特許第5729811号(P5729811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5729811
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】車両内部の開閉部材用ヒンジ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 5/04 20060101AFI20150514BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20150514BHJP
   F16C 11/10 20060101ALI20150514BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   B60R5/04 T
   F16C11/04 F
   F16C11/10 C
   F16F1/12 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-81125(P2011-81125)
(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公開番号】特開2012-214145(P2012-214145A)
(43)【公開日】2012年11月8日
【審査請求日】2014年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101867
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 寿武
(72)【発明者】
【氏名】宮前 仁志
(72)【発明者】
【氏名】土本 芳裕
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 進
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−207571(JP,A)
【文献】 特開2007−190936(JP,A)
【文献】 特開2007−203977(JP,A)
【文献】 特開2010−215028(JP,A)
【文献】 特開2000−272426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 5/04
F16C 11/04
F16C 11/10
F16F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側に取り付けられる樹脂製のハウジングと、
前記ハウジングに回動自在に軸支された樹脂製の回動部材と、
前記ハウジングに装着される金属製のブラケットと、
前記回動部材を開き方向に付勢するばね部材とを備え、
前記ばね部材は、前記ブラケットに支持され、前記回動部材を付勢するためのばね端部を有し、
前記ブラケットには、前記回動部材が前記ばね部材の付勢力に抗して回動した第一の角度位置にあるとき、前記ばね端部を係止するフック部が形成してあり、
前記回動部材には、同部材が前記ばね部材の付勢力に応じて回動した第二の角度位置にあるとき、前記ばね端部が当接して前記ばね部材の付勢力を受ける押圧受部と、同部材が前記第一の角度位置から前記第二の角度位置に向かって回動する過程で、前記ばね端部と摺接して当該ばね端部を前記フック部から前記押圧受部に移動させる解放用案内部と、が形成してあり、
前記ブラケットには、前記回動部材が前記第二の角度位置から前記第一の角度位置に向かって回動する過程で、前記ばね端部を前記押圧受部から前記フック部に移動させる係止用案内部が形成してある、
ことを特徴とする車両内部の開閉部材用ヒンジ装置。
【請求項2】
前記解放用案内部は、前記回動部材が前記第一の角度位置から前記第二の角度位置へ回動するにつれて、前記ブラケットに形成したフック部の凹部に対向する位置から開口と対向する位置に向けて傾斜して延びる傾斜壁で形成してあり、
前記フック部は、前記ばね端部が前記傾斜壁に押圧されて移動する方向に開口していることを特徴とする請求項1に記載した車両内部の開閉部材用ヒンジ装置。
【請求項3】
前記係止用案内部は、前記回動部材が前記第二の角度位置から前記第一の角度位置へ回動するにつれて、前記押圧受部に対向する位置から前記ブラケットに形成したフック部の開口と対向する位置に向けて傾斜して延びる傾斜縁部で形成してあることを特徴とする請求項1又は2に記載した車両内部の開閉部材用ヒンジ装置。
