(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取付けブラケットの前記配管係合部の位置は、前記保温ケースの切欠き開口の内端部と軸方向に一致する位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の配管ヒータ装置。
前記ヒータ本体が丸棒状に形成され、前記取付けブラケットにより前記配管と前記空隙をもって平行に保持されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の配管ヒータ装置。
前記保温ケースの筒状本体が柔軟性を有する断熱材で形成され、前記蓋壁部が前記筒状本体に連設されるとともにスリット溝を有し、前記筒状本体の側壁の側方への変形により前記スリット溝が広がり、前記配管が内部に挿通されることを特徴とする請求項1に記載の配管ヒータ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のような単なる凍結防止用のヒータでは、例えば200℃程度にまで配管内の流体を加熱することは難しく、また、高温となった発熱体を配管に直接接触させて加熱するものでは、配管の周面において発熱体に接触している部分のみが高温に加熱されることで、配管の部分的な温度差が大きく、配管の変形を招いたり、配管内を流れる流体の加熱効率が低く、その流量を増加できない問題を有している。
【0008】
また、特許文献2の配管用加熱ヒータにおいては、面状ヒータが、配管に直接的に接触することなく、配管は、面状ヒータにより加熱された金属板と配管との間の空間にある空気を介して加熱されるため、面状ヒータの配置位置による配管の温度ムラは低減される。しかし、金属板と配管との間に大きな空間を確保する構造であり、各部品が大型化し、運搬時や装着時の作業性に影響する虞がある。
【0009】
また、配管が狭い間隔で複数並設されている場合のヒータ装置の取り付けが煩雑な作業となって取付けが面倒な場合があり、配管が壁面に近接配置されているときには取付け不能となる虞がある。さらに、配管のメンテナンスにおいて、再装着時の配管用加熱ヒータの加熱性能を再現することが難しくなる可能性がある。
【0010】
さらに、配管が狭い間隔を持って複数並設されている場合に、複数の配管を1つのヒータ装置によって加熱する構造のヒータ装置では、配管と発熱体との距離が不均等となったり、1つの配管の加熱に寄与する発熱体の数が場所によって異なるなどの要因によって、各配管を均等に加熱することが難しく、流体の加熱温度が均等とならない問題を有する。
【0011】
また、複数並設された配管に個々に発熱体を設置してヒータ装置を構成する場合に、上記のように、狭い間隔で配設された各配管に簡単に各ヒータ装置の設置が容易に行えるように設けることが要求される。特許文献1に提案されている技術のように、発熱体を保持した取り付けブラケットの先端部分を、配管にその側方から係合するように取り付けることが簡単であるが、加熱効率を高めるために、特許文献2に示されるように、発熱体の外周を、断熱カバーで覆うことを考慮した際には、取り付けが困難となる問題がある。つまり、すでに設置されている配管に対し、それを囲むようにヒータ装置を設置して周面の加熱ムラを低減しようとした際に、1本の配管であれば断熱カバーの装着開口部分を広げて、配管にかぶせるように装着することが可能であるが、狭い間隔で複数設置されている各配管に対し設置する際には、配管の間の狭い間隔では、断熱カバーを一部広げながら装着することができないことがあり、このような点にも対処する必要がある。
【0012】
本発明は上記事情に鑑み、複数並設された配管に対し設置し、各配管を高温かつ均等に加熱できるとともに、設置が容易な配管ヒータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の配管ヒータ装置は、複数並設された被加熱用の配管に対し装着し、各配管をそれぞれ加熱するものであり、
前記配管の外側に筒状に延びる断熱材からなる保温ケースと、
前記保温ケースの内部に長手方向に配置され、通電に応じて発熱するヒータ本体と、
