(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記作動レバーと前記片作動ばねとを別体構造とし、前記作動レバー、および前記片作動ばねの少なくとも何れか一方に前記調整機構としての機能をもたせることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の時計用デテント脱進機。
少なくとも、前記レバー調整部の前記レバー先端部、及び前記片作動ばねの前記ばね先端部を、前記てんぷに対する接離方向に沿ってスライド移動可能に設けたことを特徴とする請求項8に記載の時計用デテント脱進機。
【背景技術】
【0002】
従来から、機械式時計の歩度を維持するための脱進機としてデテント脱進機が知られている。この種の脱進機の機構は、スプリングデテント脱進機(Spring Detent Escapement)とピボットデテント脱進機(Pivoted Detent Escapement)の2つに大別される(例えば、特許文献1、特許文献2、非特許文献1参照)。
以下、各デテント脱進機の基本的構成について説明する。
【0003】
図16は、従来のスプリングデテント脱進機の一例を示す斜視図である。
同図に示すように、スプリングデテント脱進機300は、がんぎ車301と、回転軸であるてん真302を中心に自由振動するてんぷ303と、デテントレバー304とを備えている。てんぷ303は、がんぎ車301の歯部301aと接触可能な振り石305、およびデテントレバー304に取り付けられている片作動ばね309と接触可能な外し石306を有している。
【0004】
デテントレバー304は、この基端に設けられた復帰ばね307を介して固定されている。復帰ばね307は、デテントレバー304をがんぎ車301に対して接離可能に支持していると共に、デテントレバー304を原位置に復帰するように付勢している。すなわち、デテントレバー304は、復帰ばね307の基端を支点304aとしてがんぎ車301に接離可能に構成されている。
【0005】
また、デテントレバー304には、がんぎ車301の歯部301aと接触可能な止め石308が設けられている。さらに、デテントレバー304の基端側には、片作動ばね309の基端が固定されている。片作動ばね309は、この先端がデテントレバー304の先端よりも僅かに突出するようにデテントレバー304の長手方向に沿って形成されている。すなわち、片作動ばね309は、てんぷ303のてん真302とデテントレバー304の支点304aとを通る直線上に沿うように形成されている。そして、片作動ばね309の先端が、てんぷ303の外し石304と接触するようになっている。
【0006】
このような構成のもと、てんぷ303の自由振動により外し石306が矢印CCW30方向(
図16における反時計回り方向)に向かって回転すると、片作動ばね309を介してデテントレバー304が押圧される。すると、がんぎ車301の歯部301aに接触していた止め石308が歯部301aから離脱し、がんぎ車301とデテントレバー304との係合が解除される。そして、がんぎ車301が1歯分回転する。
がんぎ車301が1歯分回転する間に、デテントレバー304に復帰ばね307の付勢力が作用し、デテントレバー304が原位置に戻る。これにより、がんぎ車301の歯部301aに止め石308が再び接触する。すなわち、がんぎ車301とデテントレバー304とが係合し、がんぎ車301の回転が停止される。
【0007】
一方、てんぷ303の自由振動により外し石306が逆転し、矢印CW30方向(
図16における時計回り方向)に向かって回転すると、この外し石306によって片作動ばね309がデテントレバー304から離反する方向に向かって押圧される。このとき、片作動ばね309が弾性変形する一方、デテントレバー304は停止したままの状態となる。外し石306に押圧された片作動ばね309は、この片作動ばね309から外し石306が離反した後、片作動ばね309自身の復元力により原位置に戻る。
【0008】
すなわち、外し石306が矢印CCW30方向に向かって回転し、片作動ばね309を介してデテントレバー304が押圧される際、片作動ばね309は、何ら動作していないことになる。これに対し、外し石306が矢印CW30方向に向かって回転すると、片作動ばね309が弾性変形して動作することになる。
そして、この動作が繰り返し行われることにより、機械式時計の輪列が一定速度で駆動する。
【0009】
図17は、従来のピボットデテント脱進機の一例を示す斜視図である。なお、
図16のスプリングデテント脱進機300と同一態様には、同一符号を付して説明する。
同図に示すように、ピボットデテント脱進機400は、がんぎ車301と、てん真302を中心に自由振動するてんぷ403と、デテントレバー404とを備えている。ここで、ピボットデテント脱進機400とスプリングデテント脱進機300との相違点は、デテントレバーを原位置に復帰させる付勢手段が異なる点にある。
【0010】
すなわち、ピボットデテント脱進機400のデテントレバー404は、回転軸410を介して回転自在に支持されており、これによってがんぎ車301に対して接離可能となっている。また、デテントレバー404に設けられている復帰ばね407は、回転軸410を取り囲むように渦巻きばねで構成されており、デテントレバー404を原位置に復帰するように付勢している。
【0011】
さらに、デテントレバー404には、この長手方向に略直交し、かつ回転軸410を通る直線P100上に片作動ばね409の基端が固定されている。片作動ばね409は、デテントレバー404の長手方向に沿うように、つまり、てんぷ403のてん真302とデテントレバー404の回転軸410とを通る直線上に沿うように形成されており、その先端がてんぷ403の外し石306と接触するようになっている。
【0012】
このような構成のもと、てんぷ403が自由振動することにより、外し石306が矢印CCW31方向(
図17における反時計回り方向)に向かって回転したり、矢印CW31方向(
図17における時計回り方向)に向かって回転したりすると、これに基づいて片作動ばね409が動作したり、何ら動作しなかったりする。また、デテントレバー404の止め石308ががんぎ車301の歯部301aに対して係合したり離脱したりする。これにより、機械式時計の輪列が一定速度で駆動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上述の従来技術にあっては、片作動ばね309,409を動作させる際、これらのばね力に抗して外し石306を回転させることになるので、てんぷ303,403の自由振動に対してエネルギーロスが生じてしまう。また、外し石306に対するデテントレバー304,404、および片作動ばね309,409の位置ががんぎ車301の動作に影響を及ぼす。
【0016】
すなわち、例えば、外し石306と片作動ばね309,409との接触面積が小さいと、この分片作動ばね309,409ががんぎ車301から離反する方向に向かう変位量が小さくなる。このため、がんぎ車301の歯部301aに対するデテントレバー304,404の止め石308,308の離脱動作を正常に行うことが困難となり、がんぎ車301を1歯分ずつ回転させることができなくなる。
【0017】
また、デテントレバー304,404の先端位置がてんぷ303,403に近づき過ぎると、外し石306とデテントレバー304,404とが接触してしまう虞がある。この場合、てんぷ303,403の自由振動がデテントレバー304,404によって阻害され、てんぷ303,403が正常に動作できなくなり、この結果がんぎ車301が正常に動作しなくなる。
【0018】
このようなことから、外し石306に対するデテントレバー304,404、および片作動ばね309,409の位置決めを高精度に行うことが必要になる。このため、デテントレバー304,404、および片作動ばね309,409の位置調整作業が煩わしくなる。
