(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記応答受信部が受け取った前記周波数許可情報を前記第2の無線システムに属する他の無線装置に転送する転送部をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の無線装置。
前記第1の無線システムは、特定の用途に割り当てられた周波数帯に属し特定のチャネルを利用する無線装置から構成され、前記第2の無線システムは、前記特定の用途に割り当てられた周波数帯を共用することを特徴とする請求項1または2記載の無線装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)以下、図面を参照して、実施形態に係る無線装置について詳細に説明する。
図1に示すように、この実施形態の無線システムは、空きチャネル判定を行うマスタ装置1、マスタ装置1が許可したチャネルで通信を行うアクセスポイント(AP)装置2、AP装置2と通信するSTA装置3を有している。
【0011】
図1において、プライマリシステムPSは、所定の周波数帯の特定のチャネルにおいて免許され、当該チャネルの利用につき他の無線局よりも優先順位が高い無線装置である。プライマリシステムPSは、例えばテレビ用バンドのうち特定チャネルの利用を免許されたテレビ放送局の無線装置などが該当する。マスタ装置1は、プライマリシステムPSが利用する周波数帯のうち、プライマリシステムPSに混信を与えるおそれがなく配下のAP装置2が利用可能なチャネル(周波数)を選択する無線装置である。AP装置2は、プライマリシステムPSが利用する周波数帯の周波数を利用して通信可能な無線装置である。AP装置2は、STA装置3と通信することができる。
【0012】
この実施形態のAP装置2は、STA装置3と無線通信するアクセスポイントとして機能し、プライマリシステムPSと重複する周波数帯の周波数を利用可能に構成されている。プライマリシステムPSは、AP装置2およびSTA装置3(さらにはマスタ装置1)よりも当該周波数帯を使用する優先順位が高く、マスタ装置1・AP装置2・STA装置3は、プライマリシステムPSに対して混信妨害を与えてはならない状態にある。以下に説明する例では、プライマリシステムPSは、テレビジョン放送用バンドの特定チャネルを免許された無線装置であり、マスタ装置1、AP装置2およびSTA装置3は、カバー範囲が限定された無線LANシステム(WLAN)として機能しうる無線装置であるものとして説明する。また、中心周波数および周波数帯域幅により規定され、プライマリシステムPSに割り当てられWLAN装置が通信に用いる周波数帯を「ネットワークチャネル」と呼ぶ。
【0013】
図1に示すように、この実施形態のマスタ装置1は、受信部12、送信部13、インタフェース部(I/F)14を有している。受信部12は、通信相手から送られる電波をアンテナ11を介して受信し、所定の方式で復調する。送信部13は、通信相手に対する情報を変調して無線信号を生成し、アンテナ11を介して通信相手に送信する。I/F14は、受信部12および送信部13と、インターネットなどのネットワーク(NW)15とを接続する。
【0014】
受信部12は、通信相手からの電波をアンテナ11を介して受信し、所定の方式で復調してI/F14を経由してNW15に送る。一方、NW15からの情報は、I/F14を介して送信部13に送られ、送信部13は、当該情報を無線信号に変換してアンテナ11を介して通信相手に送信する。すなわち、受信部12、送信部13およびI/F14は、クライアントたる通信相手を収容するWLANのアクセスポイントとして機能する。受信部12および送信部13は、例えば、IEEE802.11規格に準拠したシステムを用いて実現することができる。なお、受信部12および送信部13が使用する周波数帯は、プライマリシステムPSが使用する周波数帯と少なくとも一部が重複している。
【0015】
