(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施の形態を
図1〜
図6を参照して説明する。
【0018】
図1は、第1の形態による電動工具1の回路図である。
図1に示すように、電動工具1は、トリガスイッチ3と、制御回路電圧供給回路4と、モータ5と、回転子位置検出素子6と、制御回路7と、インバータ回路8と、ノーマルモードフィルタ9と、整流回路10と、平滑コンデンサ11と、を備えており、トリガスイッチ3が操作されると、商用電源2から出力された交流電圧が整流回路10によって整流される。本実施の形態によるコンデンサ11は、小容量のものを使用しているので、整流した電圧を完全には平滑されないものとなっている(例えば
図2を参照)。このため、整流後の電圧には平滑できていないリップルを含んだ電圧となっている。また、トリガスイッチ3が操作されると、制御回路電圧供給回路4により商用電源2からの交流電圧が
降圧され、制御回路用駆動電圧として制御回路7に供給される。
【0019】
モータ5は、3相のブラシレスDCモータであり、複数組(本実施の形態では2組)のN極とS極を含む永久磁石からなるロータ5Aと、スター結線された3相の固定子巻線U、V、Wからなるステータ5Bと、を備えている。モータ5(ロータ5A)は、電流が流れる固定子巻線U、V、Wが順次切り替わることにより回転する。固定子巻線U、V、Wの切り替えについては後述する。
【0020】
回転子位置検出素子6は、ロータ5Aの永久磁石に対向する位置に、ロータ5Aの周方向に所定の間隔毎(例えば角度60°毎)に配置されており、回転子(ロータ6A)の回転位置に応じた信号を出力する。
【0021】
制御回路7は、モータ電流検出回路71と、整流電圧検出回路72と、制御回路電圧検出回路73と、スイッチ操作検出回路74と、印加電圧設定回路75と、回転子位置検出回路76と、モータ回転数検出回路77と、演算部78と、制御信号出力回路79と、AC入力電圧検出回路80と、を備えている。
【0022】
AC入力電圧検出回路80は、商用電源2から出力された交流電圧のピーク値を検出し、演算部78に出力する。なお、本実施の形態では、実際のピーク値と十分に近似した値を検出することができるようなサンプリング期間で交流電圧を検出するものとする。
【0023】
モータ電流検出回路71は、モータ5に供給される電流を検出し、演算部78に出力する。整流電圧検出回路72は、整流回路10及び平滑コンデンサ11から出力された電圧を検出し、演算部78に出力する。制御回路電圧検出回路73は、制御回路電圧供給回路4から供給された制御回路用駆動電圧を検出し、演算部78に出力する。スイッチ操作検出回路74は、トリガスイッチ3の操作の有無を検出し、演算部78に出力する。印加電圧設定回路75は、トリガスイッチ3の操作量を検出し、演算部78に出力する。
【0024】
回転子位置検出回路76は、回転子位置検出素子6からの信号に基づき回転子(ロータ6A)の回転位置を検出し、モータ回転数検出回路77及び演算部78に出力する。モータ回転数検出回路77は、回転子位置検出回路76からの信号に基づき回転子(ロータ6A)の回転数を検出し、演算部78へ出力する。
【0025】
演算部78は、回転子位置検出回路76とモータ回転数検出回路77からの信号に基づき、切替信号H1−H6を生成し、制御信号出力回路79に出力する。また、演算部78は、印加電圧設定回路75からの信号に基づき、切替信号H4−H6をパルス幅変調信号(PWM信号)として調整し、制御信号出力回路79に出力する。切替信号H1−H6は、制御信号出力回路79を介してインバータ回路8に出力される。なお、切替信号H1−H3をPWM信号として調整する構成であってもよい。
【0026】
インバータ回路8は、スイッチング素子Q1−Q6から構成されている。各スイッチング素子Q1−Q6のゲートは、制御信号出力回路79に接続され、各スイッチング素子Q1−Q6のドレイン又はソースは、ステータ5Bの固定子巻線U、V、Wに接続されている。
【0027】
各スイッチング素子Q1−Q6は、制御信号出力回路79から入力される切替信号H1−H6に基づきスイッチング動作を行い、
平滑コンデンサ11から出力されインバータ回路8に印加され
る電圧を3相(U相、V相及びW相)電圧Vu、Vv、Vwとして固定子巻線U、V、Wに電力を供給する。
【0028】
