特許第5730007号(P5730007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タカタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5730007-帯状生地の染料液塗布装置 図000002
  • 特許5730007-帯状生地の染料液塗布装置 図000003
  • 特許5730007-帯状生地の染料液塗布装置 図000004
  • 特許5730007-帯状生地の染料液塗布装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730007
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】帯状生地の染料液塗布装置
(51)【国際特許分類】
   D06P 5/00 20060101AFI20150514BHJP
   B05C 1/08 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   D06P5/00 111A
   B05C1/08
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-290012(P2010-290012)
(22)【出願日】2010年12月27日
(65)【公開番号】特開2012-136805(P2012-136805A)
(43)【公開日】2012年7月19日
【審査請求日】2013年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】306009581
【氏名又は名称】タカタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094787
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100088041
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 龍吉
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(72)【発明者】
【氏名】福井章
【審査官】 岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−053497(JP,A)
【文献】 国際公開第98/011292(WO,A1)
【文献】 特開平11−140768(JP,A)
【文献】 特開昭63−099384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06P 5/00
B05C 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状生地を搬入する搬入部と、
前記搬入部から搬入された前記帯状生地の両面の少なくとも一方の面に染料液を塗布する面塗布部と、
前記面塗布部で前記帯状生地の両面の少なくとも一方の面に染料液を塗布された前記帯状生地を搬出する搬出部と、
前記搬出部から搬出された前記帯状生地の両側縁の少なくとも一方の側縁に染料液を塗布する側縁塗布部と、
を有し、
前記側縁塗布部は、前記搬出部から搬出された前記帯状生地の各側縁にそれぞれ当接および離間するように位置調整可能であるとともに前記染料液を前記帯状生地の各側縁に塗布するように回転可能な一対の塗布ローラを有することを特徴とする帯状生地の染料液塗布装置。
【請求項2】
前記一対の塗布ローラは、それぞれ、回転可能に設けられたローラ本体と、これらのローラ本体にそれぞれ固定されかつ前記染料液が含浸されたシート状の塗布部材とを有することを特徴とする請求項1に記載の帯状生地の染料液塗布装置。
【請求項3】
前記一対の塗布ローラは、前記帯状生地の移動に連動して連れ回りで回転することを特徴とする請求項1または2に記載の帯状生地の染料液塗布装置。
【請求項4】
前記一対の塗布ローラは、それぞれそれらの上端部が截頭円錐台形状部または円錐形状部とされており、
前記截頭円錐台形状部または前記円錐形状部に前記染料液が滴下あるいは流下されることを特徴とする請求項2またはに記載の帯状生地の染料液塗布装置。
【請求項5】
前記搬出部から搬出された前記帯状生地に、前記帯状生地の長手方向にテンションを付与するテンション部材を有することを特徴とする請求項ないしのいずれか1項に記載の帯状生地の染料液塗布装置。
【請求項6】