また、マスタ装置1は、要求解析部16、混信判定部17、応答生成部18を備えている。要求解析部16は、AP装置2から送られる周波数割当要求の内容を解析する。混信判定部17は、要求解析部16が解析したAP装置2の要求内容に基づき、I/F14を介してNW15に接続されたデータベースDBにアクセスし、要求内容を許可できるか判定する。すなわち、混信判定部17は、AP装置2からの要求内容がプライマリシステムPSに混信を与え得るか否かを判定する。応答生成部18は、混信判定部17の判定結果に基づいてAP装置2への応答情報を生成し、送信部13を介してAP装置2に送信する。
【0016】
この実施形態のAP装置2は、受信部22、送信部23、I/F24を有している。AP装置2における受信部22、送信部23およびI/F24は、マスタ装置1における受信部12、送信部13およびI/F14と共通する機能を有している。なお、I/F24は、インターネットなどのネットワーク(NW)25と接続されるが、NW25はNW15と共通するネットワークであっても、異なるネットワークであってもよい。
【0017】
また、AP装置2は、送信制御部26、要求生成部27、応答解析部28およびサービス検出部29を有している。送信制御部26は、送信部23の送信の制御や、送信周波数、送信電力などの制御をする。要求生成部27は、AP装置2およびその配下のSTA装置3が利用するチャネルや送信電力を選択して要求情報を生成し、送信部23を介してマスタ装置1に送信する。応答解析部28は、マスタ装置1に要求情報を送信した結果得られた応答情報の内容を解析する。送信制御部26は、この解析された応答情報の内容に基づいてAP装置2の利用チャネルおよび送信電力を決定し、送信部23を制御する。サービス検出部29は、受信部22を介してプライマリシステムPSの電波を監視し、プライマリシステムPSのサービスが開始されているか(あるいは開始されたか)を検出する。送信制御部26は、この検出結果に基づいて送信停止制御を行う。
【0018】
STA装置3は、AP装置2とWLANを構成する無線装置である。STA装置3は、AP装置2と共通の構成を有している。
【0019】
データベースDBは、プライマリシステムPSの位置情報、周波数情報、送信電力情報その他のPS基本情報を格納している。データベースDBは、マスタ装置1からのクエリに応じてPS基本情報群から該当するプライマリシステムPSの基本情報を取得し、マスタ装置1に返答する機能を有する。
図1に示す例では、データベースDBとマスタ装置1とはネットワーク15により接続されるものとしているが、これには限定されない。マスタ装置1に備えられた記憶装置などにデータベースDBが構築されても構わない。データベースDBの登録内容は、プライマリシステムPSの許認可権者などにより随時更新される。
【0020】
(要求情報と応答情報)ここで、
図2、
図3A、
図3B、
図4Aおよび
図4Bを参照して、AP装置2が発する要求情報およびマスタ装置1が発する応答情報について説明する。
【0021】
AP装置2は、プライマリシステムPSの周波数帯に属するネットワークチャネルを利用するに先立ち、マスタ装置1に要求情報を送り、AP装置2の位置およびその周辺において当該ネットワークチャネルの利用がプライマリシステムPSに混信を与えるか否か照会する。
図2に示すように、この実施形態のAP装置2は、要求者アドレス(Requester STA address)、応答者アドレス(Responder STA address)、データ長(Length)、理由/結果コード(Reason Result code)、ネットワークチャネル許可ID(Network Channel Enablement Identifier)、運用クラス(Operating class)、チャネル番号(Channel number)および最大送信電力(Maximum Transmit power)の各要素を要求情報としてマスタ装置1に送る。同様に、マスタ装置1は、AP装置2からの要求情報に応じて応答情報を発する。応答情報は、要求情報と共通の要素を有しており、要求者アドレス、応答者アドレス、データ長、理由/結果コード、ネットワークチャネル許可ID、運用クラス、チャネル番号および最大送信電力を要素として含んでいる。
【0022】
要求者アドレスは、この手順を開始する要求者であるAP装置2のアドレスである。例えば、AP装置2のMACアドレスのような論理アドレスや、物理的な位置情報などである。応答者アドレスは、チャネル許可を与えるマスタ装置1のアドレスである。要求者アドレスと同様に、応答者アドレスは、マスタ装置1のMACアドレスのような論理アドレスや、物理的な位置情報などである。データ長は、要求情報を構成する総フレーム長である。
