特許第5729596号(P5729596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダイヘンの特許一覧

<>
  • 特許5729596-地上設置型変圧器装置 図000002
  • 特許5729596-地上設置型変圧器装置 図000003
  • 特許5729596-地上設置型変圧器装置 図000004
  • 特許5729596-地上設置型変圧器装置 図000005
  • 特許5729596-地上設置型変圧器装置 図000006
  • 特許5729596-地上設置型変圧器装置 図000007
  • 特許5729596-地上設置型変圧器装置 図000008
  • 特許5729596-地上設置型変圧器装置 図000009
  • 特許5729596-地上設置型変圧器装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5729596
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】地上設置型変圧器装置
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/56 20060101AFI20150514BHJP
   H02B 1/28 20060101ALI20150514BHJP
   H01F 27/02 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   H02B1/12 A
   H02B1/12 G
   H01F27/02 Z
   H01F27/02 D
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-56193(P2011-56193)
(22)【出願日】2011年3月15日
(65)【公開番号】特開2012-195997(P2012-195997A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2014年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】板野 泰直
【審査官】 岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−080910(JP,U)
【文献】 特開2002−010416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00− 1/38
H02B 1/54− 7/08
H01F 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器を含む電気機器を外箱内に収容した構造を有して、前記外箱の外壁に設けられた換気口にルーバーが取り付けられた地上設置型変圧器装置において、
前記ルーバーは、前記換気口を塞ぐように配置される主板部と前記換気口の周縁部に取り付けられる取付部とを有する金属板からなっていて上下方向に並ぶ複数の横長の通気口が前記主板部を貫通して設けられるとともに、該複数の通気口のそれぞれの下側の縁部に基端部が一体化された状態で前記主板部の表面側から裏面側に斜め上方に突出した複数の横長の羽板が前記複数の通気口のそれぞれの内側に設けられた第1及び第2のルーバーエレメントを備え、
前記第1のルーバーエレメント及び第2のルーバーエレメントは、それぞれの主板部の表面を前記外箱の外側及び内側に向け、かつそれぞれの羽板どうしを対向させた状態で配置されて、該第1及び第2のルーバーエレメントの取付部が前記換気口の周縁部に取り付けられ、
前記第1及び第2のルーバーエレメントのそれぞれの羽板は、上下方向に相対的に位置をずらした状態で設けられていて、前記第1のルーバーエレメントの隣り合う羽板の間に形成された各隙間が前記第2のルーバーエレメントの何れかの羽板により前記外箱内に収容された機器から隠されるように、前記第1及び第2のルーバーエレメントの羽の位置ずらし量と両ルーバーエレメントの羽板の大きさとが設定されていること、
