(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非線形応答を検出し、前記非線形応答から導き出された信号を使用して、前記試料の顕微鏡画像を生成する画像化組立体をさらに備える、請求項1に記載の光システム。
【背景技術】
【0003】
非線形顕微鏡システムなど、非線形光システムでは、パルス・レーザ・ビームが、試料の上に密に合焦され、光出力を試料から生成させる。非線形信号が、光出力から導き出され、この非線形信号が、試料の顕微鏡画像を生成するために使用されうる。複数の異なる高次の光と物質の相互作用(light−matter interaction)が、2光子蛍光(two−photon fluorescence)、第二高調波発生(second−harmonic generation)、第三高調波発生、ラマン散乱、などを含む、非線形光システムで使用されうる。多光子放出(multiphoton emission)プロセスでは、入射光強度と放出された放射との間の関係は、非線形である。例えば、2光子励起に対して、その関係は二次である。この非線形関係の結果として、従来のガウス・ビームの中央の空間部分だけが、放出された放射の強度に実質的に寄与する。それ故、レーザ・ビームが密に合焦される部分には、レーザ・ビームが、より拡散する部分よりはるかに多くの多光子放射が生成される。事実上、励起は焦点体積(focal volume)に限定され、焦点はずれの対象を高度に排除する結果をもたらす。同様の作用が、第二高調波発生、第三高調波発生、ラマン散乱、光誘起化学反応、材料破損(material breakdown)、などを含む、他のタイプの光と物質の相互作用において発生する。
【0004】
図1Aは、従来技術による例示的非線形顕微鏡システム20の動作の基本原理を示す図である。フェムト秒レーザ22は、パルス・レーザ・ビーム28を自由空間出力として供給する端面26を有する、シングル・モード・ファイバ(SMF)24で誘導されるパルス・レーザ出力の形で、入射光を供給する。レーザ・ビーム28は、走査ミラー組立体30によって、顕微鏡画像が生成されるべき試料34の上にビームを合焦させる対物レンズ32に導かれる。レーザ・ビーム28は、蛍光色素分子(fluorophore)の多光子励起を試料の励起体積(excitation volume)の中に発生させるのに十分な強度を有する。多光子励起、例えば2光子蛍光、の量を表す強度レベルを有する蛍光36が、放出される。
【0005】
励起に必要な光子の数は、蛍光を作り出すために使用される、特定のタイプの光と物質の相互作用によって決まる。本議論では、顕微鏡システム20は、2光子励起を使用することが仮定されている。しかし、本議論は、第二高調波発生、第三高調波発生、ラマン散乱、などを含む、他のタイプの光と物質の相互作用を使用する非線形顕微鏡に適用されることが理解されよう。
【0006】
放出された蛍光は、フォトダイオード、光電子増倍管、または類似の素子など、適切な検出器38によって検出される。合焦されたレーザ・ビーム28を試料の一領域にわたって走査することで、ポイント毎の強度データを収集することが可能になる。あるいは、ビームの位置が固定されたままで、試料が、ビームに対して適所に走査されてよい。次いで、画像生成器40が、強度データを使用して、走査された試料の領域の顕微鏡画像を生成する。
【0007】
図1Bは、従来技術による走査型共焦点非線形顕微鏡システム50の図を示す。
図1Aに示す顕微鏡システムと同様に、システム50は、フェムト秒レーザ52及びパルス・レーザ出力58を供給する端面56を有するシングル・モード・ファイバ54を含む。走査ミラー組立体60は、レーザ出力58を対物レンズ62に導き、対物レンズ62は、レーザ出力58を試料64の上に密に合焦し、それにより、励起体積における蛍光色素分子の多光子励起及び蛍光66の放出を結果としてもたらす。
【0008】
図1Bの顕微鏡は、出力ピンホール組立体68を含み、出力ピンホール組立体68は、検出器レンズ(detector lens)70を使用して放出された蛍光を合焦し、その蛍光を入力として第2のシングル・モード・ファイバ(SMF)72の中に供給することによってもたらされ、第2のシングル・モード・ファイバ72は、次いで、合焦された蛍光を検出器74に誘導し、検出器74は、蛍光強度データを画像生成器76に供給する。ピンホール組立体68を使用することで、深さ分解能(即ち、距離分解能)が顕微鏡システム50に付加される。というのは、入射光ビームの焦点の中で生成された信号だけが、検出器72による測定のために、第2のSMF70の中に効率的に結合されうるからである。この設定で、試料の3次元非線形画像が、試料を、横方向のほかに軸方向にも走査することによって得られる。