【0023】
理由/結果コードは、マスタ装置1が要求情報に基づきデータベースDBを検索した結果、要求したネットワークチャネルが利用可能かどうか、利用できない場合はその理由などが定義される。ネットワークチャネル許可IDは、マスタ装置1からAP装置2へ割り当てられるIDである。運用クラスは、AP装置2が利用を求めるネットワークチャネルのセット(組)であり、チャネル番号は、対応するチャネルの番号である。運用クラスおよびチャネル番号は、当該ネットワークチャネルが利用可能かどうかを判定するためのチャネル周波数および周波数帯域幅を特定する。運用クラスの例としては、例えばドラフト標準であるIEEE802.11afの付録Jに示されるものが挙げられる。チャネル番号は、要求情報に含まれる場合は利用を要求するネットワークチャネルのチャネル番号であり、応答情報に含まれる場合は利用が許可されたネットワークチャネルのチャネル番号を意味することになる。最大送信電力は、要求情報に含まれる場合は利用を要求する最大送信電力であり、応答情報に含まれる場合は利用が許可された送信電力である。ただし、最大送信電力の情報はなくても構わない。
【0024】
図3Aおよび
図3Bに示すのは、要求情報および応答情報を、IEEE802.11にて規定されるパブリックアクションフレーム(Public Action Frame)を用いて伝送する場合のフレーム構成の例である。
図3Aに示すように、要求情報および応答情報をパブリックアクションフレームを用いて伝送する場合、例えば、カテゴリ、アクション値、要求者アドレス、応答者アドレス、データ長、理由/結果コード、ネットワークチャネル許可ID、運用クラス、チャネル番号および最大送信電力を要素として含めることができる。
【0025】
図3Aに示す要求情報および応答情報の各要素のうち、カテゴリは、IEEE802.11−2007における表7−24にて規定されるパブリックアクションに対応する値が1オクテットで定義される。アクション値は、
図3Bに示す表にて定義される各機能に対応する値が1オクテットで定義される。この実施形態の例では、「ネットワークチャネル使用可能化」に対応する「9」がアクション値として設定される。理由/要求コードは、応答情報が生成された理由が1オクテットで定義される。このコードは、IEEE802.11y−2008における表7−57f1にて規定されるものである。
【0026】
要求者アドレスおよび応答者アドレスは、それぞれ6オクテットで定義される。ネットワークチャネル許可IDは、16ビットの番号が割り当てられる。最大送信電力は、TVバンド運用のための送信電力が[dBm]の単位で定義される。
【0027】
一方、
図2に示すネットワークチャネル使用可能化要素は、プロトコルを用いて伝送することもできる。
図4Aおよび
図4Bに示すのは、要求情報および応答情報を、GASプロトコル(Generic Advertisement Serviceプロトコル)を用いて伝送する場合の、登録された位置クエリプロトコル要素(Registered Location Query Protocol element:RLQP)の例である。
図4Aに示すように、要求情報および応答情報をGASプロトコルのRLQPにより伝送する場合、情報ID、要求者アドレス、応答者アドレス、データ長、理由/結果コード、ネットワークチャネル許可ID、運用クラス、チャネル番号および最大送信電力を要素として含めることができる。これらの要素のうち情報IDは、
図4Bに示す表にて定義される情報名に対応する情報IDの値が1オクテットで定義される。
図4Aおよび
図4Bに示す例では、「ネットワークチャネル使用可能化」に対応する「3」が情報IDとして設定される。
このように、要求情報および応答情報は、混信の有無を判定する際に有益な情報が含まれている。
【0028】
(第1の実施形態の動作)続いて、
図1ないし
図5を参照して、第1の実施形態に係る無線システムの動作を説明する。
【0029】