を特徴とする地上設置型変圧器装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のルーバーエレメントの各羽板は、それぞれのルーバーエレメントを構成する金属板の一部をカットすることにより形成された横長のU字形の切り込みの内側の部分を斜めに折り曲げることにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の地上設置型変圧器装置。
【請求項3】
前記換気口は四角形の輪郭形状を有するように形成され、
前記第1のルーバーエレメントは、前記主板部を構成する四角形の底板部と該底板部の4辺から同じ側に直角に突出した4つの側板部とを有して4つの側板部の底板部と反対側の端部が開口端となっている箱状の本体部と、該本体部の開口端に形成されて前記取付け部を構成する外鍔部とを有して、前記複数の通気口と羽板とが、各羽板を前記本体部の内側に位置させた状態で前記底板部に形成され、
前記第2のルーバーエレメントは、4辺に沿う周縁部が前記取付け部を構成し、該取付け部により囲まれた領域が前記主板部となっている四角形の板からなっていて、前記主板部に前記複数の通気口と羽板とが形成され、
前記第1のルーバーエレメントの底板部の外面が前記第1のルーバーエレメントの主板部の表面となっていて、前記第1のルーバーエレメントが、その底板部の外面を前記外箱の外側に向けた状態で配置され、
前記第2のルーバーエレメントは、その羽板を前記第1のルーバーエレメントの羽板と対向させ、その取付部を前記第1のルーバーエレメントの取付部を構成する外鍔部に重ね合わせた状態で配置され、
前記第1のルーバーエレメントの外鍔部と第2のルーバーエレメントの取付部とがネジで共締めされて前記換気口の周縁部に締結されている請求項1または2に記載の地上設置型変圧器装置。
【請求項4】
前記換気口の下部に、前記第2のルーバーエレメントに沿って流下した雨水を受ける雨受け部材が取り付けられ、
前記第2のルーバーエレメントの下部には、前記雨受け部材内に溜まった水を前記第1のルーバーエレメント内に排出するための排出口が形成され、
前記第1のルーバーエレメントの本体部の下端側に設けられた側板には、前記第1のルーバーエレメント内に流入した水を下方に落下させる水抜き孔が形成されていること、
を特徴とする請求項3に記載の地上設置型変圧器装置。
【請求項5】
前記第1のルーバーエレメントの外面側に、該第1のルーバーエレメントの通気孔全体を塞ぐ閉止蓋を着脱可能に取り付ける閉止蓋取付け具が取り付けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の地上設置型変圧器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩道上等に設置される地上設置型変圧器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地上設置型変圧器装置は、外箱内に配電用変圧器を含む電気機器を収容した構造を有するもので、通常は歩道の路肩等に設置される。外箱内に収容された変圧器は、運転に伴って熱を生じるため、外箱の外壁には外箱内の熱気を外部に排出し、外部の冷気を外箱内に流入させるための換気口が設けられる。通行人が換気口を通して外箱内の機器に手を触れたり、換気口を通して外箱内に異物が挿入されたりするのを防止するため、換気口には、ルーバー(ガラリとも呼ばれる。)が取り付けられる。
【0003】
図7及び図8は、地上設置型変圧器装置に広く用いられているルーバー1を示している。このルーバーは、四角形状の金属板2からなっていて、該金属板を貫通させて上下方向に沿って並ぶ複数の横長の通気口3,3,…(図8参照)が形成され、これらの通気口3,3,…をそれぞれ隠すように、通気口3,3,…にそれぞれ対応する複数の羽板4,4,…が形成されている。
【0004】
各羽板4は、対応する通気口3の上下の縁部3a,3bの内の上側の縁部3aに基端部を一体化した状態で設けられていて、金属板2の一面から斜め下方に突出するように折曲げ成形されている。
【0005】
図示のルーバー1は、その金属板2の周辺部を、図示しない地上設置型変圧器装置の外箱の外壁に設けられた四角形の通気口の周辺部に当接させた状態で配置されて、外箱の外壁にネジ止めされる。
【0006】