【0009】
図1A及び
図1Bに示す顕微鏡システムでは、試料への入射光を供給するために使用されるパルス・レーザ・ビームが、近ガウス(near−Gaussian)形状を有する基本的LP
01横モードを使用して、レーザから対物レンズに誘導される。システム20、50の両システムでは、レーザ・ビームを対物レンズに誘導するシングル・モード・ファイバ24、54は、非ガウス(non−Gaussian)形状を明確に有する高次モードにおける伝播をサポートしない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明は、主に非線形顕微鏡を取り巻くシステムを説明しているが、本発明の範囲が、高次モードの光ファイバを使用する他の非線形光システムを包含することは、当業者には理解されよう。
【0016】
非線形顕微鏡の場合、高次モードの励起光が、基本的なLP
01モードの入射励起光に比べて、より優れた分解能をもたらすことができる。より優れた分解能は、基本モードの特性と比較した、1つまたは複数の高次モードの強度特性のそれぞれの形状から、また、入射光強度と蛍光との間の非線形関係から生じる。
【0017】
本発明の態様は、2光子非線形顕微鏡に励起光を供給するために使用される、LP
01モード及びLP
02モードを使用することを背景において説明される。しかし、以下の議論が、他の高次モード及び他のタイプの非線形顕微鏡に拡張されうることが、理解されよう。さらに、蛍光の作成及び検出が、レーザ光の高強度領域の、高い空間拘束(spatial confinement)を利用する用途の一例に過ぎないことに、留意されたい。拘束されたレーザ光は、多光子化学反応または材料破損の促進など、任意の数の非線形効果を誘起するために使用されうる。本明細書で使用されるように、そのような用途を実施するために使用されるシステムは、一般に「非線形光システム」と呼ばれる。
【0018】
本議論は、M
2パラメータ及び「埋め込みガウス」ビームの概念を活用する。M
2パラメータは、ビーム品質、即ち密なスポットに合焦される能力の尺度である。M
2の最低可能値は、ガウス・ビームに対応する1である。所与の光ビームに対して、M
2パラメータは、ビームの広がり角及びその最も狭い点の幅に基づいて求められ、所与のビームが、ガウス・ビームに比べて、回折限界(diffraction−limited)が何倍であるかを数値で表す。
【0019】
LP
02モード、LP
03モード、及びLP
04モードなど、さらなる高次モードは、中央ローブ及び1つまたは複数の外リングを含む非ガウス形状を有する。これらの形状に対するM
2値を求めることにおいて、ビーム幅は、横方向の強度分布の二次モーメントとして定義される。
【0020】
「埋め込みガウス」ビームは、非ガウス・ビームが光システムを通していかに伝播するかを理解するために有用な概念である。ある光システムを通って伝播するガウス・ビームが、位置依存性のビーム幅、ω(z)を有する場合、同じ光システムを通って伝播し、知られているM
2パラメータを有する非ガウス・ビームのビーム幅を、M・ω(z)として、即ち位置依存性ビーム幅とM
2値の平方根であるMとの積として、表現することができる。
【0021】
この概念を使用して、非ガウス・ビームに対して、その性能を埋め込みガウス・ビームの性能と比較することで、非ガウス・ビームに有効な分解能向上の尺度が与えられることが理解されよう。
【0022】
図2Aは、曲線101がLP
01モードに対する強度特性を示し、曲線102がLP
02モードに対する強度特性を示す、グラフ100を示す。2つの特性は、2つの特性間の直視による比較を提供するために、同じ埋め込みガウスのビーム幅ω(z)を有するように、拡縮されている。LP
01モードの強度特性は、単一の中央ローブ101aで、ガウス形状を厳密に近似する。LP
02曲線は、中央ローブ102a及び外リング102bを有する非ガウス形状で特徴づけられる。
【0023】
LP
01モードは、その近ガウス形状を反映する、1強のM
2値を有する。LP
02モードは、非ガウスのエネルギー分布を有する。ビーム幅の二次モーメントの定義を使用して、
図2Aに示すLP
02モードに対するM
2の値は約3であり、M値は約1.7である。
【0024】
2光子顕微鏡では、入射光強度と蛍光色素分子励起との間の関係は、二次である。従って、LP
