(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。
【0016】
なお、以下の説明において、商品選択スイッチの正面側を前面部、背面側を背面部といい、商品選択スイッチを正面からみて上下及び左右という。また、複数の商品選択スイッチのそれぞれの形状、構造及び作動等は同一である。そのため、1つの商品選択スイッチのみについて説明し、他の商品選択スイッチについての説明は省略する。
【0017】
(自動販売機の全体構成)
図1において、全体を示す符号1は、各種の飲料を販売する自動販売機の一例を例示している。この自動販売機1は、上下方向に長い直方型の筐体からなる販売機本体2を備えている。
【0018】
この販売機本体2は、
図1に示すように、前方に開口する箱体2aと、その箱体2aの前方開口部を開閉する扉体2bとにより構成されている。この扉体2bの前面上部は、前面パネル3を備えている。前面パネル3の材質は、例えば透明なアクリル板等の樹脂材料からなる。
【0019】
この扉体2bの前面下部には、
図1に示すように、紙幣を挿入・排出する紙幣入出口4と、硬貨を投入する硬貨投入口5と、紙幣又は硬貨を返却する返却レバー6とが配設されている。
【0020】
この扉体2bの前面下部には更に、
図1に示すように、釣銭切れ表示や挿入された紙幣又は投入された硬貨の金額の表示を行う金額表示器7と、釣銭を返却する釣銭返却口8と、商品を取り出す商品取出口9と、扉体2bの開閉をロックするドアロック10とが配設されている。なお、符号11は、広告スペースである。
【0021】
この前面パネル3の背面部には、
図1に示すように、金属板材からなる背面パネル12が配設されている。前面パネル3の背面部及び背面パネル12の間に形成された空間は、商品見本展示室とされている。この商品見本展示室には、下方及び前方に開口した展示筐体を有する商品見本展示台が上段、中断、及び下段の三段一列に設置されている。
【0022】
この商品見本展示台には、
図1に示すように、展示用物品である10個の商品見本13,…,13が一列に陳列されている。商品見本展示台の材質は、例えば透明なアクリル板等の樹脂材からなる。この商品見本13に対応して上段、中断、及び下段の三段一列には、商品選択スイッチ20(以下単に、「スイッチ20」という。)が配設されている。
【0023】
上記のように構成された自動販売機1の全体構成は、スイッチ20が前面パネル3の前面部に組み込まれた従来の販売機本体2と同様の仕様を有する自動販売機の一構成例を示している。従って、その形状や構造などは、特に、図示例に限定されるものではない。
【0024】
(商品選択スイッチの外観構成)
この実施の形態に係る特徴部を構成するスイッチ20の外観は、
図2(a)及び(b)に示すように、左右に長い平面矩形状のベース21と、そのベース21に取り付けられる平面矩形状のケース22と、そのケース22の前面部に貫通して形成された楕円形状の押釦孔22aを介してプッシュ操作可能に支持された押釦23との三つの部材により主に構成されている。
【0025】
このスイッチ20は、
図2(a)及び(b)に示すように、ケース22の前面部に複数の押釦23,…,23を左右一列に配列したスイッチユニットとして構成されている。このケース22には、商品見本13のそれぞれに対応付けられて複数の押釦孔22a,…,22aが穿設されている。
【0026】
このベース21及びケース22は、例えばアクリル系樹脂あるいはポリカーボネイト系樹脂などの着色された樹脂で形成されている。一方、押釦23は、例えば操作面24がレンズ状に形成されたアクリル系樹脂あるいはポリカーボネイト系樹脂などの透光性樹脂材料により形成されている。
【0027】
このベース21は、販売機本体2の背面パネル12に着脱可能に取り付けられる。ベース21の背面部には、
図2(b)及び
図3に示すように、販売機本体2の前面パネル3に締付固定するための筒状の取付ボス21aが隣り合う押釦23の中間に対応して突設されている。この取付ボス21aは、背面パネル12に穿設された図示しない固定用孔に嵌挿され、図示しないネジにより締付固定される。
【0028】
このベース21の背面部には更に、
図2(b)及び
