(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1または2において、前記副弾性体の前記外壁側面と前記被覆部材の内面とは、前記副弾性体が有する粘着性により貼り合わされており、接着剤層により接着されていないクッション構造体。
請求項1〜3のうちの一項において、前記主弾性体は、厚み方向の双方側に露出する開口を備える複数の前記挿入穴をもつ本体と、前記本体の前記挿入穴のうち一方の前記開口を前記主弾性体において露出させつつ他方の前記開口を塞ぐように前記本体に接合されている蓋弾性体とを具備するクッション構造体。
請求項1〜3のうちの一項において、前記主弾性体はこれの厚み方向の双方側に露出する開口をそれぞれ備えており、前記被覆部材は前記開口から露出しているクッション構造体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図11は無負荷の状態の従来のクッション構造体1Xの内部構造を模式的に示す。
図12は、圧縮荷重が負荷された状態のクッション構造体1Xの内部構造を模式的に示す。
図13は、圧縮荷重が除かれつつある状態のクッション構造体1の内部構造を模式的に示す。
図12に示すように、使用者や物体などに基づく圧縮荷重がクッション構造体1Xに負荷されているときには、副弾性体3Xは、これらの厚み方向に圧潰されるように圧縮変形されているため、副弾性体3の外壁側面33Xがこれの拡径方向(矢印D10方向)に弾性変形する。このため、
図12に示すように、副弾性体3Xの外壁側面33Xと挿入穴23Xの内壁側面25Xとが粘着を伴って互いに接触する。ここで、副弾性体3Xは、粘着性に富むため、上記接触の形態は、粘着を伴った接触となる。そして、圧縮荷重が解除されたときには、
図13に示すように、副弾性体3Xが求心方向(矢印D20方向)に向かうように復元変形する。外壁側面33Xは粘着性に富む。このため、主弾性体2Xの挿入穴23Xの内壁側面25Xと副弾性体3Xの外壁側面33Xとが粘着を伴って接触しつつ、副弾性体3Xの外壁側面33Xが求心方向(矢印D20方向)に復元変形せんとする(
図13参照)。復元が進行すると、主弾性体2の内壁側面25Xから、副弾性体3の外壁側面33Xが剥離する(
図14参照)。
【0006】
このようにクッション構造体1Xに圧縮荷重が負荷され、その後解除されるときには、外壁側面33Xと内壁側面25Xとの粘着を伴ない接触、更に、その後の復元変形に伴う剥離現象が繰り返される。クッション構造体1Xの実際の使用時には、荷重の負荷および荷重解除が頻繁に繰り返されるため、粘着を伴った接触、その後の剥離現象が頻繁に繰り返される。これは、副弾性体3Xの外壁側面33Xにおける疲労による剥離を誘発させるおそれがある。この結果、クッション構造体1Xの使用期間が長くなると、副弾性体3Xの粘着性に富む外壁側面33Xにおいて疲労による剥離330Xが発生するおそれがある(
図14参照)。この場合、クッション構造体1の本来のクッション機能にも影響を与えるおそれがある。なお、疲労による剥離330Xを抑制させるためには、上記した粘着を伴った接触、その後の剥離の現象を避けることが好ましい。このため、フィルムなどの被覆部材で副弾性体3Xを被覆する方策が考えられる。しかし、フィルムなどの被覆部材で副弾性体3Xを被覆するとしても、主弾性体2Xが曲成されるとき等において、副弾性体3Xが挿入穴23Xから脱落するおそれがある。そこで、シート状の上蓋26X,下蓋27Xを蓋部材として主弾性体10Xに被着させ、副弾性体3Xの脱落を抑えることにしている。
