(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
製鉄所等の原料ヤードでは、通常、原料の種類(鉱石、石炭等)および銘柄(出産地等)が混入しないように別々の原料山として積み付け、操業スケジュールに応じて高炉等の後工程に払い出す。そのために、スタッカー(走行式積付け機)により原料を原料山に積付け、また原料山からリクレーマ(走行式払出し機)により原料を払い出す作業が行われている。そのため、原料山の形状や寸法は常に変動していることから、原料山形状等を常時把握して管理することは、原料ヤードの運用効率を高めるためにきわめて重要である。
【0003】
原料ヤードの運用効率を高める手段としては、積付けの際に多種類の原料を一定面積に効率よく配置することが重要である。
このとき、異種銘柄を混入させないようにするため、従来においては、同じ原料であっても異種銘柄毎に原料山を形成していた上、スタッカーやリクレーマ同士の衝突を防ぐため、原料山同士の間に一定の間隔を形成しながら原料の積付けを行っていた。そのため、原料ヤードの運用効率が悪く、また管理も著しく面倒であった。
さらに、近年、スタッカーやリクレーマの作動を含め原料ヤードの操業は自動化される傾向にあり、その場合には作動の許容誤差を人間による操業よりも大きく見込む必要があるため、更にデッドスペースが大きくなりがちとなり、さらに原料ヤードの運用効率を悪化させる要因となっていた。
【0004】
このような原料ヤードの運用効率の悪化を改善するため、特許文献1に示すような、原料ヤード上における原料山の三次元的な存在範囲を管理する方法が開示されている。
この特許文献1には、例えば走行式積み付け機の旋回腕の先端から原料を原料ヤード上に積付けて該原料ヤードの長手方向に伸びる原料山を形成するに際して、前記走行式積み付け機の走行位置、腕先端の旋回位置、積み付け高さ、および原料の安息角に基づいて、積み付けられた原料山の前記原料ヤード上の位置および三次元形状を電子計算機に算出させて、原料ヤード上の原料山の存在範囲を三次元的に特定して管理するものが記載されている。
さらに具体的に、この特許文献1のものは、電子計算機を用いて、原料ヤードの幅方向の座標軸および高さ方向の座標軸で規定される仮想平面を複数のメッシュに区切り、各メッシュについて、その代表点を通り原料ヤード長さ方向の座標軸に平行な長軸線と、原料山の長さ方向の両端面との交点を両端とする線分をそれぞれ求めた上で、全メッシュについての線分の束として各原料山の三次元的な存在範囲を求めるようになっている。
【0005】
この特許文献1の管理方法によれば、単一の原料山に異種銘柄の原料を積付けても、各メッシュについて、各銘柄毎にその代表点を通り原料ヤード長さ方向の座標軸に平行な長軸線と、原料山の長さ方向の両端面との交点を両端とする線分を求めることにより、それぞれの銘柄の原料の存在範囲を把握することができる。そのため、ある銘柄の原料山の端面に上被せして異種の銘柄の原料を積み付けて管理することが可能になることから、原料ヤードの運用効率を飛躍的に高めることができるという利点がある。
【0006】
しかしながら、上記引用文献1の管理方法は、原料の原料ヤードの長さ方向の存在範囲を求めるものであるため、同一銘柄の原料山において山頂の稜線や山肌表面に凹凸がある場合には、その凹凸具合まで把握することはできない場合がある。そうすると、管理上は原料が存在する部分であっても、実際には原料が存在しない部分が生じることがあるため、求められた原料の存在範囲に基づいて原料の払出しを行おうとすると、上記リクレーマの掻取り装置が空振りするなどして無駄な動作を行う可能性が高く、これにより操業効率が低下することが考えられる。また、原料山の凹凸具合を正確に把握できないことにより原料山の体積精度が落ちる可能性があり、この結果、原料山に積付けられた原料の正確な在庫管理の精度が低下することも考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の原料ヤードの三次元管理方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、原料ヤードの長手方向の座標軸(x軸)に沿って延びる原料山1を示しており、この原料山1は、同一材料であって第1〜第3の異種銘柄を積付けた構成となっている。具体的には、第1の銘柄は原料山1の一端側(