【0019】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、部品の位置調整作業を容易化し、がんぎ車を確実に正常動作させることができる時計用デテント脱進機、および機械式時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の課題を解決するために、本発明に係る時計用デテント脱進機(例えば、デテント脱進機1)は、がんぎ車(例えば、がんぎ車2)と、このがんぎ車の歯部(例えば、歯部2a)と接触可能な振り石(例えば、振り石3)、および外し石(例えば、外し石4)を有し、てん真(例えば、てん真9)を中心に自由振動するてんぷ(例えば、てんぷ5)と、前記がんぎ車の歯部と接触可能な止め石(例えば、止め石6)を有し、前記がんぎ車に対して接離可能に支持されている作動レバーと、前記外し石と接触可能、かつ前記作動レバーに対して接離方向に沿って弾性変形可能な片作動ばね(片作動ばね24)と、
を備え、前記作動レバーは、レバー本体(例えば、レバー本体51)と、このレバー本体と別体で、かつ少なくとも前記レバー先端部を有するレバー調整部(例えば、レバー調整部52)とにより構成され、このレバー調整部は、前記作動レバーのレバー先端部(例えば、先端部58)、および前記片作動ばねのばね先端部(例えば、舌片部32c)の少なくとも何れか一方の前記外し石との相対位置を調整可能な調整機構
として機能することを特徴とする。
このように、調整機構を設けることにより、作動レバーのレバー先端部、および片作動ばねのばね先端部の位置を容易、かつ高精度に調整することが可能になる。このため、外し石に対する作動レバーのレバー先端部、および片作動ばねのばね先端部の相対位置を高精度に決めることができる。よって、外し石と作動レバー、および片作動ばねとを所望の接触状態とし、これら作動レバー、および片作動ばねを動作させることができるので、がんぎ車を確実に正常動作させることができる。
また、レバー本体に対し、レバー調整部を相対移動させるだけでレバー先端部の位置を調整することができる。これにより、確実に外し石を片作動ばねに確実に接触させつつ、外し石と作動レバーとの接触を回避できる。よって、がんぎ車を確実に正常動作させることができる。
さらに、調整機構を簡素な構造とすることができるので、製造コストの増大を抑制することが可能になる。
【0022】
本発明に係る時計用デテント脱進機は、前記レバー本体と前記レバー調整部とを第1スナップフィット機構(例えば、スナップフィット機構60)を介して連結したことを特徴とする。
このように構成することで、互いに別体となるレバー本体とレバー調整部とを容易に連結することができる。また、レバー本体に対するレバー調整部の位置調整を容易に行うことができる。
【0023】
本発明に係る時計用デテント脱進機は、前記レバー本体に対する前記レバー調整部の位置決めを行うための第1位置決め機構(例えば、位置決め用ボルト81、位置調整カム85)を備えたことを特徴とする。
このように構成することで、レバー本体に対するレバー調整部の位置調整をさらに容易に行うことができる。
【0024】
本発明に係る時計用デテント脱進機は、前記作動レバーと前記片作動ばね(例えば、片作動ばね124)とを別体構造とし、前記作動レバー、および前記片作動ばねの少なくとも何れか一方に前記調整機構としての機能をもたせることを特徴とする。
このように構成することで、簡素な構造で作動レバーに対して片作動ばねを移動させたり、片作動ばねに対して作動レバーを移動させたりして両者の相対位置を調整することができる。このため、外し石を片作動ばねに確実に接触させつつ、外し石と作動レバーとの接触を回避できる。よって、がんぎ車を確実に正常動作させることが可能になると共に、製造コストの増大を抑制することが可能になる。
【0025】
本発明に係る時計用デテント脱進機は、前記片作動ばねを、少なくとも前記ばね先端部が前記てんぷに対する接離方向に沿ってスライド移動可能となるように設けたことを特徴とする。
このように構成することで、外し石を片作動ばねに確実に接触させつつ、外し石と作動レバーとの接触を回避するように、より容易に調整することができる。
【0026】
本発明に係る時計用デテント脱進機は、前記作動レバーと前記片作動ばねとを第2スナップフィット機構(例えば、スナップフィット機構260)を介して連結したことを特徴とする。
このように構成することで、互いに別体となる作動レバーと片作動ばねとを容易に連結することができる。また、作動レバーと片作動ばねとの相対位置を容易に調整することができる。
【0027】
本発明に係る時計用デテント脱進機は、前記作動レバーに対する前記片作動ばねの位置決めを行うための第2位置決め機構(例えば、位置決め用ボルト181、位置調整カム185)を備えたことを特徴とする。
このように構成することで、作動レバーと片作動ばねとの相対位置をさらに容易に調整することができる。このため、容易に外し石と作動レバー、および片作動ばねとを所望の接触状態とすることができる。
【0028】
本発明に係る時計用デテント脱進機は、前記作動レバーを、レバー本体(例えば、レバー本体451)と、このレバー本体と別体で、かつ少なくとも前記レバー先端部を有するレバー調整部(例えば、レバー調整部452)とにより構成すると共に、前記
レバー本体と前記片作動ばね(例えば、片作動ばね424)とを別体構造とし、前記レバー調整部と前記片作動ばねとを一体成形し、これらレバー調整部、および片作動ばねを、前記調整機構として機能させたことを特徴とする。
このように構成することで、レバー調整部と片作動ばねとの相対位置関係を固定しつつ、これらレバー調整部、および片作動ばねの位置調整を同時に行うことができる。このため、より容易に、外し石を片作動ばねに確実に接触させつつ、外し石とレバー調整部との接触を回避することができる。
【0029】
本発明に係る時計用デテント脱進機は、少なくとも、前記レバー調整部の前記レバー先端部、及び前記片作動ばねの前記ばね先端部を、前記てんぷに対する接離方向に沿ってスライド移動可能に設けたことを特徴とする。
このように構成することで、外し石を片作動ばねに確実に接触させつつ、外し石と作動レバーとの接触を回避するように、さらに容易、かつ確実に調整することができる。
【0030】
本発明に係る時計用デテント脱進機は、前記作動レバー、および前記片作動ばねを支持可能なデテント固定部(例えば、デテント固定部21)と、このデテント固定部を地板(例えば、地板102)に固定可能、かつ前記地板に対して相対回転可能なワッシャ(例えば、固定ワッシャ12)と、
前記デテント固定部と前記ワッシャと共に前記地板に固定可能、かつ前記地板に対して相対回転可能なジョイント部(例えば、ジョイント部16)と、このジョイント部に着脱可能に設けられた回転レバー(例えば、回転レバー14)とを設け、これらワッシャ、
ジョイント部、および回転レバーを、前記調整機構として機能させることを特徴とする。
このように構成することで、デテント固定部を介し、作動レバーのレバー先端部、および片作動ばねのばね先端部の位置をデテント固定部の回転方向に調整することができる。
このため、外し石に対する作動レバーのレバー先端部、および片作動ばねのばね先端部の位置をさらに容易、かつ高精度に調整することができる。
【0031】
本発明に係る機械式時計(例えば、機械式時計100)は、請求項1〜請求項11の何れかに記載の時計用デテント脱進機と、動力源を構成するぜんまい(例えば、ぜんまい111)と、このぜんまいが巻き戻されるときの回転力により回転する表輪列(例えば、表輪列105)とを備え、この表輪列の回転を前記時計用デテント脱進機により制御することを特徴とする。
このように構成することで、部品の位置調整作業を容易化し、がんぎ車を確実に正常動作させることができる機械式時計を提供できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、調整機構を設けることにより、作動レバーのレバー先端部、および片作動ばねのばね先端部の位置を容易、かつ高精度に調整することが可能になる。このため、外し石に対する作動レバーのレバー先端部、および片作動ばねのばね先端部の相対位置を高精度に決めることができる。よって、外し石と作動レバー、および片作動ばねとを所望の接触状態とし、これら作動レバー、および片作動ばねを動作させることができるので、がんぎ車を確実に正常動作させることができる。
また、レバー本体に対し、レバー調整部を相対移動させるだけでレバー先端部の位置を調整することができる。これにより、確実に外し石を片作動ばねに確実に接触させつつ、外し石と作動レバーとの接触を回避できる。よって、がんぎ車を確実に正常動作させることができる。
