(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730184
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】流体温度測定装置及び流体温度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01K 15/00 20060101AFI20150514BHJP
G01K 1/14 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
G01K15/00
G01K1/14 L
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-280239(P2011-280239)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2013-130478(P2013-130478A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】八木 郭之
【審査官】
平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−196773(JP,A)
【文献】
特開2002−310806(JP,A)
【文献】
特開2002−161793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側が密閉され、内部に第1の流体を備える空間体の壁面から前記先端側を挿入され
たガイド管と、前記ガイド管の前記先端側に温度検出素子が内装された第1の温度計と、
前記第1の温度計から出力を処理する処理部とを有し、前記第1の流体の温度を測定する
流体温度測定装置において、
前記空間体は前記ガイド管より相対的に負圧に維持され、前記ガイド管内に存在する第
2の流体の流量、温度を測定する流量計及び第2の温度計を備え、前記処理部は、前記流
量計及び前記第2の温度計の測定結果に基づいて、前記第1の流体の温度を補正すること
を特徴とする流体温度測定装置。
【請求項2】
前記補正は予め実験又はシミュレーションに基づいて規定された温度補正係数に基づい
て行うことを特徴とする請求項1に記載の流体温度測定装置。
【請求項3】
前記規定は前記流量計及び前記第2の温度計の測定結果を2変数とする表又は近似関数
で行われることを特徴とする請求項2に記載の流体温度測定装置。
【請求項4】
前記空間体はタンク、缶、配管のうちいずれかであることを特徴とする請求項1に記載
の流体温度測定装置。
【請求項5】
前記空間体は原子力プラントまたは化学プラントを構成すること特徴とする請求項4に
記載の流体温度測定装置。
【請求項6】
前記第2の流体は前記第1の流体と異なる種類の流体であることを特徴とする請求項1
に記載の流体温度測定装置。
【請求項7】
前記第2の流体は前記第1の流体が気体ならば気体、液体ならば液体であることを特徴
する請求項1または6に記載の流体温度測定装置。
【請求項8】
先端側に密閉され、内部に第1の流体を備える空間体の壁面から前記先端側を挿入され
たガイド管の前記先端側に温度測定素子が内装された第1の温度計で前記第1の流体の温
度を測定する流体温度測定方法において、
前記空間体は前記ガイド管より相対的に負圧に維持され、前記ガイド管内に存在する第
2の流体の流量及び温度を測定し、前記測定結果に基づいて前記第1の流体の温度を補正
することを特徴とする流体温度測定方法。
【請求項9】
前記補正は予め実験又はシミュレーションに基づいて規定された温度補正係数に基づい
て行うことを特徴とする請求項8に記載の流体温度測定方法。
【請求項10】
前記補正は、前記第1の温度計で測定された測定値に前記温度補正係数を掛けることに
よって行うことを特徴とする請求項9に記載の流体温度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉プラントや化学プラントなどのプラントに存在するタンク、蒸発缶、濃縮缶などの貯槽内に存在する又は配管に流れる流体の温度を測定する流体温度測定装置及び温度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の流体温度測定装置の一例を本発明の実施形態を示す
図1を参照して説明する。以下の説明では、貯槽又は配管内を空間体と表す。
図1における空間体1内には気体又は液体などの流体が満たされており、この流体の温度を測定するために、温度計4が空間体1内に設置されている。しかしながら、空間体1内が直接アクセスできない場合、
図1に示したように温度計4の温度検出素子4aを空間体1内のへ外部から挿入し、温度計4の保守や交換を外部から行えるようにする必要が有る。
【0003】
この場合、温度計4を外部から挿入する為のガイド管5が必要となり、このガイド管5の先端側に温度検出素子4a挿入することにより、空間体1内の温度の測定が行われることになる。
【0004】
特許文献1は、このようなガイド管を配管に挿入し、配管に流れる流体の温度を測定する技術を開示している。特許文献2は、露光装置内の空調システムの空間を流れる空気の風速を測定し、その流れる空気の温度を補正する技術を開示している。
なお、
図1の説明おいて、説明されていない符号の構成要素などは、本発明の実施例で説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−155055号公報