前記ヒータ本体を保持して前記保温ケース内面に取り付けられ、前記配管に係合保持される熱伝導性弾性材料により形成される取付けブラケットとからなり、
前記保温ケースは、長手方向に延びる筒状本体と、該筒状本体の両端部に設置された端面壁と、該端面壁に開口端から切り欠かれた切欠き開口とを有し、該切欠き開口の開口端が面する壁部が前記配管が挿通可能な蓋壁部に形成され、
前記取付けブラケットは、前記保温ケースに固着される固着部と、前記ヒータ本体を保持するヒータ保持部と、前記配管に押し付けることにより広がって配管の外周に弾性係合する配管係合部とからなり、
前記配管係合部は前記保温ケースの前記蓋壁部に面し、該蓋壁部から内部に挿入された前記配管が、前記ヒータ保持部に保持されたヒータ本体との間に空隙を有して係合保持されることを特徴とする。
【0014】
上記のような本発明における前記取付けブラケットの前記配管係合部の位置は、前記保温ケースの切欠き開口の内端部と軸方向に一致する位置に設けられていることが好適である。
【0015】
また、前記取付けブラケットに保持された前記配管が、前記ヒータ本体の発熱の一部が熱伝導性部材による前記取付けブラケットを介して伝達されて加熱されるとともに、前記ヒータ本体の発熱の一部が該ヒータ本体と前記配管との間の空隙を介して放射加熱され、さらに、前記保温ケースに囲まれた空間内の温度上昇により対流加熱されるように構成されている。
【0016】
また、上記のような本発明においては、前記ヒータ本体が丸棒状に形成され、前記取付けブラケットにより前記配管と前記空隙をもって平行に保持されることが好ましい。
【0017】
一方、本発明における前記蓋壁部は、前記筒状本体に脱着されるか、前記筒状本体にヒンジ構造を介して揺動自在に連結されているか、前記筒状本体に連設されてスリット溝を有して前記配管の挿通が可能に設けられていることが可能である。
【0018】
また、上記のような本発明においては、前記保温ケースの筒状本体が柔軟性を有する断熱材で形成され、前記蓋壁部が前記筒状本体に連設されるとともにスリット溝を有し、前記筒状本体の側壁の側方への変形により前記スリット溝が広がり、前記配管が内部に挿通されるように構成することが可能である。
【0019】
その際、前記保温ケースの筒状本体に、前記取付けブラケットの固着部を固定するベース部材を備えるように構成してもよい。
【0020】
本発明配管ヒータ装置の配管への装着に伴う上下方向位置または左右方向位置もしくは前後方向位置は、変更可能である。例えば、水平配管が水平方向に並んで設置され、配管ヒータ装置を上方または下方から装着する場合には、配管に上方から配管ヒータ装置を装着する方式では、配管の上方にヒータ本体が位置することになり、逆に配管に下方から配管ヒータ装置を装着する方式では、配管の下方にヒータ本体が位置することになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の配管ヒータ装置によれば、取付けブラケットを通してのヒータ保持部から配管係合保持部への熱伝導による配管の加熱、ヒータ本体側面から空隙を介しての放射熱による配管の加熱、ケース内の空間加熱に伴う熱対流による配管の加熱とにより、効率よく加熱されるとともに、ヒータ本体が配管に非接触に配置されていることで、直接接触により接触部分のみ高温に加熱されることなく、配管の外周での温度差が少なく、配管の変形等を生じることなく配管内を流れる流体を効率よく加熱することができ、流体流量を高めることが可能となる。
【0022】
また、配管への取り付けが、取付けブラケットを固着した保温ケースを装着することによって容易に行える。つまり、保温ケースに固着部が固定された取付けブラケットのヒータ保持部にはヒータ本体が保持されており、このヒータ本体を備えた保温ケースを、その切欠き開口の開口端を前記配管に一致させて、この開口端から配管が切欠き開口の内部に挿入するように装着する。この装着動作により、保温ケース内の取付けブラケットの配管係合部を配管に対して押し付けることで、この配管係合部が広がるように変形して配管の外周に弾性係合し、ヒータ本体と配管の位置を正確に保って精度良く設置することができる。
【0023】
