(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱源により液状の作動媒体を蒸発させて蒸気を生成する蒸発器と、前記蒸発器で生成された蒸気を利用して発電を行うと共に、外部の電力供給系統に逆潮流防止手段を介して接続されている発電機と、前記発電機で発電に利用された蒸気を凝縮させて、前記蒸発器に供給される液状の作動媒体を生成する凝縮器と、を有する発電システムを備えると共に、前記発電機に接続された電力負荷と、前記発電機から外部の電力供給系統への逆潮流を遮断する逆潮流防止手段と、を備えているローカル電力系統の制御方法であって、
前記発電システムの発電機は、前記発電機の発電電力が逆潮流防止手段の働く電力値未満であって、逆潮流が生じると判断できる値に対して安全率を見積もって設定された発電電力の設定値となるよう、変動する前記電力負荷の負荷状態に合わせて、電力負荷へ供給される発電電力量を調整することを特徴とするローカル電力系統の制御方法。
前記発電電力測定手段で測定された発電電力から使用電力測定手段で測定された使用電力を減じた値が下限として予め設定した閾値よりも小さくなった際には、発電機で発電された電力の一部を蓄電し、
前記発電電力測定手段で測定された発電電力から使用電力測定手段で測定された使用電力を減じた値が上限として予め設定した閾値よりも大きくなった際には、蓄電されていた電力を電力負荷側へ供給することを特徴とする請求項3に記載のローカル電力系統の制御方法。
熱源により液状の作動媒体を蒸発させて蒸気を生成する蒸発器と、前記蒸発器で生成された蒸気を利用して発電を行うと共に、外部の電力供給系統に逆潮流防止手段を介して接続されている発電機と、前記発電機で発電に利用された蒸気を凝縮させて、前記蒸発器に供給される液状の作動媒体を生成する凝縮器と、を有する発電システムと、
前記発電機に接続された電力負荷と、
前記発電機から外部の電力供給系統への逆潮流を遮断する逆潮流防止手段と、
前記発電機の発電電力を変化させて前記電力負荷へ供給される発電電力量を調整する発電量調整手段と、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載された制御方法を実施する制御部と、
を備えていることを特徴とするローカル電力系統。
前記発電量調整手段が、前記作動媒体を蒸発器へ送るとともにその送り量を調整自在な、ポンプの出口側流路から分岐してポンプの入口側流路へと繋がるバイパス流路に設けられたバイパス弁であることを特徴とする請求項5に記載のローカル電力系統。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ローカル電力系統に設けられたバイナリー発電システムは、外部の電力供給系統に対して余剰な電力を売却する売電を行うことも可能である。
その一方で、売電を行うことがないバイナリー発電システムの接続に際しては、外部の電力供給系統を構成する機器やこの電力供給系統に接続されている他の需要者に、当該バイナリー発電システムが悪影響を及ぼさないように逆潮流防止継電器(逆潮流防止手段)を設置しなくてはならないことが義務づけられている。
【0006】
この逆潮流防止継電器は、例えばバイナリー発電システムから余剰の電力が逆潮流となって電力供給系統に逆流するような場合、言い換えればバイナリー発電システムの電力が外部の電力供給系統の電力品質を低下せしめてしまうような可能性が生じた場合は、バイナリー発電システムを外部の電力供給系統から切り離すものである。
ここで、売電を行わないローカル電力系統に対して、特許文献1の発電システムを採用することを考える。
【0007】
その場合、特許文献1の発電システムでは、発電機を一定の回転数で回転させ続ける構成を採用しているため、電力負荷の大小によらず発電量は常に一定である。それゆえ、発電量が電力負荷を一時的に上回る可能性は十分にあり、逆潮流防止継電器が働いて、バイナリー発電システム側(ローカル電力系統)が外部の電力供給系統から切り離される場合もあり得る。
【0008】
ところが、この逆潮流防止継電器が働いて、外部の電力供給系統から切り離されたバイナリー発電システムを電力供給系統に再接続しようとする場合には、一旦バイナリー発電システムを停止させなければ外部の電力供給系統に再接続できない。そのため、バイナリー発電システムの稼働率、言い換えれば発電効率が必然的に低下してしまうという問題が発生する。
【0009】