図7及び図8に示したルーバー1は、比較的大きな物が外箱内に侵入するのを防ぐ機能は有するが、図5に示したように、隣り合う羽板4,4の間の隙間を通して棒5のような細い異物が挿入された場合には、その異物が外箱内に侵入するのを阻止することができない。従って、上記のようなルーバが換気口に取り付けられた地上設置型変圧器装置を歩道上に設置した場合、隣り合う羽板4,4の間の隙間を通して棒5等の異物を外箱内に差し込むいたずらがされて、感電事故が発生したり、地絡事故が発生したりするおそれがある。異物の挿入を不可能にするために、ルーバーに設ける通気口を十分に小さくすることが考えられるが、異物の侵入を不可能にする程度まで通気口を小さくすると、外箱内の換気を効率よく行うことができなくなるため、外箱内の温度が上昇し、変圧器装置の運転に支障を来す。
【0007】
そこで、特許文献1に示されているように、山形の断面形状を有する羽板を備えたルーバーが提案された。特許文献1に示された換気口は、図9に示されているように、外側に配置される傾斜板4a′と内側に配置される傾斜板4b′とを有する多数の山形の(逆V字形の)羽板4′を上下方向に並べて配置して、これらの羽板を連結支持部材6により連結した構造を有している。このルーバー1′によれば、隣り合う山形の羽板相互間の位置関係を適宜に設定することにより、外箱内への異物の挿入を阻止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−274523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図9に示されたルーバー1′は、多数の山形の羽板4′を上下に並べて連結した構造を有するため、羽板の製作に手間がかかるだででなく、ルーバーの構造が複雑になるという問題があった。また、山形の羽板4′と連結部材6とを連結するために溶接が必要になるため、ルーバーの製造に手間がかかり、その製造コストが高くなるのを避けられなかった。
【0010】
本発明の目的は、コストの上昇を伴うことなく、外箱内への異物の挿入を確実に防ぐ機能をルーバーに持たせることができるようにした地上設置型変圧器装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、変圧器を含む電気機器を外箱内に収容した構造を有して、外箱の外壁に設けられた換気口にルーバーが取り付けられた地上設置型変圧器装置を対象とする。
【0012】
本発明においては、上記ルーバーが、換気口を塞ぐように配置される主板部と換気口の周縁部に取り付けられる取付部とを有する金属板からなっていて上下方向に並ぶ複数の横長の通気口が主板部を貫通して設けられるとともに、該複数の通気口のそれぞれの下側の縁部に基端部が一体化された状態で主板部の表面側から裏面側に斜め上方に突出した複数の横長の羽板が複数の通気口のそれぞれの内側に設けられた第1及び第2のルーバーエレメントを備えている。
【0013】
第1のルーバーエレメント及び第2のルーバーエレメントは、それぞれの主板部の表面を外箱の外側及び内側に向け、かつそれぞれの羽板どうしを対向させた状態で配置されて、該第1及び第2のルーバーエレメントの取付部が換気口の周縁部に取り付けられる。第1及び第2のルーバーエレメントのそれぞれの羽板は、上下方向に相対的に位置をずらした状態で設けられていて、第1のルーバーエレメントの隣り合う羽板の間に形成された各隙間が第2のルーバーエレメントの何れかの羽板により外箱内に収容された機器から隠されるように、第1及び第2のルーバーエレメントの羽の位置ずらし量と両ルーバーエレメントの羽板の大きさとが設定されている。
【0014】
上記のように構成すると、第1のルーバーエレメントの隣り合う羽板の間に形成された各隙間が、内側に配置された第2のルーバーエレメントの羽板により外箱内の機器から隠されるため、第1のルーバーエレメントの羽板の間の隙間を通して外箱内に棒などの異物が挿入されるのを防ぐことができ、地上設置型変圧器装置の異物の侵入に対する保護等級を向上させることができる。
【0015】
また上記のように構成しておくと、雨が降ったときに、外箱内に向けて斜め上方に突出した状態で設けられている第1のルーバーエレメントの各羽板が雨を受けて外側に流すので、通気口を通して外箱内に雨が侵入するのを抑制することができ、水の侵入に対する保護等級を向上させることができる。
【0016】
上記の各ルーバーエレメントは、金属板に羽板を一体に形成しただけの簡単な構造を有するため、低コストで製作することができる。従って本発明によれば、コストの上昇を伴うことなく、地上設置型変圧器装置の外箱に異物の侵入を阻止する機能を持たせて地上設置型変圧器装置の保護等級を向上させることができる。