【請求項4】
前記回動部材には、同部材が前記第一の角度位置にあるとき、前記フック部の前記ばね端部の開口に向かう移動を阻止する隔壁が形成してあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載した車両内部の開閉部材用ヒンジ装置。
【請求項5】
車両側に取り付けられる樹脂製のハウジングと、
前記ハウジングに回動自在に軸支された樹脂製の回動部材と、
前記ハウジングに装着される金属製のブラケットと、
前記回動部材を開き方向に付勢するばねとを備え、
前記ばねは、前記ブラケットに支持され、前記回動部材を付勢するためのばね端部を有し、
前記ブラケットには、前記回動部材が前記ばねの付勢力に抗して回動した第一の角度位置にあるとき、前記ばね端部を係止するフック部が形成してあり、
前記回動部材には、同部材が前記第一の角度位置にあるとき、前記フック部の前記ばね端部の開口に向かう移動を阻止する隔壁と、同部材が前記ばねの付勢力を受けて回動した第二の角度位置にあるとき、前記ばね端部が当接して前記ばねの付勢力を受ける押圧受部と、同部材が前記第一の角度位置から前記第二の角度位置に向かって回動する過程で、前記ばね端部と摺接して当該ばね端部を前記フック部から前記押圧受部に移動させる解放用案内部と、が形成してあり、
前記ブラケットには、前記回動部材が前記第二の角度位置から前記第一の角度位置に向かって回動する過程で、前記ばね端部を前記フック部に移動させる係止用案内部が形成してあり、
前記フック部は、前記回動部材の回動中心軸が延びる一方向に開口しており、
前記隔壁は、前記回動部材が前記第一の角度位置にあるとき、前記フック部の開口を覆うように延びて設けられ、
前記押圧受部は、前記回動部材が前記第一の角度位置から前記第二の角度位置に向けて僅かに回動した角度位置にあるとき、前記フック部の開口に対して、前記回動部材の回動中心軸が延びる方向に隣接するように設けられており、
前記解放案内部は、前記フック部の開口に先端が接する腕部と対向する位置で、前記回動部材が前記第一の角度位置から前記第二の角度位置へ回動するにつれて、前記ブラケットに形成したフック部の開口に向けて傾斜して延びる傾斜壁で形成してあり、
前記係止案内部は、前記押圧受部と対向する位置で、前記回動部材が前記第二の角度位置から前記第一の角度位置へ回動するにつれて、前記ブラケットに形成したフック部の開口に向けて傾斜して延びる傾斜縁部で形成してあることを特徴とする車両内部の開閉部材用ヒンジ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車等の車両内部に設けられたデッキボードや、リッド等の開閉部材を回動自在に支持するための開閉部材用ヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の荷室床面に設けられた収納凹部は、開口面をデッキボード(開閉部材)で閉塞されている。このデッキボードは、ヒンジ装置によって回動自在に支持されている。ヒンジ装置は、デッキボードを全閉位置と全開位置の角度範囲で回動する際の支軸となる。通常、ヒンジ装置は内蔵するばね部材の付勢力をもって、デッキボードの全開状態を保持できるようにして、荷物の出し入れを行いやすくする工夫が施されている。
【0003】
この種のヒンジ装置は、重量物であるデッキボードを支持するために大きな強度が必要とされ、従来は金属材料にて各部品が製作されていた。特許文献1に開示されたデッキボードも明細書には明記されていないが、図面から金属を板金加工して各種プレート部品が製作されていることが理解できる。
【0004】
さて、近年、自動車等の車両においては燃費の向上が設計開発の重要テーマとなっており、そのために車両総重量を可能な限り軽量化する努力がなされている。このような状況下にあって、金属製のヒンジ装置についても軽量化を図るため、樹脂製部品の使用が検討されている。
【0005】