図1中における左側)の領域に積付けられて領域11を形成し、第2の銘柄は該第1の銘柄12の一部に上被せされた状態で原料山1の中間の領域に積付けられて領域12を形成し、第3の銘柄は該第2の銘柄の一部に上被せされた状態で原料山の他端側(
図1中における右側)に積付けられて領域13を形成している。
より具体的に、この原料山は、はじめに第1の銘柄の原料のみから成る原料山1が形成され、その一部が払出された後、その第1の銘柄の払出し端面部分に上被せするように第2の銘柄の原料が積み付けられると共にその一部が払出され、さらにその後該第2の銘柄の払出し端面部分に上被せするように第3の銘柄の原料が積み付けられることにより、原料山を原料ヤードの長手方向に延びるように形成されたものとなっている。
【0017】
なお、上記原料ヤードへの第1〜第3の各銘柄の積付けは、
図4に示すように、原料ヤードの長手方向に沿って敷設された軌道上を走行する本体部2aと、該本体部2aから延設されて、先端から第1〜第3の各銘柄の原料を原料ヤード上に落下させる旋回ブーム2bとを備えたスタッカー2(走行式積付け機)により行われる。
また、これら第1〜第3の各銘柄の原料の払出しは、
図5に示すように、原料ヤードの長手方向に沿って敷設された軌道上を走行する本体部3aと、該本体部3aから延設された旋回ブーム3bと、該旋回ブーム3aの先端に設けられた原料を掻き取る、例えば回転式のバケットホイールからなる掻取り装置3cとを備えたリクレーマ3(走行式払出し機)により行われる。
【0018】
上記原料山1のように、複数の異種銘柄の領域が一部重複させた状態で連接、一体化された構成の原料山が形成された原料ヤードの管理をするに際し、本発明の三次元管理方法は、原料山を、原料ヤードの高さ方向の情報を持った平面視正方形状のメッシュ(単位区画)の集合として把握することで、その原料山の三次元的な存在領域及び形状を管理する。
具体的に説明すると、電子計算機を用いて、
図1及び
図2に示すように、上記原料ヤードにおける短手方向(y軸)の座標軸及び長手方向の座標軸で規定される仮想平面を複数のメッシュ4に区切ると共に、上記原料山1の各位置と対応する位置にある各メッシュに、予め定めた所定の手段で取得した積付け高さ情報に基づいて原料の底部から最上部までの高さ情報をそれぞれ割付ける。
そして、上記電子計算機により、これらの全メッシュの情報を集合させることにより原料山の三次元的な存在範囲及び形状を求め、それらの三次元的な存在範囲及び形状を画像モニター等に、例えば
図3のように表示する。
即ち、イメージとしては、
図2に示すように、原料山の各位置に対応する位置にあるメッシュに、その位置における高さ情報を割付けて、各メッシュについて鉛直方向に延びる四角柱を形成させ、最終的には、その四角柱を集合させた
図3に示すような立体によって原料山1の存在範囲及び形状を三次元的に把握できることとなる。
【0019】
上記メッシュは、平面視正方形状のもので、この実施の形態においては、各メッシュのx軸・y軸の各一辺は、原料ヤードの10cmに相当する長さに設定されている。
また、各メッシュに割付けられる高さ情報については、基本的に原料の底部から最上部までの高さである。
しかしながら、この実施の形態の原料山のように、同一の原料山に複数の異種銘柄の原料が積付けられる場合は、予め定めた所定の手段で得られた各銘柄の原料毎の積付け高さ情報に基づき、各メッシュ、実質的には原料山における異種銘柄が重複して積付けられた部分に相当する位置にあるメッシュには、同メッシュ内における各銘柄の原料の底部から最上部までのそれぞれの高さ情報が割付けられる。このとき、同メッシュ内の各銘柄毎の高さ情報には、その銘柄の原料の底部から最上部までのそれぞれの高さ情報の他に、対応する銘柄の情報(例えばロットナンバー等)等必要な情報も付与される。これにより、同メッシュ内における各銘柄の原料に係る情報は相互に区別され、そのメッシュについては、同メッシュ内に存在する銘柄の数に応じた段数で各銘柄毎の高さ情報が割付けられることとなる(イメージとしては