詳細には、スイッチング素子Q1−Q6には切替信号H1−H6がそれぞれ入力され、これにより、通電される固定子巻線U、V、W、すなわち、ロータ5Aの回転方向が制御される。また、その際、PWM信号でもあるH4−H6によって、固定子巻線U、V、Wへの電力供給量が制御される。
【0029】
以上の構成により、電動工具1は、トリガスイッチ3の操作量に応じた駆動電圧をモータ5に供給することが可能となる。
【0030】
ところで、インバータ回路8は、使用可能範囲内の電圧(例えば、整流後の電圧では、約110〜200V、AC入力電圧では、約80〜120V)によって駆動するものである。ところが、例えば、
図2に示すように、回路に流れる電流が大きい場合には、回路内のL成分により生じた電圧が、整流回路10及び平滑コンデンサ11から出力された整流電圧、すなわち、インバータ回路8に供給される電圧に重畳される場合があり、この電圧がインバータ回路8の使用可能範囲から外れていた場合には、インバータ回路8は故障する虞がある。
【0031】
そこで、本実施の形態による電動工具1では、インバータ回路8(演算部78)に所定範囲外の電圧が供給された場合にはモータ5への電力の供給を禁止及びモータへの電力の供給を制限する制御を行う。なお、所定範囲は、インバータ回路8(演算部78)の使用可能範囲に含まれるものとする。
【0032】
例えば、
図3に示すように、AC入力電圧検出回路80によって検出された電圧V1が電圧閾値A(例えば、80V)以下、又は、電圧閾値B(例えば、120V)以上の場合に、スイッチング素子Q4−Q6に出力されるPWM信号H4−H6のPWMデューティをゼロにすることにより、モータ5への電力の供給を禁止する。これにより、インバータ回路8に使用可能範囲外の電圧が供給されることが防止されるため、インバータ回路8が故障することを防止することが可能となる。
【0033】
また、本実施の形態では、整流電圧検出回路72によって検出された電圧V2が電圧閾値C(例えば、110V)以下、又は、電圧閾値D(例えば、200V)以上の場合にも、インバータ回路8に使用可能範囲外の電圧が供給されることを防止するために、モータ5への電力の供給を禁止する。
【0034】
更に、本実施の形態では、演算部78に使用可能範囲外の電圧が供給されることを防止するために、制御回路電圧検出回路73によって検出された電圧V3が電圧閾値E(例えば、10V)以下、又は、電圧閾値F(例えば、20V)以上の場合にも、モータ5への電力の供給を禁止する。
【0035】
ここで、
図4を用いて、演算部78により行われる上記禁止制御について詳細に説明する。
図4は、本実施の形態による禁止制御のフローチャートである。本フローチャートは、電動工具1の電源スイッチ(図示せず)がオンされた時に始まる。
【0036】
まず、演算部78は、AC入力電圧検出回路80によって検出された電圧V1が、電圧閾値A以下、又は、電圧閾値B以上であるか否かを判断する(S101)。
【0037】
電圧V1が電圧閾値A以下、又は、電圧閾値B以上であった場合には(S101:YES)、PWM信号H4、H5、H6の目標デューティDtを0%に設定することでモータ5への電力の供給を禁止する(S102)。これにより、インバータ回路8に使用可能範囲外の電圧が供給されることが防止される。
【0038】
一方、電圧V1が電圧閾値Aより大きく電圧閾値Bより小さかった場合には(S101:NO)、続いて、整流電圧検出回路72によって検出された電圧V2が、電圧閾値C以下、又は、電圧閾値D以上であるか否かを判断する(S103)。
【0039】
電圧V2が電圧閾値C、又は、電圧閾値D以上であった場合には(S103:YES)、PWM信号H4、H5、H6の目標デューティDtを0%に設定することでモータ5への電力の供給を禁止する(S102)。これにより、インバータ回路8に使用可能範囲外の電圧が供給されることがより確実に防止される。
【0040】
一方、電圧V2が電圧閾値Cより大きく電圧閾値Dより小さかった場合には(S103:NO)、続いて、制御回路電圧検出回路73によって検出された電圧V3が、電圧閾値E以下、又は、電圧閾値F以上であるか否かを判断する(S104)。
【0041】
電圧V3が電圧閾値E、又は、電圧閾値F以上であった場合には(S104:YES)、PWM信号H4、H5、H6の目標デューティDtを0%に設定することでモータ5への電力の供給を禁止する(S102)。これにより、演算部78に使用可能範囲外の電圧が供給されることが防止される。
【0042】
