(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸線を中心にして回転する外周部に前記軸線の周方向に延びている翼溝が形成され、前記翼溝の溝開口側の幅寸法が前記翼溝の溝底側の幅寸法よりも小さく設定された回転軸体と、
前記回転軸体の外周部に前記周方向に配列され、それぞれ前記翼溝に嵌合した翼根を有する複数の翼体と、を備えるロータ構造であって、
前記翼溝内において、少なくとも一組の前記周方向に隣り合う二つの翼体の間に位置するように翼留めピースが設けられ、
前記翼溝の溝開口側の開口壁部と前記翼留めピースとのうち一方に凸部が形成され、他方に前記凸部と嵌合した凹部が形成され、
前記翼留めピースは、前記凸部と前記凹部とを嵌脱可能な変位機構を有し、
前記変位機構は、前記翼溝の前記翼底に対して累進可能であり、前記翼溝の前記翼底に対向する端面が前記翼溝の前記翼底に向けて膨出している進退軸を備え、
前記翼留めピースは、前記翼溝の幅方向の少なくとも一方に、前記凸部として前記軸線の半径方向に向けて突出するネジ部材を有し、
前記翼溝の開口壁部は、前記翼溝の幅方向の少なくとも一方に、前記凹部として前記半径方向に延びている切欠きが形成されているロータ構造。
前記変位機構は、前記ピース本体を前記半径方向に貫通し、且つ、少なくとも一部に雌ネジ部が形成された貫通孔と、少なくとも一部に前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部とが形成されている請求項4に記載のロータ構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術においては、丸穴の内壁部が構造的不連続部になるので、この丸穴近傍に応力が集中して亀裂が発生する恐れがあるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、翼溝の溝底に亀裂が発生することを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係るロータ構造は、軸線を中心にして回転する外周部に前記軸線の周方向に延びている翼溝が形成され、前記翼溝の溝開口側の幅寸法が前記翼溝の溝底側の幅寸法よりも小さく設定された回転軸体と、前記回転軸体の外周部に前記周方向に配列され、それぞれ前記翼溝に嵌合した翼根を有する複数の翼体と、を備えるロータ構造であって、前記翼溝内において、少なくとも一組の前記周方向に隣り合う二つの翼体の間に位置するように翼留めピースが設けられ、前記翼溝の溝開口側の開口壁部と前記翼留めピースとのうち一方に凸部が形成され、他方に前記凸部と嵌合した凹部が形成され、前記
翼留めピースは、前記凸部と前記凹部とを嵌脱可能な変位機構を有し、前記変位機構は、前記翼溝の前記翼底に対して累進可能であり、前記翼溝の前記翼底に対向する端面が前記翼溝の前記翼底に向けて膨出している進退軸を備え
、前記翼留めピースは、前記翼溝の幅方向の少なくとも一方に、前記凸部として前記軸線の半径方向に向けて突出するネジ部材を有し、前記翼溝の開口壁部は、前記翼溝の幅方向の少なくとも一方に、前記凹部として前記半径方向に延びている切欠きが形成されている。
このようにすれば、翼溝の開口壁部と翼留めピースとのうち一方に凸部が形成され、他方に凸部と嵌合する凹部が形成されているので、翼溝に対する翼体の周方向の相対変位を凸部と凹部との干渉によって拘束する。これにより、翼溝の溝底で応力集中が生じ難いので、翼溝の溝底に亀裂が生じることを回避することができる。
仮に、回転軸体に対して翼体を組み付けた状態で翼溝の溝底に亀裂が生じると、通常の保守点検において発見が困難であることから、亀裂が進展し過ぎたり、亀裂によって回転軸体が破損して回転軸体を組み込んだ装置の運転を停止したりしなければならなくなる恐れがある。また、仮に翼溝の溝底に生じた亀裂を発見したとしても、組み付けた翼体を取り外さなければ補修が困難であることから、保守性にも劣る。