また、逆潮流防止継電器が作動しないようにバイナリー発電システムで発電される発電電力を最初から小さく設定しておくこともできるが、このように発電電力を最初から制限してしまうと、バイナリー発電システムの発電効率が当然低いものとなる。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、逆潮流防止手段を介して外部の電力供給系統に接続されているローカル電力系統において、ローカル電力系統内の電力負荷での使用電力が減少しても外部の電力供給系統に逆潮流が起きにくく、且つ、逆潮流防止手段が接続された状態で発電したとしてもローカル電力系統内の発電システムの稼働率や
発電効率が低下することがないローカル電力系統の制御方法及びローカル電力系統を提供することを目的とする。
【0010】
言い換えれば、本発明は、逆潮流防止手段によって発電システムが停止させられてしまうことをできる限り回避して、発電効率を良好にすることができるローカル電力系統の制御方法及びローカル電力系統を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じている
。
【0014】
すなわち、本発明のローカル電力系統の制御方法は、熱源により液状の作動媒体を蒸発させて蒸気を生成する蒸発器と、前記蒸発器で生成された蒸気を利用して発電を行うと共に、外部の電力供給系統に逆潮流防止手段を介して接続されている発電機と、前記発電機で発電に利用された蒸気を凝縮させて、前記蒸発器に供給される液状の作動媒体を生成する凝縮器と、を有する発電システムを備えると共に、前記発電機に接続された電力負荷と、前記発電機から外部の電力供給系統への逆潮流を遮断する逆潮流防止手段と、を備えているローカル電力系統の制御方法であって、前記発電システムの発電機は、前記発電機の発電電力が逆潮流防止手段の働く電力値未満
であって、逆潮流が生じると判断できる値に対して安全率を見積もって設定された発電電力の設定値となるよう、変動する前記電力負荷の負荷状態に合わせて、電力負荷へ供給される発電電力量を調整することを特徴とす
る
。
【0015】
また、前記発電電力を計測する発電電力測定手段を予め設けておき、この発電電力測定手段で測定される発電電力が前記設定値となるように、前記蒸発器へと送られる前記作動媒体の循環量を変化させて電力負荷へ供給される発電電力量を調整するのが好ましい。
また、前記発電機で発電された発電電力を計測する発電電力測定手段と、前記電力負荷が消費する使用電力を計測する使用電力測定手段とを予め設けておき、この発電電力測定手段で測定された発電電力から使用電力測定手段で測定された使用電力を減じた値が、逆潮流防止手段の働く電力値未満
であって、逆潮流が生じると判断できる値に対して安全率を見積もって設定された発電電力の設定値に近づ
くように、前記作動媒体の循環量を変化させて電力負荷へ供給される発電電力量を調整するのが好ましい。
【0016】
また、前記発電電力測定手段で測定された発電電力から使用電力測定手段で測定された使用電力を減じた値が下限として予め設定した閾値よりも小さくなった際には、発電機で発電された電力の一部を蓄電し、前記発電電力測定手段で測定された発電電力から使用電力測定手段で測定された使用電力を減じた値が上限として予め設定した閾値よりも大きく
なった際には、蓄電されていた電力を電力負荷側へ供給するのが好ましい。
【0017】
一方、本発明のローカル電力系統は、熱源により液状の作動媒体を蒸発させて蒸気を生成する蒸発器と前記蒸発器で生成された蒸気を利用して発電を行うと共に外部の電力供給系統に逆潮流防止手段を介して接続されている発電機と前記発電機で発電に利用された蒸気を凝縮させて前記蒸発器に供給される液状の作動媒体を生成する凝縮器とを有する発電システムと、前記発電機に接続された電力負荷と、前記発電機から外部の電力供給系統への逆潮流を遮断する逆潮流防止手段と、前記発電機の発電電力を変化させて前記電力負荷へ供給される発電電力量を調整する
発電量調整手段と、上述した制御方法を実施する制御部と、を備えている。
【0018】
なお、前記発電量調整手段が、前記作動媒体を蒸発器へ送るとともにその送り量を調整自在なポンプであるのが好ましい。
また、前記発電量調整手段が、前記作動媒体を蒸発器へ送るとともにその送り量を調整自在な、ポンプの出口側流路から分岐してポンプの入口側流路へと繋がるバイパス流路に設けられたバイパス弁であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のローカル電力系統の制御方法及びローカル電力系統によれば、逆潮流防止手段を介して外部の電力供給系統に接続されているローカル電力系統において、ローカル電力系統内の電力負荷での使用電力が減少しても外部の電力供給系統に逆潮流が起きにくく、且つ、逆潮流防止手段が接続された状態で発電したとしてもローカル電力系統内の発電システムの稼働率や発電効率が低下することがなくなる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るローカル電力系統の第1実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1(a)に示すように、本発明のローカル電力系統1は、電力負荷2と、この電力負荷2に発電した電力を供給するバイナリー発電システム(以下、発電システム3という)とで構成される。