01モード及びLP
02モードを使用して、2光子顕微鏡で達成可能なそれぞれの分解能の比較では、それらそれぞれの強度特性を2乗する必要がある。2乗されないLP
01モード及びLP
02モードの強度特性は、単一の光子が所与の時間に所与の場所に存在するであろう確率を表すとみなされうる。従って、それぞれの強度特性の2乗は、2つの光子が所与の場所に同時に存在するであろう確率を表すとみなされうる。
【0025】
図2Bは、曲線111がLP
01モードに対する2乗された強度特性を示し、曲線112がLP
02モードに対する2乗された強度特性を示す、グラフ110を示す。2乗した後、LP
02モードの外リング112bは大幅に抑制され、今や、中央ローブ112aが支配的である。
【0026】
2乗されたLP
02モードの強度特性112の支配的な中央ローブ112aは、2乗されたLP
01モードの強度特性111の中央ローブ111aより大幅に狭い。従って、LP
02モードのビーム幅が、LP
01モードのビーム幅より大幅に大きいとしても、2乗されたモードの強度特性は、2光子顕微鏡では、LP
02モードが、より優れた分解能をもたらすことを表す。
【0027】
図3Aは、本発明の態様による、例示的2光子非線形顕微鏡システム120の図を示し、高次モードのレーザ・ビームが、入射励起光を供給するために使用される。
図3Aでは、顕微鏡システム120は、フェムト秒レーザなどのレーザ光源122を備え、最初にシングル・モード・ファイバSMF124で誘導されるパルス・レーザ出力を供給する。代替の光源が、より長いパルスを使用してよく、またはさらには連続波放出を生成してよいが、より高いピーク・パワーは、通常、より短いパルスを使用して達成される。長周期グレーティング(LPG)126が、SMF124の出力端に接続され、レーザ出力の所望の高次モードの効率的な励起をもたらす。説明された本発明の実施では、LPG126は、HOMファイバ128の中に直接書き込まれるのが好ましい。一般的に言えば、LPG126が別個のファイバの中に書き込まれ、次いで、LPG126がHOMファイバ128にスプライスされることも可能であることに留意されたい。本例では、LPG126が、LP
02モードの励起を高次モード(HOM)ファイバ128の中にもたらす。以下に論じるように、例えばLP
03モード及びLP
04モードを含む、他の高次モードを使用することも可能である。通常、さらなるモードは、中心線におけるそれらの局在化されたピーク強度が高い故に、望まれる。
【0028】
さらに、中央領域の外の光は、非線形相互作用に寄与しないので、低次の高次モードを使用することが有利である。というのは、全パワーに対するより大きな割合が、中央ローブに存在するからである。対照的に、いわゆる「ベッセル・ビーム(Bessel Beam)」では、光パワーは、多くの同心円リングに分配され、リングに比較して中央に伝えられる相対的なパワーが減じられる。低次モードにおいて、全パワーに対するより大きな割合が中央ローブに伝えられ、そのことは、多くの非線形相互作用にとって望ましい。従って、本明細書で使用されるように、「低次の高次モード」は、ファイバで誘導される、中央ローブを有する高次モードに言及し、そのモードは、一般に、LP
0nモードとして特徴づけられ、ここでnは、5未満である。
【0029】
HOMファイバ128は、端面130を有し、その端面から、高次モードのレーザ光が、構造化された自由空間ビーム出力132として放出される。本発明の他の態様では、高次モードは、レーザ光が導波路を出た後、アキシコン(axicon)、位相板、空間光変調器、他など、バルク光要素を使用して作り出されうる。しかし、導波路ベースのモード変換器の1つの利点は、バルク光要素を使用することに比較して、光が、望ましくないモードの中にほとんど結合しない、固有の1つまたは複数のモードの励起にある。この利点が、光パワーのより効率的な利用を可能にする。本説明のために、ビームがLP
02モードとして伝播する導波路を出るビームは、「LP
02−構造化ビーム」と呼ばれる。LP
02−構造化ビームの出力132は、走査ミラー組立体134によって、レーザ光132を試料138の上に密に合焦する対物レンズ136に導かれる。2つの光子を同時に吸収する、試料138の中の蛍光色素分子が、励起状態に入り、励起体積内で生じる2光子励起の量を表す強度を有する蛍光140の放出を結果としてもたらす。合焦されたレーザ光が、試料138の選択された領域にわたって走査され、それにより、走査領域にわたる、ポイント毎の、放出された蛍光の強度データがもたらされる。放出された蛍光は、フォトダイオード、他など、適切な検出器142で検出される。画像生成器144は、検出された信号を使用して、走査された試料の領域の顕微鏡画像を生成する。
