(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来技術によるときは、揺動板方式は、発電効率がよく、大容量発電に適しているとしても、全体装置が大げさになるため、小容量の設備として必ずしも適しているとはいえないという問題があった。
【0007】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、支持部材を介してフロート上に可動部材を搭載することによって、小形で小容量の設備として好適に使用可能な発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、海面上において波浪によって発電する発電装置であって、ベース部材と、ベース部材上に積載する支持部材と、支持部材によって支持し、ベース部材に連動して運動する可動部材と、可動部材の運動によって発電する発電手段とを備えてなり、ベース部材は、波浪によってランダムに揺動するフロートであり、可動部材は、偏心位置に重心を有する密閉の球体であり、支持部材は、球体の外面側から球体を任意の方向に回転可能に支持することをその要旨とする。
【0009】
なお、支持部材は、2軸のジンバル機構であってもよい。
【0010】
また、支持部材は、軸方向に移動可能な3組以上の支持ローラであってもよく、回転自在な3点以上の支持ボールであってもよく、球体の外径に適合する球面軸受形であってもよく、球体を任意の方向に相対回転自在に収納する球殻であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
かかる発明の構成によるときは、振動源や揺動源になり得る任意の構造物にベース部材を搭載すると、ベース部材は、構造物の振動や揺動により、ベース部材上に搭載する可動部材を運動させる。そこで、発電手段は、可動部材の運動を利用して発電することができる。なお、発電に寄与する可動部材の運動は、可動部材の一部であってもよく、全体であってもよい。すなわち、可動部材は、支持部材に対し、その一部だけが相対運動する形態であってもよく、その全体が相対運動する形態であってもよい。また、発電手段は、このような可動部材の相対運動のエネルギを検出して電気エネルギに変換することができればよく、その方式は、任意である。
【0012】
ベース部材を海面上のフロートとすれば、フロートは、波浪によって上下左右にランダムに揺動し、フロート上の可動部材を運動させ、発電部材を介して発電することができる。
【0013】
球体の可動部材は、その全体が任意の方向に往復回転することができるから、波浪によるフロートのランダムな揺動に対し、広く好適に対応することができる。ただし、球体を支持する支持部材は、球体の任意の方向の回転を許容するように、2軸のジンバル機構、軸方向に移動可能な3組以上の支持ローラ、3点以上の支持ボールなどを使用する他、球体の外径に適合するスライド形式またはボール形式の球面軸受などを使用してもよい。
【0014】
垂直面内に往復振動する振動部材、垂直面内に往復揺動する揺動部材の可動部材は、波浪によるフロートの上下方向の揺動に対し、特に好適に対応することができる。また、振動部材、揺動部材の可動部材は、支持部材による支持構造が単純な形態で済むという利点がある。
【0015】
水平面内に回転する回転部材は、発電手段の発電機との連結構造をコンパクトにまとめ易く、発電手段をフロート内に容易に収納することができる。ただし、回転部材は、フロートの揺動によって円滑に回転するように、支持部材の回転軸から重心を十分に偏心させるものとする。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0018】
発電装置は、フロートFと、支持部材S、S…を介してフロートF上に搭載する可動部材Mとを備えてなる(
図1)。ただし、
図1(A)、(B)は、それぞれ全体模式斜視図、全体中央縦断面図である。
【0019】
フロートFは、円形の平板状に形成され、海面上に浮かべることができる。支持部材S、S…は、フロートF上に4基が十字状に配置されている。各支持部材Sは、フロートF上に立設するブラケット11aに対し、支持ローラ11を回転自在に装着して構成されている。
【0020】
可動部材Mは、中空の球体21として形成されている。球体21は、中央の接合部21aを介して上下に分離させることができ、内部には、重り21bが固定されている。そこで、球体21の重心は、重り21bにより球体21の中心から大きく偏心しているものとする。
【0021】