なお、保温ケースの蓋壁部における開口端の開閉構造により、配管への装着動作の後に保温ケースの蓋壁部を閉じる作業が必要となる。
【0024】
各配管に対する配管ヒータ装置の設置誤差が少なく、配管とヒータ本体との配置関係、および伝熱特性つまり加熱特性が均等となり、所定温度に効率よく加熱することができる。
【0025】
また、本発明の配管ヒータ装置は、取付けブラケットに保持された発熱体としてのヒータ本体が、保温ケース内の長手方向に配管に沿って平行に配置されるため、保温ケース内の配管の空間加熱が可能であり、配管内を流れる流体を少ない温度ムラで加熱できる。
【0026】
また、保温ケースの筒状本体を柔軟性断熱材で形成し、この筒状本体に連設した蓋壁部にスリット溝を設けた構造とすると、筒状本体の側壁を側方へ変形させることでスリット溝が広がり、配管が内部に挿通できるようになり、配管ヒータ装置の取り付けがさらに容易に行える。その際、保温ケースの筒状本体に取付けブラケットの固着部を固定するベース部材を備えると、柔軟性断熱材による筒状本体への取付けブラケットの固着が確実に行える。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る配管ヒータ装置の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る配管ヒータ装置の設置状態を示す概略斜視図であり、
図2はその軸に垂直な方向で切断した横断面図、
図3はその軸に平行な方向で切断した縦断面図、
図4は保温ケースの端面図である。
【0029】
被加熱体としての配管Pは、直径が10mm以下(例えば、6mm程度)の細管が複数平行に所定ピッチ(例えば、20〜30mmピッチ)で並設されてなり、この配管Pは半導体製造装置、その他の製造装置等に接続され、内部を処理ガス等の被加熱流体が所定流量で流れる。本実施形態の配管ヒータ装置10が、各配管Pに対してそれぞれ独立して設置され、この配管Pを流下する被加熱流体を所定温度(例えば、140〜200℃)に加熱する。
【0030】
配管ヒータ装置10は、配管Pの外周に被覆される両端が閉じた筒状の保温ケース20と、保温ケース20の内部に設置される発熱体としてのヒータ本体30(
図2参照)と、このヒータ本体30を保持して保温ケース20に固着されるとともに前記配管Pに係合する取付けブラケット40とによって構成される。
【0031】
上記保温ケース20は、柔軟性が低い断熱材により配管Pに沿って長手方向に筒状に延びて構成される。図示の場合、該保温ケース20は配管Pの外周を覆う筒状本体21と、
図2で底壁となる分割形成された蓋壁部22と、該筒状本体21の両端部に設置された端面壁23と、を有する。上記蓋壁部22は、
図4にも示すように、角筒状の保温ケース20の一側面(底面)を開放して配管Pが挿通可能に設けられている。
【0032】
保温ケース20の断熱材としては、例えば、ジャケットヒータ系、シリコン系、マイカ系および耐熱樹脂を含浸させたクリーンブロック系の断熱材が好適に使用される。特にクリーンな環境が要求される場合には、クリーンブロック系が望ましい。
【0033】
保温ケース20の寸法としては、配管Pの配列方向の幅(
図2の横方向の長さ)は配管Pの配設ピッチ(例えば20mm程度)とほぼ同等に設けられるものであり、縦幅は本例の場合上下にヒータ本体30と配管Pが配置されることに伴い横幅より大きく(例えば30mm程度)に設けられる。また、配管Pに沿った長さは加熱温度等に応じて必要とされる所定長さ(例えば50〜500mm程度)に設置される。
【0034】
両端の端面壁23には、
図4に示すように、上記蓋壁部22の面からU字状に切り欠かれた切欠き開口24を有し、この切欠き開口24の一端は蓋壁部22の装着によって閉塞される開口端24aに設けられ、この開口端24aから配管Pが切欠き開口24に挿通され、中心側の内端部24bに係合された配管Pが位置する。
【0035】
通電に応じて発熱するヒータ本体30は、図示の場合、剛体の棒状に設けられ、取付けブラケット40の後述のヒータ保持部42に保持されて、前記保温ケース20の筒状本体21の内部に、