電圧V3が電圧閾値Eより大きく電圧閾値Fより小さかった場合には(S104:NO)、続いて、トリガスイッチ3がオンされたか否かを判断する(S105)。
【0043】
トリガスイッチ3がオンされていない場合には(S105:NO)、S101へ戻る。
【0044】
一方、トリガスイッチ3がオンされていた場合には(S105:YES)、続いて、電圧V1が電圧閾値G以上であるか否かを判断する(S106)。
【0045】
ここで、
図3に示すように、電圧V1が、電圧V1が電圧閾値Bより小さくても電圧閾値G以上の予防範囲に含まれる場合には、現時点ではインバータ回路8を故障させることはないが、電流が増加した場合やノイズが生じた場合には容易に所定範囲から外れてしまう可能性がある。
【0046】
従って、本実施の形態では、電圧V1が電圧閾値G以上であった場合には(S106:YES)、目標デューティDtを100%未満に設定した上で(S107)、S101に戻る。詳細には、
図5に示すように、Dt=(
G/V1)×100で示される目標デューティDtを設定、S101に戻る。これにより、
図6に示すように、V1が電圧閾値G以上となった場合に、インバータ回路8及び演算部78に供給される電圧を低下させることができる。なお、V2についても電圧閾値H以上となった場合にも同様の制御を行うことで、インバータ回路8及び演算部78に供給される電圧を低下させることができる。これにより、高電圧入力によりモーター回転数が上昇しメカ部とモータ部の機械的破損が生じることを防止することができる。更に、電流が大きくなると回路のL成分の影響で電圧が上昇するので、デューティを下げることにより電流も下げて、整流後の電圧の上昇を予防することができる。
【0047】
一方、電圧V1が電圧閾値Gより小さい場合には(S106:NO)、電圧V1は正常範囲に含まれているので、目標デューティDtを100%に設定した上で(S108)、S101に戻る。
【0048】
このように、本実施の形態による電動工具1では、インバータ回路8(演算部78)の使用可能範囲に含まれる所定範囲を設定し、インバータ回路8(演算部78)に所定範囲外の電圧が供給された場合にモータ5への電力の供給を禁止するので、インバータ回路8(演算部78)に使用可能範囲外の電圧が供給されてインバータ回路8(演算部78)が故障することを防止することが可能となる。
【0049】
また、本実施の形態による電動工具1では、モータ5が駆動されている状態において、インバータ回路8(演算部78)に供給されている電圧が所定範囲には含まれているが正常範囲から外れている場合には、電圧を低下させるよう制御するので、インバータ回路8(演算部78)に使用可能範囲外の電圧が供給されることを予防することが可能となる。
【0050】
尚、本発明の電動工具は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0051】
例えば、上記実施の形態では、商用電源2からの交流電力を直流電力に変換した上でインバータ回路8に供給したが、
図7に示すように、電池パック20からの直流電力を直接インバータ回路8に供給する構成であってもよい。この場合には、
図1の整流電圧検出回路72の替わりに電池電圧検出回路81を設け、電池電圧検出回路81によって検出された検出された電圧、又は、制御回路電圧検出回路73によって検出された電圧が所定範囲から外れていた場合にモータ5への電力の供給を禁止すればよい。
【0052】
また、電池パック20の電圧が低い場合には、
図8に示すように、
図7の制御回路電圧供給回路4及び制御回路電圧検出回路73の替わりに、昇圧回路電圧供給回路40及び昇圧回路電圧検出回路82を設け、昇圧回路電圧供給回路40によって昇圧した電圧を演算部78に供給する構成が考えられる。このような構成の場合には、電池電圧検出回路81によって検出された電圧、又は、昇圧回路電圧検出回路82によって検出された電圧が所定範囲から外れていた場合にモータ5への電力の供給を禁止すればよい。
【0053】
また、上記実施の形態や変形例では、複数の箇所の電圧毎にモータ5への電力供給の禁止を判断したが、いずれか一箇所の電圧に基づいて電力供給の禁止を判断してもよい。
【0054】
ところで、モータ5は、過電流が流れた場合に故障する虞がある。例えば、
図9に示すように、電流は負荷に比例するため、モータ5に所定以上の負荷がかかった場合には、モータ5を破損させる大きさの電流がモータ5に流れることとなってしまう。
【0055】
そこで、第1の変形例による電動工具1では、
