(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記光照射部から放射される前記赤色光照明光及び前記青色光照明光の光量、波長及び/又は照射時間を所定値に維持するか、あるいは所定のパターンで変化させる請求項4記載の藻類培養装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。説明は以下の順序で行う。
1.藻類培養方法
(1)第一実施形態に係る藻類培養方法
(2)第二実施形態に係る藻類培養方法
(3)第三実施形態に係る藻類培養方法
(4)波長
(5)光量
(6)照射時間
2.藻類培養装置
(1)第一実施形態に係る藻類培養装置
(1−1)光照射部
(1−2)制御部
3.培養藻類
【0016】
1.藻類培養方法
(1)第一実施形態に係る藻類培養方法
本発明に係る藻類培養方法は、赤色光照明光を藻類に照射する手順(以下「赤色光照射ステップ」とも称する)と、青色光照明光を藻類に照射する手順(以下「青色光照射ステップ」とも称する)と、を一定期間内に別個独立に行うことによって藻類の増殖を促進する方法である。
【0017】
赤色光照明光は、実質的に波長域570〜730nmの赤色光である。赤色光照明光は、上記赤色光と異なる波長域の光を含んでいてもよいが、次に述べる青色光を含まないことが好ましい。赤色光照明光は、特に好ましくは、上記赤色光のみを含む。青色光照明光は、実質的に波長域400〜515nmの青色光を含む照明光である。青色光照明光は、上記青色光と異なる波長域の光を含んでいてもよいが、上述の赤色光を含まないことが好ましい。青色光照明光は、特に好ましくは、上記青色光のみを含む。さらに、赤色光照明光が上記青色光を含まず、青色光照明光が上記赤色光を含まない場合が好ましく、赤色光照明光が上記赤色光のみで、青色光照明光が上記青色光のみの場合が特に好ましい。
【0018】
ここで、「一定期間」とは、藻類培養中の任意時間長の期間を意味する。この期間は最長で培養全期間である。また、最短の期間は、本発明の効果が奏される限りにおいて任意に設定できる。この期間は、例えば時間(hr)を時間長の単位とするものであってよく、さらにより長い時間長単位(例えば日(day))あるいはより短い時間長単位(例えば分(minutes))とするものであってもよい。
【0019】
本発明に係る藻類培養方法は、藻類の培養期間において、任意のタイミングで開始あるいは終了され、任意時間長で適用され得るものとする。
【0020】
また、「別個独立」とは、上記期間内に、赤色光照射ステップと青色光照射ステップとが別々に存することを意味する。赤色光照射ステップと青色光照射ステップは、上記期間内に少なくとも一工程ずつ含まれていればよい。
【0021】
赤色光照射ステップと青色光照射ステップは交互に連続して行ってもよく、両ステップの間に赤色光照明光及び青色光照明光を藻類に同時照射する手順又は藻類への光照射を休止する手順を挟んで不連続に繰り返して行ってもよい。ただし、藻類増殖促進効果を高めるためには交互に連続して行うことが好ましい。これらの本発明に係る藻類培養方法の実施形態について、
図1〜
図3を参照しながら具体的に説明する。なお、本発明に係る植物栽培方法は、
図1〜
図3で説明する各実施形態を適宜組み合わせて実施することも当然に可能である。
【0022】
図1は、本発明の第一実施形態に係る藻類培養方法の手順を説明する図である。この実施形態は、赤色光照射ステップと青色光照射ステップを交互に連続して行うものである。
【0023】
図中、符号S
1は赤色光照射ステップ、符号S
2は青色光照射ステップを示す。本実施形態では、赤色光照射ステップS
1と青色光照射ステップS
2が交互に連続して行われ、赤色光照射ステップS
1と青色光照射ステップS
2とからなる照射サイクルが繰り返し行われる。
【0024】