図2の場合で、配管Pの上方に該配管Pと平行に長手方向に配置される。このヒータ本体30としては、例えば、ガラス管内に熱線がコイル状に配設された棒状発熱体など、加熱温度等に応じて公知の構造に設けられた発熱体が使用される。なお、このヒータ本体30に対しては、両端部に給電用の配線31(
図3参照)が設置され、保温ケース20の外部に不図示の給電ケーブルが導出され、外部においてコネクタ等を介して電源に接続される。
【0036】
次に、上記ヒータ本体30を保持して前記配管Pに係合する取付けブラケット40の構造について説明する。この取付けブラケット40は、
図2および
図3に示すように、ヒータ本体30を配管Pに対して所定位置に配置させるものであり、熱伝導性弾性材料による板状部材がプレス加工(打ち抜き加工および折曲可能)、接合加工(溶接加工等)などにより形成されてなる。
【0037】
取付けブラケット40は、保温ケース20の内面に固着される固着部41と、ヒータ本体30を保持するヒータ保持部42と、配管Pに押し付けることにより広がって配管Pの外周に弾性係合して保持される配管係合部43とからなり、配管係合部43の先端には外側に広がる導入用の先端部44が形成されている。
【0038】
取付けブラケット40は、全体としてヒータ本体30の軸方向長さに匹敵する長さ(ヒータ本体30の形状等によって相違する)に設けられ、保温ケース20の長手方向の長さより短く、保温ケース20の内部に挿入されて固着される。
【0039】
上記固着部41は、保温ケース20の筒状本体21の前記蓋壁部22とは反対側の上壁内面と平行な平面を有し、各種固着手段によりに筒状本体21の内面に複数個所で固着される。
【0040】
ヒータ保持部42は、上記固着部41との接合面から両側に広がってから連続する斜面により内面が狭まるように形成されて、内部に棒状のヒータ本体30を両側から挟持するように構成されている。そして、前記ヒータ本体30は、端部の配管係合部43を広げてその開口端部の先端部44から押し込むように装着するか、軸方向端部のヒータ保持部42の開口部から軸方向に挿入して装着するものである。ヒータ本体30の形状等に応じて、保温ケース20に固着する前の取付けブラケット40にヒータ本体30を装着した後に、取付けブラケット40を保温ケース20の筒状本体21の内部に挿入固着するのが好適である。
【0041】
配管係合部43の形状は、上記ヒータ保持部42の両端部から両側に広がりその後狭まり、内部に配管Pを両側から挟持するように設けられ、また、軸方向には
図3に示す所定間隔でスリット溝45が先端部44から形成されて分割形成されている。つまり、複数のクリップ部が並列に配置された構造となって、配管Pの係合特性が各部で安定するように設けられている。なお、
図3の場合には、ヒータ保持部42は軸方向には一体構造であるが、この部分にもスリット溝45を延長形成してもよい。さらに、スリット溝45により、取付けブラケット40を複数に分割形成してもよい。
【0042】
上記配管係合部43の位置は、保持した配管Pの中心と保温ケース20の切欠き開口24の内端部24bの中心とが軸方向に一致するように設けられている。即ち、取付けブラケット40の固着状態において、配管係合部43の先端部44は、保温ケース20の蓋壁部22に面し、開口端24aから挿入された配管Pが切欠き開口24の内端部24bに移動した際に、取付けブラケット40の配管係合部43に係合して保持されるように設けられている。
【0043】
なお、ヒータ保持部42にヒータ本体30を保持し、配管係合部43を配管Pに係合した
図2の状態において、平行に保持されたヒータ本体30と配管Pとの間には所定の空隙Sが形成されるように、取付けブラケット40の形状寸法が設定されている。
【0044】
上記のように構成された配管ヒータ装置10の取り付けについて説明する。まず、蓋壁部22を取り外した保温ケース20の筒状本体21の内部に、ヒータ保持部42に予めヒータ本体30を保持させてなる取付けブラケット40を挿入し、その固着部41を筒状本体21の内面に固着したものを用意する。
【0045】