また、このローカル電力系統1は、外部の電力供給系統4に逆潮流防止継電器5(逆潮流防止手段)を介して接続されている。そして、これらの電力負荷2、バイナリー発電システム3、外部の電力供給系統4の三者は配線6で互いに電気的に接続されている。
【0022】
次に、ローカル電力系統1を構成する電力負荷2及び発電システム3、並びにローカル電力系統1に接続された外部の電力系統4について説明する。
発電システム3は、工場の廃熱や地熱のような熱源から熱を回収して発電を行うものである。具体的には、
図1(b)に示す如く、この発電システム3は、熱源(図例では温水)により液状の作動媒体を蒸発させてガス状の作動媒体を生成する蒸発器7と、この蒸発器7で生成された作動媒体の蒸気を利用して発電を行う発電機8と、この発電機8で発電に利用された蒸気を凝縮させて、蒸発器7に供給される液状の作動媒体を生成する凝縮器9とを備えている。これら蒸発器7、発電機8、凝縮器9は、作動媒体を循環させる循環配管10(循環ライン)により接続されており、この循環配管10の経路上には、作動媒体を循環させるポンプ11が配備されている。つまり、発電システム3は、このポンプ11により作動媒体を循環配管10の一方向に向かって送りつつ、作動媒体を蒸発器7、発電機8、凝縮器9の順番に循環させる閉ループ状の構成とされている。
【0023】
それ故、この発電システム3では、まず蒸発器7において、工場からの排水や地下から湧き出る温水などの熱源との間に熱交換が行われて、作動媒体の液体から作動媒体の蒸気
が生成される。そして、この蒸発器7から発電機8に送られた作動媒体の蒸気は、発電機8を駆動させ発電を行う。その後、蒸気は凝縮器9に送られ、凝縮器9において冷却水との間に熱交換が行われて、作動媒体の蒸気は液体に戻る。凝縮器9で生成された液状の作動媒体はポンプ11で圧送されて蒸発器7に帰還する。発電された電力は、ローカル電力系統1内の電力負荷2に送られる。
【0024】
電力負荷2は、ローカル電力系統が敷設された工場内に設置されたモータや製造設備であり、電力を消費する電動機器である。一方、この電力負荷2には外部の電力供給系統4も接続されている。
外部の電力供給系統4は、例えば、電力会社が発電し商業的に電力を供給する系統である。
【0025】
電力会社側に売電しない場合においては、ローカル電力系統1は逆潮流防止継電器5を介して外部の電力供給系統4に接続されることが義務づけられている。
逆潮流防止継電器5を必要とする理由は以下の通りである。
例えば、上述した発電システム3で発電した電力を電力会社に売電しない場合は、何らかの理由で発電した電力の一部が余剰電力として電力供給系統4に流れ込むと、外部の電力供給系統4の電圧や周波数が高くなって供給電力の品質が損なわれる虞がある。また、このような電力会社で制御できないような電力が存在すると、電力会社側で配線6をメンテナンスする際などに問題が発生することもある。そこで、逆潮流防止継電器5を介して、ローカル電力系統1を外部の電力供給系統4へ接続するようにしている。この逆潮流防止継電器5は、電力供給系統4に対する電力の逆流(逆潮流)を監視し、電力会社側で制御できないような電力(発電電力)の逆流があった場合はローカル電力系統1を外部の電力供給系統4から切り離す機能を有している。
【0026】
ところが、電力負荷2での電力使用量は電力負荷2として設置される設備やモータの稼働状況に応じて変動するため、設備やモータが稼働せずに停止した状況では電力負荷2での電力使用量も当然低くなる。つまり、発電システム3で発電される発電電力量が一定とされている場合であっても、電力負荷2での電力使用量は低下することがあるため、発電電力量が電力使用量を超えて余剰の電力が発生する場合は起こりうる。このような余剰電力が発生すると、上述したように逆潮流防止継電器5が作動するため、ローカル電力系統1は自動的に外部の電力供給系統4から切り離される。そして、この逆潮流防止継電器5により切り離されたローカル電力系統1については、一旦発電システム3を停止させなければ外部の電力供給系統4に再接続できない。そのため、発電システム3の稼働率、言い換えれば発電効率が必然的に低下してしまうという問題が発生する。
【0027】
