【実施例】
【0015】
まず、本実施例に係る顔照合システムのシステム構成について説明する。
図1は、本実施例に係る顔照合システムのシステム構成を示すブロック図である。同図に示すように、この顔照合システムでは、センタに配設された運用管理装置50及び2次照合装置60と、拠点Aに配設された1次照合装置30a及び拠点Bに配設された1次照合装置30bとがネットワーク40を介して接続される。また、1次照合装置30aは、顔検出装置20a及び20bを介してカメラ10a及び10bと接続され、1次照合装置30bは、顔検出装置20c及び20dを介してカメラ10c及び10dと接続されている。
【0016】
ここで、かかるセンタは、入退出管理等のセキュリティ対策が厳重に講じられた区域であり、不正者による顔テンプレートの不正な持ち出しが抑制されている。一方、拠点A及びBは、上記センタほどのセキュリティ対策が講じられていない区域である。なお、カメラ10a〜10dをカメラ10と総称し、顔検出装置20a〜20dを顔検出装置20と総称し、1次照合装置30a〜30bを1次照合装置30と総称する。カメラ10a〜10d、顔検出装置20a〜20d及び1次照合装置30a〜30bは、それぞれ同じ機能を有する装置である。
【0017】
カメラ10は、動画像を撮像できるCCD素子(Charge Coupled Device Image Sensor)からなるカメラである。このカメラ10には、その取付け角度を自動制御する制御機構が設けられており、顔検出装置20からの制御信号により画角等が制御される。
【0018】
顔検出装置20は、カメラ10から受信した動画像データから人の顔画像を検出し、検出した顔画像データを1次照合装置30に送信する装置である。動画像データから顔画像データを検出する場合には、動画像データから静止画像データを順次取り出し、取り出した静止画像に人の顔部分が存在するか否かをテンプレートマッチング技術等により判定する。人の顔部分が存在すると判定した場合には、静止画像データから顔部分の部分画像データ(以下、「入力顔画像データ」と言う)を切り出して、1次照合装置30に送信することになる。
【0019】
また、この顔検出装置20は、所定の位置に存在すべき基準物の基準座標位置をあらかじめ登録しておき、動画像データから取り出した静止画像データに存在する基準物の座標位置と基準座標位置との間に所定値以上の位置ずれが存在する場合には、その位置ずれ量を算出して位置ずれ量を補正するための制御信号をカメラ10の制御機構に送信する。この制御信号を受信した制御機構は、自動的にカメラ10の画角等を変更する。このように、カメラ10の画角等を自動変更することにより、カメラ10を操作して別の方向を見た場合や、物が当たるなどしてカメラ10の方向がずれてしまった場合に、監視すべき方向へ戻すことができる。
【0020】
1次照合装置30は、運用管理装置50から送信され、複数の監視対象者の顔画像データを平均化した平均顔テンプレート32aをあらかじめ記憶部32に記憶し、顔検出装置20で検出された入力顔画像データと記憶部32に記憶した平均顔テンプレート32aとの照合値を算出し、その照合値が所定のしきい値以上である場合に、入力顔画像データを2次照合装置60に対して送信する処理部である。この照合値は、入力顔画像データが平均顔テンプレート32aと近いほど高い値となるものであり、例えば相互相関値等の従来技術を用いて算出することができる。
【0021】
このように、かかる1次照合装置30は、複数の監視対象者の顔画像データそのものではなく、これらの監視対象者の顔画像データを平均化した平均顔テンプレート32aを記憶部32に記憶することとしたので、1次照合装置30がセキュリティ対策の不十分な区域に配置された場合であっても、監視対象者の顔画像データそのものが漏洩する状況を回避することができる。
【0022】
また、この1次照合装置30は、カメラ10の設置時又は該カメラ10の運用開始時に、学習期間としてカメラ10の前を通行する監視対象者を含まない非監視対象者を一定時間撮像し、各カメラ10から顔検出装置20を介して受信した入力顔画像データと平均顔テンプレート32aとの照合値を計算し、その照合値の分布に基づいてしきい値を自動設定する。これにより、学習が完了した後は、カメラ10ごとの最適なしきい値を自動設定することができる。
【0023】
2次照合装置60は、運用管理装置50から送信され、複数の監視対象者の顔画像データからなる複数の顔テンプレート62aをあらかじめ記憶部62に記憶し、1次照合装置30から受信した入力顔画像データと記憶部62に記憶した顔テンプレート62aとの照合値を算出し、その照合値が所定のしきい値以上である場合に、該入力顔画像データ並びに顔テンプレート62aに対応する監視対象者の識別情報を運用管理装置50に対して送信する処理部である。
【0024】