前記帯状生地は、シートベルト用ウェビングであることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の帯状生地の染料液塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に装備されるシートベルト装置に用いられて乗員を拘束するウェビング等の細長い可撓性の帯状生地に染料液を塗布する帯状生地の染料液塗布装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車等の車両に装備されているシートベルト装置は、車両衝突時等の車両に大きな減速度が生じた緊急時にシートベルトで乗員を拘束する。このようなシートベルトは可撓性の帯状生地である細長いウェビングから構成されている。
【0003】
ところで、従来、シートベルトに用いられるウェビングの生地の両面は種々の色の染料液が塗布されて種々の色に形成されたり、種々の模様が形成されたりしている場合がある。このため、従来から種々の帯状生地の染料液塗布装置が提案されている。
【0004】
従来のこの種の帯状生地の染料液塗布装置として、環境負荷を低減しながら種々の色や模様の印刷を生地の両面に施すことができ、シートベルト装置のウェビングのような帯状の生地の連続印刷に適したインクジェット染色装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図4は、特許文献1に記載のインクジェット染色装置を示す図である。図中、1はインクジェット染色装置、2は搬入部、2aは搬入側ダンサーローラ、2bは搬入側テンションローラ、3は第1の印刷部、3aは第1のインクジェットヘッド、3bは第1のインクタンク、4は第2の印刷部、4aは第2のインクジェットヘッド、4bは第2のインクタンク、5は第1の表面乾燥部、6は第1の反転部、7は第2の表面乾燥部、8は第2の反転部、9は第1の裏面乾燥部、10は第2の裏面乾燥部、11は搬出部、11aは搬出側ダンサーローラ、11bは搬出側テンションローラ、12〜30は搬送ローラー、31は制御部、32はシートベルト用の帯生地であるウェビングである。
【0006】
このインクジェット染色装置1においては、ウェビング32の表裏両面に染料液であるインク液を塗布するにあたり、制御部31は搬入側ダンサーローラ2aを回転駆動する。そして、搬入部2からシートベルトの生地であるウェビング32がインクジェット染色装置1内に搬入される。すると、ウェビング32は搬入側ダンサーローラ2aおよび搬入側テンションローラ2bを通り、インクジェット染色装置1内に進入する。
【0007】
更に、ウェビング32は搬送ローラ12〜14により搬送されてウェビング32の表面が第1の印刷部3の第1のインクジェット3aに対向する位置に到達する(表面が上向きである)。すると、制御部31は第1のインクジェット3aを作動させ、第1のインクジェット3aは第1のインクタンク3b内のインク液を噴出してウェビング32の表面に塗布する。更に、ウェビング32は搬送ローラ15により搬送されて第2の印刷部4の第2のインクジェット4aに対向する位置に到達する。すると、制御部31は第2のインクジェット4aを作動させ、第2のインクジェット4aは第2のインクタンク4b内のインク液を噴出してウェビング32の表面に塗布する。
【0008】
更に、ウェビング32は搬送ローラ16〜20により搬送されて第1の表面乾燥部5および第1の反転部6に到達する。このとき、ウェビング32は搬送ローラ16〜20に到達して時点ではその裏面が上向きとなっている。そして、ウェビングは、インク液が塗布されたウェビング32の表面が第1の表面乾燥部5で乾燥されながら、第1の反転部6で
約90度転回される。更に、ウェビング32は搬送ローラ21により搬送されて第2の表面乾燥部7および第2の反転部8に到達する。すると、ウェビング32は、インク液が塗布されたウェビング32の表面が第2の表面乾燥部7で乾燥されながら、第2の反転部6で更に約90度転回される。こうして、ウェビング32は180度反転されて、搬送ローラ22に到達した時点ではその表面が上向きとなる。
【0009】
更に、ウェビング32は搬送ローラ22,23により搬送されて再び搬送ローラ13に
到達する。このとき、搬送ローラ13においては、搬入部2から搬送されてくるウェビング32と、搬送ローラ22,23によって搬送されかつ表面にインク液が塗布されたウェ
ビング32とが、搬送ローラ13の軸方向にずれて並行に搬送される。以後、これらの2つのウェビング32は、搬送ローラ13から搬送ローラー18まで並行して搬送される。そして、2つの並行し搬送されるウェビング32は、ともに第1の印刷部3の第1のインクジェット3aに対向する位置に到達する。このとき、搬入部2から搬送されてくるウェビング32は表面が上向きとなるとともに、表面にインク液が塗布されたウェビング32は裏面が上向きとなろ。したがって、作動している第1のインクジェット3aは前述と同様にしてインク液を一方のウェビング32の表面と他方のウェビング32の裏面とに塗布する。更に、2つのウェビング32は並行して第2の印刷部4の第2のインクジェット4aに対向する位置に搬送される。すると、第2の印刷部4の第2のインクジェット4aは、同様にしてインク液を一方のウェビング32の表面と他方のウェビング32の裏面とに塗布する。