【0017】
上記第1及び第2のルーバーエレメントの各羽板は、それぞれのルーバーエレメントを構成する金属板の一部をカットすることにより形成された横長のU字形の切り込みの内側の部分を斜めに折り曲げることにより形成されたものとすることができる。
【0018】
上記のように羽板を設けると、各ルーバーエレメントをプレス加工により簡単に製造することができるため、各ルーバーエレメントを低コストで製造することができる。
【0019】
本発明の好ましい態様では、上記換気口が四角形の輪郭形状を有するように形成される。第1のルーバーエレメントは、主板部を構成する四角形の底板部と該底板部の4辺から同じ側に直角に突出した4つの側板部とを有して4つの側板部の底板部と反対側の端部が開口端となっている箱状の本体部と、該本体部の開口端に形成された外鍔部とを有して、複数の通気口と羽板とが、各羽板を本体部の内側に位置させた状態で底板部に形成されている。この第1のルーバーエレメントにおいては、本体部の開口端に形成された外鍔部が取付部を構成している。また第2のルーバーエレメントは、4辺に沿う周縁部が取付け部を構成し、該取付け部により囲まれた領域が主板部となっている四角形の板からなっていて、主板部に複数の通気口と羽板とが形成されている。このように構成される場合、第1のルーバーエレメントの底板部の外面が第1のルーバーエレメントの主板部の表面となって、第1のルーバーエレメントが、その底板部の外面を外箱の外側に向けた状態で配置される。また第2のルーバーエレメントは、その羽板を第1のルーバーエレメントの羽板と対向させ、その取付部を第1のルーバーエレメントの外鍔部に重ね合わせた状態で配置され、第1のルーバーエレメントの外鍔部と第2のルーバーエレメントの取付部とがネジで共締めされて換気口の周縁部に締結される。
【0020】
上記のように構成する場合、前記換気口の下部に、第2のルーバーエレメントに沿って流下した雨水を受ける雨受け部材を取り付け、第2のルーバーエレメントの下部に、雨受け部材内に溜まった水を第1のルーバーエレメント内に排出する排出口を形成するとともに、第1のルーバーエレメントの本体部の下端側に設けられた側板に、第1のルーバーエレメント内に流入した水を下方に落下させる水抜き孔を形成するのが好ましい。
【0021】
上記のように構成しておくと、第2のルーバーエレメントの内側に侵入した雨水を、雨受け部材で受けて、第2のルーバーエレメントの下部に設けられた排出口と第1のルーバーエレメントの下部に設けられた水抜き孔とを通して外部に排出することができるため、ルーバーを通して侵入した雨水が外箱内に流れるのを防ぐことができ、水の侵入に対する保護等級を更に向上させることができる。
【0022】
本発明の好ましい態様では、第1のルーバーエレメントの外面側に、該第1のルーバーエレメントの通気孔全体を塞ぐ閉止蓋を着脱可能に取り付ける閉止蓋取付け具が取り付けられる。
【0023】
上記のように第1のルーバーエレメントの外面側に、第1のルーバーエレメントの通気孔全体を塞ぐ閉止蓋を着脱可能に取り付ける閉止蓋取付け具を取り付けておくと、必要に応じて第1のルーバーエレメントに閉止蓋を取り付けて、外箱を塵や砂埃の侵入を防ぐ防塵構造に簡単に改造することができ、塵や砂埃の侵入に対する保護等級を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、外箱の換気口に取り付けるルーバーを、表面から裏面側に斜め上方に突出した複数の羽板を有する第1及び第2のルーバーエレメントにより構成して、第1及び第2のルーバーエレメントの主板部の表面をそれぞれ外箱の外側及び内側に向けるとともに、それぞれの羽板どうしを対向させ、かつ両ルーバーエレメントの羽板を上下に相対的にずらして設けることにより、外側に配置される第1のルーバーエレメントの羽板の間の各隙間を第2のルーバーエレメントの羽板により外箱内の電気機器から隠す構造としたので、ルーバーの構造を複雑にすることなく、外箱内に棒等の異物が挿入されるおそれを無くして、異物の挿入に対する保護等級を向上させることができる。
【0025】