しかしながら、上記のようにすれば、翼溝の溝底に亀裂が生じることがなく、仮に翼溝の開口壁部に亀裂が生じたとしても、亀裂箇所が回転軸体の表面側に位置することになるので、亀裂を容易に発見することができ、結果的に亀裂によって回転軸体が破損することを抑止することができる。これにより、回転軸体を組み込んだ装置の運転を安定的に継続して行うことができる。また、亀裂箇所が回転軸体の表面側に位置することになるので、補修も比較的に容易にすることができる。
また、進退軸の端面が翼溝の溝底に向けて膨出しているので、進退軸の端面を翼溝の溝底に対して点接触させることが可能となる。これにより、進退軸の端面が翼溝の溝底に対して片当たりすることを防止して確実に点接触させるので、ピース本体を翼溝の溝底に対して、より確実に進退させることができる。
このようにすれば、翼留めピースが突出壁を有し、翼溝の開口壁部に切欠きが形成されているので、比較的に簡素な構成で翼溝の溝底に亀裂が生じることを回避することができる。
【0008】
また、前記翼留めピースは、前記凸部と前記凹部との嵌合を解消した状態で、前記翼溝を前記周方向にスライド可能であ
る。
このようにすれば、翼留めピースが、凸部と凹部との嵌合を解消した状態で、翼溝を周方向にスライド可能であるので、回転軸体に対して翼体及び翼留めピースを組み付ける際に、ピース本体を翼溝の溝底側でスライドさせて所望の位置に配置させることができる。
これにより、回転軸体に対する翼体及び翼留めピースの組み付けの作業性を向上させることができる。
【0009】
また、前記凸部は、前記軸線の半径方向に突出しており、前記凹部は、前記半径方向に延びてい
る。
このようにすれば、半径方向に突出した凸部と、半径方向に延びた凹部とが嵌合するので、翼留め部材を周方向に確実に拘束することができる。
【0010】
また、前記翼留めピースは、前記凸部又は前記凹部が形成されたピース本体を備える。
このようにすれば、可動機構が、凸部又は凹部が形成されたピース本体を翼溝の溝底に対して進退させて、凸部と凹部とを嵌脱可能なので、凸部と凹部とを容易かつ正確に嵌脱させることができる。これにより、回転軸体に対する翼体及び翼留めピースの組み付けの作業性を向上させることができる。
【0011】
また、前記変位機構は、前記ピース本体を前記半径方向に貫通
し、且つ、少なくとも一部に雌ネジ部が形成された貫通孔と
、少なくとも一部に前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部
とが形成されて
いる。
このようにすれば、進退軸が翼溝の溝底に対して螺進可能なので、比較的に簡素な構成で、正確かつ容易にピース本体を翼溝の溝底に対して進退させることができる。
【0013】
また、前記翼留めピースは、前記翼溝の開口壁部に対して前記翼溝の溝底側から当接している当接部を含
む。
このようにすれば、翼留めピースが、翼溝の開口壁部に対して翼溝の溝底側から当接している当接部を含むので、翼留めピースを径方向に良好に拘束することができる。
【0015】
また、前記翼留めピースは、前記翼溝の幅方向の少なくとも一方に、前記凸部として前記軸線の半径方向に向けて突出するネジ部材を有し、前記翼溝の開口壁部は、前記翼溝の幅方向の少なくとも一方に、前記凹部として前記半径方向に延びている切欠きが形成されてい
る。
このようにすれば、翼留めピースがネジ部材を有し、翼溝の開口壁部に切欠きが形成されているので、比較的に簡素な構成で翼溝の溝底に亀裂が生じることを回避することができる。また、種々の設計要求を満たすことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るロータ構造によれば、翼溝の溝底に亀裂が発生することを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
〔第一実施形態〕
図1は、本発明の第一実施形態に係るガスタービンGTの概略構成を示す半断面図である。
図1に示すように、ガスタービンGTは、圧縮空気cを生成する圧縮機Cと、圧縮機Cから供給される圧縮空気cに燃料を供給して燃焼ガスgを生成する複数の燃焼器Bと、燃焼器Bから供給される燃焼ガスgにより回転動力を得るタービンTとを備えている。
