特許第5729781号(P5729781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コヴィディエン リミテッド パートナーシップの特許一覧

<>
  • 特許5729781-可変圧迫手術ファスナー装置 図000002
  • 特許5729781-可変圧迫手術ファスナー装置 図000003
  • 特許5729781-可変圧迫手術ファスナー装置 図000004
  • 特許5729781-可変圧迫手術ファスナー装置 図000005
  • 特許5729781-可変圧迫手術ファスナー装置 図000006
  • 特許5729781-可変圧迫手術ファスナー装置 図000007
  • 特許5729781-可変圧迫手術ファスナー装置 図000008
  • 特許5729781-可変圧迫手術ファスナー装置 図000009
  • 特許5729781-可変圧迫手術ファスナー装置 図000010
  • 特許5729781-可変圧迫手術ファスナー装置 図000011
  • 特許5729781-可変圧迫手術ファスナー装置 図000012
  • 特許5729781-可変圧迫手術ファスナー装置 図000013
  • 特許5729781-可変圧迫手術ファスナー装置 図000014
  • 特許5729781-可変圧迫手術ファスナー装置 図000015
  • 特許5729781-可変圧迫手術ファスナー装置 図000016
  • 特許5729781-可変圧迫手術ファスナー装置 図000017
  • 特許5729781-可変圧迫手術ファスナー装置 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5729781
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】可変圧迫手術ファスナー装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/072 20060101AFI20150514BHJP
   A61B 17/115 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   A61B17/10 310
   A61B17/11 310
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-192614(P2013-192614)
(22)【出願日】2013年9月18日
(62)【分割の表示】特願2009-113091(P2009-113091)の分割
【原出願日】2009年5月7日
(65)【公開番号】特開2014-54544(P2014-54544A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2013年9月18日
(31)【優先権主張番号】61/051,911
(32)【優先日】2008年5月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/417,709
(32)【優先日】2009年4月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507362281
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】フランク ジェイ. ビオラ
【審査官】 村上 聡
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/039249(WO,A1)
【文献】 特開2008−093480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/072
A61B 17/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンビルセクションとカートリッジセクションとを含むファスナーアセンブリであって、前記カートリッジセクションと前記アンビルセクションとのうちの少なくとも1つは、それらの間で組織をクランプするように、クランプされない位置からクランプされる位置まで移動可能であり、前記カートリッジセクションは、組織接触表面を有し、前記組織接触表面内に複数の保持スロットが形成されており、前記カートリッジセクションおよび前記アンビルセクションは、長手軸を規定しており、前記複数の保持スロットは、細長い形状を有しており、そして前記長手軸に対して横断的に延在している、ファスナーアセンブリと、
前記カートリッジセクション内に保持された複数の第1の手術ファスナーおよび複数の第2の手術ファスナーであって、各手術ファスナーは、対応する保持スロット内に配置されている、複数の第1の手術ファスナーおよび複数の第2の手術ファスナーと、
前記カートリッジセクション内に配置された複数の第1のプッシャおよび複数の第2のプッシャであって、前記第1のプッシャは、前記第1の手術ファスナーに対応しており、前記第2のプッシャは、前記第2の手術ファスナーに対応しており、前記第1のプッシャおよび前記第2のプッシャのうちの少なくとも1つは、クリンププッシャと、前記クリンププッシャに対してスライド可能なディンプルプッシャを有しており、前記ディンプルプッシャは、前記クリンププッシャの上面の上方に延在する上面を有しており、前記ディンプルプッシャおよび前記クリンププッシは、手術ファスナーを閉鎖し、そして前記手術ファスナーのバックスパン内に窪みを形成する、複数の第1のプッシャおよび複数の第2のプッシャと
を備える、手術ファスナー適用装置。
【請求項2】
前記複数の第1のプッシャは、前記第1の手術ファスナーを初期構成から後続の構成に変形させるような構成および寸法であり、
前記複数の第2のプッシャは、前記第2の手術ファスナーを初期構成から後続の構成に変形させるような構成および寸法である、請求項1に記載の手術ファスナー適用装置。
【請求項3】
前記第1の手術ファスナーおよび前記第2の手術ファスナーは、バックスパンを有しており、前記第1のプッシャおよび前記第2のプッシャのうちの少なくともいくつかは、それぞれの手術ファスナーの前記バックスパンを変形させる、請求項2に記載の手術ファスナー適用装置。
【請求項4】
前記第1のプッシャおよび前記第2のプッシャを移動させるためのスレッドをさらに含む、請求項1に記載の手術ファスナー適用装置。
【請求項5】
前記カートリッジセクションは、保持スロットの第1の内側の列と、保持スロットの第1の外側の列とを含む、請求項1に記載の手術ファスナー適用装置。
【請求項6】
前記第1のプッシャは、前記第1の手術ファスナーを閉鎖し、そして前記第1の手術ファスナーのバックスパン内に窪みを形成する、請求項1に記載の手術ファスナー適用装置。
【請求項7】
前記第1の手術ファスナーは、前記複数の保持スロットの第1の列内に配置されている、請求項6に記載の手術ファスナー適用装置。
【請求項8】
前記第1のプッシャは、前記第1の手術ファスナー内に第1の窪みを形成し、前記第1の窪みは、前記形成された手術ファスナーの内部空間を低減し、組織の部分を前記第2の手術ファスナーと比較してより圧迫する、請求項7に記載の手術ファスナー適用装置。
【請求項9】
前記複数の保持スロットは、第2の列を含み、前記第2のプッシャは、前記第2の手術ファスナー内に第2の窪みを形成する、請求項8に記載の手術ファスナー適用装置。
