特許第5729920号(P5729920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5729920
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】通気壁用土台構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/64 20060101AFI20150514BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20150514BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   E04B1/64 C
   E04B1/70 D
   E04F13/08 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-111147(P2010-111147)
(22)【出願日】2010年5月13日
(65)【公開番号】特開2011-236704(P2011-236704A)
(43)【公開日】2011年11月24日
【審査請求日】2013年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230607
【氏名又は名称】日本化学産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593202069
【氏名又は名称】北恵株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】萩原 崇
(72)【発明者】
【氏名】大塚 裕史
(72)【発明者】
【氏名】三浦 輝夫
【審査官】 仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−61049(JP,A)
【文献】 特開2002−61306(JP,A)
【文献】 特開2001−123546(JP,A)
【文献】 米国特許第6843032(US,B2)
【文献】 特開平11−303233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/64
E04B 1/70
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁下地に縦胴縁が固定され、該縦胴縁に外壁材が固定されて、前記壁下地の表面と前記外壁材の裏面との間に通気空間が形成された通気壁用土台水切り材を備えた通気壁用土台構造であって、
前記通気壁用土台水切り材は、
建物の壁下地に取り付けられる壁取付片と、
前記壁取付片の下部から建物の外側に向かって略水平に折曲され、内部通気穴を有する繋ぎ片と、
前記繋ぎ片の端部から前記壁取付片との間に前記縦胴縁が挿入できる空間分だけ隔てて起立され、前記縦胴縁に固定される縦胴縁取付片と、
前記縦胴縁取付片の上部に形成され、前記外壁材の下部を載置するスタータ片と、
前記スタータ片の先端から前記縦胴縁取付片に沿って折り返した折り返し片と
前記折り返し片の終端部から所定の水勾配を有して建物の外側に向かって折曲される傾斜片と、
前記傾斜片の端部から垂下する水切り片と、
前記水切り片の下部から建物の内側に向かって折曲され、外部通気穴を有する底片と、
を有して、一体成形され、
前記壁取付片の下部と、前記底片との間に開口部を有し、
前記通気壁用土台水切り材の前記壁取付片を建物の壁下地に固定し、
前記通気壁用土台水切り材の前記壁取付片と前記繋ぎ片と前記縦胴縁取付片とにより形成された空間内に前記縦胴縁の下端部を挿入すると共に、前記折り返し片と、前記縦胴縁取付片と、前記縦胴縁と、前記壁取付片とを一体的に建物の壁下地に固定し、
前記通気壁用土台水切り材の前記壁取付片の下部と前記底片との間に設けた開口部を介して建物の床下に通気が出来るように構成したことを特徴とする通気壁用土台構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁下地に縦胴縁が固定され、該縦胴縁に外壁材が固定されて、前記壁下地の表面と前記外壁材の裏面との間に通気空間が形成された通気壁用土台水切り材を備えた通気壁用土台構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、土台水切りから建物の壁体内或いは床下に通気を取り入れる技術や土台水切りに外壁材の1段目を装着するスタータを付加した技術が例えば特許文献1〜5により提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平05−043825号公報