【0007】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、粘着を伴った接着およびその後の剥離に起因する副弾性体の外壁側面における疲労による剥離を抑制させつつ、副弾性体が主弾性体の挿入穴から脱落するおそれを改善させるのに有利なクッション構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の様相1に係るクッション構造体は、(i)内壁側面で区画され且つ厚み方向の少なくとも一方側に開口を備える複数の挿入穴を有する有機系弾性材料で形成された主弾性体と、(ii)主弾性体の挿入穴に配置され、挿入穴の内壁側面に対面する外壁側面をもち且つ粘着性を有する有機系弾性材料で形成された副弾性体と、(iii)副弾性体のうち少なくとも外壁側面を被覆する伸縮可能な被覆部材とを具備しており、(iv)挿入穴の内壁側面と被覆部材の外面との間における接着剤層または摩擦力により、副弾性体は挿入穴に保持されている。
【0009】
主弾性体は、有機系弾性材料で形成されており、内壁側面で区画された複数の挿入穴をもつ。副弾性体は、粘着性を有する有機系弾性材料で形成されている。副弾性体は被覆部材で被覆された状態で、主弾性体の挿入穴に配置されている。被覆部材は、伸縮可能な材料で形成されており、副弾性体のうち少なくとも外壁側面を被覆する。これにより粘着性をもつ副弾性体を挿入穴に組み付けて配置させる作業性が向上する。更に、挿入穴の内壁側面と被覆部材の外面との間における接着剤層または摩擦力により、副弾性体は挿入穴から脱落しないように主弾性体に保持される。
【0010】
更に、被覆部材は、副弾性体のうち少なくとも外壁側面を被覆しているため、被覆部材は、基本的には、副弾性体のうちの外壁側面に密着している状態となる。副弾性体は粘着性を有するため、粘着性によって、被覆部材は副弾性体のうちの外壁側面に常に密着している状態となり易い。従って、上記した粘着を伴った接触、その後の剥離の現象を避けるのに有利となる。このため副弾性体の外壁側面における疲労による剥離が効果的に抑えられる。また被覆部材は伸縮性を有するため、副弾性体の弾性変形に追従でき、副弾性体の固有の弾性変形性を損なうおそれが改善される。
【0011】
(2)本発明の様相2に係るクッション構造体によれば、上記した様相において、被覆部材の伸縮率は常温領域において120%以上である。このように被覆部材は高い伸縮性を有するため、副弾性体の弾性変形に追従でき、副弾性体の固有の弾性変形性を損なうおそれが抑えられる。伸縮前の長さ寸法をLとし、伸縮前後の伸び量または縮み量をΔLとすると、伸縮率は(ΔL/L)×100%を意味する。ΔLは絶対値として表される。伸縮率は副弾性体の弾性変形に追従できれば良い。伸縮率は例えば150%以上、180%以上、200%以上にできる。伸縮率の上限としては特に規定されない。
【0012】
(3)本発明の様相3に係るクッション構造体によれば、上記した様相において、副弾性体の外壁側面と被覆部材の内面とは、副弾性体が有する粘着性により貼り合わされており、接着剤層により接着されていない。この場合、副弾性体の外壁側面と被覆部材の内面とは、副弾性体が有する粘着性により貼り合わされているものの、接着剤層により接着されていないため、被覆部材が副弾性体の弾性変形を拘束させる拘束力は、接着剤層に比較して相対的に低い。このため、副弾性体の固有の弾性変形性を損なうおそれが抑えられる。
【0013】
(4)本発明の様相4に係るクッション構造体によれば、上記した様相において、主弾性体は、厚み方向の双方側に開口を備える複数の挿入穴をもつ本体と、本体の挿入穴のうち一方の開口を主弾性体において露出させつつ他方の開口を塞ぐように本体に接合されている第1蓋弾性体とを具備する。第1蓋弾性体が他方の開口を塞いでいるため、他方の開口は主弾性体において露出せず、従って、副弾性体は挿入穴の他方の開口から脱落しない。但し、挿入穴のうち一方の開口は主弾性体において露出されている。しかし、挿入穴の内壁側面と被覆部材の外面との間における接着剤または摩擦力により、副弾性体は保持されている。従って、副弾性体は、挿入穴のうち主弾性体において露出している一方の開口から脱落しない。このため、一方の開口を閉鎖する蓋弾性体を廃止でき、コスト低減を図り得る。
【0014】