【0010】
更に、2つの並行し搬送されるウェビング32は搬送ローラ18に到達すると、表面だけインク液が塗布された一方のウェビング32は前述と同様にして第1の表面乾燥部5の方へ搬送され、以後前述と同様に塗布処理される。一方、表裏両面にインク液が塗布された他方のウェビング32は搬送ローラ24の方へ搬送される。そして、ウェビング32は搬送ローラ24に到達すると、搬送ローラ24,25により搬送されて第1の裏面乾燥部
9に到達する。これにより、ウェビング32は、インク液が塗布されたウェビング32の裏面が第1の裏面乾燥部9で乾燥される。更に、ウェビング32は搬送ローラ26,27
で搬送されて第2の裏面乾燥部10に到達する。これにより、ウェビング32は、インク液が塗布されたウェビング32の裏面が第2の裏面乾燥部10で乾燥される。更に、ウェビング32は搬送ローラ28〜30により搬送されて搬出部11に進入する。すると、ウェビング32は搬出側テンションローラ11bおよび搬出側ダンサーローラ11aを通ってインクジェット染色装置1の外へ搬出される。
こうして、インクジェット染色装置1により細長いウェビング32の表裏両面にインク液が連続して塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−53497号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、シートベルトの生地であるウェビング32のような帯状生地の中には、帯状生地の表裏両面に染料液が塗布されるだけではなく、細長い帯状生地の両側縁にも染料液を塗布することが求められる帯状生地もある。
【0013】
しかしながら、前述の特許文献1に記載のインクジェット染色装置1ではウェビング32の表裏両面にインク液を効果的に塗布することはできるが、ウェビング32の両側縁にインク液を塗布することは難しい。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、細長い帯状生地の表裏両面の少なくとも一方の面および両側縁の少なくとも一方の側縁のいずれにも染料液を効果的に塗布することができる帯状生地の染料液塗布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の課題を解決するために、本発明に係る帯状生地の染料液塗布装置は、帯状生地を搬入する搬入部と、前記搬入部から搬入された前記帯状生地の両面の少なくとも一方の面に染料液を塗布する面塗布部と、前記面塗布部で前記帯状生地の両面の少なくとも一方の面に染料液を塗布された前記帯状生地を搬出する搬出部と、前記搬出部から搬出された前記帯状生地の両側縁の少なくとも一方の側縁に染料液を塗布する側縁塗布部とを有し、前記側縁塗布部が、前記搬出部から搬出された前記帯状生地の各側縁にそれぞれ当接および離間するように位置調整可能であるとともに前記染料液を前記帯状生地の各側縁に塗布するように回転可能な一対の塗布ローラを有することを特徴としている。
【0016】
また、本発明に係る帯状生地の染料液塗布装置は、前記一対の塗布ローラが、それぞれ、回転可能に設けられたローラ本体と、これらのローラ本体にそれぞれ固定されかつ前記染料液が含浸されたシート状の塗布部材とを有することを特徴としている。
【0017】
更に、本発明に係る帯状生地の染料液塗布装置は、前記一対の塗布ローラが、前記帯状生地の移動に連動して連れ回りで回転することを特徴としている。
更に、本発明に係る帯状生地の染料液塗布装置は、前記一対の塗布ローラが、それぞれそれらの上端部が截頭円錐台形状部または円錐形状部とされており、前記截頭円錐台形状部または前記円錐形状部に前記染料液が滴下あるいは流下されることを特徴としている。
【0018】
更に、本発明に係る帯状生地の染料液塗布装置は、前記搬出部から搬出された前記帯状生地に、前記帯状生地の長手方向にテンションを付与するテンション部材を有することを特徴としている。
更に、本発明に係る帯状生地の染料液塗布装置は、前記帯状生地が、シートベルト用ウェビングであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
このように構成された本発明に係る帯状生地の染料液塗布装置によれば、面塗布部と一対の塗布ローラを有する側縁塗布部が配設される。したがって、面塗布部の搬出部から搬出されて表裏両面の少なくとも一方の面に染料液が塗布された帯状生地の両縁に、それぞれ側縁塗布部の各塗布ローラによって染料液を塗布することが可能となる。
