【実施例1】
【0017】
図1は、実施例1に係るテーブルタップの外観図である。テーブルタップ10は、コンセントプラグ11及び電源コード12から取り込まれた交流電源を、複数のコンセント14に分岐するために使用される。各コンセント14には、コンセントプラグ30が挿入される。テーブルタップ10は、互いに固定された下部カバー16及び上部カバー18を備える。これらのカバーには、例えば絶縁性樹脂を用いることができ、例えばネジ止め等により固定を行うことができる。
【0018】
上部カバー18には、アース端子付きのコンセントプラグ30を受容する3つの開口(第1開口20、第2開口22、及び第3開口24)が、複数のコンセント14に対応して形成されている。第1開口20及び第2開口22は、コンセントプラグ30の第1プラグ刃32及び第2プラグ刃34が挿通するように、略矩形状の平面形状を有する。第3開口24は、コンセントプラグ30のアース端子36が挿通するように、略半円状の平面形状を有する。
【0019】
図2は、上部カバー18及び下部カバー16を取り外した外観図である。テーブルタップ10は、第1バスバー40、第2バスバー42、及び第3バスバー44を有する。これらのバスバーは、例えば真鍮板等の金属板を型抜きし、それを曲げ加工して作成することができる。第1バスバー40は、電源コード12を介して交流電源ACの正極に接続され、第2バスバー42は、電源コード12を介して交流電源ACの負極に接続されている。第3バスバー44は、電源コード12を介して接地されている。
【0020】
第1バスバー40には、外部のコンセントプラグ30の第1プラグ刃32を受容する第1コンタクト46が複数設けられている。第2バスバー42には、その延在方向に沿って一定間隔で複数の挟持片48が設けられている。それぞれの挟持片48は、第2バスバー42から分岐した電流が流れる電流バー50を両主面側から挟持する。電流バー50の端部には、第2コンタクト52が設けられている。第2コンタクト52は、外部のコンセントプラグ30の第2プラグ刃34を受容するもので、第1コンタクト46とは対になっている。また、第3バスバー44には、コンセントプラグ30のアース端子36を受容する第3コンタクト54が複数設けられている。
【0021】
各電流バー50の下方には、回路が形成された基板60が設けられている。基板60には、それぞれの電流バー50を流れる電流を測定する電流測定部62が設けられている。
【0022】
図3は、電流測定部62とその近傍の拡大斜視図である。電流測定部62は、電流バー50のそれぞれに対応して、基板60に固定されたフェライト70を含む。フェライト70は、電流バー50に流れる電流により生成される磁界を収束するための磁性体コアの一例である。フェライト70は、電流バー50の一部を囲むように略リング状に形成され、フェライト70の下方(基板60側)には、ギャップ72が形成されている。ギャップ72には、基板60に固定されたホール素子74が設けられている。後述するように、本来の電流測定部62は、フェライト70の周囲を覆う磁性体カバーを備えているが、ここではその表示を省略している。
【0023】
電流測定部62における電流の測定原理は以下の通りである。最初に、電流バー50電流が流れると、電流バー50の周囲に磁界が生成される。この磁界は、フェライト70により収束される。そして、フェライト70のギャップ72における磁界の強さが、ホール素子74により測定される。ホール素子74は、磁界の強さを測定する磁界測定素子の一例であり、電源端子に所定の電圧が与えられた状態で磁界に晒されることにより、磁界の強さに応じた電位差ΔVを発生する。このΔVは、ホール素子内部の増幅器により増幅された後、アナログの電流信号に変換され、外部に出力される。
【0024】
上記電流信号は、ホール素子74と接続された基板60の演算回路によりデジタル化され、任意の規格(例えば、USB(Universal serial Bus)規格)にフォーマットされた上で、外部の装置(例えば、コンピュータ等)へと出力される。以上の構成により、電流バー50を流れる電流の大きさを測定することができると共に、当該電流の大きさに基づいて消費電力を算出することができる。これにより、テーブルタップ10における各電流バー50の消費電力を、外部からモニタリングすることができる。
