【文献】
坂口卓弥,大石悟,“高速血管三次元像表示を目的とした関心再構成領域の決定方法”,日本医用画像工学会大会予稿集,日本,日本医用画像工学会,2006年 7月21日,第25回、OP11−2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記関心領域座標推定部は、推定した関心領域座標から、一定範囲内の領域にあり、所定範囲の画素値を有する画素を、それ以外の画素とは異なる色、パターン、輝度のうち少なくともいずれか一つで表示部に表示することを特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
前記関心領域座標推定部は、所定範囲の画素値を有する画素の集合体として前記線上に連続して存在する画素の集合体の中心点を算出することで、前記関心領域座標を推定することを特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
前記関心領域座標推定部は、前記線上に所定範囲の画素値を有する画素の集合体が存在しない場合には、該線上から一定距離範囲内に存在する画素の集合体であって画素値が所定範囲の画素の集合体の中心点を算出することで、前記関心領域座標を推定することを特徴とする請求項3に記載のX線診断装置。
前記関心領域座標推定部は、前記線上に所定範囲の画素値を有する画素の集合体が複数存在する場合には、該線上に存在する画素の集合体それぞれに関する情報、または、該線上に存在する画素の集合体それぞれの近傍に存在する画素をさらに含む画素の集合体それぞれに関する情報に基づいて、前記関心領域座標を推定することを特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
前記関心領域座標推定部は、前記線上に所定範囲の画素値を有する画素の集合体が複数存在する場合には、複数の前記画素の集合体それぞれの長さを算出し、算出したそれぞれの長さに基づいて前記関心領域座標を推定することを特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
前記関心領域座標推定部は、前記線上に所定範囲の画素値を有する画素の集合体が複数存在する場合には、複数の前記画素の集合体それぞれについて、長さを算出し、前記中心点を中心とし、算出した長さの1/2を半径とする球領域内に存在する画素の集合体であって所定範囲の画素の集合体の総体積を算出し、算出した総体積を前記半径の3乗で除算した値を算出し、算出した値それぞれに基づいて前記関心領域座標を推定することを特徴とする請求項3に記載のX線診断装置。
前記関心領域座標推定部は、前記線上に所定範囲の画素値を有する画素の集合体が複数存在する場合には、前記中心点から所定範囲内に存在する画素であって所定範囲の画素値を有する画素で区分けされる領域の体積を中心点ごとに算出し、算出した体積の値に基づいて前記関心領域座標を推定することを特徴とする請求項3に記載のX線診断装置。
前記関心領域座標推定部は、前記線上に所定範囲の画素値を有する画素の集合体が複数存在する場合には、前記中心点と該線上の検出器側の端点との距離を中心点ごとに算出し、算出した距離の値に基づいて前記関心領域座標を推定することを特徴とする請求項3に記載のX線診断装置。
前記線上に所定範囲の画素値を有する画素の集合体が複数存在する場合に、複数の前記中心点の中から所定の中心点を選択することを指示する選択指示を受け付ける選択指示受付部をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載のX線診断装置。
前記関心領域座標推定部は、前記線上に所定範囲の画素値を有する画素の集合体が複数存在する場合に、複数の集合体の中から一定範囲内の領域を、それぞれ他の集合体とは異なる色、パターン、輝度のうち少なくともいずれか一つで区別して表示部に表示し、
前記関心領域座標推定部によって区別して表示された情報の中から1つを選択する選択指示を受け付ける選択指示受付部をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載のX線診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係るX線診断装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
頭部動脈瘤のインターベンション治療においては、動脈瘤の形状把握を目的として、ほぼ必ず三次元血管像が撮影され、三次元血管像データが取得される。実施例1に係るX線診断装置は、この予め取得した三次元血管像データを利用して、撮影条件(観察視野、撮影位置など)の決定を行う。具体的には、従来は、実際に被検体にX線を照射し、操作者が、透視画像で確認しながら、画像拡大率や、支持器の角度、支持器の位置、寝台の位置、寝台の高さなどの撮影位置の決定を行っていた。この点、実施例1に係るX線診断装置は、予め取得した三次元血管像データから、仮想的な透視画像を計算によって算出し、算出した仮想的な透視画像を利用して、撮影条件の決定を行う。この結果、治療の本質とは関係の無いX線照射を低減することができ、不必要な被曝を低減することが期待できる。
【0013】
[実施例1に係るX線診断装置の外観]
まず、
図1を用いて、実施例1に係るX線診断装置の外観を説明する。
図1は、実施例1に係るX線診断装置の外観を示す斜視図である。なお、以下に説明するように、実施例1においてはX線診断装置としてバイプレーン型のX線診断装置を想定するが、これに限られるものではなく、シングルプレーン型のX線診断装置の場合にも同様に適用することができる。
【0014】
図1に示すように、実施例1に係るX線診断装置は、バイプレーン型のX線診断装置であり、正面系のX線撮影システム(第一X線撮影システム)と、側面系のX線撮影システム(第二X線撮影システム)とを装備しており、天板116上に載置された被検体Pを2方向から同時に撮影することが可能に構成されている。また、第一X線撮影システムは、以下に説明するように、5軸回転機構を搭載している。
【0015】
まず、第一X線撮影システムについて説明する。第一X線発生管7a−1は、第一支持器9−1(Cアーム)の一端に取り付けられ、第一平面検出器8−1は、第一支持器9−1(Cアーム)の他端に取り付けられる。CA1は、第一平面検出器8−1の受像面中心と第一X線発生管7a−1の焦点とアイソセンタと呼ばれる不動点とを結ぶ第一X線撮影システムの第一撮影中心軸を表している。
【0016】
第一X線撮影システムにおいて、円弧状を成す床置き式の第一支持器9−1(Cアーム)は、アームホルダ110を介して床に据え付けられたスタンド111に支持される。アームホルダ110及びスタンド111は、第一支持器9−1(Cアーム)を回転可能に支持する第一支持器支持機構を構成している。
【0017】
ここで、第一X線撮影システムは、第一支持器9−1(Cアーム)の主回転、スライド回転、及び支柱回転の3軸回転機構に加え、床回転、平面検出器・X線絞り器回転の2軸を追加した5軸回転機構を搭載している。具体的には、まず、スタンド111は、アームホルダ110を矢印A(A2)に沿って軸回転可能な構造を有している。また、アームホルダ110は、第一支持器9−1(Cアーム)を矢印Bに沿ってスライド回転可能な構造を有している。また、スタンド111は、矢印Cに沿って支柱回転(旋回)可能な構造を有している。また、スタンド111は、矢印Dに沿って床回転可能な構造を有している。また、第一支持器9−1(Cアーム)に取り付けられた第一平面検出器8−1及び第一X線絞り器7a−1は、矢印Eに沿って回転可能な構造を有している。
【0018】
このような構造により、第一X線撮影システムは、撮影アングルを矢印A(A2)、Bに関して任意に傾斜させることができる。また、第一X線撮影システムは、矢印C、矢印Dに関して旋回することにより、第二支持器9−2(Ωアーム)の内側に位置する(2方向)撮影位置と待機位置との間を移動することができる。また、第一X線撮影システムは、矢印Eに関して旋回することにより、受像面を任意に回転させることができる。
【0019】
ここで、矢印Dの回転軸および矢印Eの回転軸は、第一撮影中心軸CA1に一致する。また、第一撮影中心軸CA1に対して矢印Aの回転軸が直交する。また、第一撮影中心軸CA1に対して矢印Bの回転軸が直交する。また、矢印Aの回転軸に対して矢印Bの回転軸が直交する。さらに、これらの直交3軸の回転軸(第一撮影中心軸CA1、矢印Aの回転軸、および矢印Bの回転軸)が一点で交差するように設けられている。この一点が、アイソセンタである。このように、直交3軸の回転軸をアイソセンタで交差するように設けているので、第一支持器9−1(Cアーム)を回転させることにより撮影方向を変更したとしても、表示画像の中心点(視野の中心)はアイソセンタに一致する。
【0020】
次に、第二X線撮影システムについて説明する。第二X線撮影システムは、第二X線発生管7a−2は、第一昇降機構114を介して第二支持器9−2(Ωアーム)の一端に取り付けられ、第二平面検出器8−2は、第二昇降機構115を介して第二支持器9−2(Ωアーム)の他端に取り付けられる。CA2は、第二平面検出器8−2の受像面中心と第二X線発生管7a−2の焦点とアイソセンタと呼ばれる不動点とを結ぶ第二X線撮影システムの第二撮影中心軸を表している。
【0021】
第二X線撮影システムにおいて、円弧状を成す天井吊り式の第二支持器9−2(Ωアーム)は、アームホルダ112を介して、スライダベース113から吊り下げられている。アームホルダ112は、第二支持器9−2(Ωアーム)を円弧に沿って矢印F方向にスライド回転可能に保持する。スライダベース113は、アームホルダ112を矢印Gに沿って軸回転可能に保持する。第二支持器9−2(Ωアーム)の両端には、それぞれ下方に延びる第一昇降機構114と第二昇降機構115とが設けられている。第一昇降機構114の下端に第二X線発生管7a−2が保持されている。第二昇降機構115の下端に第二平面検出器8−2が保持されている。第二X線発生管7a−2と第二平面検出器8−2とは、第二撮影中心軸CA2上で対向している。第一昇降機構114と第二昇降機構115とは、第二X線発生管7a−2と第二平面検出器8−2とを、この対向を保った状態で矢印Hに沿って上下方向に昇降させる。スライダベース113は、天井面に施設された走行レール(図示を省略)に係合して縦横に移動可能に支持されている。アームホルダ112及びスライダベース113は、第二支持器9−2(Ωアーム)を回転可能に支持する第二支持器支持機構を構成している。
【0022】
なお、図示しない寝台は、天板116を上下方向Hに関して昇降可能、かつ天板116をその長軸方向Zと平行な向きIおよび横軸方向Xと平行な向きJに関してスライド可能に支持する。
【0023】
また、第一X線撮影システムの第一撮影中心軸CA1と、第二X線撮影システムの第二撮影中心軸CA2とは、アイソセンタで交差する。なお、第一撮影中心軸CA1がアイソセンタを通過するときの第一X線撮影システムの位置を第一X線撮影システムの撮影位置と称し、同様に、第二撮影中心軸CA2がアイソセンタを通過するときの第二X線撮影システムの位置を第二X線撮影システムの撮影位置と称する。両者が互いに撮影位置にあるときを2方向撮影位置と称する。
【0024】
このような構成の第一X線撮影システムと第二X線撮影システムとは、図示しない機構制御部3により、例えば、第一X線発生管7a−1と第一平面検出器8−1に対応する第一撮影中心軸CA1と、第二X線発生管7a−2と第二平面検出器8−2に対応する第二撮影中心軸CA2との交点が、被検体の関心領域に一致するように移動を制御されて撮影動作をする。
【0025】
[実施例1に係るX線診断装置の構成]
次に、
図2を用いて、実施例1に係るX線診断装置の構成を説明する。
図2は、実施例1に係るX線診断装置の構成を示すブロック図である。なお、各部の具体的な動作については、処理手順を説明する際に詳述する。
【0026】
実施例1に係るX線診断装置100は、