【0020】
その場合、一対の塗布ローラは位置調整可能に配設されるので、帯状生地の両側縁のうち少なくとも一方の側縁の染料液を塗布する必要がない場合には、塗布ローラを塗布する必要がない側縁に当接しないように位置決めすることができる。これにより、帯状生地の側縁への染料液の塗布に対して、柔軟に対応することが可能となる。しかも側縁塗布部の塗布ローラとして、帯状生地の各側縁にそれぞれ染料液を塗布する一対の塗布ローラとして構成することで、帯状生地の側縁に染料液を塗布する側縁塗布部の構造を簡単に形成することができる。
【0021】
更に、一対の塗布ローラ置調整可能に配設することで、帯状生地の両側縁の少なくとも一方の側縁に染料液を塗布する必要がない場合には、染料液を塗布する必要がない側縁に対応する塗布ローラをこの側縁に当接しないように位置決めすることができる。これにより、帯状生地の側縁への染料液の塗布に対して、柔軟に対応することが可能となる。
【0022】
更に、一対の塗布ローラが、それぞれ、回転可能に設けられたローラ本体にそれぞれ固定されかつ染料液が含浸されたシート状の塗布部材を有している。これにより、帯状生地の側縁に染料液を塗布する塗布部材を安価にかつ簡単に形成することができる。
【0023】
更に、各塗布ローラは帯状生地の移動に連動して連れ回りで回転するようにしている。これにより、各塗布ローラを駆動するためのモータや電磁ソレノイド等の駆動源が不要となる。これにより、側縁塗布部の構造を更に一層簡略化することが可能になるとともにコストを低減することができる。
【0024】
更に、各塗布ローラの上端部が截頭円錐台形状部または円錐形状部とされている。これにより、截頭円錐台形状部または円錐形状部に滴下あるいは流下した染料液を、各塗布ローラを回転させることで、各塗布ローラの外周面の全周にわたって広がりながら流下させることができる。これにより、染料液を各塗布部材の全体に効果的にかつ簡単に含浸させることが可能となる。
【0025】
更に、面塗布部の搬出部から搬出された帯状生地はテンション部材で、帯状生地の長手方向にテンションが付与される。これにより、帯状生地の両側縁が各塗布部材に弱く当接しても帯状生地がその幅方向(長手方向と直交する方向)に撓むことを防止できる。したがって、各塗布部材によって染料液を帯状生地の両側縁に安定して十分に塗布することが可能となる。
【0026】
更に、本発明に係る帯状生地の染料液塗布装置によりシートベルト用ウェビングの表裏両面の少なくとも一方の面および帯状生地の両側縁の少なくとも一方の側縁のいずれにも染料液を塗布することで、種々の色のシートベルトや種々の模様のシートベルトを形成することができ、シートベルトに対するユーザーの様々な要望に柔軟対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明にかかる帯状生地の染料液塗布装置の実施の形態の一例を模式的に示す図である。
図2図1に示す側縁塗布部の拡大図である。
図3図2におけるIII方向から見た部分拡大図である。
図4】特許文献1に記載のインクジェット染色装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明にかかる帯状生地の染料液塗布装置の実施の形態の一例を模式的に示す図である。なお、本発明の実施の形態において、前述の図4に示す従来のインクジェット染色装置1と同じ構成要素には同じ符号を付すことで、それらの詳細な説明は省略する。
【0029】
図1に示すように、この例の帯状生地の染料液塗布装置は、前述と同様にシートベルトの可撓性の帯状生地であるシートベルト用のウェビング32にインク液を塗布するインクジェット染色装置1である。この例のインクジェット染色装置1は、ウェビング32の表裏両面にインク液を塗布する面塗布部(あるいは、面印刷部)33と、ウェビング32の両側縁にインク液を塗布する側縁塗布部(あるいは、側縁印刷部)34とを備えている。
【0030】
面塗布部33は、特許文献1の図5に記載のインクジェット染色装置と同じ、すなわち前述の図4に示すインクジェット染色装置と同じである。したがって、面塗布部33の構成および作用効果は、特許文献1の記載および前述の図4に示すインクジェット染色装置の記載を参照すれば容易に理解できるので、以下の説明においては面塗布部33の詳細な説明は省略する。なお、この例の面塗布部33において、前述の図4に示すインクジェット染色装置1の構成要素と同じ構成要素には、前述の図4に示す符号と同じ符号を付す。
【0031】
図2図1に示す側縁塗布部の拡大図、図3図2におけるIII方向から見た部分拡大
図である。