【請求項10】
前記第2の窪みは、前記第1の窪みよりも小さい、請求項9に記載の手術ファスナー適用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国仮特許出願第61/051、911号(2008年5月9日出願)の優先権の利益を主張し、該米国仮特許出願の全体の内容は、参考のために本明細書中に援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、手術ファスナー適用装置に関する。より詳細には、本開示は、可変圧迫力を組織に適用するように構成された複数の手術ファスナーを含む手術ファスナー適用装置に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の背景)
従来技術において、多くの様々な手術ファスナー適用装置が公知であり、それらの一部は、端々吻合、環状端々吻合、開胃腸吻合、内視鏡胃腸吻合、横断吻合を含むがそれらには限定されない、様々な処置において使用されるように特別に適合される。これらの一連の処置の間に用いられ得る装置の適切な例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4に見られ得る。
【0004】
一般に、手術ファスナー適用装置は、使用中に手術ファスナーカートリッジに対して接近させられるアンビルを含み得る。アンビルは、手術ファスナーカートリッジに画定されたスロットと整列および/または位置合わせされる窪みを含み、これを介して、ファスナーが現れ、形成(formation)を遂行し得る。特定の装置は、長手スロットの横方向に配置された、または、円周状に配置された、ファスナーの1つ以上の列を有するファスナーカートリッジを有し、該長手スロットは、組織が切断および互いに接合されることが同時に行われ得るように、ナイフまたはその他の切断要素を収容するように構成される。特定の手術ファスナー適用装置に応じて、ファスナーの列は、直線状、非直線状、例えば環状、半環状、アーチ状等の構成で配置され得る。
【0005】
ユニタリファスナーおよび2部分ファスナーを含むがそれらには限定されない、様々なタイプの手術ファスナーが、従来技術において公知である。ユニタリファスナーは、概して、一対のレグを含み、該一対のレグは、組織を貫通し、バックスパン(そこから該一対のレグが延びる)によって連結されるように適合される。ステープルは、閉じた構成、例えば「B」形状の構成に形成される。典型的に、2部分ファスナーは、バックスパンによって連結されたとげのあるレグを含む。レグは、通常アンビル内に配置される個別の保持器部分と係合され、その中にロックされる。使用中、2部分ファスナーは、組織の中へと圧迫され、その結果、とげが組織を貫通し、他の側から現れ、該他の側において、とげが保持器部分の中にロックされる。2部分ファスナーは、ロック解除されること、または、除去可能であることは意図されない。概してこれらは、生体吸収性材料から作られる。
【0006】
上述の手術処置の各々の間に、組織は最初に、カートリッジとアンビルとの間で把持またはクランプされ、その結果、個々のファスナーがスロットを介してカートリッジから射出され、把持された組織を介するように強制される。その後、ファスナーは、それらをアンビル上に形成された窪みの中へと駆動することによって、形成される。
【0007】
上述の処置の各々における一般的な関心は、止血、すなわち、標的組織の出血の停止である。創傷に適用される圧力の量を増加させることによって、血流速度が制限され、その結果、止血を実現するのに必要な時間が減少することは、周知である。この目的のために、従来の手術ファスナー適用装置は、概して、あらゆる出血を止め、切断された組織を互いに接合させようとするために、切断線のまわりにファスナーの2つ以上の列を適用することにより、周囲の組織を圧迫する。ファスナーの各々は、概して、止血を実現するために十分な圧迫力を組織に適用し得る。しかしながら、過度の圧力が適用されると、結果的に、切断線を包囲する組織に対する血流を不必要なまでに減少させる。その結果、組織を互いに結合する際の過度の圧力は、壊死のレベルを高めたり、治癒を遅くしたり、かつ/または回復期間を長くしたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,915,616号明細書
【特許文献2】米国特許第6,202,914号明細書
【特許文献3】米国特許第5,865,361号明細書
【特許文献4】米国特許第5,964,394号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ、組織内の血流を制限することが可能な手術ファスナー適用装置を提供し、周囲の組織においては血流を最大化しながら止血および創傷の閉鎖を行い、治癒を容易にすることが有利であり得る。加えて、組織がアンビルと手術ファスナーカートリッジとの間でクランプまたは圧縮されるときに、組織の差は、組織の一部分が組織の他の部分よりも厚いことを意味し得る。したがって、異なる組織の厚みにより良く適応し得る手術ファスナーを提供することが有利であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(概要)
本開示は、組織内の血流を制限して止血と創傷の閉鎖とを行う一方で、周囲の組織における血流を最大化して治癒を促進するように構成された手術ステープル器具に関する。特に、本開示の実施形態は、周囲の組織に適用される圧迫力を変更するために、手術ファスナーの形成を変更することを含む。またさらに、手術ファスナーが組織内に形成されるときに、手術ファスナーのバックスパン内の窪みは、手術ファスナーのレグと協働することにより、周囲の組織に圧迫力を適用するので、窪みの変更は、周囲の組織に適用される圧迫力の変更に対応する。
【0011】
カートリッジセクションとアンビルセクションとを含むファスナーアセンブリが本明細書中に開示され、カートリッジセクションとアンビルセクションとは、それらの間で組織をクランプするように、クランプされない位置からクランプされる位置まで移動可能である。カートリッジセクションは、そこに配置された複数の保持スロットを含む。加えて、複数の第1の手術ファスナーおよび複数の第2の手術ファスナーが開示され、各手術ファスナーは、対応する保持スロット内に配置される。
【0012】
本開示の一局面にしたがうと、手術ファスナー適用装置は、第1の構成の第1のバックスパンを有する複数の第1の手術ファスナーと、第2の構成の第2のバックスパンを有する複数の第2の手術ファスナーとを含む。この実施形態にしたがうと、第1の構成は、第2の構成とは異なる。第1の構成は、複数の手術ファスナーの形成の際に、複数の第1の手術ファスナーの形成の際に、第1の圧迫力を組織に適用するように構成され、第2の構成は、複数の第2の手術ファスナーの形成の際に、第2の圧迫力を組織に適用するように構成される。この実施形態にしたがうと、第2の圧迫力は、第1の圧迫力とは異なる。
【0013】