【特許文献2】特開2010−216806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
空間体1内の流体の温度を測定する場合、ガイド管5は、空間体1内の流体が外部に漏れないように密閉されて使用される場合が多い。ガイド管5の製作時に開いた継ぎ手部分の穴や経年劣化等により、内壁に穴があく場合がある。空間体1内の圧力は、密閉状態にする為、外部に対して負圧に維持されている場合が多いが、この場合、ガイド管5内に穴があると、ガイド管5を封入して空気などの流体がガイド管5内を流れることになる。このような場合、ガイド管内を封入している流体が温度検出素子4aの近傍を流れることになる為、空間体1内に存在する流体の温度の測定値は正しい値を示さなくなる。
【0007】
特許文献1の技術は上記の課題を認識しておらず、まして解決するための手段の示唆もない。一方、特許文献2は、空調システム内に流れる空気の風速を測定し、流れる空気の温度を補正する技術を開示しているが、特許文献2も、測定対象とは異なる流体による温度計の近傍の環境が変化するために、測定対象である空間体内に存在する流体の温度を補正するという課題の認識も、解決手段の示唆もない。
【0008】
本発明の目的は,流体温度測定装置又は温度測定方法において、ガイド管を封入している流体が温度検出素子近傍を流れる場合において、この異なる流体の影響による空間体内の流体の温度測定誤差を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の目的を達成するために、少なくとも以下の特徴を有する。
本発明は、先端側が密閉され、内部に第1の流体を備える空間体の壁面から前記先端側を挿入されたガイド管と、前記ガイド管の前記先端側に温度検出素子が内装された第1の温度計と、前記第1の温度計から出力を処理する処理部とを有し、前記第1の流体の温度を測定する流体温度測定装置において、前記空間体は前記ガイド管より相対的に負圧に維持され、前記ガイド管内に存在する第2の流体の流量、温度を測定する流量計及び第2の温度計を備え、前記処理部は、前記流量計及び前記第2の温度計の測定結果に基づいて、前記第1の流体の温度を補正することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、先端側が密閉され、内部に第1の流体を備える空間体の壁面から前記先端側を挿入されたガイド管の前記先端側に温度測定素子が内装された第1の温度計で前記第1の流体の温度を測定する流体温度測定方法において、前記空間体は前記ガイド管より相対的に負圧に維持され、前記ガイド管内に存在する第2の流体の流量及び温度を測定し、前記測定結果に基づいて前記第1の流体の温度を補正することを特徴とする。
【0011】
さらに、前記補正は予め実験又はシミュレーションに基づいて規定された温度補正係数に基づいて行ってもよい。
また、前記空間体はタンク、缶、配管のうちいずれかであってもよい。
【0012】
さらに、前記空間体は原子力プラントまたは化学プラントの構成するものであってもよい。
また、前記第2の流体は前記第1の流体と異なる種類の流体であってもよい。
【0013】
さらに、前記補正は、前記第1の温度計で測定された測定値に前記温度補正係数を掛けることによって行ってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、流体温度測定装置又は温度測定方法において、ガイド管を封入している流体が温度検出素子近傍を流れる場合において、この異なる流体の影響による測定対象の流体の温度測定誤差を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の流体温度測定装置の第1の実施例を示す図である。
【
図2】
図1に本発明の流体温度測定装置の第1の実施例における温度補正係数関係表を加えた図である。
【
図3】本発明の流体温度測定装置の第2の実施例を示す図である。
【
図4】本発明の流体温度測定装置の第3の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態における実施例を図面を参照して説明する。
(実施例1)
図1は、第1の実施形態1として空間体1に、例えば、タンクに監視流体2として原子力プラントで発生した放射性ガスなどの監視気体2kが密閉されており、監視気体2kの温度を測定する流体温度測定装置100の第1の実施例100Aを示す図である。
流体温度測定装置100Aは、空間体1内の監視流体2kの温度を測定するために、先端に温度検出素子4aを有する空間流体温度計4と、空間流体温度計4を空間体1の壁面から挿入可能とし、監視気体2kとは異なる流体である管流体3が存在するガイド管5と、空間流体温度計4で測定した空間流体測定温度6に基づき監視気体2kの真の温度に近い真空間流体温度8を求める処理部7と、真空間流体温度を求めるプログラムや所定のデータを内蔵するメモリ10と、求めた真空間流体温度を表示する表示器9とを有する。管流体3が空気であれば、ガイド管5の温度検出素子4aとは反対側端は開放されている。管流体3が空気でなければ、前記反対側端は、図示しない流体供給装置に接続されていてもよい。空間体1内の監視流体2が気体であるので、管流体3も気体が望ましい。また、その種類も異なった方が望ましい場合は、異なった種類のものを、同じ種類の方が望ましい場合は、同じ種類のものを選ぶのもよい。なお、空間体1内は、密閉状態にする為、図示しない装置によって、外部に対して負圧に維持されている。
【0017】