このように、藻類に対して赤色光照明光と青色光照明光を交互に照射することにより、分裂を顕著に促進することができる(後述実施例参照)。
【0025】
ここでは、第1回目の照射サイクルC
1において赤色光照射ステップS
1から手順を開始する場合を例に説明したが、各照射サイクルにおいて赤色光照射ステップS
1及び青色光照射ステップS
2のいずれを先に行うかは任意である。
【0026】
(2)第二実施形態に係る藻類培養方法
図2は、本発明の第二実施形態に係る藻類培養方法の手順を説明する図である。この実施形態は、赤色光照射ステップと青色光照射ステップとを、両ステップの間に赤色光照明光及び青色光照明光を藻類に同時照射する手順(以下「同時照射ステップ」とも称する)を挟んで不連続に繰り返して行うものである。
【0027】
図中、符号S
3は、同時照射ステップを示す。本実施形態では、赤色光照射ステップS
1と青色光照射ステップS
2が、同時照射ステップS
3を挟んで不連続に行われ、赤色光照射ステップS
1、同時照射ステップS
3及び青色光照射ステップS
2とからなる照射サイクルが繰り返し行われる。
【0028】
ここでは、第1回目の照射サイクルC
1において同時照射ステップS
3から手順を開始する場合を例に説明したが、各照射サイクルにおいて赤色光照射ステップS
1、同時照射ステップS
3及び青色光照射ステップS
2のいずれを先に行うかは任意である。
【0029】
(3)第三実施形態に係る藻類培養方法
図3は、本発明の第三実施形態に係る藻類培養方法の手順を説明する図である。この実施形態は、赤色光照射ステップと青色光照射ステップとを、両ステップの間に藻類への光照射を休止する手順(以下「休止ステップ」とも称する)を挟んで不連続に繰り返して行うものである。
【0030】
図中、符号S
4は、休止ステップを示す。本実施形態では、赤色光照射ステップS
1と青色光照射ステップS
2が、休止ステップS
4を挟んで不連続に行われ、赤色光照射ステップS
1、休止ステップS
4及び青色光照射ステップS
2とからなる照射サイクルが繰り返し行われる。
【0031】
ここでは、第1回目の照射サイクルC
1において休止ステップS
4から手順を開始する場合を例に説明したが、各照射サイクルにおいて赤色光照射ステップS
1、休止ステップS
4及び青色光照射ステップS
2のいずれを先に行うかは任意である。
【0032】
(4)波長
上述した各実施形態に係る藻類培養方法において、赤色光は波長570〜730nmの光をいい、635〜660nmの波長を中心波長をとする光が好適に用いられる。また、青色光は、波長400〜515nmの光をいい、中心波長を450nmとする光が好適に用いられる。赤色光及び青色光は、上記波長を中心波長として所定の波長域を有するものであってよい。波長域としては、例えば青色光であれば、450±30nm、好ましくは450±20nm、さらに好ましくは450±10nmとできる。
【0033】
また、赤色光及び青色光の波長は上記波長域の範囲内で変化させてもよく、例えば第N回目(Nは1以上の整数)の照射サイクルC
Nにおいて波長が変化してもよい。また、第N回目の照射サイクルC
Nと第M回目(MはNと異なる1以上の整数)の照射サイクルC
Mとで波長が上記波長域の範囲内で異なっていてもよい。
【0034】
さらに、上述の赤色光照射ステップS
1、同時照射ステップS
3及び青色光照射ステップS
2において、赤色光及び青色光に加えて、他の波長域の光を組み合わせて複数の波長域の光によって照射を行ってもよい。
【0035】
(5)光量(強度)
赤色光照射ステップS
1、青色光照射ステップS
2及び同時照射ステップS
3における赤色光及び青色光の光量(強度)は、特に限定されないが、例えば光合成光量子束密度(Photosynthetic Photon Flux Density:PPFD)でそれぞれ1〜1000μmol/m
2s、好ましくは10〜500μmol/m
2s、特に好ましくは50〜250μmol/m
