率半径を設けることにより、接合与圧による部材チッピングを低減する。上記のチッピングでの破片による接合力不足、接合精度不良の発生をなくす。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0024】
第9の発明は、第8の発明において、前記コーナー部の前記曲率半径は、0ミリメートルより大きく、1ミリメートル以下である反応焼結炭化珪素部材である。
【0025】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、第2曲率半径を設けることにより、接合与圧による部材チッピングを低減する。上記のチッピングでの破片による接合力不足、接合精度不良の発生をなくす。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0026】
第10の発明は、第1〜9のいずれか1つの発明において、前記第1表面の曲率半径は、1ミリメートル以上10ミリメートル以下である反応焼結炭化珪素部材である。
【0027】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、確実な接合とともに、コーナー形状により洗浄性が増し、パーティクルの発生が抑えられる(コーナー部の洗い残し等が低減される)。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0028】
第11の発明は、第2〜10のいずれか1つの発明において、前記第1面を含む平面と前記第1部材とが交差する位置から、前記第1表面までの最短距離の、前記第1部材と前記第1端面との間の距離に対する比は、0.1以上50以下である反応焼結炭化珪素部材である。
【0029】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、確実な接合とともに、コーナー形状により洗浄性が増し、パーティクルの発生が抑えられる(コーナー部の洗い残し等が低減される)。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0030】
第12の発明は、第1〜11のいずれか1つの発明において、前記第1表面の曲率半径の、前記第2部材の厚さに対する比は、0.1以上1以下である反応焼結炭化珪素部材である。
【0031】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、確実な接合とともに、コーナー形状により洗浄性が増し、パーティクルの発生が抑えられる(コーナー部の洗い残し等が低減される)。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0032】
第13の発明は、第1〜12のいずれか1つの発明において、前記第1部材と前記第2部材との間の距離は、0.1ミリメートル以上1ミリメートル以下である反応焼結炭化珪素部材である。
【0033】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、確実な接合とともに、洗浄性の高いコーナー形状を作製しやすくなる。これにより洗浄性が増し、パーティクルの発生が抑えられる(コーナー部の洗い残し等が低減される)。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0034】
第14の発明は、第1〜13のいずれか1つの発明において、前記第1領域における遊離珪素の濃度は、前記第1部材における遊離珪素の濃度よりも高い反応焼結炭化珪素部材である。
【0035】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、確実な接合とともに、コーナー形状により洗浄性が増し、パーティクルの発生が抑えられる(コーナー部の洗い残し等が低減される)。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0038】
15の発明は、第1〜14のいずれか1つの発明において、前記第1部材の前記第2部材と対向する第1主面の表面粗さは、前記第1表面の表面粗さよりも平滑である反応焼結炭化珪素部材である。
【0039】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、めっき等のコーティング塗布性が向上する。
【0040】
16の発明は、第1〜15のいずれか1つの発明において、前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれ長さは、1メートルを超え、前記第1部材及び前記第2部材は、複雑形状である反応焼結炭化珪素部材である。
【0041】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、大型かつ複雑な形状を作製できる。
【0042】
17の発明は、第1〜16のいずれか1つの発明において、EUV露光装置に用いられる反応焼結炭化珪素部材である。
【0043】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、大型かつ複雑な形状を作製できる。
【0044】
18の発明は、第1〜16のいずれか1つの発明において、EUV露光装置の測定支持体に用いられる反応焼結炭化珪素部材である。
【0045】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、大型かつ複雑な形状を作製できる。
第19の発明は、第1〜18のいずれか1つの発明において、前記接合部は、所定の形状に作製されSi含浸処理を行い反応焼結させて形成される反応焼結炭化珪素部材である。
この反応焼結炭化珪素部材によれば、確実な接合とともに、コーナー形状により洗浄性が増し、パーティクルの発生が抑えられる(コーナー部の洗い残し等が低減される)。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。

【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1(a)及び図1(b)は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材を例示する模式図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、反応焼結炭化珪素部材を例示する模式図である。
