(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カバーにより取り囲まれた少なくとも1つの断熱層を有する真空断熱系を製造するための部材であって、前記断熱層中に存在するガス圧を、該部材中に設けられている手段により減らすことができる、部材において、
前記ガス圧を減少させる手段は、以下の、
当該ガス圧を減少させる手段が、カバー材でカプセル化された作用物質を含んでおり、かつ、当該カバー材が、直接的な熱により変化できる材料であり、ワックス、パラフィン、脂肪、油、脂肪族アルコール、脂肪酸、アカシアゴム、アラビアゴム、ポリエチレングリコール及びそれらのコポリマー、ならびにこれらのクラスの2種以上の混合物の群から選択されている、
という形態で、活性化可能に構成されており、前記ガス圧を減少させる手段は、前記断熱層中に存在するガスを、吸収、吸着及び/又は当該ガスと反応し、その際、前記断熱層中に存在するガスは二酸化炭素であり、かつ、前記ガス圧を減少させるための手段は、二酸化炭素を、吸収、吸着及び/又は当該二酸化炭素と反応できる塩基性物質である作用物質を含み、かつ、前記作用物質が、NaOH、KOH、Na2O、K2O、CaO、Ca(OH)2、MgO及び/又はMg(OH)2である、ことを特徴とする、部材。
前記活性化の後の圧力減少と前記活性化の前の圧力減少とからの商は、前記断熱層中に存在するガス及び少なくとも2時間の観察時間を基準として、少なくとも10である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の部材。
該真空断熱系は、地域暖房系、プロセス蒸気系もしくはそのほかの熱輸送系、建築技術の分野で使用するために、又は、建物、反応器もしくは装置、又は、熱い水道水もしくは加熱目的の水を通すパイプライン、PCM(位相変化材料)貯蔵物、冷蔵車又は飛行機を断熱するために設けられる、請求項11に記載の真空断熱系。
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱系を製造するための部材に関する。更に本発明は、本発明による部材を有するか又はこれから獲得可能な断熱系ならびに真空を製造する方法にも関する。
【0002】
石油エネルギー源が枯渇しつつ、かつ激化する気候保護が必要になっている過程で、エネルギーを押さえたテクノロジー及び経済的なエネルギー輸送ならびに資源保存的に得られた有効エネルギーを中間的に貯蔵することに重要性が増している。ここでの重要な局面は、多くの分野で長く使用されている断熱材料を改善することである。
【0003】
直接的加熱及びその他の熱輸送系は、適切な輸送媒体(通常は、熱油、水又はホットスチーム)により熱を生産者から消費者に輸送する。それらの高い投資値段及びこの輸送方法に関わる熱損失が原因で、このような系は現在の状態では比較的に短い輸送距離の場合にだけ経済的である(通常は生産者から消費者まで<20km)。通常の系は、パイプの断熱に様々な繊維材料(ガラス/岩綿、部分的に断熱粉末及び/又はカーボンブラックで含浸したもの)を用いるか、又は断熱フォーム(通常はポリウレタンベース)を用いる。全ての場合に多孔空間は大気圧である。近代の供給網の熱損失は、パイプの断面及び運転条件に応じて約10〜100W/(パイプの長さm)の量である。従来の真空断熱(例えば、予備断熱成形品の形又はパイプ・イン・パイプ工法)は、高い投資コスト及び必要な真空の不十分な運転寿命ゆえに、これまでは使用されてこなかった。
【0004】
建造物の断熱(ガラス断熱系以外)に関して、通常の全ての断熱材料は多孔材料をベースにし、その多孔空間には空気(又は希にその他のガス)が存在する。よって断熱品質は、いずれの場合にも制限される。通常の真空断熱(VIPs)は、試験中で、かつ商業的に採用される状態であるが、なおコストが高い。特に、これらはその形が予め設定されていて、かつそれらの寸法は建設箇所では現地の要求に合わせることができない。これらは裁断できず、また湾曲した表面に合わせられるほど柔軟ではなく、ましてや部屋の角には合わせられない。このことは、新たな建物を形状と寸法に関して制限してしまい、かつ古い建物の部品の増備は、VIPの形状的な不便さにより困難になる。
【0005】
更に、断熱材料は従来の家庭用器具、例えば、冷蔵庫や冷凍庫の製造でも使用される。
【0006】
殆ど全ての建物内では、熱い水道水ならびに加熱目的の水の輸送は、パイプラインを通して行われる。このパイプラインは通常10〜20mmの厚さのフォーム断熱により熱的に遮断されている。しかし、このような系の断熱性能は制限されている。それというのも、断熱の多孔が優勢であるからである。従って、周囲壁、床、土又は空気中への熱の著しい損失がある。これらの損失は、何の加熱エネルギーも必要ではない局所部分、すなわち、地下部屋、外部ファサード、屋根の領域などでは致命的である。通常の真空断熱は、コストが高く、かつ扱いが不自由である。パイプライン分野でも簡単かつ迅速に設置可能な柔軟なプラスチックパイプ系に対する現在のトレンドを考えると、これらの欠点は特に重くのしかかる。
【0007】
工業では、反応器及び装置を加熱、又は一定温度でこれらを保持するために多くのエネルギーが使用されている。通常は、このような装置は1つ以上の層のガラス/岩綿で、また高温領域では多孔質セラミック材料で熱的に遮断されている。しばしば周囲環境に対する極めて高い温度差(通常200K以上)により、これらの材料の劣悪な遮断作用ゆえに著しい熱損失を生じ、これは後から加熱して調整しなくてはならない。二重壁テクノロジー(デュワー容器と同等)は、高い投資コストにより、しばしば装置が極めて複雑な形状をすることにより殆ど解消される(すなわち、著しい製造コストの消費)。
【0008】
従来の建築断熱と同様に、冷蔵品ロジスティックの分野では、断熱系の要求に応じて冷却空間ならびに輸送タンクへの不所望な熱の注入を最小限にする必要がある。通常の断熱は大抵はフォームと繊維系から成り、その多孔空間内では大気圧が優勢である。よって、断熱性能が原則的に制限される。通常の真空断熱系(VIPs)は、その高い値段とそれらの不自由な加工ゆえに単に選択された領域だけで使用される。
【0009】
更に、断熱は輸送媒体、より特殊には飛行機の製造においても使用される。その機体と外部領域との大きな温度差(旅客機の場合には100Kまで、宇宙船の場合には300Kまで)により、飛行機と宇宙船の内部は外部領域とは熱的に遮断し、温度調節の費用を制限し、かつ結露の形成を防がなくてはならない。同時に、この断熱層は耐熱性で、かつ軽量でなくてはならず、かつ全体のカバー構造の機械的強さに寄与するのが好ましい。通常は、ポリイミドから成る断熱マット及び高性能ポリマー(ポリアラミドなど)ならびにガラス繊維及び粉末をベースとする断熱材料が使用される。これらの材料の多孔空間では、大抵は機体内圧、すなわち約800〜1000バールが優勢である。真空断熱は例外的な場合にのみ使用される。なぜならば、それらのコストが高く、かつそれらのフィルム外部カバーが難燃性ポリマーからは殆ど得られないからである。
