(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730114
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】部品回転角度検出装置及び画像処理用部品データ作成装置並びに部品回転角度検出方法及び画像処理用部品データ作成方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/60 20060101AFI20150514BHJP
G06T 7/00 20060101ALI20150514BHJP
G06T 3/60 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
G06T7/60 150P
G06T7/00 350B
G06T3/60
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-96760(P2011-96760)
(22)【出願日】2011年4月25日
(65)【公開番号】特開2012-230453(P2012-230453A)
(43)【公開日】2012年11月22日
【審査請求日】2014年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】江嵜 弘健
【審査官】
鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−043025(JP,A)
【文献】
特開2010−017274(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0274004(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0165264(US,A1)
【文献】
池田 和隆,新マイクロイメージチェッカ「マルチチェッカタイプ」,松下電工技報 No.70,日本,松下電工株式会社,2000年 4月30日,第70号
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/60
G06T 3/60
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラで撮像したリード付き部品の画像を処理して当該部品の回転角度を検出する部品回転角度検出装置において、
予めリードの画像をリードの方向毎に学習して作成したリード識別データが記憶された記憶手段と、
前記カメラで撮像したリード付き部品の画像の中から前記リード識別データとの類似度が所定値以上の部分をリードとして識別するリード識別手段と、
前記リード識別手段で識別したリードの位置と方向に基づいて当該部品の回転角度を算出する部品回転角度算出手段と
を備え、
前記リード識別データは、Haar−like特徴量、HOG特徴量、SIFT特徴量のいずれかで作成され、
前記リード識別手段は、前記リード識別データを用いた識別器で前記リード付き部品の画像の中から前記リードを識別することを特徴とする部品回転角度検出装置。
【請求項2】
画像処理用部品データの作成対象となるリード付き部品をカメラで撮像して得られた画像の中から当該部品の特徴を抽出して画像処理用部品データを作成する画像処理用部品データ作成装置において、
請求項1に記載の部品回転角度検出装置と、
前記部品回転角度検出装置で検出した回転角度に応じて前記リード付き部品の画像における当該部品の回転角度を補正する回転角度補正手段と
を備えていることを特徴とする画像処理用部品データ作成装置。
【請求項3】
カメラで撮像したリード付き部品の画像を処理して当該部品の回転角度を検出する部品回転角度検出方法において、
予めリードの画像をリードの方向毎に学習してリード識別データをHaar−like特徴量、HOG特徴量、SIFT特徴量のいずれかで作成しておき、
前記カメラでリード付き部品を撮像し、前記リード識別データを用いた識別器で前記リード付き部品の画像の中から前記リード識別データとの類似度が所定値以上の部分をリードとして識別し、識別したリードの位置と方向に基づいて当該部品の回転角度を算出することを特徴とする部品回転角度検出方法。
【請求項4】
画像処理用部品データの作成対象となるリード付き部品をカメラで撮像して得られた画像の中から当該部品の特徴を抽出して画像処理用部品データを作成する画像処理用部品データ作成方法において、
前記カメラで撮像したリード付き部品の画像における当該部品の回転角度を請求項3に記載の部品回転角度検出方法で検出する回転角度検出処理と、
前記回転角度検出処理で検出した回転角度に応じて前記リード付き部品の画像における当該部品の回転角度を補正して前記画像処理用部品データを作成することを特徴とする画像処理用部品データ作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラで撮像した
リード付き部品の画像を処理して当該部品の回転角度を検出する部品回転角度検出装置及び画像処理用部品データ作成装置並びに部品回転角度検出方法及び画像処理用部品データ作成方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
部品実装機で使用する画像処理用部品データを作成する場合、特許文献1(特開2006−338482号公報)に記載されているように、画像処理用部品データの作成対象となる部品をカメラで撮像し、その部品の画像から当該部品の種類を判別し、判別した部品の種類に応じて当該部品の画像から当該部品の特徴を表すデータを抽出して画像処理用部品データを作成するようにしたものがある。この際、画像の水平・垂直方向(XY方向)に対して部品が傾いて撮像される場合があるため、撮像した画像内の部品の回転角度を検出して、部品の回転角度を補正する必要がある。