図2および図3に示すようにこの例のインクジェット染色装置1における側縁塗布部34は、面塗布部33の搬出部11から搬出されてきたウェビング32の搬送経路に配設されている。この側縁塗布部34は、一対の塗布ローラ35,36、2つのインク液貯留容
器37,38、2つの開閉弁39,40、2本の可撓性の配管(チューブ)41,42、2
つのノズル43,44、1本の円柱状または円筒状のガイド45、および回収容器46を
備える。
【0032】
各塗布ローラ35,36はまったく同じ構成を有している。各塗布ローラ35,36は、それぞれ各ローラ本体35a,36aと、各ローラ本体35a,36aに固定された各塗布部材35b,36bと、被支持部35c,36cと、固定ねじ35d,36dとを有する。
各ローラ本体35a,36aは、それぞれ各被支持部35c,36cに突設された回転軸(不図示)に回転可能に支持されている。また、各ローラ本体35a,36aは、それぞれ
円筒状部35e,36eとそれらの上端部に形成された截頭円錐台形状部(または円錐形
状部)35f,36fから構成されている。
【0033】
また、各塗布部材35b,36bはインク液を含浸するインク液の含浸性を有するフェ
ルトや発泡材等の薄いシート状の比較的柔らかいインク液含浸部材から形成されている。これらの塗布部材35b,36bは、それぞれ各ローラ本体35a,36aの円筒状部35e,36eの外周面に巻かれて固定されている。更に、各被支持部35c,36cはそれぞれ円形の貫通孔35g,36gを有しており、これらの貫通孔35g,36gはガイド45に摺動可能に嵌合されている。その場合、ガイド45はウェビング32の搬送方向と直交する方向またはほぼ直交する方向に延設されている。したがって、各塗布ローラ35,3
6はガイド45にガイドされてウェビング32の搬送方向と直交する方向またはほぼ直交する方向に移動可能であり、互いに接近および離間可能にされている。
【0034】
各塗布ローラ35,36は、それぞれガイド45の任意の所定位置に各固定ねじ35d,36dで固定可能とされている。その場合、図3に示すように各塗布ローラ35,36は
、それらの塗布部材35b,36bが搬出部11から搬出されたウェビング32の両側縁
32a,32bに比較的弱く当接するように位置決めされて固定される。そして、ウェビ
ング32の両側縁32a,32bがそれぞれ各塗布部材35b,36bに当接した状態でウェビング32が移動すると、各塗布ローラ35,36は、このウェビング32の移動に連
動して連れ回りするようにされている。
【0035】
各インク液貯留容器37,38は、それぞれウェビング32に塗布するインク液47を
貯留する。その場合、各インク液貯留容器37,38には、それぞれインク液の所望の色
に応じて同じ色または異なる色のインク液47が貯留されている。また、各開閉弁39,
40は手動で開閉可能とされているとともに、各配管(チューブ)41,42は、それぞ
れ各開閉弁39,40が開かれたときに各インク液貯留容器37,38内のインク液47を各ノズル43,44に供給する。その場合、各開閉弁39,40は開弁量が調整可能とされており、所望の量のインク液47を各ノズル43,44に供給可能となっている。更に、
各ノズル43,44は、それぞれ供給されたインク液47を截頭円錐台形状部(または円
錐形状部)35f,36f上に滴下または流下させる。更に、回収容器46は、各截頭円
錐台形状部(または円錐形状部)35f,36f上に滴下または流下されたインク液のう
ち、各塗布部材35b,36bに含浸されない余剰のインク液を回収して貯留する。
【0036】
更に、図1に示すようにインクジェット染色装置1は、側縁塗布部34よりウェビング32の搬送方向下流側に配設されたテンションローラー48および搬送ローラ49,50
を有する。テンションローラー48は搬出部11から搬出されたウェビング32にテンションを付与してウェビング32をその長手方向に緊張させる。また、各搬送ローラ49,
50は、側縁塗布部34を通過したウェビング32をインクジェット染色装置1の近傍の所定位置に用意された搬送台車51に搬送する。そして、搬送されたウェビング32は搬送台車51に収納される。更に、搬送台車51は収納されたウェビング32をこのウェビング32に対する次の工程に搬送する。
【0037】
このように構成されたこの例のインクジェット染色装置1においては、各塗布ローラ35,36の塗布部材35b,36bが搬出部11から搬出されたウェビング32の両側縁32a,32bに比較的弱く当接可能に位置決めされて固定される。また、各開閉弁39,40が開かれて、各インク液貯留容器37,38内の所定量のインク液47がそれぞれ各ノ
ズル43,44から各塗布ローラ35,36の截頭円錐台形状部35f,36f上に滴下ま