また本発明によれば、雨が降ったときに、外箱の内側に向って斜め上方に傾斜している第1のルーバーエレメントの各羽板により、ルーバーに当った雨を外側に流すことができるため、ルーバーの通気口を通して外箱内に雨が侵入するのを抑制して、水の侵入に対する保護等級を向上させることができる。
【0026】
本発明によれば、金属板を貫通した各通気口の縁部から羽板を突出させただけの簡単な構造を有するルーバーエレメントにより、異物の侵入を阻止する機能を有するルーバーを構成するので、コストの上昇を招くことなく、異物の侵入に対する保護等級を向上させた地上設置型変圧器装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係わる地上設置型変圧器装置の外観を示す斜視図である。
図2】同実施形態において変圧器装置の外箱に設けられる換気口と、該換気口に取り付けられるルーバーとを示した分解斜視図である。
図3】(A)は同実施形態で用いるルーバーを構成する第1のルーバーエレメントの正面図、(B)及び(C)はそれぞれ、(A)の右側面図及び底面図、(D)は、同実施形態で用いるルーバーエレメントに羽板を形成する方法を説明する説明図である。
図4】(A)は第1のルーバーエレメントを図3(A)に示されたIV−IV線に沿って断面して示した拡大断面図、(B)は第1のルーバーエレメントとともにルーバーを構成する第2のルーバーエレメントの断面図である。
図5】(A)は第1のルーバーエレメントと第2のルーバーエレメントとを換気口に取り付けてルーバーを構成した状態を示した断面図、(B)は(A)のルーバー内に異物が挿入された際の状態を示した拡大断面図である。
図6】第1のルーバーエレメントの外側に閉止蓋取り付け具を取り付けた状態を示した断面図である。
図7】(A)は従来の地上設置型変圧器装置で用いられていたルーバーを示した正面図、(B)は(A)のB′−B′線に沿って断面して示した断面図である。
図8図7に示されたルーバーに異物を挿入した状態を示した拡大断面図である。
図9】従来の地上設置型変圧器装置で用いられていた他のルーバーを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1ないし図6を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係わる地上設置型変圧器装置の外観を示したもので、同図において、10は幅方向に相対する一対の側壁10a,10bと、長手方向に相対する側壁10c,10dと、天井壁10eとからなる外壁と、ベース10fとを備えた直方体状の外箱である。外箱10の外壁は鋼板等の金属板からなっていて、その内部には、配電用変圧器とその付属機器とを含む電気機器が収容されている。外箱10の一つの側壁10aには、4個の四角形の換気口11,11,…が、上下左右に並べて形成されている。また側壁10aに隣接する他の一つの側壁10cには、同じく四角形に形成された他の2つの換気口11(図示せず。)が上下に並べて形成されている。各換気口11は、外箱10内に収容された変圧器の側方に位置するように設けられ、各換気口には、外箱内の電気機器を隠した状態で外箱内の換気を行わせるために、ルーバー20が取り付けられている。外箱10と、その内部に収容された電気機器とにより地上設置型変圧器装置30が構成されている。
【0029】
外箱10の天井壁10eには、4つの吊り金具取付け用のボルト孔10gが形成され、これらのボルト孔10gに、変圧器装置を運搬する際に用いる吊り金具を取り付けることができるようになっている。変圧器装置を設置した後は、各ボルト孔10gにボルトがねじ込まれて、このボルトにより各ボルト孔10gが閉じられる。
【0030】
図2に示されているように、本実施形態の変圧器装置で用いるルーバー20は、第1のルーバーエレメント21と、第2のルーバーエレメント22とからなっている。第1のルーバーエレメント21及び第2のルーバーエレメント22は、換気口11を塞ぐように配置される主板部21a及び22aと、換気口11の周縁部に取り付けられる取付部21b及び22bとを有する金属板からなっている。第1のルーバーエレメント21及び第2のルーバーエレメント22のそれぞれの主板部21a及び22aには、上下方向に並ぶ複数の横長の通気口が、それぞれの主板部21a及び22aを板厚方向に貫通した状態で設けられ、主板部21a及び22aにそれぞれ設けられた複数の通気口のそれぞれの内側には、それぞれの通気口の下側の縁部に基端部が一体化された状態で主板部21a及び22aのそれぞれの表面側から裏面側に斜め上方に突出した複数の横長の羽板が設けられている。本実施形態で用いる第1のルーバーエレメント22には、上下方向に並ぶ複数の通気口の列が、横方向に複数個並ぶように設けられている。