(5)本発明の様相5に係るクッション構造体によれば、上記した様相において、主弾性体はこれの厚み方向の双方側に露出する開口をそれぞれ備えており、被覆部材は開口から露出している。挿入穴の内壁側面と被覆部材の外面との間における接着剤または摩擦力により、副弾性体は保持されている。従って副弾性体は挿入穴の開口から脱落しないように保持される。双方の開口を閉鎖する蓋弾性体を廃止でき、コスト低減を図り得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被覆部材は、伸縮可能な有機系発泡材料で形成されており、副弾性体のうち少なくとも外壁側面を被覆しており、粘着性をもつ副弾性体を組み付ける作業性が向上する。更に、挿入穴の内壁側面と被覆部材の外面との間における接着剤層または摩擦力により、副弾性体は挿入穴から脱落しないように主弾性体に保持される。
【0016】
更に本発明によれば、被覆部材は、副弾性体のうち少なくとも外壁側面を被覆しているため、上記した粘着を伴った接触、その後の剥離が頻繁に発生することを避けることができる。このため副弾性体の外壁側面における疲労に起因する疲労による剥離が抑えられる。また被覆部材は伸縮性を有するため、副弾性体の弾性変形に追従でき、副弾性体の固有の弾性変形性を損なうおそれが改善される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態1に係るクッション構造体の概念を模式的に示す断面図である。
【
図2】無負荷状態におけるクッション構造体の概念を模式的に示す断面図である。
【
図3】圧縮荷重を負荷した状態におけるクッション構造体の概念を模式的に示す断面図である。
【
図4】クッション構造体を模式的に示す底面図である。
【
図5】副弾性体を形成するエラストマの一例にかかる荷重−変位特性を示すグラフである。
【
図6】実施形態2に係り、クッション構造体の概念を模式的に示す断面図である。
【
図7】実施形態3に係り、クッション構造体の概念を模式的に示す断面図である。
【
図8】実施形態4に係り、クッション構造体の概念を模式的に示す断面図である。
【
図9】実施形態5に係り、クッション構造体の概念を模式的に示す断面図である。
【
図10】実施形態6に係り、クッション構造体の概念を模式的に示す断面図である。
【
図11】従来技術に係り、無負荷状態におけるクッション構造体の概念を模式的に示す断面図である。
【
図12】従来技術に係り、荷重を負荷した状態におけるクッション構造体の概念を模式的に示す断面図である。
【
図13】従来技術に係り、荷重を解除した状態におけるクッション構造体の概念を模式的に示す断面図である。
【
図14】従来技術に係り、副弾性体の外壁側面に疲労による剥離が発生したクッション構造体の概念を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について
図1〜
図4を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るクッション構造体1は、人体または物体を支えるものでもよく、マットレス、座布団、枕、着座シート、椅子、背もたれ等に使用できる。クッション構造体1は、クッション構造体1のうち大きな容積を占めるシート状の主弾性体2と、主弾性体2に対して複合化特性を示す複数の副弾性体3とを有する。主弾性体2は、有機系弾性材料として機能する多孔質の発泡弾性材料(例えばウレタンフォーム)で形成されており、内周壁面を形成する円筒形状の内壁側面25で区画された複数の挿入穴23をもつ。各挿入穴23はそれぞれ中心線24とをもつ。具体的には、
図1に示すように、主弾性体2は、有機系弾性材料として機能する多孔質の発泡弾性材料(例えばウレタンフォーム)で形成されたシート状の本体20と、有機系弾性材料として機能する多孔質の発泡弾性材料(例えばウレタンフォーム)で形成されたシート状の蓋弾性体26とを有する。本体20は、内壁側面25で区画された複数の挿入穴23と、互いに対向する二つの第1表面21,第2表面22とをもつ。