一実施形態において、複数の第1の手術ファスナーが形成されるときに、保持スロット内に配置される複数の第1のプッシャが、第1の手術ファスナーの第1のバックスパンに窪みを形成することにより、第1の構成を画定し得る。加えて、複数の第2の手術ファスナーが形成されるときに、保持スロット内に配置される複数の第2のプッシャが、第2の手術ファスナーの第2のバックスパンに第2の窪みを形成することにより、第2の構成を画定し得る。第1の窪みは、第2の窪みとは異なり得る。さらに、アンビルセクションおよびカートリッジセクションがクランプされない位置からクランプされる位置まで移動するときに、周囲の組織に適用される圧力は、対応する手術ファスナーのバックスパンにおける窪みのサイズに対応し得る。さらにまた、複数の第1のプッシャおよび複数の第2のプッシャは、手術ファスナーがアンビルセクションに向かって駆動されるのと実質的に同時に、手術ファスナーの対応するバックスパンに、対応する窪みを形成する。
【0014】
本開示の別の局面にしたがうと、手術ファスナー適用装置は、カートリッジセクションを介して遠位に移動することが可能な作動スレッドをさらに備える。作動スレッドは、少なくとも1つのカムウェッジを含む。加えて、作動スレッドがカートリッジを介して遠位に移動するときに、カムウェッジは、手術ファスナーを配列し、それらをアンビルセクションに向かって駆動するために、プッシャを駆動する。
【0015】
本開示の別の局面において、カートリッジセクションは、長手スロットを含み、該長手スロットは、該長手スロットを介するナイフバーの長手方向の動きを可能にするように構成されている。カートリッジセクションは、長手スロットの第1側で、保持スロットの第1の内側の列と、保持スロットの第1の外側の列とを含み、該長手スロットの第2の側で、保持スロットの第2の内側の列と、保持スロットの第2の外側の列とを含み、各保持スロットは、対応するプッシャおよびファスナーと整列される。加えて、第1の外側の列および第2の外側の列における手術ファスナーと比較して、第1の内側の列および第2の内側の列における手術ファスナーは、大きな窪みを有するように形成される。したがって、手術ファスナーの外側の列と比較して、手術ファスナーの内側の列には、より小さい内部空間が存在し得る。さらに、手術ファスナーの外側の列を包囲する組織に比べて、より大きい力が、内側の列を包囲する組織に適用され得る。
【0016】
別の実施形態において、作動スレッドは、第1の内側のカムウェッジと、第2の内側のカムウェッジと、第1の外側のカムウェッジと、第2の外側のカムウェッジとを含み、第1の内側のカムウェッジは、保持スロットの第1の内側の列において、プッシャと接触し、第2のカムウェッジは、保持スロットの第2の内側の列において、プッシャと接触し、第1の外側のカムウェッジは、保持スロットの第1の外側の列において、プッシャと接触し、第2の外側のカムウェッジは、保持スロットの第2の外側の列において、プッシャと接触する。
【0017】
本発明は、さらに以下の手段を提供する。
(項目1)
アンビルセクションとカートリッジセクションとを含むファスナーアセンブリであって、該カートリッジセクションと該アンビルセクションとは、それらの間で組織をクランプするように、クランプされない位置からクランプされる位置まで移動可能であり、該カートリッジセクションは、複数の保持スロットを含む、ファスナーアセンブリと、
複数の第1の手術ファスナーおよび複数の第2の手術ファスナーであって、各手術ファスナーは、対応する保持スロット内に配置され、該複数の第1の手術ファスナーは、第1の構成の第1のバックスパンを有し、該複数の第2の手術ファスナーは、第2の構成の第2のバックスパンを有し、該第1の構成は該第2の構成とは異なり、該第1の構成は、該複数の第1の手術ファスナーの形成の際に、第1の圧迫力を組織に適用し、該第2の構成は、該複数の第2の手術ファスナーの形成の際に、第2の圧迫力を組織に適用し、該第2の圧迫力は、該第1の圧迫力とは異なる、複数の第1の手術ファスナーおよび複数の第2の手術ファスナーと
を備える、手術ファスナー適用装置。
(項目2)
上記複数の第1の手術ファスナーが形成されるときに、上記保持スロット内に配置される複数の第1のプッシャが、該第1の手術ファスナーの上記第1のバックスパンに第1の窪みを形成することにより、上記第1の構成を形成し、
上記複数の第2の手術ファスナーが形成されるときに、該保持スロット内に配置される複数の第2のプッシャが、該第2の手術ファスナーの上記第2のバックスパンに第2の窪みを形成することにより、上記第2の構成を形成する、項目1に記載の手術ファスナー適用装置。
(項目3)
上記第1の窪みは、上記第2の窪みとは異なる、項目1または項目2に記載の手術ファスナー適用装置。
(項目4)
上記アンビルセクションおよび上記カートリッジセクションがクランプされない位置からクランプされる位置まで移動するときに、周囲の組織に適用される圧力は、上記手術ファスナーの上記バックスパンにおける上記窪みのサイズに対応する、項目1〜3のいずれか一項に記載の手術ファスナー適用装置。
(項目5)
上記複数の第1のプッシャおよび上記第2の複数のプッシャは、上記手術ファスナーが上記アンビルセクションに向かって駆動されるのと実質的に同時に、該手術ファスナーの対応するバックスパンに、対応する窪みを形成する、項目1〜4のいずれか一項に記載の手術ファスナー適用装置。
(項目6)
上記カートリッジセクションを介して遠位に移動することが可能な作動スレッドをさらに備え、該作動スレッドは、少なくとも1つのカムウェッジを含む、項目1〜5のいずれか一項に記載の手術ファスナー適用装置。
(項目7)
上記作動スレッドが上記カートリッジを介して遠位に移動するときに、上記少なくとも1つのカムウェッジは、上記手術ファスナーを配列し、それらを上記アンビルセクションに向かって駆動するために、上記プッシャを駆動する、項目1〜6のいずれか一項に記載の手術ファスナー適用装置。
(項目8)
上記カートリッジセクションは、長手スロットを含み、該長手スロットは、該長手スロットを介するナイフバーの長手方向の動きを可能にするように構成されている、項目1〜7のいずれか一項に記載の手術ファスナー適用装置。
(項目9)
上記カートリッジセクションは、上記長手スロットの第1の側で、保持スロットの第1の内側の列と、保持スロットの第1の外側の列とを含み、該長手スロットの第2の側で、保持スロットの第2の内側の列と、保持スロットの第2の外側の列とを含み、各保持スロットは、対応するプッシャおよびファスナーと整列される、項目1〜8のいずれか一項に記載の手術ファスナー適用装置。
(項目10)
上記内側の列の手術ファスナー内により小さい内部空間が存在し、その結果、上記外側の列の手術ファスナーと比較して、より大きい力が上記組織に適用されるように、上記第1の内側の列および上記第2の内側の列における手術ファスナーは、上記第1の外側の列および上記第2の外側の列における手術ファスナーよりも大きな窪みを有するように形成される、項目1〜9のいずれか一項に記載の手術ファスナー適用装置。
(項目11)
上記作動スレッドは、第1の内側のカムウェッジと、第2の内側のカムウェッジと、第1の外側のカムウェッジと、第2の外側のカムウェッジとを含み、該第1の内側のカムウェッジは、保持スロットの上記第1の内側の列において、上記プッシャと接触し、該第2のカムウェッジは、保持スロットの上記第2の内側の列において、該プッシャと接触し、該第1の外側のカムウェッジは、保持スロットの上記第1の外側の列において、該プッシャと接触し、該第2の外側のカムウェッジは、保持スロットの上記第2の外側の列において、該プッシャと接触する、項目1〜10のいずれか一項に記載の手術ファスナー適用装置。
【0018】
(摘要)