図3に示すように、背面部側に開口した筒状のコネクタ取付ボス21bが取付ボス21aの中心と同一直線上に突設されている。このコネクタ取付ボス21bには、入出力用のピン端子25aを有するコネクタ25が押釦23のそれぞれに対応付けられて取り付けられている。このコネクタ25は、販売機本体2の図示しない中央制御部に接続された外部コネクタと電気的に接続される。
【0029】
このケース22は、
図2(b)及び
図3に示すように、ベース21に固着一体化されている。このベース21に対するケース22の結合には、ケース22を液密かつ気密に固着する構造であればよく、接着材や溶着による結合方法が採用されている。
【0030】
一方、押釦23は、
図3、
図4(a)及び(b)に示すように、楕円の湾曲面形状をなす上板部23aと、上板部23aの外周縁から背面側に延びる環状の側板部23bと、側板部23bの外周縁から水平に張り出した環状の鍔部23cとを有しており、背面側に開口したキャップ形状に形成されている。
【0031】
この押釦23は、
図3に示すように、ケース22の押釦孔22aの背面側開口縁部である周辺部22bに鍔部23cを接離可能に当接した状態で配置されており、操作面24を押し操作自在に露出させている。
【0032】
(商品選択スイッチの内部構成)
このベース21とケース22とを互いに組み付けることで形成された内部空間には、
図3に示すように、ベース21の前面部に搭載された回路基板26が収容されている。この回路基板26の前面部には、押釦23の押し操作により作動するスイッチ素子であるタクトスイッチ27が搭載されるとともに、販売機本体2の稼動状態等を表す表示部を照光する光源である発光ダイオード(チップLED)28や図示しないチップ抵抗などの実装部品が搭載されている。
【0033】
この回路基板26の背面部には、
図3に示すように、ベース21のコネクタ取付ボス21bに嵌め込まれたコネクタ25のピン端子25aが実装されている。図示例では、ピン端子25aが回路基板26の実装面に対して直交する方向から相手側コネクタが結合される垂直取付型のコネクタであるトップ型コネクタが採用されている。
【0034】
このケース22の押釦孔22aには、
図3に示すように、回路基板26を液密に覆う弾性カバー29により押釦23が弾性的に支持されている。この弾性カバー29は、例えばシリコーンゴムなどの弾性変形可能な筒状部材により構成されている。
【0035】
この弾性カバー29は、
図3に示すように、押釦作動体として押釦23の内周面に組み付ける周面部29aと、周面部29aの先端周縁部から斜め外方に張り出した環状のスカート部29bと、スカート部29bの先端周縁部から水平に張り出した環状の座部29cとを有している。
【0036】
この弾性カバー29には、
図3に示すように、柱状のスイッチ作動部29dがタクトスイッチ27に対向して突設されている。このタクトスイッチ27は、押釦23の押し操作ストロークに応じた弾性カバー29のスカート部29bの弾性変形に伴いスイッチ作動部29dを押し下げることでオン操作される。一方、押釦23の押し操作を解除したとき弾性カバー29のスカート部29bの弾性復帰力をもってスイッチ作動部29dを押し上げることで、タクトスイッチ27がオフ操作される。
【0037】
ところで、押釦23の中心O
2は、
図3及び
図4(a)に示すように、回路基板26のピン端子25aの実装領域に対向して配置されている。そのため、タクトスイッチ27やスイッチ作動部29dの配置位置がピン端子25aによって制限される。
【0038】
そこで、この実施の形態に係るスイッチ20は、
図3及び
図4(a)に示すように、押釦23の中心O
2を通る上下方向直線上の上部位置にタクトスイッチ27及びスイッチ作動部29dの中心O
1を配置しており、ケース22の押釦孔22aがタクトスイッチ27の中心O
1から偏心方向に延びた構成となっている。
【0039】
一方、押釦孔22aの中心O
2は、
図3及び
図4(a)に示すように、ピン端子25aの実装領域に合わせた押釦23の中心O
2と一致している。この押釦23は、タクトスイッチ27の中心O
1から偏心方向の上端部までの距離L
1が短い第1の操作面24aと、タクトスイッチ27の中心O
