(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
車両シート用オットマン装置の従来技術としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。
このオットマン装置は、車両シートのシートクッション(の前部)の下面に固定される固定部と、固定部で一端を支持した伸張及び短縮可能なリンク機構と、リンク機構の他端で支持したオットマンと、リンク機構を伸張方向に付勢する付勢手段と、リンク機構の伸張及び短縮動作を許容又は規制するロック機構と、ロック機構を操作するためのロック操作手段と、を備えている。
【0003】
外力を及ぼさないときロック操作手段はロック許容位置に位置し、ロック機構がロック状態に保持される。そのためリンク機構が短縮状態にあるときにロック操作手段に外力を及ぼさなければ、ロック機構の働きによってオットマンは固定部側に接近してシートクッションの直下に位置する格納位置に保持される。
一方、乗客がロック操作手段をロック解除位置に移動させるとロック機構がアンロック状態に移行するので、付勢手段によって付勢されたリンク機構が伸張状態となりオットマンが固定部から前方に離間する。そしてオットマンが乗客にとって使い易い使用位置まで移動したときに乗客がロック操作手段をロック許容位置に戻すと、ロック機構が再びロック状態となってリンク機構が変形不能となるので、オットマンが当該使用位置に保持される。従ってシートに座った乗客は、自身の足をオットマンに載せることが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記オットマン装置はロック操作手段をロック許容位置に保持する手段を具備していないので、オットマンが格納位置に位置するときに乗客の手や足が意図せずにロック操作手段に触れてしまうと、ロック機構が不意にアンロック状態となり、オットマンが使用位置側へ移動可能な状態になってしまう。
この問題を解決するためには、ロック操作手段をロック許容位置に保持する保持手段を設ければよい。
しかし上記ロック機構とは別の構成として保持手段を設けると、部品点数が大幅に増加するため構造が複雑となり、かつ製造コストが大幅に増大してしまう。
【0006】
本発明は、構造が簡単で安価な機構により、リンク機構の短縮状態での保持とロック操作レバーのロック許容位置での保持とを同時に実現できる車両シート用オットマン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両シート用オットマン装置は、車両シートに固定する固定部と、該固定部に接近する格納位置と、該固定部から離間する使用位置との間を移動可能なオットマンと、上記固定部とオットマンの間に設けた、該オットマンを上記格納位置と上記使用位置とに移動させる移動機構と、上記移動機構の移動を許容するアンロック状態と、該移動機構の移動を規制して上記オットマンを上記使用位置に保持するロック状態とに移行可能な使用時ロック機構と、上記オットマンに支持した、該使用時ロック機構を上記ロック状態に移行させるロック許容位置と、上記使用時ロック機構を上記アンロック状態に移行させるロック解除位置とに移動可能なロック操作レバーと、上記移動機構に設けた格納時係合部材と、上記ロック操作レバーに設けた、上記格納時係合部材と係合することにより、上記オットマンを上記格納位置に保持しかつ上記ロック操作レバーを上記ロック許容位置に保持する格納時ロック部材と、を備えることを特徴としている。
【0008】
上記格納時係合部材と上記格納時ロック部材の一方がロックピンであり、他方が、該ロックピンと係脱可能で、上記オットマンが上記格納位置に位置するときに該ロックピンと係合する格納位置保持溝であってもよい。
【0009】
上記使用時ロック機構が、上記格納時係合部材である上記ロックピンと、上記オットマンと一緒に移動し、かつ該ロックピンと係脱可能で、該オットマンが上記使用位置に位置するときに該ロックピンと係合するロック溝と、を備えてもよい。
【0010】
上記ロック操作レバーを上記オットマンにスライド方向にのみ移動可能として支持し、上記オットマンが上記格納位置から上記使用位置へ移動する方向が、該オットマンが上記格納位置に位置するときの上記ロック操作レバーのスライド方向と異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、オットマンが格納位置に位置しかつ移動機構が短縮状態にあるときに、移動機構に設けた格納時係合部材とロック操作レバーに設けた格納時ロック部材が係合するので、格納時係合部材と格納時ロック部材によって、リンク機構の短縮状態での保持とロック操作レバーのロック許容位置での保持とを同時に実現できる。