【0025】
ここで、テーブルタップ10を使用する際には、感電防止のために、フェライト70と電流バー50とが接触しないようにすることが望ましい。例えば、L字型の固定部材を用いてフェライト70の角(側部)を固定する方法が考えられるが、当該方法ではフェライト70の固定を十分とはならない。また、電流バー50は完全に固定されてはおらず、基板60の長手方向に僅かに動くことができるため、フェライト70との間で相対的な位置ずれが生じ、両者が接触してしまうおそれがある。
【0026】
図4〜
図7は、テーブルタップ10の製造工程のうち、フェライト70の固定に関する工程を説明するための図であり、電流バー50、フェライト70及びその周辺の構成を模式的に示すものである。
図2で説明した詳細な構成(例えば、第1バスバー40〜第3バスバー44等)の一部は表示を省略している。最初に、
図4に示すように、筐体80に基板60を挿入する。筐体80の平面形状は矩形であり、基板60は筐体80の短辺側から挿入される。筐体80には、2つの長辺に沿って支持部82が形成されており、電流バー50は当該2つの支持部82に固定されることで、筐体80の底面から浮いた状態となっている。基板60には、内部の演算回路と接続されたホール素子74が設けられている。ホール素子は、例えばハンダ付け等により基板60に固定されている。また、基板60には、ネジが挿入されるネジ穴64が形成されている。
【0027】
次に、
図5に示すように、電流バー50の上方からフェライト70を基板60に実装する。このとき、基板60に固定されたホール素子74は、電流バー50の真下(電流バー50と基板60との間)に位置している。そのため、フェライト70のギャップ72から電流バー50を挿入し、そのままフェライト70を下に降ろすことで、フェライト70のギャップ72にホール素子74が位置するようにすることができる。また、電流バー50が位置する領域付近は、ギャップ72の幅が他の部分(ホール素子74付近)より大きく形成されている。これにより、フェライト70と電流バー50との接触を抑制することができる。
【0028】
次に、
図6に示すように、フェライト70にフェライトカバー90を被せる。フェライトカバー90は、フェライト70を覆うための本体部92と、フェライトカバー90を基板60に固定するための固定部94とを含む。固定部94は、本体部92の下端から基板60の長手方向に延在している。また、固定部94には、基板60の長手方向が長径となる長穴の貫通孔96が設けられている。本体部92の側面のうち、電流バー50の延在方向に当たる側面には、電流バー50の幅に対応する幅のスリット98が形成されている。本体部92の上面は開口しており、フェライト70を上方から抑え付けるためのツメが設けられている。ただし、本体部92の上面構成はこれに限定されるものではなく、天井部分が完全に覆われている構成としてもよい。フェライトカバー90の材料には、例えばPBT樹脂を用いることができる。
【0029】
フェライトカバー90をフェライト70に被せる際には、スリット98を電流バー50の位置に合わせ、電流バー50がスリット98から突出するようにする。これにより、電流バー50とフェライトカバー90の位置関係が固定される。また、フェライト70がフェライトカバー90に覆われることで、フェライト70とフェライトカバー90の位置関係も同様に固定される。その結果、電流バー及びフェライト70の位置関係は、フェライトカバー90を介して相対的に固定される。
【0030】
次に、
図7に示すように、フェライトカバー90の貫通孔96にネジ84を貫通させ、基板60のネジ穴64にネジ止めすることで、フェライトカバー90を基板60に固定する。ここで、貫通孔96の短径はネジ84の直径に対応した大きさとなっており、貫通孔96の長径はネジ84の直径より大きくなっている。本構成により、貫通孔96とネジ穴64の位置関係に多少のずれがある場合でも、フェライトカバー90を基板60に容易にネジ止めすることができる。
【0031】
図8(a)〜(c)は、フェライト70にフェライトカバー90を被せた状態の詳細な構成を示す図である。
