【実施例1】
【0017】
図1に示す本発明の実施例1に係る流体回転車1は、水流によって作動させられるもので、
図2に示すように、前後方向を向く紡錘形の軸受筐体2の内部に、前後方向を向く主軸3が、軸受2Aを介して横架されている。
主軸3の後端部は、軸受筐体2の後端から後方へ突出されている。
【0018】
軸受筐体2の前部上面に、管状の支
柱体4を立設してあり、その内部には、軸受4Aをもって枢支した、縦方向を向く伝動軸5が設けられている。
主軸3の前端と伝動軸5の下端には、それぞれ互いに噛合する傘歯車6A、6Bを固着して、伝動手段6を形成してある。
【0019】
主軸3の後端には、翼車7のハブ8を固着してある。翼車7は、ハブ8から放射方向を向く複数(図で5枚)の
揚力型ブレード9(
以下単にブレードという)を備えている。 ブレード9は、正面視において、翼根から先端へかけて次第に弦長を大きくし、翼端付近に最大弦長部9Bが位置するように形成し、最大弦長部9Bから翼端へかけて、やや先細に形成してある。
【0020】
ブレード9の側面形は、
図4に示すように、翼根から翼端へかけて、前面線9eと背面線9fとは平行で、回転軸心線Sと直交している。また最大弦長部9Bを基点として、翼端部を前面方向へ傾斜する傾斜部9Aとしてある。
この傾斜部9Aの傾斜角度は、
図4においては、前面線9eに対して35度〜45度としてある。
【0021】
この傾斜部9Aは、
図5における前縁9Cと後縁9Dを結ぶ翼弦線に対して、直角方向へ傾斜している。回転方向に対してキャンバが、後縁9Dを背面方向へ10度傾斜している時には、傾斜部9Aの先端が向く方向は、回転軸心線Sに対して、後縁方向へ10度斜め向きに傾斜する。
【0022】
ブレード9の翼端を、上向きとした状態におけるブレード9は、平面視において、
図5、
図6に示すように、背面9Fは、回転軸心線Sに対して直交し、かつ平坦面としてある。ブレード9の前面9Gは、回転方向の前端縁9Cに近い部分に、最大翼厚部9Eを有し、ここから後縁9Dにかけて、次第に背面9F方向へ薄くなるように傾斜する傾斜面としてある。
【0023】
図1、
図2に示すように、軸受筐体2の外周後端部に、複数の板状支持体11を介して、案内環10を、軸受筐体2を囲むように、かつ後端部がブレード9と接しないようにして設けてある。板状支持体11は、軸受筐体2から放射方向を向き、かつ軸心方向へ向けて固定してある。
【0024】
案内環10の外周面の直径は、前縁よりも後縁へ向かって、漸次小径となっており、かつ、その内周面10Aは、
図2に示すように、前部から後部へかけて、その延長線が、ブレード9の傾斜部9Aの前面に当るように傾斜している。
【0025】
上記の構成において、前方から案内環10に当るA矢示の水流は、後縁がやや小径となっている案内環10の内周面10Aで加圧されて、ブレード9に向かって流れる。
各ブレード9に当る水流は、前向き傾斜部9Aにおける傾斜面を滑り、最大弦長部9Bに高速で集合し、後方、すなわち
図6におけるZ矢示方向へ通過するので、回転効率は高まる。
【0026】
この場合、ブレード9の翼端部が、案内環10の中に位置しているものは、案内環10内を、高速で通過しようとする流体の進路を阻むことになり、特に高速回転をすると、ブレード9による遮蔽壁が、案内環10の中に形成されることになる。
【0027】
その点、案内環10の後端面とブレード9の翼端前面とは、適度な間隔で前後に離間しているため、案内環10の内周面10Aに沿って通過する流体10aは、後方へ怒濤のように流れることができ、その勢いで、翼車7は高速回転させられる。
【0028】
特に、案内環10の内周面10Aに沿って通過する水流10a(
図2)は、案内環10の、後縁の直径が小となっているため、圧縮されて、他の部分よりも水圧が高まり、かつ案内環10の後縁から、常圧の後方へ出るときに、水流10aは、
図2で示すように、遠心後方向へ拡散するため、流体は外周方向へ勢いよく拡散する。
【0029】
この流体圧の高い水流10aは、ブレード9の前向き傾斜部9Aの前面で、最大弦長部9Bに当るので、翼車7の回転効率が高まる。
すなわち、最大弦長部9Bは翼端にあり、ここに多量の流水が当ると、その動圧により、梃子の原理で主軸3の回転効率が高められる。
【0030】
また流水は、物体の外形に沿って流れるため、案内環10の傾斜した外周面に沿う流水も、内周面に沿う流水と交叉して、直進する水流よりも加速され、ブレード9の最大弦長部9Bに当る。
【0031】