ガスタービンGTにおいては、圧縮機CのロータR
CとタービンTのロータR
Tとは、それぞれの軸端で連結されてタービン軸(軸線)P上に延びている。
なお、以下の説明においては、タービン軸Pの延在方向をタービン軸方向(軸方向)と、タービン軸Pの周方向をタービン周方向(周方向)と、タービン軸Pの半径方向をタービン径方向(半径方向)という。
【0019】
圧縮機Cは、圧縮機ケーシング1内においてタービン軸方向に交互に配設された静翼列2と動翼列3とを備えている。これら静翼列2と動翼列3とは、対となって一段と数えられる。
各段の静翼列2は、それぞれ圧縮機ケーシング1側に固設されていると共に圧縮機ケーシング1からロータR
C側に向けて延出する複数の静翼4が、タービン周方向に環状に配列されて構成されている。
各段の動翼列3は、それぞれロータR
C側に固設されていると共にロータR
C側から圧縮機ケーシング1側に向けて延出する複数の動翼5が、タービン周方向に環状に配列されて構成されている。
【0020】
図2は
図1のI−I線断面図であり、
図3は
図2のII−II線矢視図であり、
図4は
図3のIII−III線断面図である。
図2に示すように、ロータR
Cは、回転軸体10と、それぞれ上述した動翼5を含む複数の動翼部材(翼体)20と、複数の翼留めピース30とを有している。
回転軸体10は、ディスク状の部材がタービン軸方向に同軸状に重ねられることで全体として軸状になっている(
図1参照)。
図2及び
図4に示すように、回転軸体10の外周部10Aには、動翼列3の配設箇所に応じて、それぞれ動翼部材20が充填された翼溝11が形成されている。
【0021】
図5及び
図6は、回転軸体10の概略構成図であって、
図5が
図3に対応する要部拡大平面図であり、
図6が
図4に対応する要部拡大断面図である。
図5に示すように、各翼溝11は、タービン周方向に延びており、図示しないが外周部10Aにおいて
全周に形成されている。この翼溝11の溝幅方向(タービン軸方向)に相互に対向する両側壁12,12においては、翼溝11の溝開口11a側からそれぞれ溝幅方向内側に向けて開口壁部13,13が張り出している。すなわち、
図6に示すように、翼溝11の溝開口11a側の幅寸法D1が溝底11b側の幅寸法D2よりも小さく設定されている。
【0022】
これら開口壁部13,13は、
図6に示すように、それぞれ翼溝11の溝深さ方向(タービン径方向)に延びている端面13a,13aを、互いに幅寸法D1を空けて対向させている。また、開口壁部13,13の下部13b,13bは、面取りされており、それぞれ溝開口11a側から溝底11b側に進むに従って溝幅方向外側に向かう斜面が、端面13a,13aと両側壁12,12の下部とに連続して形成されている。また、開口壁部13,13の上部13c,13cは、溝幅方向外側から内側に向けて徐々に溝底11b側に向かうように円弧状に形成されている。
この開口壁部13,13は、それぞれタービン周方向に向けて
全周に延びているが(
図2参照)、タービン周方向に間隔を空けた複数箇所に切欠き(凹部)14,14が形成されている。
【0023】
切欠き14,14は、
図5及び
図6に示すように、それぞれ、溝状に形成されていると共に翼溝11の溝深さ方向(タービン径方向)に延びており、開口壁部13,13の下部13b,13bの下方と上部13c,13cの上方とを連通させている。これら切欠き14,14は、
図5に示すように、翼溝11の溝深さ方向に直交する断面輪郭が方形状になっており、溝幅方向における端面14a,14aが円弧状に形成されている。
これら切欠き14,14は、翼溝11の溝幅方向において互いに対向するように形成されている。
なお、開口壁部13,13には、切欠き14,14の形成位置と異なる位置に、動翼部材20の翼根22(後述する。)を挿入するために大きく開口する翼挿入孔11c(
図11,
図12参照)が形成されている。
【0024】
翼溝11の溝底11bは、
図6に示すように、タービン周方向に直交する断面において、溝幅方向内方に向かうに連れて徐々に溝深さが深くなるように、円弧状に形成されている。
【0025】