【0010】
従って、これらの全ての分野では性能の良い熱的遮断材料に需要が増している。
【0011】
廉価な断熱材料は標準圧で断熱される。すなわち、断熱材料中の多孔空間は、大気空気圧の高さでは絶対圧が優勢ある。これにより、これらの材料は簡単かつ安全に加工可能である。しかし、これらの断熱効果は、ガスの高い熱輸送性能が原因で比較的に低いことが欠点である。
【0012】
従って、真空の使用によりこの熱輸送を最小化する材料が開発されてきた。しかし、低い圧力は機械的に安定な系内でのみ作られ、かつ維持することができるので、真空下に存在する系の崩壊を回避できる。
【0013】
冷たい液体を輸送するためのライン系は、特に次の文献に記載されている:DE-A-3630399、US4924679、DE 69202950T2、DE 19511383A1、DE 19641647C1、DE 69519354T2、DE-A-2013983及びWO 2005/043028。
【0014】
これまでに、このようなライン系を断熱するために様々な問題解決のアプローチが成されてきた。上記文献で説明された系の一部は、二重壁に傑出したパイプラインを記載していて、その際に、壁の間の空所は排気され、かつ更に断熱材料(粉末及び/又は繊維)で充填され、"パイプ・イン・パイプ"構造を達成している。大まかに、この断熱は通常のデュワー容器に相当する。その他の記載されている系には、断熱すべき部材の形状に正確に一致させた既成の成形品、例えば、半分の殻のようなものが記載されていて、これは断熱すべき部材の両側の周囲に置かれ、かつこれに固定されている。最終的に隔離された個々の領域と、既に排気された領域から成り、互いに柔軟に連結され、このように大きな構造物を形成している系が記載され、通常は一方向で制限された曲げ性(巻き性)を有するので、例えば円筒形の物体(パイプ、容器)では、咬み合わせてカバーされる。これらの全ての系に共通して、真空が既に設置された場合には、密閉すべき部材の後の形状を予め決定しておくか、又は少なくとも考慮する必要がある。更にこれらの系では、熱輸送方向に延びたエッジ又はセム(いわゆるヒートブリッジ)なしに、断熱すべき部材の完全な密閉を達成することが実際に不可能である。従って、その領域においてこのような断熱部材の優れた断熱特性は、1つの断熱部材から次の部材への移行で不可避である多くのヒートブリッジを使用することである。このように断熱されている冷却媒体又は加熱媒体用のパイプ距離の効率的な断熱効果は、通常はより長い距離にわたる輸送では劣悪すぎる。更に、これらの断熱部材の個々の排気領域の強さゆえに、それらの加工は頻繁に困難であり、かつ幾何学的に非常に制約される。
【0015】
従って原則としてこれらの系は、相応する媒体を冷たい又は熱い形で輸送できるライン系を構築するためには、適性が制限されてしまう。
【0016】
特許明細書EP-A-0618065、EP-A-0446486、EP-A-0396961及びEP-A-0355294からは、特に高い断熱性能を提供するプレート型真空断熱系が特に公知である。これらの真空断熱系は、例えば冷蔵庫を断熱するために使用できる。これらの成形品は、断熱材料で充填された気密なカバーを有する。機械的ポンプにより断熱層を排気し、かつカバーを閉じた後に成形品は硬くなる。この断熱系の形状は設置の際には変更できないので、これらの成形品は主にプレート型で使用される。確かにその他の形状構成を生産できるが、しかし相応してそれらの加工はコストが高い。
【0017】
特に複雑な断熱系の場合には、取り付けもしくは敷設後に例えばポンプにより初めて真空を生産できる。この事は特に先に説明した断熱系と関連して記載されている。しかし、ポンプによる真空の生産には多くの欠点があり、それゆえこのようなタイプの系は延長されたライン系では使用されてきていない。例えば、十分な真空を達成するために必要な時間は、様々な排気箇所の間の距離が増すに従って長くなり、かつ特に極めて細かい材料の場合には非常に問題となる。例えば、エーロゲルは優れた断熱効果を提供するが、しかし十分な断熱効果を達成するために作動させなくてはならないポンプの時間は著しく長い。より粗い構造の材料を使用する場合には、排気に必要な時間が短い。しかし、同時に細かい材料よりも同じ残留ガス圧(同じ真空)にて高い熱伝導率を有する断熱材料が得られる。とりわけ、排気によりポンピングの際に相当のエネルギー要求を生じる。この理由で、このタイプの系はこれまでに実践されなかった。例えば、冷蔵庫の製造のように大量生産の場合にも同様に、後からの真空の生産は実現が難しい。それというのも、相応する排気時間の長さにより、サイクル時間が規定されるからである。
【0018】
系が輸送すべき流体により冷却される場合には、ポンプの使用に相応する真空は、ガスの冷却により生産できる。しかし、ガスの固形化による真空の生産は、相応の冷却媒体が流れるライン系にとってのみ可能である。多くの例の一例のみが概要してある上記の地域暖房系には、このメカニズムは適用不可能である。
【0019】
更に、WO2005/043028には、断熱層の内部のガス圧を下げるために使用される金属と水素の組合せが記載されている。しかし、この系の扱いが困難であることが欠点である。出版物EP347367からは中空体中での真空の生産が公知であり、その際に、メタルハイドライドの加熱により遊離水素が空気と置き換わっている。引き続き、系が密封される。冷却により、中空体中に存在する水素はメタルハイドライドを形成しながら金属により吸収され、その結果真空が生じる。しかし、必要な温度は極めて高く、従って真空を形成するこの系はWO2005/043028で記載されているライン系では、これまでに実践されていない。
【0020】
本明細書で示され、かつ検討された従来技術の観点から、本発明の課題は優れた特性プロフィールを有する真空断熱系を生産する部材を提供することである。
【0021】
特性プロフィールは、部材の設置の際ならびに該部材から得られる断熱系の運転の際に高い耐性を有する。更に該部材は、断熱系内を流れる冷たい媒体とは無関係に優れた断熱を可能にすべきである。
【0022】
もう1つの課題は、高い断熱効果を有し、かつ加工が簡単である部材を提供することである。ここで、該部材は複雑な形状を断熱するためにも使用可能であるべきである。更に、該部材は大量生産の場合でも長すぎるサイクル時間を生じるべきではない。
【0023】
更に、該部材は特に高い断熱性能を達成するために適切であるべきである。このために必要な低い熱伝導は出来るだけ経済的に達成されるべきである。一般に高いコストと結びつく長いポンプ時間が特に無くても済むようにすべきである。
【0024】
もう1つの課題は、経済的な方法でこのような部材及び断熱系を提供することである。
【0025】