図1に示すように、挿入穴23は、本体20の厚み方向の一方側の開口23aと、本体20の厚み方向の他方側の開口23cとを有する。開口23a,23cは円形状をなす。蓋弾性体26は、本体20の第1表面22(下面)に接着剤層26mを介して接着されている。なお、本体20および蓋弾性体26は、同一または同系の多孔質の発泡弾性材料(例えばウレタンフォーム等の有機系発泡材料)で形成されていることが好ましい。同一または同系の発泡弾性材料であれば、本体20および蓋弾性体26の接合性を高め得る。但し、本体20および蓋弾性体26は、異なる発泡弾性材料で形成されていても良く、要するにクッション性を有すれば良い。
【0019】
副弾性体3は、粘弾性に富む有機系弾性材料(例えばエラストマ)で形成されており、オイル等の液状物を含有する。このような副弾性体3は、主弾性体2に対して異なる硬度および弾性特性をもち、主弾性体2よりも軟質であり、液状物を含有するため、流動変形性に富む。このため、クッション構造体1の複合構造化を図り得る。すなわち、本実施形態のクッション構造体1は、広い投影面積をもつ主弾性体2と小さな投影面積をもつ副弾性体3の双方の特性をそれぞれ複合的に発揮でき、使用者や物体等に対して良好な複合的弾性感、感圧感、マッサージ効果を与えることができる。副弾性体3は円柱形状をなしており、平坦な第1端面31(例えば上面)、平坦な第2端面32(例えば下面)、円筒形状をなす外壁側面33(外周壁面)を有する。なお、副弾性体3の第2端面32は、蓋弾性体26に接着されて固定されていても良いし、あるいは、副弾性体3の自由変形性を高めるように接着されていなくても良い。
【0020】
被覆部材7は可撓性および伸縮性をもつ多孔質の材料、特に有機系発泡材料(発泡樹脂または発泡ゴム)で形成されており、副弾性体3の第1端面31および外壁側面33を被覆している。但し、
図1から理解できるように、副弾性体3の脱落を抑制できる第1蓋弾性体26は、本体20の第2表面22(例えば下面)に接着されて固定されている。このため、蓋弾性体26に対面する第2端面32は、被覆部材7で被覆されていない。単数の被覆部材7は単数の副弾性体3を被覆する。
図1に示すように、被覆部材7は、副弾性体3の外壁側面33に密着しつつこれを被覆する円筒形状をなす側部70と、副弾性体3の第1端面31に密着しつつこれを被覆する中間部71とを有する。なお、被覆部材7は、側部70および中間部71を有する円筒形状に予め成形されていても良いし、あるいは、被覆部材7を副弾性体3に被覆させるとき、側部70および中間部71を曲成させても良い。クッション構造体1の用途および種類、挿入穴23のサイズ等にもよるが、被覆部材7の平均厚みtは0.2〜30ミリメートル、0.5〜20ミリメートルが好ましい。副弾性体3の外径寸法をDとするとき、被覆部材7の平均厚みtは例えばD/2〜D/20程度にできる。但しこれに限定されるものではない。被覆部材7は伸縮可能であり、その伸縮率は常温において、150%以上、180%以上、場合によっては200%以上、250%以上とされている。
【0021】
副弾性体3を主弾性体2に組み付けるには、被覆部材7を副弾性体3に被覆させると共に、被覆部材7のうち側部71の外面7pのみに接着剤を塗布する。あるいは、挿入穴23の内壁側面25のみに接着剤を塗布しても良い。あるいは、被覆部材7の側部71の外面7pに接着剤を塗布すると共に、挿入穴23の内壁側面25に接着剤を塗布しても良い。この状態で、被覆部材7で被覆された副弾性体3が挿入穴23に挿入される。被覆部材7が多孔質性であるため、接着剤の含浸性が確保される。組付作業性を考慮すると、被覆部材7をこれの厚み方向にやや小さくさせた状態で挿入穴23に挿入させることが好ましい。このように挿入すれば、被覆部材7の側部70が厚み方向に復元するため、被覆部材7の外面7pと挿入穴23の内壁側面25とが接着剤層29により接着される。被覆部材7は多孔質であり、可撓性および圧縮変形性に富むため、挿入作業は改善される。接着剤層29が固化すれば、被覆部材7で被覆された副弾性体3は本体20の挿入穴23に強固に保持される。よって、挿入穴23から副弾性体3が脱落することが防止される。