図2に示すように、操作部1と、システム制御部2と、機構制御部3と、機構状態監視部4と、機構制御入力値算出部5と、ユーザインタフェース6と、X線発生部7と、平面検出器8と、支持器9と、寝台10と、画像データベース11と、再構成処理部12と、画像演算・記憶部20と、関心領域座標推定部30とを備える。
【0027】
操作部1は、X線診断装置100を操作する医師や技師などの操作者が各種コマンドを入力するためのマウス、キーボード、ボタン、トラックボール、ジョイスティックなどを有し、操作者から受け付けたコマンドを、システム制御部2に転送する。
【0028】
システム制御部2は、X線診断装置100全体の動作を制御する。すなわち、システム制御部2は、操作部1から転送された操作者からのコマンドに基づいて機構制御部3やX線発生部7を制御することで、支持器9の回転・移動制御や寝台10の移動制御、X線量の調整やX線照射のON/OFF制御を行う。
【0029】
また、システム制御部2は、操作者からのコマンドに基づいて画像演算・記憶部20を制御することで、画像データベース11が記憶する画像データや、画像演算・記憶部20によって画像処理された画像データ、操作者からコマンドを受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)などを、表示部24に表示するように制御する。
【0030】
機構制御部3は、支持器9の回転・移動や寝台10の移動、X線絞り器7bの絞りを制御する。具体的には、機構制御部3は、機構制御入力値算出部5によって算出された制御量に従って、支持器9や寝台10、X線絞り器7bを制御する。
【0031】
機構状態監視部4は、支持器9や寝台10の現在状態情報(例えば支持器9の角度など)を機構制御部3から取得する。
【0032】
機構制御入力値算出部5は、関心領域座標を用いて、支持器9や寝台10の制御に用いられる制御量を算出する。
【0033】
ユーザインタフェース6は、関心領域座標候補として複数の交点が算出された場合に、所定の交点を関心領域座標として選択することを指示する選択指示を操作者から受け付ける。
【0034】
X線発生部7は、X線発生管7aとX線絞り器7bとを有する。X線発生管7a(第一X線発生管7a−1及び第二X線発生管7a−2)は、高電圧を用いてX線を発生する。X線絞り器7b(第一X線絞り器7b−1及び第二X線絞り器7b−2)は、X線発生管7aが発生したX線を被検体Pの関心領域に対して選択的に照射されるように絞り込む。例えば、X線絞り器7bは、スライド可能な4枚の絞り羽根を有し、これら絞り羽根をスライドさせることで、X線発生管7aが発生したX線を絞り込んで被検体Pに照射させる。
【0035】
平面検出器8(第一平面検出器8−1及び第二平面検出器8−2)は、被検体Pを透過したX線を検出するためのX線検出素子がマトリックス状に配列されたものであり、各X線検出素子は、被検体Pを透過したX線を電気信号に変換して蓄積し、蓄積した電気信号を後述する画像データ記憶回路21に送信する。
【0036】
支持器9(第一支持器9−1及び第二支持器9−2)は、X線発生管7a、X線絞り器7b及び平面検出器8を保持するアームであり、X線発生管7a及びX線絞り器7bと平面検出器8とは、支持器9により被検体Pを挟んで対向するように配置される。
【0037】
寝台10は、被検体Pを載せるベッドである。
【0038】
画像データベース11は、画像演算・記憶部20で画像処理を施された画像データや、再構成処理部12によって再構成処理された画像データ、X線診断装置100で撮影された画像データを記憶する。画像データベース11に保存された画像データも、画像演算・記憶部20で表示、画像処理が行われる。
【0039】
再構成処理部12は、操作部1を介して受け付けた操作者からの指示に基づいて、画像データ記憶回路21によって記憶された生データに対して再構成処理を行い、三次元の再構成画像を作成する。
【0040】
画像演算・記憶部20は、X線診断装置100で撮影された画像データの表示、記憶、画像処理を行う。具体的には、画像演算・記憶部20は、画像データ記憶回路21と、表示画像変更部22と、表示画像作成部23と、表示部24とを有する。画像データ記憶回路21は、平面検出器8によって検出された生データを記憶する。表示画像変更部22は、機構状態監視部4から受け付けた支持器9の角度、支持器9の位置、寝台10の位置、寝台10の高さ、画像拡大率、X線絞り器7b、補償フィルターの現在状態情報を基に、仮想透視画像の変更に必要な値を算出する。表示画像作成部23は、三次元の医用画像データから二次元の仮想透視画像を作成する。表示部24は、操作部1を介して操作者からコマンドを受け付けるためのGUIを表示したり、画像データベース11が記憶する画像データ及び表示画像作成部23や表示画像変更部22によって画像処理された画像データなどを表示する。
【0041】
関心領域座標推定部30は、被検体Pの関心領域が描出される三次元画像データから、該関心領域の中心を示す関心領域座標を推定する。具体的には、関心領域座標推定部30は、交点演算部31と、メモリ32と、交点領域演算部33と、関心領域座標判定部34とを有する。交点演算部31は、平面検出器8の受像面とX線発生管7aの焦点とアイソセンタとを結ぶ中心軸を算出し、該中心軸上に連続して存在する画素の集合体について中心点を算出することで、関心領域座標を推定する(もしくは関心領域座標の候補となる交点を算出する)。メモリ32は、交点演算部31によって推定された関心領域座標を記憶する。交点領域演算部33は、交点演算部31によって複数の交点が算出された場合に、関心領域座標として選択するために必要な交点領域(交点から所定範囲内において画素値を有する領域の体積、中心軸上の平面検出器8側の端点と交点との距離など)を算出する。関心領域座標判定部34は、交点領域演算部33によって算出された交点領域を用いて、複数の交点の中から関心領域座標を判定する。
【0042】
[実施例1に係るX線診断装置による処理手順]
続いて、
図3を用いて、実施例1に係るX線診断装置による処理手順を説明する。
図3は、実施例1に係るX線診断装置による処理手順を示すフローチャートである。なお、以下では、頭部動脈瘤のインターベーション治療を例として説明する。
【0043】
図3に示すように、検査又は治療が開始されると、まず、X線診断装置100は、被検体Pの頭部を回転撮影し、三次元血管像データを取得する(ステップS1)。例えば、平面検出器8によって取得された生データが画像データ記憶回路21に格納されると、再構成処理部12が再構成処理を行い、再構成された三次元血管像データを画像データベース11に格納する。
【0044】
次に、X線診断装置100は、三次元血管像データを表示する(ステップS2)。具体的には、表示画像作成部23は、画像データベース11から三次元血管像データを読み出し、さらに、機構状態監視部4から受け付けた支持器9の角度、支持器9の位置、寝台10の位置、寝台10の高さ、画像拡大率、X線絞り器7b、補償フィルターの現在状態情報を基に、二次元の初期の仮想透視画像を作成する。
【0045】
例えば、
図1で示した第一X線撮影システムについて考える。表示画像を作成するとき、第一X線撮影システムは、頭部を回転撮影した時点と同じ
図1のような初期状態であるとする。つまり、アイソセンタを原点とする三次元座標系をシステム座標系とすると、取得した三次元血管像データの三次元座標系の原点とシステムの座標系とが完全に一致している状態である。ただし、第一支持器9−1(Cアーム)は、矢印Aの回転軸について回転していない(地面に対して垂直)とする。このとき、表示画像作成部23は、投影視点をX線発生管7aの焦点、投影面を平面検出器8の検出器面として、3次元血管像データから二次元の投影画像(以下、初期の位置における画像という意味で「初期位置画像」という)を作成する。例えば、
図4Aは、初期位置画像の一例である。
【0046】
続いて、X線診断装置100は、操作者による収集条件の変更を受け付け(ステップS3)、三次元血管像データの表示を変更する(ステップS4)。
【0047】
例えば、収集条件の変更の一例として、寝台10の水平移動を説明する。例えば、操作者が、操作部1を介して寝台10を
図1に示すI方向の患者(被検体P)足側に移動させたとする。このとき、機構状態監視部4は、寝台10の初期状態からの変移量Δ(デルタ)Iを算出する。次に、表示画像変更部22は、機構状態監視部4から受け付けたΔIに基づいて、三次元画像の平行移動量Δvを算出する。さらに、表示画像作成部23は、Δvに基づいて二次元の投影画像の表示位置を変更する。すなわち、表示画像作成部23は、寝台10が患者足側に移動することに連動して、
図4Bに例示するように、画像が上部方向に平行移動した二次元の投影画像を表示する。
【0048】
また、例えば、収集条件の変更の一例として、寝台10の水平移動を説明する。例えば、操作者が、操作部1を介して寝台10を
図1に示すJ方向の患者右手側に移動させたとする。このとき、機構状態監視部4は、寝台10の初期状態からの変移量ΔJを算出する。次に、表示画像変更部22は、機構状態監視部4から受け付けたΔJに基づいて、三次元画像の平行移動量Δhを算出する。さらに、表示画像作成部23は、Δhに基づいて二次元の投影画像の表示位置を変更する。すなわち、表示画像作成部23は、寝台10が患者右手側に移動することに連動して、
図4Cに例示するように、画像が左方向に平行移動した二次元の投影画像を表示する。
【0049】
また、例えば、収集条件の変更の一例として、支持器9の回転を説明する。例えば、操作者が、操作部1を介して第一支持器9−1を
図1のA方向の患者右側に回転させたとする。このとき、機構状態監視部4は、第一支持器9−1の初期状態からの変移角度量ΔAを算出する。次に、表示画像変更部22は、機構状態監視部4から受け付けたΔAに基づいて、三次元画像の投影方向の変移角度量Δaを算出する。さらに、表示画像作成部23は、Δaに基づいて投影方向を変更し、第一支持器9−1が矢印Aの回転軸周りに回転することに連動して、
図4Dに例示するように、画像が回転移動した二次元の投影画像を表示する。
【0050】
また、例えば、収集条件の変更の一例として、画像拡大率の変化を説明する。例えば、操作者が、操作部1を介して画像の拡大率を変更したとする。このとき、機構状態監視部4は、初期状態の拡大率Ma及び変更後の拡大率Mbを表示画像変更部22に出力する。次に、表示画像変更部22は、初期状態の拡大率Ma及び変更後の拡大率Mbに基づいて、画像拡大比率Mr=Mb/Maを算出する。さらに、表示画像作成部23は、Mrに基づいて、表示画像の拡大率を変更し、拡大率の変更に連動して、
図4Eに例示するように、表示画像の拡大率が変更された二次元の投影画像を表示する。
【0051】
なお、例えば、操作者が、操作部1を介して寝台10を
図1に示すH方向に上下させた場合も、被検体Pと、X線発生管7aの焦点及び平面検出器8との距離が変化するため、画像拡大率が変化する。このとき、機構状態監視部4は、寝台10の初期状態から、X線発生管7aの焦点と平面検出器8の中心とを結ぶ直線方向の変移量ΔHを算出する。次に、表示画像変更部22は、ΔHに基づいて投影画像の変更拡大率Mhを算出する。さらに、表示画像作成部23は、Mhに基づいて表示画像の拡大率を変更し、寝台10の上下動に連動して、
図4Eに例示するように、画像の拡大率が変更された二次元の投影画像を表示する。
【0052】
また、例えば、収集条件の変更の一例として、寝台10のX線絞りを説明する。不要な被曝を低減するために、操作者が、観察したい領域以外にX線絞りを挿入することがある。このとき、機構状態監視部4は、X線絞りの初期状態からの変移量ΔCを算出する。次に、表示画像変更部22は、ΔCに基づいて三次元画像の投影面においてX線絞りにより覆われる領域Sを算出する。さらに、表示画像作成部23は、領域Sに基づいて表示画像上で領域Sを表示しないように、
図4Fに例示するように、表示する。又は、表示画像作成部23は、