これらの課題ならびに実際には明記されていないが、本明細書内で検討された関連から明らかに推論できるか、又はこれらから必然的に生じるその他の課題は、請求項1に記載の部材により解決される。この部材の有利な改変は、請求項1に戻って参照する従属請求項で保護されている。断熱系ならびに真空を生産する方法に関しては、請求項13と15がそれぞれ根底にある課題の解決策を提供する。
【0026】
従って本発明の対象は、カバーにより覆われた少なくとも1つの断熱層を有する真空断熱系を生産するための部材であり、その際に断熱層中に存在するガス圧は、部材中に設けられた媒体により減少させることができ、ガス圧を減少させる媒体は活性可能なように準備されることに特徴付けられる。
【0027】
意外にも本発明の対策により、真空断熱系を製造するための部材ならびにこれらから得られる、優れた特性プロフィールを有する断熱系の提供において奏功した。
【0028】
特性プロフィールは、該部材を設置する際ならびに該部材から得られる断熱系を運転する際に高い安全レベルを有することから成る。従って、これらの部材又は真空断熱系により、人々や環境及び物的に直接的な損害を与えることはない。この記述は、いかなる媒体、電力ライン、情報の伝達に使用するライン又は本明細書内で記載された部材又は断熱系により密封された系の構成部材もしくは構成エレメント内の加熱もしくは冷却表面による損害を排除する。更に、これらの部材は、専門家ではない人によっても簡単な誘導に従って設置でき、かつこれにより得られる真空断熱系は、これらの人々により施行できる。
【0029】
更に、断熱系を流れる冷たい媒体とは無関係に、部材は優れた熱的な遮断性能を達成することができる。このために必要な低い熱伝導率は極めて廉価に得ることができる。特に、一般に高いコストと関連する長いポンプ時間が無くても済む。
【0030】
本発明の部材及び断熱系は、廉価に提供できる。これらのコストの利点は、廉価で簡単に加工された部材及び/又は材料の使用により増大する。それにより、部材は更に簡単に加工かつ設置できるようになる。
【0031】
更に、該部材は複雑な形状を断熱するために使用できる。これに関連して、この部材は大量生産で用いられる場合でも長いサイクル時間を生じない。
【0032】
更に、本発明の部材及びこれから得られる真空断熱系は、取り付け及び敷設の際の高い柔軟性、ならびに取扱い及び運転における高い耐性と組み合わさり高い断熱効果を可能にする。更に、真空断熱系の使用の幅は、断熱効果を下げることなく極めて広い温度範囲で使用できる点で有利である。
【0033】
これらの利点は、予め説明した全ての使用分野で利用でき、その際に頻繁に相乗効果が獲得される。地域暖房系、プロセス蒸気系及びその他の熱輸送媒体系の分野では、本発明の部材により得られる真空断熱系は、同時に設置箇所において低い製造コスト、極めて簡単かつ柔軟性な敷設ならびに良好な取扱い性を伴って、通常のその他の真空断熱系から得られるような断熱特性を提供することができる。良好な断熱特性に条件付けられて、通常の断熱系を使用する場合よりも経済的に実施可能な著しく長い距離を達成でき、このことは更に使用の可能性を生じる。更にまた、通常のPUフォームよりも著しく高い運転温度(約110℃の維持温度)を可能にする断熱材料を使用することもできる。これにより、原則的により高い温度レベルで、及び/又は進行方向と逆方向の間の大きな温度差で熱の輸送を可能にする。後者は、物質流及び/又はパイプライン断面を減らすことができるようにし(これは特定の状況下では、有効なエネルギーを抽出するために使用される熱交換系の減少を可能にする)、これにより更なる投資コストが減少する。
【0034】
建物の断熱に使用される本発明の真空断熱系により、建築上の制約無しに、かつ建築コストを著しく増すこと無く、新築ならびに中古の建物の熱エネルギー要求を相当に減らすことができる。
【0035】
熱い水道水ならびに建物内のパイプラインを通る加熱目的の水の輸送に関しては、本発明は、廉価で、柔軟で、簡単に施設可能なパイプラインもしくは小さな外径を有するホースラインを製造することができ、それにもかかわらず、これは運転開始の際に、従来はコストの理由で実施できなかった真空断熱の真空パラメーターを有する。本発明により断熱されるラインの使用により、建物の加熱エネルギー要求を著しく減少できる。
【0036】
特に工業で必要である反応器及び装置は本発明の利点を獲得する。それというのも、これは理想的に加工性、柔軟性及び価格に関して従来の繊維マット断熱の利点と、真空断熱の断熱特性の組合せを示すからである。本発明の高性能ポリマー繊維を使用する場合には、約270℃までの持続運転温度を達成することができ、かつ高性能ポリマー繊維の代わりにガラス繊維/岩綿繊維又はその他のセラミック繊維及び/又は粉末を使用する場合には、より著しく高い温度でさえも実現可能である。このように、工業での加熱エネルギー要求を著しく減らすことができる。
【0037】
もう1つの有利な用途は、PCM貯蔵(PCM=位相変化材料)に関し、この材料は、相転移により多くの潜熱を吸収し、かつ後で逆のプロセスで再び放出できる材料である。これは、地域/局所−暖房網に代わり、移動容器中で熱が移動する。このような容器は、当然ながら本発明の断熱系により示されるような廉価で、高度に効率的で、軽量かつ小さな体積の建築の熱断を必要とする。
【0038】
本発明により、建築上の制約が無く、かつ建築コストの相当な増大無しに冷却貯蔵の冷却エネルギー要求において著しい減少が達成できる。輸送梱包又は容器(例えば、食品タンクローリー、冷蔵トラック又はワゴン、冷凍物品−輸送機)中の冷却物品の最大の貯蔵時間を著しく減少でき、もしくは不所望な熱の投入を補償するためのエネルギー要求を著しく下げることができる。それにより、従来は駐車中の冷蔵車や容器から発されていた厄介な騒音及び排気ガスなどが減少する。
【0039】
相乗効果は、特に輸送媒体、特に飛行機を断熱する場合にも本発明により達成可能である。多孔断熱材料は、通常の方法でキャビンの外側のカバーと内部の機体壁の間の空所に挿入できる。本発明によって、この断熱から真空断熱が形成でき、その際に断熱層を覆っている大半のカバーが輸送媒体の構造部材から形成できる。従って、この断熱の製造コストは通常の真空断熱系を使用する場合と比べて極めて低い。
【0040】
飛行機及び軽量建築に関して本発明により実施される断熱のもう1つの利点は、断熱材料の硬化により全体構造の硬化を生じる可能性である。これは、例えば互いに気密に密封され、繊維及び/又は粉末で充填された多数の小さなセルにより、そのために必要な外部カバー部材の外壁と内壁を連結させる隔離壁を用いて実施できる。これは、通常のVIPに類似した機械的に極めて剛性であるか又は自耐構造を生じる。しかしVIPとは異なり、極めて複雑な三次元構造を生産できる。それというのも、真空の生産は正確に設置し、かつ気密に密閉した後に初めて開始するからである。更に、十分な数の互いに気密な個々の真空セルは、全体構造への局所的障害が生じた場合でさえも、高度な機械的安定度が続く。これは気密カバーへの障害が生じた場合の通常の大面積のVIPを用いる場合とは異なる。
【0041】