1から反対側の下端部までの距離L
2が長い第2の操作面24bとを有している。
【0040】
(操作規制部の構成)
上記のように構成されたスイッチ20によれば、テコの原理により、第1の操作面24aの上端部又は第2の操作面24bの下端部が支点となり、第2の操作面24b又は第1の操作面24aが力点となり、操作面24が回路基板26に対して傾きながら押し込まれるスイッチ作動部29dが作用点となる。
【0041】
タクトスイッチ27の中心O
1から近い位置に配置された第1の操作面24aでは、タクトスイッチ27の中心O
1から遠い位置に配置された第2の操作面24bよりもタクトスイッチ27の作動距離が短くなることから、タクトスイッチ27に大きな押し操作力が加わり易い。第1の操作面24aをタクトスイッチ27の作動距離だけ押し込むことは困難であり、ストローク範囲よりも大きなオーバーストロークによりタクトスイッチ27を破損してしまう場合がある。
【0042】
一方、タクトスイッチ27の中心O
1から遠い位置に配置された第2の操作面24bでは、タクトスイッチ27の中心O
1から近い位置に配置された第1の操作面24aよりもタクトスイッチ27の作動距離が長くなることから、タクトスイッチ27に対する押しストロークが不足し易い。スイッチ作動部29dによりタクトスイッチ27が押し込まれる前に、第2の操作面24b側の鍔部23cが弾性カバー29の対向面に当接して動かなくなり、スイッチング作用が生じない場合がある。
【0043】
従って、第1の操作面24aの押し操作による押しストローク範囲を越えないように押しストロークS
1を確保するとともに、第2の操作面24bの押し操作による押しストローク範囲が不足しないように押しストロークS
2を確保することが肝要である。
【0044】
この実施の形態に係るスイッチ20の最も主要な特徴部は、
図3及び
図4(a)に示すように、タクトスイッチ27の中心O
1から偏心方向の距離L
1が短い第1の操作面24aの押しストローク領域と、タクトスイッチ27の中心O
1から偏心方向の距離が長い第2の操作面24bの押しストローク領域とに操作規制部を備えることにある。
【0045】
第1の操作面24aの押しストローク領域と第2の操作面24bの押しストローク領域とにおいて、スイッチ作動部29dが弾性カバー29を弾性変形させる位置と、スイッチ作動部29dが弾性カバー29の弾性力に抗してタクトスイッチ27をオンさせた位置との間の押釦23の押しストロークが規制される。
【0046】
この操作規制部の代表的な一例としては、押釦23の鍔部23cによって操作規制部が構成される。この鍔部23cの背面側となる底面は、
図4(a)及び
図5に示すように、第1の操作面24a側から第2の操作面24b側に向けて前方へ傾斜するテーパ面23dとされている。
【0047】
このテーパ面23dを介して第2の操作面24b側の鍔部23cは、
図3に示すように、弾性カバー29の座部29cに対して第1の操作面24a側の鍔部23cよりも高い位置に設定されている。この高低差は、特に規定するものではないが、約0.5mm程度に設定されている。
【0048】
この押釦23の第1の操作面24a側における鍔部23cは、鍔部の底面が同一水平面上に形成された従来の押釦の鍔部よりも弾性カバー29の座部29cに対する高さを高く設定している。第1の操作面24aの押し操作による押しストローク範囲を越えない所定の距離となる押しストロークS
1が確保されており、スイッチ作動部29dがタクトスイッチ27をオンさせたときに加わる力が規制されている。
【0049】
一方、押釦23の第2の操作面24b側における鍔部23cは、弾性カバー29の座部29cに対する高さを第1の操作面24a側の鍔部23cよりも高く設定している。第2の操作面24bの押し操作による押しストローク範囲が不足しない所定の距離となる押しストロークS
2が確保されており、スイッチ作動部29dがタクトスイッチ27をオンさせたときに加わる力が規制されている。
【0050】
スイッチ作動部29dが弾性カバー29を弾性変形させる位置と、スイッチ作動部29dが弾性カバー29の弾性力に抗してタクトスイッチ27をオンさせた位置との間には所定の距離が確保されることから、押釦23のいずれの方向にある操作面24を押しても、タクトスイッチ27に大きな押し操作力が加わることを規制することが可能となる。