そこで、本発明のローカル電力系統1では、電力負荷2の負荷状態に合わせて、発電システム3(発電機8)から電力負荷2へ供給される発電電力量を調整しており、これによって逆潮流防止継電器5が働くことがなく、バイナリー発電システム3の稼働率を下げないようにしている。
具体的な発電電力量の調整・制御方法を、第1実施形態〜第3実施形態として、以下説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態の制御方法は、作動媒体の循環量を変化させることにより電力負荷2へ供給される発電電力量を調整するものである。具体的には、この制御方法では、発電機8で発電された発電電力を計測する発電電力測定手段12を予め設けておき、この発電電力測定手段12で測定された発電電力が予め定められた発電電力量の設定値となるように、作動媒体の循環量すなわち蒸発器へ送る作動媒体の送り量を変化させて電力負荷2へ供給される発電電力量を調整する。
【0028】
発電電力測定手段12は、発電機8から電力負荷2に電力を送電する配線6に設けられた電力計であり、本実施形態の場合、3つの電力測定手段12a〜12cが配備されている。
図1(b)に示すように、発電機8から電力負荷2に向かう配線6は途中で分岐していて、分岐した配線6を介して発電された電力の一部を発電機8のポンプ11や潤滑油ポン
プなど(内部負荷)に帰還することによりこれらの運転を可能とするようになっている。この配線6の分岐点Xから三方に伸びる配線6のそれぞれの配線6に対して、電力を測定する3つの電力測定手段12(第1電力測定手段12a〜第3電力測定手段12c)が設けられている。
【0029】
具体的には、これら3つの電力測定手段12a〜12cとしては、配線6の分岐点Xから電力負荷2側(外部の電力供給系統4側)に伸びる配線6に設けられる第1電力測定手段12aと、配線6の分岐点Xからポンプ11側に帰還する配線6に設けられる第2電力測定手段12bと、発電機8から配線6の分岐点Xまでの配線6に設けられる第3電力測定手段12cとの3つがある。
【0030】
その上で、第1電力測定手段12aで測定された電力の値、又は第2電力測定手段12bで測定された電力の値から第3電力測定手段12cで測定された電力の値を差し引いたもの(正味の発電電力量)を、発電機8で発電された発電電力の測定値として後述する制御部13の循環量算出部14に送っている。
なお、第1電力測定手段12a〜第3電力測定手段12cとしては、渦電流式の積算電力計やコイルを用いた瞬時式電力計などを用いることができる。また、これらの電力測定手段には、電力計に代えて電流計などを用いても良い。この場合、計測された電流値に電圧をかけることで電力が算出される。
【0031】
一方、制御部13は、発電電力測定手段12で測定または算出された発電電力の測定値に基づいて、発電電力が予め定められた発電電力量の設定値となるように作動媒体の循環量を算出する循環量算出部14と、循環量算出部14で算出された循環量となるようにポンプ11の出力(回転数)を制御するポンプ制御部15とを有している。
循環量算出部14には、製造現場の操業実績に基づいて、予め発電すべき発電電力の設定値がプログラムされている。この発電電力の設定値は、例えば電力負荷2(外部負荷)が一日のうちでどれ位変動するか、あるいは日中と夜間とで電力負荷2がどれ位変動するかと言った過去の統計データから決定されている。循環量算出部14では、この統計データに基づいて電力負荷2に釣り合う発電電力より安全率を見積もった小さい電力(逆潮流防止手段が働く電力値未満とされた電力値)を発電する場合の作動媒体の循環量を算出する。この循環量算出部14で算出された作動媒体の循環量は、ポンプ制御部15に送られる。
【0032】
そして、ポンプ制御部15では、循環量算出部14から送られてきた作動媒体の循環量になるように、発電量調整手段であるポンプ11の回転数や、ポンプ11の出口側流路から分岐してポンプ11の入口側流路へと繋がるバイパス流路に設けられた流量調整弁等のバイパス弁の弁開度などを制御する。
図2には、第1実施形態のローカル電力系統1の制御方法を示すフローチャートが示してある。この図を用いて、第1実施形態の制御方法を説明する。
【0033】
ステップ1(S1)では、まず電力負荷2の負荷状況、言い換えれば工場や建屋内に設置された設備の負荷状況の過去データに応じて、事前に発電機8で発電する発電電力量の設定値を設定しておく。この発電電力量の設定値は、上述したように電力負荷2(外部負荷)の負荷状況の過去の統計データから決定されており、逆潮流を起こす可能性を確実に排除できるように、この負荷状況の統計データに基づいて電力負荷2に釣り合う発電電力量より小さい値となっている。