【0003】
そこで、特許文献1では、ハフ変換や最隣接長方形を用いて部品の回転角度を検出して、部品の回転角度を補正するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−338482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、画像処理用部品データの作成対象となる部品は、リード、バンプ等の端子が形成され、その端子が照明により明るく撮像されるため、明るく撮像される端子を識別して、その端子の位置に基づいて部品の回転角度を検出するようにしている。
【0006】
しかし、部品によっては、明るく撮像される部分が端子だけとは限らず、コイル等の金属部分も明るく撮像されてしまう部品がある。このような部品では、端子以外のコイル等の金属部分が端子と間違って識別されてしまう可能性があり、その結果、部品の回転角度が間違って検出されてしまう可能性がある。部品の回転角度が間違って検出されると、部品の回転角度が間違って補正されてしまい、画像処理用部品データの精度・信頼性が悪化することになる。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、
リード以外のコイル等の金属部分が露出する部品でも、
リードのみを画像認識して部品の回転角度を精度良く検出できるようにすることであり、また、部品の回転角度の検出精度向上により画像処理用部品データの精度・信頼性を向上できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、カメラで撮像した
リード付き部品の画像を処理して当該部品の回転角度を検出する部品回転角度検出装置において、予め
リードの画像を
リードの方向毎に学習して作成した
リード識別データが記憶された記憶手段と、前記カメラで撮像した
リード付き部品の画像の中から前記
リード識別データとの類似度が所定値以上の部分を
リードとして識別する
リード識別手段と、前記
リード識別手段で識別した
リードの位置に基づいて当該部品の回転角度を算出する部品回転角度算出手段とを備え
、前記リード識別データを、Haar−like特徴量、HOG特徴量、SIFT特徴量のいずれかで作成し、前記リード識別手段は、前記リード識別データを用いた識別器で前記リード付き部品の画像の中から前記リードを識別することを特徴とするものである。
【0009】
この構成によれば、カメラで撮像した
リード付き部品の画像の中から
リードを識別する際に、予め
リードの画像を
リードの方向毎に学習して作成した
リード識別データとの類似度が所定値以上の部分を
リードとして識別するため、
リード以外のコイル等の金属部分が露出する部品でも、
リード以外のコイル等の金属部分を
リードと間違って識別することを防止できて、
リードのみを精度良く識別することができ、部品の回転角度を精度良く検出できる。
【0010】
この場合、請求項
1のように、
リード識別データを、Haar−like特徴量、HOG特徴量、SIFT特徴量のいずれかで作成し、前記
リード識別データを用いた識別器で
リード付き部品の画像の中から
リードを識別するように
すれば、リード付き部品の画像の中からリードを精度良く識別することができる。
【0012】
以上説明した請求項
1に係る発明を部品実装機に適用する場合は、部品実装機の吸着ノズルに吸着した
リード付き部品をその下方からカメラで撮像して当該部品の回転角度を検出し、その検出角度に応じて吸着ノズルを回転させて当該部品の回転角度を補正して基板に実装するようにしても良い。
【0013】
或は、請求項
2のように、画像処理用部品データの作成対象となる
リード付き部品をカメラで撮像して得られた画像の中から当該部品の特徴を抽出して画像処理用部品データを作成する画像処理用部品データ作成装置に本発明を適用する場合は、上述した請求項
1に記載の部品回転角度検出装置と、この部品回転角度検出装置で検出した回転角度に応じて前記
リード付き部品の画像における当該部品の回転角度を補正する回転角度補正手段とを備えた構成としても良い。このようにすれば、
リード以外のコイル等の金属部分が露出する部品でも、カメラで撮像した画像内の部品の回転角度を精度良く検出できるため、当該部品の回転角度を精度良く補正できて、画像から作成する画像処理用部品データの精度・信頼性を向上できる。
【0014】
尚、請求項
3,
4は、請求項1,
2に記載の「部品回転角度検出装置」、「画像処理用部品データ作成装置」の発明と実質的に同じ技術思想を「部品回転角度検出方法」、「画像処理用部品データ作成方法」の発明として記載したものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は本発明の一実施例における画像処理用部品データ作成装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は部品回転角度検出プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3はリード付き部品の画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