このように、かかる2次照合装置60は、複数の監視対象者の顔テンプレート62すなわち顔画像データそのものと入力顔画像データとを照合処理することとしたので、正確な照合を行うことができる。この際、1次照合装置30でフィルタリングされた入力顔画像データのみを照合対象としているため、処理負荷を軽減することができる。特に、カメラ10の台数が膨大な数にのぼる場合に効果的である。
【0025】
運用管理装置50は、顔照合システム全体の運用管理を行う装置である。具体的には、監視対象者の画像データを識別情報並びに氏名、住所、照合対象理由等の登録情報とともに登録する。かかる監視対象者の画像データは、他のサーバ装置や記憶デバイスから取得する。
【0026】
また、この運用管理装置50は、監視対象者の画像データから顔テンプレート及び平均顔テンプレートを生成して2次照合装置60に送信するとともに、複数の監視対象者の顔テンプレートを平均化して平均顔テンプレートを生成して1次照合装置30に送信する。なお、かかる顔テンプレート及び平均顔テンプレートは、運用管理装置50内部にも記憶する。
【0027】
また、この運用管理装置50は、2次照合装置60から入力顔画像データ及び識別情報を受信したならば、この識別情報を用いて顔テンプレート及び属性情報を検索し、入力顔画像データ、顔テンプレート及び属性情報を表示部52に表示する。なお、入力顔画像データを撮像したカメラ10の位置情報等を併せて表示することもできる。かかる場合には、カメラ10の位置情報を1次照合装置30から取得する必要がある。
【0028】
次に、
図1に示した運用管理装置50の構成を具体的に説明する。
図2は、
図1に示した運用管理装置50の内部構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、この運用管理装置50は、入力部51、表示部52、インタフェース部53、記憶部54及び制御部55を有する。入力部51は、キーボードやマウスからなる入力デバイスであり、表示部52は、液晶パネルやディスプレイ装置からなる表示デバイスである。インタフェース部53は、LAN及びネットワーク40を介して他装置とデータ通信を行うためのインタフェース部である。
【0029】
記憶部54は、フラッシュメモリやハードディスク装置等からなる記憶デバイスであり、登録データ54a、顔テンプレート54b及び平均顔テンプレート54cを記憶する。登録データ54aは、各監視対象者の顔画像データ並びに氏名、住所及び登録理由等の属性情報を該監視対象者の識別情報に対応づけたデータである。顔テンプレート54bは、
図3(a)に示すように監視対象者の顔を複数の向きから見た顔画像データである。平均顔テンプレート54cは、
図3(c)に示すように複数の識別対象者の顔画像を平均化した顔画像データである。
【0030】
制御部55は、運用管理装置50を全体制御する制御装置であり、顔テンプレート生成部55a、平均顔テンプレート生成部55b及び運用管理部55cを有する。顔テンプレート生成部55aは、
図3(a)に示すように監視対象者の顔写真の画像データから顔部分の部分画像データを切り出し、周知の画像処理技術を用いてこの部分画像データ内の顔の向きを変えつつ10個の顔画像データからなる顔テンプレートを生成する。
【0031】
平均顔テンプレート生成部55bは、
図3(b)に示すように、複数の監視対象者の顔写真から顔の部分画像データを切り出し、切り出した部分画像データの顔パーツ(目、鼻、口)等を平均化したものである。なお、平均顔を生成する際には、様々な従来技術を用いることができる。
【0032】
運用管理部55cは、顔照合システム全体の運用管理を行う処理部であり、カメラ10、顔検出装置20、1次照合装置30又は2次照合装置を新たに登録する処理や、これらの登録済み装置を抹消する処理を行う。また、この運用管理部55cは、2次照合装置60から入力顔画像データ及び識別情報を受信したならば、この識別情報に対応する顔画像データ、顔テンプレート及び登録情報を検索し、入力顔画像データとともに表示部52に表示する処理を行う。
【0033】
次に、
図1に示した1次照合装置30の内部構成について説明する。
図4は、
図1に示した1次照合装置30の内部構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、この1次照合装置30は、インタフェース部31、記憶部32及び制御部33を有する。インタフェース部31は、ネットワーク40を介して他装置とデータ通信を行うためのインタフェース部である。
【0034】
記憶部32は、フラッシュメモリやハードディスク装置等からなる記憶デバイスであり、平均顔テンプレート32aを記憶する。この平均顔テンプレート32aは、
図2に示した運用管理装置50から送信されたものであり、運用管理装置50の記憶部54に記憶した平均顔テンプレート54cと同じものである。