図2(b)参照)。
そして、全メッシュの情報を集合させることにより、原料山全体の三次元的な存在範囲及び形状を含め、各異種銘柄領域の三次元的な存在範囲及び形状、さらには相互の位置関係を求めることができる。
【0020】
例えば、
図2(a),(b)中のPx,Pyに位置するメッシュに相当する原料山の位置では、最下層に第1の銘柄、中間層に第2の銘柄、最上層に第3の銘柄の各原料が重複して積付けられているが、このメッシュには、第1〜第3の銘柄の領域の各々高さ情報が段状(この場合は3段)に割付けられ、同メッシュ内における各銘柄の高さ方向の領域が、その積層順及び領域間の境界と共に特定される。
したがって、各メッシュが有する高さ情報を集合させることにより、各銘柄の積付け領域の位置及び存在範囲、形状を正確に把握することができると共に、同一原料山内における他の銘柄の領域の位置関係も正確に把握することができることとなる。
【0021】
ここで、原料山が形成された場合、即ち、スタッカー2の旋回ブーム2bの先端から原料ヤード上に積付けて該原料ヤードの長手方向に延びる原料山が形成された場合における各メッシュへの高さ情報の割付けは、上述のように予め定めた所定の手段で得られた情報を基に行われる。
この予め定めた所定の手段とは、この実施の形態においては、測定した原料山の高さ、上記スタッカー2の走行位置及び旋回ブーム2bの旋回した角度の範囲、並びに積付け高さ、その原料に係る原料山固有の安息角θに基づいて、上記電子計算機で原料山の山形状を略円錐状となることを前提に推定(円錐推定)し、原料山の各位置の高さを算出する手段が用いられている。
【0022】
具体的には、上記スタッカー2には、その走行位置、旋回ブーム2bの位置及び方向並びに俯仰角度をそれぞれ常時計測してそれらの情報を取得するスタッカー位置情報取得装置と、積付けている原料山の高さを測定してその情報を取得する山高さ情報取得装置とが設けられており、積付け時の走行位置、及び旋回ブーム2bの旋回した角度の範囲及び俯仰角度の各情報を経時的に得ることができるようになっている。なお、上記山高さ情報取得装置としては、例えば旋回ブーム2bの先端に取付けられる超音波センサー等が採用され、旋回ブームの俯仰角度に応じた該超音波センサーの位置において原料山(頂上)までの距離を常時測定して、その距離から原料山の高さを算出することにより、積付け時に刻々と変化する原料山の高さをリアルタイムで監視するようになっている。
そして、山高さ情報取得装置により測定、取得した積付けている原料山の高さ、及びスタッカー2の走行位置及び旋回ブーム2bの旋回した角度範囲や俯仰角度等の各情報の履歴、並びにその原料の原料山固有の安息角θを基に、上記電子計算機よる演算によって、原料山の山形状を円錐推定し、該原料山の形状や積付け高さ、位置、存在範囲を近似的に特定することが可能となっている。
これにより、原料山の各位置での高さを計算で算出することが可能となるため、原料山の各位置に相当する位置にある各メッシュの高さ情報を得ることができる。
【0023】
また、この実施の形態においては、原料ヤードをリアルタイムで把握・管理することができるように、原料山の各位置の高さを算出は、同種銘柄又は異種銘柄に関わらず、原料の積付けを行う度に行い、各メッシュに原料ヤードの現状を常時反映させるようにしている。
したがって、原料の積付けを行う度に、山高さ情報取得装置によって測定、取得した原料山の高さ、スタッカー2の走行位置及び旋回ブーム2bの旋回した角度囲及び俯仰角度等の各情報の履歴、及びその原料に係る原料山固有の安息角θを基に、上記電子計算機よる演算によって、原料山の山形状を円錐推定して、該原料山の形状や積付け高さ、位置、存在範囲を近似的に特定し、原料山の各位置の高さの算出を行っている。そして、その算出された高さに基に、原料山の各位置に相当する位置にある各メッシュに対しての高さ情報及び銘柄情報等の必要情報の割付けを順次行い、新たな高さ情報に更新するようにしている。
よって、上記原料山のように複数の異種銘柄を単一の原料山に積付ける場合であっても、複数の異種銘柄が重複する位置に相当するメッシュについては、同メッシュ内での各銘柄毎の高さ情報及びその他の必要情報が順次割付けられ、新たな高さ情報に更新されることとなる。