手術ファスナー適用装置は、アンビル部分とカートリッジ部分とを含み、該カートリッジ部分と該アンビル部分とは、クランプされない部分からクランプ部分へと動くことにより、それらの間で組織をクランプすることが可能である。カートリッジ部分は、複数の保持スロットを有する。複数の第1の手術ファスナーと複数の第2の手術ファスナーとは、対応する保持スロット内に配置される。複数の第1の手術ファスナーは、第1の構成の第1のバックスパンを有し、複数の第2の手術ファスナーは、第2の構成の第2のバックスパンを有する。第1の構成は、第2の構成とは異なる。加えて、第1の構成が、複数の第1の手術ファスナーの形成の際に、第1の圧迫力を組織に適用し、第2の構成が、複数の第2の手術ファスナーの形成の際に、第2の圧迫力を組織に適用するとき、第2の圧迫力は、第1の圧迫力とは異なる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本開示の実施形態にしたがう、手術ファスナーカートリッジを含む手術ファスナー適用装置の遠位端部分の上からの斜視図である。
図2図2は、図1の手術ファスナーカートリッジとの使用のための、形成前に示された、実質的に直線状のバックスパンを含む手術ファスナーの一実施形態の側部からの斜視図である。
図3a図3aは、形成後の隣接する組織セグメント内の第1の手術ファスナーの断面図である。
図3b図3bは、形成後の第2の手術ファスナーの断面図である。
図3c図3cは、形成後の第3の手術ファスナーの断面図である。
図3d図3dは、形成後の第4の手術ファスナーの断面図である。
図4図4は、本開示の一実施形態にしたがう、手術ファスナー適用装置の手術ファスナーカートリッジの平面図である。
図5a図5aは、本開示の一実施形態にしたがう、手術ファスナー適用装置の部分断面図である。
図5b図5bは、本開示の一実施形態にしたがう、手術ファスナー装置の部分断面図である。
図5c図5cは、本開示の一実施形態にしたがう、作動スレッド(actuation sled)の斜視図である。
図5d図5dは、本開示の一実施形態にしたがう、プッシャの斜視図である。
図6図6は、本開示の一実施形態にしたがう、手術ファスナー装置の作動構造の側部からの斜視図である。
図7図7は、腹腔鏡処置の間の使用のための、本開示の一実施形態にしたがう、例示的な手術ファスナー適用装置の斜視図である。
図8図8は、本開示の一実施形態にしたがう、手術ファスナー適用装置の斜視図である。
図9図9は、本開示の一実施形態にしたがう、手術ファスナー適用器具の斜視図である。
図10図10は、本開示の一実施形態にしたがう、手術ファスナー適用器具のカートリッジの斜視図である。
図11図11は、本開示の一実施形態にしたがう、手術ファスナー適用器具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書中、本開示の様々な実施形態が、図面を参照して以下に記載される。
【0021】
(例示的な実施形態の詳細な説明)
ここで、本開示の手術ファスナーカートリッジの様々な実施形態が、図面を参照しながら詳細に記載され、同様の参照番号は、同様または同一の要素を示す。当該技術分野における伝統的および従来的な意味と同様に、図中および以下の記載中では、用語「近位」は、使用中の臨床医に近い手術ファスナーカートリッジの端部を意味し、その一方で、用語「遠位」は、臨床医から遠い手術ファスナーカートリッジの端部を意味する。加えて、用語「手術ファスナー」は、任意の実質的にリジッドな構造であって、組織を互いに接合する意図された目的に適した生体適合性材料から形成される構造を含むとして理解されるべきであり、手術ステープル、クリップ等を含むが、それらには限定されない。手術ファスナーは、例えばチタンまたはステンレス鋼のような生体適合性金属、または、生体吸収性の重合体または再吸収可能な重合体を含む任意の生体適合性の重合体から形成され得る。
【0022】
図1図7を参照して、本開示の一実施形態にしたがう手術ファスナー適用装置1000が議論される。手術ファスナー適用装置1000は、複数の手術ファスナーを連続的に(例えば、手術ファスナー130を患者の組織に)適用するように用いられ、再使用可能または使い捨ての種類であり得る。手術ファスナー適用装置1000は、ハンドル1002と、そこから遠位に延びている細長い軸1004と、細長い軸1004(図7)の遠位端1008に結合された操作ツール1006とを含む。可動ハンドル1002は、駆動ロッドを遠位に前進させ、操作ツール1006を操作する。しかしながら、例えばモータ駆動、液圧式、ラッチ式等のその他のハンドルが用いられ得る。一般に、操作ツール1006は、クランプすること、互いを連続的に綴じること、および切断線に沿って隣接する組織セグメントを切断することに適している。したがって、操作ツール1006は、一対の対向するジョー1010、1012を含み、これらのジョーは、互いに旋回可能なように結合されており、それぞれアンビル部材1010と手術ファスナーカートリッジ100とを含んでいる。
【0023】
操作中、手術ファスナー適用装置1000は、その他の公知の手術ファスナー適用装置と同様に、およびその他の公知の手術ファスナー適用装置にしたがって、発射される。手術ステープル器具1000の接近および発射に関する詳細な議論については、Tyco Healthcare Group,LPが現在の譲受人である、同一出願人の米国特許第5,865,361号を参照されたい。該米国特許の全体の内容は、参考のために本明細書中に援用される。ハンドルアセンブリ1002は、ハウジング1016を含み、該ハウジング1016は、静止ハンドル部材1018を含む。可動ハンドル1020は、ハウジング1016内で旋回可能なように支持され、静止ハンドル部材1018から離れるように付勢される。静止ハンドル部材1018の方向への可動ハンドル1020の動きは、ハウジング1016内の作動軸に駆動力を与え、該作動軸を遠位方向に直線的に前進させる。アンビル部材1014およびステープルカートリッジ100は、互いに接近するように動かされ、ステープルカートリッジ100のスロット内に配置された手術ファスナー130に隣接して配置されたイジェクタまたはプッシャへと力を伝達し、それにより、手術ファスナー130を射出させ、アンビル部材1014のステープル形成表面に向かって手術ファスナー130を駆動させる。
【0024】
手術ファスナーカートリッジ100は、長手軸「A−A」に沿って延びており、一対の側壁114、116、底壁118および上壁120を有するカートリッジ本体112を含む(図1)。カートリッジ本体112は、長手スロット122を含み、該長手スロット122は、組織が切断線に沿って切断されるように、ナイフ(図示されず)またはその他の切断要素の長手方向の動きに適応するように構成される。上壁120は、例えば切断されるべき組織を係合するための組織係合表面124と、カートリッジ100の実質的に全部の長さにわたって延在するパターンで長手軸A−Aに関して垂直方向に、または概略横断的に配置される、複数のファスナー保持スロット126をさらに含む。図1に示されているように、スロット126の第1の内側の列128Aと、スロットの第1の外側の列128Bとは、長手スロット122の第1の側に形成され、長手スロット122の反対の側では、カートリッジ100は、スロットの第2の内側の列128cと、スロットの第2の外側の列128Dとを有する。カートリッジ100は、長手スロット122の両側の一対の列を含むように示されているが、ファスナー保持スロット126のさらなる列が、カートリッジ100の追加的な実施形態に含まれ得る。好適な実施形態において、カートリッジ100は、除去可能または別の装填カートリッジと置換可能であるか、あるいは、除去可能または置換可能な装填ユニットの一部分を形成する。