【0034】
ステップ2(S2)では、電力測定手段を用いて発電機8で実際に発電された発電電力量、言い換えればバイナリー発電システムから出力される出力電力を計測する。このとき計測する出力電力としては、発電機8で発電される発電電力量をそのまま用いることもできるし、発電電力量からポンプ11の消費電力などを差し引いた正味の発電電力量を用いることもできる。前者の場合は第1電力測定手段12aで測定した値(電力量)をそのまま用い、後者の場合は第2電力測定手段12bで測定した値(電力量)から第3電力測定手段12cで測定した値(電力量)を引いたものを用いる。
【0035】
ステップ3(S3)では、電力測定手段を用いてステップ2(S2)で実測された正味の発電電力量(第1電力測定手段12の値、又は第2電力測定手段12の値−第3電力測
定手段12の値)と、ステップ1(S1)で設定された発電電力量の設定値との比較を行う。
この実測出力電力が発電電力量の設定値より大きい場合(Yesの場合)は、電力負荷2で必要とされる電力に対して発電機8の発電電力量が大きくなっている。つまり、余剰の電力が外部の電力供給系統4に流れ込んで、逆潮流防止継電器5が働く虞があるため、ステップ4(S4)に進んで作動媒体の循環量(蒸発器7への送り量)を減らす。
【0036】
一方、この電力の計測値が発電電力量の設定値より小さい場合(Noの場合)は、電力負荷2で必要とされる電力に対して発電機8の発電電力量の方が小さくなっているため、ステップ5(S5)に進んで作動媒体の循環量を増やす。
ステップ4(S4)では、発電量調整手段であるポンプ11の回転数を下げる、又はバイパス弁を開くなどして、ポンプ11の出力を下げ、作動媒体の循環流量を減らす。
【0037】
ステップ5(S5)では、発電量調整手段であるポンプ11の回転数を上げる、又はバイパス弁を閉じるなどして、ポンプ11の出力を上げ、作動媒体の循環流量を増やす。
このようにすれば発電電力量が電力負荷2で必要とされる電力に対して常時これを下回るように電力負荷2の負荷状況に応じた発電が行われ、逆潮流防止継電器5を介して外部の電力供給系統4の電力が絶えず電力負荷2に向かって流れ込むため、逆潮流防止継電器5が作動しなくなる。その結果、発電機8の稼働率が上がって、発電効率も向上する。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のローカル電力系統1の制御方法を説明する。
【0038】
図3に示すように、第2実施形態のローカル電力系統1の制御方法は、第1実施形態と同様に作動媒体の循環流量を増減させて発電電力量を減らすことにより電力負荷2へ供給される発電電力量を調整するものであるが、発電機8の発電電力量を予め設定しておくのではなく、逆潮流防止継電器5に実際に流れる電力(供給電力)を実測または算出し、この実測または算出した電力に基づいて逆潮流が発生しない範囲で発電が行うものである。
【0039】
具体的には、第2実施形態のローカル電力系統1の制御方法では、外部の電力供給系統4から供給される供給電力を計測する供給電力測定手段16を予め設けておく。そして、この第2実施形態のローカル電力系統1では、供給電力測定手段16で測定される供給電力が逆潮流とならないように作動媒体の循環流量(蒸発器7への送り量)を調整する。
つまり、供給電力測定手段16では、外部の電力供給系統4から電力負荷2側に流れる向きを正とする電力が測定される。そして、供給電力測定手段16で測定される供給電力が予め安全率を見積もって設定された設定値(閾値)よりも小さくなった(安全率の範囲内で負の値となった)場合には、供給電力測定手段16で測定された電力に逆潮流が発生しうると判断して、この逆潮流の発生を未然に防止すべく発電量調整手段を用いて作動媒体の循環量を減少させて電力負荷2側への電力供給量を調整するのである。
【0040】
供給電力測定手段16は、第1実施形態の発電電力測定手段12と同様に渦電流式の積算電力計やコイルを用いた瞬時式電力計などを用いることができる。この供給電力測定手段16は、逆潮流防止継電器5よりも下流側(バイナリー発電システム側)に隣接して設けられており、逆潮流防止継電器5を通過して流れる電力を測定している。この供給電力測定手段16で測定された供給電力の測定結果は、制御部13の循環量算出部14に送られる。
【0041】
制御部13の循環量算出部14には、供給電力測定手段16で測定された電力の測定結果が送られている。循環量算出部14では、送られてきた電力の測定結果が予め定められた設定値(閾値)を下回り、負の値になる、言い換えれば外部の電力供給系統4との間に逆潮流が発生しそうであると判断したら、作動媒体の循環量を減少させる指令(信号)をポンプ制御部15に出力する。