可動部材Mは、支持部材S、S…の支持ローラ11、11…を介して支持されている。そこで、フロートFを海面上に浮かべ、波浪によってフロートFが上下左右にランダムに揺動すると、可動部材Mは、フロートFの揺動により任意の方向にランダムに往復回転し、支持ローラ11、11…の一部または全部を回転させる。したがって、各支持ローラ11の軸に図示しない発電機を含む発電手段を連結すれば、可動部材Mの運動を電気エネルギとして外部に取り出すことができる。
【0022】
なお、各支持部材Sの支持ローラ11は、可動部材Mの任意方向の回転を許容するために、軸方向に移動自在とすることが好ましい。また、このときの支持ローラ11は、軸方向の偏移量に応じて、中央の中立位置に引き戻す方向に付勢する付勢部材を設けることにより、可動部材Mの回転の水平方向成分を制限し、可動部材Mの運動を一層円滑にすることができる。
【0023】
球体21の可動部材Mを回転自在に支持する4基の支持部材S、S…は、それぞれ三角錐形のスタンド12aの斜面上に支持ボール12を回転自在に装着して構成することができる(
図2)。ただし、
図2(A)、(B)は、それぞれ
図1(A)、(B)と同様である。
【0024】
図2において、球体21の可動部材Mの任意方向の回転は、互いに直角方向に配置する2基の発電手段G、Gを介して電気エネルギとして外部に取り出される。各発電手段Gは、可動部材Mの表面に接触して回転するローラ31と、大小のギヤ32a、32bを介してローラ31に連結する発電機33とによって構成されており、フロートF上に立設する支柱34を介して支持されている。なお、各ローラ31は、球体21の中央の接合部21aより高い位置で球体21の表面に接触し、球体21を支持部材S、S…上に安定に保持させている。また、各ローラ31は、
図1の支持部材Sの支持ローラ11に倣って、軸方向に移動自在とすることが好ましい。
【0025】
図2の球体21の可動部材Mに対し、ガード41を付設することができる(
図3)。ただし、
図3(A)、(B)は、それぞれ
図1(A)、(B)と同様である。
【0026】
ガード41は、中央に円形の開口41aを有する平板状の部材である。ガード41は、フロートF上に立設する支柱34、34、41bを介して適切な高さに固定し、可動部材Mの一部を開口41aから露出させながら、フロートFの揺動により可動部材Mが上方向に過大に移動することを防止する。
【0027】
球体21の可動部材Mは、球面軸受形の支持部材S、S…を介して支持してもよい(
図4)。ただし、
図4(A)、(B)は、それぞれ
図1(A)、(B)と同様である。
【0028】
各支持部材Sは、可動部材Mの外径に適合する凹状の球面を有するスタンド12bと、スタンド12bの球面部分に回転自在に埋設する多数の支持ボール12、12…とによって構成され、支持ボール12、12…を介して可動部材Mを回転自在に支持することができる。一方、
図4において、発電手段Gは、各支持部材Sのスタンド12bに搭載され、可動部材Mの表面に接触するローラ31、大小のギヤ32a、32b、発電機33から構成されている。
【0029】
図4の各支持部材Sは、凹状の球面を有するスタンド12bを上向きに高く延長し、球体21の可動部材Mの中央の接合部21aを越える高さとしてもよい(
図5)。球体21の可動部材Mを一層安定に保持することができる。ただし、
図5(A)、(B)は、それぞれ
図1(A)、(B)と同様である。なお、
図1〜
図5において、支持部材S、S…は、3基以上を使用して球体21の可動部材Mを回転自在に支持することができる。
【0030】
球体21の可動部材Mは、球殻13の支持部材S内に全体を収納することができる(
図6)。ただし、
図6(A)、(B)は、それぞれ
図1(A)、(B)と同様である。
【0031】
球殻13は、中央の接合部13aを介して上下に分割可能であり、フロートF上に固定されている。一方、球体21は、オイルなどの潤滑材13bを介して球殻13内に任意の方向に相対回転自在に収納されている。球殻13の外面には、多数のコイル34a、34a…がほぼ全面に分散して装着されており、球体21の内面には、多数の磁石34b、34b…がほぼ全面に分散して装着されている。そこで、球体21が球殻13に対してランダムに相対回転すると、各磁石34bの磁束が対応するコイル34aに鎖交して各コイル34aに起電力を生じ、各コイル34a、磁石34bは、発電手段Gを形成することができる。
【0032】
球体21の可動部材Mは、水平方向の支持ローラ14、14…による3基の支持部材S、S…を介し、回転自在に支持してもよい(