【0035】
制御部33は、1次照合装置30を全体制御する制御部であり、平均顔照合処理部33a及び自動しきい値設定部33bを有する。平均顔照合処理部33aは、顔検出装置20から受信した入力顔画像データと記憶部32に記憶した平均顔テンプレート32aとの照合処理を行い、この照合値が所定のしきい値以上である場合に、入力顔画像データを2次照合装置60に送信する処理部である。なお、かかる照合処理には、相互相関処理等の各種従来技術を用いることができる。
【0036】
自動しきい値設定部33bは、カメラ10の設置時又は該カメラ10の運用開始時に、学習期間としてカメラ10の前を通行する監視対象者を含まない非監視対象者を一定時間撮像し、各カメラ10から顔検出装置20を介して受信した入力顔画像データと平均顔テンプレート32aとの照合値を計算し、その照合値の分布に基づいてしきい値を自動設定する処理部である。
【0037】
具体的には、入力顔画像データと平均顔テンプレート32aとの照合値のヒストグラムが、
図5に示すような分布関数となった場合には、この分布関数の平均、分散、標準偏差σを求め、例えば3σをしきい値として設定すれば良い。
【0038】
これにより、学習が完了した後は、カメラ10ごとの最適なしきい値を自動設定することができる。カメラ10ごとに性能、撮影角度、照明環境などがそれぞれ異なる場合があるからである。なお、顔の向きごと、平均顔テンプレート32aが複数存在する場合には平均顔テンプレート32aごとにしきい値を自動設定することもできる。
【0039】
次に、
図1に示した2次照合装置60の内部構成について説明する。
図6は、
図1に示した2次照合装置60の内部構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、この2次照合装置60は、インタフェース部61、記憶部62及び制御部63を有する。インタフェース部61は、LAN及びネットワーク40を介して他装置とデータ通信を行うためのインタフェース部である。
【0040】
記憶部62は、フラッシュメモリやハードディスク装置等からなる記憶デバイスであり、複数の顔テンプレート62aを記憶する。この顔テンプレート62aは、
図2に示した運用管理装置50から送信されたものであり、運用管理装置50の記憶部54に記憶した顔テンプレート54bと同じものである。
【0041】
制御部63は、2次照合装置60を全体制御する制御部であり、顔照合処理部63aを有する。顔照合処理部63aは、1次照合装置30から受信した入力顔画像データと記憶部62に記憶した複数の顔テンプレート62aとの照合処理を行い、この照合値が所定のしきい値以上である場合に、入力顔画像データ及び識別情報を運用管理装置50に送信する処理部である。なお、かかる照合処理についても、相互相関処理等の各種従来技術を用いることができる。
【0042】
次に、
図1に示した顔検出装置20の内部構成について説明する。
図7は、
図1に示した顔検出装置20の内部構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、この顔検出装置20は、インタフェース部21、記憶部22及び制御部23を有する。インタフェース部21は、カメラ10及び1次照合装置30とデータ通信を行うためのインタフェース部である。
【0043】
記憶部22は、フラッシュメモリやハードディスク装置等からなる記憶デバイスであり、カメラ10から受信した動画像データを一時記憶する。一時記憶した動画像データは、運用管理装置50から要求された場合に、該運用管理装置50に対して送信する。
【0044】
制御部23は、顔検出装置20を全体制御する制御部であり、顔検出処理部23a及びカメラ位置制御部23bを有する。顔検出処理部23aは、カメラ10から受信した動画像データを記憶部22に記憶するとともに、該動画像データから人の顔画像を検出し、検出した顔画像データを1次照合装置30に送信する処理部である。具体的には、動画像データから静止画像データを順次取り出し、取り出した静止画像に人の顔部分が存在するか否かをテンプレートマッチング技術等により判定する。
【0045】
カメラ位置制御部23bは、所定の位置に存在すべき基準物の基準座標位置をあらかじめ登録しておき、動画像データから取り出した静止画像に存在する基準物の座標位置と基準座標位置との間に所定値以上の位置ずれが存在する場合には、その位置ずれ量を算出して位置ずれ量を補正するための制御信号をカメラ10の制御機構に送信する。
【0046】
次に、顔テンプレート及び平均顔テンプレートの登録処理手順について説明する。
図8は、
図1に示した運用管理装置50による顔テンプレート及び平均顔テンプレートの登録処理手順を示すフローチャートである。
【0047】