しかしながら、一般に、樹脂製部品は金属部品に比べて強度が低く、従来のヒンジ装置では、特にデッキボード等の重量のある開閉部材を全開状態で保持するためのばね部材が、開閉部材の全閉状態においてさらに大きなトルクを発生させる構造となっている(特許文献1参照)。開閉部材は、ばね部材の付勢力に抗して回動した角度位置に相当する全閉状態のときが圧倒的に長く、そのため、長期間にわたりばね部材から大きなトルクを受ける主要部品について、樹脂成形品への変更は困難とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−77897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、回動部材がばね部材の付勢力に抗して回動する第一の角度位置にあるとき、主要部品にばね部材の付勢力が作用しない構成として、主要部品の樹脂成形品への変更を推進し、軽量化を実現する車両内部の開閉部材用ヒンジ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、車両側に取り付けられる樹脂製のハウジングと、
前記ハウジングに回動自在に軸支された樹脂製の回動部材と、
前記ハウジングに装着される金属製のブラケットと、
前記回動部材を開き方向に付勢するばね部材とを備え、
前記ばね部材は、前記ブラケットに支持され、前記回動部材を付勢するためのばね端部を有し、
前記ブラケットには、前記回動部材が前記ばね部材の付勢力に抗して回動した第一の角度位置にあるとき、前記ばね端部を係止するフック部が形成してあり、
前記回動部材には、同部材が前記ばね部材の付勢力に応じて回動した第二の角度位置にあるとき、前記ばね端部が当接して前記ばね部材の付勢力を受ける押圧受部と、同部材が前記第一の角度位置から前記第二の角度位置に向かって回動する過程で、前記ばね端部と摺接して当該ばね端部を前記フック部から前記押圧受部に移動させる解放用案内部と、が形成してあり、
前記ブラケットには、前記回動部材が前記第二の角度位置から前記第一の角度位置に向かって回動する過程で、前記ばね端部を前記押圧受部から前記フック部に移動させる係止用案内部が形成してある、
ことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の記載を前提として、前記解放用案内部は、前記回動部材が前記第一の角度位置から前記第二の角度位置へ回動するにつれて、前記ブラケットに形成したフック部の凹部に対向する位置から開口と対向する位置に向けて傾斜して延びる傾斜壁で形成してあり、
前記フック部は、前記ばね端部が前記傾斜壁に押圧されて移動する方向に開口していることを特徴とする請求項1に記載した車両内部の開閉部材用ヒンジ装置。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2の記載を前提として、前記係止用案内部は、前記回動部材が前記第二の角度位置から前記第一の角度位置へ回動するにつれて、前記押圧受部に対向する位置から前記ブラケットに形成したフック部の開口と対向する位置に向けて傾斜して延びる傾斜縁部で形成してあることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項の記載を前提として、前記回動部材には、同部材が前記第一の角度位置にあるとき、前記フック部の前記ばね端部の開口に向かう移動を阻止する隔壁が形成してあることを特徴とする。
【0016】
そして、請求項の発明は、車両側に取り付けられる樹脂製のハウジングと、
前記ハウジングに回動自在に軸支された樹脂製の回動部材と、
前記ハウジングに装着される金属製のブラケットと、
前記回動部材を開き方向に付勢するばねとを備え、
前記ばねは、前記ブラケットに支持され、前記回動部材を付勢するためのばね端部を有し、
前記ブラケットには、前記回動部材が前記ばねの付勢力に抗して回動した第一の角度位置にあるとき、前記ばね端部を係止するフック部が形成してあり、
前記回動部材には、同部材が前記第一の角度位置にあるとき、前記フック部の前記ばね端部の開口に向かう移動を阻止する隔壁と、同部材が前記ばねの付勢力を受けて回動した第二の角度位置にあるとき、前記ばね端部が当接して前記ばねの付勢力を受ける押圧受部と、同部材が前記第一の角度位置から前記第二の角度位置に向かって回動する過程で、前記ばね端部と摺接して当該ばね端部を前記フック部から前記押圧受部に移動させる解放用案内部と、が形成してあり、
前記ブラケットには、前記回動部材が前記第二の角度位置から前記第一の角度位置に向かって回動する過程で、前記ばね端部を前記フック部に移動させる係止用案内部が形成してあり、
前記フック部は、前記回動部材の回動中心軸が延びる一方向に開口しており、
前記隔壁は、前記回動部材が前記第一の角度位置にあるとき、前記フック部の開口を覆うように延びて設けられ、