AP装置2(およびSTA装置3)がプライマリシステムPSに割り当てられた周波数帯に属するネットワークチャネルを利用する場合、要求生成部27は、必要な運用クラス、チャネル番号および最大送信電力を一組以上含む要求情報を設定し、要求フレームを生成する(ステップ101。以下「S101」のように称する。)。例えば、
図3Aに示すように、カテゴリとして所定の値、アクション値は「9」、要求者アドレスはAP装置2のMACアドレス、応答者アドレスはマスタ装置1のMACアドレス、データ長は所定の値、理由/結果コードおよびネットワークチャネル許可IDは空欄、運用クラスは所定のクラス、チャネル番号を1ないし3、最大送信電力を100[mW]として「20」[dBm]のようなパラメータが定義された要求フレームが生成される。要求情報は、アプリケーション上の要請、AP装置2のハードウェア上の要請、サービス検出部によるチャネル測定結果などに基づき生成することができる。
【0030】
要求フレームが生成されると、送信部23は、要求フレームを変調しアンテナ21を介してマスタ装置1に送信する(S102)。
【0031】
マスタ装置1の受信部12がAP装置2からの要求フレームを受信すると(S103)、要求解析部16は、要求フレームを解析して要求情報を取り出す(S104)。
【0032】
要求情報が取り出されると、混信判定部17は、要求情報に含まれるAP装置2のアドレスおよびマスタ装置1自身の地理的な位置情報の少なくとも一方に基づいて、AP装置2の位置するエリアにおいて利用可能なネットワークチャネルの検索をデータベースDBに要求するクエリを生成する(S105)。なお、AP装置2の地理的位置情報は、AP装置2のMACアドレスやAP装置2の設置者情報などから検索等により得ることができるものとする。
【0033】
クエリが生成されると、混信判定部17は、I/F14を介してデータベースDBに当該クエリを発出する(S106)。
【0034】
クエリを受け取ると(S107)、データベースDBは、クエリの内容を解析して(S108)、マスタ装置1およびAP装置2のうち少なくとも一方の地理的位置情報に基づき混信を生じうるプライマリシステムPSのリストを生成し、該リストに基づきAP装置2が利用可能なネットワークチャネルのチャネルリストを生成する。データベースDBは、生成したチャネルリストをマスタ装置1に返答する(S110)。ここで、データベースDBがマスタ装置1に送るチャネルリストは、混信を与えうるプライマリシステムPSのリストおよびAP装置2が利用可能なネットワークチャネルのリストのうち少なくとも一方を含むものとする。
【0035】
チャネルリストを受け取ると、混信判定部17は、チャネルリストと要求情報とを比較し、AP装置2が要求したチャネルの中からAP装置2が利用可能なチャネルを抽出した許可チャネルリストを生成する(S111)。すなわち、チャネルリストには、混信を与えうるプライマリシステムPSのリストおよびAP装置2が利用可能なネットワークチャネルのリストのうち少なくとも一方が含まれているから、このリストとAP装置2が要求したネットワークチャネルの情報とを比較することで、混信問題が生じないネットワークチャネルを得ることができる。
【0036】
許可チャネルリストが生成されると、混信判定部17は、許可した運用クラス、チャネル番号および最大送信電力に基づき
図3Aに示すような応答情報を生成し、応答生成部18は、応答情報に基づいて応答フレームを生成する(S112)。送信部13は、生成された応答フレームをAP装置2に対して送信する。
【0037】
受信部22が応答フレームを受信すると(S113)、応答解析部28は、応答フレームを解析して応答情報を取り出す(S114)。取り出された応答情報は送信制御部26に送られる。
【0038】
応答情報を得ると、送信制御部26は、応答情報に記述された許可された運用クラス、チャネル番号および最大送信電力に基づき送信部23のネットワークチャネル(送信周波数)および送信電力を設定する(S115)。これにより、送信部23の送信準備が整うことになる。
【0039】
送信準備が整うと、サービス検出部29は、受信部22を制御してプライマリシステムPSの電波が受信できるか確認する(S116)。受信部22がプライマリシステムPSの電波を受信した場合(S117のYes)、設定したネットワークチャネルを利用することができないから、送信制御部26は、応答情報に記述された許可されたネットワークチャネルの中から他のチャネル番号および送信電力を選択して送信部23の送信周波数および送信電力を再設定する(S115)。