【特許文献2】実用新案登録第3129221号公報
【特許文献3】特開平10−046687号公報
【特許文献4】特開2004−156302号公報
【特許文献5】特開平08−184157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2の技術では、土台水切りと、外壁材用スタータ金具とが別部材で構成されるため取付作業が面倒であった。また、特許文献3、4の技術では土台水切りと、外壁材用スタータとが一部材で構成されるため取付作業が容易ではあるが、縦胴縁の外側に土台水切り材が固定される構成とする点では、壁下地の表面と外壁材の裏面との間で縦胴縁により構成される通気空間内に侵入した雨水の排出に考慮すると、土台水切りの立ち上がり固定部を一般に防水層とする縦胴縁と壁下地表面との間に取り付けた方が好ましく、このような構成とすると、壁下地表面に固定される土台水切り材の固定部と、外壁材用スタータとの離間距離が大きくなり外壁材の下部を支持するスタータの強度が低下してしまうという問題があった。また、特許文献5の技術では外壁材用スタータを有さず、胴縁の裏面側に土台水切り部材を設けたり、胴縁の表裏面の両側を挟み込んだ土台水切り部材を設けたりしているが、胴縁の表裏面の両側を挟み込んだ土台水切り部材では形状が袋状になってしまうためベンダー加工による成形、或いはロールフォーミング成形の場合等のプレスによる切断が困難となり特殊な加工技術を要するといった問題があった。
【0005】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、防水性に優れ、強度を確保出来、製作容易な通気壁用土台水切り材を備えた通気壁用土台構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明に係る通気壁用土台構造は、建物の壁下地に縦胴縁が固定され、該縦胴縁に外壁材が固定されて、前記壁下地の表面と前記外壁材の裏面との間に通気空間が形成された通気壁用土台水切り材を備えた通気壁用土台構造であって、前記通気壁用土台水切り材は、建物の壁下地に取り付けられる壁取付片と、前記壁取付片の下部から建物の外側に向かって略水平に折曲され、内部通気穴を有する繋ぎ片と、前記繋ぎ片の端部から前記壁取付片との間に前記縦胴縁が挿入できる空間分だけ隔てて起立され、前記縦胴縁に固定される縦胴縁取付片と、前記縦胴縁取付片の上部に形成され、前記外壁材の下部を載置するスタータ片と、前記スタータ片の先端から前記縦胴縁取付片に沿って折り返した折り返し片と、前記折り返し片の終端部から所定の水勾配を有して建物の外側に向かって折曲される傾斜片と、前記傾斜片の端部から垂下する水切り片と、前記水切り片の下部から建物の内側に向かって折曲され、外部通気穴を有する底片と、を有して、一体成形され、前記壁取付片の下部と、前記底片との間に開口部を有し、前記通気壁用土台水切り材の前記壁取付片を建物の壁下地に固定し、前記通気壁用土台水切り材の前記壁取付片と前記繋ぎ片と前記縦胴縁取付片とにより形成された空間内に前記縦胴縁の下端部を挿入すると共に、前記折り返し片と、前記縦胴縁取付片と、前記縦胴縁と、前記壁取付片とを一体的に建物の壁下地に固定し、前記通気壁用土台水切り材の前記壁取付片の下部と前記底片との間に設けた開口部を介して建物の床下に通気が出来るように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る通気壁用土台構造に使用する通気壁用土台水切り材は、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウム等の1枚の金属板からベンダー加工、ロールフォーミング等により容易に成形出来る。繋ぎ片に設けられる内部通気穴と、底片に設けられる外部通気穴は切り板の状態で穴開け加工をすることにより容易に製作出来る。