さらに、調整機構を簡素な構造とすることができるので、製造コストの増大を抑制することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第一実施形態)
(機械式時計)
次に、この発明の第一実施形態を
図1〜
図8に基づいて説明する。
図1は、機械式時計のムーブメントを裏蓋側からみた平面図である。
同図に示すように、機械式時計100は、ムーブメント101を備えている。ムーブメント101は、このムーブメント101の基板を構成する地板102を有している。地板102には巻真案内孔103が形成されており、ここに巻真104が回転可能に組み込まれている。
【0035】
また、ムーブメント101の裏側(
図1における紙面奥側)には、おしどり、かんぬき、およびかんぬき押さえを含む切換装置(不図示)が配置されている。この切換装置により、巻真104の軸方向の位置が決定するようになっている。
一方、ムーブメント101の表側(
図1における紙面手前側)には、表輪列105を構成する四番車106、三番車107、二番車108、および香箱車110が配置されていると共に、表輪列105の回転を制御するデテント脱進機1が配置されている。
【0036】
香箱車110は、ぜんまい111を有しており、巻真104を回転させると不図示のつづみ車が回転し、さらにきち車、丸穴車、および角穴車(何れも不図示)を介してぜんまい111が巻き上げられるようになっている。そして、ぜんまい111が巻き戻される際の回転力により香箱車110が回転し、さらに二番車108が回転するように構成されている。
二番車108は、香箱車110の不図示の香箱歯車に噛合う二番かなと、二番歯車(何れも不図示)とを有している。二番車108が回転すると、三番車107が回転するように構成されている。
【0037】
三番車107は、二番車108の二番歯車に噛合う不図示の三番かなと、三番歯車(何れも不図示)とを有している。三番車107が回転すると、四番車106が回転するように構成されている。
四番車106は、三番車107の三番歯車に噛合う不図示の四番かなと、四番歯車(何れも不図示)とを有している。四番車106が回転することによりデテント脱進機1が駆動する。このデテント脱進機1が駆動することにより、四番車106が1分間に1回転するように制御されると共に、二番車108が1時間に1回転するように制御される。
【0038】
(デテント脱進機)
図2は、デテント脱進機の平面図である。
図1、
図2に示すように、デテント脱進機1は、四番車106が回転することにより回転するがんぎ車2と、がんぎ車2の歯部2aと接触可能な止め石6を有するデテント7と、
がんぎ車2の歯部2aと接触可能な振り石3、およびデテント7と接触可能な外し石4を有するてんぷ5とを備えている。
【0039】
がんぎ車2は不図示の四番歯車に噛合されるがんぎかな8を有しており、地板102(
図1参照)と輪列受(不図示)によって回転可能に枢支されている。すなわち、輪列受にがんぎかな8の上軸部が回転可能に支持されると共に、地板102にがんぎかな8の下軸部が回転可能に支持される。また、がんぎ車2の歯部2aは、がんぎ車2の外周部に複数(例えば、この実施形態では15個)形成されている。
【0040】
てんぷ5は、回転軸であるてん真9を中心にして自由振動するものであって、てん真9の他に、てん真9と同心円上に配置されたてん輪10と、略円板状の大つば11と、不図示のヒゲぜんまいとを有している。そして、不図示のてんぷ受けにてん真9の上軸部が回転可能に支持されると共に、地板102にてん真9の下軸部が回転可能に支持されることにより、地板102、およびてんぷ受けに、てんぷ5が回転可能に枢支される。
【0041】
また、大つば11に、振り石3と外し石4とが設けられている。振り石3は、この断面形状が大つば11の径方向に沿って長くなるように直方体状に形成されており、断面短手方向で対向する2面のうち、がんぎ車2の歯部2aと接触する接触面3aが他の面よりも大つば11から突出するように形成されている。
外し石4は、デテント7に設けられている後述の片作動ばね24と接触可能になっている。デテント7は、地板102に角度調整機構19を介して固定されており、外し石4によって作動するようになっている。
【0042】
(角度調整機構)
図3は、角度調整機構の斜視図、
図4は、
図3のA−A線に沿う断面図である。
図3、
図4に示すように、角度調整機構19は、デテント7の取付け角度を調整するためのものであって、地板102に形成された貫通孔102aに、回転可能に嵌合されているジョイント部16と、地板102の表側(
図3における紙面手前側、
図4における上側)に配置された固定ワッシャ12と、ジョイント部16の裏側(
図3における紙面奥側、
図4における下側)の端部に取り付けられている回転レバー14と、ジョイント部16、および固定ワッシャ12を地板102に締結固定するための調整ボルト15とを備えている。
【0043】
ジョイント部16は段付円柱状に形成されており、地板102の貫通孔102aに嵌合されている小径部17aと、この小径部17aの裏側に一体成形され、かつ小径部17aよりも段差により拡径形成された大径部17bとを有している。そして、ジョイント部16は、大径部17bの表側端面17cを地板102に当接させた状態で、小径部17aの表側端面が地板102と面一、または若干凹んだ状態となるように形成されている。このように形成された小径部17aの表側端面上に、固定ワッシャ12が配置される。
【0044】
固定ワッシャ12は、デテント7を挟持するように大径ワッシャ12aと、小径ワッシャ12bとにより構成されており、大径ワッシャ12aを地板102側に配置している。各ワッシャ12a,12bには、径方向中央に調整ボルト15を挿通可能な挿通孔12c,12dが形成されている。一方、ジョイント部16の径方向中央には、固定ワッシャ12側に調整ボルト15を螺入可能な雌ネジ部18が刻設されている。
【0045】
そして、各ワッシャ12a,12bによってデテント7を挟持した状態で、表側から調整ボルト15をジョイント部16側に向かって挿通し、このジョイント部16に調整ボルト15を螺入することができるようになっている。これにより、ジョイント部16、固定ワッシャ12、およびデテント7が共締めされ、固定ワッシャ12の大径ワッシャ12aとジョイント部16の大径部17bとにより地板102を挟持した状態になる。
【0046】
また、ジョイント部16の大径部17bには、裏側に向かって平面視四角形状の凸部17dが突設されている。この凸部17dに嵌合するように回転レバー14が取り付けられている。回転レバー14は、ジョイント部16を回転させる際に用いられるものであって(詳細は後述する)、ジョイント部16から径方向外側に向かって延出形成されている。回転レバー14の凸部17dに対応する部位には、角孔14aが形成されている。これにより、回転レバー14は、ジョイント部16に着脱自在、かつ相対回転不能に取り付けられる。
【0047】
さらに、固定ワッシャ12、およびデテント7には、調整ボルト15を挟んで両側に一対の固定ピン13a,13bが設けられている。固定ワッシャ12を構成する各ワッシャ12a,12bには、一対の固定ピン13a,13bを挿通可能な挿通孔12e,12fが形成されている。
また、一対の固定ピン13a,13bは、ジョイント部16と一体化されており、ジョイント部16を回転させることにより、調整ボルト15を中心にして回転移動する。すなわち、一対の固定ピン13a,13bを介し、ジョイント部16、固定ワッシャ12、およびデテント7が調整ボルト15を中心にして一体的に回転するようになっている。
【0048】
(デテント)
図5は、デテントの平面図である。
図2、
図5に示すように、デテント7は、固定ワッシャ12の大径ワッシャ12aと小径ワッシャ12bとにより挟持されている円板状のデテント固定部21と、デテント固定部21に復帰ばね22を介して支持されている作動レバー23と、外し石4と接触可能な片作動ばね24とが一体成形されたものである。
ここで、一体成形を行う方法として、電鋳加工によりデテント7を形成したり、フォトリソグラフィーのような光学的な手法を取り入れたLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)プロセスによりデテント7を形成したりすることが可能である。