図3図3(a)〜図3(e)は、反応焼結炭化珪素部材を例示する模式図である。
図4図4(a)〜図4(d)は、反応焼結炭化珪素部材を例示する模式図である。
図5図5(a)〜図5(d)は、反応焼結炭化珪素部材を例示する模式図である。
図6図6(a)〜図6(d)は、反応焼結炭化珪素部材を例示する模式図である。
図7図7(a)〜図7(c)は、反応焼結炭化珪素部材を例示する模式図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、反応焼結炭化珪素部材を例示する模式図である。
図9図9(a)〜図9(c)は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材を例示する模式図である。
図10図10(a)〜図10(c)は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材を例示する模式的断面図である。
図11】実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材を例示する模式的断面図である。
図12】実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材を例示する模式的断面図である。
図13】実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材を例示する模式的断面図である。
図14図14(a)及び図14(b)は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材を例示する模式的断面図である。
図15】実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材を例示する模式的断面図である。
図16図16(a)は、反応焼結炭化珪素部材を例示する模式的斜視図である。図16(b)は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材の特性を例示するグラフである。
図17図17(a)は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材を例示する模式的斜視図である。図17(b)は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材の特性を例示する表である。
図18図18(a)は、反応焼結炭化珪素部材を例示する模式的平面図である。図18(b)及び図18(c)は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材の特性を例示するグラフである。
図19】反応焼結炭化珪素部材の製造方法を例示するフローチャート図である。
図20図20(a)〜図20(c)は、反応焼結炭化珪素部材を例示した模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0048】
図1(a)及び図1(b)は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材を例示する模式図である。
図1(a)は、本実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材の模式的斜視図である。図1(b)は、図1(a)の模式的断面図である。
【0049】
図1(a)に表したように、反応焼結炭化珪素部材110には、第1部材10と、第2部材20と、接合部30と、が設けられる。第1部材10及び第2部材20として、反応焼結炭化珪素(反応焼結SiC)が用いられる。第1部材10は、第1主面10faを有する。第2部材20は、第1面20faと、第2面20fbと、第1端面20sと、を有する。第2面20fbは、第1面20faとは反対側の面である。第1端面20sは、第1面20faと、第2面20fbと、に繋がる。この例では、第1端面20sは、第1主面10faに対して実質的に平行である。実施形態において、第1端面20sの少なくとも一部は、第1主面10faに対して傾斜しても良い。
【0050】
第1部材10から第2部材20に向かう方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向とX軸方向とに対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0051】
この例では、第1部材10の第1主面10faは、X−Y平面に対して平行である。この例では、第1面20fa及び第2面20fbは、Y−Z平面に対して平行である。
【0052】
接合部30は、中間領域33(例えば連結部)と、第1領域31(例えばフィレット部)と、第2領域32(例えばフィレット部)と、を含む。中間領域33、第1領域31及び第2領域32として、反応焼結炭化珪素が用いられる。例えば、中間領域33、第1領域31及び第2領域32に、第1部材10及び第2部材20と同様の反応焼結炭化珪素を用いる。これにより、反応焼結炭化珪素部材110の強度が向上する。
【0053】
中間領域33は、第1部材10と、第1端面20sと、を接合する。第1領域31は、第1部材10と、第1面20faと、中間領域33と、を接合する。第1領域31は、第1部材10及び第1面20faと接する面と、その面とは異なる面(第1表面31r)と、を有する。第1表面31rは、第1部材10及び第1面20faと接しない。第2領域32は、第1部材10と、第2面20fbと、中間領域33と、を接合する。第2領域32は、第1部材10及び第2面20fbと接する面と、その面とは異なる面(第2表面32r)と、を有する。第2表面32rは、第1部材10及び第2面20fbと接しない。
【0054】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、確実な接合とともに、コーナー形状により洗浄性が増し、パーティクルの発生が抑えられる(コーナー部の洗い残し等が低減される)。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0055】