動翼部材20は、
図2に示すように、上述した動翼5と、この動翼5の基端に続くプラットフォーム21と、このプラットフォーム21に続く翼根22とが、タービン径方向の外側から内側に向けて上記の順に形成されている。
【0026】
動翼5は、タービン径方向に直交する翼型形状が流線状になっていると共に(
図3参照)、
図3に示すように、タービン径方向の先端側が基端側に対してタービン径方向周りに捻られた形状となっている。
【0027】
プラットフォーム21は、
図3に示すように、タービン径方向に交差して延びて翼溝11を被覆しており、その表面が動翼5の基端に続いている。このプラットフォーム21は、例えば板状に形成することができ、タービン径方向の外側から内側に見て平行四辺形状に形成することができる。
また、翼留めピース30を挟む二つの動翼部材20(20A,20B)のプラットフォーム21においては、
図3に示すように、タービン周方向において相互に突き合わされた双方の端縁部21aに、
図4に示すように、タービン径方向に貫通したアクセス孔21bが画定されている。
【0028】
翼根22は、プラットフォーム21の裏面に続いており(
図2参照)、図示しないがタービン周方向に直交する断面においてタービン径方向内側に向かうに従ってタービン軸方向の寸法が
大きくなる形状となっている(
図6参照)。
この翼根22は、翼溝11の溝底11b側に嵌合しており、タービン軸方向における両側部の一部を開口壁部13,13の下部13b,13bに沿わしている(
図6参照)。
【0029】
図2に示すように、翼留めピース30は、翼溝11内において、一組のタービン周方向に隣り合う二つの動翼部材20(20A,20B)の間に配置されている。この翼留めピース30は、本実施形態においては、切欠き14,14のタービン周方向位置に対応するように複数個(例えば八つ)配設されており、周方向に隣り合う二つの翼留めピース30の間に所定数(均等でなくてもよい。)の動翼部材20が位置するようになっている。
【0030】
図7は翼留めピース30の正面視した場合の分解図であり、
図8は翼留めピース30の平面図であり、
図9は翼留めピース30の側面視した分解図である。
【0031】
図7から
図9に示すように、翼留めピース30は、ピース本体31と、進退軸35とを有している。
ピース本体31は、
図7及び
図9に示すように、翼留めピース30の部材軸線Q上に貫通孔31aが形成された部材であり、部材軸線Qが延びる部材軸線方向(タービン径方向)の一方側に形成された段筒部32と、部材軸線方向の他方側に形成された胴壁部33とを有している。
【0032】
段筒部32は、部材軸線方向の一方側において定径に形成された首部32aと、首部32aに続いて形成され、部材軸線方向の一方側から他方側に向かうに従って漸次拡径する部分が二段に設定された肩部32bとを有している。
【0033】
胴壁部33は、
図7及び
図9に示すように、肩部32bに続いて形成されており、部材軸線方向に直交する断面形状(
図8参照)が、胴幅に対して胴厚が薄く設定された扁平六角形状となっている。この胴壁部33は、
図7に示すように、肩部32bに続いて形成されたテーパ部33aと、テーパ部33aに続いて部材軸線方向の他方側に形成された底部33bとを有している。
テーパ部33aは、
図7に示すように、部材軸線方向の一方側から他方側に向かうに従って、扁平六角形状の断面積(
図8参照)が胴幅を拡げるように漸次大きくなる。
底部33bは、
図7に示すように、胴幅が概略一定の寸法で形成されているが、底面の胴幅方向両端部33b1の角部がそれぞれ面取りされている。
【0034】
胴壁部33のテーパ部33aの胴幅方向両側には、部材軸線方向の一方側から他方側に向かうに従って漸次離間するテーパ面33c,33cが延びている。
テーパ面33c,33cは、
図7に示すように、正面視した場合において、開口壁部13,13の下部13b,13bの曲率と同様の曲率で形成されている。これらテーパ面33c,33cには、それぞれ胴厚方向中央において、部材軸線方向及び胴幅方向に突出した突出壁(凸部)33d,33dが形成されている。