図4Gに例示するように、領域Sの表示パターンを変更してもよい。パターンだけでなく、色や輝度を変更してもよい。さらに、X線絞りに限らず、補償フィルターに関しても同様の表示をしてもよい。
【0053】
その後、X線診断装置100は、検査又は治療が終了したか否かを判定し(ステップS5)、終了した場合には(ステップS5肯定)、処理を終了する。一方、終了していない場合には(ステップS5否定)、X線診断装置100は、ステップS3の処理に戻り、再び、操作者による収集条件の変更を受け付ける。
【0054】
なお、以上の例は、それぞれの場合に限定されるものではなく、組合せて使用することもできる。また、三次元の血管画像を例に説明したが、血管だけでなく、骨や軟組織の画像でもよいし、三次元医用画像として、CT画像やMRIの画像を用いることもできる。
【0055】
[実施例1の効果]
上述したように、実施例1によれば、表示画像作成部23は、三次元医用画像データの表示画像とX線診断装置100での収集画像上での解剖学的構造が略一致するように、三次元医用画像データから表示画像を作成する。また、表示画像変更部22は、X線診断装置100での収集条件の変化に応じて、解剖学的構造の一致を保持するように表示画像を変更する。また、表示部24は、表示画像作成部23および/または表示画像変更部22によって作成および/または変更された表示画像を表示する。また、収集条件は、支持器の角度、支持器の位置、画像拡大率、寝台の位置、寝台の高さ、X線絞り器、補償フィルターのいずれか一つ、またはそれらの組合せである。
【0056】
また、実施例1によれば、表示画像作成部23および/または表示画像変更部22は、X線絞り器によって不可視となった領域を表示しないように表示画像を作成および/または変更する。また、実施例1によれば、表示画像作成部23および/または表示画像変更部22は、X線絞り器および/または補償フィルターによってX線を一部または全て遮断された領域は、色、パターン、輝度のうち少なくともいずれか一つを変更するように表示画像を作成および/または変更する。
【0057】
このようなことから、実施例1によれば、臨床ワークフローが改善され、作業効率を向上することが可能になる。また、実施例1によれば、治療の本質とは関係の無い微調整時の被曝が無くなるので、不必要な被曝を低減することも可能になる。
【実施例2】
【0058】
まず、
図5A〜5Cを用いて、実施例2に係るX線診断装置の概要を説明する。
図5A〜5Cは、実施例2に係るX線診断装置の概要を説明するための図である。
【0059】
[実施例2に係るX線診断装置の概要]
実施例2に係るX線診断装置は、三次元空間で被検体の関心領域が描出される医用画像データから二次元空間で該関心領域が描出される表示画像を生成する。例えば、X線診断装置は、
図5Aに示すように、例えば動脈瘤が二次元空間で描出される表示画像を生成する。
【0060】
また、X線診断装置は、表示画像について指定された情報に基づいて、三次元空間における関心領域の位置を示す関心領域座標を推定する。例えば、医師が、関心領域の中心が視野の中心となるように支持器や寝台を移動し、観察角度や位置を決定すると、X線診断装置は、
図5Aに示すように、検出器の受像面中心とX線発生管の焦点とアイソセンタ(図示を省略)とを結ぶ中心軸を算出し、決定された表示画像の情報に基づいて、該中心軸上に連続して存在する画素の集合体について中心点を算出することで、例えば動脈瘤の中心を示す関心領域座標を推定する。
【0061】
次に、X線診断装置は、推定した関心領域座標を用いて、所定の機器の制御に用いられる制御量を算出する。例えば、X線診断装置は、
図5Bに示すように、X線発生管及び検出器が取り付けられた支持器(図示を省略)の制御に用いられる制御量や、寝台の制御に用いられる制御量を算出する。
【0062】
そして、X線診断装置は、算出した制御量に従って、所定の機器を制御する。例えば、X線診断装置は、
図5Cに示すように、支持器や寝台を制御する。
【0063】
このように、実施例2に係るX線診断装置は、操作者が支持器の角度や位置を変化させた際に、関心領域が視野から外れないように支持器や寝台を制御する。このようなことから、操作者は、関心領域を常に視野の中心に捉えることができ、X線診断装置を手動で調整しなければならない手間が省かれ、作業効率が向上する。ひいては、治療の本質とは関係のない撮影の時間が短くなる結果、被曝を低減することも可能になる。
【0064】
[実施例2に係るX線診断装置の外観]
次に、
図6を用いて、実施例2に係るX線診断装置の外観を説明する。
図6は、実施例2に係るX線診断装置の外観を示す斜視図である。なお、以下に説明するように、実施例2においてはX線診断装置としてバイプレーン型のX線診断装置を想定するが、これに限られるものではなく、シングルプレーン型のX線診断装置の場合にも同様に適用することができる。
【0065】
図6に示すように、実施例2に係るX線診断装置は、バイプレーン型のX線診断装置であり、正面系のX線撮影システム(第一X線撮影システム)と、側面系のX線撮影システム(第二X線撮影システム)とを装備しており、天板116上に載置された被検体Pを2方向から同時に撮影することが可能に構成されている。また、第一X線撮影システムは、以下に説明するように、5軸回転機構を搭載している。
【0066】
まず、第一X線撮影システムについて説明する。第一X線発生管7a−1は、第一支持器9−1(Cアーム)の一端に取り付けられ、第一平面検出器8−1は、第一支持器9−1(Cアーム)の他端に取り付けられる。CA1は、第一平面検出器8−1の受像面中心と第一X線発生管7a−1の焦点とアイソセンタと呼ばれる不動点とを結ぶ第一X線撮影システムの第一撮影中心軸を表している。
【0067】
第一X線撮影システムにおいて、円弧状を成す床置き式の第一支持器9−1(Cアーム)は、アームホルダ110を介して床に据え付けられたスタンド111に支持される。アームホルダ110及びスタンド111は、第一支持器9−1(Cアーム)を回転可能に支持する第一支持器支持機構を構成している。
【0068】
ここで、第一X線撮影システムは、第一支持器9−1(Cアーム)の主回転、スライド回転、及び支柱回転の3軸回転機構に加え、床回転、平面検出器・X線絞り器回転の2軸を追加した5軸回転機構を搭載している。具体的には、まず、スタンド111は、アームホルダ110を矢印A(A2)に沿って軸回転可能な構造を有している。また、アームホルダ110は、第一支持器9−1(Cアーム)を矢印Bに沿ってスライド回転可能な構造を有している。また、スタンド111は、矢印Cに沿って支柱回転(旋回)可能な構造を有している。また、スタンド111は、矢印Dに沿って床回転可能な構造を有している。また、第一支持器9−1(Cアーム)に取り付けられた第一平面検出器8−1及び第一X線絞り器7a−1は、矢印Eに沿って回転可能な構造を有している。
【0069】
このような構造により、第一X線撮影システムは、撮影アングルを矢印A(A2)、Bに関して任意に傾斜させることができる。また、第一X線撮影システムは、矢印C、矢印Dに関して旋回することにより、第二支持器9−2(Ωアーム)の内側に位置する(2方向)撮影位置と待機位置との間を移動することができる。また、第一X線撮影システムは、矢印Eに関して旋回することにより、受像面を任意に回転させることができる。
【0070】
ここで、矢印Dの回転軸および矢印Eの回転軸は、第一撮影中心軸CA1に一致する。また、第一撮影中心軸CA1に対して矢印Aの回転軸が直交する。また、第一撮影中心軸CA1に対して矢印Bの回転軸が直交する。また、矢印Aの回転軸に対して矢印Bの回転軸が直交する。さらに、これらの直交3軸の回転軸(第一撮影中心軸CA1、矢印Aの回転軸、および矢印Bの回転軸)が一点で交差するように設けられている。この一点が、アイソセンタである。このように、直交3軸の回転軸をアイソセンタで交差するように設けているので、第一支持器9−1(Cアーム)を回転させることにより撮影方向を変更したとしても、表示画像の中心点(視野の中心)はアイソセンタに一致する。
【0071】
次に、第二X線撮影システムについて説明する。第二X線撮影システムは、第二X線発生管7a−2は、第一昇降機構114を介して第二支持器9−2(Ωアーム)の一端に取り付けられ、第二平面検出器8−2は、第二昇降機構115を介して第二支持器9−2(Ωアーム)の他端に取り付けられる。CA2は、第二平面検出器8−2の受像面中心と第二X線発生管7a−2の焦点とアイソセンタと呼ばれる不動点とを結ぶ第二X線撮影システムの第二撮影中心軸を表している。
【0072】
第二X線撮影システムにおいて、円弧状を成す天井吊り式の第二支持器9−2(Ωアーム)は、アームホルダ112を介して、スライダベース113から吊り下げられている。アームホルダ112は、第二支持器9−2(Ωアーム)を円弧に沿って矢印F方向にスライド回転可能に保持する。スライダベース113は、アームホルダ112を矢印Gに沿って軸回転可能に保持する。第二支持器9−2(Ωアーム)の両端には、それぞれ下方に延びる第一昇降機構114と第二昇降機構115とが設けられている。第一昇降機構114の下端に第二X線発生管7a−2が保持されている。第二昇降機構115の下端に第二平面検出器8−2が保持されている。第二X線発生管7a−2と第二平面検出器8−2とは、第二撮影中心軸CA2上で対向している。第一昇降機構114と第二昇降機構115とは、第二X線発生管7a−2と第二平面検出器8−2とを、この対向を保った状態で矢印Hに沿って上下方向に昇降させる。スライダベース113は、天井面に施設された走行レール(図示を省略)に係合して縦横に移動可能に支持されている。アームホルダ112及びスライダベース113は、第二支持器9−2(Ωアーム)を回転可能に支持する第二支持器支持機構を構成している。
【0073】
なお、図示しない寝台は、天板116を上下方向Hに関して昇降可能、かつ天板116をその長軸方向Zと平行な向きIおよび横軸方向Xと平行な向きJに関してスライド可能に支持する。
【0074】
また、第一X線撮影システムの第一撮影中心軸CA1と、第二X線撮影システムの第二撮影中心軸CA2とは、アイソセンタで交差する。なお、第一撮影中心軸CA1がアイソセンタを通過するときの第一X線撮影システムの位置を第一X線撮影システムの撮影位置と称し、同様に、第二撮影中心軸CA2がアイソセンタを通過するときの第二X線撮影システムの位置を第二X線撮影システムの撮影位置と称する。両者が互いに撮影位置にあるときを2方向撮影位置と称する。
【0075】
このような構成の第一X線撮影システムと第二X線撮影システムとは、図示しない機構制御部3により、例えば、第一X線発生管7a−1と第一平面検出器8−1に対応する第一撮影中心軸CA1と、第二X線発生管7a−2と第二平面検出器8−2に対応する第二撮影中心軸CA2との交点が、被検体の関心領域に一致するように移動を制御されて撮影動作をする。
【0076】
[実施例2に係るX線診断装置の構成]
次に、
図7を用いて、実施例2に係るX線診断装置の構成を説明する。
図7は、実施例2に係るX線診断装置の構成を示すブロック図である。なお、各部の具体的な動作については、処理手順を説明する際に詳述する。
【0077】
図6に示すような外観を有する実施例2に係るX線診断装置100は、
図7に示すように、操作部1と、システム制御部2と、機構制御部3と、機構状態監視部4と、機構制御入力値算出部5と、ユーザインタフェース6と、X線発生部7と、平面検出器8と、支持器9と、寝台10と、画像データベース11と、再構成処理部12と、画像演算・記憶部20と、関心領域座標推定部30とを備える。
【0078】
操作部1は、X線診断装置100を操作する医師や技師などの操作者が各種コマンドを入力するためのマウス、キーボード、ボタン、トラックボール、ジョイスティックなどを有し、操作者から受け付けたコマンドを、システム制御部2に転送する。
【0079】
システム制御部2は、X線診断装置100全体の動作を制御する。すなわち、システム制御部2は、操作部1から転送された操作者からのコマンドに基づいて機構制御部3やX線発生部7を制御することで、支持器9の回転・移動制御や寝台10の移動制御、X線量の調整やX線照射のON/OFF制御を行う。