図2(a)及び図2(b)は、反応焼結炭化珪素部材を例示する模式図である。
図2(a)は、光学顕微鏡画像である。図2(b)は、図2(a)の一部を拡大した電子顕微鏡画像である。
【0056】
図2(a)に表した光学顕微鏡画像は、反応焼結炭化珪素部材(第1部材10、第2部材20及び中間領域33)を示している。反応焼結炭化珪素部材には、第1のSiC粒子71a(粗粒子原料)と、第2のSiC粒子71b(微粒子原料)と、反応焼結SiC71cと、Si金属75(遊離珪素)と、が存在する。反応焼結SiC71cは、SiC粒子の周りに100ナノメートル(nm)程度の厚さで形成される。
【0057】
中間領域33(接合層)においては、Si金属75の量が、第1部材10(接合部)及び第2部材20(接合部)よりも多い。Si金属75は、網目状に連続している。これにより、中間領域33が緻密になる。
【0058】
図3(a)〜図3(e)、図4(a)〜図4(d)、図5(a)〜図5(d)、図6(a)〜図6(d)、図7(a)〜図7(c)、図8(a)及び図8(b)は、反応焼結炭化珪素部材を例示する模式図である。
図3(b)、図3(c)、図3(d)及び図3(e)は、反応焼結炭化珪素部材のレーザ顕微鏡画像である。
【0059】
図4(b)〜図4(d)、図5(b)〜図5(d)、図6(b)〜図6(d)、図7(a)〜図7(c)及び図8(b)は、光学顕微鏡画像であり、倍率が異なる。それぞれの光学顕微鏡画像に対応する位置が、図3(a)、図4(a)、図5(a)、図6(a)及び図8(a)の模式的断面図に示されている。
【0060】
図6(b)及び図6(c)から分かるように、第2領域32に含まれるSi金属75の量は、第1部材10および第2部材20のそれぞれに含まれるSi金属75の量よりも多い。すなわち、第2領域32における遊離珪素(Si金属75)の濃度は、第1部材10および第2部材20のそれぞれにおける遊離珪素(Si金属75)の濃度よりも高い。第2領域32に含まれるSi金属75の量は、中間領域33に含まれるSi金属75の量よりも高い。すなわち、第2領域32における遊離珪素(Si金属75)の濃度は、中間領域33における遊離珪素(Si金属75)の濃度よりも高い。これらの点については、遊離珪素の濃度の測定方法の例とともに後述する。
【0061】
図6(b)及び図6(c)から分かるように、中間領域33における炭化珪素71の配向率は、第2領域32における炭化珪素71の配向率よりも高い。図6(b)から分かるように、中間領域33における炭化珪素71の配向率は、第1部材10における炭化珪素71の配向率よりも高い。
【0062】
以下に、遊離珪素の濃度の測定方法の例について説明する。
まず、サンプルの表面をレーザ顕微鏡を用いて撮像する。レーザ顕微鏡は、この例では、島津製作所製の共焦点レーザ顕微鏡OLS4100を用いた。撮像範囲(観察範囲)は、250μm×250μmである。倍率は、1000倍である。
図7(a)〜図7(c)は、撮像された画像の例である。図7(a)は、第1部材10の拡大図であり、図7(b)は、第1領域31の拡大図であり、図7(c)は、中間領域33である。
図7(a)〜図7(c)に示すように、撮像された画像は、例えば、モノクロ画像である。撮像された画像において、遊離珪素(Si金属75)部の輝度は、その他の部分の輝度と比較して高い。そのため、撮像された画像に対して画像解析を行うことで、高輝度部分を遊離珪素部として、その他の部分から分離することができる。
【0063】
次に、撮像された画像に対して画像解析を行う。この例では、画像解析に三谷商事製のWinROOF(Ver.6.5.1)を用いた。WinROOFを用いた画像解析は、例えば、以下のようにする。撮像されたモノクロ画像を自動2値化(バレー法)により、遊離珪素部と、その他の部分と、に分離する。そして、WinROOFのコマンドを実行することで、視野面積に対する遊離珪素部の面積率を算出する。
【0064】
以上により、第1部材10、第1領域31、中間領域33のそれぞれにおける遊離珪素の濃度を求める。
【0065】
第1部材10、第1領域31、および中間領域33のそれぞれについて、複数の箇所における遊離珪素の濃度を求め、求めた遊離珪素の濃度を平均化した。その結果、遊離珪素の濃度は、第1部材10において26.2%であり、第1領域31において28.6%であり、中間領域33において27.2%であった。
このように、第1領域31(第2領域32)における遊離珪素の濃度は、第1部材10(第2部材20)における遊離珪素の濃度よりも高い。
また、第1領域31(第2領域32)における遊離珪素の濃度は、中間領域33における遊離珪素の濃度よりも高い。
【0066】
遊離珪素の濃度の好ましい範囲は、以下のとおりである。すなわち、第1部材10(第2部材20)遊離珪素の濃度は、18%以上、34%以下であることが好ましい。第1領域31(第2領域32)における遊離珪素の濃度は、20%以上、36%以下であることが好ましい。中間領域33における遊離珪素の濃度は、19%以上、35%以下であることが好ましい。
【0067】
図9(a)〜図9(c)は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材を例示する模式図である。
図9(a)に表したように、反応焼結炭化珪素部材110aにおいては、接合部30において、第1領域31と、中間領域33と、が設けられている。
【0068】
図9(b)に表したように、反応焼結炭化珪素部材110bにおいては、第1領域31の第1表面31rは、例えば、第2部材20の第1面20faに対して傾斜している。第2領域32の第2表面32rは、第2部材20の第2面20fbに対して傾斜している。
【0069】
図9(c)に表したように、接合部30は、第3領域34をさらに有する。第3領域34は、第2部材20の側面、及び、第1部材10と接している。すなわち、第2部材20は、第1側面20fcをさらに有する。第1側面20fcは、第1面20faと、第2面20fbと、第1端面20sと、に繋がる。第3領域34は、第1部材10と、第1側面20fcと、中間領域33と、を接合する。第3領域34は、反応焼結炭化珪素を含む。第3領域34には、例えば、第1領域31と同様の構成及び材料が提供できる。