【0035】
突出壁33d,33dは、それぞれ、底面が直角二等辺三角形となった三角柱状に形成されており、底面の
垂線方向を胴厚方向に向けている。これら突出壁33d,33dは、それぞれ、略同大に形成された二つの方形面33d1,33d2のうち一方の方形面33d1を部材軸線方向に交差させる一方、他方の方形面33d2をピース本体31の胴幅方向に交差させている。また、方形面33d2の角縁部は面取りされている。
【0036】
上述した貫通孔31aは、胴壁部33において一定の径に形成されており、段筒部32において二段に縮径されて形成されている。胴壁部33において定径に形成された部位においては雌ネジ部31bが形成されている。
【0037】
進退軸35は、部材軸線方向の一方側において相対的に小径に形成されたシャフト部36と、部材軸線方向の他方側において相対的に大径に形成されていると共に外周面にネジが形成された雄ネジ部37とを有している。
シャフト部36の、部材軸線方向の一方側の端面36aには、マイナスドライバ等の工具が係合可能な係合溝36bが形成されている。
雄ネジ部37の、部材軸線方向の他方側の端面37aは、部材軸線方向の他方側に向けて膨出している。
【0038】
この進退軸35は、雄ネジ部37をピース本体31の雌ネジ部31bに螺合させており、ピース本体31に対して部材軸線方向に螺進可能になっている。また、進退軸35を部材軸線方向の他方側に螺進させた場合には、シャフト部36が段筒部32の貫通孔31aの開口側に嵌合するようになっている。
このように、進退軸35の
雄ネジ部37がピース本体31の雌ネジ部31bに螺合することで、ピース本体31を翼溝11の溝底11bに対してタービン径方向に進退可能な可動機構39が構成されている。
【0039】
図10は翼留めピース30の使用状態を示す斜視図である。なお、
図10においては動翼部材20の図示を省略している。
この翼留めピース30は、
図10に示すように、各切欠き14,14が形成された箇所において、翼留めピース30の部材軸線Qをタービン径方向(翼深さ方向)に向け、かつ、胴幅方向をタービン軸方向(溝幅方向)に向けている。そして、翼留めピース30は、ピース本体31の突出壁33d,33dを切欠き14,14に嵌合させることで、翼溝11に対するタービン周方向の変位を拘束されている。
また、翼留めピース30は、進退軸35の端面37aを翼溝11の溝底11bに点接触させる一方、進退軸35が翼溝11の溝底11bから受ける反力と、テーパ面33c,33cが開口壁部13,13の下部13b,13bから受ける反力とを受けることで、タービン径方向に拘束されている。
【0040】
次に、ロータR
Cの組立の部分工程について、主に、
図11から
図16に基づいて説明する。なお、
図11から
図16においては、動翼部材20の図示を
プラットフォーム21の輪郭を破線で示すことによって省略している。
【0041】
まず、翼溝11の翼挿入孔11c(
図11,
図12参照)に動翼部材20の翼根22(
図2参照)を挿入すると共に、動翼部材20をタービン周方向にスライドさせて翼根22を翼溝11の下方に嵌合させる。そして、翼根22を翼溝11の下方に嵌合させた状態で、動翼部材20をタービン周方向にスライドさせる。この作業を動翼部材20毎に繰り返して、翼溝11に所定数の動翼部材20が充填されるようにする。ここで、所定数の動翼部材20のうち最後に充填する動翼部材20は、上述した動翼部材20A,20Bの片方にする(例えば動翼部材20B)。
図11及び
図12に示すように、所定数の動翼部材20を翼溝11に充填し終えたら、翼留めピース30を翼溝11の翼挿入孔11cに挿入する。
【0042】
図12に示すように、翼溝11挿入時の翼留めピース30は、進退軸35の端面36aが段筒部32よりもタービン径方向の外側に位置しており、ピース本体31からの進退軸35の突出量が小さくなっている。より詳細には、少なくとも翼溝11の溝底11bに進退軸35の端面37aを点接触させた状態で、ピース本体31の両側の突出壁33d,33dと、開口壁部13,13の下部13b,13bとの間に間隙が形成されるように、進退軸35の突出量が設定されている。