次に、上記の取付けブラケット40を固着した保温ケース20を、その蓋壁部22を取り外した切欠き開口24の開口端24aに配管Pが挿入するように、配管Pに対して押し付けることにより装着する。開口端24aから切欠き開口24の内部に移動した配管Pは、取付けブラケット40の先端部44に当接してさらに押し付けられることで、配管係合部43を広げるように変形させつつその内部に進入して、切欠き開口24の内端部24bで、配管係合部43の内部の所定位置に配管Pが係合される。
【0046】
これにより、配管Pに対して取付けブラケット40を介してヒータ本体30および保温ケース20が所定の位置関係、つまり、取付けブラケット40の配管係合部43に係合保持された配管Pと、取付けブラケット40のヒータ保持部42に保持されたヒータ本体30との間に空隙Sが形成された状態に配設される。その後、筒状本体21に蓋壁部22を結合して保温ケース20を形成し、ヒータ本体30に対する給電ケーブルを電源配線に接続することにより組付けを完了する。各配管Pに対して上記配管ヒータ装置10の組み付けをそれぞれ独立して行い、全体としての配管ヒータ装置を完成させる。
図1に示すように、隣接する配管ヒータ装置10の保温ケース20は、相互に接触する程度に配置されてなる。
【0047】
なお、筒状本体21への蓋壁部22の固定は、突起と凹部による係合構造の形成による係合固定構造、接着剤を使用する接着固定構造、外周に締結バンドを装着する固縛式の固定構造などが適宜採用可能である。
【0048】
配管ヒータ装置10による配管Pの加熱状態を説明する。上記ヒータ本体30は、通電により所定温度に発熱し、このヒータ本体30の発熱の一部が、取付けブラケット40の熱伝導によりヒータ保持部42から配管係合部43に伝わり、配管係合部43から配管Pの周面に伝熱されるとともに、ヒータ本体30の発熱の他の一部が、上記ヒータ本体30と配管Pとの間の空隙Sを介して放射伝熱され、さらに、発熱の他の一部が、保温ケース20によって囲まれた内部空間の温度上昇により対流により伝達され、これらの総合により配管Pが効率よく、所定温度に、温度ムラの少ない状態で加熱される。
【0049】
また、配管Pに対する配管ヒータ装置10の取り付けが容易に行えるとともに、取付け後の配管Pとヒータ本体30の位置関係、および保温ケース20との位置関係の寸法精度が良好に確保でき、各配管Pに取り付けた配管ヒータ装置10のそれぞれにおける加熱特性が均等となり、配管Pを同等の特性で温度ムラなく加熱することができる。
【0050】
次に、
図5は、変形例の保温ケース120を示すものであり、柔軟性が低い断熱材により形成された筒状本体121の底面(一側面)を開閉して、前記配管Pを内部に挿入させるための開口を開閉する構造に設けられている。
【0051】
この変形例においては、蓋壁部122の一端部がヒンジ構造122a(例えば、薄肉ヒンジ構造)を介して筒状本体121の端部に揺動可能に連結されている。このヒンジ構造122aを介した蓋壁部122の揺動によって開閉作動し、筒状本体121の内部に前述の実施形態に示されるような取付けブラケット40が固着された保温ケース120を、前記配管Pに対して蓋壁部122を開いた状態で装着し、装着後に蓋壁部122を閉じるように構成されている。その他は、第1の実施形態と同様に構成されていればよい。
【0052】
次に、
図6は、さらに他の変形例の保温ケース220を示すものであり、柔軟性が低い断熱材により形成された筒状本体221の内部に配管Pを挿通する蓋壁部222の開閉構造を、該蓋壁部222を柔軟性を有する断熱材により形成するとともに、縦方向にスリット溝223を形成して構成している。そして、装着のために配管Pに押し付けた際に、スリット溝223の両側の柔軟性の変形部222aが内側に弾性変形し、スリット溝223を広げて配管Pが保温ケース220の内部に挿通するように形成されている。その他は、第1の実施形態と同様に構成されていればよい。
【0053】
次に、
図7は、他の形態の取付けブラケット140を備えた第2の実施形態の配管ヒータ装置100を示している。この実施形態の取付けブラケット140は、2枚の板部材を張り合わせた構造に形成されるとともに、ヒータ本体30を脱着不能に保持するようにした構造に設けられている。
【0054】