【0049】
デテント固定部21の直径は、固定ワッシャ12を構成する小径ワッシャ12bの直径と略同一に設定されている。デテント固定部21の径方向中央には、調整ボルト15を挿通可能なボルト挿通孔25が形成されている。また、デテント固定部21の固定ピン13a,13bに対応する箇所には、これら固定ピン13a,13bを挿通可能な2つのピン挿通孔26a,26bが形成されている。
ここで、2つのピン挿通孔26a,26bのうちの一方のピン挿通孔26b、および各ワッシャ12a,12bに形成されている2つの挿通孔12e,12fのうちの一方の挿通孔12fは、各部品の製作誤差を吸収できるように長円形状に形成されている。
【0050】
また、デテント固定部21の外周部には、てんぷ5側(
図5における上側)に凹部27が形成され、ここに復帰ばね22が立設されている。復帰ばね22は、この基端22aとてんぷ5のてん真9の中心(軸心)とを結ぶ直線L1に沿うように板状に形成されている。復帰ばね22は、例えば、ニッケル、りん青銅、ステンレス鋼、エリンバー、コエリンバーなどの弾性材料により形成されていることが望ましい。
【0051】
復帰ばね22の先端に設けられている作動レバー23は、復帰ばね22の先端から直線L1上に沿って延設されたレバー本体51と、レバー本体51とは別体に設けられ、棒状に形成されたレバー調整部52とにより構成されている。
レバー本体51は、直線L1上に沿う直方体状のアーム部28と、このアーム部28の先端に配置され、アーム部28よりも幅広の止め石取付部29とが一体成形されたものである。止め石取付部29には、がんぎ車2の歯部2aと接触可能な止め石6が設けられている。止め石6は、この断面形状が作動レバー23を構成するレバー調整部52の先端部58に向かうに従って漸次幅広となるように略台形状に形成されている。そして、止め石6の下面(
図2、
図5における上側の面)ががんぎ車2の歯部2aと接触する接触面6aに設定されている。
【0052】
また、レバー本体51の基端には、このレバー本体51とレバー調整部52とを連結するためのスナップフィット機構60が一体成形されている。スナップフィット機構60は、レバー本体51の基端から直線L1と略直交する方向に向かって延出するベース部61と、ベース部61の先端から直線L1に沿って、かつレバー本体51の先端側に向かって延出する係合片62とが一体成形されたものである。
【0053】
係合片62は、弾性変形可能に形成されており、先端にレバー本体51側に向かって鉤部63が一体成形されている。そして、レバー本体51のアーム部28と、スナップフィット機構60のベース部61、および係合片62とにより形成される凹部55に、レバー調整部52が挿入されるようになっている。このような構成のもと、レバー調整部52は、凹部55内を直線L1方向に沿ってスライド移動可能に設けられた状態となると共に、レバー本体51とスナップフィット固定される。
ここで、レバー本体51のアーム部28には、凹部55に対応する位置に凸部28aが2箇所形成されている。これら凸部28aにより、レバー調整部52と係合片62とが確実にスナップフィットする。
【0054】
レバー調整部52は、凹部55に挿入される取付部56と、取付部56の先端からレバー本体51の先端よりもてんぷ5側(
図5における上側)に向かって延出する調整アーム部57と、調整アーム部57の先端に設けられている先端部58とが一体形成されたものである。調整アーム部57は、レバー本体51の止め石取付部29を避けるように湾曲形成されている。
先端部58は、このがんぎ車2側の当接面58aが直線L1方向に沿うように、かつ、がんぎ車2とは反対側(
図2、
図5における右側)に向かって僅かにオフセットするように形成されている。このように形成された先端部58の当接面58aに、片作動ばね24の先端が当接されている。
【0055】
片作動ばね24も復帰ばね22と同様に、例えば、ニッケル、りん青銅、ステンレス鋼、エリンバー、コエリンバーなどの弾性材料により形成されていることが望ましい。
片作動ばね24は、平面視略6字状に形成されたものであって、スナップフィット機構60のベース部61から延出する円弧部31と、円弧部31の先端からレバー調整部52の先端部58に向かって延出する直線部32とにより構成されている。そして、直線部32が作動レバー23に対する接離方向に沿って弾性変形するようになっている。
【0056】
円弧部31は、アーム部28の基端からがんぎ車2とは反対側に向かって、かつ直線L1と略直交する方向に沿って延出し、この後、デテント固定部21の周囲の約3/4を取り囲むように円弧状に形成されている。つまり、円弧部31は、アーム部28の基端から、一旦てんぷ5とは反対側に向かって延出された後、てんぷ5側に向かって折り返すように円弧状に形成されている。円弧部31の曲率半径の中心は、デテント固定部21の中心、つまり、デテント固定部21に形成されているボルト挿通孔25の中心P1とほぼ一致している。
【0057】
一方、直線部32は、円弧部31の先端から直線L1に対して緩やかに傾斜するように延出された緩傾斜部32aと、緩傾斜部32aの先端から、この緩傾斜部32aよりも直線L1に対して急傾斜するように延出され、先端が先端部58に当接された急傾斜部32bと、急傾斜部32bから先端部58に沿って延出された舌片部32cとにより構成されている。
【0058】
緩傾斜部32aは、円弧部31の先端から止め石取付部29に対応する位置に至るまで延出されている。すなわち、直線部32は、作動レバー23の止め石取付部29との干渉を避けるように円弧部31の先端からレバー調整部52の先端部58に向かって延出形成された状態になっている。
また、舌片部32cは、この先端が作動レバー23を構成するレバー調整部52の先端部58から僅かに突出するように延出形成されている。この舌片部32cの先端部58から突出した部位に、てんぷ5の外し石4が接触するようになっている。
【0059】
ここで、直線L1上には、デテント固定部21のボルト挿通孔25の中心P1、復帰ばね22、作動レバー23、およびてん真9が同一直線上に設けられた状態になっている。このように構成されたデテント7の作動レバー23は、復帰ばね22の基端22aを支点23aとし、この支点23aを中心にしてがんぎ車2に対して接離可能になっている。すなわち、復帰ばね22が基端22aを中心にしてしなるように弾性変形することにより、作動レバー23ががんぎ車2に対して接離方向に沿って変位する。
【0060】
復帰ばね22は、作動レバー23を原位置に復帰するように付勢している。より具体的には、
図2、
図5に図示した状態のように、復帰ばね22は、作動レバー23のアーム部28の長手方向が直線L1上となる位置に復帰するように付勢している。一方、片作動ばね24は、この片作動ばね24の舌片部32cが常にレバー調整部52の先端部58と当接可能な程度のばね力に設定されている。
【0061】
また、復帰ばね22は、デテント固定部21の凹部27に形成されていることから、デテント固定部21と作動レバー23との間の離間距離K1を大きく設定することなく十分な長さを確保することができる。これにより、復帰ばね22は、作動レバー23をがんぎ車2の接離方向に沿って十分変位させることができるようになっている。
【0062】
ここで、凹部27の幅は、作動レバー23をがんぎ車2に対して接離方向に沿う変位を許容可能に設定されている。また、デテント固定部21を挟持する大径ワッシャ12a、および小径ワッシャ12bには、デテント固定部21の凹部27に対応する部位に、それぞれ凹部16,17が形成されている。このため、各ワッシャ12a,12bによりデテント7を固定した状態であっても、作動レバー23をがんぎ車2の接離方向に沿って十分変位させることができる。
さらに、片作動ばね24が円弧部31と直線部32とからなる平面視略6字状に形成されていることから、デテント7全体の重心位置J1が作動レバー23の支点23aとほぼ一致する。
【0063】
片作動ばね24の舌片部32cに接触可能な外し石4は、舌片部32cの先端部58とは反対側の面に接触する接触面4aが舌片部32cに沿うように形成されている。一方、外し石4の接触面4aとは反対側には、平面取りすることにより傾斜面4bが形成されている。これにより、外し石4は、この断面形状が大つば11の径方向外側に向かうに従って先細りになっている。