【0022】
図1に示すように、被覆部材7は副弾性体3を被覆しているため、被覆部材7は、副弾性体3のうちの外壁側面33に密着する状態となる。殊に、副弾性体3は粘着性を有するため、粘着性によっても、被覆部材7の側部70の内面7iは副弾性体3の外壁側面33に密着しつつ貼り合わされている状態となる。この場合、被覆部材7の側部70の内面7iと副弾性体3の外壁側面33との間には、隙間は実質的に形成されていない。従って、副弾性体3が復元変形するとき、副弾性体3の外壁側面33において、従来技術で発生していた上記した粘着を伴った接触、その後の剥離の現象を避けるのに有利となる。ひいては、外壁側面33における疲労による剥離が抑えられ、副弾性体3の長寿命化を図り得る。
【0023】
更に
図1から理解できるように、被覆部材7の中間部71は、副弾性体3のうちの第1端面31の粘着性により第1端面31に粘着を伴って接触する状態となる。即ち、副弾性体3は粘着性を有するため、被覆部材7の中間部71の内面7iは副弾性体3の第1端面31に常に貼り合わされている状態となる。この場合、中間部71の内面7iと副弾性体3の第1端面31との間についても、隙間は実質的に形成されていない。従って、副弾性体3の第1端面31においても、上記した粘着を伴った接触、その後の剥離の現象を避けるのに有利となり、第1端面31における疲労による剥離が抑えられる。この意味においても、副弾性体3の長寿命化を図り得る。
【0024】
なお、副弾性体3の外壁側面33と被覆部材7の内面7iとは、副弾性体3が有する粘着性により貼り合わされているものの、接着剤層により接着されていない。粘着による拘束力は、接着剤層による拘束力ほど強固ではない、故に、副弾性体3が変形するとき、副弾性体3の外壁側面33の固有の弾性変形を損なうことが抑制される。また被覆部材7は高い伸縮性を有するため、副弾性体3の弾性変形量が大きくても被覆部材7はその変形に追従でき、副弾性体3の固有の弾性変形性を損なうおそれが改善される。
【0025】
なお、
図4は、主弾性体2の蓋弾性体26側から蓋弾性体26に対して垂直方向に視認した底面視を示す。
図1に示すように、副弾性体3は主弾性体2の挿入穴23に個別に配置された状態で、蓋弾性体26により閉蓋されている。単数の挿入穴23に当たり、単数の副弾性体3が収容されている。
【0026】
図1に示すように、副弾性体3の第1端面31は、被覆部材7の中間部71と共に本体20の第1表面21から露出しつつ突出している。第1端面31の突出量はΔh1として示される。中間部71の突出量はΔh2として示される。これによりクッション構造体1に圧縮荷重が負荷されるとき、副弾性体3は優先的に弾性変形でき、その固有のクッション機能を発揮させ易い。使用時には、表皮部材100がクッション構造体1に被覆されることが好ましい。但し表皮部材100を被覆しないで、クッション構造体1を使用することもできる。
【0027】
更に説明を加える。
図2は、無負荷状態のクッション構造体1の単数の副弾性体3付近における内部構造を模式的に示す。
図2に示すように、無負荷状態では、副弾性体3の本来の円柱形状を維持しており、被覆部材7の側部70の外面7pは、挿入穴23の内壁側面25に接着剤層29により接着されている。
図3は、クッション構造体1の単数の副弾性体3付近に圧縮荷重を負荷した状態を模式的に示す。
図3に示すように、圧縮荷重がクッション構造体1に作用する。このため主弾性体2および副弾性体3が圧縮変形する。
図3に示すように、特に、本体20の第1表面21よりも突出する副弾性体3が圧潰するように圧縮変形し、副弾性体3の外壁側面33が拡径方向(矢印D1方向)に被覆部材7と共に膨出を伴って弾性変形する。被覆部材7は伸縮性に富むため、副弾性体3の変形に追従できる。副弾性体3の外壁側面33は粘着性に富む。このため、