【0025】
ファスナー保持スロットスロット126の各々は、綴じている間に組織に形成される切断線の両側において、手術ファスナーが列に配置されるように、複数の手術ファスナーとプッシャとのうちの1つをその中に受容するように構成される。手術ファスナーの初期構成は、図2に示されるような構成または任意のその他の概して開いた構成である。手術ファスナーは、バックスパンと、バックスパンとは概略直交して延在する一対のレグとを含み、例えば手術ファスナー130は、バックスパン134とレグ132とを有する。バックスパン134とレグ132との寸法は、手術ファスナー130が任意の厚さの隣接する組織セグメント「T1」、「T2」を綴じるために用いられ得るように、変更され得る(図3a参照)。
【0026】
カートリッジ100は、カートリッジ100を介して遠位に平行移動する作動スレッド1134を含む。作動スレッド1134は、図5aに示されているように駆動バー1107によって遠位に駆動され、駆動バー1107は、ハンドル1002によって作動される。スレッド1134は、プッシャ1131と接触するカムウェッジを含み、該カムウェッジは、プッシャ1131と接触し、プッシャ1132を上方向に駆動させ、手術ファスナー130を配置し、それらをアンビル部材1104に向かって駆動させる(図5c)。特定の実施形態において、カートリッジ100は、スレッド1134を有し、該スレッド1134は、第1の内側ウェッジ1135と、第2の内側ウェッジ1130と、第1の外側ウェッジ1133と、第2の外側ウェッジ1137とを有する。第1の内側ウェッジ1135は、ファスナー保持スロット126の第1の内側の列128Aにおいてプッシャと接触し、第2の内側ウェッジは、保持スロット126の第2の内側の列128Cにおいてプッシャと接触し、第1の外側ウェッジは、保持スロット126の第1の外側の列128Bにおいてプッシャと接触し、第2の外側ウェッジは、保持スロット126の第2の外側の列128Dにおいてプッシャと接触する。図5cに示されているように、カムウェッジ1135は、互いに一体的に形成されるか、または、互いに対して取り付けられる。
【0027】
スロットの第1の内側の列および第2の内側の列においてプッシャと接触する第1の内側のウェッジ1135および第2の内側のウェッジ1130は、それぞれウェッジ表面1135aおよび1135bを有し、クリンプウェッジ表面を画定し、さらにはディンプルウェッジ表面1135cを画定する。クリンプウェッジ表面1135aおよび1135bは、スレッド1134のカムウェッジ上に配置され、その結果、それはディンプルウェッジ表面1135cの遠位に配置される。対応するプッシャは、クリンププッシャ1132とディンプルプッシャ1138とを含み、ディンプルプッシャ1138は、図6に示されているように、クリンププッシャ1132に対してスライド可能である。スレッド1134が駆動バー107によって遠位に駆動されるとき、クリンプウェッジ表面は、まずクリンププッシャ1132と接触し、アンビル部材1014に向かって手術ファスナーを駆動させる。その後、ディンプルウェッジ表面1135cが、ディンプルプッシャ1138と接触する。図3bおよび図5bに示されているように、カートリッジとアンビル部材との間で依然として捕捉されている手術ファスナーは、ディンプルプッシャ1138によって係合され、窪み116が、手術ファスナーのバックスパンに形成される。
【0028】
図6に示されているように、ディンプルプッシャ1138は、クリンププッシャ1132内の通路1132cにおいて受容されるロッドとして形成され得る。ディンプルウェッジ表面1135cは、スレッド1134のカムウェッジの中央に形成され得るクリンプウェッジ表面1135aおよび1135bは、ディンプルウェッジ表面をはさむ。その他の実施形態において、クリンプウェッジ表面は、カムウェッジの一方の側に形成され得、ディンプルウェッジ表面は、カムウェッジの他方の側に形成され得、対応するプッシャはそれに応じて配置される。
【0029】
スロットの第1の外側の列および第2の外側の列においてプッシャと接触する第1の外側ウェッジ1131および第2の外側ウェッジ1137は各々、単一のウェッジ表面1139を有する。第1の外側ウェッジおよび第2の外側ウェッジのこれらのウェッジ表面は、対応するプッシャと相互作用する。スレッド1134が駆動バー107によって遠位に駆動されるとき、ウェッジ表面は、対応するプッシャと接触し、アンビル部材1014に向かって手術ファスナーを駆動させる。アンビル部材は、概して閉じた構成に手術ファスナーを変形させる形状の窪みを有する。例えば、手術ファスナーは、図3aに示されているB形状の構成、図3cに示されている長方形の構成、またはその他の任意の構成に変形され得る。この実施形態において、カートリッジ100内のスロットの外側の列においては、手術ファスナーのバックスパンのディンプルは存在しない。特定の好適な実施形態において、スロットの内側の列の手術ファスナーが、スロットの外側の列の手術ファスナーよりも小さな内部空間を有し、スロットの外側の列の手術ファスナーよりも組織をより圧迫することが望ましい。
【0030】
さらなる実施形態において、手術ファスナーカートリッジは、図5dに示されているように、スロットの内側の列においてプッシャを有し、それらは各々、一体に形成されたクリンププッシャとディンプルプッシャとを有する。ディンプルプッシャ1201は、クリンププッシャ1207の上面1205の上方に延在する上面1203を有する。スレッドがカートリッジを介して遠位に移動するときに、プッシャ1200は、手術ファスナー1200を閉じ、実質的に同時に、手術ファスナーのバックスパンにおいて窪みを形成する。これらのプッシャに対応するスレッドのウェッジは、プッシャ1200を駆動するための単一のウェッジ表面を有する。上述のように、スロットの外側の列におけるプッシャは、異なる形状の構成を有する手術ファスナーを形成する。特定の実施形態において、スロットの内側の列の手術ファスナーが、スロットの外側の列の手術ファスナーよりも小さな内部空間を有していることが望ましい。手術ファスナーカートリッジは、カートリッジの長手軸に横断的に、または概略垂直方向に配置されるスロットを有し得るか、または、スロットは、カートリッジの長手軸の概略平行に配置され得る。
【0031】
さらなる実施形態において、手術ファスナーカートリッジは、折り畳み可能な部分(collapsible portion)を有するプッシャを有する。手術ファスナーの初期の形成後、折り畳み可能部分は機能しなくなる。このことは、プッシャの一部分が、前進させられ続け、手術ファスナーのバックスパンの一部分にディンプルまたは窪みを形成することを可能にする。
【0032】
さらなる実施形態において、カムウェッジのうちの1つ以上は、ハンドルによって別々に作動可能である。例えば、ハンドルは、駆動ロッドに各々が連結された2つ以上の可動ハンドルアームを含み得る。各可動ハンドルアームは、ユーザによって、カムウェッジのうちの1つと相互作用する駆動ロッドを駆動させるように操作され得る。このようにして、1つ以上の手術ファスナーが、別々に配置され得る。