【0031】
更に詳細に説明すると、第1のルーバーエレメント21は、図3に示されたように、四角形の輪郭形状を有する底板部23aと底板部23aの4辺から同じ側に直角に突出した4つの側板部23bないし23eとを有して、側板部23bないし23eの底板部23aと反対側の端部側に開口部が形成された箱状の本体部23と、本体部23の開口部に形成された外鍔部24とを有している。この第1のルーバーエレメントにおいては、底板部23aにより主板部21aが構成されて該底板部23aの外面が主板部の表面となっており、底板部23aの内面が主板部の裏面となっている。また外鍔部24により取付部21bが構成されている。
【0032】
図4(A)及び図5(B)に示されているように、本体部23の底板部(主板部)23aには、同形状同寸法を有する複数の横長の長方形の通気口25,25,…が、上下方向に等ピッチ間隔で並べて形成され、複数の通気口25,25,…のそれぞれの内側には、複数の通気口25,25,…のそれぞれの下側の縁部に基端部26a,26a,…が一体化された状態で底板部(主板部)23aの表面側から裏面側に(本体部23の内側に)斜め上方に突出した複数の横長の羽板26,26,…が形成されている。通気口25及び羽板26は、図3(D)に示したように、底板部23aを構成する金属板の一部をレーザ加工などによりカットすることにより形成された横長のU字形の切り込み27の内側の部分28を斜めに折り曲げることにより形成される。
【0033】
図3(C)に示されているように、第1のルーバーエレメント21を換気口に取付けた際に最下端に位置する側板部23bを貫通させて、第1のルーバーエレメント内に流入した水を下方に落下させる水抜き孔30が形成されている。第1のルーバーエレメントの取付け部(外鍔部)21bには、該エレメントを換気口に取り付ける際に用いるネジを通すための取付け孔31が適宜の個数設けられている。
【0034】
第2のルーバーエレメント22は、図2及び図4(B)に示されているように、4辺に沿う周縁部が取付け部22bを構成し、該取付け部により囲まれた領域が主板部22aとなっている四角形の金属板からなっていて、主板部22aに上下方向に並ぶ複数の通気口41,41,…と羽板42,42,…とが形成されている。通気口41,41,…は横長の長方形状に形成され、羽板42,42,…は、それぞれの基端部42a,42a,…が通気口41,41,…の下端縁に一体化された状態で主板部22aの表面側から裏面側に斜め上方に突出するように設けられている。通気口41及び羽板42は、第1のルーバーエレメントの通気口25及び羽板26と同じ方法で形成することができる。第2のルーバーエレメント22に設けられている複数の通気口41及び羽板42は同形状同寸法を有するように形成されて、上下方向に等ピッチ間隔で並ぶように設けられている。第2のルーバーエレメント22の取付け部22bには、第1のルーバーエレメントの取付け部21bに設けられた取付け孔31と同数の取付け孔が、該取付け孔31と整合し得るように設けられている。第2のルーバーエレメント22の下部には、通気口の列の最下端の下方に位置させて、後記する雨受け部材内に溜まった水を第1のルーバーエレメント内に排出するための排出口22c(図2参照)が形成されている。排出口22cは、横方向に伸びるスリット状の形状に形成されている。
【0035】
本発明においては、第1のルーバーエレメント21及び第2のルーバーエレメント22の通気口どうし及び羽板どうしを対向させた状態で配置することによりルーバーを構成する。第1及び第2のルーバーエレメント21及び22に設ける通気口の数及び通気口の配列パターンは、ルーバー毎に異なっていてもよいが、特定のルーバーを構成するために互いに組み合わせる第1のルーバーエレメント21及び第2のルーバーエレメント22にそれぞれ設ける通気口の数、配列パターン及び配列ピッチは等しく設定される。
【0036】