【0040】
受信部22がプライマリシステムPSの電波を受信しなかった場合(S117のNo)、送信制御部26は、送信部23に送信許可を発する。送信部23は、設定した運用クラス、チャネル番号および送信電力によりSTA装置3との通信を開始する(S118)。通信に際して、送信部23は、マスタ装置1から受け取った応答フレーム(あるいは許可チャネルリスト)をSTA装置3に転送して、STA装置3が転送された情報に基づきネットワークチャネル設定および電波検出を行ってもよい。また、STA装置3は、マスタ装置1からの応答フレーム(あるいは許可チャネルリスト)を直接受信して、チャネル設定および電波検出を自ら行っても構わない。
【0041】
サービス検出部29は、所定のタイミングで受信部22を制御してプライマリシステムPSの電波が受信できるか監視している(S119)。プライマリシステムPSの電波が受信できない間は(S119のNo)、送信部23はそのままの条件で通信を続ける。
【0042】
受信部22がプライマリシステムPSの電波を受信した場合(S119のYes)、送信制御部26は、応答情報に記述された許可されたチャネルの中から他のチャネル番号および送信電力を選択して送信部23の送信周波数および送信電力を再設定する(S115)。以後、この動作を繰り返し行う。
【0043】
図6ないし
図10に示すのは、第1の実施形態に係る無線システムの具体例を示す概念図である。
図6は、マスタ装置1が、固定の無線装置により構成され、AP装置2が、WLANを構成するアクセスポイント装置により構成された例を示している。AP装置2が要求フレームをマスタ装置1に送ると(S102)、マスタ装置1はクエリをデータベースDBに送り(S106)、データベースDBはチャネルリストをマスタ装置1に返す(S110)。その後、マスタ装置1は、応答フレームをAP装置2に送る(S112)。応答フレームは、適宜STA装置3に転送される。あるいは、STA装置3がマスタ装置1から直接応答フレームを受信してもよい。
図7は、
図6に示す例と同様に、マスタ装置1が、マスタ装置としての機能を有するSTA装置により構成され、AP装置2が、WLANを構成するアクセスポイント装置により構成された例を示している。なお、
図6ないし
図10、
図12および
図13に示すように、マスタ装置1とデータベースDBとの間の通信は、有線ネットワークを介して実現してももよいし、無線ネットワークを介して実現もよい。
【0044】
図8および
図9は、第1の実施形態におけるAP装置2が配下のSTA装置3を有さず、AP装置2どうしでアドホックにWLANを構成する場合の例である。
図8に示す例では、マスタ装置1は固定の無線装置により構成され、
図9に示す例では、マスタ装置1はマスタ装置としての機能を有するSTA装置により構成されている。
【0045】
図10は、アクセスポイントとして機能するAP装置2APと、AP装置2APの配下に属するSTA装置2CLが、ともにマスタ装置1から直接許可チャネルリストを得る例を示している。
【0046】
すなわち、この実施形態の無線システムでは、プライマリシステムPSのPS基本情報と要求情報を元に許可チャネルリストを発行するマスタ装置と、その許可チャネルリストに基づいて利用するネットワークチャネルを設定するSTA装置とを有するので、プライマリシステムPSに混信を与えうるネットワークチャネルや送信電力などを設定候補から外すことができる。PS基本情報はプライマリシステムPSの許認可権者が更新する情報であるから、混信を予め防ぐことが可能になる。特に、プライマリシステムPSが、レーダーのように割り当てられた周波数帯全域を一様に利用するシステムではなく、テレビ放送のように割り当てられた周波数帯のうち一定の帯域(チャネル)単位で利用されるシステムにおいて有効であり、きめ細かい混信予防を実現することができる。
【0047】
また、この実施形態のAP装置2(およびSTA装置3)は、サービス検出部を備えてプライマリシステムPSの電波の受信の有無を監視し、応答情報の許可チャネルリストと併せて送信の可否を判定するので、より確実に混信を防ぐことができる。