【0064】
ここで、デテント7を取り付ける際、レバー調整部52の先端部58や片作動ばね24の舌片部32cの位置を、てんぷ5の自由振動時に外し石4の先端が作動レバー23に接触不能、かつ片作動ばね24の舌片部32cに接触可能となるように調整する。これにより、てんぷ5の自由振動に伴って作動レバー23をがんぎ車2から離反させたり、接近させたりすることができる(詳細は後述する)。
【0065】
図2に示すように、地板102には、作動レバー23のがんぎ車2に接近する方向に向かう変位を規制するストッパ40が設けられている。ストッパ40は、ストッパアーム41とストッパアーム41の先端に立設されたストッパピン42とを有している。そして、ストッパアーム41の基端側が、固定ピン43を介して地板102に固定されている。
【0066】
ストッパピン42は、作動レバー23のレバー本体51に、がんぎ車2側から当接するようになっている。これにより、作動レバー23のがんぎ車2に接近する方向に向かう変位が規制される。
また、ストッパアーム41は、固定ピン43を中心にして回転可能に設けられており、これによってストッパピン42の位置が調整できるようになっている。このストッパピン42の位置を調整することにより、作動レバー23の移動規制位置が、がんぎ車2の歯部2aに止め石6が接触可能、かつアーム部28の長手方向が直線L1上となる位置に設定される。
【0067】
(デテント脱進機の動作)
次に、
図2、
図6〜
図8に基づいて、デテント脱進機1の動作について説明する。
図6〜
図8は、デテント脱進機の動作説明図である。
図2に示すように、デテント7の作動レバー23を構成するレバー本体51が直線L1に沿う位置に存在している状態では、がんぎ車2の歯部2aと作動レバー23に設けられている止め石6の接触面6aとが接触し、両者2,6が係合した状態になっている。
ここで、がんぎ車2は表輪列105より回転力が付与されているが、止め石6と係合している状態にあっては、がんぎ車2が停止した状態になっている。
【0068】
この状態から、
図6に示すように、てんぷ5が自由振動することにより、大つば11が矢印CCW1方向(
図6における反時計回り方向)に向かって回転すると、この大つば11に設けられている外し石4の接触面4aと片作動ばね24の舌片部32cの先端とが当接する。そして、外し石4により、舌片部32cを介して作動レバー23が押圧され、がんぎ車2から離反する方向に向かって変位する(
図6における矢印Y1参照)。
【0069】
このとき、復帰ばね22がしなるように弾性変形することにより、作動レバー23が変位するが、これに対し、片作動ばね24は殆ど弾性変形しない。すなわち、舌片部32cががんぎ車2から離反する方向(
図6における矢印Y1方向)に向かって僅かに変位する場合にあっては、片作動ばね24が平面視略6字状に形成されており、直線部32が僅かに円弧部31を巻き上げる方向に変位するだけなので、殆ど弾性変形しない。
【0070】
作動レバー23ががんぎ車2から離反する方向に向かって変位することにより、これに設けられている止め石6ががんぎ車2の歯部2aから離脱し、両者2,6の係合が解除される。これにより、がんぎ車2が矢印CW1方向(
図6における時計回り方向)に向かって回転する。
また、大つば11が矢印CCW1方向に向かって回転することにより、がんぎ車2が矢印CW1方向に向かって回転し始めるのとほぼ同時に、がんぎ車2の歯部2aに振り石3の接触面3aが接触する(
図6における2点鎖線参照)。そして、がんぎ車2の回転力が振り石3を介しててんぷ5に伝達される。このとき、てんぷ5は、矢印CCW1方向に向かって回転力が付与される。
【0071】
図7に示すように、大つば11が矢印CCW1方向(
図7における反時計回り方向)に向かって所定角度回転すると、片作動ばね24の舌片部32cの先端から外し石4が離反する。すると、復帰ばね22の復元力により、作動レバー23ががんぎ車2に接近する方向(
図7における矢印Y2参照)に向かって変位する。このとき、作動レバー23の変位がストッパ40によって規制され、作動レバー23が原位置に戻る。
【0072】
作動レバー23が原位置に戻ることにより、止め石6の接触面6aに回転するがんぎ車2の歯部2aが当接し、再びがんぎ車2と止め石6とが係合する。これにより、がんぎ車2の回転が停止される。ここで、がんぎ車2と止め石6との係合が解除されてから再び係合するまでの間に、がんぎ車2は1歯分だけ回転する。
一方、がんぎ車2によって矢印CCW1方向に向かう回転力が付与されたてんぷ5は、このてんぷ5に設けられているひげぜんまいが巻き上げられる。そして、ひげぜんまいが所定量巻き上げられると、ひげぜんまいの復元力とてんぷ5の回転力とが逆転し、大つば11の回転方向が矢印CW2方向(
図7における時計回り方向)に転じる。
【0073】
図8に示すように、大つば11が矢印CW2方向に向かって回転すると、外し石4の傾斜面4bが片作動ばね24の舌片部32cの先端に接触する。そして、さらに大つば11が回転することにより、片作動ばね24の舌片部32cが作動レバー23から離反する方向、つまり、がんぎ車2に向かう方向(矢印Y3参照)に向かって押圧される。すると、片作動ばね24は、直線部32を押し広げられるように弾性変形する。
さらに、大つば11が矢印CW2方向に向かって回転し、所定角度に達すると、片作動ばね24の舌片部32cから外し石4が離反する。すると、片作動ばね24の復元力により、舌片部32cが作動レバー23側に向かって変位し(
図8における矢印Y4参照)、原位置に戻る。
【0074】
一方、大つば11が矢印CW2方向に向かって回転している間、てんぷ5に設けられているひげぜんまいが巻き戻される。そして、ひげぜんまいが所定量巻き戻されると、ひげぜんまいの復元力とてんぷ5の回転力とが逆転し、再び大つば11の回転方向が矢印CCW1方向(
図8における反時計回り方向)に転じる。
これを繰り返すことにより、てんぷ5がてん真9を中心にして自由振動すると共に、デテント7が
図2、
図6〜
図8に示す状態を繰り返す。このため、がんぎ車2が常に一定速度で回転する。
【0075】
(デテントの取付調整方法)
次に、
図3〜
図5に基づいて、デテント7の取付調整方法について説明する。
ここで、上述のように、デテント7は、てんぷ5の自由振動時における外し石4の先端の軌跡上に片作動ばね24の舌片部32cが位置し、かつ外し石4の先端の軌跡を避けるように作動レバー23を構成するレバー調整部52の先端部58が位置するように調整する必要がある。このように、外し石4、作動レバー23、および片作動ばね24を所望の位置に配置するためには、以下のように調整すればよい。
すなわち、外し石4と片作動ばね24の舌片部32cとの相対位置、およびこの舌片部32cとレバー調整部52の先端部58との相対位置を調整することにより、外し石4、作動レバー23、および片作動ばね24を所望の位置に配置することができる。
【0076】
まず、
図3、
図4に基づいて、外し石4と片作動ばね24の舌片部32cとの相対位置の調整方法について説明する。
同図に示すように、角度調整機構19の調整ボルト15を予め若干緩めておき、ジョイント部16を地板102に回転可能な状態にする。この状態で、回転レバー14を回転させると、ジョイント部16と一体となってデテント7が調整ボルト15を中心にして回転する。
【0077】
デテント7が回転することにより、片作動ばね24の舌片部32cと外し石4との相対位置関係が変化するので、所望の位置に片作動ばね24の舌片部32cを配置する。この後、調整ボルト15を増し締めすることにより、地板102にデテント7を締結固定できる。この後、ジョイント部16から回転レバー14を取り外し、外し石4と片作動ばね24の舌片部32cとの相対位置の調整が完了する。
【0078】
次に、
図5に基づいて、片作動ばね24の舌片部32cとレバー調整部52の先端部58との相対位置の調整方法について説明する。
同図に示すように、レバー調整部52は、この取付部56が作動レバー23の凹部55に挿入され、係合片62によりスナップフィット固定されている。このため、凹部55からレバー調整部52を挿脱方向に沿ってスライド移動させることができる。凹部55からレバー調整部52を抜き出す方向に向かってスライド移動させると、この先端部58からの片作動ばね24の舌片部32cの突出量が減少する。