図7)。ただし
図7(A)は、全体上面図であり、同図(B)は、同図(A)のX−X線矢視相当断面図である。
【0033】
各支持ローラ14は、フロートF上の水平の回転軸14aと一体に回転自在であり、回転軸14aの軸方向に移動自在である。また、各回転軸14aには、図示しない発電手段Gの発電機が連結されている。そこで、フロートFが揺動すると、球体21の可動部材Mは、支持ローラ14、14…上においてランダムに往復回転し、各支持ローラ14、回転軸14aを回転させ、発電手段G、G…を介して発電することができる。
【0034】
球体21の可動部材Mは、2軸のジンバル機構の支持部材Sを介して回転自在に支持することができる(
図8)。ただし、
図8(A)〜(C)は、それぞれ全体模式斜視図、全体上面図、同図(B)のY−Y線矢視相当断面図であり、
図8(A)には、可動部材Mの図示が省略されている。
【0035】
支持部材Sは、フロートF上に立設する一対の支柱15a、15aと、支柱15a、15aの上端に左右に揺動自在に組み付けるリング15bと、リング15b上に対向するように付設する水平軸15c、15cとを有する。可動部材Mは、水平軸15c、15cのまわりに相対回転自在に装着され、リング15b内で、リング15bの揺動方向と直角方向に揺動可能である。また、各水平軸15cには、図示しない発電手段Gの発電機が連結されている。そこで、フロートFが上下左右に揺動すると、可動部材Mは、ジンバル機構の支持部材Sを介して任意の方向にランダムに回転し、発電手段G、Gを介して発電することができる。
【0036】
可動部材Mは、垂直面内に往復揺動する揺動部材22とすることができる(
図9)。
【0037】
揺動部材22は、剛体の吊下材22aを有する単振子の重錐であって、フロートF上に立設する門形のサポート16からなる支持部材Sにより、前後に揺動自在に吊り下げられている。ただし、サポート16は、フロートFに組み込む回転台F1 上に立設されている。また、サポート16上には、吊下材22aの揺動に連動して回転するローラ31付きの発電機33からなる発電手段Gが設置され、フロートF上には、回転台F1 の回転に連動して回転するローラ31付きの発電機33からなる別の発電手段Gが設置されている。
【0038】
そこで、海面上のフロートFが波浪により上下左右に揺動すると、回転台F1 が左右に回転するとともに(
図9の矢印K1 方向)、揺動部材22が前後に揺動する(同図の実線、点線、矢印K2 方向)。したがって、発電手段G、Gは、それぞれ揺動部材22の揺動、回転台F1 の回転により発電することができる。
【0039】
図9のサポート16上の発電手段Gは、揺動部材22の吊下材22aの上端に連結する補助軸22bをサポート16の片側に突出させ(
図10)、大小のギヤ32a、32bを介して補助軸22bを発電機33に連結してもよい。ただし、
図10(A)、(B)は、互いに反対方向から見る全体模式斜視図である。また、
図9、
図10において、揺動部材22は、吊下材22aとともに、たとえば平板状などを含む任意の形状に変形可能である。
【0040】
可動部材Mは、垂直面内に往復振動する振動部材23とすることができる(
図11(A))。
【0041】
振動部材23、23は、たとえば、ばね材であって、支柱17aの上端のブラケット17に一端を固定し、水平方向に対称的に突出させて配置されている。なお、支柱17aは、フロートF上に立設され、ブラケット17とともに、可動部材M、Mを支持する支持部材Sを形成している。
【0042】
各振動部材23の先端には、磁石34bが固定されており、磁石34bは、コイルケース34cの内部を上下に移動可能である。なお、コイルケース34cは、フロートF上の支柱34d上に支持されており、コイルケース34c内には、磁石34bの上下の移動経路に沿って、たとえば
図11(B)または
図11(C)のように、多数のコイル34a、34a…が整然と配列されて収納されている。
【0043】
フロートFが波浪によって上下左右に揺動すると、振動部材23、23の可動部材M、Mが上下に振動する(
図11(A)の実線、点線、矢印方向)。そこで、各振動部材23の先端の磁石34bは、コイルケース34c内を上下に往復移動し(
図11(B)、(C)の各実線、一点鎖線、矢印方向)、磁石34bの磁束がコイル34a、34a…と鎖交して発電することができる。
【0044】
可動部材Mは、
図11のばね材による振動部材23に代えて、剛体のアームからなる振動部材24としてもよい(
図12)。