前記押圧受部は、前記回動部材が前記第一の角度位置から前記第二の角度位置に向けて僅かに回動した角度位置にあるとき、前記フック部の開口に対して、前記回動部材の回動中心軸が延びる方向に隣接するように設けられており、
前記解放案内部は、前記フック部の開口に先端が接する腕部と対向する位置で、前記回動部材が前記第一の角度位置から前記第二の角度位置へ回動するにつれて、前記ブラケットに形成したフック部の開口に向けて傾斜して延びる傾斜壁で形成してあり、
前記係止案内部は、前記押圧受部と対向する位置で、前記回動部材が前記第二の角度位置から前記第一の角度位置へ回動するにつれて、前記ブラケットに形成したフック部の開口に向けて傾斜して延びる傾斜縁部で形成してあることを特徴とする。
【0017】
上述した構成の本発明は、主要部品である回動部材に作用するばね部材の付勢力を、同部材がばね部材の付勢力に抗して回動する第一の角度位置にあるとき、金属製のブラケットに形成したフック部で受けるようにしたので、少なくとも主要部品である回動部材を樹脂製とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、回動部材がばね部材の付勢力に抗して回動する第一の角度位置にあるとき、主要部品にばね部材の付勢力が作用しない構成として、主要部品の樹脂成形品への変更を推進し、軽量化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る車両内部の開閉部材用ヒンジ装置の全体構造を示す図で、(a)は回転部材が全閉状態のときの外観斜視図、(b)は同じく側面断面図、(c)は回転部材が全開状態のときの外観斜視図、(d)は同じく側面断面図である。
図2】(a)は同ヒンジ部材の分解斜視図、(b)はブラケットに組み付けられる部品の分解斜視図、(c)はフック部の平面図である。
図3】ハウジングの内部構造を示す図で、(a)は回転部材を省略して示す斜視図、(b)は回転部材が組み込まれた状態の斜視図である。
図4】回動部材が全閉状態にあるときの作用を示す図で、(a)は回転部材の側面図、(b)はカラー部材の作用に関連する構造を示す斜視図、(c)は同じく平面図、(d)は同じく要部を拡大して示す斜視図である。
図5図4に続く作用説明図で、(a)は回転部材の側面図、(b)はカラー部材の作用に関連する構造を示す斜視図、(c)は同じく平面図、(d)は同じく要部を拡大して示す斜視図である。
図6図5に続く作用説明図で、(a)は回転部材の側面図、(b)はカラー部材の作用に関連する構造を示す斜視図、(c)は同じく平面図である。
図7】回動部材が全開状態にあるときの作用を示す図で、(a)は回転部材の側面図、(b)はカラー部材の作用に関連する構造を示す斜視図、(c)は同じく平面図である。
図8】(a)〜(d)は回動部材が全開状態から全閉状態へ移行する過程での作用を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る車両内部の開閉部材用ヒンジ装置(以下、単に「ヒンジ装置」ということもある)は、車両側に取り付けられる樹脂製のハウジング10に対して、回動部材20が回動自在に組み込まれている。
回動部材20は、図1(a)(b)に示す全閉状態から、同図(c)(d)に示す全開状態まで、ほぼ180°の角度範囲で回動自在となっている。ここで、全閉状態は、回動部材20が後述するねじりコイルばね40(ばね部材)の付勢力に抗して回動した第一の角度位置に相当する。また、全開状態は、回動部材20がコイルばね40の付勢力を受けて回動した第二の角度位置にあるときに相当する。
【0021】
ハウジング10は車両側に取り付けられ、一方、回動部材20はデッキボード等の開閉部材に取り付けられる。これらハウジング10と回動部材20は、ヒンジ装置を構成する主要部品であり、本実施形態ではこれらの各部品を樹脂成形品としてある。
【0022】
図2は本実施形態に係るヒンジ装置の分解斜視図、図3は同ヒンジ装置におけるハウジング10の内部構造を示す斜視図である。
図2(a)に示すように、ハウジング10の内部には、両側面に一対の支軸11が対向して突出形成してあり、これらの支軸11に回動部材20の軸受孔21を嵌め込むことで、回動部材20が回動自在に軸支される。
【0023】
また、ハウジング10の内部には、内壁に沿ってブラケット装着部12が形成してあり、このブラケット装着部12に、ブラケット30が装着される。ブラケット30は金属板を折曲加工して形成してある。