また、縦胴縁が挿入出来る空間と、床下に通気が出来るように開口させた開口部との2箇所の開放形状を有するため、全体の形状自体を極端な袋形状とすることを避けることが出来、ベンダー加工、或いはロールフォーミング成形の場合等のプレスによる切断が容易となる。壁取付片と縦胴縁取付片との間に縦胴縁の下端部を挿入させ、繋ぎ片からなる水切り自体を一般に防水層となる縦胴縁の下に取り付けることが出来るので、壁下地の表面と外壁材の裏面との間で縦胴縁により構成される通気空間内に侵入した雨水を繋ぎ片により容易に排水させることが出来る。また、スタータ片の直下の胴縁取付片を建物躯体に固定することが出来、スタータ片と胴縁取付片とが折り返し片により二重構造とされているためスタータ片の強度を向上させることが出来る。
【0008】
本発明に係る通気壁用土台構造によれば、通気壁用土台水切り材の壁取付片を建物の壁下地に釘やビス等の固定具により固定し、通気壁用土台水切り材の壁取付片と繋ぎ片と縦胴縁取付片とにより形成された空間内に縦胴縁の下端部を挿入し、建物の外側から折り返し片と、縦胴縁取付片と、縦胴縁と、壁取付片とを一体的に建物の壁下地に釘やビス等の固定具により固定する。最下段となる1段目の外壁材の下部をスタータ片に載置して装着し、順次葺成して外壁材を縦胴縁に固定する。壁下地の表面と外壁材の裏面との間で縦胴縁により構成される通気空間内に侵入した雨水は繋ぎ片により一旦受けて内部通気穴から底片に排水され、更に外部通気穴から外部に排水される。通気壁用土台水切り材の底片に設けた外部通気穴と、壁取付片の下部と該底片との間に設けた開口部とを介して建物の床下に通気が出来、更に底片に設けた外部通気穴と、繋ぎ片に設けた内部通気穴を介して、壁下地の表面と外壁材の裏面との間で縦胴縁により構成される通気空間内に通気出来る。基礎表面にモルタル仕上げを行う場合には、通気壁用土台水切り材の底片を定規としてモルタル上面の仕上げを容易に行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る通気壁用土台水切り材を備えた通気壁用土台構造を示す断面説明図である。
図2】(a)は本発明に係る通気壁用土台構造に使用される通気壁用土台水切り材の構成を示す斜視説明図、(b)は本発明に係る通気壁用土台構造に使用される通気壁用土台水切り材の構成を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び図2により本発明に係る通気壁用土台水切り材を備えた通気壁用土台構造の一実施形態を具体的に説明する。図1及び図2において、1は建物の壁下地2に縦胴縁3が固定され、該縦胴縁3に外壁材4が固定されて、該壁下地2の表面と外壁材4の裏面との間に通気空間5が形成された通気壁用土台水切り材である。
【0011】
土台水切り材1は、建物の壁下地2に釘やビス等の固定具6により取り付けられる壁取付片1aと、該壁取付片1aの下部から建物の外側(図1の左側)に向かって略水平に折曲され、内部通気穴1b1を有する繋ぎ片1bと、該繋ぎ片1bの端部から壁取付片1aとの間に縦胴縁3が挿入出来る空間分だけ隔てて起立され、該縦胴縁3に固定される縦胴縁取付片1cと、該縦胴縁取付片1bの上部に形成され、外壁材4の下部を載置するスタータ片1dと、該スタータ片1dの先端から縦胴縁取付片1cに沿って折り返した折り返し片1eと、該折り返し片1eの終端部から所定の水勾配を有して建物の外側(図1の左側)に向かって折曲される傾斜片1fと、該傾斜片1fの端部から垂下する水切り片1gと、該水切り片1gの下部から建物の内側(図1の右側)に向かって折曲され、外部通気穴1h1を有する底片1hとを有し、これらの各片1a〜1hは一体成形される。壁取付片1aの下部と、底片1hとの間には建物の内側(図1の右側)に開口部7を有する。
【0012】
土台水切り材1は、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウム等の1枚の金属板からベンダー加工、ロールフォーミング等により容易に成形出来る。繋ぎ片1bに設けられる内部通気穴1b1と、底片1hに設けられる外部通気穴1h1は切り板の状態で穴開け加工をすることにより容易に製作出来る。
【0013】