【0048】
なお、上記実施形態では、マスタ装置1がデータベースDBに地理的位置情報を送り、データベースDBが当該位置情報に基づきプライマリシステムPSの周波数帯の中から利用可能なチャネルリストを生成しているが、これには限定されない。マスタ装置1が地理的位置情報に加えて要求情報に含まれる送信電力情報をも送るように構成して、データベースDBが地理的位置情報および送信電力情報に基づいてチャネルリストを生成してもよい。あるいは、マスタ装置1が、データベースDBから送られたチャネルリストおよび要求情報に含まれる送信電力情報に基づいて、許可チャネルリストを生成するように構成してもよい。さらに、許可チャネルリストは、免許されたユーザであるプライマリシステムPSへ混信を与える可能性や、マスタ装置1のチャネル管理のキャパシティなどにより決定してもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、マスタ装置1はサービス検出動作を行っていないが、AP装置2と同様にサービス検出部を備えてもよい。すなわち、電波を発射する前に応答情報およびプライマリシステムPSの電波が発射されていないことを確認した上で、マスタ装置1が電波を発射可能とするように構成してもよい。
【0050】
このように、この実施形態の無線システムでは、AP装置が、マスタ装置にプライマリシステムPSの周波数帯の中から利用可能なチャネルを確認した上で当該チャネルを利用するので、プライマリシステムPSに混信を与える可能性を低くすることができる。
【0051】
(第2の実施形態)続いて、
図11、
図12および
図14を参照して、第2の実施形態に係る無線システムについて説明する。この実施形態の無線システムは、第1の実施形態におけるマスタ装置1がWLANのアクセスポイントAPの機能を有し、同じくAP装置2がWLANのクライアントの機能を有するように構成したものである。以下の説明において、第1の実施形態と共通する機能構成や動作については共通の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0052】
図11および
図12に示すように、この実施形態の無線システムは、アクセスポイントとして機能するマスタ装置1aと、マスタ装置1aの配下でWLANを構成するクライアントとして機能するSTA装置2aを有している。この実施形態の無線システムでは、クライアントたるSTA装置2aからの要求フレームを待たずに、アクセスポイントたるマスタ装置1aが自ら要求情報を生成してクエリを発出する。
【0053】
この実施形態のマスタ装置1aは、受信部12、送信部13、I/F14、混信判定部17を有しており、これらの要素は第1の実施形態と共通する。マスタ装置1aは、要求生成部16aおよび許可生成部18aを有している。要求生成部16aは、第1の実施形態における要求生成部27と対応し、要求生成部27は、マスタ装置1aおよび配下のSTA装置2aが利用するネットワークチャネルや送信電力を選択して要求情報を生成する。許可生成部18aは、第1の実施形態における応答生成部18に対応し、混信判定部17の判定結果に基づいてSTA装置2aへの許可情報を生成し、送信部13を介してクライアント装置2aに送信する。ここで、許可情報は、第1の実施形態における応答情報に相当するものである。
【0054】
一方、この実施形態のSTA装置2aは、受信部22、送信部23、I/F24、送信制御部26、要求生成部27、およびサービス検出部29を有している。これらの構成要素は、第1の実施形態におけるAP装置2と共通する。さらに、STA装置2aは、許可解析部28aを有している。許可解析部28aは、第1の実施形態における応答解析部28と対応し、マスタ装置1aから送られる許可フレームの内容を解析する。
【0055】
(第2の実施形態の動作)続いて、
図14を参照して、この実施形態の無線システムの動作を説明する。
図14に示すように、この実施形態の無線システムでは、マスタ装置1aが要求情報の生成およびクエリの発出を行い、プライマリシステムPSに混信を与えないネットワークチャネルを示すチャネルリストを得た後は、許可チャネルリストを許可情報として配下のSTA装置2aに転送する。
【0056】