2s程度とされる。
【0036】
また、上記各ステップにおける赤色光照明光及び青色光照明光の光量(強度)比は、例えば「赤:青」あるいは「青:赤」で1:1、5:3、2:1、3:1、4:1、10:1、20:1などのように任意に設定され得る。
【0037】
また、赤色光照明光及び青色光照明光の光量は上記範囲内で変化させてもよく、例えば第N回目(Nは1以上の整数)の照射サイクルC
Nにおいて強度が変化してもよい。また、第N回目の照射サイクルC
Nと第M回目(MはNと異なる1以上の整数)の照射サイクルC
Mとで光強度を上記範囲内で変化させてもよい。
【0038】
(6)照射時間
上述した各実施形態に係る藻類培養方法において、一つの照射サイクルの時間は、最長で培養全期間である。また、最短の時間は、本発明の効果が奏される限りにおいて任意に設定できる。一つの照射サイクルは、例えば時間(hr)を時間長の単位とするものであってよく、さらにより長い時間長単位(例えば日(day))あるいはより短い時間長単位(例えば分(minutes))とするものであってもよい。
【0039】
例えば、赤色光照射ステップS
1と青色光照射ステップS
2を交互に連続して行う第一実施形態に係る藻類培養方法において、一つの照射サイクルを一日とする場合、赤色光照射ステップS
1を12時間、青色光照射ステップS
2を12時間とすることができる。また、例えば、一日に照射サイクルを4回繰り返す場合、一つの照射サイクルは6時間となり、赤色光照射ステップS
1を3時間、青色光照射ステップS
2を3時間とすることができる。
【0040】
一つの照射サイクルの時間は、第N回目の照射サイクルC
Nと第M回目(MはNと異なる1以上の整数)の照射サイクルC
Mとで変化させてもよい。例えば、照射サイクルC
Nを12時間とし、続く照射サイクルC
N+1を6時間とすることもできる。
【0041】
また、一つの照射サイクル内における赤色光照射ステップS
1、青色光照射ステップS
2、同時照射ステップS
3及び休止ステップS
4の時間比は、任意であってよい。例えば、上述の第一実施形態に係る藻類培養方法において、一つの照射サイクルを一日とする場合、「赤色光照射ステップS
1・青色光照射ステップS
2」を「12時間・12時間(1:1)」、「16時間・8時間(2:1)」、「21時間・3時間(7:1)」などのように任意に設定し得る。
【0042】
特に好ましくは、赤色光照射ステップS
1と青色光照射ステップS
2を交互に連続して行う第一実施形態に係る植物栽培方法において、赤色光照射ステップS
1と青色光照射ステップS
2とを藻類の細胞分裂周期に応じた時間間隔で切り換える。
【0043】
(7)その他
本発明に係る藻類培養方法において、照明条件以外の培養条件は、従来公知の培養方法と同様とできる。例えば、培地には、淡水産藻類用の培地(例えば、AF6培地、C培地、URO培地等)、海産藻類用培地(ESM培地、f/2培地、IMR培地、MNK培地等)などを用いればよい。
【0044】
本発明に係る藻類培養方法は、赤色光と青色光の照射を藻類の光合成のメカニズムに対応させることにより、顕著な分裂促進効果を生み出しているものと考えられる。本発明に係る藻類培養方法では、炭酸ガスや既知の光合成促進効果があるとされる薬剤などを併用することにより、増殖促進効果をさらに高めることができる場合がある。
【0045】
2.藻類培養装置
(1)第一実施形態に係る藻類培養装置
(1−1)光照射部
本発明に係る藻類培養装置は、上述した藻類培養方法の各手順を実行可能なものであり、赤色光照明光及び青色光照明光を藻類に照射する光照射部と、光照射部を制御して、赤色光照明光を藻類に照射するステップと、青色光照明光を藻類に照射するステップと、を一定期間内に別個独立に実行する制御部と、を備える。
【0046】