【0024】
一方、上記原料山からの原料の払出す場合、即ち、上記原料ヤード上の原料山1からリクレーマ3の旋回ブーム3bの先端の掻取り装置3cによって原料を掻取って払出す場合は、上記電子計算機を用いて、上記原料ヤードにおける短手方向の座標軸及び長手方向の座標軸で規定される仮想平面を複数のメッシュに区切ると共に、これらのメッシュのうち原料の払出位置と対応する位置にある各メッシュに、予め定めた所定の手段で取得した原料払出し後の新たな高さ情報を割付ける。そして、全メッシュの情報を集合させることにより新たな原料山の三次元的な存在範囲及び形状を求め、その結果を画像モニター等に表示させる。
実際には、原料の積付け時の各メッシュの情報を、払出し後の新たな情報に更新し、全メッシュの情報を集合させることにより新たな原料山の三次元的な存在範囲及び形状を求める。
イメージ的には、原料の払出位置と対応する位置にあるメッシュについては、払出し後の新たな高さ情報が割付けられたことに伴い、払出し前の情報によって形成されていた鉛直方向に延びる四角柱の高さが、払出された分だけ低く削られた格好となる。最終的には、その低く削られた四角柱を含めてすべての四角柱を集合させた立体によって、原料払出し後の原料山の三次元的な存在範囲及び形状を把握できることとなる。
【0025】
原料払出し後の各メッシュへの高さ情報の割付けは、上述のように予め定めた所定の手段で得られた情報を基に行われるが、この予め定めた所定の手段とは、この実施の形態においては、上記リクレーマ3の走行位置及び旋回ブーム3bの旋回した角度の範囲並びに該旋回ブーム3bの俯仰角度に基づいて上記電子計算機で算出することにより取得する手段が用いられている。
【0026】
具体的には、上記リクレーマ3には、上記スタッカー2と同様に、その走行位置、旋回ブームの位置及び方向並びに俯仰角度をそれぞれ常時計測する計測手段が取付けられていて、払出し時の走行位置、旋回ブーム3bの旋回した角度の範囲及び俯仰角度等の各情報を経時的に得ることができるようになっている。そして、これらの走行位置、旋回ブーム3bの旋回した角度の範囲及び俯仰角度等の各情報の履歴を基に、上記電子計算機よる演算によって、払出し後の原料山の山形状を推定し、該原料山、特に払出し端面の形状、積付け高さ、位置、存在範囲を近似的に特定する。これにより、払出し後における原料山の各位置での高さを計算で算出することが可能となるため、原料の払出位置と対応する位置にある各メッシュの新たな高さ情報を得ることができる。
【0027】
また、この実施の形態においては、原料ヤードをリアルタイムで把握・管理することができるように、払出し後における原料山の原料山の高さ算出を、1回の払出しの度に行い、これにより原料ヤードの状況を各メッシュに常時反映させるようにしている。
したがって、原料の払出しを行う度、即ち、原料掻取りを実際に行っているリクレーマ3の旋回ブーム3bが1回旋回する度に走行位置、旋回ブーム3bの旋回した角度の範囲及び俯仰角度等の各情報を基に、払出し後における原料山の各位置での高さを算出している。そして、原料の払出位置と対応する位置にある各メッシュに新たな高さ情報を順次割付けて、更新するようにしている。
【0028】
以下、
図6(フロー)を用いて、原料ヤードに対する本発明の三次元管理方法の処理手順について説明する。
原料の積付けに際しては、
図4に示すように、スタッカー2の旋回ブーム2bの先端から各銘柄の原料を原料ヤード上にそれぞれ積付けて原料山1を形成する。まず、第1の銘柄の原料を原料ヤード上に所定高さまで円錐形に積付けて、第1の銘柄における第1領域R1−1を形成し、さらに同銘柄を積付ける場合には、この第1領域R1−1の原料山の傾斜面上に上被せするように所定高さまで円錐形に積付け、第1の銘柄における第2領域R1−2を形成する。以降さらに同銘柄を積付ける場合は、同じ要領で第3領域以降の領域R1−3〜R1−nを順次形成する。
また、第2の銘柄の原料を第1の銘柄の領域に上被せして積付けてこの第2の銘柄の第1領域R2−1から第n領域R2−nを形成する場合、及び第3の銘柄の原料を第2の銘柄の領域に上被せしてこの第3の銘柄の第1領域R3−1から第n領域R3−nを形成する場合も、基本的には第1の銘柄の積付けと同様に行う。