図3に示すように、副弾性体3のうち拡径方向(矢印D2方向)に膨出した外壁側面33は、被覆部材7を適宜伸縮させつつ、被覆部材7の内面7iと粘着を伴って接触し続ける。このため被覆部材7と副弾性体3との剥離が抑えられる。圧縮荷重が解除されるときには、
図2に示すように、副弾性体3は元の形状に被覆部材7と共に復帰する。このとき、被覆部材7は伸縮性に富むため、副弾性体3の復帰変形に容易に追従できる。復元変形時においても、被覆部材7の側部70の内面7iは副弾性体3の外壁側面33に粘着性により密着しており、両者の間には隙間は実質的に形成されていない。
【0028】
以上説明したように本実施形態によれば、粘着性を有する有機系弾性材料で形成されている副弾性体3の外壁側面33は、被覆部材7で被覆されつつ挿入穴23に配置されている。このため副弾性体3が本来もつ固有のクッション特性を良好に発揮させることができる。すなわち、クッション構造体1は、主弾性体2および副弾性体3の双方の特性をそれぞれ発揮でき、使用者や物体等に対して良好な複合的弾性感、感圧感、マッサージ効果を与えることができる。
【0029】
また本実施形態によれば、伸縮可能な被覆部材7により副弾性体3は被覆されている。挿入穴23の内壁側面25と被覆部材7の側部70の外面7pとの間における接着剤層29により、副弾性体3は被覆部材7と共に挿入穴23に強固に保持されている。このため組付作業時、使用時等においてクッション構造体1が曲成されるときであっても、挿入穴23からの副弾性体3の脱落が抑制される。更に、副弾性体3と被覆部材7の内面7iとは、副弾性体3が有する粘着性により貼り合わされているものの、接着剤層により接着されていないため、内面7iの拘束力は接着剤層ほど強くない。従って、副弾性体3の固有の弾性変形を損なうことが抑制され、副弾性体3の固有の弾性変形性が確保される。クッション構造体1の使用時には、クッション構造体1を表皮部材100で包囲させることが好ましい。但し、クッション構造体1を表皮部材100で包囲させないで使用しても良い。
【0030】
なお、本体20を形成する発泡材料の硬度(弾性)、密度およびその他の物理的特性を適宜変更することより、クッション構造体1のクッション特性を調整することができる。本体20を構成する弾性発泡材料の物理的特性である硬度については、JIS6400で指定されている25%硬さILDにおいて、例えば、その値が20N/314cm
2以下、10N/314cm
2以下の有機系発泡材料を使用することが好ましい。この場合、副弾性体3が有する特異な物理的特性を良好に維持させつつ、マットレス、座布団、枕、シートなどのクッション構造体1として良好に使用することができる。ILDは英字のINDENTATION(へこみ)、LOAD(荷重)、DEFLECTION(偏り、振れ方)を意味する略称を示す。但し、上記した硬さに限定されるものではない。
【0031】
図5は、副弾性体3を形成しているエラストマの荷重−たわみ特性を示す。エラストマの試験片のサイズはφ50ミリメートル×高さ42.5ミリメートルとした。荷重は0〜10N/314cm
2以内の範囲では、荷重増加に伴いたわみ変位は15mm以内を示す。但し、副弾性体3を形成するエラストマといえども、この変位に限定されるものではなく、クッション構造体1の用途および種類に応じて適宜変更できる。
【0032】
(実施形態2)
図6は実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。本実施形態によれば、
図6に示すように、主弾性体2に形成されている挿入穴23は、主弾性体2の厚み方向(矢印T方向)の双方側に露出する開口23a,23cを備える。開口23a,23cの双方には、蓋弾性体が被着されていない。