このような状態で、翼留めピース30をタービン周方向にスライドさせる。
【0043】
翼留めピース30をスライドさせた後に、翼溝11の翼挿入孔11c(
図11,
図12参照)に動翼部材20A,20Bのもう片方を充填する(例えば動翼部材20B)。このようにすることで、動翼部材20A,20Bの、タービン周方向において相互に突き合わされた双方の端縁部21aにアクセス孔21bが画定されると共に、進退軸35の端面36aがアクセス孔21bから露出する(
図13参照)。
【0044】
次に、
図13及び
図14に示すように、翼溝11に挿入された翼留めピース30を動翼部材20と共に、翼溝11内においてタービン周方向にスライドさせる。この際、胴壁部33の突出壁33dの方形面33d1の角縁部と、ピース本体31の底部33bの両端部33b1とが面取りされており、シャフト部36の端面37aが膨出しているので、翼溝11の内表面に対して円滑に摺動する。
【0045】
翼留めピース30が切欠き14,14に到達したら、
図15に示すように、タービン径方向において、切欠き14,14に対して翼留めピース30の突出壁33d,33dが重なるようにする。
そして、
図16に示すように、シャフト部36の端面36aに工具Iを係合させて進退軸35を回動させ、ピース本体31に対して進退軸35をタービン径方向の内側に向けて螺進させる。翼溝11の溝底11bに対して進退軸35の端面37aが点接触すると、ピース本体31が溝底11bに対して離間するようにタービン径方向の外側に相対変位する。
さらに、ピース本体31の溝底11bに対する相対変位量を増加させると、切欠き14,14に突出壁33d,33dが嵌合し、開口壁部13,13の下部13b,13bにテーパ面33c,33cが接触する。
加えて、進退軸35を回動させることで、ピース本体31と進退軸35との相対変位が拘束され、進退軸35が翼溝11の溝底11bから反力を受けると共に、テーパ面33c,33cが開口壁部13,13の下部13b,13bから反力を受ける。
【0046】
このようにして翼留めピース30は、翼溝11に対する変位が拘束される。
すなわち、翼留めピース30の突出壁33d,33dが開口壁部13,13の切欠き14,14に干渉することで、翼留めピース30がタービン周方向に拘束される。そして、進退軸35が翼溝11の溝底11bから反力を受けると共に、テーパ面33c,33cが開口壁部13,13の下部13b,13bから反力を受けることで翼留めピース30がタービン径方向に固定される。
なお、翼溝11に全ての動翼部材20を充填したら、翼溝11の翼挿入孔11c(
図11,
図12参照)に半ピッチずつずらした二つの動翼部材20を位置させると共に、これら二つの動翼部材20にスペーサ部材を挿入することで翼溝11の翼挿入孔11cを閉塞する。
【0047】
このように形成されたロータR
Cにおいては、動翼部材20のタービン周方向の変位が、翼留めピース30によって拘束されることとなる。すなわち、翼留めピース30の突出壁33d,33dが開口壁部13,13の切欠き14,14に干渉することで、動翼部材20のタービン周方向の変位が拘束される。
【0048】
ここで、例えばガスタービンGTの起動時においては、回転軸体10の外周部10Aが高温の作動流体(圧縮空気)に晒されて、回転軸体10の内部における外側と内側とで温度差が生じる。この際、回転軸体10の外側と内側との熱伸び差によって熱応力が生じるが、翼溝11の溝底11bに構造的不連続部が形成されていないことから溝底に応力集中が生じ難い。そのため、例えばガスタービンGTの起動を繰り返したとしても、翼溝11の溝底11bに亀裂が生じ難い。
そして、切欠き14,14が回転軸体10の表面側に位置していることにより、溝底11bに比べて昇温し易い。また、回転軸体10の表面側においては、温度差が生じ難くなっており、比較的に熱応力が小さくなる。このため、切欠き14,14に応力が集中したとしても、極短時間だけで、その大きさは比較的に小さくなる。従って、構造的不連続部の切欠き14,14においても亀裂が生じ難い。