【0070】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、確実な接合とともに、コーナー形状により洗浄性が増し、パーティクルの発生が抑えられる(コーナー部の洗い残し等が低減される)。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0071】
図10(a)〜図10(c)は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材を例示する模式的断面図である。
図10(a)に表したように、反応焼結炭化珪素部材110cにおいて、第1領域31のZ軸方向の長さは、第1領域31のX軸方向の長さと同等である。
図10(b)に表したように、反応焼結炭化珪素部材110dにおいて、第1領域31のZ軸方向の長さは、第1領域31のX軸方向の長さよりも長い。
図10(c)に表したように、反応焼結炭化珪素部材110eにおいて、第1領域31のZ軸方向の長さは、第1領域31のX軸方向の長さよりも短い。
【0072】
図11は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材を例示する模式的断面図である。
図11に表したように、反応焼結炭化珪素部材110fにおいて、第1領域31の第1表面31rは、凹状の曲面である。
【0073】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、確実な接合とともに、コーナー形状により洗浄性が増し、パーティクルの発生が抑えられる(コーナー部の洗い残し等が低減される)。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0074】
図12は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材を例示する模式的断面図である。
図12に表したように、反応焼結炭化珪素部材110gにおいて、第1表面31rと、第1面20faと、の間の角度θは、第1表面31rと第1面20faとの間の距離が長くなると大きくなる。
【0075】
図13は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材を例示する模式的断面図である。
図13に表したように、反応焼結炭化珪素部材110hにおいて、第1表面31rと第1面20faとの間の角度θは、段階的に変化する。
【0076】
図14(a)及び図14(b)は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材を例示する模式的断面図である。
図14(a)に表したように、第1領域31の第1表面31rの曲率半径を、第1曲率半径R1とする。第2部材20は、第1面20faと、第1端面20sと、の間にコーナー部を有する。このコーナー部の曲率半径を、第2曲率半径R2とする。
【0077】
反応焼結炭化珪素部材110iにおいては、第1曲率半径R1は、例えば、第2曲率半径R2以上である。第1曲率半径R1は、例えば、1ミリメートル(mm)以上10mm以下である。第1曲率半径R1が3mm以上5mm以下であることが、より好ましい。第2曲率半径R2は、例えば、0mmより大きく、1mm以下である。第2曲率半径R2が0.2mm以上0.5mm以下であることが、より好ましい。第2曲率半径R2が1mmを超えると、例えば、中間領域33の接合力が低下する。第2曲率半径R2が過度に長いと、第2部材20のコーナー部を精度良く形成することが困難になる。
【0078】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、第2曲率半径を設けることにより、接合与圧による部材チッピングを低減する。上記のチッピングでの破片による接合力不足、接合精度不良の発生をなくす。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0079】
反応焼結炭化珪素部材110iにおいて、例えば、第2曲率半径R2を設けることにより、接合与圧による部材チッピングが低減できる。例えば、チッピングの破片による接合力不足や接合精度不良の発生が抑制できる。
【0080】
第2部材20において、第1面20faから第2面20fbまでの間の距離を、第2部材20の第2部材厚さ20tとする。第1曲率半径R1の、第2部材厚さ20tに対する比は、例えば、0.1以上1以下である。
【0081】
図14(b)に表したように、反応焼結炭化珪素部材110jにおいて、例えば、第2部材20の第1面20faと、第1端面20sと、の間に、コーナー部がある。コーナー部は、C面でも良い。このとき、コーナー部の、第1端面20sを含む平面に対する角度は、約45度である。例えば、コーナー部がC面であるとき、コーナー部の両端を通過する円の半径を第2曲率半径R2として用いても良い。このとき、この第2曲率半径R2が、上記の条件を満たしても良い。
【0082】
図15は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材を例示する模式的断面図である。
図15に表したように、第1部材10と、第1端面20sと、の間の距離を、中間領域33の中間領域厚さ33tとする。第1面20faを含む平面と、第1部材10と、が交差する点を第1基準点10pとする。第1基準点10pから第1表面31rまでの最短の距離を第1領域31の第1領域厚さ31tとする。
【0083】
反応焼結炭化珪素部材110kにおいて、中間領域厚さ33tは、例えば、0.1mm以上1mm以下である。第1領域厚さ31tの中間領域厚さ33tに対する比は、例えば、0.1以上50以下である。第1領域厚さ31tの中間領域厚さ33tに対する比が0.1未満のときは、例えば、中間領域33の強度が低下する。第1領域厚さ31tの中間領域厚さ33tに対する比が50を超えると、例えば、第1領域31にクラック等が発生し易くなる。
【0084】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、確実な接合とともに、洗浄性の高いコーナー形状を作製しやすくなる。これにより洗浄性が増し、パーティクルの発生が抑えられる(コーナー部の洗い残し等が低減される)。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0085】