たは流下される。截頭円錐台形状部35f,36f上に滴下または流下されたインク液4
7は、それぞれ截頭円錐台形状部35f,36fの傾斜面および各ローラ本体35a,36aの外周面に沿って流下して各塗布部材35b,36bに含浸される。各塗布部材35b,36bに含浸されたインク液47以外の余剰のインク液47は回収容器46内に落下して貯留し、回収される。
【0038】
この状態で、前述の従来と同様にウェビング32が表裏両面にインク液47が塗布された後、搬出部11から搬出される。このとき、搬出されたウェビング32は側縁塗布部34を通過してテンションローラ42に搬送され、テンションローラ42によってウェビング32の長手方向にテンションが付与されて緊張される。この状態で、ウェビング32が移動することで各塗布ローラ35,36がウェビング32の移動の連れ回りで回転する。
そして、各塗布ローラ35,36の回転により、截頭円錐台形状部35f,36f上に滴下または流下されたインク液47は各ローラ本体35a,36aの円周方向にも流動し、各
ローラ本体35a,36aの外周面の全周にわたって広がりながら流下する。これにより
、インク液が各塗布部材35b,36bの全体に含浸されるようになる。このようにして
、側縁塗布部34によるウェビング32の両側縁32a,32bへのインク液47の塗布
が実質的に開始される。
【0039】
すなわち、搬出部11から搬出されたウェビング32は側縁塗布部34に到達すると、ウェビング32の両側縁32a,32bが各塗布部材35b,36bに弱く当接する。すると、各塗布部材35b,36bに含浸されているインク液47がウェビング32の両側縁
32a,32bに塗布される。このとき、搬出部11から搬出されたウェビング32がテ
ンションローラ42によって長手方向に緊張されているため、ウェビング32は、その両側縁32a,32bが各塗布部材35b,36bに弱く当接しても幅方向に撓むことはない。したがって、各塗布部材35b,36bによってインク液がウェビング32の両側縁3
2a,32bに安定して十分に塗布される。
【0040】
搬出部11から搬出されて表裏両面にインク液47が塗布されたウェビング32は、側縁塗布部34を通過して更に両側縁32a,32bにインク液47が塗布された後、搬送
ローラ49,50により搬送台車51に搬送されて収容される。所定量のウェビング32
がインク液塗布工程が終了して搬送台車51に収容されると、このウェビング32は搬送台車51により次の工程が行われる場所に搬送される。
【0041】
なお、ウェビング32の両側縁32a,32bにインク液47を塗布する必要がない場
合には、側縁塗布部34の両塗布ローラ35,36は互いに大きく離間されて、各塗布ロ
ーラ35,36の塗布部材35b,36bがウェビング32の両側縁32a,32bに当接
しないように位置決めされる。また、ウェビング32の両側縁32a,32bのうち一方
の側縁にインク液47を塗布するが他方の側縁にインク液47を塗布する必要がない場合には、両塗布ローラ35,36のうち、一方の側縁に対応する塗布ローラはその塗布部材
がウェビング32の一方の側縁に弱く当接する位置に位置決めされ、また他方の側縁に対
応する塗布ローラはその塗布部材がウェビング32の一方の側縁に当接しない位置に位置決めされる。
【0042】
更に、回収容器46内に回収されたインク液47は各インク液貯留容器37,38に戻
されて再利用される。また、各インク液貯留容器37,38内のインク液47が所定量以
下に減少したときは、新たなインク液47が各インク液貯留容器37,38内の補充可能
とされている。あるいは、各インク液貯留容器37,38内のインク液47がなくなった
時には、各インク液貯留容器37,38をインク液47が充填されている新しいインク液
貯留容器と交換可能とされている。
【0043】
この例のインクジェット染色装置1によれば、面塗布部33と側縁塗布部34が配設される。したがって、面塗布部33の搬出部11から搬出されて表裏両面にインク液47が塗布されたウェビング32の両側縁32a,32bに、側縁塗布部34の一対の塗布ロー
ラ35,36によってインク液47を塗布することが可能となる。その場合、ウェビング
32の両側縁32a,32bへのインク液の塗布に、一対の塗布ローラが用いられること
により、ウェビング32の両側縁32a,32bにインク液を塗布する側縁塗布部34の
構造を簡単に形成することができる。
【0044】
また、面塗布部33の搬出部11から搬出されたウェビング32はテンション部材であるテンションローラ48でウェビング32の長手方向にテンションが付与されるので、ウェビング32の両側縁32a,32bが各塗布部材35b,36bに弱く当接してもウェビング32がその幅方向(長手方向と直交する方向)に撓むことを防止できる。したがって、各塗布部材35b,36bによってインク液47をウェビング32の両側縁32a,32bに安定して十分に塗布することが可能となる。