光照射部には、赤色光又は青色光を放射する光源が含まれる。赤色光及び青色光の光源には、従来公知の光源を用いることができる。光源には、波長選択が容易で、有効波長域の光エネルギーの占める割合が大きい光を放射する発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)などの光半導体素子を用いることが好ましい。エレクトロルミネッセンス(EL)を用いる場合、ELは有機であっても無機であってもよい。
【0047】
光半導体素子は、小型で寿命が長く、材料によって特定の波長で発光して不要な熱放射がないためエネルギー効率が良く、藻類に近接照射しても細胞を障害し難い。このため、光半導体素子を光源に用いることで、他の光源に比べて、より低電力コストで、より省スペースで栽培を行うことが可能となる。
【0048】
光源には、1つの赤色光半導体素子と1つの青色光半導体素子を組み合わせて実装したSMD(2 Chips Surface Mount Device)を線状に配列したSMDライン光源や、赤色光半導体素子あるいは青色光半導体素子のどちらか一方のみを線状あるいは面状に配列した単色ライン光源あるいは単色パネル光源などを使用できる。
【0049】
半導体素子は、原理上、数メガヘルツ(MHz)以上もの高い周波数で点滅駆動が可能である。このため、光半導体素子を光源に用いることで、赤色光照射ステップS
1、青色光照射ステップS
2、同時照射ステップS
3及び休止ステップS
4の各ステップの切り替えを極めて高速に行うことも可能となる。
【0050】
上記波長域の光を放射するLEDとしては、例えば赤色LEDには、昭和電工株式会社から製品番号HRP−350Fとして販売されているアルミニウム・ガリウム・インジウム・リン系発光ダイオード(ガリウム・リン系基板、赤色波長660nm)などがあり、青色LEDには同社製品番号GM2LR450Gの発光ダイオードなどがある。
【0051】
発光ダイオード以外の光源としては、例えば直管形及びコンパクト形の蛍光ランプ及び電球形蛍光ランプ、高圧放電ランプ、メタルハライドランプ、レーザーダイオードなどが挙げられる。これらの光源に組み合わせて、上記波長域の光を選択的に利用するための光学フィルタを用いてもよい。
【0052】
(1−2)制御部
制御部は、光照射部から放射される赤色光照明光及び青色光照明光の光量(強度)、波長及び/又は照射時間を所定値に維持するか、あるいは所定のパターンで変化させる。
【0053】
制御部は、汎用のコンピューターを用いて構成することができる。例えば光源としてLEDを用いる場合、制御部は、メモリやハードディスクに予め保持、記憶された制御パターンに基づいて、LEDの駆動電流の大きさを調整し、赤色光照明光及び青色光照明光の強度及び照射時間を変化させる。また、制御部は、制御パターンに基づいて、異なる波長域の光を放射する複数のLEDを切り替えて駆動し、照射される光の波長域を変化させる。
【0054】
3.培養藻類
本発明に係る藻類培養方法等が対象とする藻類には、原核生物であるか真核生物であるかを問わず、緑藻類、褐藻類、藍藻類、紅色光合成細菌等の単細胞生物、水草等の水生の光合成能を有する多細胞生物などが広く含まれる。藻類として、具体的には、藍藻類、原核緑藻類、紅藻類、灰色藻類、クリプト藻類、渦鞭毛藻類、黄金色藻類、珪藻類、褐藻類、黄緑藻類、ハプト藻類、ラフィド藻類(緑色鞭藻類)、クロララクニオン藻類、ミドリムシ藻類、プラシノ藻類、緑藻類、車軸藻類などが挙げられる。
【0055】
藻類は、特に微細藻類と呼ばれる緑藻類とすることができる。微細藻類としては、緑藻綱(Class Chlorophyceae)やトレボウクシア藻綱(Class Trebouxiophyceae)に属する緑藻類が含まれる。緑藻綱では、例えば、ボトリオコッカス属(Botryococcus)、ヘマトコッカス属(Haematococcus)、クロレラ属(Chlorella)の緑藻類があげられ、トレボウクシア藻綱では、シュードコリシスチス属(Pseudochoricystis)の藻類が挙げられる。