【0079】
一方、凹部55にレバー調整部52を挿入する方向に向かってスライド移動させると、この先端部58からの片作動ばね24の舌片部32cの突出量が増大する。このように、凹部55からレバー調整部52を挿脱方向に沿ってスライド移動させ、レバー調整部52の先端部58が所望の位置になるように調整する。また、レバー調整部52は、レバー本体51に対してスナップフィット固定されているので、位置調整後にそのまま固定させることができる。
【0080】
(効果)
したがって、上述の第一実施形態によれば、地板102に角度調整機構19を介してデテント7を固定することにより、外し石4と片作動ばね24の舌片部32cとの相対位置の調整を容易、かつ高精度に行うことができる。また、デテント7の作動レバー23を、レバー本体51とレバー調整部52との別体構造とすることにより、片作動ばね24の舌片部32cとレバー調整部52の先端部58との相対位置の調整を容易、かつ高精度に行うことができる。この結果、外し石4と作動レバー23とを接触不能にしつつ、外し石4と片作動ばね24とを所望の接触状態とし、これら作動レバー23、および片作動ばね24を適正に動作させることができるので、がんぎ車2を確実に正常動作させることができる。
【0081】
また、片作動ばね24の舌片部32cとレバー調整部52の先端部58との相対位置の調整を行うために、作動レバー23を、レバー本体51とレバー調整部52との別体構造とするだけで実現することができる。このため、デテント7の製造コストの増大を抑制することができる。
さらに、レバー本体51とレバー調整部52とをスナップフィット機構60を介して連結しているので、レバー調整部52の位置調整、および固定を容易に行うことができる。また、レバー本体51に対するレバー調整部52の位置調整を容易に行うことができる。
【0082】
なお、上述の第一実施形態では、作動レバー23のレバー本体51に対し、レバー調整部52をスライド移動させることにより、この先端部58からの片作動ばね24の舌片部32cの突出量つまり、レバー調整部52の先端部58と片作動ばね24の舌片部32cとの相対位置を調整する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、レバー調整部52の先端部58を取付部56の基端を中心にして揺動させ、先端部58と舌片部32cとが確実に接触するように調整してもよい。
【0083】
ここで、レバー調整部52の先端部58と片作動ばね24の舌片部32cとを確実に接触させるために、少なくともレバー調整部52の先端部58の幅を、確実に舌片部32cと接触可能な幅に設定してもよい。この場合、レバー調整部52がレバー本体51とは別体になっているので、レバー調整部52単体の製造方法を変更すればよく、デテント7の製造過程の大幅な変更を防止できる。
【0084】
また、レバー調整部52の取付部56において、レバー本体51に形成されている凸部28aに対応する位置に、この凸部28aを受け入れ可能な凹部56a(
図5における2点鎖線参照)を形成してもよい。凹部56aを形成することにより、レバー本体51に対するレバー調整部52の固着力を高めることができる。
さらに、凹部56aを取付部56の幅方向に沿って形成することにより、レバー本体51に対してレバー調整部52を幅方向にスライド移動させることも可能になる。幅方向にスライド移動させてレバー調整部52の位置を調整することにより、レバー調整部52の先端部58と片作動ばね24の舌片部32cとを確実に接触させることも可能になる。
【0085】
(第二実施形態)
次に、この発明の第二実施形態を
図9に基づいて説明する。なお、第一実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明を省略する(以下の実施形態についても同様)。
図9は、第二実施形態におけるデテントの要部平面図である。
この第二実施形態において、機械式時計100は、ムーブメント101を備えている点、ムーブメント101の表側に、表輪列105の回転を制御するデテント脱進機1が配置されている点、デテント脱進機1は、四番車106が回転することにより回転するがんぎ車2と、がんぎ車2の歯部2aと接触可能な止め石6を有するデテント72と、がんぎ車2の歯部2aと接触可能な振り石3、およびデテント72と接触可能な外し石4を有するてんぷ5とを備えている点、地板102に角度調整機構19を介してデテント72が固定されている点、デテント72の作動レバー23が直線L1に沿うように延出されている点等の基本的構成は、前述した第一実施形態と同様である(以下の実施形態についても同様)。
【0086】
ここで、
図9に示すように、第二実施形態と第一実施形態との相違点は、以下の点にある。すなわち、第二実施形態のデテント72には、スナップフィット機構260に、レバー調整部52の位置決め機構の役割を有する位置決め用ボルト81が設けられている。
より詳しくは、スナップフィット機構260のベース部61には、位置決め用ボルト81を螺入可能な雌ネジ部61aが刻設されている。この雌ネジ部61aに、デテント固定部21側(
図9における下側)から位置決め用ボルト81が螺入されている。位置決め用ボルト81の長さは、この先端がベース部61凹部55側に向かって十分突出できる長さに設定されている。
【0087】
このような構成のもと、片作動ばね24の舌片部32cとレバー調整部52の先端部58との相対位置を調整する場合、まず、位置決め用ボルト81のベース部61からの突出量を調整する。この後、位置決め用ボルト81の先端にレバー調整部52の取付部56が当接するように、レバー調整部52をセットする。これにより、片作動ばね24の舌片部32cとレバー調整部52の先端部58との相対位置の調整が完了する。
したがって、上述の第二実施形態によれば、前述の第一実施形態と同様の効果に加え、レバー調整部52の位置調整をより容易に行うことが可能になる。
【0088】
(第三実施形態)
次に、この発明の第三実施形態を
図10に基づいて説明する。
図10は、第三実施形態におけるデテントの要部平面図である。
同図に示すように、この第三実施形態と第一実施形態との相違点は、以下の点にある。すなわち、第三実施形態のデテント73には、レバー調整部52の取付部356に、係合片62の鉤部63と係合可能な複数の溝82が形成されている。そして、複数の溝82に応じ、段階的にレバー調整部52をレバー本体51に対してスライド移動させることができる。
このように、溝82と鉤部63とにより、レバー調整部52の位置決め機構としての機能を果たしている。したがって、上述の第三実施形態によれば、前述の第二実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0089】
(第四実施形態)
次に、この発明の第四実施形態を
図11に基づいて説明する。
図11は、第四実施形態におけるデテントの要部平面図である。
同図に示すように、この第四実施形態と第一実施形態との相違点は、以下の点にある。すなわち、第四実施形態のデテント74には、レバー本体51の凹部55に対応する位置に、固定用ボルト83が設けられている。
より詳しくは、レバー本体51には、先端がレバー調整部52の取付部56に向かって突出するように固定用ボルト83が螺入されている。
【0090】
したがって、上述の第三実施形態によれば、前述の第一実施形態と同様の効果に加え、レバー調整部52をより確実に固定することができる。また、固定用ボルト83の突出量を調整することにより、凸部28aを支点としてレバー調整部52の傾きを変化させることも可能になる。このため、レバー調整部52の先端部58の調整範囲をより広げることが可能になる。
【0091】
(第五実施形態)
次に、この発明の第五実施形態を
図12に基づいて説明する。
図12は、第五実施形態におけるデテントの要部平面図である。
同図に示すように、この第五実施形態と第一実施形態との相違点は、以下の点にある。すなわち、第五実施形態のデテント75には、スナップフィット機構60の係合片62に、鉤部63に代わって固定用ボルト84が設けられている。
したがって、第五実施形態によれば、前述の第一実施形態と同様の効果に加え、レバー調整部52をより確実に固定することができる。