図2(b)に示すように、金属製のブラケット30には、回動部材20を開き方向に付勢するためのねじりコイルばね40(ばね部材)が組み込まれている。すなわち、ブラケット30に両端が固定される金属シャフト41に、ねじりコイルばね40のコイル部40aが挿通支持され、さらにねじりコイルばね40の一方のばね端部40bを、ブラケット30の正面に当接させた状態で組み込まれる。また、ねじりコイルばね40の他方のばね端部40cには、当該ばね端部40cよりも直径の大きな円柱状に形成された樹脂製のカラー部材42が装着される。
【0024】
ブラケット30には、カラー部材42を係止するためのフック部31が形成してある。
フック部31は、図2(c)に示すように、基部31aから延びる柱部31bの先端部分から鈎状に方向を変えて腕部31cが延出している。これら柱部31bと腕部31cの内側に凹部31dが形成してあり、この凹部31dは柱部31bと対峙する側方部位に開口31eを有している。
【0025】
本実施形態のヒンジ装置は、回動部材20が全閉状態のとき、このフック部31にカラー部材42(すなわち、ねじりコイルばね40の他方のばね端部40c)を係止することで、回動部材20にねじりコイルばね40の付勢力を作用させない構成となっている。一方、回動部材20が全開状態のときは、フック部31へのカラー部材42の係止状態を解除して、回動部材20にねじりコイルばね40の付勢力を作用させるように構成してある。
【0026】
回動部材20には、図2(a)に示すように、押圧受部22と解放用案内部23が形成してある。このうち、押圧受部22は、回動部材20が全開状態のとき、カラー部材42が当接してねじりコイルばね40の付勢力を受ける機能を有している。また、解放用案内部23は、回動部材20が全閉状態から開く過程で、ブラケット30に形成したフック部31との係止状態を解除する方向へカラー部材42を移動させ、当該カラー部材42を押圧受部22に当接させる機能を有している。
ここで、解放用案内部23は、回動部材20が全閉状態から開き方向へ回動するにつれて、ブラケット30に形成したフック部31の凹部31dと対向する位置から開口31eと対向する位置に向けて傾斜して延びる傾斜壁で形成してある。なお、コイル部40aは金属シャフト41に挿通支持されている。カラー部材42は、後に詳述するが、この傾斜壁に押圧されてコイル部40aの中心軸に沿った一方向へ移動して、ブラケット30に形成したフック部31との係止状態が解除され、さらに移動して押圧受部22に当接する。
さらに、回動部材20には、同部材が全閉状態のとき、フック部31の開口31eへ向かうカラー部材42の移動を阻止する隔壁24が形成してある(図2(a)参照)。この
隔壁24は、回動部材20が全閉状態にあるとき、フック部31の開口31eを覆うように延びて設けられている。このため、車両の走行振動を受けてもカラー部材42がフック部31から不用意にはずれるおそれがない。
【0027】
また、ブラケット30に形成したフック部31は、カラー部材42が傾斜壁に押圧されて移動する方向に開口31eが配置してある。
さらに、ブラケット30には、回動部材20が全開状態から閉じる過程で、フック部31に係止させる方向へカラー部材42を移動させる係止用案内部32が形成してある。この係止用案内部32は、回動部材20が全開状態から閉じ方向へ回動するにつれて、押圧受部22と対向する位置から、ブラケット30に形成したフック部31の開口31eと対向する位置に向けて傾斜して延びる傾斜縁部で形成してある。カラー部材42は、この傾斜縁部に押圧されてコイル部40aの中心軸に沿った他方向(回動部材20が全閉状態から開く際の上記移動方向とは逆の方向)へ移動して、押圧受部22から離れ、さらに移動してフック部31に凹部31d内に入って係止される。
【0028】
次に、図4図8を参照して、上述したブラケット30のフック部31および係止用案内部32と、回動部材20の押圧受部22、解放用案内部23および隔壁24の作用について詳細に説明する。
図4は回動部材20が全閉状態のときを示しており、図7は回動部材20が全開状態のときを示している。そして、図5および図6は回動部材20が全閉状態から全開状態へ移行する過程の状態を示している。
【0029】