【0033】
別の実施形態において、ディンプルプッシャを有するプッシャは、手術ファスナーの列の遠位端に提供され、その一方で、該列における残りのプッシャは、ディンプルプッシャを有さない。列の遠位端における手術ファスナーは、窪みを有する形成された構成を有し、形成されたときに列内の残りのファスナーよりも小さい内部空間を有し得る。その他の例においては、ディンプルプッシャを有するプッシャが、手術ファスナーの列の近位端および/または中間領域に提供され、その一方で、該列における残りのプッシャが、ディンプルプッシャを有さないことにより、窪みと該残りの手術ファスナーよりも比較的小さい内部空間とを有するなんらかの手術ファスナーを形成する。
【0034】
手術ファスナーのレグ132およびバックスパン134は、長方形、楕円形、正方形、三角形、台形を含むがそれらには限定されない、任意の適切な幾何学的構成を有する断面を画定し得る。レグ132およびバックスパン134は、手術ファスナー130の断面の構成が図2に示されているように実質的に均一となるように、同じ幾何学的構成を示し得るか、または代替的に、レグ132およびバックスパン134は、異なる幅または幾何学的構成を示し得る(例えば、レグ132が、長方形の断面を示し得る一方で、バックスパン34は、楕円形の断面を示し得る)。
【0035】
手術ファスナー130の形成前に、レグ132は、それらが実質的に平行となるように、バックスパン134から延在する。代替的に、レグ132は、平行な配置でバックスパン134から延在しないことがあり得る(すなわち、レグ132は、バックスパンから収束または発散し得る)。本開示は、手術ファスナー130が、米国特許7,398,907号(その全体の内容は、参考のために本明細書に援用される)に記載されているような、ある方向に付勢された手術ファスナーとして構成され得ることをも想定する。手術ファスナーは、例えばステンレス鋼、チタン、変形可能な重合体のような、変形可能な材料から形成される。
【0036】
レグ132の各々は、例えば組織セグメント「T1」、「T2」(図3a参照)のような組織を貫通するように構成された貫通端136で終端する。レグ132の貫通端136は、組織セグメント「T1」、「T2」の貫通を容易にするようにテーパ状であり得るか、または代替的に、貫通端13は、テーパを含まないことがあり得る。手術ファスナー130の様々な実施形態において、貫通端136は、米国特許出願公開第20060291981号として公開された、2003年4月13日出願の同時係属中の米国特許出願第11/444,761号(その全体の内容は、参考のために本明細書中に援用される)に記載されているように、円錐状または平坦な表面を画定し得る。
【0037】
図2に示されている手術ファスナー130の実施形態において、バックスパン134は、変形されていない状態においては、実質的に直線状の構成である。組織セグメント「T1」、「T2」内で形成されたときに、手術ファスナー130のレグ132は、図3aに示されているように、文字「B」の形状で、互いに向けて湾曲され、バックスパンを指向し得る。レグ132は、バックスパン134と協働し、隣接する組織セグメント「T1」、「T2」を接近状態に維持し、そこに圧迫力「F」を適用する。圧迫力「F」は、組織セグメント「T1」、「T2」に圧力を適用し、それにより、手術ファスナー130を包囲する組織を介する血流を制限し、止血を促進する。形成後、ステープルは、閉じた構成を有し、組織を介する血流が完全には制限されないように、組織セグメント「T1」、「T2」に適用される圧力の量を制限するバックスパン134とレグ132との間に内部空間を有する。形成されたときに、手術ファスナー130は、バックスパン134からレグ132の最も外側の曲線まで測定される全高さ「Hf」を画定する。
【0038】
図3a、図3b、図3cおよび図3dは、ファスナーに対して代替的に形成される構成を示す。本開示にしたがうカートリッジおよび手術ファスナー装置は、1つ以上の形成された構成で形成されたファスナーを用いる。手術ファスナーの形成された構成は、カートリッジ内で列ごとに変動し得るか、または、カートリッジ内の複数の列内で変動し得る。一般に、手術ファスナー装置は、バックスパンが実質的に非直線状の構成となるように、特定の手術ファスナーのバックスパンに1つ以上の窪みを形成する作動構造を含む。以下でさらに詳細に議論されるように、形成されたときに、バックスパンの非直線状の構成は、形成された手術ファスナーの内部空間を低減し、さらには手術ファスナーを包囲する組織を介する血流を制限する。手術ファスナー装置によって接合される組織の特定の部分に対して、組織のその他の部分よりも大きい圧力を適用すること、または、手術ファスナー装置によって係合される組織の部分の厚さの差を補償することが、望ましくあり得る。
【0039】
図3bに示されている手術ファスナーは、手術ファスナーのバックスパンに形成された単一の窪み116または隆起(hump)を有する。対照的に、図3cに示されている手術ファスナーは、窪みまたは隆起を有しておらず、レグは、図3aに示されている湾曲したB形状の構成を有していない。図3dは、手術ファスナーのバックスパンに2つの窪み138Aを有する手術ファスナーを示す。作動構造は、手術ファスナーのバックスパンと係合するように、2つのディンプルプッシャを含み得る。
【0040】
図3dを参照すると、手術ファスナー130aが、その形成された状態で示されている。手術ファスナー130aは、バックスパン134aに形成された窪み138aを含み、該窪み138aは、バックスパン134aから内側に延在し、レグ132の貫通端136に向けて湾曲し、第1の高さ「H1」の窪みまたは隆起を画定している。手術ファスナー130aが組織セグメント「T1」、「T2」内に形成されるとき、隆起/窪み138aは、手術ファスナー130aのレグ132と協働することにより、圧迫力をそこに適用する。手術ファスナー130(図3a)における組織セグメント「T1」、「T2」によって占有される圧迫空間と比較したときに、手術ファスナー130aにおいては、バックスパン134Aとレグ132との間に画定され組織セグメント「T1」、「T2」によって占有される内部空間または圧迫空間は小さいので、手術ファスナー130aによって適用される圧迫力は、手術ファスナー130(図3a)によって適用される圧迫力よりも大きい。したがって、手術ファスナー130aによって組織セグメント「T1」、「T2」により大きな圧力が適用される。結果的に、手術ファスナー130aを包囲する組織を介する血流は、手術ファスナー130を包囲する組織を介する血流と比較したときに、より制限され、その結果、さらなる止血を促進する。窪み138aと組織セグメント「T」、「T」によって占有される圧迫空間との寸法は、血流が完全には制限されないが、それによって組織のどのような不必要な壊死をも防ぐようなものである。形成されるときに、手術ファスナー130aは、手術ファスナー130によって画定される全高さと実質的に等しい、全高さ「Hf」を画定する。
【0041】