本発明は、真空断熱系を製造するための部材に関する。ここで、部材という用語は本発明の範囲内では、単独で又は更なる類似又は異なる物品との組合せで真空断熱系を生産するために適切である物品を意味する。真空断熱系という用語は、本発明の範囲内では、空所を有する領域を含むいずれかの物品を意味し、この空所は標準の大気圧に対して相当に減少したガス圧が優勢であり、これにより熱エネルギーの流出又は流入を減らすために適切である。これには特に予め説明した冷たい流体、例えば液体もしくは気体状の水素が通されるライン系、又は熱い流体が輸送される地域暖房ラインが含まれる。更に含まれるものは、建築物、冷却系、装置、家庭用品及びそのようなものにおいて使用される断熱系ある。該部材は、断熱層を少なくとも1つのカバーを有する。このカバーは、ガス圧を減少させる媒体の活性後に断熱層内に形成された真空を保持するために使用される。従って、カバーはガスバリア層として働き、これは出来るだけ少ないガス透過性を有するべきである。
【0042】
気密性は、層を通して拡散可能なガスの気密性に左右されることが公知である。更にガスの拡散は、カバー材料のタイプと厚さによる。この場合に、気密性は出来るだけ高くあるべきであるが、カバー材料の加工性及びコストが容認できないほど高くなってはならない。更に、ガスの拡散により開始される圧力の増大は、ガスが拡散できる面による。更に密度の度合いは、本発明の部材が使用されている系の意図する実用寿命による。
【0043】
有利には、予め説明したパラメーター、例えば、カバー材料の厚さ及びカバー材料の種類は、カバー材料表面:覆われた体積の比に左右され、ガス圧を減少させる媒体の活性化後に生じるガス圧が、1年間で最大で20mbar、より有利には最大で10mbar、更に有利には最大で2mbarだけ上がるように選択される。このガス圧は、全圧と称され、この値は、空気を外部媒体として標準条件下(1013mbar、20℃)に測定される。
【0044】
部材のカバーは、例えば運搬の際に既に適切な気密性を有していてもよい。更に、カバーは部材が組込み又は設置される際に気密を形成してもよい。従って、"気密性"という用語は、設置又は組込まれた状態の部材に関する。
【0045】
ライン系の場合には、例えばカバーは流体が流れるラインにより形成される1つ以上のジャケット層と1つ以上のシーリング層を有してもよい。この場合には、断熱層、ジャケット層及び内部シーリング層は、例えばライン系を形成するために、種々の部材から組み立てることができる。
【0046】
装置又は器具、例えば、冷蔵庫又は大型冷凍冷蔵庫の場合には、例えば、インナー又はアウターの内張りは、本発明の部材のカバーの一部を形成していてもよい。
【0047】
カバーを形成できる材料は自体公知である。これに関して、予め説明した出版物を参照できる。多くの場合に、適切な材料の選択は意図した目的の部材による。このように特殊な金属とプラスチックを使用してカバーを製造できる。
【0048】
意外な利点は、例えば、プラスチックフォイルにより達成でき、これからカバーの少なくとも一部を形成できる。これらのプラスチックフォイルは、23℃及び85%の相対湿度で0.05g/(m
2・d)以下、特に有利には0.005g/(m
2・d)以下、とりわけ有利には0.001g/(m
2・d)以下の透湿度を有する。他のガス(例えば、O
2、N
2、CO
2)に対する透湿度は、23℃で0.5g/(m
2・d)以下、有利には0.1g/(m
2・d)以下である。下限は、特に部材の実用寿命及び与えられた工業的状況から生じる。従って、0.0001g/(m
2・d)未満の透湿度及び、0.01cm
3/(m
2.d.bar)未満の他のガスの透過度に対する値は、予め説明した条件下では達成が困難であるか、又は更なる金属含有層の補助により達成できるにすぎない。従って、透湿度は有利には23℃及び85%の相対湿度にて、0.0001〜0.08g/(m
2・d)の範囲内、特に有利には0.0002〜0.05g/(m
2・d)の範囲内である。他のガス(例えば、O
2、N
2、CO
2)に対する透過度は、合計すると23℃で0.01〜0.1cm
3/(m
2.d.bar)の範囲内、より有利には0.03〜0.05cm
3/(m
2.d.bar)の範囲内である。
【0049】
上側と下側のガスバリアが、接着層を介して効率的に高く水蒸気バリケードに連結しているように多層構造が組み立てられているフォイルは特に効率的であることが判明した。
【0050】
このようなカバーは、以下の層を有する遮断層を有する多層フォイルであることができる:
(A)PVDCから成る保護ラッカー層、及び場合によりポリビニルアルコール層を含有していてもよい、
(B1)場合により結合又は接着層、
(C1)ポリオレフィン層、
(B2)結合層又は接着層、
(D)エチレンビニルアルコールコポリマー層、場合により少なくとも片側に同時押出によるポリアミド層Eを備える、
(B3)場合により結合層又は接着層、
(C2)ポリオレフィン層。
【0051】
この構造を有するフォイルは、特にEP-A-0446486(90年12月28日提出、欧州特許庁、出願番号90125659)、US5389420(92年11月30日提出、United States Patent and Trademark Office(USPTO)、出願番号983216)ならびにUS5236758(91年5月15日提出、United States Patent and Trademark Office(USPTO)、出願番号669738)に記載されている。その際、これらの出版物を開示の目的で記載し、かつこれらの中に開示されているフォイルを本明細書中に取り入れることとする。
【0052】
本発明の部材の使用に応じて、カバーに平行して熱伝導率を最小化するのが有利である。本発明の特殊な態様では、カバーは熱伝導につながり得る金属層を含まないのが有利である。従って、カバー材料は金属不含に形成するのが有利である。この態様は、特に冷たい流体を輸送するライン系に特に有利であることができる。
【0053】
他方で、特に低いガス透過性を必要とする実施態様も有利であり、これは特にカバー材料中での金属の使用により達成される。これらの態様は、特に温かい流体を通すライン系、例えば、建物内の地域暖房ライン又は熱水ラインの場合、又は熱を貯蔵する装置の場合には合理的である。
【0054】
本発明による部材により得られる真空断熱系は、少なくとも1つの熱的に遮断された領域を有していてもよい。従って、本発明の部材は、この熱的に遮断された領域が形成できるように設計される。本発明に関連して"熱的に遮断された領域"という用語は、熱い又は冷たい物で充填できる容積、又はこれを通して熱い又は冷たい流体を通すことができるものを意味し、その際、この容積に存在する物質は熱移動から遮断される。すなわち、この領域内では、物質は少ない温度変化しか受けない。
【0055】
本発明による部材は、更に少なくとも1つの断熱層を有する。この断熱層は、周囲環境と熱的に遮断された領域との間の熱移動を減少させるために使用される。