【0080】
また、システム制御部2は、操作者からのコマンドに基づいて画像演算・記憶部20を制御することで、画像データベース11が記憶する画像データや、画像演算・記憶部20によって画像処理された画像データ、操作者からコマンドを受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)などを、表示部24に表示するように制御する。
【0081】
機構制御部3は、支持器9の回転・移動や寝台10の移動、X線絞り器7bの絞りを制御する。具体的には、機構制御部3は、機構制御入力値算出部5によって算出された制御量に従って、支持器9や寝台10、X線絞り器7bを制御する。
【0082】
機構状態監視部4は、支持器9や寝台10の現在状態情報(例えば支持器9の角度など)を機構制御部3から取得する。
【0083】
機構制御入力値算出部5は、関心領域座標を用いて、支持器9や寝台10の制御に用いられる制御量を算出する。
【0084】
ユーザインタフェース6は、関心領域座標候補として複数の交点が算出された場合に、所定の交点を関心領域座標として選択することを指示する選択指示を操作者から受け付ける。
【0085】
X線発生部7は、X線発生管7aとX線絞り器7bとを有する。X線発生管7a(第一X線発生管7a−1及び第二X線発生管7a−2)は、高電圧を用いてX線を発生する。X線絞り器7b(第一X線絞り器7b−1及び第二X線絞り器7b−2)は、X線発生管7aが発生したX線を被検体Pの関心領域に対して選択的に照射されるように絞り込む。例えば、X線絞り器7bは、スライド可能な4枚の絞り羽根を有し、これら絞り羽根をスライドさせることで、X線発生管7aが発生したX線を絞り込んで被検体Pに照射させる。
【0086】
平面検出器8(第一平面検出器8−1及び第二平面検出器8−2)は、被検体Pを透過したX線を検出するためのX線検出素子がマトリックス状に配列されたものであり、各X線検出素子は、被検体Pを透過したX線を電気信号に変換して蓄積し、蓄積した電気信号を後述する画像データ記憶回路21に送信する。
【0087】
支持器9(第一支持器9−1及び第二支持器9−2)は、X線発生管7a、X線絞り器7b及び平面検出器8を保持するアームであり、X線発生管7a及びX線絞り器7bと平面検出器8とは、支持器9により被検体Pを挟んで対向するように配置される。
【0088】
寝台10は、被検体Pを載せるベッドである。
【0089】
画像データベース11は、画像演算・記憶部20で画像処理を施された画像データや、再構成処理部12によって再構成処理された画像データ、X線診断装置100で撮影された画像データを記憶する。画像データベース11に保存された画像データも、画像演算・記憶部20で表示、画像処理が行われる。
【0090】
再構成処理部12は、操作部1を介して受け付けた操作者からの指示に基づいて、画像データ記憶回路21によって記憶された生データに対して再構成処理を行い、三次元の再構成画像を作成する。
【0091】
画像演算・記憶部20は、X線診断装置100で撮影された画像データの表示、記憶、画像処理を行う。具体的には、画像演算・記憶部20は、画像データ記憶回路21と、表示画像変更部22と、表示画像作成部23と、表示部24とを有する。画像データ記憶回路21は、平面検出器8によって検出された生データを記憶する。表示画像変更部22は、機構状態監視部4から受け付けた支持器9の角度、支持器9の位置、寝台10の位置、寝台10の高さ、画像拡大率、X線絞り器7b、補償フィルターの現在状態情報を基に、仮想透視画像の変更に必要な値を算出する。表示画像作成部23は、三次元の医用画像データから二次元の仮想透視画像を作成する。表示部24は、操作部1を介して操作者からコマンドを受け付けるためのGUIを表示したり、画像データベース11が記憶する画像データ及び表示画像作成部23や表示画像変更部22によって画像処理された画像データなどを表示する。
【0092】
関心領域座標推定部30は、被検体Pの関心領域が描出される三次元画像データから、該関心領域の中心を示す関心領域座標を推定する。具体的には、関心領域座標推定部30は、交点演算部31と、メモリ32と、交点領域演算部33と、関心領域座標判定部34とを有する。交点演算部31は、平面検出器8の受像面とX線発生管7aの焦点とアイソセンタとを結ぶ中心軸を算出し、該中心軸上に連続して存在する画素の集合体について中心点を算出することで、関心領域座標を推定する(もしくは関心領域座標の候補となる交点を算出する)。メモリ32は、交点演算部31によって推定された関心領域座標を記憶する。交点領域演算部33は、交点演算部31によって複数の交点が算出された場合に、関心領域座標として選択するために必要な交点領域(交点から所定範囲内において画素値を有する領域の体積、中心軸上の平面検出器8側の端点と交点との距離など)を算出する。関心領域座標判定部34は、交点領域演算部33によって算出された交点領域を用いて、複数の交点の中から関心領域座標を判定する。
【0093】
[実施例2に係るX線診断装置による処理手順]
続いて、
図8A〜9Cを用いて、実施例2に係るX線診断装置による処理手順を説明する。
図8Aは、実施例2に係るX線診断装置による検査時の処理手順を示すフローチャートであり、
図8Bは、実施例2に係るX線診断装置による治療時の処理手順を示すフローチャートである。また、
図9A〜Cは、中心軸線と関心領域座標との距離を説明するための図である。なお、以下では、頭部動脈瘤のインターベーション治療であるコイル塞栓術を例として説明する。
【0094】
図8Aに示すように、検査が開始されると、まず、X線診断装置100は、被検体Pの頭部を回転撮影し、三次元血管像データを取得する(ステップS101)。例えば、平面検出器8によって取得された生データが画像データ記憶回路21に格納されると、再構成処理部12が再構成処理を行い、再構成された三次元血管像データを画像データベース11に格納する。
【0095】
次に、X線診断装置100は、三次元血管像データを表示する(ステップS102)。例えば、表示画像作成部23が、画像データベース11から三次元血管像データを読み出し、二次元空間で血管像が描出される表示画像を生成し、生成した表示画像を表示部24に表示する。
【0096】
続いて、医師が、支持器9や寝台10を移動する(ステップS103)。例えば、医師は、動脈瘤の形状や位置などの状態をチェックした後、関心領域が視野の中心(受像面中心)となるように、操作部1を用いて、支持器9や寝台10を移動する。なお、支持器9や寝台10が医師によって操作されて移動すると、その変移量は、機構状態監視部4によって取得され、表示画像変更部22に送られる。なお、ステップS103において医師が支持器9や寝台10を移動する際、X線診断装置100は、視野の中心を意味するターゲットマーカーを表示部24上に表示してもよい。
【0097】
すると、X線診断装置100は、三次元血管像データの表示を変更する(ステップS104)。例えば、表示画像変更部22は、機構状態監視部4から送られた支持器9や寝台10の変移量に基づき、三次元血管像データの表示角度、位置、拡大率などを変更し、あたかも現在の支持器9や寝台10の幾何学的位置関係で観察しているように三次元血管像データを変更し、表示部24に表示する。すなわち、X線診断装置100は、医師の操作に従って仮想的に三次元血管像データを生成し、仮想的に生成された三次元血管像データから二次元空間の表示画像を生成して表示部24に表示しており、この間、被検体PにX線が照射されることはない。
【0098】
こうして、医師は、観察角度や位置を決定すると、操作部1にある確定ボタンを押下する(ステップS105)。すると、二次元空間の表示画像について関心領域が指定されたことになる。医師は、関心領域が視野の中心となるように支持器9や寝台10を移動するので、この時仮想的に生成された三次元血管像データは、関心領域がほぼ中心に位置するものになっているはずであると考えられる。このため、実施例1に係るX線診断装置100は、以下に説明するように、この三次元血管像データを用いて関心領域座標を推定する。
【0099】
すなわち、ステップS105に続き、X線診断装置100は、中心軸線と三次元血管像データとの交点座標(関心領域座標)を算出する(ステップS106)。例えば、交点演算部31は、まず、機構状態監視部4から支持器9の現在状態情報を取得し、中心軸線を算出する。ここで、中心軸線とは、平面検出器8の受像面中心とX線発生管7aの焦点とアイソセンタと呼ばれる不動点とを結ぶ線のことである。次に、交点演算部31は、表示画像変更部22から三次元血管像データを取得し、中心軸線上で画素値を持つ区間を算出する。例えば、交点演算部31は、2値化による手法や閾値を用いた手法などによって、所定の画素値を持つ(例えば関心領域や血管等が描出されているならば有するであろうと想定される画素値を有すること、以下、単に「画素値を持つ」、「画素値を有する」)区間を算出する。そして、交点演算部31は、区間の中間点を算出し、交点とする。
【0100】
このとき、例えば中心軸線上に動脈瘤と正常な血管が存在する場合、交点が複数存在する可能性がある。このような場合について、動脈瘤の判定方法を説明する。まず、それぞれの交点において、中心軸線上で所定範囲内の画素値を持つ区間の長さd_nを算出する(長さd_nは
図5Aに図示)。通常、動脈瘤は血管壁が風船のように膨らんだものであるため、正常な血管径に比べて大きいことを利用し、複数のd_nの中から最大の長さを持つ交点を動脈瘤の交点とすることができる。
【0101】
そして、X線診断装置100は、関心領域座標を記憶する(ステップS107)。例えば、交点演算部31は、ステップS106において算出した交点を、関心領域座標としてメモリ32に格納する。
【0102】
次に、治療が開始されると、医師は、コイルの塞栓状態を確認するため、コイリング治療中に支持器9を移動し、観察角度を変更する。この時、関心領域が支持器9の回転中心にない場合、関心領域は、視野からはずれることになる。
【0103】
そこで、X線診断装置100は、
図8Bに示すように、まず、支持器9が制御モードであるか否かを判定する(ステップS201)。例えば、機構状態監視部4が、支持器9が制御モードであるか否かを判定する。
【0104】
支持器9が制御モードである場合(ステップS201肯定)、支持器9は移動し(ステップS202)、X線診断装置100は、支持器9の変移量を検知する(ステップS203)。例えば、機構状態監視部4が、支持器9の変移量を検知し、現在の支持器9の角度を算出する。
【0105】
すると、X線診断装置100は、中心軸線と関心領域座標との距離Δを算出する(ステップS204)。例えば、機構制御入力値算出部5は、機構状態監視部4から支持器9の現在状態情報を取得し、中心軸線を算出する。また、機構制御入力値算出部5は、メモリ32から関心領域座標を読み込み、機構状態監視部4から寝台10の現在状態情報を取得する。そして、機構制御入力値算出部5は、関心領域座標から中心軸線までの最短距離として、
図9Aに示すように寝台10と平行方向の距離Δを算出する。また、機構制御入力値算出部5は、距離Δ=0とするための支持器9や寝台10の制御量を算出する。
【0106】
なお、関心領域座標から中心軸線までの最短距離は、
図9Aに示すような寝台10と平行方向の距離Δに限られず、例えば、
図9Bに示すように、関心領域座標から中心軸線に垂線を下ろした距離Δでもよく、あるいは、
図9Cに示すように、関心領域座標と中心軸線上の支持器9の回転中心(アイソセンタIC)とを結ぶ距離Δなどでもよい。
【0107】
続いて、X線診断装置100は、距離Δ=0となるように支持器9や寝台10を移動する(ステップS205)。例えば、機構制御部3は、機構制御入力値算出部5から支持器9や寝台10の制御量を読み込み、この制御量に従って、支持器9や寝台10を移動する。
【0108】