しかも格納時係合部材と格納時ロック部材が、移動機構用のロック機構とロック操作レバー用のロック機構を兼用しているので、部品点数の増加を最小限に止めている。そのため構造が極端に複雑となったり、製造コストが大幅に増大することがない。
【0012】
請求項2の発明のように構成すると、格納時係合部材と格納時ロック部材の構造が非常に簡単となり、製造コストをより小さくすることが可能になる。
【0013】
請求項3の発明のように構成すると、ロックピンが使用時ロック機構の構成部品をも兼ねるので、オットマン装置の構造をより簡単にし、かつ製造コストをより小さくすることが可能になる。
【0014】
請求項4の発明のように構成すると、格納時係合部材と格納時ロック部材が係合するときに(オットマンが格納位置に位置しかつ移動機構が短縮状態にあるとき)に、ロック操作レバーの移動可能方向であるスライド方向と、移動機構の移動可能方向とが互いに異なる方向となる。そのためロック操作レバーと移動機構の一方が動こうとすると両者が機械的にこじるので、ロック操作レバーのロック解除位置側への移動と移動機構の伸張方向への動作を規制でき、リンク機構の短縮状態での保持とロック操作レバーのロック許容位置での保持がより確実なものになる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明中の方向は図中の矢印方向を基準としている。
図1に示す車両用シート10は、車両床面に取り付けられるシートクッション11と、シートクッション11の後部に対して回転可能に取り付けたシートバック(図示略)とを備えている。車両用シート10のシートクッション11の下面の前端部にはオットマン装置13が取り付けてある。
【0017】
オットマン装置13は以下に説明する構造である。
オットマン装置13は互いに対称形状をなす左右一対の固定部14を具備している。左右の固定部14はシートクッション11の下面の前端部に固定してある。左右の固定部14にはそれぞれ第1リンク17と第2リンク18の一方の端部が左右方向に伸びる回転接続ピン19、20によって回転可能に接続してある。図示するように第1リンク17と第2リンク18はほぼ平行であり、第2リンク18の長さは第1リンク17のほぼ半分である。左右の第1リンク17の中間部と第2リンク18の他方の端部には第1リンク17及び第2リンク18と異なる方向に伸びる第3リンク21の中間部と一方の端部がそれぞれ、回転接続ピン19、20と平行な方向に伸びる回転接続ピン22、23によって回転可能に接続してある。左右の第1リンク17の他方の端部には、第3リンク21とほぼ平行な第4リンク24の一方の端部がそれぞれ、回転接続ピン19、20と平行な方向に伸びる回転接続ピン25によって回転可能に接続してある。さらに左右の第3リンク21には、左右方向に伸びる接続パイプ26の両端部がそれぞれ固定してあり、左右の第4リンク24には、左右方向に伸びる接続パイプ27の両端部がそれぞれ固定してある。
第1リンク17、第2リンク18、回転接続ピン19、20、第3リンク21、回転接続ピン22、23、第4リンク24、回転接続ピン25、接続パイプ26、及び、接続パイプ27がリンク機構15(移動機構)の構成要素である。リンク機構15は接続パイプ26及び接続パイプ27を具備しているので、左側の第1リンク17、第2リンク18、第3リンク21、及び、第4リンク24と右側の第1リンク17、第2リンク18、第3リンク21、及び、第4リンク24は互いに同期しながら回転する。
リンク機構15は、
図1に示す短縮状態、
図3に示す最大展開状態、及び、短縮状態と最大展開状態の間の各状態に変形可能である。右側の固定部14と第2リンク18には、バネ支持ピン29とバネ支持ピン30がそれぞれ固定状態で突設してあり、バネ支持ピン29とバネ支持ピン30の間には引張バネS1(ターンオーバースプリング)の両端がそれぞれ取り付けてある。リンク機構15が短縮状態及び短縮状態に近い形状にあるとき、より具体的には側面視において引張バネS1の軸線が回転接続ピン20の中心点より回転接続ピン19と反対側に位置するときは、引張バネS1から右側の固定部14と第2リンク18に対して第2リンク18の回転接続ピン23側の端部が固定部14に接近する方向(
図1から