図6に示すように、被覆部材7は、副弾性体3の外壁側面33を密着しつつ被覆する側部70と、副弾性体3の第1端面31を密着しつつ被覆する中間部71と、副弾性体3の第2端面32を被覆するように曲成部72kを介して曲成された端部72とを有する。端部72同士は重複しつつ積層されており、副弾性体3の脱落が抑制されており、更に、端部72同士によるクッション性が高められている。なお、副挿入穴23からの弾性体3の脱落を抑制させるためには、端部72同士は接着剤層72mにより互いに接着されていることが好ましいが、場合によっては、接着されていなくても良い。
図6に示すように、副弾性体3の第1端面31は、主弾性体2の第1表面21(例えば上面)よりも露出しつつΔh1突出する。同様に、中間部71も主弾性体2の第1表面21よりも露出しつつΔh2突出する。端部72は主弾性体2の第2表面22(例えば下面)よりも露出しつつΔh3突出する。
【0033】
上記したように本実施形態によれば、副弾性体3は伸縮可能な被覆部材7で被覆されている。挿入穴23の内壁側面25と被覆部材7の側部70の外面7pとの間における接着剤層29により接着されている。この状態で、各副弾性体3は、被覆部材7と共に各挿入穴23にそれぞれ保持されている。このため組付作業時、使用時等において、主弾性体2が曲成されるときであっても、挿入穴23からの副弾性体3の脱落が抑制される。更に、副弾性体3の外壁側面33と被覆部材7の側部70の内面7iとは、副弾性体3が有する粘着性により貼り合わされているものの、接着剤層により接着されていないため、副弾性体3に対する拘束力は接着剤層による拘束力ほど強くない。従って、副弾性体3の固有の弾性変形を損なうことが抑制され、副弾性体3の固有の弾性変形性が確保され易い。更に、副弾性体3は粘着性を有するため、粘着性によっても、被覆部材7の内面7iは副弾性体3のうちの外壁側面33および第1端面31等に貼り合わされて密着されている状態となる。従って、従来技術において発生していた上記した粘着を伴った接触、その後の剥離の現象を避けるのに有利となる。このため従来技術において発生していた副弾性体3の外壁側面33における疲労による剥離が抑えられる。
【0034】
(実施形態3)
図7は実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。本実施形態によれば、
図7に示すように、被覆部材7は、副弾性体3の外壁側面33のみをロール状に被覆している。副弾性体3の一端側(例えば上端側)の第1端面31は、本体20の第1表面21から露出しつつ寸法Δh4突出している。このため副弾性体3の第1端面31側の変形性は良好に確保される。副弾性体3は流動変形性に富む。このため、挿入穴23の中心線24同士の距離LAが接近しているときには、隣接する副弾性体3の第1端面31側の肉部31w同士が互いに接触できるように副弾性体3は弾性変形でき、クッション性を更に改善できる。
【0035】
(実施形態4)
図8は実施形態4を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。本実施形態によれば、
図8に示すように、被覆部材7は可撓性および伸縮性をもつ有機系発泡材料(例えば発泡樹脂または発泡ゴム)で形成されており、副弾性体3の一側(例えば上側)の第1端面31および外壁側面33を被覆している。但し、
図8から理解できるように、副弾性体3の脱落を抑制できる蓋弾性体26が本体20の第2表面22(例えば下面)に接着剤層26mにより接着されている。このため、蓋弾性体26に対面する第2端面32は、被覆部材7で被覆されていない。
図8に示すように、被覆部材7は、副弾性体3の外壁側面33に密着しつつこれを被覆する側部70と、副弾性体3の第1端面31に密着しつつこれを被覆する中間部71とを有する。
【0036】