図1に示すように、画像処理用部品データ作成装置は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ11と、画像処理用部品データの作成対象となる部品を撮像するカメラ12と、キーボード、マウス等の入力装置13と、液晶ディスプレイ、CRT等の表示装置14と、後述する
図2の部品回転角度検出プログラムやリード識別データ等が記憶された記憶装置15(記憶手段)を備えた構成となっている。
【0017】
コンピュータ11は、後述する
図2の部品回転角度検出プログラムを実行することで、カメラ12で撮像したリード付き部品の画像の中からリード識別データとの類似度が所定値以上の部分をリードとして識別し、識別したリードの位置に基づいて当該部品の回転角度を算出する。ここで、リード識別データは、予めリードの先端画像をリードの方向(0°、90°、180°、270°)毎に学習して作成され、記憶装置15に記憶されている。リード識別データとしては、例えば、Haar−like特徴量、HOG特徴量、SIFT特徴量のいずれかを用いれば良い。そして、Haar−like特徴量等のリード識別データを用いた識別器を用意しておき、スキャンウィンドウで画像内をスキャンして、画像の中からリード識別データとの類似度が所定値以上の部分をリードとして識別する。この際、スキャン毎にスキャンウィンドウの位置やサイズを変更しながら画像内をスキャンする処理を繰り返すようにすれば、画像内の全てのリードを精度良く識別することができる。
【0018】
その他、サポートベクターマシン、ニューラルネットワーク、パターンマッチングのいずれかを用いてリード付き部品の画像の中からリードを識別するようにしても良い。
【0019】
コンピュータ11は、画像処理用部品データ作成プログラム(図示せず)を実行することで、特許請求の範囲でいう回転角度補正手段としての役割を果たし、
図2の部品回転角度検出プログラムによって検出した部品の回転角度に応じて部品の画像内における当該部品の回転角度を補正し、当該部品の特徴を抽出して画像処理用部品データ(ボディ、リード、バンプ等の位置やサイズ等のデータ)を作成する。
【0020】
次に、
図2の部品回転角度検出プログラムの処理内容を説明する。
図2の部品回転角度検出プログラムは、コンピュータ11によって実行され、特許請求の範囲でいう部品回転角度算出手段としての役割を果たす。本プログラムが起動されると、まずステップ101で、カメラ12でリード付き部品を撮像し、次のステップ102で、画像内にスキャンウィンドウを設定して画像内をスキャンする。
【0021】
その後、ステップ103に進み、画像の中からリード識別データとの類似度が所定値以上の部分をリードとして識別する。ここで、リード識別データは、予めリードの先端画像をリードの方向(0°、90°、180°、270°)毎に学習して作成され、記憶装置15に記憶されている。リード識別データとしては、例えば、Haar−like特徴量、HOG特徴量、SIFT特徴量のいずれかを用いれば良い。
【0022】
この後、ステップ104に進み、識別したリードの位置と方向(角度)を記憶装置15又はRAM等に記憶する。次のステップ105で、画像のスキャン回数が所定回数に達したか否かを判定し、所定回数に達していなければ、ステップ106に進み、スキャンウィンドウの位置やサイズを変更して、上記ステップ102に戻り、再スキャンする。これにより、画像のスキャン回数が所定回数に達するまで、スキャンウィンドウの位置やサイズを変更しながらスキャンを繰り返し、識別したリードの位置と方向を記憶装置15又はRAM等に記憶する。この際、重複して識別されたリードの位置と方向は、重複して記憶しない。
【0023】
その後、上記ステップ105で、画像のスキャン回数が所定回数に達したと判定された時点で、ステップ107に進み、識別されたリードの位置と方向に基づいて、画像の水平・垂直方向(XY方向)に対する部品の回転角度を算出する。具体的には、
図3に示すように、識別されたリードの位置を方向毎に集計して、リードの配列方向(各リードの先端を結ぶ直線)を検出し、このリードの配列方向から部品の回転角度を算出する。この際、部品の対向する2辺のリードの配列方向の平均値から部品の回転角度を算出しても良いし、或は、最もリード本数が多い辺のリードの配列方向から部品の回転角度を算出しても良い。
【0024】
以上説明した本実施例では、カメラ12で撮像したリード付き部品の画像の中からリードを識別する際に、予めリードの画像を学習して作成したリード識別データとの類似度が所定値以上の部分をリードとして識別するため、リード以外のコイル等の金属部分が露出する部品でも、リード以外のコイル等の金属部分をリードと間違って識別することを防止できて、リードのみを精度良く識別することができ、部品の回転角度を精度良く検出できる。このため、画像処理用部品データの作成対象となるリード付き部品をカメラ12で撮像して得られた画像の中から当該部品の特徴を抽出して画像処理用部品データを作成する際に、当該部品の回転角度を精度良く補正できて、画像から作成する画像処理用部品データの精度・信頼性を向上できる。
【0026】
その他、本発明の部品回転角度検出方法の適用範囲は画像処理用部品データ作成方法に限定されず、例えば、本発明を部品実装機に適用する場合は、部品実装機の吸着ノズルに吸着した
リード付き部品をその下方からカメラで撮像して当該部品の回転角度を検出し、その検出角度に応じて吸着ノズルを回転させて当該部品の回転角度を補正して基板に実装するようにしても良い。
【符号の説明】
【0027】
11…コンピュータ(
リード識別手段,部品回転角度算出手段,回転角度補正手段)、12…カメラ、13…入力装置、14…表示装置、15…記憶装置(記憶手段)