図16(a)は、反応焼結炭化珪素部材を例示する模式的斜視図である。図16(b)は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材の特性を例示するグラフである。
これらの図は、反応焼結炭化珪素部材の強度に関する実験結果を例示している。図16(a)は、試料を例示する模式図である。図16(b)は、反応焼結炭化珪素部材の特性を例示するグラフである。
【0086】
図16(a)に表したように、反応焼結炭化珪素部材の試料300は、部材310と、部材320と、接合部330と、を有する。部材310は、部材端面310sを有する。部材320は、部材端面320sを有する。接合部330は、部材端面310sと部材端面320sとを接合する。部材端面310sと部材端面320sとの間の距離(接合部330の厚さ)を厚さtとする。
【0087】
試料300において、3点曲げ強度(JIS R 1601)が測定される。3点曲げ強度の測定においては、接合部330が中心となるようにして加重を加えて、試料300の3点曲げ強度を測定する。この実験では、接合部330の厚さtを変えている。
【0088】
図16(b)の横軸は、厚さtである。縦軸は、3点曲げ強度Eである。厚さtが、200マイクロメートル(μm)以上800μm未満のときは、強度Eが高い。厚さtが800μm以上になると、強度Eが急激に低下する。
【0089】
厚さtは、例えば、0.1mm以上1mm以下であることが望ましい。0.2mm以上0.7mm以下がより好ましい。部材端面310sと端面320sとの間の接合部330には着肉層が形成される。この接合部330の着肉層の厚さは少なくとも0.1mm以上になるため、反応焼結炭化珪素部材において0.1mm未満の厚さtの作製は困難である。接合部330の厚さtが1mmを超えると、接合部330に形成する接合剤(接着剤)の収縮挙動(例えば乾燥収縮、硬化収縮、焼成収縮等)により、接合部330に空孔や隙間が発生する。これにより、反応焼結炭化珪素の強度や信頼性が低下する。
【0090】
図17(a)は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材を例示する模式的斜視図である。図17(b)は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材の特性を例示する表である。
これらの図は、部材の表面粗さの測定結果を例示している。図17(a)は、本実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材を例示する模式図である。図17(b)は、反応焼結炭化珪素部材の特性を例示する表である。図17(a)は、図17(b)に示した表面粗さRaの測定位置を示している。
【0091】
図17(b)に表したように、第1主面10faの表面粗さRaは、第1表面31rの表面粗さRaよりも平滑である。
【0092】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、めっき等のコーティング塗布性が向上する。
【0093】
図18(a)は、反応焼結炭化珪素部材を例示する模式的平面図である。図18(b)及び図18(c)は、実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材の特性を例示するグラフである。
これらの図は、第1領域31の第1表面31rの曲率半径(第1曲率半径R1)を変えたときの応力(曲げ応力)についての実験結果を例示している。
図18(a)は、反応焼結炭化珪素部材を例示する模式図である。図18(b)及び図18(b)は、反応焼結炭化珪素部材の特性を例示するグラフ図である。
【0094】
曲げ応力の測定においては、第1部材10を完全拘束し、第2部材20のコーナー部20pに−Z軸方向へ98Nの荷重を加える。
【0095】
図18(b)の横軸は、第1曲率半径R1である。縦軸は、安全率である。図18(b)に表したように、第1曲率半径R1が1mm以上のときに、安全率は1.5よりも大きくなる。
【0096】
図18(c)の横軸は、第1曲率半径R1の第2部材厚さ20tに対する比(R1/20t)である。縦軸は、安全率である。図18(c)に表したように、第1曲率半径R1の、第2部材厚さ20tに対する比(R1/20t)が0.1以上のときに、安全率は1.5よりも大きくなる。
【0097】
図19は、反応焼結炭化珪素部材の製造方法を例示するフローチャート図である。
ステップS110は、反応焼結炭化珪素部材の成形及び乾燥を実施する。
【0098】
ステップS120は、形成及び乾燥された反応焼結炭化珪素部材の仮焼成を実施する。仮焼成は、反応焼結炭化珪素部材に含まれるバインダー等の不純物を除去する。これにより、後述する本焼時の反応焼結炭化珪素部材に含まれるSi酸化等を防ぐ。
【0099】
ステップS130は、仮焼成された反応焼結炭化珪素部材の仮焼成体加工を実施する。
【0100】
ステップS140は、仮焼成体加工された反応焼結炭化珪素部材の接合を実施する。接合は、反応焼結炭化珪素部材の一体成形不可の複雑箇所や、本体同士をSi接合する。
【0101】
ステップS150は、接合された反応焼結炭化珪素部材の本焼(含浸)を実施する。本焼(含浸)は、真空中かつ1400℃以上1800℃以下で反応焼結炭化珪素部材のSi含浸を行い、反応焼結させる。同時に接合も完了する。
【0102】
ステップS160は、本焼(含浸)された反応焼結炭化珪素部材のサンドブラストを実施する。サンドブラストは、反応焼結炭化珪素部材の表面に付着したSiを除去する。
【0103】
ステップS170は、サンドブラストを実施した反応焼結炭化珪素部材の仕上げ加工を実施する。仕上げ加工は、反応焼結炭化珪素部材を研削で精度面の最終仕上げを行う。これにより、反応焼結炭化珪素部材が形成される。
【0104】
図20(a)〜図20(c)は、反応焼結炭化珪素部材を例示した模式斜視図である。 図20(a)に表したように、反応焼結炭化珪素部材は、例えば、凸状である。
【0105】