また第1及び第2のルーバーエレメント21及び22のそれぞれの複数の羽板26、26,…及び42,42,…は、それぞれの基端部26a,26a,…及び42a,42a,…の位置を上下方向に相対的にずらした状態で設けられていて、第1のルーバーエレメント21の隣り合う羽板の間に形成された各隙間が第2のルーバーエレメント22の何れかの羽板により外箱10内に収容された機器から隠されるように、第1のルーバーエレメント21の羽板26と第2のルーバーエレメント22の羽板42との間の位置ずれ量と、各羽板の大きさとが設定されている。本実施形態では、図5に示されたように、第2のルーバーエレメント22の羽板42の基端部42aを第1のルーバーエレメント21の隣り合う羽板26,26の基端部26a,26aの間の中間位置に位置させるように、第1のルーバーエレメント21の羽板26と第2のルーバーエレメント22の羽板42との間の位置ずれ量が設定されている。即ち、第1のルーバーエレメント21の羽板26と第2のルーバーエレメント22の羽板42とは、位相を180°異ならせて設けられている。
【0037】
本実施形態では、図1及び図2に示されているように、外箱10の側壁10aに設けられた換気口に取り付けられた各ルーバーを構成する第1及び第2のルーバーエレメント21及び22の通気口が、上下方向に並ぶ複数の通気口からなる通気口の列が横方向に2つ並ぶ配列パターンで配列され、外箱10の側壁10cに設けられた各ルーバーを構成する第1及び第2のルーバーエレメントの通気口は、上下方向に並ぶ複数の通気口からなる通気口の列が横方向に3つ並ぶ配列パターンで配列されている。
【0038】
各ルーバーを構成する第1及び第2のルーバーエレメント21及び22は、それぞれの主板部の表面(羽板が突出していない方の面)をそれぞれ外箱10の外側及び内側に向け、かつそれぞれの羽板26,26,…及び42,42,…どうしを対向させた状態で配置されて、両ルーバーエレメントの取付け部21b及び22bが互いに重ね合わせた状態で、ネジ45(図2参照)により共締めされて換気口11の周縁部に締結される。
【0039】
本実施形態では、図2に示されているように、第1のルーバーエレメント21と第2のルーバーエレメント22との間に、複数の通気口の列の間を仕切る仕切り板47が配置され、この仕切り板がネジにより第1及び第2のルーバーエレメント21及び22に締結されている。
【0040】
また換気口11の下端の内側に、換気口11の下端縁に沿って横方向に伸びる雨受け部材48が取り付けられている。図5(A)に示されているように、雨受け部材48は、第2のルーバーエレメント22の下端側面との間に、換気口11の下端の縁部の上面を底面とし、長手方向の両端が閉じられた水溜め用の溝部49を形成するように構成された板状の部材からなっていて、第1のルーバーエレメント21及び第2のルーバーエレメント22と共にネジ45により共締めされて換気口11の下端に固定されている。雨受け部材48と第2のルーバーエレメント22の下端との間に形成された溝部49内の空間は、第2のルーバーエレメント22の下端に形成された排出口22c(図2参照)を通して第1のルーバーエレメント21の内側に連通させられている。
【0041】
本実施形態においては、図6に示されているように、第1のルーバーエレメント21の本体部の外面側に、該第1のルーバーエレメントの通気孔全体を塞ぐ閉止蓋50を着脱可能に取り付ける閉止蓋取付け具51が取り付けられている。図示の閉止蓋取り付け具51は、換気口11の横方向の両端の縁部に沿うように配置された一対の取付け金具51A,51Bと、閉止蓋50と第1のルーバーエレメント21との間に介在して閉止蓋50と第1のルーバーエレメント21との間の間隔を保持するスペーサ52とからなっている。
【0042】
取付け金具51A,51Bは、換気口11の左右の両端の縁部に沿って上下に伸びるように設けられて第1及び第2のルーバーエレメント21及び22と共に換気口11の左右の周縁部に締結された板状の基部51aと、基部51aの幅方向の一端から第1のルーバーエレメント21の本体部から離れる方向に起立した起立壁部51bと、起立壁部51bの先端から基部51aと反対側に張り出した張出し部51cと、基部51aの下端と起立壁部51bの下端との間に形成された閉止蓋受け部51dとを有している。取付け金具51A,51Bは、それぞれの張出し部51c,51cの先端を対向させた状態で配置されて、それぞれの基部51a,51aが第1及び第2のルーバーエレメント21及び22の取付け部21b及び22bと共にネジ45により共締めされることにより換気口11の周縁部に固定されている。