【0042】
この設定値は、逆潮流が生じると判断できる値に対して、安全率を見積もってやや大きく設定された値であり、例えば電力値が0のときに逆潮流が生じると判断できる場合は0よりやや大きな電力値を採用できる。そして、ポンプ制御部15では、循環量算出部14から送られてきた循環量になるように、ポンプ11の回転数やバイパス弁の弁開度などを制御し、発電電力量を調整する。
【0043】
このように供給電力測定手段16で測定される電力が逆潮流とならないように作動媒体の循環流量(蒸発器7への送り量)を調整すれば、逆潮流が発生しない範囲で電力負荷2の負荷状況に応じた電力を発電でき、発電システム3の稼働率や発電効率を良好にすることが可能となる。また、このような負荷状況に応じて発電量の調整を行うものであるので、前記した安全率自体も可及的に小さく見積もることができる。
【0044】
次に、第2実施形態のローカル電力系統1の制御方法を、
図4のフローチャートを用いて説明する。
ステップ1(S1)では、まず供給電力測定手段16を用いて、外部の電力供給系統4からローカル電力系統1に流れ込む電力(供給電力)を測定する。この供給電力測定手段16で測定された電力は、制御部13の循環量算出部14に送られる。
【0045】
ステップ2(S2)では、ステップ1(S1)で測定された電力が、予め定められた設定値以下であるか否かを判断する。言い換えれば、この判断は、逆潮流防止継電器5を経由してローカル電力系統1から外部に向かって電力が流れうる(逆潮流が発生しうる)状態か、外部からローカル電力系統1に向かって電力が流れ込んでいる状態かを区別するものである。
【0046】
測定された電力が設定値以下である場合(Yesの場合)は、逆潮流防止継電器5を経由してローカル電力系統1から外部の電力供給系統4に電力が流れ込む、言い換えれば発電機8で発電された余剰の電力が外部の電力供給系統4に逆流して、逆潮流防止継電器5が働く可能性があると判断できるため、ステップ3(S3)に進んで作動媒体の循環量(蒸発器7への送り量)を減らす。
【0047】
測定された電力が設定値よりも大きい場合(Noの場合)は、逆潮流防止継電器5を経由してローカル電力系統1に電力が流れ込む、言い換えれば逆潮流防止継電器5が働く虞がないため、ステップ4(S4)に進んで作動媒体の循環量を増やす。
ステップ3(S3)では、発電量調整手段であるポンプ11の回転数を下げる、又はバイパス弁を開くなどして、ポンプ11の出力を下げ、作動媒体の循環流量を減らす。
【0048】
また、ステップ4(S4)では、発電量調整手段であるポンプ11の回転数を上げる、又はバイパス弁を閉じるなどして、ポンプ11の出力を上げ、作動媒体の循環流量を増やす。
このようにすれば外部の電力供給系統4の電力が逆潮流防止継電器5を介して絶えず電力負荷2側に向かって流れるため、余剰の発電電力が逆潮流となって外部の電力供給系統4に流れ込むことはなく、逆潮流防止継電器5が作動する心配もない。当然、発電機8の稼働率が上がる。その上、電力負荷2で必要とされる電力(使用電力)に対して、この電力に追随するように発電電力が絶えず最大電力となるため、発電システム3の発電効率も高いものとなる。
[第2実施形態の変形例]
次に、第2実施形態のローカル電力系統1の制御方法(変形例)を説明する。
【0049】
本実施形態では、発電機8の出力直後の位置において、第1実施形態で説明したような発電電力測定手段12を設けている。さらに、電力負荷2の入力直前位置に、電力負荷2が消費する電力(使用電力)を計測する使用電力測定手段17を設けている。この使用電力測定手段17としては、渦電流式の積算電力計やコイルを用いた瞬時式電力計などを用いることができる。
【0050】
発電電力測定手段12の計測値(発電電力)から使用電力測定手段17の計測値を減ずることで、その差から逆潮流防止継電器5を通過する電力を算出することができる。
具体的には、
図4のフローチャートに示されるように、ステップ1(S1)では、まず供給電力測定手段16で実測される電力の代わりに、使用電力測定手段17と発電電力測定手段12とを用いて電力を測定する。このようにしてそれぞれの測定手段で電力が測定されたら、発電電力測定手段12で測定された発電電力から使用電力測定手段17で測定された使用電力を差し引き、両者の電力差を算出する。このようにして算出された電力(電力の差)が、制御部13の循環量算出部14に送られる。
【0051】
ステップ2(S2)では、ステップ1(S1)で算出された電力の差が、予め定められ