図20(b)に表したように、反応焼結炭化珪素部材は、例えば、複雑形状一体成形品を形成する。この場合、全体の大きさは、幅が320mm、横が250mm、高さが30mm、リブの厚さは3mmである。
【0106】
図20(c)に表したように、反応焼結炭化珪素部材は、例えば、反応焼結接合により接合品を形成する。
【0107】
実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材は、例えば、露光装置(例えばEUV露光装置の測定支持体)に応用することができる。
【0108】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、確実な接合とともに、コーナー形状により洗浄性が増し、パーティクルの発生が抑えられる(コーナー部の洗い残し等が低減される)。コーナー部の清掃性(ふきあげなど)が向上する。ひいては部材組立時のパーティクルの発生が減少する。
【0109】
この反応焼結炭化珪素部材によれば、大型かつ複雑な形状を作製できる。
【0110】
実施形態に係る反応焼結炭化珪素部材として、例えば、セラミックス部材1は、セラミックス部材2とセラミックス部材3を連結部4を介して接合されている構造である。セラミックス部材2と3の接合部にはフィレット部5が施されている。2個のセラミックスを接着した複合部材1を示しているが、セラミックス部材1を構成するセラミックス部材は2個に限られるものではなく、3個以上であってもよい。セラミックス部材2、3は反応焼結炭化珪素焼結体。第1および第2のセラミックス部材2、3は、連結部4およびフィレット部5と同じ反応焼結炭化珪素焼結体を適用することによって、セラミックス複合部材1の強度を高めることができる。
【0111】
連結部4およびフィレット部5はSiC粒子の隙間に遊離Si相を網目状に連続して存在させた基本組織を有している。Si相中には微粒SiC粒子を含むことで更に強度を高めることができる。
【0112】
接合部4およびフィレット部5は、少なくとも炭化珪素粉末と樹脂とを含有する接着剤部位に熱処理(樹脂を熱分解して炭素化するための熱処理)を施した後、溶融シリコン(Si)を含浸して反応焼結させることで得ることができる。接着剤層は炭素粉末を含有していてもよい。
【0113】
〔粒子と強度〕
SiC粒子に制限は無いが、SiC粒子が大きくなると微構造組織が不均質になったり、遊離Si領域が大きくなるため強度低下を引き起こすことが特許文献1に記載されている。また、非特許文献にはSiC粒子径0.2μmと23.65μmの原料を用いて作製した反応焼結炭化珪素の強度を評価し、微細な粒子を用いたほうが強度が高くなることを示していることから、SiC粒子は小さいほうが好ましい。さらに、粗大粒子と微細粒子を配合させることでSiC粒子の充填を上げることで、遊離Si層を小さくし、強度を向上させる手法も選定できる。
【0114】
〔Si相と強度〕
SiC粒子の隙間に遊離Si相が網目状のネットワーク構造で存在している。遊離Si相は連続したネットワーク構造を有することが重要である。
【0115】
参考文献1には以下のことが開示されている。SiC粒子の隙間に遊離Si相6を連続して存在させることによって、緻密な接合部4を得ることができる。さらに、連結部4の気孔率は5%以下であることが好ましい。連結部4の気孔率が5%を超えると、連結部4ひいてはセラミックス部材1の強度のバラツキが大きくなる。また、遊離Si相の平均径が小さく、遊離Si相が微細化、均質に分布していることで強度を再現性よく高めることが可能となることが開示されている。
【0116】
本発明の接合部4は樹脂を含有する接合剤より形成されるものであり、接着後の保形性を発現するため、5vol%以上好ましくは20vol%以上の樹脂が必要である。このため、Siを含浸するまでの加熱の過程で収縮・炭化をするため、接合部4の空隙は大きくなる。このことから、接合部4はセラミックス部材2および3よりSiを多く含む構造となる。フィレット部も接着部と同様にセラミックス部材3および3よりSiを多く含む構造となる。これより、接合部4はセラミックス部材2および3にSiを含浸して得られる焼成体より強度が低くなることが、参考文献1からも容易に想定される。フィレット部5は接合部の接合強度を補うことで材料の強度および信頼性を向上する。
【0117】
〔接合厚み〕
連結部4の厚さは、平均厚さとして0.1mm以上1mm以下の範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.2mm以上0.7mm以下の範囲である。平均厚さが0.1mm未満の接合部4は接着時にセラミックス部材2および3と接合部界面に接着剤の着肉層が形成されるため、製造プロセスの観点から作製が困難である。連結部4の平均厚さが1mmを超えると、接合部4に形成した接着剤の乾燥収縮、効果収縮、焼成収縮などの収縮挙動により、セラミックス部材2および3との界面部や接合部内部に空孔や隙間が発生し、強度の低下要因となり、セラミックス部材1の強度や信頼性が低下する。
【0118】
〔接合部構造〕
接合部4は均質な構造を有していることが好ましい。また、接合部4を形成する粒子配合はセラミックス部材2および3を形成する粒子配合とすることが好ましい。接合部4を形成する粒子配合はセラミックス部材2および3を形成する粒子配合とすることで、セラミックス部材2および3と接合部4との界面での粒子充填割合が近似することで密着性が向上し、焼成前における接着強度やSi含浸焼成後の接着強度が向上することが想定される。これによりセラミックス複合部材1の信頼性や強度を向上させることが可能となる。さらにフィレット部5も接合部4と同様に均質な組織およびセラミックス部材2および3と同様の粒子配合で構成することで、セラミックス複合部材1の信頼性や強度をさらに向上させることが可能となる。
【0119】
〔接合部強度〕
この実施形態のセラミックス部材1は、セラミックス部材2、3間を接合する接合部4の微構造をセラミックス部材2、3に近似することで形成している。具体的には、接合部4を構成するSiC粒子の平均粒径および配合比率を制御している。炭素原料の添加がある場合はその平均粒子径および配合比率を制御している。さらに接着時の樹脂量および溶媒量を制御することよって、接合部4の強度の信頼性を高めることができる。接合部4は3点曲げ強度が150〜400MPaであり、Si量を多く含むため、セラミックス部材2および3の強度より若干低い強度特性を有する。接合部4の3点曲げ強度とは、接合部が中心となるようにして部材1の3点曲げ強度を測定した値を示すものである。