【0056】
熱移動は、熱遮断層内の圧力減少により減少されるので、カバー内の空間が崩壊するのを防ぐために、断熱層の周りで十分な機械的安定性のカバーにより機械的安定性が既に保証されていない限り、この層は十分な機械的安定性を有さなくてならない。一般的に、断熱層は、繊維、フォーム又は粒子(例えばシリカパウダー)、又は前記の物質クラスの組合せを含み、それらの構造により確実な機械的安定性を可能にする。これにより、その内に僅かな圧力が優勢になることが保証される。従って、低い熱伝導率を達成できる。この容積は、多孔容積を意味するか又はそのようにみなすこともできる。
【0057】
断熱層を製造するための有利な材料には、特に微細な二酸化ケイ素粒子、例えば、沈降シリカ、煙霧シリカならびにエーロゲルが含まれる。これらの材料は、単独で、又は互いの混合物として、又は更なる材料との混合物として使用できる(例えば繊維の形又は繊維アッセンブリの形で)。更に、断熱層は、通常の添加剤、例えばカーボンブラック又はその他のIR吸収剤を含んでいてもよい。
【0058】
断熱層を製造するための材料は、特にEP-A-0446486(90年12月28日提出、欧州特許庁、出願番号90125659)、US5389420(92年11月30日提出、United States Patent and Trademark Office(USPTO)、出願番号983216)ならびにUS5236758(91年5月15日提出、United States Patent and Trademark Office(USPTO)、出願番号669738)に記載されている。その際、これらの出版物を開示の目的で記載し、かつこれらの中に開示されている断熱層を製造するための材料を本明細書中に取り入れることとする。有利に使用すべきエーロゲルは、例えば、出版物WO2007/044341 A2、WO 02/052086 A2及びWO 98/13135に記載されている。
【0059】
本発明の特殊な態様では、断熱層は繊維アッセンブリを有していてもよい。有利に使用すべき繊維アッセンブリは、高性能ポリマー繊維ならびに結合繊維を有する。高性能ポリマー繊維は当業者に公知である。この用語は、特に高温で使用できるポリマー繊維であると解釈すべきである。これらの繊維で製造でき、低い固体の熱伝導率を有するポリマー材料は極めて弾性であり、かつ硬く化学耐性で難燃性であり、かつ比較的に高い赤外線吸光係数を有する。
【0060】
合理的に高性能ポリマー繊維は、有利には少なくとも200℃、特に有利には少なくとも230℃の融点又はガラス遷移温度を有する。この特性は、DSC(示差走査熱量計)を用いて測定できる。
【0061】
高性能ポリマー繊維を製造するための有利なポリマーの固体熱伝導率は、例えば293Kの温度にてASTM5930-97又はDIN52616に倣って測定して、最大で0.7W/(mK)、より有利には最大で0.2W/(mK)である。
【0062】
有利な高性能ポリマー繊維には、特にポリイミド繊維、ポリベンズイミダゾール繊維、ポリアラミド繊維、ポリエーテルケトン繊維及び/又はポリフェニレンスルフィド繊維が含まれ、このうちポリイミド繊維が特に有利である。
【0063】
ポリイミドは自体公知であり、かつ例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry第5版のCD-ROMに記載されている。
【0064】
ポリイミドは、有利には25000〜500000g/molの範囲内の重量平均分子量を有するのが有利である。
【0065】
ホモポリマーの他に更にコポリマーとしてポリイミドを使用でき、該コポリマーはイミド構成ブロックの他に、主鎖中に更なる官能基を含んでいる。本発明の特殊な態様によれば、ポリイミドは少なくとも50質量%、有利には少なくとも70質量%、とりわけ有利には少なくとも90質量%がポリイミドを生じるモノマー構成ブロックから誘導できる。
【0066】
特に有利なポリイミドは、商品名P84でEvonik Fibres GmbH(Lenzing/Austria)から、又はHP-Polymer GmbH(Lenzing/Austria)から、及びMatrimidの商品名でHuntsman Advanced Materials GmbH/Bergkamenから市販されている。
【0067】
有利な実施態様によれば、高性能ポリマー繊維は、非円形の断面形状を有していてもよい。非円形の断面形状は、一般的に膨らみと凹みを有する。この場合に膨らみとは、繊維の重心からの最大距離を有する横方向での繊維の境界であるのに対して、凹みとは、繊維の重心からの最小距離を有する繊維の境界である。従って、膨らみと凹みは、それぞれ繊維の外側の境界と、繊維重心の局所最大と最小である。この場合に、繊維重心から膨らみのうち1つへの最大の距離は、繊維断面の外径として見なすことができる。同様に、繊維の重心と、少なくとも1つの凹みの間の最小距離を内径として定義することができる。外径:内径の比は、有利には少なくとも1.2、特に有利には少なくとも1.5、とりわけ有利には少なくとも2である。繊維の断面形状ならびに延長は、電子マイクロスコープにより決定できる。
【0068】
これらの非円形の断面形状には、特に3個、4個、5個、6個以上の膨らみを有するマルチローブ断面及び星形断面が含まれる。繊維は、トリローブ断面を有するのが特に有利である。非円形断面、特にトリローブ断面を有するポリイミド繊維は、通常の溶液スピンニング法の際に特に比較的に低いポリマー含有量を有する溶液を用いることにより得られる。
【0069】
ソリッド繊維の他に、更に中空繊維を使用することもできる。有利な中空繊維は、非円形断面形状、特にトリローブ断面形状を有するのが有利である。
【0070】
高性能繊維は、不連続繊維として又は連続フィラメントとして使用することができる。
【0071】
高性能ポリマー繊維は、有利には1〜50μmの範囲内、特に有利には2〜25μmの範囲内、とりわけ有利には3〜15μmの範囲内の直径を有する。この場合に、直径とは、重心を通して測定される横方向での繊維の最大延びを意味する。直径は、特に電子顕微鏡(REM)を使用して測定できる。
【0072】
合理的に高性能ポリマー繊維は、最大で10dtex、有利には最大で5dtexの綿密度を有する。高性能ポリマー繊維の線密度は、最大延びで測定して、有利には0.05〜4dtexの範囲内、特に有利には0.1〜1dtexの範囲内である。線密度の測定は、標準的なDIN EN ISO 1973に従って行うことができる。
【0073】
本発明の特殊な態様によれば、クリンプを有する高性能繊維を使用できる。合理的には、このクリンプは1〜50/cmの範囲内、特に有利には3〜10/cmの範囲内であってよい。繊維のクリンプは光学的方法により決定できる。これらの値は、頻繁に製造から得られる。
【0074】
更に有利な態様によれば、クリンプが無いか、又は僅かなプリンプだけを有する高性能繊維を使用してもよい。
【0075】