すると、関心領域は、視野の中心に移動する(ステップS206)。すなわち、ステップS204において支持器9や寝台10が移動する結果、表示部24上、関心領域は視野の中心に移動することになる。
【0109】
こうして、医師は、関心領域を常に視野の中心に捉えることができ、X線診断装置を手動で調整しなければならない手間が省かれ、作業効率が向上する。ひいては、治療の本質とは関係のない撮影の時間が短くなる結果、被曝を低減することも可能になる。
【0110】
なお、実施例2に係るX線診断装置100は、三次元医用画像データから、推定した関心領域座標から一定範囲の領域を抽出し、抽出した領域のみを用いて表示画像を作成する。
【0111】
[変形例2−1]
ところで、上記では、ステップS106において算出された交点が1つの場合を想定したが、交点が複数の場合も想定し得る。このような場合、関心領域座標の決定が困難になる場合がある。そこで、以下では、変形例2−1として、特に複数の交点が存在する場合を想定し、関心領域座標を推定する手法を説明する。
図10は、変形例2−1に係るX線診断装置による検査時の処理手順を示すフローチャートである。
【0112】
例えば、頭部動脈瘤の治療対象である動脈瘤は、他の血管に比べて体積を持つ。そこで、変形例2−1では、交点から特定範囲内において画素値を有する領域の体積を交点ごとに算出し、最も体積の大きな交点の座標を関心領域座標とする。この結果、複数の交点が存在する場合であっても、関心領域座標を正しく選択することが可能になる。なお、
図10のステップS301〜S305は、
図8AのステップS101〜S105と同じであるので、それ以降の処理手順について記載する。
【0113】
まず、X線診断装置100は、中心軸線と三次元血管像データとの交点座標を算出する(ステップS306)。例えば、交点演算部31は、まず、機構状態監視部4から支持器9の現在状態情報を取得し、中心軸線を算出する。次に、交点演算部31は、表示画像変更部22から三次元血管像データを取得し、中心軸線上で連続して画素値を持つ区間を算出する。そして、交点演算部31は、区間の中間点を算出し、交点とする。区間が多数存在する場合は、交点演算部31は、それぞれの区間ごとに中間点を算出し、交点C_nとする。
【0114】
次に、X線診断装置100は、各交点ごとに、一定範囲内で画素値を有するボクセルVを算出する(ステップS307)。例えば、交点領域演算部33は、交点演算部31から三次元血管像データと各交点C_nとを読み込み、予めユーザによって設定された範囲Rにおいて画素値を有するボクセルV_nを算出する。ここで、範囲Rは、交点C_nを中心とする球領域の半径とし、例えば5mmを標準とする。また、ここで範囲Rとして、中心軸線上で所定範囲内の画素値を持つ区間の長さd_nの1/2を用いても良い。
【0115】
そして、X線診断装置100は、各交点ごとに、ボクセルVの総和S(体積)を求める(ステップS308)。例えば、交点領域演算部33は、交点C_nごとに、ボクセルV_nの総体積S_nを算出する。ただし、範囲Rに交点区間の長さd_nを用いた場合、S_nはd_nの3乗の値で除算した値とする。
【0116】
続いて、X線診断装置100は、体積の値が最大値となった交点を関心領域座標とする(ステップS309)。例えば、関心領域座標判定部34は、交点領域演算部33からS_nを取得し、最大値のSを持つ交点を関心領域座標としてメモリ32に格納する(ステップS310)。すなわち、治療対象である動脈瘤が他の血管に比較して一般的に体積が大きいことを利用するものである。
【0117】
この結果、複数の交点が存在する場合であっても、正しく関心領域座標を選択することが可能になる。
【0118】
[変形例2−2]
次に、複数の交点が存在する場合を想定し、関心領域座標を推定する手法として、変形例2−2を説明する。
図11は、変形例2−2に係るX線診断装置による検査時の処理手順を示すフローチャートである。
【0119】
医師が治療対象の動脈瘤の観察角度を決定する際は、通常、関心領域である動脈瘤から平面検出器8方向において、他の血管が重ならないように観察角度を選ぶと考えられる。そこで、変形例2−2では、平面検出器8からの距離が最短である交点の座標を関心領域座標とする。この結果、複数の交点が存在する場合であっても、関心領域座標を正しく選択することが可能になる。なお、
図11のステップS401〜S405は、
図8AのステップS101〜S105と同じであるので、それ以降の処理手順について記載する。
【0120】
まず、X線診断装置100は、中心軸線と三次元血管像データとの交点座標を算出する(ステップS406)。例えば、交点演算部31は、まず、機構状態監視部4から支持器9の現在状態情報を取得し、中心軸線を算出する。次に、交点演算部31は、表示画像変更部22から三次元血管像データを取得し、中心軸線上で画素値を持つ区間を算出する。そして、交点演算部31は、区間の中間点を算出し、交点とする。区間が多数存在する場合は、交点演算部31は、それぞれの区間ごとに中間点を算出し、交点C_nとする。
【0121】
次に、X線診断装置100は、各交点ごとに、平面検出器8からの距離dを算出する(ステップS407)。例えば、交点領域演算部33は、交点演算部31から三次元血管像データと各交点C_nとを読み込み、中心軸線の平面検出器8側の端点と交点C_nとの距離dを算出する。
【0122】
そして、X線診断装置100は、距離の値が最小値となった交点を関心領域座標とする(ステップS408)。例えば、関心領域座標判定部34は、交点領域演算部33からdを取得し、最小値のdを持つ交点を関心領域座標としてメモリ32に格納する(ステップS409)。すなわち、医師が治療対象の動脈瘤の観察角度を決定する際、通常、関心領域である動脈瘤から平面検出器方向において他の血管が重ならないように観察角度を選ぶことを利用するものである。
【0123】
この結果、複数の交点が存在する場合であっても、正しく関心領域座標を選択することが可能になる。
【0124】
[変形例2−3]
ところで、変形例2−1や変形例2−2では、複数の交点の中から関心領域座標を判定する手法について説明したが、特徴に乏しい関心領域である場合などには、判定することが困難な場合がある。そこで、変形例2−3では、複数の交点が存在する場合に、交点領域の色を変えて表示し、ユーザによる選択を可能にする。
図12は、変形例2−3に係るX線診断装置による検査時の処理手順を示すフローチャートである。
【0125】
この結果、複数の交点が存在する場合で、かつ特徴に乏しい関心領域である場合であっても、関心領域座標を正しく選択することが可能になる。なお、
図12のステップS501〜S505は、
図8AのステップS101〜S105と同じであるので、それ以降の処理手順について記載する。
【0126】
まず、X線診断装置100は、中心軸線と三次元血管像データとの交点座標を算出する(ステップS506)。例えば、交点演算部31は、まず、機構状態監視部4から支持器9の現在状態情報を取得し、中心軸線を算出する。次に、交点演算部31は、表示画像変更部22から三次元血管像データを取得し、中心軸線上で画素値を持つ区間を算出する。そして、交点演算部31は、区間の中間点を算出し、交点とする。区間が多数存在する場合は、交点演算部31は、それぞれの区間ごとに中間点を算出し、交点C_nとする。
【0127】
次に、X線診断装置100は、各交点ごとに、一定範囲内で画素値を有するボクセルVを算出する(ステップS507)。例えば、交点領域演算部33は、交点演算部31から三次元血管像データと各交点C_nとを読み込み、予めユーザによって設定された範囲Rにおいて画素値を有するボクセルV_nを算出する。ここで、範囲Rは、例えば10mmを標準とする。
【0128】
そして、X線診断装置100は、各交点のボクセルV_nの色を交点以外の領域と区別し、異なる色に変えて表示する(ステップS508)。例えば、関心領域座標判定部34は、交点領域演算部33から三次元血管像データとボクセルV_nとを読み出し、ボクセルV_nに対して他のボクセルとは異なる表示色を割り当て、表示部24に表示する。この時、各V_nに割り当てられた表示色は同一となってもよい。
【0129】
続いて、ユーザが、交点の選択操作を行う(ステップS509)。例えば、ユーザは、レバーなどのようなユーザインタフェース6により、交点を選択する信号を関心領域座標判定部34に入力する。
【0130】
すると、X線診断装置100は、選択された交点のボクセルVの色を変えて表示する(ステップS510)。例えば、関心領域座標判定部34は、ユーザによって選択されたボクセルV_nに、選択されていることを意味する視認性の良い表示色を割り当て、表示部24に表示する。ユーザは、表示部24で、現在選択している関心領域がその他の関心領域候補とは異なる色で表示されていることを確認できる。
【0131】
ユーザは、ステップS509を繰り返し、関心領域座標となる交点を決定する(ステップS511)。例えば、ユーザは、ユーザインタフェース6により、決定信号を関心領域座標判定部34に入力する。
【0132】
すると、X線診断装置100は、関心領域座標を記憶する(ステップS512)。例えば、関心領域座標判定部34は、ステップS511において決定された交点C_nを関心領域座標としてメモリ32に格納する。
【0133】
この結果、複数の交点が存在する場合であっても、正しく関心領域座標を選択することが可能になる。
【0134】
ところで、変形例2−3では、ボクセルV_nの色を変えて表示したが、例えば、各ボクセルV_nに通し番号のような識別子を順に割り付けて表示し、ユーザが、その番号を指定してもよい。そこで、変形例2−4では、複数の交点が存在する場合に、複数の交点に識別子を順に割り付けて表示し、ユーザによる選択を可能にする。
図13は、変形例2−4に係るX線診断装置による検査時の処理手順を示すフローチャートである。
【0135】
この結果、複数の交点が存在する場合で、かつ特徴に乏しい関心領域である場合であっても、関心領域座標を正しく選択することが可能になる。なお、
図13のステップS601〜S605は、
図8AのステップS101〜S105と同じであるので、それ以降の処理手順について記載する。
【0136】
まず、X線診断装置100は、中心軸線と三次元血管像データとの交点座標を算出する(ステップS606)。例えば、交点演算部31は、まず、機構状態監視部4から支持器9の現在状態情報を取得し、中心軸線を算出する。次に、交点演算部31は、表示画像変更部22から三次元血管像データを取得し、中心軸線上で画素値を持つ区間を算出する。そして、交点演算部31は、区間の中間点を算出し、交点とする。区間が多数存在する場合は、交点演算部31は、それぞれの区間ごとに中間点を算出し、交点C_nとする。
【0137】
次に、X線診断装置100は、各交点ごとに識別子を表示する(ステップS607)。例えば、関心領域座標判定部34は、交点領域演算部33から三次元血管像データと交点C_nとを読み出し、例えば通し番号Nを順に割り当て、表示部24に表示する。
【0138】
続いて、ユーザが、識別子により交点を選択する(ステップS608)。例えば、ユーザは、番号ボタンなどのようなユーザインタフェース6により、関心領域に対応する番号Nを関心領域座標判定部34に入力する。
【0139】
すると、X線診断装置100は、関心領域座標となる交点を決定し(ステップS609)、関心領域座標を記憶する(ステップS610)。例えば、関心領域座標判定部34は、ステップS608において指定された交点C_nを関心領域座標として決定し、メモリ32に格納する。
【0140】
この結果、複数の交点が存在する場合であっても、正しく関心領域座標を選択することが可能になる。
【0141】
[実施例2の効果]
上記してきたように、実施例2によれば、X線診断装置100において、まず、関心領域座標推定部30が、表示画像について指定された情報に基づいて、三次元空間における関心領域の位置を示す関心領域座標を推定する。次に、機構制御入力値算出部5が、関心領域座標推定部30によって推定された関心領域座標を用いて、支持器9や寝台10の制御に用いられる制御量を算出する。そして、機構制御部3が、機構制御入力値算出部5によって算出された制御量に従って、支持器9や寝台10を制御する。