つまり、取付けブラケット140は、第1の実施形態と同様に、固着部141と、ヒータ保持部142と、配管係合部143と、導入用の先端部144とからなっている。固着部141は、第1の実施形態と同様に形成された保温ケース20の蓋壁部22と反対側の壁面と平行な平面で構成され、中央部で接合された2枚の板部材が両側に分かれて、平板状に広がって形成され、筒状本体21の内面に固着される。ヒータ保持部142は、固着部141の中央部に連続して軸方向に延びてから、両側に広がり円筒状にヒータ本体30の外形に沿って湾曲形成され、反対側の中央部で両側の板部材が接合されてなり、その円筒内部に丸棒状のヒータ本体30が挿入保持される構造である。
【0055】
配管係合部143は、ヒータ保持部142の中央部に連続して軸方向に少し延びてから、両側に湾曲形状に広がり、中間部で内側に折れ曲がって狭まるように延び、反対側端部(図で下端部)に連続する導入用の先端部144は、自由状態でも間隔が開いた位置から外側に屈曲形成され、この配管係合部143の内部に配管Pが係合保持される。その他の構造は、第1の実施形態と同様に形成されている。また、
図5または
図6に示すような変形例の保温ケース120,220も適用可能である。
【0056】
そして、この
図7に示す取付けブラケット140を備えた第2の実施形態においても、配管Pに対する配管ヒータ装置100の設置は、第1の実施形態と同様に、ヒータ保持部142にヒータ本体30を保持した取付けブラケット140を内面に固着し、蓋壁部22を取り外した状態の保温ケース20を、配管Pに対して押し付けるように装着すると、配管Pが内部の配管係合部143に挿入係合されて、所定位置に容易に組み付けられる。
【0057】
なお、
図7に示す断面位置においては、ヒータ本体30と配管Pとの間には空間としての空隙Sが形成されていることが明示されていないが、取付けブラケット140の長手方向の形状が、
図3のようにスリット溝45を有するように形成されている場合のスリット溝45の部分、または、取付けブラケット140が長手方向に短く分割形成されている場合などにおいては、ヒータ本体30と配管Pとの間に取付けブラケット140の部材が形成されていない部分があり、この部分においてヒータ本体30の発熱が輻射伝熱される空隙Sが形成されるものである。
【0058】
そして、本実施形態においても、取付けブラケット140を介しての熱伝導による加熱、空隙Sを介しての輻射加熱、保温ケース120の内部空間の加熱による対流加熱により、配管Pおよびその内部を流下する流体が所定温度に加熱されるものである。
【0059】
次に、
図8は第3の実施形態に係る配管ヒータ装置300を示している。この実施形態の配管ヒータ装置300は、配管Pの外周に被覆される両端が閉じた筒状の保温ケース320と、保温ケース320の内部に設置される発熱体としてのヒータ本体30と、このヒータ本体30を保持して保温ケース320に固着されるとともに前記配管Pに係合する取付けブラケット340とによって構成される。
【0060】
上記保温ケース320は、柔軟性を有する断熱材により配管Pに沿って長手方向に筒状に延びて構成された筒状本体321と、この筒状本体321に連設され
図8で底壁となる蓋壁部322と、図示してないが第1の実施形態と同様に筒状本体321の両端部に設置された端面壁とを有する。上記蓋壁部322はスリット溝323を有し、鎖線で筒状本体321の側壁の変形状態を示すように、このスリット溝323が広がって配管Pが挿通可能に設けられている。
【0061】
上記ヒータ本体30を保持して前記配管Pに係合する取付けブラケット340は、第1の実施形態とほぼ同様の構造であるが、柔軟性の保温ケース320に固着する構造が異なっている。この取付けブラケット340は、保温ケース320に固着されるピン状の固着部341と、ヒータ本体30を保持するヒータ保持部342と、配管Pに押し付けることにより広がって配管Pの外周に弾性係合して保持される配管係合部343とからなり、配管係合部343の先端には外側に広がる導入用の先端部344が形成されている。
【0062】