【0120】
〔用途〕
セラミックス部材1は、半導体製造装置用治具、ヒートシンクやダミーウエハ等の半導体関連部品、高温構造部材、メカニカルシール部材、ブレーキ用部材、摺動部品、ミラー部品、ポンプ部品、熱交換器部品等の装置部品や装置部材に応用することができる。特に、高真空下で低発塵を必要とする装置部品や部材に好適に用いられるものである。
【0121】
〔製造方法〕
本発明のセラミックス部材の製造方法ついて説明する。本発明のセラミックス部材1は、少なくとも一方が炭化珪素粉末と炭素粉末とを含む成形体もしくは仮焼体もしくは反応焼結体のいずれか段階で接合する。 セラミックス被接合体を2個以上用意する。これらセラミックス被接合体としては、炭化珪素と炭素とを分散剤を用いて水などの溶媒に分散させたスラリーにバインダーを結合剤として添加したスラリーを石膏に流し込む鋳込み成形で得た成形体やこれを不活性雰囲気または真空中で仮焼した仮焼体が用いられる。成形体は鋳込み成形物に限らず、上記スラリー組成物を顆粒状にし、メカプレスもしくはCIP成形した成形体およびそれらの仮焼体の利用が可能であり、押し出し成形、射出成形、ゲルキャスト成形など成形方法は問わない。
【0122】
セラミックス被接合体の接着面は、未加工面でも問題は無いが、接合の信頼性を高めるため加工を施し、平坦な面を形成しておくことが好ましい。密着力を向上させるために表面粗さは大きいほうが好ましい。表面粗さの増加は、溶融Siを含浸して形成される接合部とセラミックス被接合体との密着性、さらにはこれらの接合強度を高めることができる。
【0123】
次に、セラミックス被接合体を炭化珪素粉末と樹脂とを含有する接着剤で接着する。接合後、同一の接合剤を用いて、フィレット部を形成する。接合剤には炭素粉末を含有していてもよい。炭化珪素および炭素の粒子径および配合比率はセラミックス被接合体を作製と同一調合条件が好ましい。これにより、界面での組織構造が近似し、密着力が向上することが想定される。接合剤は製造工程上、塗り広げる工程を選定することが好ましく、溶媒などで希釈して、任意の粘度に調整できる。粘度を調整する溶媒に制限はなく、水、アルコールなど任意に選択できる。接合剤は接合剤層としてセラミックス被接合体の間に存在するとともに、フィレット部に存在する。接合剤の粘着成分となる樹脂は、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0124】
接合剤中に含有させる炭化珪素粉末は0.1〜100μmの範囲の平均粒径を有することが好ましい。炭化珪素粉末の平均粒径が0.1μm未満であると分散状態が不均一になりやすく、SiC粒子や遊離Si相の分布状態が不均一になる。炭化珪素粉末の平均粒径が100μmを超えると遊離Si相のサイズが大きくなり、接合部4の強度を十分に高めることができないおそれがある。
【0125】
炭素粉末は0.01〜20μmの範囲の平均粒径を有することが好ましい。炭素粉末の平均粒径が0.01μm未満であると凝集しやすく、接合剤の調合が不安定になり、さらに接合部4におけるSiC粒子や遊離Si相の分布状態が不均一になる。本発明においては、0.01〜0.08μmの微細な炭素粉末を高分散させることで信頼性の高い接着を達成している。炭素粉末の平均粒径が20μmを超える場合について、文献1によるとチョーキング現象が発生しやすくなり、接合部強度が低下するおそれがあり、さらに、遊離Si相6の平均径が大きくなって、連結部4の強度低下やバラツキを招くことが開示されており、好ましくないことが想定される。
【0126】
接合剤は炭化珪素粉末と炭素粉末および樹脂に由来する炭素成分との合計量に対して、炭化珪素粉末を50〜95質量%の範囲で含有することが好ましい。炭化珪素粉末と炭素粉末および樹脂に由来する炭素成分との重量比(C/SiC)を20重量%以下の範囲とすることが好ましい。炭素粉末を原料として必ずしも添加する必要はないが、炭素成分は存在したほうが好ましく、樹脂より炭化する炭素成分があるため炭素粉末を添加しない場合においても、若干量の炭素は存在する。炭素成分が20重量%を超えると、炭素がSiと反応し、SiC化した際に生じる体積膨張の影響を受け、強度を十分に発現させることができないことが想定される。このような接合剤でセラミックス被接合体を接合した後、フィレット部を形成する。
【0127】
次いで、接合したセラミックス被接合体と接合剤層およびフィレット部に熱処理を施して炭化して多孔質部とする。すなわち、樹脂を熱分解して炭素化すると共に、接着後の乾燥時に生成した空隙とで多孔質化する。多孔質部はSiの浸透部として機能するものである。接合剤層を多孔質化するための熱処理は、真空中または不活性ガス雰囲気中にて300℃〜2000℃の範囲の温度で実施することが好ましい。
【0128】
多孔質部の気孔率は一般的な反応焼結体で利用される気孔率の範囲で選定できる。溶融Siの供給経路を確保するため、20%を超える範囲が好ましい。Siの供給経路が確保されない場合、接合部の残留炭素量が増大した構造となる。多孔質部の気孔率が80%を超えると遊離Si相の量が増大する。これらはいずれも接合部の強度の低下要因となる。
次に、セラミックス被接合体と接合部とフィレット部の多孔質体をSiの融点以上の温度に加熱し、この加熱状態の多孔体に対して溶融Siを含浸する。1400℃以上の温度に加熱し、真空中または不活性雰囲気中で溶融Siを含浸する。このような溶融Siの含浸で、多孔質体を反応焼結させて接合部を有するセラミックス接合体を形成する。多孔質を形成させる加熱工程は含浸工程と同時に実施が可能であり、1400℃までの昇温過程で樹脂を炭化させ、多孔質体を得、そのまま加熱昇温を行うことで反応焼結させ、セラミックス接合体をえることもできる。
【0129】
多孔質部に存在する樹脂に由来する炭素成分や炭素粉末は、高温下で溶融Siと接触して反応し、炭化珪素を生成する。出発原料の炭化珪素粉末は、ほとんど変化しないが、一部上記反応焼結で生成するSiC成分が出発原料の炭化珪素粉末を被覆した構造をとることができる。炭素自身がSiCとなれば、粒径の小さいSiC粒子が形成される。さらに、これらSiC粒子の隙間には、Siが遊離Siとしてネットワーク状に連続して存在する。