【0056】
ボトリオコッカス属の一種ボトリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)やシュードコリシスチス属の一種シュードコリシスチス・エリプソイディア(Pseudochoricystis ellipsoidea)は、光合成によって二酸化炭素を固定し、石油(重油又は軽油)の代替となりうる炭化水素を生成する。また、ヘマトコッカス属の一種ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)やヘマトコッカス・ラクストリス(Haematococcus lacustris)は、抗酸化作用物質であるアスタキサンチンを産生する。
【0057】
上述のように、本発明に係る藻類培養方法においては、赤色光照射ステップと青色光照射ステップとを対象とする藻類の細胞分裂周期に応じた時間間隔で切り換えることが望ましい。具体的には、細胞分裂周期が長いボトリオコッカス・ブラウニーでは、一つの照射サイクルを、例えば赤色光照射ステップ12時間・青色光照射ステップ12時間とする。また、細胞分裂周期が短いクロレラ属の緑藻類では、例えば赤色光照射ステップと青色光照射ステップを0.1〜3時間ずつとして一つの照射サイクルを構成する。
【実施例】
【0058】
<試験例1:ボトリオコッカス・ブラウニーの増殖促進試験>
本試験例では、炭化水素産生藻類であり、緑藻類の一種であるボトリオコッカス・ブラウニーにおいて、赤色光と青色光との交互照射による増殖促進効果を検討した。
【0059】
国立環境研究所より分譲されたBotryococcus braunii N-2199株を寒天培地(Hyponex、1000倍希釈、1%アガロース)で初期増殖させた。初期増殖は、蛍光灯照明環境下で行った。寒天培地からコロニーをピックアップし、70μlの蒸留水に懸濁し、30μlずつを寒天培地に播種した。
【0060】
光源には、赤色LED(中心波長:660nm、昭和電工株式会社製)、青色LED(中心波長:480nm、昭和電工株式会社製)及び蛍光灯を用いた。各LEDの1セットの実装数は、赤色LED及び青色LEDともに240個である。
【0061】
以下に示す照明環境とした実験区を作成し、3週間培養を行ってコロニーを形成させた。
「対照区」
光源:蛍光灯、照明光の光合成光量子束密度:140μmol/m
2s、12時間明期/12時間暗期
「LED区」
光源:赤色LED及び青色LED、照明光の光合成光量子束密度:赤87.5、青52.5μmol/m
2s(赤青比5:3)、12時間赤/12時間青(赤青交互照射)
【0062】
結果を
図4に示す。図上段は対照区、下段はLED区で培養したプレートからランダムに選択された10コロニーの写真を示す。コロニーサイズの比較のため、写真には、200μmのスケールバーを入れている。
【0063】
LED区では対照区に比べてコロニーのサイズが大きくなった。個々の細胞の観察から、コロニーサイズの増大は、細胞自体の大きさの増大ではなく、細胞数の増加によるものと考えられた。
【0064】
lenaraf 202b software (Atelier M&M)を用いてコロニー面積を計測した結果を
図5及び表1に示す。
図5は、10コロニーの面積の平均値をグラフ化したものであり、縦軸はコロニー面積(μm
2)の平均値と標準偏差を示す。LED区では、対照区に比べてコロニー増殖が良好であり、3週間の培養期間内に対照区に比して3倍程度増殖が促進された。
【0065】
【表1】
(表中、標準偏差以外の値は、コロニー面積(μm
2)を示す)
【0066】
次に、以下に示す照明環境とした実験区を作成し、2週間培養を行ってコロニーを形成させた。培養は、期間変更した以外は上述した通りの方法で行った。
「対照区」
光源:蛍光灯、照明光の光合成光量子束密度:140μmol/m