さらなる例において、ステープルのバックスパンに形成される窪みまたは隆起は、手術ファスナー装置によって接合される組織の他の部分と比較して、組織の特定の部分をより圧迫するように、形成されたステープルの内部空間または圧迫空間を変化させるように変更され得る。例えば、一実施形態において、手術ファスナーカートリッジは、スロットの第1の外側の列および第2の外側の列に、より小さい窪みを有する手術ファスナーを形成し、スロットの第1の内側の列および第2の内側の列に、比較的大きい窪みを有する手術ファスナーを形成する。したがって、手術ファスナーが組織セグメント「T1」、「T2」内に形成されるとき、窪みは、手術ファスナーのレグと協働して、組織セグメントに圧迫力を適用する。組織セグメント「T1」、「T2」によって占有される圧迫空間はより小さいので、大きい窪みを有する手術ファスナーによって適用される圧迫力は、小さい窪みを有する手術ファスナーによって適用される圧迫力よりも大きい。形成されるときに、手術ファスナーは、実質的に等しい高さであり得る全高さ「Hp」を画定する。
【0042】
図1に示されている実施形態において、カートリッジ本体112内に装填される手術ファスナーは、一対の内側の列と一対の外側の列とを画定するように配置され、これらはそれぞれ、上壁120に形成されたファスナー保持スロット126の内側の列と外側の列とに対応する。したがって、一対の内側の列は、長手スロット122の両側で、長手スロット122の横に離間され、一対の外側の列は、この場合もやはり長手スロット122の両側で、一対の内側の列から横に離間され、その結果、手術ファスナーは、綴じる際に組織に形成される切断線(図示されず)の両側に配置され得る。すなわち、曲線(窪み)と形成されたレグの曲線との間の距離はより小さく、ファスナーはより小さい内部空間を有しているので、窪み116(図3b)を有するファスナーは、より大きい圧迫力を提供し、示されている実施形態において、これらのファスナーは、切断線により近い内側の列に提供される。レグの曲線とバックスパンとの間のより大きい距離を有するファスナーは、外側の列に提供される。この実施形態においてファスナーの第3の列が用いられる場合、好適には、最も小さい内部空間を有するファスナー(例えば、比較的大きい窪みを有するファスナー)が、切断線に最も近い最も内側の列に配置され得る。切断線に接近されるときにより大きい組織の圧迫を提供するファスナーの列を提供することにより、組織は、切断線により隣接して圧迫される。しかしながら、ファスナーが、上述の配置とは異なる他の配置で、列に配置され得ることが理解されるべきである。また、本開示は、本明細書中に開示されているあらゆる手術ファスナーの使用を想定しており、唯1つのみの(例えば、手術ファスナー130が存在する)形成された構成を有する手術ファスナーまたは様々に形成された構成を有する手術ファスナーが用いられる。
【0043】
手術ファスナー適用装置1000は、組織を外科的に吻合して綴じることを実行するための腹腔鏡処置における使用に適した装置として示されているが、手術ファスナーカートリッジ100は、組織に手術ファスナーを適用するように」意図された目的に適した任意の手術器具と共に使用するように適合され得る。例えば、手術ファスナーカートリッジ100は、図8に見られる端々吻合デバイス2000、開胃腸吻合における綴じる処置の間に使用するための図9に見られる手術ファスナー適用器具3000、または、米国特許第6,045,560号、第5,964,394号、第5,894,979号、第5,878,937号、第5,915,616号、第5,836,503号、第5,865,第361号、第5,862,972号、第5,817,109号、第5,797,538号、第5,782,396号(これらの米国特許の全体の内容は、参考のために本明細書中に援用される)に開示されている手術ファスナー適用装置のうちのいずれかと共に使用するように適合され得る。
【0044】
手術ステープル装置3000は、複数の手術ファスナーを収容するカートリッジ受容半分セクション3002と、アンビル半分セクション3004とを含む。半分セクション3002、3004は、使用中の接近のために、ハンドル3006、3008を介して旋回可能なように連結される。半分セクション3002、3004の接近に続き、手術ファスナー適用装置3000は、発射レバー3012の前進によって発射スライドを遠位に駆動させることによって、発射される。発射スライドの遠位の動きは、複数のカムバーをカム表面と係合させ、該カム表面は、複数のプッシャと相互作用し、複数の手術ファスナーをカートリッジ受容半分セクション3002から排出させる。手術ファスナーは、長手方向の動きの間にナイフを導くことによって切断線に沿って組織を切断するためのトラックのいずれかの側に配置される。
【0045】
ここで図10を参照すると、代替的な実施形態における、手術ファスナーカートリッジ200が開示される。手術ファスナーカートリッジ200は、それがファスナーの列を含むという点で手術ファスナーカートリッジ100と類似しているが、手術ファスナーカートリッジ200は、ナイフまたは他の切断要素を収容するように構成された長手スロット122(図1)を有していない(しかしながら、代替的な実施形態においては、ナイフが提供され得る)。手術ファスナー100と同様に、手術ファスナーカートリッジ200は、カートリッジ本体212の上壁220上に複数のファスナー保持スロット226を含み、それらは、複数の列228に配置される。保持スロット226の列228は、カートリッジ本体212によって画定される長手軸「A−A」に沿って延在する中心線252から横に離間され、好適には、側壁214、216から等距離に離間される。示されているように、複数の列228は、中心線252の両側に配置された一対の第1の(内側の)列228aと、一対の第1の列228aから横に離間され、この場合もまた中心線252の両側に配置された、一対の第2の(外側の)列228bとを含む。スロットの各々は、長手軸に対して概略平行に延在する。ファスナー保持スロット226の各々は、複数の手術ファスナーおよびプッシャ(図示されず)のうちの1つを受容するように構成され、その結果、手術ファスナーは、中心線252の両側で列(図18の実施形態においては、内側の列と外側の列)に配置され、1つ以上の形成された構成を有するファスナー(例えば、図3a、3b、3c、3dに示される手術ファスナー)に形成される。
【0046】
図4は、カートリッジの上面2222に形成されたスロット2224を有する手術ファスナーカートリッジ2220の例を示す。スロットは、長手軸に対して概略垂直に延在する。これらのスロット2224は、例えば縦の列2227および横の列2228のような、列に配置される。カートリッジ2220は、ナイフのための長手スロットを含まない。カートリッジ2220は、比較的大きい内部空間を有する特定のファスナーと比較的小さい内部空間を有する他のファスナーとを形成するために、本明細書中で議論されているような複数のプッシャを含む。
【0047】
図10の手術ファスナーカートリッジ200は、一対の第1の列228a、一対の第2の列228bのそれぞれを含むものとして示されているが、手術ファスナーカートリッジ100に関して上記で議論されたように、ファスナー保持スロットのさらなる列、したがって手術ファスナーのさらなる列が、手術ファスナーカートリッジ200の代替的な実施形態に含まれ得る。また、他のカートリッジの実施形態に関して本明細書中で議論されたように、ファスナーは、カートリッジ内に異なる方法で配置され得る。
【0048】