高性能ポリマー繊維の他に、有利に使用される繊維アッセンブリは結合繊維を含み、これは高性能ポリマー繊維を結合するために使用される。結合繊維は、有利には最大で180℃、特に有利には最大で150℃の融点又はガラス繊維温度を有する。融点又はガラス繊維温度は、DSCにより測定できる。
【0076】
結合繊維は、有利にはポリオレフィン繊維、アクリル繊維、ポリアセテート繊維、ポリエステル繊維及び/又はポリアミド繊維を含む。
【0077】
結合繊維の直径は、有利には1〜50μmの範囲内、有利には2〜20μmの範囲内、とりわけ有利には4〜10μmの範囲内である。この場合に直径とは、重心を通して測定して横方向での繊維の最大延びを意味する。
【0078】
有利な結合繊維の線密度は、有利には10dtex未満、特に有利には5dtex未満である。合理的には、有利な結合繊維は、最大延びで測定して、有利には0.05〜4dtexの範囲内、特に有利には0.1〜2dtexの範囲内の綿密度を有する。
【0079】
繊維アッセンブリは、有利には高性能ポリマー繊維を少なくとも70質量%と、結合繊維を最大で30質量%含んでいてよい。高性能ポリマー繊維の割合は、有利には75質量%〜99.5質量%の範囲内、特に有利には80〜95質量%の範囲内である。結合繊維の割合の上限は、繊維アッセンブリの必要な性能の可能性から生じるのに対して、下限は、断熱系の製造法により向けられる必要性から生じる。結合繊維の割合は、有利には0.5質量%〜25質量%の範囲内、特に有利には5質量%〜20質量%の範囲内である。
【0080】
繊維アッセンブリは、有利には層状の繊維配置を有していてもよい。その際、繊維の少なくとも一部は、結合繊維の軟化により得られる接点を通して互いに結合している。
【0081】
"層状の繊維配置"という用語は、実質的に平面である少なくとも1つの主要方向が存在する繊維を意味する。この場合に、"平面"という用語は、広い意味を有すると解釈される。それというのも、繊維は三次元の延びを有し、かつこの平面は曲がっていてもよいからである。それに応じて"実質的に"という用語は、繊維の主要方向が、繊維の出来るだけ僅かな部分が熱勾配の方向を向いていることを意味する。主要方向は、繊維の長さに沿って平均された繊維の方向であり、僅かな方向の変更は無視できる。
【0082】
この意味での層状配置は、一般的にフリース又はフリース材料を製造する際に達成される。これらの方法では、フィラメント又は不連続繊維は、平面に配置され、引き続き硬化される。これは、例えば空気(エアレイド)の使用下に乾燥法により、又はウェット法により実施できる。有利には、僅かな繊維だけがこの平面に対して垂直に向いた主要方向を有する。それに応じて、繊維アッセンブリは一般に著しいニードリングによって硬化されることは無い。
【0083】
繊維アッセンブリは、結合繊維の軟化及びそれに続く冷却により得られる。これに関する方法は、特にアルバニー・インターナショナル社(Albany International Corp., Albany, N. Y.(USA))の特許明細書US4588635、US4681789、US4992327及びUS5043207に記載されている。温度は、結合繊維の軟化温度による(ガラス遷移温度又は融点)。この場合に、全ての繊維が結合繊維の軟化により得られる接点で互いに結合する必要はない。この割合が高い程、アッセンブリは良好な機械的特性を有する。しかし、アッセンブリの熱伝導率は高くなり得る。これに関連して、アッセンブリの形の繊維は、結合繊維の軟化により得られない接点を有するかもしれないことが言える。これには、特に高性能ポリマー繊維が接触する点が含まれる。
【0084】
層状に配置された平面内では、繊維が正確に1つの主要方向を有するのが有利であり、その際に種々の平面の繊維の主要方向は互いに1つの角度を形成するのが特に有利である。"繊維の主要方向"という表現は、個々の繊維の全長に対する平均の方向から生じる。種々の平面の繊維が互いに向く角度は、有利には5゜〜175゜の範囲内、より有利には60゜〜120゜の範囲内である。繊維の主要方向ならびに種々の平面の互いに対する角度は、光学的方法により決定できる。頻繁に、これらの値はその製造により生じ、その際に、繊維の方向は例えばカード処理及び/又はクロスラッピングにより予め設定できる。
【0085】
低密度は、特に繊維アッセンブリの低い熱伝導率と頻繁に関連する。他方で、繊維アッセンブリの強さは、低密度により減少するので、熱い又は冷たい流体を通すラインに十分な耐久性を与える場合には安定性が低くなりすぎる。従って、断熱材料での使用が予定される本発明による繊維アッセンブリが、例えば50〜300kg/m
3の範囲内、有利には100〜150kg/m
3の範囲内の低密度を有することは意外な利点である。その際に、前記値は、加工及び断熱材料に挿入されることにより必要となる負荷の下に測定される。これらの密度の値が適用される、繊維の主要方向の平面に対して横方向の負荷は、例えば、1mbar〜1000mbarの範囲内であり、その際にこれらの密度の値は、例えば1mbar、10mbar、50mbar、100mbar、200mbar、400mbar、600mbar、800mbar又は1000mbarの負荷で測定可能である。
【0086】
負荷をかけない状態では、特に加工前には、繊維アッセンブリは1〜30kg/m
3の範囲内、特に有利には5〜20kg/m
3の範囲内の密度を有することができ、この場合には、密度は最大5cmの未加工の繊維アッセンブリに対する厚さで測定できる。
【0087】
本発明による繊維アセンブリの平均熱伝導率は、層状配置の平面に対して垂直に測定した場合には、有利には最大で10.0×10
-3W(mK)
-1、より有利には最大で5.0×W(mK)
-1、特に有利には1.0×10
-3W(mK)
-1である。測定は、例えば室温(293K)で、及び/又は低温、例えば150K又は77Kで実施でき、その際に前記条件下にて材料は負荷に少なくとも14日間耐える。試験は、有利には低い絶対圧、例えば、DIN EN 12667("高温及び中温熱耐性を有する製品に対してプレート装置及び熱流計測プレート装置を用いる方法による耐熱性の測定")により1mbar以下の圧力で実施される。この測定は、例えば、測定すべき繊維アッセンブリ内で、0.01mbarのガス圧で、及び測定装置により繊維の主要方向の平面に対して横方向に測定すべき繊維アッセンブリに及ぼされる70mbarの負荷圧で実施できる。
【0088】
上記の熱伝導率の値は、層状配置の繊維平面に対して垂直に僅かな熱移動が行われるように達成できる。従って、著しいニードリング無しで、又は層状繊維配置に対して垂直に温かい又は冷たい架橋を生じ得る大量の液体結合剤を用いて硬化せずに済ませるのが好ましい。しかし、僅かなニードリング又は少量の液体結合剤を使用してもよいが、これらの措置が熱伝導率において僅かな増大しか生じない場合に限る。
【0089】