【0029】
このとき、各領域の形成の度に、
図7に示すような、山高さ情報取得装置によって測定、取得した原料山の高さの情報Z、上記スタッカー2の走行位置及び旋回ブーム2bの旋回した角度の範囲並びに俯仰角度の各情報を
図8中に示すスタッカー位置情報取得装置で取得する。そして、これらの各情報を三次元管理用の電子計算機(三次元管理計算機)に送ると共に、原料毎(あるいは銘柄毎)の安息角θを入力することにより、
図6(a)に示す処理フローに従って、原料山における各領域のそれぞれの位置及び三次元の山形状を計算して、各領域のそれぞれの位置と対応する位置にある仮想平面上のメッシュに対し、その位置における原料の底部から最上部までの高さ情報を割付ける。また、各メッシュにおいて、異種銘柄が積付けられている場合には、各銘柄毎の高さ情報が割付けられる。
なお、各メッシュには、銘柄情報(複数銘柄が積付けられている場合には、その銘柄毎の情報)や操業情報等の必要情報が付与される。これらの必要情報は、上位の電子計算機(上位計算機)から三次元管理計算機に対して送られ、三次元管理計算機によって各メッシュに付与される。
最終的には、全メッシュの情報を集合させて、原料山及び各銘柄の領域の三次元的な存在範囲及び形状を求めて、その結果を画像モニター(
図7中の三次元データ描画端末)に表示させ、各領域の積付け後における原料山全体の三次元的な存在範囲の管理に供させることとなる。
【0030】
具体的に説明すると、まず、第1の銘柄の第1領域R1−1を形成した場合、スタッカー位置情報取得装置によって取得した上記スタッカーの走行位置及び旋回ブームの旋回した角度の範囲の各情報、さらに山高さ情報取得装置によって測定、取得した原料山の高さの情報を三次元管理計算機に送る共に、第1の銘柄の原料の安息角を入力し、原料山における各領域のそれぞれの位置及び三次元の山形状を計算する。そして、仮想平面において各領域のそれぞれの位置と対応する位置にある各メッシュの高さを計算し、その結果を各メッシュに付与する。
次に、同一銘柄を上被せして積付けて別領域を形成する場合、例えば第1の銘柄の第2領域R1−2を第1領域R1−1に上被せして形成した場合、基本的には第1領域R1−1を形成した場合の処理と同様の処理を行う。このとき、第2領域R1−2に係るメッシュに既存の高さ情報がある場合は、既存の高さデータは同一銘柄か否かを判定する(
図6(a)参照)。例えば第1の銘柄の第2領域R1−2の場合、既存の高さデータがある場合は第1領域R1−1に係る高さ情報であって同一銘柄であるため、そのメッシュの高さ情報は、第2領域R1−2nの積付け後の新たな高さ情報に更新する。以降、同一銘柄を積付けて別領域を形成する場合、例えば第1の銘柄の第n領域R1−nまで形成する場合は、同様の処理を順次行っていく。
【0031】
さらに、異種銘柄を上被せして積付ける場合、例えば第1の銘柄の第n領域R1−nを積付けた後、この第1の銘柄の第n領域に第2の銘柄の第1領域2−1の原料を上被せして積付ける場合や、第2の銘柄の第n領域R2−nを積付けた後、この第2の銘柄の第n領域に第3の銘柄の第1領域R3−1の原料を上被せして積付ける場合も、基本的には、同一銘柄を上被せして積付けて別領域を形成する場合とほぼ同様の処理が行わる。
ただし、このような異種銘柄の積付けに際し、対応するメッシュに既存の高さ情報がある場合、この既存の高さデータは同一銘柄か否かの判定が行われるが、例えば第1の銘柄の第n領域に第2の銘柄の第1領域2−1の原料を上被せした場合は、第1の銘柄と第2の銘柄は異種銘柄であるため、同一銘柄ではないと判定される。このとき、そのメッシュにおける異種銘柄の高さ情報(例示の場合は第2の銘柄の第1領域2−1の高さ情報)が改めて作成した上で、該メッシュの高さ情報を更新する。
【0032】
一方、原料の払出しに際しては、
図5に示すように、リクレーマ3の旋回ブーム3bの先端に取付けられた掻取り装置3cにより原料山1の一端面から原料を掻き取って原料を払い出す。
このとき、払出しの度に、上記リクレーマ3の走行位置及び旋回ブーム3bの旋回した角度の範囲並びに該旋回ブーム3bの俯仰角度の各情報を、