まず、図4に示すように、回動部材20が全閉状態にあるときは、ブラケット30のフック部31にカラー部材42が係止され、回動部材20にねじりコイルばね40の付勢力は作用しない。このとき、同図(c)に示すように平面から見て、フック部31の開口31eよりも僅かに側方でカラー部材42と対向する位置に、回動部材20に形成した隔壁24が配置される。この隔壁24は、カラー部材42がフック部31から意図しないで脱落することを阻止している。
【0030】
ここで、フック部31において開口31eと対向する側にある柱部31bと隔壁24とは、回動部材20が全閉状態にあるとき、フック部31の凹部31d内に収容されたカラー部材42を挟み込むように近接対峙している。このため振動による打音の発生が抑制される。
【0031】
この状態では、カラー部材42は、回動部材20の押圧受部22や解放用案内部23から離間している。
【0032】
次に、図5に示すように、回動部材20を全閉状態から開く方向へ回動させていくと、回動部材20の解放用案内部23(傾斜壁)が、平面から見て図示矢印方向へ移動してカラー部材42に接触する。このとき、回動部材20の隔壁24も、同図(c)に示すように平面から見て、図示矢印方向へ移動して、カラー部材42と対向する位置から離れる。それとともに、回動部材20の押圧受部22が、カラー部材42の側方に移動してくる。
【0033】
図6に示すように、回動部材20をさらに開く方向へ回動させていくと、カラー部材42が、回動部材20に形成した解放用案内部23の傾斜面に押されて、フック部31の開口31eに向かって移動していき、開口31eから出て、押圧受部22に当接する。
【0034】
そして、図7に示すように、回動部材20が全開状態になると、カラー部材42がフック部31から離間して係止状態が解除される。このとき、同図(c)に示すように平面から見て、回動部材20の押圧受部22が、フック部31の開口31eより外側に配置されている。したがって、フック部31から抜け出たカラー部材42は、ねじりコイルばね40の付勢力をもって回動部材20の押圧受部22に当接し、この押圧受部22から回動部材20に付勢力を作用させる。
【0035】
本実施形態では、直径の大きなカラー部材42をねじりコイルばね40のばね端部40cに装着したので、フック部31から押圧受部22に移動する際に、その間に隙間が生じていても脱落するおそれはない。
【0036】
図8(a)〜(d)は回動部材20が全開状態から全閉状態へ移行する過程の状態を示している。
同図(a)に示す全開状態から回動部材20を閉じる方向へ回動させていくと、回動部材20の押圧受部22に押されてカラー部材42も同方向へ移動する。そして、同図(b)に示すように、カラー部材42がブラケット30に形成した係止用案内部32(傾斜縁部)に当接する。回動部材20をさらに閉じる方向へ回動させていくと、同図(c)に示すように、カラー部材42がブラケット30に形成した係止用案内部32の傾斜縁部に沿ってフック部31の内側へと移動していく。
【0037】
その後、回動部材20が全閉状態に至る直前に、カラー部材42が回動部材20の押圧受部22から離間する。その瞬間に、ねじりコイルばね40の付勢力をもってカラー部材42がブラケット30のフック部31に内側から当接し、フック部31へのカラー部材42の係止状態が形成される。回動部材20はさらに僅かながら回動して、隔壁24をカラー部材42と対向する位置に配置する。これにより、同図(d)に示す回動部材20の全閉状態における各部の配置が実現される。この全閉状態では、既述したとおり回動部材20にねじりコイルばね40の付勢力は作用していない。よって、回動部材20を樹脂成形品としても、強度上の問題が生じるおそれはない。
【0038】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施または応用実施が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
10:ハウジング、11:支軸、12:ブラケット装着部、
20:回動部材、21:軸受孔、22:押圧受部、23:解放用案内部、24:隔壁、
30:ブラケット、31:フック部、31a:基部、31b:柱部、31c:腕部、31d:凹部、31e:開口、32:係止用案内部、
40:ねじりコイルばね、40a:コイル部、40b:一方のばね端部、40c:他方のばね端部、41:金属シャフト、42:カラー部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8