【0043】
閉止蓋50は、取付け金具51A,51Bの張出し部51c,51cと第1のルーバーエレメント21の主板部21aとの間に挿入されて、その下端が取付け金具51A,51Bの閉止蓋受け部51d,51dにより受け止められることにより、第1及び第2のルーバーエレメント21及び22の通気口全体を覆った状態に保持される。スペーサ52は、閉止蓋50または第1のルーバーエレメント21の底板部に固定しておく。
【0044】
上記のように構成すると、外側に配置された第1のルーバーエレメント21の隣り合う羽板26,26相互間の隙間G(図5A,B参照)が、内側に配置された第2のルーバーエレメント22の羽板42により、外箱内に配置された変圧器等の機器から完全に隠されるため、図5(B)に示されているように、第1のルーバーエレメント21の隣り合う羽板26,26相互間の隙間Gを通して棒5等の異物が挿入されたときに、その異物の挿入方向がいかなる方向であっても、当該異物が外箱内に侵入するのを阻止することができる。
【0045】
従って、本発明によれば、第1のルーバーエレメント21の羽板の間の隙間Gを通して外箱内に棒などの異物が挿入されるのを防ぐことができ、外箱内へ異物の挿入により地絡事故が発生したり、感電事故が発生したりするのを防ぐことができる。
【0046】
また上記のように構成すると、雨が降ったときに、外箱内に向けて斜め上方に突出した状態で設けられている第1のルーバーエレメントの各羽板26が雨を受けて外側に流すので、通気口25を通して外箱内に雨が侵入するのを抑制することができる。
【0047】
万一雨が通気口を通過して第2のルーバーエレメント22の内側に侵入した場合には、第2のルーバーエレメント22の内側を伝って流下した雨水を雨受け部材48で受けることができ、雨受け部材48の内側の溝部49内に溜まった水は、第2のルーバーエレメント22の下端に形成された排出口22c(図2参照)を通して第1のルーバーエレメント21の内側に流入させた後、第1のルーバーエレメント21の下端の水抜き孔30を通して地上に排出することができる。従って、上記のように構成しておくと、外箱内に雨が侵入するのを抑制することができ、水の侵入に対する保護等級を向上させることができる。
【0048】
また上記の実施形態のように、第1のルーバーエレメント21の本体部23の底板部23aの外面側に、第1のルーバーエレメント21の通気孔全体を塞ぐ閉止蓋50を着脱可能に取り付ける閉止蓋取付け具51を取り付けておくと、必要に応じてルーバー20に閉止蓋50を取り付けて、外箱を塵や砂埃の侵入を防ぐ防塵構造に簡単に改造することができる。
【0049】
上記の実施形態では、排気口11の下端の内側に雨受け部材48を取り付けて、この雨受け部材48の内側に溜まった水を外部に排出し得るようにしているが、水の侵入に対する保護等級を特に向上させる必要がない場合には、雨受け部材48は省略することができる。
【0050】
また上記の実施形態では、第1のルーバーエレメントの外面側に、第1のルーバーエレメントの通気孔全体を塞ぐ閉止蓋を着脱可能に取り付ける閉止蓋取付け具51を取り付けて、必要に応じて第1のルーバーエレメントに閉止蓋50を取り付けることにより防塵構造に改良することができるようにしているが、塵や砂埃の侵入に対する保護等級を向上させる必要がない場合には、閉止蓋取付け具を省略することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 外箱
11 換気口
20 ルーバー
21 第1のルーバーエレメント
21a 第1のルーバーエレメントの主板部
21b 第1のルーバーエレメントの取付け部
22 第2のルーバーエレメント
22a 第2のルーバーエレメントの主板部
22b 第2のルーバーエレメントの取付け部
23 第1のルーバーエレメントの本体部
23a 本体部の底板部(主板部)
24 外鍔部(取付け部)
25 第1のルーバーエレメントの通気口
26 第1のルーバーエレメントの羽板
41 第2のルーバーエレメントの通気口
42 第2のルーバーエレメントの羽板
50 閉止蓋
51 閉止蓋取付け具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9