仮に、切欠き14,14に亀裂が生じたとしても、切欠き14,14から回転軸体10の外周部10Aの表面に向けて亀裂が進展することとなる。
【0049】
以上説明したように本実施形態によれば、翼留めピース30に突出壁33d,33dが形成され、翼溝11の開口壁部13,13に、突出壁33d,33dと嵌合する切欠き14,14が形成されているので、翼溝11に対する動翼部材20のタービン周方向の相対変位を突出壁33d,33dと切欠き14,14との干渉によって拘束する。これにより、翼溝11の溝底11bで応力集中が生じ難いので、翼溝11の溝底11bに亀裂が生じることを回避することができる。
仮に、回転軸体10に対して動翼部材20を組み付けた状態で翼溝11の溝底11bに亀裂が生じると、通常の保守点検において発見が困難であることから、亀裂が進展し過ぎたり、亀裂によって回転軸体10が破損して回転軸体10を組み込んだ圧縮機Cの運転を停止したりしなければならなくなる恐れがある。また、仮に翼溝11の溝底11bに生じた亀裂を発見したとしても、組み付けた動翼部材20を取り外さなければ補修が困難であることから、保守性にも劣る。
しかしながら、本実施形態によれば、翼溝11の溝底11bに亀裂が生じることがなく、仮に翼溝11の開口壁部13,13に亀裂が生じたとしても、亀裂箇所が回転軸体10の外周部10Aの表面側に位置することになるので、亀裂を容易に発見することができ、結果的に亀裂によって回転軸体10が破損することを抑止することができる。これにより、回転軸体10を組み込んだ圧縮機Cの運転を安定的に継続して行うことができる。また、亀裂箇所が回転軸体10の外周部10Aの表面側に位置することになるので、補修作業も比較的に容易にすることができる。
【0050】
また、翼留めピース30が、突出壁33d,33dと切欠き14,14との嵌合を解消した状態で、翼溝11をタービン周方向にスライド可能であるので、回転軸体10に対して動翼部材20及び翼留めピース30を組み付ける際に、翼留めピース30を翼溝11の溝底11b側でスライドさせて所望の位置に配置させることができる。これにより、回転軸体10に対する動翼部材20及び翼留めピース30の組み付けの作業性を向上させることができる。
【0051】
また、テーパ面33c,33cからタービン径方向及びタービン軸方向に突出した突出壁33d,33dと、タービン径方向に延びた切欠き14,14とが嵌合するので、突出壁33d,33dと切欠き14,14とが嵌合した状態において翼留めピース30をタービン周方向に確実に拘束することができる。
【0052】
また、可動機構39が、突出壁33d,33dが形成されたピース本体31を翼溝11の溝底11bに対して進退させて、突出壁33d,33dと切欠き14,14とを嵌脱可能なので、突出壁33d,33dと切欠き14,14とを容易に嵌脱させることができる。これにより、回転軸体10に対する動翼部材20及び翼留めピース30の組み付けの作業性を向上させることができる。
【0053】
また、進退軸35が翼溝11の溝底11bに対して螺進可能なので、比較的に簡素な構成で、正確かつ容易にピース本体31を翼溝11の溝底11bに対して進退させることができる。
また、係合溝36bが形成された端面36aがアクセス孔21bから外部に露出しているので、マイナスドライバ等の工具Iを容易に係合させることで進退軸35をより容易に回動させることができる。これにより、進退軸35を極めて容易に変位させることできる。
【0054】
また、進退軸35の端面37aが翼溝11の溝底11bに向けて膨出しているので、雄ネジ部37が形成された進退軸35の端面37aを、翼溝11の溝底11bに対して点接触させることが可能となる。
これにより、雄ネジ部37が形成された進退軸35の端面37aが翼溝11の溝底11bに対して片当たりすることを防止して確実に点接触させるので、ピース本体31を翼溝11の溝底11bに対して、より確実に進退させることができる。
さらに、本実施形態においては、特に翼溝11の溝底11bがタービン周方向に直交する断面において円弧状に窪んで形成されているが、端面37aを溝底11bに向けて膨出させることによって、端面37aを溝底11bに対してより確実に点接触させることが可能である。