図3において第2リンク18を反時計方向に回転させる方向)の回転付勢力が及ぶ。一方、リンク機構15が最大展開状態及び最大展開状態に近い形状にあるとき、より具体的には側面視において引張バネS1の軸線が回転接続ピン20の中心点より回転接続ピン19側に位置するときは、引張バネS1から右側の固定部14と第2リンク18に対して第2リンク18の回転接続ピン23側の端部が固定部14から離間する方向(
図1から
図3において第2リンク18を時計方向に回転させる方向)の回転付勢力が及ぶ。
さらに左右の第1リンク17の回転接続ピン19と反対側の端部には、左右方向に伸びる円柱部材であるロックピン28(格納時係合部材)の両端部がそれぞれ固定してある。
【0018】
リンク機構15の左右の第3リンク21及び第4リンク24の前端部にはオットマン32が取り付けてある。オットマン32は、左右方向に長い矩形形状のベース板33と、ベース板33の裏面に固定した前後方向に伸びる左右一対の取付ブラケット34と、ベース板33の表面及び周面に固着したクッション35と、を具備している。
左右の取付ブラケット34には左右の第4リンク24の回転接続ピン25と反対側の端部が、回転接続ピン19、20と平行な方向に伸びる左右一対の回転接続ピン37によって回転可能に接続してある。また左右の取付ブラケット34を、接続パイプ26、27と平行な回転接続軸39の左右両端の近傍部が相対回転可能に貫通しており、回転接続軸39の左右両端部に左右の第3リンク21の回転接続ピン23と反対側の端部がそれぞれ固定してある。このようにオットマン32はリンク機構15(第3リンク21、第4リンク24)に回転可能に支持されているので、リンク機構15の短縮動作及び展開動作に連動して固定部14に対する前後方向距離を変化させる。即ち、リンク機構15が上記短縮状態にあるときオットマン32は
図1に示す格納位置に位置し、短縮状態にあるリンク機構15が前方に向かって伸張したときオットマン32は
図2、
図3に示す使用位置(第一、第二、第三の使用位置)に位置する。
【0019】
回転接続軸39には断面形状が略U字形をなす可動ロック部材40が取り付けてある。可動ロック部材40は、左右一対の溝形成片41と、左右の溝形成片41の一端同士を接続する接続片42と、を具備しており、左右の溝形成片41に形成した貫通孔に回転接続軸39の2カ所が回転可能に嵌合している。左右の溝形成片41の接続片42と反対側の端面には、ロック溝43、44、45が並べて形成してある。ロック溝43、44、45はいずれも互いに対向する第一対向壁43a、44a、45aと第二対向壁43b、44b、45bを備えている。ロック溝43、44、45の開口部43c、44c、45cの溝幅はロックピン28の直径より広幅であり、かつロック溝43、44、45の溝幅は開口部43c、44c、45cから奥側(底部側)に向かうにつれて徐々に狭幅となり、ロック溝43、44、45の最も狭い部分の溝幅はロックピン28の直径より狭い。さらに第二対向壁43b、44b、45bの開口部43c、44c、45c側の部分はストッパ面43d、44d、45dを構成している(
図6の一点鎖線が、ストッパ面43d、44d、45dとその他の部分の境界位置)。図示するように第二対向壁43bの(ロック溝43の底部からの)高さは第一対向壁43aに比べて高い。同様に、第二対向壁44bの(ロック溝44の底部からの)高さは第一対向壁44aに比べて高く、第二対向壁45bの(ロック溝45の底部からの)高さは第一対向壁45aに比べて高い。
【0020】
ベース板33の裏面には、左右の取付ブラケット34の間に位置するロック操作レバー48が取り付けてある。ロック操作レバー48は、前後方向に延びかつ一方の端部に可動ロック部材40側に向かって延びる左右一対の押圧突片50を有するレバー本体49と、レバー本体49の他方の端部に固定した合成樹脂製のカバー部材56とを具備している。レバー本体49には2つの長孔51、52が前後に並べて形成してある。長孔51と長孔52には支持用ボルト53、54がそれぞれ挿入してあり、支持用ボルト53と支持用ボルト54に形成した雄ねじがベース板33の裏面に形成した雌ねじ孔(図示略)にそれぞれ螺合している。従ってロック操作レバー48は、長孔51と長孔52の一方の端部が支持用ボルト53と支持用ボルト54にそれぞれ当接し、カバー部材56がベース板33及びクッション35から突出するロック許容位置と、長孔51と長孔52の他方の端部が支持用ボルト53と支持用ボルト54にそれぞれ当接し、カバー部材56全体がベース板33及びクッション35とオットマン32の厚み方向に対向する(突出しなくなる)位置まで後退するロック解除位置との間をベース板33に対して前後方向にスライド可能である(ベース板33に対しては他の方向に相対移動できない)。さらにレバー本体49のカバー部材56と反対側の端部に突設したバネ支持用突片49aと支持用ボルト54には引張バネS2の前後両端部がそれぞれ取り付けてある。引張バネS2からレバー本体49に対しては常にレバー本体49をロック許容位置側にスライドさせる付勢力が掛かるので、ロック操作レバー48に対してロック解除位置側への力を与えないときレバー本体49は引張バネS2の付勢力によってロック許容位置に位置する。