2s、12時間明期/12時間暗期
「LED区A」
光源:赤色LED及び青色LED、照明光の光合成光量子束密度:赤87.5、青52.5μmol/m
2s(赤青比5:3)、12時間赤/12時間青(赤青交互照射)
「LED区B」
光源:赤色LED及び青色LED、照明光の光合成光量子束密度:赤87.5、青52.5μmol/m
2s(赤青比5:3)、12時間明期/12時間暗期(赤青同時照射)
【0067】
結果を
図6及び表1に示す。図は、10コロニーの面積の平均値をグラフ化したものであり、縦軸はコロニー面積(μm
2)の平均値と標準偏差を示す。LED区A(赤青交互照射)では、対照区及びLED区B(赤青同時照射)に比べてコロニー増殖が良好であり、最も早い増殖を示した。
【0068】
【表2】
(表中、標準偏差以外の値は、コロニー面積(μm
2)を示す)
【0069】
以上、本試験例の結果から、蛍光灯照明環境(対照区)及び赤色光と青色光の同時照射12時間、暗期12時間を繰り返した同時照明環境(LED区B)に比べて、赤色光と青色光を12時間ずつ交互に照射した交互照射環境(LED区A)では、細胞の増殖が顕著に促進されていることが分かった。また、
図4では、交互照射環境(LED区A)のコロニーにおいて油滴が確認でき、交互照射によって細胞分裂とともに炭化水素の産生も促進されていることが示唆された。
【0070】
<試験例2:クロレラ・ケスレリの増殖促進試験>
本試験例では、実験用藻類として広く用いられ、サプリメント食品などにも応用されているクロレラ属緑藻類の一種であるクロレラ・ケスレリにおいて、赤色光と青色光との交互照射による増殖促進効果を検討した。
【0071】
Chlorella kessleri C531株(国立環境研究所所蔵Chlorella kessleri NIES-2160株と同一)を寒天培地(Hyponex、1000倍希釈、1%アガロース)で初期増殖させた。初期増殖は、蛍光灯照明環境下で行った。寒天培地からコロニーをピックアップし、50μlの蒸留水に懸濁し、9μlずつを10mlの液体培地(Hyponex、1000倍希釈)に播種した。
【0072】
光源には、赤色LED(中心波長:660nm、昭和電工株式会社製)、青色LED(中心波長:480nm、昭和電工株式会社製)及び蛍光灯を用いた。各LEDの1セットの実装数は、赤色LED及び青色LEDともに240個である。
【0073】
以下に示す照明環境とした実験区を作成し、6日間静置培養を行って
細胞の増殖の程度を観察した。
「対照区」
光源:蛍光灯、照明光の光合成光量子束密度:140μmol/m
2s、12時間明期/12時間暗期
「LED区A」
光源:赤色LED及び青色LED、照明光の光合成光量子束密度:赤105、青35μmol/m
2s(赤青比3:1)、12時間明期/12時間暗期(赤青同時照射)
「LED区B」
光源:赤色LED及び青色LED、照明光の光合成光量子束密度:赤105、青35μmol/m
2s(赤青比3:1)、12時間赤/12時間青(赤青交互照射)
「LED区C」
光源:赤色LED及び青色LED、照明光の光合成光量子束密度:赤105、青35μmol/m
2s(赤青比3:1)、3時間赤/3時間青(赤青交互照射)
「LED区D」
光源:赤色LED及び青色LED、照明光の光合成光量子束密度:赤105、青35μmol/m
2s(赤青比3:1)、0.1時間赤/0.1時間青(赤青交互照射)
【0074】
培養開始から3日後及び6日後に、培養液から5μlを取り、Thoma血球計算盤を用いて細胞密度(cells/μl)を計測した。結果を
図7に示す。縦軸は細胞密度(cells/μl)を、横軸は実験区を表す。細胞密度は、血球計算盤の4区画における平均値の標準偏差とともに示した。
【0075】