さらに図11を参照すると、手術ファスナーカートリッジ200と共に使用するための再使用可能または使い捨ての種類のいずれかの手術ファスナー適用装置4000が示されている。手術ファスナー適用装置4000は、ハンドルアセンブリ4002と、ハンドル4002から遠位に延在する細長い部分4004と、細長い部分4004の遠位端4008から延在するアーム4006とを含む。手術ファスナー適用装置4000は、エフェクタ4010をさらに含み、該エフェクタ4010は、アーム4006に対して直交するように固定されたアンビル4012と、細長い部分4004の遠位端4008に動作可能なように結合された、手術ファスナーカートリッジ200を保持するための手術ファスナーカートリッジ受容部4014とを含む。
【0049】
操作中、手術ファスナー適用装置4000は、公知の手術ファスナーステープル器具と同様に、そして公知の手術ファスナーステープル装置にしたがって、発射される。手術ファスナーステープル器具4000の接近および発射に関する詳細な議論については、Tyco Healthcare Group,LPが現在の譲受人である、同一出願人の米国特許第5,964,394号を参照されたい。該米国特許の全体の内容は、参考のために本明細書中に援用される。ハンドルアセンブリ4002は、ハウジング4016を含み、該ハウジング4016は、静止ハンドル部材4018を含む。可動ハンドル4020は、ハウジング4016内で旋回可能なように支持され、静止ハンドル部材4018から離れるように付勢される。静止ハンドル部材4018の方向への可動ハンドル4020の動きは、ハウジング4016内の作動軸に駆動力を与え、そして該作動軸は、ステープルカートリッジ4014内のプッシャに力を加え、それにより、ステープルカートリッジ200のスロット内に配置されたファスナーを射出させ、アンビル部材4012のステープル形成表面に向かって手術ファスナーを駆動させる。ステープルカートリッジ4014をアンビル4012に向けて前進させる前に、臨床医は、接近レバー4017をハウジング4016に向けて動かし、その結果、ステープルを発射する前にステープルカートリッジ4014がアンビル4012に向けて動かされ、ステープルカートリッジ4014がアンビル4012に対して、それらの間に組織が配置されるように接近させられる。
【0050】
手術ファスナー適用装置4000は、複数の手術ファスナー(例えば、手術ファスナー130)を組織の標的部位(図示されず)のいずれの側にも適用するために用いられ、米国特許第7,070,083号(該米国特許の全体の内容は、参考のために本明細書中に援用される)に開示されている横断吻合器具を含むがそれには限定されない、この目的に適した任意の手術ファスナー適用装置であり得る。ファスナー適用装置は、カートリッジからアンビルに向かって遠位方向に手術ファスナーを配置するために遠位方向に前進させられる複数のプッシャを含む。概して手術ファスナーは、同時におよび形成される。カートリッジ内の他の手術ファスナーとは異なる形成された構成(例えば、図3a、3b、3c、3dに示されているような構成)を有する手術ファスナーを形成するために、複数のプッシャの一部は、ディンプルプッシャおよびクリンププッシャを有する。ディンプルプッシャおよびクリンププッシャは、手術ファスナーを別々に閉じ、その後手術ファスナーのバックスパンに窪みを形成するように、互いに対して移動可能であり得るか、あるいは、ディンプルプッシャおよびクリンププッシャは、互いに一体に形成され得る。その後、外科用メスまたは他の切断要素が、組織の標的部位を除去するために用いられ得る。手術ファスナー適用装置4000の使用および機能に関するさらなる詳細は、米国特許第7,070,083号を参照することにより得られよう。代替的な実施形態において、装置4000は、本明細書中で議論されている他のカートリッジと同様に、切断要素を含み得る。
【0051】
本開示の特定の実施形態にしたがう手術ファスナー適用装置は、手術ファスナーを配置するためにプッシャと相互作用する複数のカムバーを含む。例えば、米国特許第5,318,221号(該米国特許の全体の内容は、参考のために本明細書中に援用される)において議論されている装置は、複数のカムバーおよびナイフを保持するカムバーアダプタを有する。装置のハンドルの操作を介してチャネルが前進され、このことは、カムバーおよびナイフを前方に駆動する。アンビルの近位端を包囲するクランプチューブが、アンビルとカートリッジとを互いにクランプするために前進させられる。別の例において、米国特許第5,782,396号(該米国特許の全体の内容は、参考のために本明細書中に援用される)に開示されている装置は、作動スレッドを有する。装置のハンドルの操作によって細長い駆動梁が前進させられ、作動スレッドを前方に駆動する。ステープルを配置し、アンビルとカートリッジとを互いにクランプするために、駆動梁の遠位端は、駆動梁が遠位に移動するときに、アンビルとカートリッジを支持するチャネルとに係合する。
【0052】
本開示は、複数のスロットを画定する上面を有する手術ファスナーカートリッジを有する手術ステープル装置を想定し、該複数のスロットは、第1の内側の列と第1の外側の列とに配置され、第1の内側の列における各スロットは、第1の手術ファスナーを含み、クリンププッシャおよびディンプルプッシャを有するプッシャは、第1の内側の手術ファスナーを形成し、かつ、手術ファスナーのバックスパンにおいて窪みを形成するように第1の閉じた構成で配置され、第1の外側の列における各スロットは、第1の外側の手術ファスナーを含み、プッシャは、第2の形成された構成で第1の外側の手術ファスナーを形成するように配置される。
【0053】
本開示はさらに、複数のスロットを画定する上面を有する手術ファスナーカートリッジを有する手術ファスナーステープル装置をさらに想定し、該複数のスロットは、第1の内側の列と第1の外側の列とに配置され、第1の内側の列における各スロットは、第1の内側の手術ファスナーを含み、プッシャは、形成された第1の内側の手術ファスナーが第1の内部空間を有し、かつ、バックスパンが変形されるように、第1の内側の手術ファスナーを形成するように配置され、第1の外側の列における各スロットは、第1の外側の手術ファスナーを含み、プッシャは、形成された第1の外側の手術ファスナーが第2の内部空間を有し、第1の内部空間が第2の内部空間よりも小さくなるように、第1の外側の手術ファスナーを形成するように配置される。
【0054】
本開示は、本明細書において上記で議論された通りの実施形態に限定されず、他の様々な変更および改変が、本開示の範囲および精神から逸脱することなく、当業者によって想定され得ることが理解されるべきである。例えば、本明細書において上記に開示されている手術ファスナーは、チタン、プラスチック、生体吸収性材料等の様々な外科的に許容可能な材料から形成され得る。本開示の例示的な実施形態は、添付の図面を参照して本明細書中に記載されてきたが、上述の記載、開示および図面は、限定として見なされるべきではなく、単に様々な実施形態の例示として見なされるべきである。
【符号の説明】
【0055】
100 手術ファスナーカートリッジ
112 カートリッジ本体
114、116 側壁
118 底壁
120 上壁
122 長手スロット
124 組織係合表面
126 ファスナー保持スロット
128A スロットの第1の内側の列
128B スロットの第1の外側の列
128C スロットの第2の内側の列
128D スロットの第2の外側の列
1000 手術ファスナー適用装置
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
図7
図8
図9
図10
図11