またレバー本体49のバネ支持用突片49aと接続片42に突設したバネ支持用突片42aの間には引張バネS3の両端部がそれぞれ取り付けてある。そのため引張バネS3から可動ロック部材40に対しては常に可動ロック部材40をベース板33に接近させる方向の付勢力が掛かっている。
ロック操作レバー48がロック許容位置に位置しかつ可動ロック部材40に対して引張バネS3の付勢力以外の力を掛けないとき、引張バネS3の回転付勢力を受けている可動ロック部材40がベース板33側に接近する。
【0021】
カバー部材56は左右一対の係合部材57(格納時ロック部材)を一体的に備えている。係合部材57の先端面には係合部材57の基端部側に向かって延び、かつ基端部側に向かうにつれて徐々に狭幅になる案内溝58が形成してあり、案内溝58の奥側には断面円形をなし案内溝58と連通する格納位置保持溝59が形成してある。係合部材57が自由状態にあるときの案内溝58の奥側端部の幅はロックピン28の直径より狭く、係合部材57が自由状態にあるときの格納位置保持溝59の直径はロックピン28の直径よりやや狭い。
【0022】
続いてオットマン装置13の動作について説明する。
リンク機構15が短縮状態にあるとき、オットマン32は
図1に示すように水平方向に対して略直交する状態となる。さらにロックピン28が左右の係合部材57を弾性変形させながら左右の格納位置保持溝59に係合している。このときのリンク機構15の変形可能方向(最大展開状態方向への変形方向)と、ロック操作レバー48のベース板33に対するスライド方向とが互いに異なる方向となるので、リンク機構15とロック操作レバー48の一方が動こうとすると両者が機械的にこじることになる。そのためロック操作レバー48のロック解除位置側への移動が確実に規制され、かつリンク機構15の最大展開状態方向への伸張動作が規制されるので(後述する係合部材57とロックピン28のロック解除動作を行うための伸張動作は許容される)、リンク機構15は短縮状態に保持されかつロック操作レバー48はロック許容位置に確実に保持される。また、このとき引張バネS3の回転付勢力によってベース板33側に接近している可動ロック部材40は、レバー本体49の左右の押圧突片50に当接することにより
図1に示した最接近位置に保持される。
乗客が手等で係合部材57を弾性変形させながらロックピン28を格納位置保持溝59及び案内溝58から脱出させると(リンク機構15を僅かに伸張させると)、オットマン32が前方へ移動可能な状態となる。この状態でロック操作レバー48を操作することなくオットマン32に前向きの移動力を与えると、リンク機構15の伸張動作に伴ってオットマン32が前方に移動し、ロックピン28と可動ロック部材40の相対位置が徐々に変化する。そしてロックピン28がロック溝43の開口部43cに接近すると、
図6の仮想線で示すように、開口部43cの外側(直上)を通ったロックピン28がロック溝43のストッパ面43dに接触する。
図6に示すように第二対向壁43bにおけるストッパ面43dとその他の部分の境界位置(
図6の一点鎖線を参照)は、第一対向壁43aの開口部43c側の端面をかすめながら通過したロックピン28の中心点の移動軌跡が第二対向壁43bと交差した位置である。ストッパ面43dに当接したロックピン28は、ロックピン28の直径より広幅である開口部43cを円滑に通り抜けてロック溝43の奥側に移動する。ロック溝43の奥側の所定部分の溝幅はロックピン28と同一なので、ロックピン28がロック溝43の当該部分と係合するとロックピン28とロック溝43の間のがたつきがなくなる。このときの可動ロック部材40の位置がロック位置であり、最接近位置(
図1の位置)よりもベース板33から離れた位置である。そして引張バネS3から可動ロック部材40には常にロック位置側への回転付勢力が及んでいるので、オットマン32は
図2に示した第一の使用位置に安定した状態で保持され、車両用シート10に着座した乗客の足をクッション35によって安定した状態で支持可能となる。
【0023】