【0092】
(第六実施形態)
次に、この発明の第六実施形態を
図13に基づいて説明する。
図13は、第六実施形態におけるデテントの要部平面図である。
同図に示すように、この第六実施形態と第一実施形態との相違点は、以下の点にある。すなわち、第六実施形態のデテント76のスナップフィット機構60には、凹部55の底部に位置調整カム85が設けられている。
【0093】
レバー調整部52は、この取付部56の基端が位置調整カム85に当接するように凹部55内に収納される。位置調整カム85は、回転ピン85aを中心に回転可能に設けられており、位置調整カム85を回転させることにより、凹部55の底部と取付部56の基端との間の離間距離が変化するようになっている。これにより、片作動ばね24の舌片部32cとレバー調整部52の先端部58との相対位置の調整を行うことができる。
したがって、上述の第六実施形態によれば、前述の第一実施形態と同様の効果に加え、レバー調整部52の位置調整をより容易に行うことが可能になる。
【0094】
(第七実施形態)
次に、この発明の第七実施形態を
図14に基づいて説明する。
図14は、第七実施形態におけるデテントの平面図である。
同図に示すように、この第七実施形態と第一実施形態との相違点は、第一実施形態におけるデテント7の作動レバー23が、レバー本体51とレバー調整部52との別体構造とされ、レバー本体51に片作動ばね24が一体成形されているのに対し、第七実施形態におけるデテント77の作動レバー123は別体構造とされておらず、この作動レバー123と片作動ばね124とが別体構造とされている点にある。
【0095】
すなわち、作動レバー123は、復帰ばね22の先端に一体成形され、直線L1に沿うように延出形成されたアーム部28と、このアーム部28の先端側に配置され、アーム部28よりも幅広の止め石取付部29と、止め石取付部29よりも先端側に配置され、アーム部28よりも細い直方体状の先端部30とが一体成形されている。アーム部28の基端には、作動レバー123と片作動ばね124とを連結するためのスナップフィット機構360が一体成形されている。
【0096】
スナップフィット機構360は、アーム部28の基端から片作動ばね24の円弧部31に対応するように延出するベース部361と、アーム部28のベース部361よりも先端側(
図13における上側)からベース部361と略平行になるように延出する係合片362とが一体成形されたものである。
そして、アーム部28、ベース部361、および係合片362により形成される凹部155に、片作動ばね124における円弧部31の端末部(基端)に一体形成されている取付部86が挿入されるようになっている。これにより、作動レバー123と片作動ばね124とがスナップフィット固定される。
【0097】
このような構成のもと、凹部155から片作動ばね124の取付部86を引抜く方向に沿ってスライド移動させると、片作動ばね124の舌片部32cが作動レバー123の先端部30を押し付ける方向に向かって僅かに変位する。このとき、片作動ばね124は弾性を有しているので、弾性変形しながら舌片部32cが先端部30に沿ってスライド移動、つまり、先端部30から突出する方向に向かってスライド移動する。
【0098】
したがって、上述の第七実施形態によれば、片作動ばね124の取付位置を調整することにより、作動レバー123の先端部30と、片作動ばね124の舌片部32cとの相対位置を調整することができる。このため、前述の第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0099】
なお、上述の第七実施形態において、スナップフィット機構360に位置決め用ボルト181や位置調整カム185を設けてもよい(
図14における2点鎖線参照)。そして、これら位置決め用ボルト181や位置調整カム185を、片作動ばね124の取付位置を調整するための位置決め機構として機能させてもよい。
また、上述の第七実施形態では、片作動ばね124全体の取付位置を調整することにより、作動レバー123の先端部30と、片作動ばね124の舌片部32cとの相対位置を調整する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、片作動ばね124は、少なくとも舌片部32cが作動レバー123に対して移動可能に構成されていればよい。
【0100】
(第八実施形態)
次に、この発明の第八実施形態を
図15に基づいて説明する。
図15は、第八実施形態におけるデテントの平面図である。
同図に示すように、この第八実施形態と第一実施形態との相違点は、第一実施形態におけるデテント7の作動レバー23が、レバー本体51とレバー調整部52との別体構造とされているのに対し、第八実施形態におけるデテント78の作動レバー223が、先端のみが別体構造とされている点にある。
【0101】
すなわち、作動レバー223は、復帰ばね22の先端に一体成形されたレバー本体151と、レバー本体151の先端に設けられた板状の先端部130とが別体で構成されている。
レバー本体151は、復帰ばね22側のアーム部28と、このアーム部28の先端側に配置され、アーム部28よりも幅広の止め石取付部29とが一体成形されたものである。
止め石取付部29の先端には、スナップフィット機構460が一体成形されており、このスナップフィット機構460を介して先端部130が連結されている。
【0102】
スナップフィット機構460は、レバー本体151の止め石取付部29から先端部130側に向かって突出する二又形状の爪部461a,461bを有している。2つの爪部461a,461bのうち、一方の爪部461bは弾性変形可能に形成されている。
このような構成のもと、2つの爪部461a,461b間に先端部130を挿入すると、各爪部461a,461bと先端部130とがスナップフィット固定される。また、先端部130は、爪部461a,461bの挿脱方向にスライド移動可能、つまり、レバー本体151の長手方向に沿ってスライド可能に設けられている。
【0103】
したがって、上述の第八実施形態によれば、先端部130と、片作動ばね124の舌片部32cとの相対位置を調整することができ、前述の第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
なお、上述の第八実施形態において、スナップフィット機構460、および先端部130を、先端部130の基端側、つまり、レバー本体151の止め石取付部29側を中心にして揺動可能となるように構成してもよい。このように構成することで、先端部130と片作動ばね24の舌片部32cとを確実に接触させることができる。また、先端部130の幅を片作動ばね24の舌片部32cの幅よりも幅広に設定することが望ましい。このように設定することで、先端部130と片作動ばね24の舌片部32cとを確実に接触させることができる。
【0104】
(第九実施形態)
次に、この発明の第九実施形態を
図18に基づいて説明する。
図18は、第九実施形態におけるデテントの平面図である。
同図に示すように、この第九実施形態と第七実施形態との相違点は、第七実施形態のデテント77における片作動ばね124の取付位置を調整するための構造と、第九実施形態のデテント79における片作動ばね324の取付位置を調整するための構造とが異なる点にある。
【0105】
すなわち、作動レバー323のアーム部328には、作動レバー323と片作動ばね324とを連結するためのスナップフィット機構560が一体成形されている。スナップフィット機構560は、アーム部328の長手方向に沿って対向配置された一対の係合片562,563により構成されている。
【0106】
一対の係合片562,563のうちの一方の係合片562は、アーム部328の基端から直線L1と略直交する方向で、かつがんぎ車2とは反対側(
図18における右側)に向かって突出する立ち上がり部562aと、この立ち上がり部562aの先端から作動レバー323の先端部30に向かって屈曲延出する爪部562bとが一体成形されたものである。
また、一対の係合片562,563のうちの他方の係合片563は、アーム部328の長手方向略中央よりもやや止め石取付部29側から立ち上がり部562aと略平行となるように突出する立ち上がり部563aと、この立ち上がり部563aの先端からアーム部328の基端側に向かって屈曲延出する爪部563bとが一体成形されたものである。