図10に示すように、過電流閾値Ithよりも小さな目標電流値Itを設定し、モータ電流検出回路71によって検出された電流の電流値が目標電流値Itよりも大きくなった場合にスイッチング素子Q4−Q6に出力されるPWM信号H4−H6のPWMデューティを減少させる電圧制御を行う。これにより、モータ5に流れる電流も目標電流値Itより小さくなるため、モータ5に過電流が流れることを予防することが可能となる。また、過電流によりモータ5を停止させる可能性が低くなるため、電動工具1による円滑な作業が確保される。更に、過電流に弱いインバータ回路8も保護することが可能となる。
【0056】
ここで、
図11を用いて、演算部78により行われる上記電圧制御について詳細に説明する。
図11は、第1の変形例による電圧制御のフローチャートである。本フローチャートは、トリガスイッチ3がオンされた時に始まる。
【0057】
まず、演算部78は、モータ5に流れている電流の電流値Iをモータ電流検出回路71より取得し(S101)、電流値Iが過電流閾値Ithよりも大きいか否かを判断する(S102)。
【0058】
電流値Iが過電流閾値Ithより大きかった場合には(S102:YES)、PWM信号H4、H5、H6の目標デューティDtを0%に設定することでモータ5への電力の供給を停止させる(S103)。これにより、モータ5に過電流が流れることが防止されている。
【0059】
一方、電流値Iが過電流閾値Ith以下であった場合には(S102:NO)、続いて、電流値Iが目標電流値Itよりも大きいか否かを判断する(S104)。
【0060】
電流値Iが目標電流値It以下であった場合には(S104:NO)、電流値Iを目標電流値Itまで増加させるための目標デューティDtを設定(上昇)した上で(S105)、S101に戻る。
【0061】
詳細には、Dt=(It−I)×P+D・・・式(1)(Pはフィードバックゲイン、Dは現在のデューティ)により、目標デューティDtを設定し、目標デューティDtに向けてデューティをDa%だけ増加させる。このように、デューティをDa%ずつ増加させることにより、モータ5に過大な突入電流が流れることを防止することができる。
【0062】
一方、電流値Iが目標電流値Itより大きかった場合には(S104:YES)、目標電流値Itを低下させることにより目標デューティDtを低下させた上で(105)、S101に戻る。
【0063】
このように、第1の変形例による電動工具1では、モータ5に流れる電流の電流値Iが目標電流値Itよりも大きい場合に目標デューティDtを低下させる。これにより、モータに流れる電流も目標電流値Itより小さくなるため、モータ5に過電流が流れることを予防することが可能となる。また、過電流によりモータ5を停止させる可能性が低くなるため、電動工具1による円滑な作業が確保される。更に、過電流に弱いインバータ回路8も保護することが可能となる。
【0064】
続いて、第2の変形例について説明する。
【0065】
モータ5の回転数が低い場合と高い場合に同一の電圧を供給すると、低い場合の方がモータ5に大きな電流が流れることとなる。一方、目標デューティの変更は、電流に反映されるまでに多少の時間がかかる。従って、モータ5の回転数が低い場合には、第1の変形例による制御を行ったとしても、制御が追従できずに、モータ5に過電流が流れてしまう虞がある。
【0066】
そこで、本実施の形態では、
図12に示すように、モータ5の回転数に応じて目標デューティDtを変更する。詳細には、モータ5の回転数が低い間は、目標デューティDtも小さな値に設定することによりモータ5に大きな電圧が供給されないような目標デューティDtを設定する。これにより、
図13に示すように、モータ5の回転数が低い間はモータ5に大きな電流が流れることが防止されるので、モータ5に過電流が流れることを適切に予防することが可能となる。
【0067】
次に、
図14を用いて本実施の形態による電圧制御について説明する。
図14は、本実施の形態による電圧制御のフローチャートである。本フローチャートは、トリガスイッチ3がオンされた時に始まる。なお、S201−S203までのステップは
図11におけるS101−S103と同一であるため、説明を省略する。
【0068】
電流値Iが過電流閾値Ith以下であった場合には(S202:NO)、モータ回転数検出回路77よりモータ5の回転数Nを取得し(S204)、回転数Nに基づき、目標電流値Itと、電流値Iを目標電流値Itまで増加させて目標電流値Itで制限させるための目標デューティDtと、を設定した上で(S205)、S201に戻る。本実施の形態では、