図2に示すように、軸受筐体2の側面形は、前部の直径が大で、後端へかけて次第に小径に形成してあるので、この軸受筐体2の周面に沿って流れる流水は、コアンダ効果によって次第に加速されて、ブレード9の翼根部に当る。この流水は、
図8におけるX矢示流となって、ブレード9を回転方向へ押す。
【0032】
ブレード9の前面9Gに当たるA矢示水流は、翼端方向へ拡散するが、翼根部、中間部、翼端においては、それぞれ
図6、
図7、
図8に示すように、X矢示、Y矢示、Z矢示流となって、ブレード9を回転方向へ押す。
【0033】
図9は、
図6〜
図8における流体の方向を示すものである。ブレード9の翼長は、翼根から翼端へかけて長くしてあるので、回転時におけるブレード9の周速は、翼根よりも翼端の方が速くなり、その表面を滑るX流、Y流、Z流の流体も、それに比例して早くなる。例えば、
図9に示すX流に比して、Z流は3.5倍以上速くなる。
【0034】
図9におけるX矢示、Y矢示、Z矢示の流体による、ブレード9に対する作用の反作用として、ブレード9は左方、すなわち回転方向へ回転させられる。ブレード9の回転に伴って、ブレード9の前縁9Cは、B矢示方向の相対流を受け、B矢示水流は、ブレード9の前縁において、ブレード9の表裏に分岐する。
【0035】
図9における、ブレード9の背面9Fに沿うb矢示水流は、回転軸心線Sと直交方向に進む。ブレード9の前面9Gに沿う水流は、最大翼厚部9B部が前面にあり、背面よりもb矢示水流の流れる距離が長くなるため、背面9Fよりも前面9Gの水流が高速となり、流体圧は低下する。
【0036】
従って、前面9Gを通過する水流は、最大翼厚部9Bを通過すると共に、後縁9Dへ向けて高速となり、流体圧が小となって通過し、X矢示、Y矢示、Z矢示水流となる。 周囲よりも負圧となるこのX矢示、Y矢示、Z矢示流に対して、常圧のA矢示流が、流体圧の差でブレード9の前面9Gの後部に集合して当り、ブレード9の回転効率を高める。
【0037】
このように、ブレード9の最大弦長部9Bを基点として、前向き傾斜部9Aを形成し、かつ、案内環10のやや小径となっている後端部を、傾斜部9Bのやや前向で、傾斜部9Bに対向させてあるため、流体圧の差で拡散する力を利用して、ブレード9は高速回転をする。
これにより、同じ流体を利用しても、流体回転車1の高速回転をさせることができ、水力や風力を広い分野で、活用する事ができる。
【実施例2】
【0038】
図10は、流体回転車1の実施例2の側面図である。前例と同じ部材には、同じ符号を付して説明を省略する。
図10において、前記した流体回転車1の軸受筐体2の前部に、取付部材12Cを介して、軸受筐体2の
板状支持体11に、着脱可能の防塵網12を装着してある。
【0039】
防塵網12は、前後2重とし、前網12Aは中心から放射方向を向く長杆12aの簾とし、後網12Bは、同じく間隙を狭くした長杆12aの簾としてある。前網12Aは、後端部を前後方向を向く圧縮バネ12Dにより支持され、水中で、波により前頭部12Eを中心に、前後左右に揺動させて、付着した塵を振払うようになっている。
【0040】
なお
図10において、管状の支
柱体4の上部には、発電筐体14を装着してある。符号13は、案内環10と発電筐体14の後部とを連結する補助支柱である。発電筐体14の中に発電機15を配設してあり、図示しない傘歯車を介して、主軸に連携した伝動軸5の上端を、回転体17に固定した発電部16の中央部へ、貫通させて固定してある。 回転体17の中には、発電部16における、発電コイル18に対応する磁石19を配設してある。符号20は蓄電池である。
【0041】
このように形成された流体回転車1を、例えば
図11に示すように、用水路21の両岸に跨って架設した支持橋22から吊設して、翼車7を水中に沈設させておくと、
図2におけるA矢示流は、案内環10の内周面10Aにおける傾斜面で圧縮され、高速でブレード9の傾斜部9Aに衝突し、最大弦長部9Bに集合して、翼車7を効率良く回転させる。
【0042】
翼車7の回転に伴い、
図2における主軸3の回転力は、伝動軸5を介して、発電機15の回転体17を回転させる。これによって、回転体17における磁石19の磁束が、間欠的に下の発電コイル18に作用して発電し、蓄電池20に蓄電される。
【0043】
常に水が流れている用水路21に、流体回転車1を、適度の間隔置きに列設することによって、一つの用水路21に、流体回転車1を多数設置して、大量の発電をさせることができる。
【0044】
この場合、流体回転車1のやや上流において、用水路21に塵埃除去装置23を配設しておけば、流体回転車1の防塵網12をなくすことができる。用水路21の大きさや断面形によって、流体回転車1の大きさや設置個所を設定する。