【0107】
このように形成された一対の係合片562,563と、アーム部328とにより、直線L1に沿って長い収納部335が形成される。この収納部335に、スライドプレート386がスナップフィット固定されている。スライドプレート386の直線L1方向の長さは、収納部335の直線L1の長さよりもやや短く設定されている。これにより、スライドプレート386は、収納部335内を僅かに直線L1方向に沿ってスライド移動可能になっており、直線L1方向の位置調整が行われた後に、収納部335にスナップフィット固定されるようになっている。
ここで、アーム部328には、収納部335に対応する位置に凸部328aが2箇所形成されている。これら凸部328aにより、スナップフィット機構560にスライドプレート386が確実にスナップフィットする。
【0108】
また、スライドプレート386には、一対の係合片562,563の爪部562b,563bの間に対応する位置からがんぎ車2とは反対側に向かって突出する凸部386aが一体成形されている。
一方、片作動ばね324の円弧部331は、この一部が直線L1に沿うように、かつ作動レバー323の先端部30に向かって延出形成されている。そして、スライドプレート386の凸部386aに、円弧部331の端末部が接続されている。
【0109】
このような構成のもと、収納部335にスナップフィット固定されているスライドプレート386をスライド移動させると、片作動ばね324もスライドプレート386と一体となって直線L1に沿ってスライド移動する。すなわち、片作動ばね324の舌片部32cが先端部30から突出する方向に向かって、さらに換言すれば、てんぷ5に対して接近・離反する方向に沿ってスライド移動する。
【0110】
したがって、上述の第九実施形態によれば、前述の第七実施形態と同様の効果を奏することができる。これに加え、第七実施形態のように片作動ばね124を弾性変形させて舌片部32cの位置調整を行う必要がない。すなわち、片作動ばね324の舌片部32cの位置調整をよりスムーズに、かつより精度よく行うことができる。
【0111】
(第十実施形態)
次に、この発明の第十実施形態を
図19に基づいて説明する。
図19は、第十実施形態におけるデテントの平面図である。
同図に示すように、この第十実施形態と第一実施形態との相違点は、第一実施形態のデテント7における片作動ばね24は、この片作動ばね24の円弧部31の端末部が、アーム部28の基端に接続されているのに対し、第十実施形態のデテント80における片作動ばね424における円弧部431の端末部が、作動レバー423のレバー調整部452に接続されている点にある。
【0112】
より詳しくは、作動レバー423のレバー本体451を構成するアーム部428には、レバー本体451とレバー調整部452とを連結するためのスナップフィット機構660が一体成形されている。スナップフィット機構660は、アーム部428の長手方向に沿って対向配置された一対の係合片562,563により構成されている。そして、一対の係合片562,563と、アーム部428とにより、直線L1に沿って長い収納部335が形成される。
【0113】
この収納部335に、スライドプレート386がスナップフィット固定されている。また、レバー本体451には、収納部335に対応する位置に凸部451aが2箇所形成されている。これら凸部451aにより、アーム部428にスライドプレート386が確実にスナップフィットするようになっている。
なお、一対の係合片562,563、収納部335、およびスライドプレート386の基本的構成は、前述の第九実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0114】
ここで、スライドプレート386の凸部386aには、レバー調整部452の基端が接続されている。さらに、レバー調整部452の基端に、片作動ばね424の円弧部431の端末部が接続されている。すなわち、片作動ばね424の円弧部431は、この一部が直線L1に沿うように、かつレバー調整部452の基端に向かって延出形成されており、レバー調整部452の基端に円弧部431の端末部が接続されるようになっている。
【0115】
このような構成のもと、収納部335にスナップフィット固定されているスライドプレート386をスライド移動させると、レバー調整部452と片作動ばね424とが一体となってスライド移動する。すなわち、レバー調整部452の先端部458と片作動ばね424の舌片部32cとが一体となって、てんぷ5に対して接近・離反する方向に沿ってスライド移動する。
【0116】
したがって、上述の第十実施形態によれば、前述の第一実施形態と同様の効果に加え、レバー調整部452と片作動ばね424との相対位置関係を固定しつつ、これらレバー調整部452、および片作動ばね424の位置調整を同時に行うことができる。このため、より容易に、外し石4を片作動ばね424に確実に接触させつつ、外し石4とレバー調整部452との接触を回避することができる。
【0117】
なお、上述の第九実施形態、および第十実施形態において、スナップフィット機構560.660に前述の第七実施形態で示した位置決め用ボルト181や位置調整カム185と同様のものを設けてもよい(
図18、
図19における2点鎖線参照)。そして、これら位置決め用ボルト181や位置調整カム185を、スライドプレート386の取付位置を調整するための位置決め機構として機能させてもよい。
【0118】
また、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、地板102にデテント7,72〜80を角度調整機構19を介して固定した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、地板102に直接デテント7,72〜80を固定するように構成してもよい。
【0119】
さらに、上述の実施形態では、電鋳加工やLIGAプロセスにより、デテント7,72〜80を成形する場合について説明したが、これに限られるものではなく、樹脂成形としてもよい。また、復帰ばね22や片作動ばね24,124,224,324,424は、例えば、ニッケル、りん青銅、ステンレス鋼、エリンバー、コエリンバーなどの弾性材料により形成されていることが望ましいと説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、例えば、金属製の板ばねや線ばねにより形成することも可能である。
そして、デテント固定部21や作動レバー23,123,223,323,423を樹脂成形とし、復帰ばね22や片作動ばね24,124,324,424を金属製の板ばねや線ばねとする場合、デテント固定部21や作動レバー23,123,223,323,423に、復帰ばね22、および片作動ばね24,124,324,424をインサート成型する構成としてもよい。
【0120】
また、上述の実施形態では、デテント固定部21に復帰ばね22を介して作動レバー23,123,223,323,423が支持されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、所謂ピボットデテント脱進機のように、不図示の回転軸を介して作動レバー23,123,223,323,423を回転自在に支持し、これによってがんぎ車2に対して作動レバー23,123,223,323,423を接離可能に構成してもよい。この場合、復帰ばね22に代わって不図示の回転軸を取り囲むように渦巻きばね(不図示)を設ける。そして、この渦巻きは、作動レバー23,123,223,323,423を原位置に復帰するように付勢すればよい。
【0121】
さらに、上述の実施形態では、デテント固定部21の中心P1、復帰ばね22、作動レバー23,123,223,323,423、およびてん真9が、全て復帰ばね22の基端22a、つまり作動レバー23,123,223,323,423の支点23aとてんぷ5のてん真9の中心とを結ぶ直線L1上に形成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、作動レバー23,123,223,323,423の止め石6ががんぎ車2の歯部2aに対して接離可能に構成されていればよい。