また、前記保温ケース320の上壁の外面にはベーク材などの板材によるベース部材350が長手方向に延びて設けられ、柔軟な保温ケース320に対する取付けブラケット340の固着が堅固に行えるように構成されている。上記取付けブラケット340の複数の固着部341は、ヒータ保持部342の平坦部にピン状に突設され、この固着部141が筒状本体321の上壁部分を貫通して上記ベース部材350の背面に当接し、この当接部分において外部から固定部材351によって固着部342つまり取付けブラケット340とベース部材350とが結合されてなり、これによって取付けブラケット340が柔軟な保温ケース320に確実に固着保持されてなる。
【0063】
上記ヒータ保持部342にヒータ本体30を保持し、配管係合部343を配管Pに係合した状態においては、第1の実施形態と同様に、平行に保持されたヒータ本体30と配管Pとの間には所定の空隙Sが形成されるように、取付けブラケット340の形状寸法が設定されている。その他、図示してない部分の構成は、必要に応じて第1の実施形態と同様に構成されていればよい。
【0064】
上記のように構成された本実施形態の配管ヒータ装置300の取り付けについて説明する。まず、ヒータ保持部342に予めヒータ本体30を保持させてなる取付けブラケット340を保温ケース320の筒状本体321の内部に挿入し、その固着部341をベース部材350に対し固定部材351によって結合して筒状本体321に固着したものを用意する。
【0065】
次に、上記の取付けブラケット340を固着した保温ケース320を、筒状本体321の一側壁(隣接する配管Pに対して既に配管ヒータ装置300が装着されている場合にはそれから離れた側の側壁)を、外側にスリット溝323が鎖線で示すように広がるように変形させ、この広がったスリット溝323を配管Pが通過するように、配管Pに対して押し付けることにより装着する。筒状本体321の内部に移動した配管Pは、取付けブラケット340の先端部344に当接してさらに押し付けられることで、配管係合部343を広げるように変形させつつその内部に進入して、配管係合部343の内部の所定位置に係合される。
【0066】
これにより、配管Pに対して取付けブラケット340を介してヒータ本体30および保温ケース320が所定の位置関係、つまり、取付けブラケット340の配管係合部343に係合保持された配管Pと、取付けブラケット340のヒータ保持部342に保持されたヒータ本体30との間に空隙Sが形成された状態に配設される。その後、筒状本体321の側壁の変形力を開放し、保温ケース320の弾性力によってその筒状本体321の変形がスリット溝323を閉じるように復帰し、電源配線に接続することにより組付けを完了する。順次各配管Pに対して上記配管ヒータ装置300の組み付けをそれぞれ独立して行い、全体としての配管ヒータ装置を完成させる。
【0067】
配管ヒータ装置300による配管Pの加熱状態は、第1の実施形態と同様に、通電により所定温度に発熱したヒータ本体30の発熱の一部が、取付けブラケット340の熱伝導によりヒータ保持部342から配管係合部343に伝わり、配管係合部343から配管Pの周面に伝熱されるとともに、発熱の他の一部がヒータ本体30と配管Pとの間の空隙Sを介して放射伝熱され、さらに、発熱の他の一部が、保温ケース320によって囲まれた内部空間の温度上昇に伴う対流により伝達され、これらの総合により配管Pが効率よく、所定温度に、温度ムラの少ない状態で加熱される。
【0068】
とくに、本実施形態においては、柔軟性を有する保温ケース320の採用によって、狭いピッチで並設された配管Pに対する配管ヒータ装置300の取り付けが容易に行えるとともに、取付け後の配管Pとヒータ本体30の位置関係、および保温ケース320との位置関係の寸法精度が良好に確保でき、各配管Pに取り付けた配管ヒータ装置300のそれぞれにおける加熱特性が均等となり、配管Pを同等の特性で温度ムラなく加熱することができる。
【0069】
なお、前記実施形態のほか種々の態様に変形可能である。例えば、保温ケースの端面壁は、筒状本体と別体に形成して接合するようにしてもよい。とくに、第3の実施形態の保温ケースのように、この保温ケースが押出し成型などにより筒状に予め成形される場合には、端面壁の部分は別体に形成して接合する必要がある。