【0045】
更に、各塗布ローラ35,36が、それぞれインク液が含浸されたシート状の塗布部材
35b,36bを有している。これにより、ウェビング32の両側縁32a,32bにインク液を塗布する塗布部材35b,36bを安価にかつ簡単に形成することができる。
【0046】
更に、各塗布ローラ35,36は位置調整可能に配設されるので、ウェビング32の両
側縁32a,32bの少なくとも一方の側縁にインク液を塗布する必要がない場合には、
インク液を塗布する必要がない側縁に対応する塗布ローラを、その塗布部材がこの側縁に当接しないように位置決めすることができる。これにより、ウェビング32の側縁へのインク液の塗布に対して、柔軟に対応することが可能となる。
【0047】
更に、各塗布ローラ35,36はウェビング32の移動に連動して連れ回りで回転する
ようにしているので、各塗布ローラ35,36を回転駆動するためのモータや電磁ソレノ
イド等の駆動源が不要となる。これにより、側縁塗布部34の構造を簡略化することが可能になるとともにコストを低減することができる。
【0048】
更に、各塗布ローラ35,36の各ローラ本体35a,36aの上端部が截頭円錐台形状部(または円錐形状部)35f,36fとされているので、截頭円錐台形状部(または円
錐形状部)35f,36fに滴下あるいは流下したインク液47を、各塗布ローラ35,36を回転させることで、各ローラ本体35a,36aの外周面の全周にわたって広がりな
がら流下させることができる。これにより、インク液を各塗布部材35b,36bの全体
に効果的にかつ簡単に含浸させることが可能となる。
【0049】
更に、この例のインクジェット染色装置1によりウェビング32の表裏両面およびウェビング32の両側縁32a,32bのいずれにもインク液47を塗布することで、種々の
色のシートベルト4や種々の模様のシートベルト4を形成することができ、シートベルト
4に対するユーザーの様々な要望に柔軟対応することが可能となる。
【0050】
なお、本発明は前述の例に限定されるものではなく、種々設計変更可能である。例えば、開閉弁39,40を手動の開閉弁にしているが電磁開閉弁で構成することもできる。こ
の場合には、電磁開閉弁の開閉制御および開弁量制御は制御部31で行うようにする。また、ガイド45に雄ねじを形成するとともに、塗布ローラ35,36における被支持部3
5c,36cの貫通孔35g,36gの内周面にガイド45の雄ねじが螺合する雌ねじを形成し、モータや電磁ソレノイド等の駆動源でガイド45を回転することにより、塗布ローラ35,36の位置調整を行うようにすることもできる。その場合に、塗布ローラ35側
のねじと塗布ローラ36側のねじとは互いに逆ねじに形成することにより、両塗布ローラ35,36を互いに接近させたりあるいは離間させたりすることが可能となる。この場合
のガイド45を回転させる駆動源の駆動制御も、制御部31で行うようにする。
【0051】
更に、前述の例では本発明の帯状生地の染料液塗布装置を特許文献1の図5に記載されているインクジェット染色装置に適用するものとしているが、これに限定されることはなく、本発明は特許文献1の他の図に記載されているインクジェット染色装置にも適用することができる。更には、本発明は特許文献1に記載のインクジェット染色装置以外の帯状生地の表裏両面の少なくとも一方の面に染料液を塗布する装置であればどのような装置にも適用することができる。要は、本発明は特許請求の範囲に記載された技術事項の範囲で種々設計変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る帯状生地の染料液塗布装置は、自動車等の車両に装備されるシートベルト装置に用いられて乗員を拘束するウェビング等の細長い帯状生地に染料液を塗布する染料液塗布装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…インクジェット染色装置、2…搬入部、11…搬出部、31…制御部、32…ウェビング、32a,32b…側縁、33…面塗布部(面印刷部)、34…側縁塗布部(側縁印
刷部)、35,36…塗布ローラ、35a,36a…ローラ本体、35b,36b…塗布部
材、35c,36c…被支持部、35d,36d…固定ねじ、35e,36e…円筒状部、
35f,36f…截頭円錐台形状部、35g,36g…貫通孔、37,38…インク液貯留
容器、39,40…開閉弁、41,42…配管(チューブ)、43,44…ノズル、45…
ガイド、46…回収容器、47…インク液、48…テンションローラー、49,50…搬
送ローラ、51…搬送台車
図1
図2
図3
図4