図8に示すように、運用管理装置50は、他のサーバ装置又は記憶デバイスから顔写真データを取り込み、識別情報を付与しつつ属性情報の登録を終えたならば(ステップS101)、顔テンプレートを生成する(ステップS102)。具体的には、
図3(a)に示すように、テンプレートマッチング等を用いて顔写真データから顔の部分画像データを切り出し、この部分画像データ内の顔の向きを既存の画像処理技術で変えつつ10個の顔画像データを生成し、これを顔テンプレートとする。
【0048】
その後、平均顔テンプレートを生成する(ステップS103)。具体的には、
図3(b)に示すように、複数の顔写真から顔の部分画像データを切り出し、既存技術を用いて顔パーツを平均化しつつ平均顔を生成する。
【0049】
そして、生成した顔テンプレート54b及び平均顔テンプレート54cを記憶部54に記憶した後(ステップS104)、他の顔写真データが存在する場合には(ステップS105;Yes)ステップS101に移行して同様の処理を繰り返す。
【0050】
一方、他の顔写真データが存在しない場合には(ステップS105;No)、顔テンプレートを2次照合装置60に送信するとともに(ステップS106)、平均顔テンプレートを1次照合装置30に対して送信する(ステップS107)。
【0051】
2次照合装置60は、かかる顔テンプレートを受信したならば(ステップS108;Yes)、受信した顔テンプレートを記憶部62に登録する(ステップS109)。同様に、1次照合装置30は、上記平均顔テンプレートを受信したならば(ステップS110;Yes)、受信した平均顔テンプレートを記憶部32に登録する(ステップS111)。
【0052】
上記一連の処理を行うことにより、1次照合装置30に平均顔テンプレート32aを登録するとともに、2次照合装置60に顔テンプレート62aを登録して、顔照合処理を行う準備が完了することになる。
【0053】
次に、
図1に示した1次照合装置30及び2次照合装置60による照合処理を経て、入力顔画像データを表示するまでの処理手順について説明する。
図9は、
図1に示した1次照合装置30及び2次照合装置60による照合処理を経て、入力顔画像データを表示するまでの処理手順を示すフローチャートである。
【0054】
まず、カメラ10により撮像された動画像データが顔検出装置20が受信し、顔検出装置20が動画像データから静止画像データを切り出して人の顔画像データを抽出して、これを入力顔画像データとして1次照合装置30に送信する。
【0055】
1次照合装置30は、この入力顔画像データを受信したならば(ステップS201;Yes)、この入力顔画像データを平均顔テンプレート32aと照合する平均顔照合処理を行い(ステップS202)、照合値が所定のしきい値以上である場合には(ステップS203;Yes)、入力顔画像データを2次照合装置60に対して送信する(ステップS204)。なお、照合値が所定のしきい値未満である場合には(ステップS203;No)、入力顔画像データを2次照合装置60に対して送信しない。
【0056】
2次照合装置60は、この入力顔画像データを受信したならば(ステップS205;Yes)、この入力顔画像データを顔テンプレート62aと照合する顔照合処理を行い(ステップS206)、照合値が所定のしきい値以上である場合には(ステップS207;Yes)、入力顔画像データ及び識別情報を運用管理装置50に対して送信する(ステップS208)。なお、照合値が所定のしきい値未満である場合には(ステップS207;No)、入力顔画像データ及び識別情報を運用管理装置50に対して送信しない。
【0057】
運用管理装置50は、入力顔画像データ及び識別情報を受信したならば(ステップS209;Yes)、この識別情報を用いて顔テンプレート及び属性情報を検索し、入力顔画像データ、顔テンプレート及び属性情報を表示する(ステップS210)。なお、この属性情報には、監視対象者の氏名、住所、照合対象とされた理由等のほか、顔写真データも含まれる。
【0058】
なお、
図10に示したように、運用管理装置70の制御部55内に追跡処理部72及び身体テンプレート生成部73を設けることもできる。追跡処理部72は、監視対象者の存在位置を追跡処理する処理部である。すでに説明した一連の処理を通じて、カメラ10により撮像された動画像データ内に監視対象者が存在すれば、この監視対象者の入力顔画像データ等が運用管理装置70に通知される。
【0059】
ここで、運用管理装置70は、最終的な入力顔画像データを受信する際に併せてカメラ10の識別情報及び撮影時刻を受信することができれば、「該当する監視対象者がいつどこにいたか」の情報を入手できる。このため、追跡処理部72は、2次照合装置60から通知される情報を用いて監視対象者の行動軌跡を収集し、監視対象者の移動経路を把握するための追跡処理に利用することができる。なお、かかる追跡処理を行うためには、顔検出装置20が1次照合装置30に対して入力顔画像データとともにカメラ10の識別情報及び撮影時刻を通知し、同様に1次照合装置30が2次照合装置に対して入力顔画像データとともにカメラ10の識別情報及び撮影時刻を通知する必要がある。なお、追跡処理の詳細については、既存技術を用いることができるが、経路予測を行いつつ追跡処理を行うことが望ましい。