【0055】
また、翼留めピース30が、翼溝11の開口壁部13,13に対して翼溝11の溝底11b側から当接しているテーパ面33c,33cを有するので、翼留めピース30をタービン径方向に良好に拘束することができる。
さらに、テーパ面33c,33cが、開口壁部13,13の下部13b,13bに沿った形状となっているので、下部13b,13bに対してテーパ面33c,33cの各部位を均一的に押し付けることができる。これにより、テーパ面33c,33cの各部位が下部13b,13bから均一に反力を受けるので、より確実に、翼留めピース30をタービン径方向に拘束することができる。
【0056】
また、翼留めピース30が突出壁33d,33dを有し、翼溝11の開口壁部13,13に切欠き14,14が形成されているので、比較的に簡素な構成で翼溝11の溝底11bに亀裂が生じることを回避することができる。
【0057】
〔第二実施形態〕
以下、本発明の第二実施形態について図を用いて説明する。なお、以下の説明及びその説明に用いる図面において、既に説明を終えた構成要素と同様の構成要素については、同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
図17は、本発明の第二実施形態に係る翼留めピース30Aの概略構成を示す要部断面図である。
上述した第一実施形態においては翼留めピース30のテーパ面33c,33cに二つの突出壁33d,33dが形成されていたのに対して、
図17に示すように、本実施形態の翼留めピース30Aは突出壁33d,33dを省略すると共に、テーパ面33c,33cのうちタービン軸方向の一方のテーパ面33cにネジ部材(凸部)33gを凸設している。
【0058】
また、上述した第一実施形態においては翼溝11の開口壁部13,13に二つの切欠き14,14が形成されていたのに対して、本実施形態の開口壁部13,13はタービン軸方向の一方の開口壁部13にのみ切欠き14が形成されている。
【0059】
本実施形態の構成においても、上述した第一実施形態と同様の効果を得ることができる他、例えば、翼留めピース30Aの形状や大きさ、配置箇所、材質等により、第一実施形態の突出壁33dの強度が確保し難かったり、突出壁33d,33dを形成し難かったりする場合においても、翼留めピース30Aと別体のネジ部材33gを用いることで、種々の設計要求を満たすことができる。
【0060】
また、ネジ部材33gが破損した場合であっても、翼溝11から翼留めピース30Aを取り外さずにネジ部材33gを交換可能であるので、修理作業を迅速に行うことができる。これにより、圧縮機Cの運転を速やかに復旧することができる。
【0061】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、開口壁部13の切欠き14と、翼留めピース30(30A)の突出壁33d(ネジ部材33g)とは互いに嵌合し合って翼溝11に対する翼留めピース30の相対移動を拘束できればよいので、上述した形状以外の他の形状を採用することができる。
【0062】
また、上述した実施の形態においては、開口壁部13,13と断面視円弧状の溝底11bとで溝断面輪郭を画定したが、翼溝11の溝開口11a側の幅寸法が翼溝11の溝底11b側の幅寸法よりも小さく設定されていれば、他の溝断面輪郭でも構わない。例えば、開口壁部13,13は、断面視矩形状であってもよいし、溝底11bは平面状に形成してもよい。
【0063】
また、上述した実施の形態においては、翼留めピース30に形成した突出壁33dと、開口壁部13,13に形成した切欠き14,14とを嵌合させたが、翼留めピース30に凹部を形成すると共に、開口壁部13,13に凸部を形成して双方を嵌合させてもよい。
【0064】
また、上述した実施の形態においては、圧縮機Cの動翼5について本発明を適用したが、タービンTの動翼について本発明を適用してもよい。また、上述した実施形態においては、ガスタービンに本発明を提供したが、蒸気タービン等の他の回転機械に本発明を適用してもよい。