図12に示すように、回転数が0rpmから所定rpmまでは、目標デューティDtを100%まで比例関係で増加させ、所定rpm以降は100%に固定するものとする。
【0069】
このように、本実施の形態による電動工具1では、モータ5の回転数に応じて目標デューティDtを変更する。これにより、モータ5の回転数が低い間はモータ5に大きな電圧が供給することが防止されるので、モータ5に過電流が流れることを適切に予防することが可能となる。
【0070】
続いて、第3の変形例について説明する。
【0071】
第1の変形例では、電池パック2からの直流電力を直接インバータ回路8に供給したが、商用電源からの交流電力を直流電力に整流・平滑した上でインバータ回路8に供給する構成も考えられる。このような構成として、例えば、
図15に示すように、商用電源20とインバータ回路8との間に、ノーマルモードフィルタ21と、整流回路22と、平滑コンデンサ23と、を備え、制御回路7にAC入力電圧検出回路24を備えたものが考えられる。
【0072】
図15に示す構成においては、コスト抑制等の理由により、平滑コンデンサ23として小容量のものを用いる場合がある。小容量のコンデンサを使用する理由は、大容量の平滑コンデンサを使用すると、力率が悪化しその対策として力率を改善する力率改善回路を付加する必要があるからである。力率改善回路を設けるためには、大きなスペースが必要となり、電動工具が大きくなってしまうものである。
【0073】
ここでいう小容量のコンデンサとは、例えば47μF以下の容量を持つコンデンサである。特に10μF以下である場合には、駆動電圧の脈動が起きやすくなってしまうものである。なお、本発明の実施例においては、0.47μFのコンデンサを採用している。この小容量のコンデンサを用いると、電源電圧のリプルが大きくなってしまう。例えば、リプルが70%以上であると、大きな脈動が起きているといえる。なお、リプルは、工具の入力電源の電圧の最大値をV*として、電圧の変化量をdVとした時に、(dV/V*)×100%であらわされる。
【0074】
平滑コンデンサ23として小容量のものを用いる場合には、平滑コンデンサ23によって交流電力が完全に平滑されず、第1の周波数の脈動波形を有する電力がインバータ回路8に供給されることとなる。そして、このような構成において第1の実施の形態による制御を行うと、
図16に示すように、電流値Iが目標電流値Itより大きくなってから制御が追従してきた時点で電流値Iが下がり始め、目標電流値It以下まで低下した時に再びデューティを増加させることとなる。
【0075】
しかしながら、この場合に電流値Iが目標電流値It以下まで低下したのは負荷が低減したためではなく、交流電圧が低下したことによるものである。従って、交流のサイクル毎に目標電流値Itを超える電流がモータ5に流れることとなり、モータ5に不要な発熱等を生じさせることとなる。
【0076】
そこで、本実施の形態では、脈動電流のピーク値Ipが目標電流値Itよりも大きい場合にデューティを減少させる。詳細には、
図17に示すように、脈動電流のピーク値Ipが目標電流値Itよりも大きい場合にデューティを減少させ、次回のピーク値Ip検出まで減少させたデューティを維持させる。そして、ピーク値Ipが目標電流値It以下となった場合に段階的にデューティを回復させていく。これにより、交流のサイクル毎に目標電流値Itを超える電流がモータ5に流れることがなくなるため、モータ5に不要な発熱等を生じさせることを防止することが可能となる。
【0077】
ここで、
図18を用いて、本実施の形態による電圧制御について詳細に説明する。
図18は、本実施の形態による電圧制御のフローチャートである。本フローチャートは、トリガスイッチ3がオンされた時に始まる。なお、S301−S303までのステップは
図11におけるS101−S103と同一であるため、説明を省略する。
【0078】
一方、電流値I(t)が過電流閾値Ith以下であった場合には(S302:NO)、続いて、電流値I(t)が記憶されている電流値I(t−1)より小さくなったか否かを判断する(S304)。
【0079】
電流値I(t)が電流値I(t−1)より以上であった場合には(S302:NO)、電流値I(t)を電流値I(t−1)として記憶した上で(S305)、S301に戻る。
【0080】