【0060】
身体テンプレート生成部73は、監視対象者の身体テンプレート71を生成する処理部であり、例えば、姿全体や身長、色などの外観上の特徴や、歩き方などの動作の特徴の特徴量を身体テンプレート71とすることができる。
【0061】
具体的には、
図3(a)に示した顔テンプレートと同様のものを体全体の写真から生成し、生成した身体テンプレート71を1次照合装置30に対して送信するとともに、記憶部54内に記憶する。この身体テンプレート71を受信した1次照合装置30は、身体テンプレート71を用いた照合処理によって所定の照合率以上の結果が得られた場合に、運用管理装置70に対してその結果を通知することになる。かかる身体テンプレート71を用いた処理を行うことにより、動画像データ内に監視対象者の顔が撮像されていない場合であっても追跡処理を行うことができる。なお、平均身体テンプレートを生成して1次照合装置30に送信するとともに、身体テンプレート71を2次照合装置60に送信し、上記顔画像を用いた照合処理と同様の処理を行うこともできる。そして、顔が検出されたカメラ10から一定の範囲内に設置されたカメラ10の画像を所定時間遡って照合して検出処理することで、移動経路を推定することができる。
【0062】
上述してきたように、本実施例では、各拠点に配置された1次照合装置30では、カメラ10で撮像され顔検出装置20で検出された入力顔画像データを平均顔テンプレート32aと照合処理して所定のしきい値以上である場合に入力顔画像データを2次照合装置60に送信し、2次照合装置では、この入力顔画像データを顔テンプレートと照合処理するよう構成したので、セキュリティ対策が講じられていない拠点に顔テンプレートを置く必要がなくなるため、情報の漏洩を防止することができる。併せて、カメラ10の設置台数が累増した場合であっても、2次照合装置60の処理負荷を軽減することができる。
【0063】
なお、上記実施例では、4台のカメラ10、4台の顔検出装置20、2台の1次照合装置30及び1台の2次照合装置60を用いた場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、より多くのカメラ10等を設けた場合に適用することができる。特に、数千〜数万台のカメラ10を設けた場合で適している。この場合であっても、2次照合装置60の処理負荷を軽減するとともに、監視対象者の情報漏洩を防止することができる。
【0064】
また、上記実施例では、平均顔テンプレートを生成する際に、複数の監視対象者の顔のパーツを平均化する場合を示したが、平均化に伴う監視対象者の個人特徴の喪失を防ぐために、監視対象者の顔パーツのうちの特異な顔パーツを重み付け処理することもできる。また、多数の監視対象者の顔画像データを用いて1つの平均顔テンプレートのみを生成すると、個人特徴を喪失する可能性が高まるため、所定人数毎(例えば10人)に平均顔テンプレートを生成することが考えられる。この場合、抽出した特徴が似ているものをグループとすることが望ましい。例えば、特徴量の空間で、所定の距離の範囲内にある顔で平均顔を生成することが望まれる。
【0065】
さらに、上記実施例では、具体的な事例への言及を省略したが、民間の監視カメラを用いた警察庁によるテロリストや指名手配被疑者の検挙や、事業所内の構内監視システム、ゴト師や万引き容疑人物の検知等に用いることができる。
【0066】
この際、処理対象とする人物をあらかじめ絞り込んでサーバの処理を軽減することもできる。例えば、駅の自動改札を通過する人をカメラ10で撮影する場合に、定期券を持った人物を処理対象から除外することで絞り込みを行うことができる。この場合には、あらかじめ定期券の購入時に定期券購入者を非検出対象者として事前登録しておき、改札機にて読み取った人物のうち定期券購入者を非検出対象者として照合処理から除外することになる。また、定期券交換によるなりすましについては、定期券によりIDが判明しているので1対1照合することができるため、サーバの負荷は比較的低い。さらに、地方からの出張者や旅行者などに対しては、通行数の少ない地方の駅のサーバで処理して非検出対象者であることが判明したならば、そのチケットを所持する人物を照合対象から除外することができる。
【0067】
また、上記実施例では、合成顔テンプレートの一例として平均顔テンプレートを用いる場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の顔画像データから生成したモンタージュやモーフィングを用いることもできる。