【0051】
この操作規制部としては、タクトスイッチ27の操作力や操作ストロークなどの特性、弾性カバー29の材料、形状やサイズなどの特性、並びにタクトスイッチ27及び弾性カバー29の設置部位などを適切に設定することで最適なストローク規制機能が得られる。
【0052】
[操作規制部の他の構成]
押釦23の第1の操作面24aと第2の操作面24bとの押しストローク領域に備えられていれば、操作規制部の配置位置は限定されるものではない。操作規制部の他の一例としては、例えばケース22の押釦孔22aの周辺部22bに操作規制部を設定することができる。
【0053】
押釦23の第1の操作面24aに対応する鍔部23cに当接する押釦孔22aの周辺部22b側を第2の操作面24bに対応する鍔部23cに当接する押釦孔22aの周辺部22b側に向けて前方へ傾斜するテーパ面を形成する構成であっても構わない。
【0054】
第1の操作面24aの鍔部23cと第2の操作面24bの鍔部23cとのそれぞれの前面は、押釦孔22aの周辺部22bのテーパ面と合致するテーパ状に形成される。これにより、第1の操作面24aと第2の操作面24bとの押し操作による押しストロークS
1,S
2に差を持たせることができる。
【0055】
(実施の形態の効果)
以上のように構成された実施の形態に係るスイッチ20は、上記効果に加えて、次の効果が得られる。
【0056】
(1)既存のスイッチ構成部品以外の格別な部材を用いることなく、簡単な構成をもって操作規制機能が効果的に得られる。
(2)既存のスイッチ構成部品以外の格別な操作規制部材を不要としていることから、操作規制部材を設けるための体格の増大を抑制することができるようになり、スイッチ20の構造や形態に阻害されることもない。
(3)タクトスイッチ27やスイッチ作動部29dの配置位置が回路基板26のピン端子25aの実装領域によって制限されない。
(4)タクトスイッチ27及びスイッチ作動部29dの配置位置が回路基板26のピン端子25aの実装領域によって制限されないことから、スイッチ20のデザインの自由度を向上させることができる。
【0057】
[他の変形例]
以上より、本発明に係るスイッチ20の代表的な構成例を実施の形態、変形例、及び図示例を挙げて説明したが、上記実施の形態、変形例、及び図示例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。本発明の技術思想の範囲内において種々の構成が可能であり、例えば次に示すような他の変形例も可能である。
【0058】
上記実施の形態及び図示例では、押釦23の中心O
2がタクトスイッチ27の中心O
1を通る上下方向直線上の下部位置に配置した構成を例示したが、これに限定されるものではない。押釦23の中心O
2がタクトスイッチ27の中心O
1を通る上下方向直線上の上部位置に配置した構成、及び押釦23の中心O
2がタクトスイッチ27の中心O
1を通る左右方向直線上の左部位置又は右部位置に配置した構成にも適用することができることは勿論である。
【0059】
上記実施の形態及び図示例による弾性カバー29に代えて、例えば押釦23の背面部及び回路基板26の間にコイルバネを配置してもよい。
【0060】
上記実施の形態及び図示例では、弾性カバー29に突出形成されたスイッチ作動部29dを例示したが、押釦23の背面部に突出形成されたスイッチ作動部によりタクトスイッチ27を作動させる構成を採用することもできる。
【0061】
たばこ等のパッケージ商品、缶又はペットボトル等に充填した飲料商品などの各種の自動販売機に効果的に適用することができることは勿論である。
【0062】
以上の説明からも明らかなように、本発明に係る代表的な実施の形態、変形例及び図示例を例示したが、上記実施の形態、変形例及び図示例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。従って、上記実施の形態、変形例及び図示例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。