一方、電流値I(t)が電流値I(t−1)より小さくなっていた場合には(S302:YES)、電流値I(t−1)をピーク値Ipとして決定する(S306)。なお、本実施の形態では、実際のピーク値と十分に近似した値を検出することができるようなサンプリング期間で電流値I(t)を検出するものとする。
【0081】
続いて、ピーク値Ipが目標電流値Itよりも大きいか否かを判断する(S307)。
【0082】
ピーク値Ipが目標電流値It以下であった場合には(S307:NO)、ピーク値Ipを目標電流値Itまで増加させて目標電流値Itで制限させるための目標デューティDtを設定した上で(S308)、S301に戻る。
【0083】
一方、ピーク値Ipが目標電流値Itより大きかった場合には(S307:YES)、目標電流値Itを低下させるために目標デューティDtを低下させた上で(309)、S301に戻る。
【0084】
このように、本変形例による電動工具1では、脈動電流のピーク値Ipが目標電流値Itよりも大きい場合にデューティを低下させるので、交流のサイクル毎に目標電流値Itを超える電流がモータ5に流れることがなくなるため、モータ5に不要な発熱等を生じさせることを防止することが可能となる。
【0085】
尚、第1の変形例と第2の変形例とを同時に行ってもよい。詳細には、モータ5の回転数に応じて目標デューティDtを変更し、電流値Iが目標電流値Itよりも大きい場合に目標デューティDtを低下させることにより、モータ5に流れる電流を減少させてもよい。
【0086】
この場合、
図19に示すように、モータ5の回転数が低い間はモータ5に大きな電圧が供給されないような目標デューティDtを設定し、モータ5の回転数が所定以上となった後はデューティを100%固定する。そしてデューティを100%に固定した後は、電流値Iが目標電流値Itよりも大きくなった場合に目標デューティDtを低下させることとなる。
【0087】
ここで、
図20を用いて、変形例による電圧制御について詳細に説明する。
図20は、変形例による電圧制御のフローチャートである。本フローチャートは、トリガスイッチ3がオンされた時に始まる。
【0088】
まず、演算部78は、モータ5に流れている電流の電流値Iをモータ電流検出回路71より取得し(S401)、電流値Iが過電流閾値Ithよりも大きいか否かを判断する(S402)。
【0089】
電流値Iが過電流閾値Ithより大きかった場合には(S402:YES)、PWM信号H4、H5、H6の目標デューティDtを0%に設定することでモータ5への電力の供給を停止させる(S403)。
【0090】
一方、電流値Iが過電流閾値Ith以下であった場合には(S402:NO)、続いて、モータ回転数検出回路77よりモータ5の回転数Nを取得し(S404)、回転数Nに基づき目標電流値It及び電流値Iを目標電流値Itまで増加させるための目標デューティDtを設定する(S405)。
【0091】
続いて、電流値IがS405で設定された目標電流値Itよりも大きいか否かを判断する(S406)。
【0092】
電流値Iが目標電流値It以下であった場合には(S406:NO)、電流値Iを目標電流値Itまで増加させて目標電流値Itで制限させるための目標デューティDtを設定した上で(S407)、S401に戻る。
【0093】
一方、電流値Iが目標電流値Itより大きかった場合には(S406:YES)、目標電流値Itを低下させるために目標デューティDtを低下させた上で(408)、S401に戻る。
【0094】
このように、第1の変形例と第2の変形例とを同時に行うことで、モータ5に過電流が流れることをより効果的に予防することが可能となる。
【0095】
また、第1の変形例では、電流値Iが目標電流値Itより大きい場合に一定の低下率で電圧を低下させたが、電流値Iの大きさに応じて低下率を変更してもよい。
【0096】
また、上記変形例では、電流値Iが過電流閾値Ithより大きくなった場合にモータ5への電圧の供給を停止させたが、電流値Iが所定時間以上に亘って目標電流値Itより大きく過電流閾値Ith以下の場合にモータ5への電圧の供給を停止させてもよい。この場合、モータ5やインバータ回路8の過電流に対する弱さに応じて上記所定時間を変更してもよい。
【0097】
また、例えば、電動工具1がドライバである場合の締結終了時のロック検出を行ってもよい。この場合、例えば、(1)回転数Nが所定値以下の場合、(2)回転数Nが所定値以下、かつ、電流値Iが所定値以上の場合、(3)所定値以上の電流値Iが所定時間以上継続した場合、ロック検出を行うことが考えられる。