【0142】
言い換えると、関心領域座標推定部30が、X線発生管の焦点と検出器面の略中心とを結ぶ線上に存在する三次元医用画像データの画素情報に基づいて、関心領域の位置を関心領域座標として推定する。また、機構制御入力値算出部5が、関心領域座標推定部30によって推定された関心領域座標を用いて、所定の機器の制御に用いられる制御量を算出する。また、機構制御部3が、機構制御入力値算出部5によって算出された制御量に従って、所定の機器を制御する。
【0143】
このように、実施例2に係るX線診断装置100は、操作者が支持器9の角度や位置を変化させた際に、関心領域が視野から外れないように支持器9や寝台10を制御する。このようなことから、操作者は、関心領域を常に視野の中心に捉えることができ、X線診断装置100を手動で調整しなければならない手間が省かれ、作業効率が向上する。ひいては、治療の本質とは関係のない撮影の時間が短くなる結果、被曝を低減することも可能になる。
【0144】
また、実施例2に係るX線診断装置100において、交点演算部31は、平面検出器8の受像面中心とX線発生管7aの焦点とアイソセンタとを結ぶ中心軸を算出し、該中心軸上に連続して存在する画素の集合体(所定範囲の画素値を有する画素の集合体)について中心点を算出することで、関心領域座標を推定する。言い換えると、交点演算部31は、所定範囲の画素値を有する画素の集合体として、X線発生管の焦点と検出器面の略中心とを結ぶ線上に連続して存在する画素の集合体の中心点を算出することで、関心領域座標を推定する。このように、関心領域座標を適切に推定することが可能になる。
【0145】
また、実施例2に係るX線診断装置100において、交点演算部31が、複数の交点を算出した場合には、交点領域演算部33が、交点から所定範囲内において画素値を有する領域(交点から所定範囲内に存在する画素であって所定範囲の画素値を有する画素で区分けされる領域)の体積を交点ごとに算出し、関心領域座標判定部34が、算出した体積の値が最大値となった交点を関心領域座標と推定する。このようなことから、複数の交点が存在する場合であっても、関心領域座標を正しく選択することが可能になる。
【0146】
また、実施例2に係るX線診断装置100において、交点演算部31が、複数の交点を算出した場合には、交点領域演算部33が、該中心軸上の平面検出器8側の端点と交点との距離を交点ごとに算出し、関心領域座標判定部34が、算出した距離の値が最小値となった交点を関心領域座標と推定する。このようなことから、複数の交点が存在する場合であっても、関心領域座標を正しく選択することが可能になる。
【0147】
また、実施例2に係るX線診断装置100において、交点演算部31が、複数の交点を算出した場合には、ユーザインタフェース6が、複数の交点の中から所定の交点を選択することを指示する選択指示を操作者から受け付ける。このようなことから、複数の交点が存在する場合で、関心領域の特徴が乏しい場合であっても、関心領域座標を正しく選択することが可能になる。
【0148】
また、実施例2に係るX線診断装置100において、関心領域座標推定部30は、推定した関心領域座標から、一定範囲内の領域にあり、所定範囲の画素値を有する画素を、それ以外の画素とは異なる色、パターン、輝度のうち少なくともいずれか一つで表示する。
【0149】
また、実施例2に係るX線診断装置100において、関心領域座標推定部30は、X線発生管の焦点と検出器面の略中心とを結ぶ線上に所定範囲の画素値を有する画素の集合体が存在しない場合には、該線上から一定距離範囲内に存在する画素の集合体であって画素値が所定範囲の画素の集合体の中心点を算出することで、前記関心領域座標を推定する。
【0150】
また、実施例2に係るX線診断装置100において、関心領域座標推定部30は、X線発生管の焦点と検出器面の略中心とを結ぶ線上に所定範囲の画素値を有する画素の集合体が複数存在する場合には、複数の前記画素の集合体それぞれの長さを算出し、算出したそれぞれの長さに基づいて関心領域座標を推定する。
【0151】
また、実施例2に係るX線診断装置100において、関心領域座標推定部30は、X線発生管の焦点と検出器面の略中心とを結ぶ線上に所定範囲の画素値を有する画素の集合体が複数存在する場合には、複数の前記画素の集合体それぞれについて、長さを算出し、中心点を中心とし、算出した長さの1/2を半径とする球領域内に存在する画素の集合体であって所定範囲の画素の集合体の総体積を算出し、算出した総体積を前記半径の3乗で除算した値を算出し、算出した値それぞれに基づいて関心領域座標を推定する。
【0152】
また、実施例2に係るX線診断装置100において、関心領域座標推定部30は、X線発生管の焦点と検出器面の略中心とを結ぶ線上に所定範囲の画素値を有する画素の集合体が複数存在する場合に、複数の集合体の中から一定範囲内の領域を、それぞれ他の集合体とは異なる色、パターン、輝度のうち少なくともいずれか一つで区別して表示する。また、実施例2に係るX線診断装置100において、ユーザインタフェース6は、区別して表示された情報の中から1つを選択する選択指示を受け付ける。
【実施例3】
【0153】
ところで、実施例2では、関心領域座標を支持器や寝台の制御に使用したが、第二の支持器を有するバイプレーン型のX線診断装置においては、関心領域座標を第二の支持器の初期の位置決め制御に使用してもよい。従来、治療時にバイプレーン型のX線診断装置を用いる場合、操作者は、X線診断装置を手動で調整しながら、被検体の関心領域を視野の中央に位置決めしなければならなかった。これに対し、実施例3によれば、手動による調整が不要になる。
【0154】
図14Aおよび14Bを用いて、実施例3に係るX線診断装置による処理手順を説明する。
図14Aは、実施例3に係るX線診断装置による検査時の処理手順を示すフローチャートであり、
図14Bは、実施例3に係るX線診断装置による治療時の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図14AのステップS701〜S707は、
図8AのステップS101〜S107と同じであるので、説明を割愛する。
【0155】
実施例3において、治療が開始されると、医師は、二方向から同時に観察を行うために、操作部1によって第二の支持器9−2のセット開始ボタンを押下する。
【0156】
すると、X線診断装置100は、
図14Bに示すように、第二支持器9−2のセットを開始する(ステップS801)。
【0157】
そして、X線診断装置100は、第二支持器9−2の回転中心と関心領域座標との距離Δを算出する(ステップS802)。例えば、機構制御入力値算出部5は、機構状態監視部4から第二支持器9−2の現在状態情報を取得し、回転中心座標を算出する。また、機構制御入力値算出部5は、メモリ32から関心領域座標を読み込む。そして、機構制御入力値算出部5は、関心領域座標から回転中心座標までの最短距離を算出する。また、機構制御入力値算出部5は、距離Δ=0とするための第二支持器9−2の制御量を算出する。
【0158】
続いて、X線診断装置100は、距離Δ=0となるように第二支持器9−2を移動する(ステップS803)。例えば、機構制御部3は、機構制御入力値算出部5から第二支持器9−2の制御量を読み込み、この制御量に従って、第二支持器9−2を移動する。
【0159】
すると、第二支持器9−2のセットは完了する(ステップS804)。
【0160】
こうして、医師は、第二支持器9−2を手動で調整しなければならない手間が省かれ、作業効率が向上し、ひいては、被検体Pに不要な被曝をさせることなく関心領域を視野中心に捉えるように第二支持器9−2をセットすることが出来るため、被曝低減効果が期待できる。
【実施例4】
【0161】
ところで、実施例2では、関心領域座標を支持器や寝台の制御に使用し、実施例3では、関心領域座標を第二支持器の初期の位置決め制御に使用したが、関心領域座標を絞りの制御に使用してもよい。従来、一度絞りを挿入した後に観察角度や位置を変更すると、関心領域に被ってしまい、手動で調整する手間がかかった。これに対し、実施例4によれば、手動による調整が不要になる。なお、実施例4では、実施例2のような支持器や寝台の制御が行われていないことを想定する。
【0162】
図15A〜16Dを用いて、実施例3に係るX線診断装置による処理手順を説明する。
図15Aは、実施例4に係るX線診断装置による検査時の処理手順を示すフローチャートであり、
図15Bは、実施例4に係るX線診断装置による治療時の処理手順を示すフローチャートである。また、
図16A〜16Dは、最近接距離を説明するための図である。なお、
図15AのステップS901〜S907は、
図8AのステップS101〜S107と同じであるので、説明を割愛する。
【0163】
不要被曝低減の観点から、関心領域以外の部分に絞りを挿入することがある。このため、実施例4において、治療が開始されると、医師は、絞りのセットを開始する(ステップS1001)。
【0164】
そして、医師は、絞りの開口範囲を指定し(ステップS1002)、続いて、絞り制御モードを選択する(ステップS1003)。なお、絞り制御モードが選択されない場合には(ステップS1003否定)、そのまま処理を終了する。
【0165】
一方、絞り制御モードが選択された場合には(ステップS1003肯定)、X線診断装置100は、関心領域座標を、絞りが存在する平面上に投影する(ステップS1004)。例えば、機構制御入力値算出部5は、機構状態監視部4から支持器9の現在状態情報を取得する。また、機構制御入力値算出部5は、メモリ32から関心領域座標を読み込む。そして、機構制御入力値算出部5は、X線発生管7aの焦点と関心領域座標とを結ぶ直線を求める。次に、機構制御入力値算出部5は、X線絞り器7bの現在状態情報を取得し、求めた直線と絞りが存在する平面との交点座標を求める(
図16Aを参照)。
【0166】
そして、X線診断装置100は、投影された点と絞りの最近接距離Δ_bを算出する(ステップS1005)。例えば、機構制御入力値算出部5は、交点座標と絞りの最近接距離Δ_bnを算出する。絞りが複数存在する場合には、
図16Bに示すように、それぞれについて算出する。
【0167】
医師が、観察角度や位置の変更のために支持器9を移動させ、支持器9は移動する(ステップS1006)。
【0168】
すると、X線診断装置100は、再び、関心領域座標を、絞りが存在する平面上に投影する(ステップS1007)。例えば、機構制御入力値算出部5は、機構状態監視部4から支持器9の現在状態情報を取得する。また、機構制御入力値算出部5は、メモリ32から関心領域座標を読み込む。そして、機構制御入力値算出部5は、X線発生管7aの焦点と関心領域座標とを結ぶ直線を求める。次に、機構制御入力値算出部5は、X線絞り器7bの現在状態情報を取得し、求めた直線と絞りが存在する平面との交点座標を求める(
図16Cを参照)。
【0169】
そして、X線診断装置100は、投影された点と絞りの最近接距離Δ_aを算出する(ステップS1008)。例えば、機構制御入力値算出部5は、交点座標と絞りの最近接距離Δ_anを算出する。絞りが複数存在する場合には、
図16Dに示すように、それぞれについて算出する。
【0170】
続いて、X線診断装置100は、最近接距離Δ_an=Δ_bnとなるようにX線絞り器7bを移動する(ステップS1009)。例えば、機構制御入力値算出部5が、最近接距離Δ_an=Δ_bnとするためのX線絞り器7bの制御量を算出し、機構制御部3は、機構制御入力値算出部5からX線絞り器7bの制御量を読み込み、この制御量に従って、X線絞り器7bを移動する。
【0171】
こうして、X線診断装置100は、絞り制御モードが終了されるまで(ステップS1003否定)、ステップS1003からステップS1010を繰り返す。
【0172】