アクセスポイントたるマスタ装置1a(およびSTA装置2a)が、プライマリシステムPSに割り当てられた周波数帯に属するネットワークチャネルを利用する場合、要求生成部16aは、必要な運用クラス、チャネル番号および最大送信電力を一組以上含む要求情報を設定する(S201)。このとき、
図3Aに示すフレーム形式に沿った要求情報とすることができる。
【0057】
要求情報が生成されると、混信判定部17は、マスタ装置1a自身の地理的位置情報に基づいて、マスタ装置1aおよび配下のSTA装置2aが位置するエリアにおいて利用可能なネットワークチャネルの検索をデータベースDBに要求するクエリを生成する(S105)。
【0058】
クエリが生成されると、混信判定部17は、I/F14を介してデータベースDBに当該クエリを発出する(S106)。以後、クエリに基づいてデータベースDBが検索処理を行い、チャネルリストが返答されるまでは第1の実施形態のステップ107から110までと共通する(S107〜S110)。
【0059】
チャネルリストを受け取ると、混信判定部17は、チャネルリストと要求情報とを比較し、自ら生成した要求情報のチャネルの中からマスタ装置1aおよび配下のSTA装置2aが利用可能なチャネルを抽出した許可チャネルリストを生成する(S111)。
【0060】
許可チャネルリストが生成されると、混信判定部17は、許可した運用クラス、チャネル番号および最大送信電力に基づき
図3Aに示すような許可情報を生成し、許可生成部18aは、許可情報に基づいて許可フレームを生成する(S212)。送信部13は、生成された許可フレームをSTA装置2aに対して送信する。
【0061】
受信部22が許可フレームを受信すると(S213)、許可解析部28aは、許可フレームを解析して許可情報を取り出す(S214)。取り出された許可情報は送信制御部26に送られる。
【0062】
許可情報を得ると、送信制御部26は、許可情報に記述された許可された運用クラス、チャネル番号および最大送信電力に基づき、送信部23のネットワークチャネル(送信周波数)および送信電力を設定する(S115)。これにより、送信部23の送信準備が整うことになる。以後、プライマリシステムPSの電波検出、通信開始制御等のステップは、第1の実施形態におけるステップ116ないしS119と共通する。
【0063】
なお、
図11、
図12および
図14に示す例では、マスタ装置1aはサービス検出動作を行っていないが、アクセスポイントとして電波を発射する場合には、STA装置2aと同様にサービス検出部を備えてもよい。すなわち、電波を発射する前に許可情報およびプライマリシステムPSの電波が発射されていないことを確認した上で、マスタ装置1aが電波を発射可能とするように構成してもよい。これにより、プライマリシステムPSに対して混信を与える可能性を低くすることができる。
【0064】
このように、この実施形態の無線システムによれば、プライマリシステムPSに割り当てられた周波数帯から利用するネットワークチャネルの許可を発するマスタ装置が、WLANのアクセスポイントとしても機能する。従って、WLAN全体が利用するネットワークチャネルの許可をアクセスポイントたるマスタ装置1aが代表して得ることができる。これは、通信シーケンスを簡略化するとともに通信トラフィックを抑えることに寄与するものである。
【0065】
(第2の実施形態の変形例)続いて、
図11、
図13および
図14を参照して、第3の実施形態に係る無線システムについて説明する。この実施形態の無線システムは、第2の実施形態におけるマスタ装置1aを、アクセスポイント機能を持つアクセスポイントAPとデータベースDBからチャネルリストを得て許可情報を生成する演算部PCとに分離して構成したものであり、基本的動作は第2の実施形態と共通する。
【0066】
この変形例の無線システムによれば、マスタ装置1aの構成を柔軟にすることができる。例えば、アクセスポイントAPと演算部PCとを地理的に離れた場所に設置することができる。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態およびその動作例のみに限定されるものではない。本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。