オットマン32をさらに前方の使用位置まで移動させたい場合は、乗客が手等でロック操作レバー48(カバー部材56)を引張バネS2の付勢力に抗して後方に押圧して、ロック許容位置に位置していたロック操作レバー48をロック許容位置とロック解除位置の間のロック解除開始位置までスライドさせる。すると接続片42と離間していた左右の押圧突片50が接続片42を押圧するので、可動ロック部材40が引張バネS3を伸張方向に弾性変形させながらベース板33から離間する方向に回転する。
図7(a)に示すようにロック操作レバー48がロック許容位置に位置するときの引張バネS3の付勢力(引張力)はFであり、回転接続軸39とバネ支持用突片42aを結ぶ第一直線L1と引張バネS3の軸線である第二直線L2がなす角度は90°より小さいθ1(第一鋭角)である。従って、このときの引張バネS3が可動ロック部材40に付与する回転付勢力(付勢力Fの分力)はF1(=F・sinθ1)となる。一方、
図7(b)に示すようにロック操作レバー48がロック解除開始位置まで移動したときの引張バネS3の付勢力(引張力)はF’であり、第一直線L1と第二直線L2がなす角度はθ1より小さいθ2(第二鋭角)である。このときに引張バネS3が可動ロック部材40に付与する回転付勢力(付勢力F’の分力)はF2(=F’・sinθ2)であり、F2<F1となる。このようにロック操作レバー48をロック解除開始位置まで移動させたときに引張バネS3が可動ロック部材40に付与する回転付勢力が小さくなるので、引張バネS3から可動ロック部材40にロック位置側への付勢力が掛かっているにも拘わらず、ロック操作レバー48を小さい力によってロック解除位置側に円滑にスライドさせることが可能である。
【0024】
そしてロック操作レバー48がロック解除位置までスライドすることにより可動ロック部材40が
図5に示すアンロック位置まで回転すると、ロックピン28がロック溝43の外側(上方)に脱出する。脱出した後にロック操作レバー48をロック解除位置とロック許容位置の中間位置まで戻して、オットマン32をさらに前方に移動させると、ロック溝44の開口部44cの外側(直上)を通ったロックピン28がロック溝44のストッパ面44dに接触する(
図6の仮想線参照)。
図6に示すようにロック溝44におけるストッパ面44dとその他の部分の境界位置(
図6の二点鎖線を参照)は、第一対向壁44aの開口部44c側の端面をかすめながら通過したロックピン28の中心点の移動軌跡が第二対向壁44bと交差した位置である。この後にロック操作レバー48をロック許容位置まで戻すことにより可動ロック部材40をロック位置に移動させると、ロックピン28が開口部44cを円滑に通り抜けてロック溝44の奥側に移動しロック溝44のロックピン28と同一幅の部分に係合する。するとロックピン28とロック溝44の間のがたつきがなくなるので、オットマン32は図示を省略した第二の使用位置に安定した状態で保持される。
さらにこの状態でロック操作レバー48をロック解除位置まで回転させることにより可動ロック部材40をアンロック位置まで回転させると、ロックピン28がロック溝44の外側(上方)に脱出する。脱出した後にオットマン32をさらに前方に移動させると、ロック溝45の開口部45cの外側(直上)を通ったロックピン28がロック溝45のストッパ面45dに接触する(
図6の仮想線参照)。
図6に示すようにロック溝45におけるストッパ面45dとその他の部分の境界位置(
図6の二点鎖線を参照)は、第一対向壁45aの開口部45c側の端面をかすめながら通過したロックピン28の中心点の移動軌跡が第二対向壁45bと交差した位置である。この後にロック操作レバー48をロック許容位置まで戻すことにより可動ロック部材40をロック位置に移動させると、ロックピン28が開口部45cを円滑に通り抜けてロック溝45の奥側に移動し、ロック溝45のロックピン28と同一幅の部分に係合する。するとロックピン28とロック溝45の間のがたつきがなくなるので、オットマン32は
図3に示した第三の使用位置に安定した状態で保持される。
一方、オットマン32が第一の使用位置に保持されているときに、ロック操作レバー48をロック解除位置に位置させたまま(可動ロック部材40をアンロック位置に位置させたまま)オットマン32を前方に移動させると、ロックピン28はロック溝44の開口部44cの上方を通過した後にロック溝45に接近し、ロック溝45の開口部45cの外側を通った後にストッパ面45dに接触する。従って、この場合もロックピン28は開口部45cを円滑に通り抜けた後にロック溝45の上記部分(ロックピン28と同一幅の部分)に係合する。