なお、実施例3に係るX線診断装置100は、所定の機器として補償フィルターの制御に用いられる制御量を算出し、算出した制御量に従って補償フィルターを制御してもよい。また、実施例3に係るX線診断装置100は、関心領域座標と解剖学的に一致するX線検出器上の点を同定し、同定した点から一定範囲の領域とそれ以外の領域でX線入射強度を変化させるようにX線絞り器および/または補償フィルターを制御してもよい。なお、この一定範囲は、予め決められた値または事前に使用していたX線強度分布を再現する範囲である。
【0173】
こうして、医師は、観察角度を変更した際に発生する絞り位置の調整が不要になり、手技時間の短縮が期待できる。
【実施例5】
【0174】
ところで、実施例2〜4では、関心領域座標をX線診断装置の制御に使用したが、関心領域座標を画像演算・記憶部による表示の制御に使用してもよい。従来、画像演算・記憶部が三次元画像データを表示部に表示しても、関心領域を表示するとは限らなかった。このため、操作者は、三次元画像データの中から関心領域を手動で選択し、さらに関心領域をより細かく観察するために、関心領域を拡大したり回転したりし、手間がかかった。これに対し、実施例5によれば、手動による選択や調整が不要になる。
【0175】
図17Aおよび17Bを用いて、実施例5に係るX線診断装置による処理手順を説明する。
図17Aは、実施例5に係るX線診断装置による検査時の処理手順を示すフローチャートであり、
図17Bは、実施例5に係るX線診断装置による治療時の処理手順を示すフローチャートである。
図17AのステップS1101〜S1107は、
図8AのステップS101〜S107と同じであるので、説明を割愛する。
【0176】
X線診断装置100は、操作者による指示に従って、検査時に取得した三次元血管像データを表示部24に表示する(ステップS1201)。
【0177】
次に、X線診断装置100は、関心領域座標から一定範囲内で画素値を有するボクセルVを選択する(ステップS1202)。例えば、表示画像変更部22は、画像データベース11から三次元血管像データを取得し、また、メモリ32から関心領域座標を読み込み、予め操作者によって設定された範囲Rにおいて画素値を有するボクセルVを選択する。ここで、範囲Rは、例えば30mmを標準とする。
【0178】
そして、X線診断装置100は、ボクセルVのみを拡大して表示する(ステップS1203)。例えば、表示画像作成部23は、ステップS1202において選択されたボクセルVのみを拡大して表示部24に表示する。
【0179】
続いて、X線診断装置100は、範囲Rの修正を受け付けたか否かを判定する(ステップS1204)。例えば、表示画像変更部22は、レバーのようなユーザインタフェース6を用いて、範囲Rの修正を指示する修正信号を操作者から受け付ける。
【0180】
受け付けた場合には(ステップS1204肯定)、X線診断装置100は、再び、受け付けた修正信号に応じて範囲Rを修正し、ボクセルVを再選択し(ステップS1202)、再選択したボクセルVのみを拡大して表示部24に表示する。
【0181】
受け付けていない場合には(ステップS1204否定)、X線診断装置100は、回転方向の指定を受け付ける(ステップS1205)。例えば、表示画像変更部22は、
図14に示すように、レバーのような画面上のユーザインタフェース6により、回転方向の指定を受け付ける。なお、回転方向の指定は、例えば標準で8方向選択できるものとする。
【0182】
そして、X線診断装置100は、画像を拡大・回転表示する(ステップS1206)。例えば、表示画像変更部22は、ユーザインタフェース6から回転方向信号を受け付け、予め操作者が指定した角度ごとの回転画像データを生成する。すると、表示画像作成部23が、画像データを表示画像変更部22から受け取り、表示部24に表示する。
【0183】
このようなことから、操作者は、簡便な操作で関心領域の拡大・回転表示ができるため手技時間の短縮が期待できる。
【0184】
なお、実施例5においては、画像データとしてX線診断装置によって取得された画像データを例に挙げて説明したが、これに限られるものではなく、超音波診断装置、CR(Computed Radiography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置など、各種モダリティによって取得された画像データについても同様に適用することができる。すなわち、例えばモダリティが、ネットワークを介して画像表示システム(PACS(Picture Archiving and Communication System)など)に接続されていたとすると、モダリティは、該ネットワークに接続する医用画像表示装置に、取得した画像データを送信することができる。すると、医用画像表示装置は、モダリティから受信した三次元画像データを表示部に表示することができる。
【0185】
したがって、例えばこれらのモダリティが、関心領域座標を推定し、関心領域座標とともに画像データを医用画像表示装置に送信し、医用画像表示装置が、上記した画像演算・記憶部20に対応する各部を備えることで、医用画像表示装置を操作する操作者は、簡便な操作で関心領域の拡大・回転表示ができ、手技時間の短縮が期待できる。あるいは、これらのモダリティが機構状態情報とともに画像データを医用画像表示装置に送信し、医用画像表示装置で関心領域座標の推定も行うようにしてもよい。
【実施例6】
【0186】
ところで、実施例5では、画像データの拡大・回転表示を制御したが、視認性を高めるために、関心領域だけ色を変えて表示してもよい。実施例6によれば、関心領域の視認性が向上し確認が容易になるため、手技を効率的にし、手技時間の短縮が期待できる。
【0187】
図19Aおよび19Bを用いて、実施例6に係るX線診断装置による処理手順を説明する。
図19Aは、実施例6に係るX線診断装置による検査時の処理手順を示すフローチャートであり、
図19Bは、実施例6に係るX線診断装置による治療時の処理手順を示すフローチャートである。
図19AのステップS1301〜S1307は、
図8AのステップS101〜S107と同じであるので、説明を割愛する。
【0188】
X線診断装置100は、操作者による指示に従って、検査時に取得した三次元血管像データを表示部24に表示する(ステップS1401)。
【0189】
次に、X線診断装置100は、関心領域座標から一定範囲内で画素値を有するボクセルVを選択する(ステップS1402)。例えば、表示画像変更部22は、画像データベース11から三次元血管像データを取得し、また、メモリ32から関心領域座標を読み込み、予め操作者によって設定された範囲Rにおいて画素値を有するボクセルVを選択する。ここで、範囲Rは、例えば30mmを標準とする。
【0190】
そして、X線診断装置100は、ボクセルVを、他のボクセルとは異なる視認性の良い色で表示する(ステップS1403)。例えば、表示画像作成部23は、ステップS1402において選択されたボクセルVを、他のボクセルとは異なる視認性の良い色で、表示部24に表示する。
【0191】
続いて、X線診断装置100は、範囲Rの修正を受け付けたか否かを判定する(ステップS1404)。例えば、表示画像変更部22は、レバーのようなユーザインタフェース6を用いて、範囲Rの修正を指示する修正信号を操作者から受け付ける。
【0192】
受け付けた場合には(ステップS1404肯定)、X線診断装置100は、再び、受け付けた修正信号に応じて範囲Rを修正し、ボクセルVを再選択し(ステップS1402)、再選択したボクセルVを視認性の良い色で表示部24に表示する。
【0193】
受け付けていない場合には(ステップS1404否定)、X線診断装置100は、そのまま視認性の良い色でボクセルVを表示部24に表示する(ステップS1405)。
【0194】
このようなことから、関心領域の視認性が向上し確認が容易になるため、手技を効率的にし、手技時間の短縮が期待できる。
【実施例7】
【0195】
さて、これまで本発明の実施例1〜6を説明してきた。これらの実施例は、三次元空間の医用画像データから二次元空間の表示画像を仮想的に生成し、仮想的に生成された表示画像(以下「仮想透視画像」)について指定された情報に基づいて関心領域座標を推定し、推定した関心領域座標を用いて機器を制御するものであった。
【0196】
例えば、実施例1では、ある方向から撮影位置の指定(観察角度や位置の決定を示す確定ボタンの押下など)を受け付けると、撮影位置の指定を受け付けた際に生成されていた仮想透視画像から中心軸線(X線発生管7aの焦点とアイソセンタとを結ぶ線)を特定し、三次元空間の医用画像データにおける中心軸線上で所定範囲の画素値を持つ区間の中間点を、関心領域座標であると推定した。
【0197】
この点、以下に説明する実施例7は、関心領域座標を推定する手法(関心領域座標推定部30による推定)がこれまでの実施例と異なる。具体的には、実施例7に係るX線診断装置100は、これまでの実施例と同様、三次元空間の医用画像データから仮想透視画像を生成するが、少なくとも2方向の異なる方向から撮影位置の指定を受け付ける。そして、X線診断装置100は、少なくとも2方向受け付けられた撮影位置の指定に基づいて関心領域座標を推定する。例えば、X線診断装置100は、撮影位置の指定を受け付けた際に生成されていた少なくとも2つの仮想透視画像から、少なくとも2つの中心軸線を特定し、特定した少なくとも2つの中心軸線に基づいて、関心領域座標を推定する。
【0198】
まず、
図20を用いて、実施例7に係るX線診断装置100による処理手順を説明する。
図20は、実施例7に係るX線診断装置100による処理手順を示すフローチャートである。なお、実施例7に係るX線診断装置100による処理手順は、必ずしも、「検査時の処理手順」と「治療時の処理手順」とに明確に区分けされるものではない。すなわち、実施例7においては、少なくとも2方向の異なる方向から撮影位置の指定を受け付けることになる。このため、初回の指定は「検査時の処理手順」で受け付けられることになるとしても、2回目以降の指定が「検査時の処理手順」もしくは「治療時の処理手順」のいずれで受け付けられるかは、具体的な事例によって異なると考えられる。なお、以下では、3方向から撮影位置の指定を受け付けた場合に関心領域座標の推定を行うように予め設定されているとともに、3回の指定全てが「検査時の処理手順」で受け付けられる事例を想定するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0199】
図20に示すように、まず、X線診断装置100は、実施例2と同様、被検体Pの頭部を回転撮影し、三次元血管像データを取得する(ステップS1501)。次に、X線診断装置100は、実施例2と同様、取得した三次元血管像データから仮想透視画像を生成し、生成した仮想透視画像を表示部24に表示する(ステップS1502)。
【0200】
続いて、医師が、支持器9や寝台10を移動する(ステップS1503)。例えば、医師は、動脈瘤の形状や位置などの状態をチェックした後、関心領域が視野の中心(受像面中心)となるように、操作部1を用いて、支持器9や寝台10を移動する。
【0201】
すると、X線診断装置100は、実施例1と同様、仮想透視画像の表示を変更する(ステップS1504)。すなわち、X線診断装置100は、医師の操作に従って仮想的に三次元血管像データを生成し、仮想的に生成された三次元血管像データから二次元空間の仮想透視画像を生成して表示部24に表示する。
【0202】
こうして、医師は、観察角度や位置を決定すると、操作部1にある確定ボタンを押下する(ステップS1505)。この時、実施例7に係るX線診断装置100は、ある1つの方向について、撮影位置の指定を受け付けたことになる。
【0203】
すると、X線診断装置100は、撮影位置の指定を受け付けた際に生成されていた仮想透視画像から、中心軸線を算出する(ステップS1506)。例えば、X線診断装置100は、機構状態監視部4から支持器9等の現在状態情報を取得し、中心軸線を算出する。
【0204】