【0030】
図3Bは、本発明の他の態様による、走査型共焦点2光子顕微鏡システム150を示す。
図3Aの顕微鏡システム120と同様に、
図3Bの顕微鏡システム150は、フェムト秒レーザ152と、シングル・モード・ファイバ(SMF)154と、長周期グレーティング156と、LP
02モードのパルス・レーザ・ビーム162を出力として供給する出力端面160を有する高次モード(HOM)ファイバ158とを含む。レーザ・ビーム162は、走査ミラー組立体164で誘導され、対物レンズ166によって試料168の上に合焦され、2光子蛍光170の放出を結果としてもたらす。
【0031】
図3Bの顕微鏡システム150は、検出器レンズ174と、入力端面178を有する第2のシングル・モード・ファイバ176と、第2のシングル・モード・ファイバ176の中に書き込まれた第2の長周期グレーティング180とを備える出力ピンホール組立体172をさらに含む。検出器レンズ174は、放出された蛍光170を端面178の上に合焦する。次いで、この蛍光は、第2のシングル・モード・ファイバ176によって第2の長周期グレーティング180に誘導される。次いで、合焦された、放出された蛍光は、検出器182に誘導される。次いで、画像生成器184は、蛍光データを使用して、走査された試料の領域の顕微鏡画像を生成する。
【0032】
出力ピンホール組立体172は、深さ分解能(即ち、距離分解能)を顕微鏡システム150に付加する。というのは、ビームの焦点の中で生成された信号だけが、検出器による測定のための、第2のシングル・モード・ファイバ176の中に、効率的に結合することができるからである。この設定により、試料の3次元非線形画像が、試料を、横方向及び軸方向の両方に走査することによって得られる。
【0033】
非線形励起のもとで、2光子蛍光、または非線形光プロセスによって誘起された任意の放出は、
図2Bに示すように、中央のピークが非線形信号において強調されるので、高次モードのようには見えず、より基本モードのように見えることに留意されたい。それ故、HOMファイバに基づいた非線形共焦点顕微鏡に対して、出力ピグテール(pigtail)は、HOMファイバではなく、シングル・モード・ファイバであるべきである。線形共焦点顕微鏡では、出力ファイバは、やはり、HOMファイバでなければならないであろう。
【0034】
図3A及び
図3Bの顕微鏡システムにおいて、HOMファイバ128、158を使用することで、非線形顕微鏡における横分解能と共に共焦点の分解能も改良される。HOMファイバは、この用途において、その全ファイバ設定(all−fiber setup)との互換性、及びそのフェムト秒パルス伝送との互換性を含む、複数の理由に対して魅力的である。
【0035】
HOMファイバの高分散度が、SMFファイバより良好なパルス伝送を可能にする。特に、HOMファイバの分散特性は、パルスを、伝播中に圧縮または伸張するように設計可能であり、試料の上に、より望ましいパルス形状の入射を結果としてもたらす。長周期グレーティング技術は、所望の高次モードの効率的な励起を可能にし、また、モード変換器の共鳴的性質による波長選択性を提供することができる。モード変換器の数多くの例が、長周期グレーティングを使用して導波路の中に作り出されるモード変換器を含めて、当業界に存在する。上述の、2乗されたLP
02モードの強度特性の、スパイク形状の中央ローブが、非線形顕微鏡において、LP
01モードに比べて高められた横分解能を可能にする。LP
02モードの高いM
2値(約3)が、LP
01モードに比べて高められた共焦点分解能を可能にする。
【0036】
図4及び
図5は、LP
01モードを使用した非線形顕微鏡システムの分解能を、LP
02モードを使用した非線形顕微鏡システムの分解能と比較するように設計された試験用設定240、270を示す、一対の概略図である。
【0037】
図4の設定240では、1550nmフェムト秒エルビウム・レーザ242からのパルス・レーザ・ビームが、シングル・モード・ファイバ244のLP
01モードで伝播する。
図5の設定270では、1550nmフェムト秒エルビウム・レーザ272からのパルス・レーザ・ビームが、高次モード・ファイバ274のLP
02モードを励起する長周期グレーティング273の中に誘導される。
【0038】