本発明による繊維アッセンブリが高い安定性を有するのが特に有利であり、その際に、この安定性は繊維の主要方向の平面に対して垂直方向にも生じる。本発明による繊維アッセンブリは、加工状態で及び/又は断熱材料において、比較的に低い圧縮率を有し、これは負荷が1mbarだけ増大する場合には最大で50%である。すなわち、負荷が1mbarだけ増大すると、繊維アッセンブリの厚さは、加工アッセンブリの元の厚さに対して最大で50%、有利には最大で30%、より有利には最大で10%、更に有利には最大で5%だけ下がる。
【0090】
上記の態様の意味する範囲内における部材又は真空断熱系は、特に、DE-A-3630399、EP-A-0949444、US4924679、DE-A-10031491、DE 69202950T2、DE 19511383A1、DE 19641647C1、DE 69519354T2、DE-A-2013983、WO 2005/043028、EP-A-0618065、EP-A-0446486、EP-A-0396961及びEP-A-0355294に記載されている。しかし、これらの系では、真空は通常の方法で例えばポンプにより生じる。
【0091】
本発明による部材は上記のような系とは異なり、部材中に提供され、かつ活性可能に準備された媒体により断熱層内のガス圧が減少するように構築される。
【0092】
従って、ガス圧を減少させる媒体は気相中に存在する原子又は分子のモル数の減少を生じることができる1つ以上の物質を含む。本明細書内では、これらの物質を作用物質とも称する。
【0093】
ガス圧を減少させる媒体もしくは作用物質の特異的な実現は、前記媒体を活性化する前に断熱系内に含有されるガスの性質による。有利には、ガス圧を減少させるこの媒体は、断熱層内に存在するガスを吸収、吸着するか又は化学的にこれと反応する。
【0094】
ガス圧を減少させる媒体を活性化する前に断熱層内に存在し得るガスには、特に塩基性ガス、例えば、NH
3;酸性ガス、例えば二酸化炭素、HCl、SO
2、SO
3;気体状酸化剤、例えば、酸素;水素及び/又は重合可能なガス、例えば、エチレン及び/又はプロピレンが含まれる。気相中に存在するこれらのガスの粒子の数は、吸収、吸着又は化学反応により簡単に減少される。
【0095】
標準条件、すなわち20℃及び1013mbarにて、まず部材の断熱層内に気体の形で存在できる酸性ガス、有利には二酸化炭素は、有利には塩基性物質と反応できる。従って、ガス圧を減少させる媒体は、作用物質として二酸化炭素を吸収又は吸着できる塩基性物質を含んでいてもよい。二酸化炭素と反応して炭酸塩又は重炭酸塩を形成できる塩基性物質は、例えば、酸化物又は水酸化物であり、これらは、有利にはアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属により形成される。具体的な実施態様には、特にNaOH、KOH、Na
2O、K
2O、CaO、Ca(OH)
2、MgO及び/又はMg(OH)
2が含まれる。更に、酸性ガス、特に二酸化炭素、SO
2、SO
3又はHClを吸収又は吸着するために室温で液体又は固体であるアミンを使用することもできる。上記のアミンに関しては、OH
-の形で存在するアニオン交換体ならびにアミノ基を有するポリマーを使用することもできる。これらの化合物は、単独で又は2種以上の成分を含有する混合物として使用できる。
【0096】
酸性ガス、有利には二酸化炭素:塩基性物質、有利にはNaOH、KOH、Na
2O、K
2O、CaO、Ca(OH)
2、MgO及び/又はMg(OH)
2のモル比は、広い範囲内にある。ガス圧を減少させる媒体を活性化させた後に、特に低いガス圧を達成するために、大過剰量の塩基性物質を使用することもできる。従って、酸性ガス、有利には二酸化炭素:塩基性物質、有利にはNaOH、KOH、Na
2O、K
2O、CaO、Ca(OH)
2、MgO及び/又はMg(OH)
2のモル比は、1:1〜1:100の範囲内、特に有利には1:2〜1:10の範囲内、とりわけ有利には1:3〜1:5の範囲内であることができる。
【0097】
意外にも特殊な利点は、作用物質、特に担体材料上の塩基性作用物質、例えば、NaOH、KOH、Na
2O、K
2O、CaO、Ca(OH)
2、MgO及び/又はMg(OH)
2により示された。従って、多孔性の無機担体材料、例えば、アルミニウム及び/又はシリコンの酸化物を使用することができる。このような担体は、特にCA-A-2438438に記載されている。分子ふるい、例えば、リン酸ケイ素アルミニウム、活性アルミナ、ケイソウ土、ゼオライト及び/又はシリカゲルを無機担体として使用するのが好ましい。これらの材料は、特にRoempp Chemie Lexikon、第2版(CD-ROM)に記載されていて、かつ例えばエボニック・デグサ社から市販されている。この実現により、意外にも比較的に少ない塩基性作用物質に圧力の極めて多くの減少を達成した。更に、これらの系は、圧力の減少に伴って生じ得る熱の発生にとって極めて良好な制御性を示した。
【0098】
負荷をかけていない無機及び/又は有機多孔性担体材料は、有利には少なくとも180g/100gのDBP吸収(DIN 53601により;DBP:ジブチルフタレート)を有する。DBPにアクセス可能な孔は、作用物質にも場合により使用される保護系の材料(ここではカバー物質とも称される)にもアクセス可能である。それゆえに、多量のDBPは、担体の孔を作用物質及び保護物質で多く装填するために重要である。従って、低すぎるDBP吸収は、作用物質によっては無効であり得る。それというのも、相当に多くの担体材料を使用しなくてはならないからである。担体材料のDBP吸収は、有利には180〜600g/(100g)の範囲内、特に有利には180〜500g/(100)の範囲内、とりわけ有利には200〜500g/(100g)の範囲内、なお有利には240〜500g/(100g)の範囲内、更に有利には240〜400g/(100g)の範囲内、特に有利には240〜350g/(100g)の範囲内である。
【0099】
担持された作用物質は、作用物質を適切な溶剤、例えばアルコール又は水に溶解させ、かつ通常の方法で多孔性担体に導入することにより得られる。この場合に溶液の量は、多孔性担体が全体の溶液を吸収できるように選択でき、その結果、最初に流動可能な中間生成物として得られる。更なる工程では、このように得られた中間生成物を乾燥させて、多孔性担体から溶剤を除去する。乾燥工程の後には、予め説明した導入と乾燥の工程を繰り返して系の装填度を上げることができる。すなわち、作用物質の割合を高めることができる。
【0100】