図7中に示すリクレーマ位置情報取得装置で取得する。なお、事前にリクレーマ3の掻取り装置3cにおけるバケットホイールの掻取り幅や回転半径等に関する情報を入手し、リクレーマ3の旋回ブーム3bの旋回範囲や俯仰角度に応じた原料の掻取り幅や掻取り高さを予め把握しておく。
そして、これらの各情報を三次元管理用の電子計算機(三次元管理計算機)に送り、
図6(b)に示す処理フローに従って、払出し位置及びその払出し位置における払出し後の高さ及び山形状を計算し、その払出し位置と対応する位置にある仮想平面上のメッシュに対し、その位置における払出し後の原料の底部から最上部までの高さ情報をそれぞれ割付けて、新たな高さ情報に順次更新する。
最終的には、全メッシュの情報を集合させて、払出し後の新たな原料山及び各銘柄毎の領域の三次元的な存在範囲及び形状を求めて、その結果を画像モニター(三次元データ描画端末)に表示させ、原料山全体の三次元的な存在範囲の継続的な管理に供させることとなる。
【0033】
具体的に説明すると、原料山1の原料を払い出した場合には、上記リクレーマ位置情報取得装置によって取得した上記リクレーマ3の走行位置及び旋回ブーム3bの旋回した角度の範囲並びに該旋回ブームの俯仰角度の各情報を三次元管理計算機に送り、リクレーマ3の掻取り装置3cの軌跡を計算する。なお、リクレーマ3について前回の位置情報がある場合には、その前回の位置情報と今回の位置情報の差異から掻取り装置の軌跡を形成する。
そして、掻取り装置の軌跡上に位置し且つ高さが低くなった位置、即ち
図5中の範囲A内の位置に対応するメッシュについては、払出し後の新たな高さ情報をそれぞれ付与し、それらのメッシュの高さ情報を更新する。
【0034】
なお、リクレーマ3によって原料山の原料を掻取るに際しては、異種銘柄の原料が混入することを防止する必要があるが、上述のように、原料山の各領域を形成するに際して、各メッシュに高さ情報及び銘柄情報が付与されており、同一メッシュに異種銘柄が存在する場合にはその銘柄ごとの高さ情報が付与されていることから、その各銘柄毎の高さに基づいてリクレーマによる原料掻取りを行うことによって異種銘柄の混入を防止することが可能となる。
【0035】
ところで、
図1の原料山1の場合、はじめに第1の銘柄の原料のみの領域を形成し、この第1の銘柄の原料の領域の一部を払出した後、その第1の銘柄の払出し端面部分に上被せするように第2の銘柄の原料の領域を形成すると共にその一部を払出し、さらにその後該第2の銘柄の払出し端面部分に上被せするように第3の銘柄の原料の領域を形成したものとなっている。
この場合においては、本発明の三次元管理方法は、原料積付けあるいは払出しの度に高さが変更となった各メッシュの高さ情報は更新されるため、基本的には、原料の積付けの際は上述した原料の積付け時の処理を、払出しの際は上述した払出し時の処理をそれぞれ行えば良い。
即ち、第1の銘柄の複数回の積付けにより第1の銘柄の第1〜n領域を形成する毎に高さの変動があった部分に対応するメッシュについて高さ情報を更新した後、この第1の銘柄の払出しによって高さ変動があった部分に対応するメッシュについては払出し後の新たな高さ情報に順次更新する。
その後、第2の銘柄を第1の銘柄の領域に上被せして積付け該第2の銘柄の第1〜n領域を形成する際には、第2の銘柄の積付けにより高さ変動があった部分に対応するメッシュの高さ情報を、第2の銘柄の積付けの度に新たな高さ情報に順次更新する。そして、該第2の銘柄の払出しの際も、払出しによって高さ変動があった部分に対応するメッシュの高さ情報を、払出し後の新たな高さ情報に更新する。
さらに、第3の銘柄を第2の銘柄の領域に上被せして積付け該第3の銘柄の第1〜n領域を形成する際も、基本的には、第2の銘柄の積付けの場合と同様の処理を行えば良い。
【0036】
このように、本発明の原料ヤードの三次元管理方法によれば、上記電子計算機により、上記原料ヤードにおける短手方向の座標軸及び長手方向の座標軸で規定される仮想平面を複数のメッシュに区切り、各メッシュに原料の底部から最上部までの高さ情報をそれぞれ割付けて、全メッシュの情報を集合させることにより新たな原料山の三次元的な存在範囲及び形状を求めるため、仮に原料の山頂の稜線や山肌等に凹凸があったとしても、その凹凸の情報は各メッシュの高さ情報として割付けられ、反映される。