更に、流体温度測定装置100Aは、ガイド管5に存在する管流体3の温度を測定する管内温度計11と、管流体3の流量を測定する管内流量計12とを有する。そして、それらの出力であるガイド管5内の管内温度Tk、管内流量Fkは、処理部7に取り込まれる。
【0018】
このような流体温度測定装置100Aにおいて、空間流体温度計4が挿入されているガイド管5の内部に穴が、例えば
図1に示す位置に穴5aがあいている場合、空間体1内は負圧で有るために、ガイド管内5を管流体3が穴5aに向かって流れるため、空間流体測定温度6に誤差が生じることになる。
【0019】
この誤差をなくす為、処理部7内で行われる、空間流体測定温度6の補正方法について以下説明する。
まず、
図2に示すように、予めガイド管5内を流れる管流体3の管内温度Tkおよび流量Fkに基づく空間流体測定温度6の温度補正係数Hkを、温度補正係数関係表15としてメモリ10に記憶しておく。
【0020】
次に、ガイド管5内の管内温度Tkと管内流量Fkに対応した温度補正係数Hkをメモリ10内の温度補正係数関係表15より導出し、真の温度に近い真空間流体温度8を求める。真空間流体温度8は、測定したに空間流体測定温度6に温度補正係数Hkに掛け合わせることにより求める。
【0021】
次に、処理部7内で行われる補正方法に関する具体例を示す。ガイド管5内の管内温度Tkが15℃、管内流量Fkが22ml/minであった場合、メモリ10内に記憶されている温度補正係数関係表15より温度補正係数Hkは1.3となる。そして、空間流体温度計4の空間流体測定温度6が25℃であった場合、この補正係数1.3をかけて、実際の空間体1内の温度に近い真空間流体温度8として、32.5℃(=25*1.3)を得ることができる。最終的には、求められた真空間流体温度8は表示器9に送られ表示される。
【0022】
以上説明したように、実施例1によれば、空間体1の監視流体2として気体が密閉された実施形態において、ガイド管5に穴があいており、ガイド管5に空間体1の気体とは異なる流体が流れている状態であっても、この流れによる誤差を無くして空間体1内の液体の真に近い空間流体温度を測定できる。
【0023】
(実施例2)
図3は、流体温度測定装置100の第2の実施例100Bを示す図である。また、流体温度測定装置の他、流体温度測定装置100Bを適用する空間体1の実施形態が異なる。
【0024】
まず、流体温度測定装置100Bである実施例2の実施例1と異なる点は、以下の点である。その他の流体温度測定装置100Bの構成及び動作は実施例1と同様である。実施例1では、温度補正係数Hkを温度補正係数関係表15により求めていたのに対し、実施例2では、温度補正係数Hkを管内温度Tkと管内流量Fkの2変数近似関数Hk=f(Tk,Fk)で規定し、メモリ10にその関数形式で記憶する。実施例1の温度補正係数関係表15にしろ、実施例2の2変数近似関数にしろ、測定対象である空間体1の寸法やガイド管5を流れる管流体3の種類などの体系が決まれば、予め実験やシミュレーション等に基づいて、規定することができる。
【0025】
次に、実施例2の実施形態2は、実施例1の実施形態1とは異なり、空間体1(例えばタンク、濃縮缶等の貯槽)内の監視流体2として、例えば化学プラントの処理に使用された硝酸、硫酸又はその廃液等などの液体2eが密閉されており、流体温度測定装置100Bは、液体2eの温度を測定する。
【0026】
以上説明した実施例2よれば、2変数近似関数を用いることで、さらに細かく温度補正をすることができ、また、さらに温度補正係数を細かく規定する場合には、実施例1に比べメモリ容量を低減できる効果がある。
以上説明した実施例2によれば、空間体1の監視流体としての液体が密閉された実施形態において、ガイド管5に穴があいており、ガイド管5に空間体1の気体とは異なる流体が流れている状態であっても、この流れによる誤差を無くし、空間体1内の液体の真に近い空間流体温度を測定できる。
【0027】
(実施例3)
図4は、実施形態として配管である空間体1を流れている監視流体2の温度を測定にする第3の実施例を示す図である。監視流体2としては、気体でも液体でもよい。
実施例3では、測定対象である実施形態が異なるだけで、流体温度測定装置100Cとして、実施例1で示した流体温度測定装置100A又は実施例2で示した流体温度測定装置100Bを用いる。
【0028】
従って、実施例3で示した流体温度測定装置100Cによれば、実施例1又は実施例2と同様な効果を奏することができる。
【0029】
以上各実施例で説明したように本発明は、温度計が実装されている空間体に流れる液体の流量に基づいて温度計の測定値を補正するのではなく、温度計が実装されているガイド管に流れる流体の管内流量、管内温度に基づいて、ガイド管が挿入されている空間体の流体の温度を測定する温度計の測定値を補正するものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は空間体に外部からガイド管を介して温度計を挿入する流体温度測定装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1:空間体 2:監視流体
2e:監視液体 2k:監視気体
3:管流体 4:空間流体温度計
4a:温度測定素子 5:ガイド管
5a:ガイド管に生じる穴 6:空間流体測定温度
7:処理部 8:真空間流体温度
9:表示器 10:メモリ
11:管内温度計 12:管内流量計
15:温度補正係数関係表
100、100A、100B:流体温度測定装置
Fk:管内流量 Hk:温度補正係数
Tk:管内温度