副弾性体3を主弾性体2に組み付けるには、被覆部材7を副弾性体3に被覆させる。この状態で、被覆部材7で被覆された副弾性体3が挿入穴23に圧入される。被覆部材7は多孔質であり、可撓性および厚み方向に圧縮変形性を有するため、挿入作業は改善される。圧流後に、側部71はこれの厚み方向に復元する。このため挿入穴23の内壁側面25と被覆部材7の側部70の外面7pとの間における摩擦力により、副弾性体3は被覆部材7と共に挿入穴23に保持される。このため組付作業時、使用時等において、挿入穴23からの副弾性体3の脱落が抑制される。更に、副弾性体3の外壁側面33と被覆部材7の側部70の内面7iとは、副弾性体3が有する粘着性により互いに密着しつつ貼り合わされているものの、接着剤により接着されていない。粘着による拘束力は、接着剤層による拘束力ほど強くない。従って、副弾性体3の弾性変形を損なうことが抑制され、副弾性体3の特有の弾性変形性が確保される。また被覆部材7は高い伸縮性を有するため、副弾性体3の弾性変形に追従でき、副弾性体3の固有の弾性変形性を損なうおそれが改善される。
【0037】
(実施形態5)
図9は実施形態5を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。本実施形態によれば、
図9に示すように、主弾性体2に形成されている挿入穴23は、主弾性体2の厚み方向(矢印T方向)の双方側に露出する開口23a,23cを備える。開口23a,23cは蓋弾性体により閉鎖されておらず、露出されている。
図9に示すように、被覆部材7は、副弾性体3の外壁側面33に密着しつつこれを被覆する側部70と、副弾性体3の第1端面31(上面)に密着しつつこれを被覆する中間部71と、副弾性体3の第2端面32(下面)に密着しつつこれを被覆する端部72とを有する。端部72同士は重複しつつ積層されており、端部72同士によるクッション性が高められている。副弾性体3の脱落を抑制させるためには、端部72同士は接着剤層72mにより互いに接着されていることが好ましい。但し接着されていなくても良い。
【0038】
挿入穴23の内壁側面25と被覆部材7の側部70の外面7pとの間における摩擦力により、副弾性体3は被覆部材7と共に挿入穴23に保持されている。このため組付作業時、使用時等において挿入穴23からの副弾性体3の脱落が抑制される。副弾性体3の外壁側面33と被覆部材7の内面7iとは、副弾性体3が有する粘着性により密着されて貼り合わされているものの、接着剤層により接着されていない。粘着による拘束力は接着剤層による拘束力ほど強くない。従って、ゲル状の副弾性体3の固有の弾性変形を損なうことが抑制され、副弾性体3の固有の弾性変形性が確保される。
【0039】
更に、前述したように、副弾性体3は粘着によって、被覆部材7の内面7iは副弾性体3のうちの外壁側面33に密着されつつ貼り合わされている状態となる。従って、従来技術において発生していた上記した粘着を伴った接触、その後の剥離の現象を避けるのに有利となる。このため従来技術において発生していた副弾性体3の外壁側面33における疲労による剥離が抑えられる。
【0040】
(実施形態6)
図10は実施形態6を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。本実施形態によれば、
図10に示すように、主弾性体2に形成されている挿入穴23の内壁側面25のほぼ全域には、凹凸部250が形成されている。副弾性体3を被覆する被覆部材7の外面7pは、凹凸部250に摩擦係合する。これにより摩擦係合力が確保され、副弾性体3の脱落が効果的に抑制される。副弾性体3は有機系多孔質材料(例えば発泡樹脂または発泡ゴム)であるため、凹凸部250の型抜きは容易である。凹凸部250のサイズは適宜設定できる。場合によっては、凹凸部250と外面7pとの間に接着剤層を介在させても良い。
【0041】
(その他)
発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。副弾性体3は円柱形状とされているが、三角柱形状、四角柱形状、六角形状でも良い。これに応じて挿入孔23の平面形状も三角形状、四角形状、六角形状にできる。