土台水切り材1は、縦胴縁3が挿入出来る空間と、床下に通気が出来るように開口させた開口部7との2箇所の開放形状を有するため、全体の形状自体を極端な袋形状とすることを避けることが出来、ベンダー加工、或いはロールフォーミング成形の場合等のプレスによる切断が容易となる。
【0014】
上記土台水切り材1を備えた通気壁用土台構造としては、図1に示すように、土台水切り材1の壁取付片1aを建物の壁下地2に釘やビス等の固定具6により固定する。壁下地2の表面には土台水切り材1の壁取付片1aにオーバーラップするように防水シート11が敷設される。そして、土台水切り材1の壁取付片1aと繋ぎ片1bと縦胴縁取付片1cとにより形成された空間内に縦胴縁3の下端部を挿入する。そして、建物の外側(図1の左側)から折り返し片1eと、縦胴縁取付片1cと、縦胴縁3と、壁取付片1aとを一体的に建物の壁下地2に釘やビス等の固定具6により固定し、土台水切り材1の底片1hに設けた外部通気穴1h1と、土台水切り材1の壁取付片1aの下部と底片1hとの間に設けた開口部7と、建物の基礎8に設けられた換気穴9とを介して建物の床下に通気が出来るように構成される。
【0015】
最下段となる1段目の外壁材4の下部をスタータ片1dに載置して装着し、該外壁材4を縦胴縁3に固定する。順次上段に外壁材4を葺成して壁下地2の全面に亘って外壁材4を縦胴縁3に固定する。
【0016】
尚、上段の外壁材4の固定方法については、縦胴縁3を省略して壁下地2に図示しない固定金具を介して上段の外壁材4を固定することでも良いし、縦胴縁3に図示しない固定金具を介して上段の外壁材4を固定することでも良い。
【0017】
本実施形態では横張りの外壁材4の下部を載置するスタータ片1dの一例として建物の外側(図1の左側)に向かって水平に延長された水平片と該水平片の端部から所定の傾斜角度で上方に折曲された傾斜片とを有して構成した場合の一例を示すが、縦張りの外壁材4の下部を載置するスタータ片1dとしては建物の外側(図1の左側)に向かって水平に延長された水平片のみを有する構成としても良い。
【0018】
土台水切り材1は、壁取付片1aと縦胴縁取付片1cとの間に縦胴縁3の下端部を挿入させ、繋ぎ片1bからなる水切り自体を一般に防水層となる縦胴縁3の下に取り付けることが出来るので、壁下地2の表面と外壁材4の裏面との間で縦胴縁3により構成される通気空間5内に侵入した雨水を繋ぎ片1bにより容易に排水させることが出来る。また、スタータ片1dの直下の胴縁取付片1cを建物躯体に固定することが出来、スタータ片1dと胴縁取付片1cとが折り返し片1eにより二重構造とされているためスタータ片1dの強度を向上させることが出来る。
【0019】
壁下地2の表面と外壁材4の裏面との間で縦胴縁3により構成される通気空間5内に侵入した雨水は繋ぎ片1bにより一旦受けて内部通気穴1b1から底片1hに排水され、更に外部通気穴1h1から外部に排水される。
【0020】
土台水切り材1の底片1hに設けた外部通気穴1h1と、壁取付片1aの下部と該底片1hとの間に設けた開口部7と、建物の基礎8に設けられた換気穴9とを介して建物の床下に通気が出来、更に底片1hに設けた外部通気穴1h1と、繋ぎ片1bに設けた内部通気穴1b1とを介して、壁下地2の表面と外壁材4の裏面との間で縦胴縁3により構成される通気空間5内に通気出来る。
【0021】
図1に示すように、基礎8の表面にモルタル10による仕上げを行う場合には、土台水切り材1の底片1hを定規としてモルタル10の上面10aの仕上げを容易に行うことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の活用例として、建物の壁下地に縦胴縁が固定され、該縦胴縁に外壁材が固定されて、前記壁下地の表面と前記外壁材の裏面との間に通気空間が形成された通気壁用土台水切り材を備えた通気壁用土台構造に適用出来る。
【符号の説明】
【0023】
1 …土台水切り材
1a …壁取付片
1b …繋ぎ片
1b1 …内部通気穴
1c …縦胴縁取付片
1d …スタータ片
1e …折り返し片
1f …傾斜片
1g …水切り片
1h …底片
1h1 …外部通気穴
2 …壁下地
3 …縦胴縁
4 …外壁材
5 …通気空間
6 …固定具
7 …開口部
8 …基礎
9 …換気穴
10…モルタル
10a…上面
11 …防水シート
図1
図2