両試験用設定240、270では、ファイバ・レーザ出力246、276が、第1のレンズ248、278でコリメートされる。次いで、コリメート光250、280が、第2のレンズ252、282で合焦される。次いで、焦点254、284が、第3のレンズ256、286によって、インジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)フォトダイオード、シリコン(Si)フォトダイオード、他など、2光子光電流を生み出す、適切な線形または非線形の検出器258、288上に結像する。
【0039】
ナイフ・エッジ260、290が、ビームの焦点254、284を通して平行移動され、検出器258、288上の光電流の量が、ナイフ・エッジの位置の関数として測定される。位置に対するこの曲線の斜度が、顕微鏡の分解能の尺度である。
【0040】
レンズは、両ビームが、集束レンズ252、282の直前のコリメート領域250、280の中で、同じ埋め込みガウス幅を有するように選択される。このことで、ビームの焦点284において、LP
02のビームはLP
01より、幅が約M倍大きいことが確保され、ここでLP
02のビームのM
2は、約3である。
【0041】
図6A〜
図6Cは、LP
01モード及びLP
02モードに対する計算された強度特性に基づいて推測された理論的信号を示す、一連のグラフ300、310、320である。
【0042】
図6Aのグラフ300は、検出器がビームの強度に対して線形に応答する場合の、LP
01モード(曲線301)及びLP
02モード(曲線302)に対する、信号対ナイフ・エッジ位置を示す。
【0043】
図6Bのグラフ310は、2乗された強度に応答する二次の非線形検出器に対して、LP
01モード(曲線311)及びLP
02モード(曲線312)に対する信号を示す。線形検出器の場合、LP
02の曲線は、縁部において外リングに支配され、従って、曲線の勾配は、LP
01のビームより小さい。しかし、非線形検出器に対して、LP
02のビームの外リングは抑制され、LP
02の曲線の勾配はLP
01より鋭くなり、顕微鏡など、非線形、または多光子の物質との相互作用を利用する装置において、LP
02のビームにおける向上された分解能に対する潜在力を示す。
【0044】
図6Cのグラフ(320)は、三次の非線形検出器における、LP
01モード(曲線321)及びLP
02モード(曲線322)に対する信号を示す。さらに大きな、推測された改良が、ウィングのさらなる抑制及びLP
01の分解能のほぼ2倍となるLP
02の分解能によって、示される。
【0045】
図7Aは、線形検出器258、288における、LP
01モード(曲線331)及びLP
02モード(曲線332)に対する、実験的に測定された曲線を示すグラフ330である。
図7Bは、非線形検出器258、288における、LP
01モード(曲線341)及びLP
02モード(曲線342)に対する、実験的に測定された曲線を示すグラフ340である。三次の測定は、これらの実験においてなされなかった。
【0046】
図7A及び
図7Bの実験的曲線331、332、341及び342と、
図6A及び
図6Bの理論的曲線301、302、311及び312との間の対応関係に留意されたい。線形検出器(曲線301、302、331及び332)の場合、LP
02は、外リングのため、比較的悪い分解能をもたらすが、非線形検出器(曲線311、312、341及び342)に対して外リングは抑制され、中央のスパイクが支配し、LP
02の測定値の勾配が、LP
01の勾配より大きくなる。高次モードのメリットは、LP
02の外リングのより良好な抑制をもたらすであろう、第三高調波発生などの高次非線形性に対して、よりいっそう大きいであろう。
【0047】
これらの測定値は、非線形顕微鏡において、LP
02の横分解能が、LP
01の横分解能より良好でありうることを示す。また、HOMは、大きなM
2値を持つビームがより速く回折することによって、共焦点の設定において、より大きなメリットを付加する。
【0048】
図8A及び8Bは、LP
02モードの共焦点分解能をLP
01モードと比較するための実験的設定360、380を示す。
図8Aの設定360では、フェムト秒レーザ362からのパルス・レーザ・ビームが、シングル・モード・ファイバ364のLP
01モードにおいて伝播する。
図8Bの設定380では、フェムト秒レーザ382からのパルス・レーザ・ビームが、シングル・モード・ファイバ383によって、高次モード・ファイバ385のLP
02モードを励起する長周期グレーティング384の中に誘導される。
【0049】