図8(a)はフェライトカバー90の上面方向から見た平面図であり、
図8(b)は
図8(a)のA−A線に沿った断面図、
図8(c)は
図8(a)のB−B線に沿った断面図である。
図8(a)〜
図8(c)に示すように、フェライトカバー90は、ネジ84により基板60に固定されている。また、
図8(b)に示すように、電流バー50とスリット98の幅は実質的に等しく、フェライトカバー90は電流バー50に対して動かない構成となっている。その結果、
図8(c)に示すように、電流バー50及びフェライト70は、互いに接触しない位置関係で固定される構成となっている。
【0032】
実施例1に係るテーブルタップによれば、上記構造のフェライトカバー90を用いて電流バー50及びフェライト70の位置関係を固定することにより、フェライト70と電流バー50の接触を抑制することができる。その結果、フェライト70及び電流バー50の接触に伴う感電等を抑制することができる。
【0033】
実施例1では、本体部92の内壁によりフェライト70が位置決めされ、スリット98により電流バー50が位置決めされている。そして、フェライトカバー90が基板60にネジ止めされることで、電流バー50及びフェライト70は、基板60に対して間接的に固定される。ここで、本体部92の内壁により形成される領域の大きさは、フェライト70の大きさと等しくする(すなわち、フェライトカバー90の装着時に内壁面がフェライト70に接触する)ことができるが、両者の間には微小なクリアランス(例えば、0.1mm以下のクリアランス)があってもよい。また、スリット98の幅は、電流バー50の幅と等しくすることができるが、両者の間には同様に微小なクリアランス(例えば、0.1mm以下のクリアランス)があってもよい。上記クリアランスを設けることにより、フェライトカバー90をフェライト70及び電流バー50に被せる工程を容易に行うことができる。
【0034】
実施例1では、電流バー50を流れる電流により生成される磁界を収束するための磁性体コアとして、フェライト70を例に説明したが、磁性体コアにはフェライト以外の材料(例えば、鉄芯)を用いることもできる。いずれの場合も、磁性体コアは電流バー50の少なくとも一部を覆っていればよい。
【0035】
また、実施例1では、磁界を測定する磁界測定素子としてホール素子74を例に説明したが、磁界測定素子にはホール素子以外の測定素子(例えば、MRセンサ)を用いることもできる。また、ホール素子74の配置位置はフェライト70のギャップ72に限定されるものではないが、当該ギャップ72にホール素子74を配置することにより、磁界の測定を効率よく行うことができる。さらに、ホール素子74を電流バー50の真下(電流バー50と基板60との間)に配置することにより、フェライト70のギャップ72との位置合わせを容易に行うことができる。なお、磁性体コアをカレントトランスとすることもできるが、この場合は磁界測定素子は不要である。
【0036】
また、実施例1では、ネジ84を用いてフェライトカバー90を基板60に固定する構成としたが、これ以外の方法でフェライトカバー90を基板60に固定してもよい。ネジ84を用いる場合、フェライトカバー90の貫通孔96は、ネジ止めの際の位置合わせが容易にできるように、長穴(基板60の長手方向が長径)であることが好ましい。また、実施例1では、フェライトカバー90のスリット98を本体部92の対向する側面に形成する構成としたが、スリット98を対向する面以外の面に形成してもよい。ただし、実施例1の構成によれば、フェライトカバー90に対する電流バー50の位置決めを容易に行うことができる。
【0037】
以上のように、実施例1に係るテーブルタップ10、電流センサ(電流測定部62)、及び磁性体カバー(フェライトカバー90)によれば、電流バーと磁性体コアとの接触を抑制することができる。なお、実施例1では、電流測定部62を備えたテーブルタップ10を例に説明を行ったが、本発明は電流バーの周囲に磁性体コアが設けられた任意の電流センサに対し適用することができる。
【0038】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。