【0130】
上述したような接合工程を適用することによって、反応焼結炭化珪素からなる接合部とフィレット部を有する2個以上のセラミックス被接合体の接合体が得られる。
【0131】
平均粒径約20〜100μmと0.1〜1μmの2種類の粗粒SiC原料と微粒SiC原料を用意し、これらが高密度充填となる範囲で配合した。高密度充填は粗粒7に対し微粒3を基本とし、出発原料の粒子径の選定条件により調整を行い配合量を決定した。SiC原料の総量に対して5〜15重量%の炭素粉末を用意した。水に分散剤と用意したSiC粉末と炭素粉末を添加し、ボールミルで混合した後、アクリルバインダーを1〜10重量%添加し、鋳込み用原料とし、脱泡処理してから鋳込み成形により成形体を得た。得られた成形体は脱型後、乾燥させた。鋳込み型に流し込めるような粘度とするように添加する水分量を調整した。必要に応じて消泡剤を添加して脱泡工程をアシストした。得られた成形体は1600〜2000℃の温度範囲で仮焼を行い、セラミックス被接合体とした。必要に応じて接合面を機械加工し、接合面を形成した。セラミックス被接合体は仮焼体だけでなく、成形後の乾燥体や反応焼結体も利用できる。セラミックス被接合体を接合する必要数準備し、接合面を加工等により作製した。接合面は加工屑や切り粉などの除去作業を実施しておいた。
【0132】
接合剤は上記SiC粉末と炭素粉末と同じ原料および配合割合で準備し、これに溶媒と分散剤を加え混合し、スラリーとした。必要に応じて消泡剤を添加した。また界面での濡れ性向上を促すため、界面活性剤を数%添加してもよい。混合工程はプロペラ撹拌、ボールミル、遠心混合など様々な混合方法が利用できる。混合後したスラリーにエポキシ樹脂を5〜30%添加した。溶媒が水である場合は、水なじみのよいエマルジョンタイプのものを選定した。樹脂を添加した接合剤はよく撹拌した後、脱泡処理を行った。接合作業およびフィレット形成作業に適した粘性を有するように調整するため、水分量を調整して調合を行った。
【0133】
得られた接合剤をあらかじめ用意したセラミックス被接合体の接合箇所表面に塗布し、他方のセラミックス被接合体の接合箇所を押し当て接合を行った。接合圧力に制限は無いが、押し圧により接合厚みを調整するため、必要な厚みを形成するまで加圧した。接合厚みは押し圧のほか接合剤の粘性で調整が可能である。粘性の低いものは薄く、粘性の高いものは厚い接合部を形成できる。必要な接合厚みを形成するため、あらかじめ粘性と押し圧から形成される接合厚みの条件を見出して必要条件を選定して接合部を形成した。
【0134】
形成した接合部は乾燥および樹脂の硬化処理を行ったのち、フィレット部を形成した。フィレット部の形成は、接合時に用いたものと同じ接合剤を利用し、フィレット形成部分に必要量塗布し、へらなどのアシストを利用してフィレット部の必要形状を作製した。得られたフィレット部付き接合部材は乾燥および樹脂の硬化作業を行った。
【0135】
十分に硬化した接合部材は不活性雰囲気で300℃以上の加熱により炭化処理した後、真空下1700℃で仮焼を行った後、1400〜1800℃の温度範囲でSi含浸処理を行い、反応焼結SiCとした。表面に付着した余剰Siはサンドプラストや機械加工により除去を行った。
【0136】
実施形態によれば、大型かつ複雑な形状のセラミック部材の作製を行うことができる、あるいはパーティクルの発生が抑えられる反応焼結炭化珪素部材を提供することができる。
【0137】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0138】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、反応焼結炭化珪素、部材及び接合部などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0139】
その他、本発明の実施の形態として上述した反応焼結炭化珪素を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての反応焼結炭化珪素も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0140】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0141】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0142】
10…第1部材、 10fa…第1主面、 10p…第1基準点、 20…第2部材、 20fa…第1面、 20fb…第2面、 20fc…第1側面、 20p…コーナー部、 20s…第1端面、 20t…第2部材厚さ、 30…接合部、 31…第1領域、 31r…第1表面、 31t…第1領域厚さ、 32…第2領域、 32r…第2表面、 33…中間領域、 33t…中間領域厚さ、 34…第3領域、 71…炭化珪素、 71a…第1のSiC粒子、 71b…第2のSiC粒子、 71c…反応焼結SIC、 75…Si金属、 110、110a〜110k…反応焼結炭化珪素部材、 300…試料、 310、320…部材、 310s、320s…部材端面、 330…接合部、 E…強度、 R1…第1曲率半径、 R2…第2曲率半径、 Ra…表面粗さ、 t…厚さ、 θ…角度
【要約】
【課題】大型かつ複雑な形状のセラミック部材の作製を行うことができる、あるいはパーティクルの発生が抑えられる反応焼結炭化珪素部材を提供することを目的とする。
【解決手段】反応焼結炭化珪素を含む第1部材と、第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、前記第1面と前記第2面とに繋がる第1端面と、を有し反応焼結炭化珪素を含む第2部材と、前記第1部材と前記第2部材とを接合する接合部であって、前記第1部材と前記第1端面とを接合し反応焼結炭化珪素を含む中間領域と、前記第1部材と前記第1面と前記中間領域とを接合し反応焼結炭化珪素を含む第1領域と、を含む接合部と、を備えた反応焼結炭化珪素部材が提供される。
【選択図】図1
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