た設定値(閾値)以下であるか否かを判断する。この設定値(閾値)は、逆潮流が生じると判断できる値に対して、安全率を見積もってやや小さく設定された値である。この判断は、発電電力測定手段12で測定された電力が使用電力測定手段17で測定された電力よりも大きいか(逆潮流防止継電器5を流れる電力に逆潮流が発生する虞があるか)否かを区別するものである。
【0052】
なお、ステップ2(S2)以降の処理については、第2実施形態と同じである。
すなわち、ステップ2(S2)では、差電力が設定値以下である場合(Yesの場合)は、逆潮流防止継電器5を経由してローカル電力系統1から外部の電力供給系統4に電力が流れ込む、言い換えれば発電機8で発電された余剰の電力が外部の電力供給系統4に逆流して、逆潮流防止継電器5が働く可能性があると判断できるため、ステップ3(S3)に進んで作動媒体の循環量を減らす。
【0053】
差電力が設定値よりも大きい場合(Noの場合)は、逆潮流防止継電器5を経由してローカル電力系統1に電力が流れ込む、言い換えれば逆潮流防止継電器5が働く虞がないため、ステップ4(S4)に進んで作動媒体の循環量を増やす。
ステップ3(S3)では、発電量調整手段であるポンプ11の回転数を下げる、又はバイパス弁を開くなどして、ポンプ11の出力を下げ、作動媒体の循環流量を減らす。また、ステップ4(S4)では、発電量調整手段であるポンプ11の回転数を上げる、又はバイパス弁を閉じるなどして、ポンプ11の出力を上げ、作動媒体の循環流量を増やす。
【0054】
このようにすれば、上述した供給電力測定手段16を用いる場合と同じようにして、逆潮流防止継電器5が作動の作動を抑制しつつ、発電機8の稼働率(発電効率)を高めることができる。また、このような負荷状況に応じて発電量の調整を行うものであるので、前記した安全率自体も可及的に小さく見積もることができる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態のローカル電力系統1の制御方法を説明する。
【0055】
図5に示すように、第3実施形態のローカル電力系統1は、第2実施形態のローカル電力系統1に対し、発電システム3で発電された交流(AC)の発電電力を直流(DC)に変換するコンバータ18と、コンバータ18で直流に変換された発電電力を直流状態で蓄電するバッテリ19と、バッテリ19で蓄電された直流状態の発電電力を交流に戻すインバータ20と、を加えたものとなっている。そして、制御部13では、循環量算出部14やポンプ制御部15に加えて、供給電力測定手段16で測定された供給電力が下限として予め定められた設定値(閾値)より小さくなっているか、または供給電力が上限として予め定められた設定値(閾値)より大きくなっているかを判断する。そして、供給電力が設定値(下限)より小さいと判断された場合には、コンバータ18を作動させてバッテリ19に蓄電を行う。このときインバータ20は作動させていない。また、供給電力が設定値(上限)より大きくなっていると判断された場合には、インバータ20を作動させてバッテリ19に蓄電された電力を放電する。このときコンバータ18は作動させていない。
【0056】
第2実施形態のような構成を採用し、逆潮流が発生しないように逆潮流防止継電器5を通過する電力を制御したとしても、現実的には、電力が過渡的に逆潮流になりそうになる状況が発生する。例えば、電力負荷2が比較的短い時間に大きく変化した場合に、作動媒体の循環量を変化させて発電電力量を調整しようとしても、電力負荷2の変動に比べて発電電力の応答には遅れが発生しやすい。それ故、過渡的に逆潮流が発生して逆潮流防止継電器5が作動する場合は起こり得る。
【0057】
係る状況下において、第3実施形態の構成は、供給電力が下限として設定された設定値より小さいと判断されると余剰電力を蓄電を行い、それから供給電力が上限としてせていされた設定値より大きいと判断されるまでの暫くの間は蓄電を続けるようになっている。そのため、蓄電を行うことで蓄電を一切しない場合と比べ、電力負荷2が比較的短い時間に大きく変化した際に余剰電力が短時間に大きく変化することを緩和することができ、より逆潮流状況を発生し難いものとなっている。すなわち、第3実施形態のローカル電力系統1の制御方法では、供給電力測定手段16で測定される電力が下限として予め設定した閾値よりも小さくなっているかどうかを判断し、閾値よりも小さくなっている(負荷が減
っている)と判断した際には、発電機8で発電された電力の一部を蓄電する。一方、供給電力測定手段16で測定される電力が上限として予め設定した閾値よりも大きくなっている(負荷が増えている)ときには、蓄電されていた電力を電力負荷2へ供給する。このように、減っている負荷が増えるまでの間において、電力負荷2が比較的短い時間に大きく変化した際に余剰電力が短時間に大きく変化することを緩和して逆潮流防止継電器5の作動を防止するものとなっている。