【0025】
第一、第二、第三の使用位置に保持されたオットマン32を格納位置に戻す場合は、まずロック操作レバー48をロック解除位置へ押圧することによりロック位置に位置していた可動ロック部材40をアンロック位置まで回転させて、ロックピン28をロック溝43(44、45)の外側(上方)に脱出させ、その後にオットマン32を後方に押圧する。するとこの押圧力によって引張バネS1の付勢力(第2リンク18の回転接続ピン23側の端部が固定部14から離間する方向の回転付勢力)に抗しながらリンク機構15が短縮動作を行い、側面視において引張バネS1の軸線が回転接続ピン20の中心点を超えて回転接続ピン19と反対側まで移動したときに、引張バネS1の付勢力(第2リンク18の回転接続ピン23側の端部が固定部14に接近する方向の回転付勢力)とオットマン32の自重によってリンク機構15が上記短縮状態となりながらオットマン32を格納位置に移動させる。オットマン32が格納位置まで移動する間に、乗客がロック操作レバー48への押圧力を解除すると、引張バネS2の付勢力によってロック操作レバー48はロック許容位置まで戻る。
オットマン32が格納位置の直前位置まで到達したときに、ロックピン28が係合部材57を弾性変形させながら左右の格納位置保持溝59に自動的に係合するので、オットマン32が格納位置まで移動すると、オットマン32が格納位置に保持されるとともにリンク機構15が短縮状態に保持される。
【0026】
以上説明した本実施形態によれば、オットマン32を第一、第二、第三の使用位置に保持するためのロック機構(使用時ロック機構)がロックピン28とロック溝43、44、45とからなるものなので、ロック機構を簡単な構造かつ安価なものにできる。
【0027】
さらに引張バネS3によって可動ロック部材40をロック位置側に付勢し、さらに引張バネS2の付勢力によってロック操作レバー48をロック許容位置に保持しているので、オットマン32を第一、第二、第三の使用位置に確実に保持できる。
さらにロック操作レバー48をロック解除開始位置までスライドさせたときの引張バネS3の可動ロック部材40に対する回転付勢力(F2)をロック許容位置に位置するときの回転付勢力(F1)より小さくしているので、引張バネS3から可動ロック部材40にロック位置側への回転付勢力が掛かっているにも拘わらず、ロック操作レバー48の操作性は良好である。
【0028】
またリンク機構15の短縮状態での保持とロック操作レバー48のロック許容位置での保持とを、ロックピン28と係合部材57からなる簡単な構造のロック機構により実現しているので、当該ロック機構の製造コストを小さくすることが可能である。
しかもロックピン28と係合部材57が格納状態にあるリンク機構15のロック機構(格納時ロック機構)とロック操作レバー48用のロック機構(格納時ロック機構)を兼用しており、さらにロックピン28がオットマン32が第一、第二、第三の使用位置に位置するときのリンク機構15のロック機構(使用時ロック機構)をも兼ねている。そのため車両用シート10がオットマン32を使用位置に保持するためのロック機構(使用時ロック機構)とオットマン32を格納位置に保持するためのロック機構(格納時ロック機構)を備えているにも拘わらず、構造が極端に複雑となったり、製造コストが大幅に増大することがない。
【0029】
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、様々な変形を施しながら実施可能である。
例えば、オットマン32側にロックピン28を設けて、リンク機構15側に可動ロック部材40(ロック溝43、44、45)を設けてもよい。さらに可動ロック部材40とロック操作レバー48の一方を、オットマン32とリンク機構15の一方に設けて、可動ロック部材40とロック操作レバー48の他方を、オットマン32とリンク機構15の他方に設けてもよい。
さらにロック操作レバー48をオットマン32とリンク機構15の一方に回転可能に取り付けてもよい。この場合もロック操作レバー48がロック解除開始位置へ移動したときの引張バネS3の全長が、ロック許容位置に位置するときに比べて短くなるようにする。
また可動ロック部材40に形成するロック溝の数は3つでなくてもよく、一つであったり、2つ或いは4つ以上の複数であってもよい。
さらにロック操作レバー48側にロックピン28を設けて、リンク機構15側に係合部材57を設けてもよい。
また固定部14を省略した上で、回転接続ピン19、20をシートクッション11に取り付けてもよい。