さて、実施例7において、X線診断装置100は、この段階では関心領域座標の推定を行わず、引き続き撮影位置の指定を待機する。具体的には、X線診断装置100は、3方向から撮影位置の指定を受け付けたか否かを判定し(ステップS1507)、受け付けていない場合には(ステップS1507否定)、再び、ステップS1503に戻る。
【0205】
すなわち、医師は、検査もしくは治療において、再び、支持器9や寝台10を移動する(ステップS1503)。すると、X線診断装置100は、仮想透視画像の表示を変更し(ステップS1504)、医師は、観察角度や位置を決定すると、操作部1にある確定ボタンを押下する(ステップS1505)。この時、実施例6に係るX線診断装置100は、2つ目の方向について、撮影位置の指定を受け付けたことになる。そして、X線診断装置100は、撮影位置の指定を受け付けた際に生成されていた仮想透視画像から、2つの目の方向について、中心軸線を算出する(ステップS1506)。
【0206】
このように、3方向から撮影位置の指定を受け付けるまで、X線診断装置100は、ステップS1503〜S1506の処理を繰り返し、3方向の異なる方向から撮影位置の指定を受け付け、3つの仮想透視画像から3つの中心軸線を算出する。
【0207】
続いて、3方向分について撮影位置の指定が完了すると(ステップS1507肯定)、X線診断装置100は、算出した3つの中心軸線に基づいて、関心領域座標を推定し(ステップS1508)、関心領域座標を記憶する(ステップS1509)。ここで、
図21および
図22を用いて、実施例7における関心領域座標の推定を説明する。
図21および
図22は、実施例7における関心領域座標の推定を説明するための図である。
【0208】
図21に示すように、平面検出器8の受像面中心とX線発生管7aの焦点とを結ぶ中心軸線上に、アイソセンタ(支持器9の回転中心)がある。言い換えると、中心軸線は、X線発生管7aの焦点とアイソセンタとを結ぶ線である。また、
図21は、医師が、関心領域が視野の中心となるように支持器9や寝台10を3回移動した場合の中心軸線それぞれを示す。
【0209】
ここで、医師は、関心領域が視野の中心となるように支持器9や寝台10を移動するので、生成された仮想透視画像のほぼ中心に関心領域が位置づけられるはずである。もっとも、仮想透視画像は二次元空間の画像である。このため、このような医師の操作によっても、関心領域をアイソセンタに一致させることは難しい。言い換えると、関心領域がアイソセンタに一致していれば、撮影方向を変更したとしても、関心領域は常に視野の中心にあるはずだが、多くの場合、関心領域がアイソセンタに一致しないので、撮影方向を変更すると、関心領域が視野から外れてしまう。関心領域が視野から外れてしまうので、医師は、再び、関心領域が視野の中心となるように支持器9や寝台10を移動する。
【0210】
ところで、支持器9の直交3軸の回転軸はアイソセンタで交差するように設けられているので、支持器9を回転させることにより撮影方向を変更したとしても、アイソセンタの位置は常に一致するはずである(アイソセンタは不動点である)。しかしながら、
図21においては、アイソセンタの位置が移動している。この点について説明する。医師が支持器9や寝台10を移動すると、支持器9と寝台10との相対的な位置関係は変動する。このため、寝台10の座標系を基準にして支持器9の座標を計算すると、支持器9の座標は、寝台10の移動に伴って変動し、結果として、アイソセンタの位置も移動することになる。ここで、寝台10の座標系とは被検体Pの座標系であり、関心領域の座標系である。このようなことから、
図21においては、アイソセンタの位置が移動する一方で、関心領域の位置が不動なものとして示されている。
【0211】
さて、実施例7においては、関心領域が少なくとも中心軸線上には存在するはずであることを用いて、算出した少なくとも2つの中心軸線(
図21においては3つの中心軸線)に基づいて、関心領域座標を推定する。例えば、X線診断装置100は、中心軸線同士が交差していなければ、
図22に示すように、中心軸線同士が最も接近する両中心軸線上の点(中心軸線同士の距離が最短距離となる点)をそれぞれ求め、その点同士を結んだ線(3つ以上の中心軸線であれば面)上の中間点を、関心領域座標の推定に用いる。例えば、
図22の例では、3つの中心軸線がいずれも交差していないので、面上の中心点を関心領域座標と推定する。
【0212】
また、X線診断装置100は、中心軸線同士が交差していれば、その交差点を、関心領域座標の推定に用いる。例えば、3つの中心軸線のうち、2つの中心軸線が交差しており、他の1つの中心軸線がいずれの中心軸線とも交差していないとする。この場合には、他の1つの中心軸線上において交差点に最も接近する点を特定し、特定した点と交差点とを結んだ線上の中間点を、関心領域座標と推定する。なお、ここでいう中心軸線は、上述したように、寝台10の座標系から計算されるものである。
【0213】
なお、本発明は、
図20を用いて説明した処理手順に限られるものではない。例えば、ステップS1506において行った中心軸線の算出処理は、3方向分について撮影位置の指定が完了した後にまとめて行ってもよい。また、例えば、2回目以降の撮影位置の指定は、仮想透視画像を用いた撮影位置の指定ではなく、実際の透視画像を用いた撮影位置の指定であってもよい。
【0214】
[実施例7の効果]
上述したように、実施例7に係るX線診断装置100は、少なくとも2方向の異なる方向から撮影位置の指定を受け付ける。また、X線診断装置100は、少なくとも2つの中心軸線を算出し、算出した少なくとも2つの中心軸線に基づいて、関心領域座標を推定する。
【0215】
ここで、撮影位置の指定は、例えば医師にとって、通常のワークフローの中で行われる自然な手技である。このため、実施例7によれば、例えば、医師は、単に通常のワークフローを行うだけで関心領域座標の推定に必要な情報を収集することができ、作業効率を向上することが可能になる。すなわち、例えば、医師は、専用のワークステーションに表示された画像に対して関心領域座標の推定に必要な情報を入力する、といった特別の操作を行う必要もない。この結果、例えば、インターベンション治療が医師一人によって行われる場合にも、対応することが可能になる。また、関心領域座標の推定は、少なくとも2つの中心軸線に基づいて行われる。このため、実施例7によれば、関心領域座標の推定を精度良く行うことが可能になる。
【実施例8】
【0216】
続いて、実施例8に係るX線診断装置100を説明する。実施例8に係るX線診断装置100は、実施例7と同様、少なくとも2方向の異なる方向から撮影位置の指定を受け付け、少なくとも2つの中心軸線に基づいて関心領域座標を推定する。もっとも、実施例8に係るX線診断装置100は、一度関心領域座標の推定を行った後、仮想透視画像ではなく実際の透視画像を用いて治療が行われている際に、同じ方向から撮影位置の指定を受け付けた場合には、最新の中心軸線に基づいて関心領域座標の値を更新する点が異なる。
【0217】
例えば、頭部動脈瘤のインターベンション治療であるコイル塞栓術においては、予め収集された三次元血管像データから仮想透視画像が生成されることになるが、この三次元血管像データは、カテーテルなどが挿入されていない状態(もしくは血管の起始部にある状態など)で収集されたものである。一方、例えばカテーテルを動脈瘤近辺まで挿入すると、カテーテルが血管に沿って屈曲する力と元に戻ろうとする力とが発生し、血管の屈曲が少なくなるように血管が変形するなどしてしまう。すると、血管の位置のみならず動脈瘤の位置が三次元血管像データ収集時の位置からずれることになる。
【0218】
そこで、実施例8に係るX線診断装置100は、一度関心領域座標の推定を行った後、仮想透視画像ではなく実際の透視画像を用いて治療が行われている際に、例えば、医師によって確定ボタンが押下されると、同じ方向から撮影位置の指定を受け付けた場合であるか否かを判定する。例えば、X線診断装置100は、関心領域座標の推定に用いた支持器9等の現在状態情報を記憶しておき、この現在状態情報と、現に機構状態監視部4から取得された支持器9等の現在状態情報とを比較し、同じ方向(観察角度など)から撮影位置の指定を受け付けた場合であるか否かを判定する。
【0219】
そして、X線診断装置100は、同じ方向(観察角度など)から撮影位置の指定を受け付けた場合であると判定すると、現に機構状態監視部4から取得された支持器9等の現在状態情報を用いて中心軸線を算出する。続いて、X線診断装置100は、算出した中心軸と、他の方向については既に算出済みの中心軸とに基づいて、再び、関心領域座標を推定する。この時、ある方向についての中心軸線が更新されているので、推定される関心領域座標も異なる値となるはずである。このため、X線診断装置100は、新たに推定した関心領域座標の値を記憶部に格納することで、関心領域座標の値を更新する。
【実施例9】
【0220】
[他の実施例]
さて、これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0221】
上記した実施例1〜8においては、医用画像が、三次元血管像データであることを想定したが、本発明はこれに限られるものではなく、三次元画像データに限られることもなければ、血管像データに限られることもない。関心領域が描出される医用画像データであれば、二次元画像データにも同様に適用することができる。
【0222】
また、これまで、本発明の実施例1〜6や、実施例7および8を説明してきたが、これらの実施例を組み合わせることも可能である。例えば、医師が、検査時などに初めて支持器9や寝台10を移動した場合には、X線診断装置100は、実施例2の手法を用いて、仮想透視画像について指定された情報に基づいて関心領域座標を推定し、推定した関心領域座標を用いて機器を制御する。その後、例えば動脈瘤が移動するなどしたために、機器が制御されても関心領域が視野からはずれてしまうようになった場合には、再び、医師が、支持器9や寝台10を移動することになる。このような場合には、X線診断装置100は、実施例7の手法を用いて、少なくとも2方向の異なる方向から撮影位置の指定を受け付け、少なくとも2つの中心軸線に基づいて、関心領域座標を推定する。
【0223】
このように、X線診断装置100は、例えば、初回の撮影位置の指定を受け付けた場合にも、関心領域座標の推定を行い、推定した関心領域座標に基づいて機器の制御を行う。また、X線診断装置100は、再び、操作者によって支持器9や寝台10が操作されたことを検知すると、今度は、少なくとも2つの中心軸線を算出し、算出した少なくとも2つの中心軸線に基づいて、関心領域座標を推定する。なお、X線診断装置100は、関心領域座標の推定に必要な情報を、適宜、記憶部に記憶しておく必要がある。
【0224】
また、X線診断装置100は、実施例7の手法を用いて関心領域座標を推定した上で、その後、バイプレーン型の第二支持器の初期設定に用いられる制御量を算出し、第二支持器を制御してもよい。また、X線診断装置100は、実施例7の手法を用いて関心領域座標を推定した上で、その後、X線絞り器の制御に用いられる制御量を算出し、X線絞り器を制御してもよい。また、X線診断装置100は、実施例7の手法を用いて関心領域座標を推定した上で、その後、医用画像を表示する表示装置の制御に用いられる制御量を算出し、表示装置を制御してもよい。
【0225】
上記した実施例1〜8において説明した各処理のうち、自動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的におこなうこともでき、あるいは、手動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的におこなうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0226】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示(例えば、
図2など)のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。