【0045】
各振動部材24の基端は、軸受17bを介し、ブラケット17に対して上下に回転自在に連結されている。また、各振動部材24の先端には、重錐24aを固定し、重錐24aは、フロートF上の圧縮ばね24bを介して弾発的に支持されている。そこで、フロートFが上下左右に揺動すると、振動部材24、24が上下に振動し(
図12の矢印方向)、軸受17b、17bを貫通する軸に連結する図示しない発電手段G、Gを介して発電することができる。なお、
図11、
図12において、可動部材Mは、支持部材Sの支柱17aのまわりに多数組を放射状に配置してもよい。
【0046】
可動部材Mは、フロートF上に立設する支柱18、18の支持部材Sによって支持する一対の振動部材25、25によって形成することができる(
図13)。ただし、
図13(A)〜(D)は、それぞれ全体模式斜視図、同図(A)の要部拡大断面図、同図(A)のZ−Z線矢視相当拡大断面図、同図(B)のW−W線矢視相当断面図である。
【0047】
振動部材25、25は、円筒状のコイル34aの両側に対称的に突設するばね材であり、各振動部材25の先端は、支柱18の上端のU溝18aに掛けられている。ただし、U溝18aの底面は、振動部材25の長手方向に断面山形に形成されている。一方、円筒状のコイル34aには、フロートF上に立設する支柱35が上下に貫通しており、支柱35の中途には、コイル34aとともに発電手段Gを形成する磁石34bが装着されている。
【0048】
フロートFが揺動すると、振動部材25、25が上下に振動し(
図13(A)の矢印方向、実線、二点鎖線)、コイル34aが支柱35に沿って上下に往復移動する。そこで、磁石34bの磁束がコイル34aに鎖交し、発電手段Gにより発電することができる。
【0049】
可動部材Mは、支持部材Sの回転軸19によって支持する回転部材26としてもよい(
図14)。ただし、
図14(A)、(B)は、それぞれ
図1(A)、(B)と同様であり、
図14(A)において、フロートFは、一部破断して図示されている。
【0050】
回転部材26は、上向きの回転軸19の上端に固定されており、回転部材26の先端には、重り26aが固定されている。なお、回転軸19は、フロートF内のベアリング19aを介して回転自在に支持されており、回転軸19は、大小のギヤ32a、32bを介して発電手段Gの発電機33に連結されている。なお、発電手段Gは、ベアリング19aとともに中空のフロートF内に一括して収納されている。そこで、フロートFが揺動すると、回転部材26がフロートFと平行な水平面内に回転し、発電手段Gを介して発電することができる。回転部材26の重心は、重り26aにより、回転軸19から十分に偏心しているからである。
【0051】
なお、
図14において、重り26c付きの補助回転部材26bを回転部材26と対称に設けることにより(
図14(A)、(B)の各二点鎖線)、回転部材26が回転してもフロートFのバランスが過大に崩れてしまうことがない。ただし、重り26cを設けても、回転部材26、補助回転部材26bの共通の重心は、回転軸19から偏心しているものとする。また、回転部材26、補助回転部材26bは、一体の円板として形成してもよい。
【0052】
ちなみに、
図1〜
図8の球体21の可動部材Mは、支持部材S、S…を介し、その中心のまわりに任意の方向に往復回転自在に保持されている。そこで、これらの可動部材Mは、球面振子として作動する。一方、
図9、
図10の揺動部材22の可動部材M、
図11、
図12の振動部材23、24の可動部材Mは、それぞれフロートFに垂直な一定の垂直面内に往復運動する単振子として作動している。
【0053】
以上の説明において、フロートFは、円板状に形成する他、たとえば波浪の進行方向に容易に対向するように、長方形に形成してもよく、その一端または両端を尖らせてもよい。また、フロートFは、平板状に形成するに代えて、上面の搭載物品の一部または全部を収納し得る中空容器として形成してもよい。なお、フロートFは、たとえば波浪の平均波高の数分の1以下程度の最大寸法に形成し、波浪によって揺動し易くすることが好ましく、一点のみを緩く係留して使用するのがよい。さらに、この発明の発電装置は、海面上において単独で使用する他、複数組を上下左右に屈曲自在に縦列に連結して使用してもよい。
【0054】
また、ベース部材としてのフロートFは、たとえば陸上用の車輌や、水上の船やブイなどの振動源や揺動源となり得る任意の構造物に搭載するためのベースとしてもよい。これらの構造物の振動や揺動を利用して発電させることができる。