これにより、原料山の三次元的な山形状を正確に把握することができ、スタッカーやリクレーマを効率よく動作させて、原料ヤードの操業効率を向上させることができる。
さらに、原料山の三次元的な山形状を正確に把握できることにより、原料ヤードに存在する原料の在庫管理を正確且つ適切に行うことが可能であり、同一原料山における異種銘柄それぞれの在庫管理も容易且つ正確に行うことができる。
【0037】
また、異種銘柄の原料を同じ原料山に上被せによって積付けた場合であっても、各メッシュの高さ情報に各銘柄の高さ情報を割り付けることにより、それぞれの銘柄の存在範囲や各銘柄間の位置関係、各領域の境界線を正確に把握することができ、これにより、各銘柄の原料の管理を適切且つ確実に行うことができ、原料ヤードの操業を一層効率良くすることができる。
【0038】
上記実施の形態においては、3つの異種銘柄を積付けて単一の原料山を形成した原料ヤードに対して三次元管理方法を実施しているが、本発明の三次元管理方法は、単一銘柄、または2つあるいは4つ以上の異種銘柄を積付けて原料山を形成した原料ヤードに対しても実施することができる。
また、上記実施の形態では、原料ヤードに1つの原料山が存在する場合について説明したが、本発明の三次元管理方法は、複数の原料山が存在する原料ヤードであっても実施することができる。
【0039】
さらに、上記実施の形態においては、原料が積付けられて原料山が形成された場合の各メッシュの高さ情報を取得するための予め定めた所定の手段として、山高さ情報取得装置によって測定、取得した原料山の高さ、スタッカーの走行位置及び旋回ブームの旋回した角度の範囲、並びに積付け高さ、原料山の安息角に基づいて、上記電子計算機で原料山の山形状を円錐推定し、原料山の各位置の高さを算出する手段を採用している。
しかしながら、この予め定めた所定の手段としては、このような手段以外を採用することができ、例えば、原料積付け後の原料山に対して、レーザー距離計を原料ヤードの短手方向に向けてスキャンしながら原料ヤードの長手方向に移動させ、原料山の山形状や大きさを計測し、この計測結果に基づいて各メッシュの高さ情報を取得する手段を用いることができる。あるいは、原料積付け後の原料山に対して測量を行って得られた山形状や大きさを基に各メッシュの高さ情報を取得する手段を採用してもよい。さらには、これらの手段を併用して各メッシュの高さ情報を取得するようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施の形態においては、原料払出し後の各メッシュへの高さ情報を取得するための予め定めた所定の手段として、リクレーマの走行位置及び旋回ブームの旋回した角度の範囲並びに該旋回ブームの俯仰角度に基づいて上記電子計算機で算出することにより取得する手段が用いられている。
しかしながら、この予め定めた所定の手段としては、原料山が形成された場合の各メッシュの高さ情報を取得するための上記実施の形態とは別の手段として上述したものと同様に、原料払出し後の原料山に対してレーザー距離計でスキャンし、得られた計測結果に基づいて各メッシュの高さ情報を取得する手段や、原料払出し後の原料山に対して測量を行って得られた結果を基に各メッシュの高さ情報を取得する手段等を採用することができる。
【0041】
さらに、上記実施の形態では、各メッシュのx軸・y軸の各一辺を、原料ヤードの10cmに相当する長さとしているが、メッシュの各一辺の長さと原料ヤードの長さとの関係については、任意に設定することができる。ただし、処理するデータ量や実際の管理のしやすさ等からすると、上記実施の形態のように、メッシュの各一辺の長さが原料ヤードの10cm相当の長さとするのが最も好適である。
【0042】
なお、原料山の三次元的な存在範囲及び形状を表示する画像モニター(
図8中の三次元データ描画端末)については、カラー表示できるものを用いることが望ましく、同一原料山に積付けられた各銘柄毎に色分けして表示して表示できることが好ましい。これにより、一見して原料山の形状や各銘柄毎の領域を把握することができ、原料ヤードの管理がより行いやすくなる。