3日後では対照区の細胞密度とLED区A〜Dの細胞密度との間に有意な差が見られなかった。しかし、6日後には対照区が125cells/μlであったのに対し、12時間交互照射を行ったLED区Bでは280、3時間交互照射を行ったLED区Cでは370、0.1時間交互照射を行ったLED区Dでは365cells/μlとなり、赤青交互照射を行った実験区では対照区に比して2倍〜3倍程度の増殖が観察された。
【0076】
事前の培養実験から、クロレラ・ケスレリは液体培地(Hyponex、1000倍希釈)での増殖がきわめて良好で、クロレラ・ケスレリの細胞分裂周期はボトリオコッカス・ブラウニーの細胞分裂周期より短いことが予測された。本試験例においても、増殖効果は、クロレラ・ケスレリでは12時間交互照射を行ったLED区Bよりも3時間交互照射を行ったLED区Cにおいて高く、細胞分裂周期に応じた交互照射のサイクルを構築することの重要性が示唆された。
【0077】
<試験例3:ヘマトコッカス・ラクストリスの増殖促進試験>
本試験例では、魚類の色揚げや、化粧品及び抗酸化効果を有するサプリメントなどに利用されるアスタキサンチンを生産する緑藻類の一種であるヘマトコッカス・ラクストリスにおいて、赤色光と青色光との交互照射による増殖促進効果を検討した。
【0078】
国立環境研究所より分譲されたHaematococcus lacustris NIES-144株を寒天培地(Hyponex、1000倍希釈、1%アガロース)で初期増殖させた。初期増殖は、蛍光灯照明環境下で行った。寒天培地からコロニーをピックアップし、600μlの液体培地(Hyponex、1000倍希釈)に懸濁し、蛍光灯照明環境下で培養した。その後、培養液200μlずつを寒天培地に播種した。
【0079】
光源には、赤色LED(中心波長:660nm、昭和電工株式会社製)、青色LED(中心波長:480nm、昭和電工株式会社製)及び蛍光灯を用いた。各LEDの1セットの実装数は、赤色LED及び青色LEDともに240個である。
【0080】
以下に示す照明環境とした実験区を作成し、1週間培養を行ってコロニーを形成させた。
「対照区」
光源:蛍光灯、照明光の光合成光量子束密度:140μmol/m
2s、12時間明期/12時間暗期
「LED区A」
光源:赤色LED及び青色LED、照明光の光合成光量子束密度:赤105、青35μmol/m
2s(赤青比3:1)、12時間明期/12時間暗期(赤青同時照射)
「LED区B」
光源:赤色LED及び青色LED、照明光の光合成光量子束密度:赤105、青35μmol/m
2s(赤青比3:1)、12時間赤/12時間青(赤青交互照射)
【0081】
試験例1と同様にしてコロニー面積を計測した結果を
図8及び表3に示す。図は、20コロニーの面積の平均値及び中央値をグラフ化したものであり、縦軸はコロニー面積(μm
2)の平均値とその標準偏差、及び中央値を示す。LED区Bでは、対照区に比べてコロニー増殖が促進された。
【0082】
【表3】
(表中、標準偏差以外の値は、コロニー面積(μm
2)を示す)
【0083】
さらに、各実験区におけるコロニー面積の度数分布を
図9に示す。図は、計測されたコロニー面積の値を20,000未満、20,000〜60,000、60,000〜120,000、120,000〜180,000、180,000以上(単位はμm
2)に区切って、各区間に含まれるコロニーの数を割合で示したものである。縦軸は割合(%)を示す。
【0084】
対照区では20,000未満のものが31.6%、20,000〜60,000のものが36.8%であり、60,000未満のものが7割程度を占めていた。これに対し、赤青交互照射を行ったLED区Bでは、60,000〜120,000のものが3割程度、120,000〜180,000のものが1割程度、180,000以上のものが1割程度みられ、60,000以上のものが5割程度を占めた。
【0085】
以上、本試験例の結果から、ヘマトコッカス・ラクストリスにおいても、赤色光と青色光を交互に照射することで、細胞の増殖を顕著に促進できることが明らかとなった。