両試験用設定360、380では、ファイバ・レーザ出力366、386が、第1のレンズ368、388でコリメートされる。次いで、コリメート光370、390は、第2のレンズ372、392によって、軸方向に走査されるミラー374、394上に再合焦される。ビームから反射されたパワーは、光システムを通って戻り方向に伝播し、ファイバ364、385の中に戻り方向に結合される。反対方向に伝播するパワーが、95/5スプリッタ376、396の5%タップを通して検出される。また、有利なことに、サーキュレータが、タップの代わりに使用されうる。反射された光パワーが、ミラー位置の関数としてプロットされる。
【0050】
図9Aは、線形検出器に対して測定された共焦点信号を示すグラフ400である。線形検出器に対してさえも、LP
02(曲線402)は、LP
02の大きなM
2値によって、LP
01(曲線401)に比べて、はるかに鋭い応答曲線を有する。
【0051】
図9Bは、非線形検出器の応答が、線形検出器からの信号を2乗することによってシミュレーションされたグラフ410である。
図9Bに見られるように、LP
02モード(曲線412)を有する非線形共焦点顕微鏡は、LP
01モード(曲線411)に比べてずっと鋭い共焦点応答を提示する。
【0052】
本発明の他の態様によれば、本明細書で説明される高次モード・ファイバは、非線形顕微鏡の個別の用途に対して最適化される。一般的に言えば、高次モード非線形顕微鏡において、LP
01入射光を使用する非線形顕微鏡に比べて、より良好な分解能を得るために、モード形状を最適化することが可能である。
【0053】
ファイバの設計を通して、モード形状が、以下の方法で調整されうる。
1.ファイバのM
2値が調整されうる。より低いM
2値が、潜在的に、焦点面においてより密な合焦を可能にする。
2.LP
02モードの、中央ローブ及び外リングにおけるパワーの割合が、調整されうる。外リングにおけるパワーがより少ないと、二次の非線形測定値におけるそのパワーの影響は、小さくなる。
3.外リングの大きさと幅とは、トレードオフされうる。外リングの大きさを減少させながら、同時に幅を増加させることによって、外リングのパワーが一定に保持され、非線形測定値に対する外リングの影響が減少されうる。
4.中央ローブは、潜在的に、より狭くすることができ、分解能が向上する。
5.LP
03またはLP
04など、異なる次数のモードまたはそれらの組合せが、使用されうる。複数のモードが組み合わされた場合、ビームが、所望の方式で、例えば建設的に、試料の上で組み合わさることを確実にするために、モード間の相対的な位相関係に注意する必要がある。
【0054】
これらの設計の調整のすべては、相互に関係づけられていることに、留意することが重要である。例えば、外リングにおけるパワーの割合、またはその幅及び大きさ、を調整することで、やはり、ビームのM
2が変わるであろう。
【0055】
図10は、本発明の態様による、一般的な非線形光システム500の図である。システム500は、構造化された自由空間ビームを出力504として供給する、HOM光源502を含む。照射組立体506が、出力504を使用して試料508に光を当て、それにより、光出力510を試料から生成する。次いで、画像化組立体512が、光出力510から導き出された非線形信号514を使用して、試料508の顕微鏡画像514を生成する。上で説明した本発明の例では、非線形信号は、多光子蛍光信号を含む。あるいは、非線形信号は、例えば、第二高調波信号、第三高調波信号、ラーマン信号、他を含んでよい。
【0056】
図11は、本発明の態様による、一般的な非線形顕微鏡技術600の流れ図である。方法は、以下のステップを含む。
ステップ601:ファイバで誘導されるレーザ光の、低次の高次モードを励起する。
ステップ602:構造化された自由空間ビームを出力として供給する。
ステップ603:構造化された自由空間ビームを使用して、試料の一領域への照射をもたらし、それにより、光出力を試料から生成する。
ステップ604:光出力から導き出された非線形信号を使用して、試料の領域の顕微鏡画像を生成する。
【0057】
上の説明は、当業者が本発明を実施することを可能にするであろう詳細を含むが、説明は本質的に例示的であり、説明に対する多くの改変及び変形が、これらの教示のメリットを有する当業者にとって明白であることを、理解されたい。従って、本明細書の本発明は、本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ定義され、特許請求の範囲は、従来技術によって許容される限り広く解釈されることが意図されている。