【0058】
なお、この下限として予め設定した閾値は、負荷が減ってきて余剰電力が生じると判断できる供給電力から見積もって設定された値である。また、この上限として予め設定した閾値は、負荷が増えてきている(無用な買電が生じている)と判断できる供給電力を基に設定された値である。
上述したバッテリ19の陽極はローカル電力系統1にコンバータ18及びインバータ20を介して電気的に接続されており、陰極は接地されている。また、このバッテリ19は、例えば、発電機8で発電された電力をコンバータ18で交流から、直流に変換して蓄電するものである。このバッテリ19に蓄電されていた電力は、インバータ20で交流(60Hz、200V程度)に再変換して取り出すことができるようになっている。これらのコンバータ18及びインバータ20には図示しないON−OFF機構が設けられており、これらのON−OFF機構を蓄電制御部21で制御することにより発電機8で発電された電力から所定の電力量をバッテリ19に蓄電できるようになっている。
【0059】
このように供給電力測定手段16で測定される電力が下限として予め設定した閾値よりも小さくなっている(負荷が減っている)場合を検知して蓄電を行い、減っている負荷が増えるまで電力を一時的に蓄電すれば、電力負荷2が比較的短い時間に大きく変化した際に余剰電力が短時間に大きく変化することを緩和することができるので、より効果的に逆潮流防止継電器5の作動を防止することができる。
【0060】
次に、第3実施形態のローカル電力系統1の制御方法を、
図6のフローチャートを用いて説明する。
図6のステップ1(S1)では、第2実施形態の場合と同様に、供給電力測定手段16を用いて、外部の電力供給系統4からローカル電力系統1に流れ込む電力(供給電力)を測定する。この供給電力測定手段16で測定された電力は、制御部13の蓄電量算出部22に送られる。
【0061】
ステップ2(S2)及びステップ3(S3)では、ステップ1(S1)で測定された電力(供給電力)が、予め定められた設定値(下限として予め設定した閾値)以下であるか否かを判断する。言い換えれば、この判断は、外部から逆潮流防止継電器5を経由してローカル電力系統1へ供給される電力が減っている(負荷が減っている)か、外部からローカル電力系統1に向かって供給される電力が増えている(負荷が増えて無用な買電が生じている)かを区別するものである。
【0062】
具体的には、ステップ2(S2)において測定された電力が設定値以下である場合(Yesの場合)は、逆潮流防止継電器5を経由してローカル電力系統1から外部の電力供給系統4に電力が流れ込む可能性がある、言い換えれば発電機8で発電された余剰の電力が外部の電力供給系統4に逆流して、逆潮流防止継電器5が働く可能性があると判断できるため、ステップ4(S4)に進んでバッテリ19への蓄電を行う。Noの場合はステップ3(S3)に進む。
【0063】
ステップ3(S3)において測定された電力が設定値(上限として予め設定した閾値)以上である場合(Yesの場合)は、負荷が増えており蓄電された電力をローカル電力系統1に供給しても逆潮流防止継電器5が働く虞がないため、ステップ5(S5)に進んでバッテリ19から電力負荷2側へ電力を供給する。Noの場合は最初に戻る。
ステップ4(S4)では、コンバータ18をONにすると共にインバータ20をOFFにして、バッテリ19への蓄電を行う。このようにバッテリ19に発電電力の一部を蓄電すれば、負荷が増えるまでの暫くの間、電力負荷2が比較的短い時間に大きく変化した際に余剰電力が短時間に大きく変化することを緩和することになり、より効果的に逆潮流の発生も防止される。
【0064】
また、ステップ5(S5)では、コンバータ18をOFFにすると共にインバータ20をONにして、バッテリ19に蓄電されていた電力の一部を電力負荷2側に供給する。
なお、上述した第3実施形態の場合も、第2実施形態のローカル電力系統1の制御方法と同様に、供給電力測定手段16で測定された電力値以外の指標、言い換えれば発電電力測定手段12で測定された発電電力から使用電力測定手段17で測定された使用電力を差し引いたものを用いることができる。このように発電電力測定手段12で測定された発電電力から使用電力測定手段17で測定された使用電力を減じた値が下限として予め設定した閾値より小さくなったかどうかに基づいてバッテリ19に余剰電力を蓄電するようにすることができる。
【0065】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0066】
例えば、発電システム3として、バイナリー発電システムを例示しているが、それに限定されることはない。