有利な実施態様により、方法での混合の強さ及び計量は、導入工程の最後に流動性が保証されるように調整できる。すなわち、どの時点でも流動可能な粉末がミキサー中に存在するように調整される。これにより、意外にもカバー又は作用物質が孔に完全に吸収され、かつ外部の担体表面に付着しないことが達成できる。計量が速すぎるか、又は混合が十分に強くない場合には粒子が不均一に装填されてしまい、この事が最後には、幾つかの粒子の孔が完全に作用物質で充填され、かつカバー物質をもはや導入できなくなる結果を生じる。これに関連して、例えば、計量ニーダーH60中のIKA社の Duplex混合装置は、剪断応力により最小の摩擦だけが生じるように選択することに留意すべきである。粒子における摩擦のテストは、粒子サイズ分布を測定することにより行うことができる。このために、後で使用される混合ユニット内に担体物質を装入し、かつ混合工程は後の手法に相応して開始される。定義付けられた混合時間により、試料が取り出され、かつ粒子サイズ分布が決定される。粒子サイズ分布は、出発試料のd
50値から5%以上外れてはならない。
【0101】
意外な利点は、特に担持した作用物質により達成でき、その場合に作用物質:担体の重量比は、100:1〜1:10の範囲内、特に有利には10:1〜1:1の範囲内である。
【0102】
意外にも、上記のアミン、酸化物及び/又は水酸化物を乾燥剤と組み合わせて使用する場合に、ガス圧は特に低い値にまで最小化することができる。前記乾燥剤は、例えばゼオライト、分子篩い、親水性シリカ(例えば、エボニック・デグサ社からの乾燥Aerosil
(R)タイプ)、及びその他の公知の乾燥剤、例えば、P
2O
5、酸化カルシウム(CaO)、塩化カルシウム(CaCl
2)、臭化リチウム(LiBr)及び乾燥した形の超吸収剤(強い極性側鎖を有するポリマー、例えば、エボニック・シュトックハウゼン社からのFavor
(R))である。
【0103】
塩基性物質と乾燥剤の重量比は、有利には1:10〜100:1の範囲内、特に有利には1:2〜10:1の範囲内である。本発明の更なる態様によれば、塩基性物質:乾燥剤の重量比は、1:100〜20:1の間、特に有利には1:10〜2:1の間である。
【0104】
本発明の特殊な態様によれば、乾燥剤は、部材のカバーの比較的に冷たい領域に導入されるのがよい。それに応じて、乾燥剤は、断熱層の内部又は外側の位置に設置でき、これは、最大温度と最小温度により形成される演算平均値よりも低い温度を有する。
【0105】
塩基性ガス、特にアンモニアに関しては、これらが例えば固体又は液体酸と反応するように、特にプロトン化された形の作用物質としての固体イオン交換体と反応できるようにすべきである。
【0106】
1つの特殊な態様によれば、酸化ガス、例えば酸素と、適切な固体又は液体還元剤、例えば微粉砕された、かつ発火性の金属(例えば、発火性鉄)、半金属(例えば、発火性ケイ素)及び作用物質として用意されるその他の発火性材料を簡単に反応させ、それにより気相を除去することができる。
【0107】
更なる実施態様によれば、水素を断熱層中に含有していてもよく、ガス圧を減少させる媒体を活性化した後に、前記水素を断熱層の気相から除去してもよい。この実施態様では、ガス圧を減少させる媒体は、作用物質として水素を吸収又は吸着できる金属及び/又は合金を有していてもよい。この変法の有利な実施態様は、例えば、EP347367に記載されていて、その際、EP-0347367A1(89年1月6日に欧州特許庁に出願番号89730135.4で提出)に記載されている水素吸収化合物を開示目的に本明細書中に取り入れることとする。適切な金属及び/又は金属合金には、例えば、バナジウム、鉄、アルミニウム、チタン及び/又はニッケルが含まれる。
【0108】
更に、極性ガス、例えば、CO
2、NH
3、SO
2、NO、COをイオン液体に吸収させることができ、これが多孔性担体上に固定されるのが有利である。イオン液体は、場合により、Solvent Innovation社(ケルン)から納入可能であり、かつ吸収平衡状態に関して最適に調整でき、適切な担体はケイ酸(例えば、エボニック・デグサ社製のAerosil
(R)及びSipernat
(R)タイプ)ならびに親水性アルミナタイプ(様々な製造者の)であることができる。
【0109】
更なる実施態様では、水、又は蒸発しやすい室温で液体化合物であるその他のもの、例えば、メタノール又はエタノールを使用できる。この場合には、これらの化合物は活性化メカニズムが生じる前に蒸発させることができ、その際に生じるガス、例えば、水蒸気又はメタノールガスがその他のガスを排除する。この場合にもポンプにより作られる機械的真空を適用できる。その他のガスを排除した後に、この系は封鎖され、その後にガス圧を減少させる媒体を活性化することができる。ガス圧を減少させる媒体は、特殊な形、例えば乾燥剤の形で実現でき、これは活性化の後に例えばカプセル化した物が開くことで断熱層中に存在する蒸気が吸収され、これにより断熱層内でのガス圧の低下が達成される。
【0110】
有利な乾燥剤には、特にゼオライト、分子篩い、親水性ケイ酸(例えば、エボニック・デグサ社からの乾燥Aerosil
(R)タイプ)及びその他の公知の乾燥剤、例えば、P
2O
5、酸化カルシウム(CaO)、塩化カルシウム(CaCl
2)、臭化リチウム(LiBr)及び乾燥した形の超吸収剤(強い極性の側鎖を有するポリマー、例えば、エボニック・シュトックハウゼン社からのFavor
(R))などが含まれる。ガス圧を下げるための媒体、特に乾燥剤は、上記のように最適な吸収性能を達成するために、部材のカバー内の比較的に冷たい領域に装入されるのがよい。この実施は、作用物質の吸着又は吸収性能が真空断熱系の使用温度の予定した範囲内で温度に著しく依存する全ての態様にとって合理的である。
【0111】
更に断熱層は、まず標準条件で気体状の重合可能な化合物を1つ以上含有することができる。これには、例えばプロピレン及び/又はエチレンが含まれる。重合可能な化合物は、重合反応により固体又は液体物質に変換できる。この本発明の更なる変法では、ガス圧を減少させる媒体は活性物として1つ以上の重合触媒及び/又は重合開始剤を有していてもよい。
【0112】
適切な重合開始剤は、例えばラジカルを形成する化合物である。使用可能な開始剤には、特に周知のアゾ開始剤、例えば、AIBN及び1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリルならびにペルオキシ化合物、例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、t−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、上記化合物2つ以上の混合物ならびに上記化合物と記載されていないがラジカルを形成できる物との混合物。
【0113】
適切な重合触媒の例には、特にチーグラー・ナッタ触媒又はメタロセン触媒があり、これは特にUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版に記載されている。
【0114】
特に関心のあるものは、作用物質又はガス圧を下げる粒子状に存在する媒体である。これらの粒子は、有利には1μm〜10mm、特に有利には10μm〜5mmの範囲内、更に有利には0.1mm〜3mmの範囲内の直径を有する。これらの値は、d
50値に対する値(粒子の50%は小さく、50%は大きい)であり、かつ顕微鏡的方法で決定できる。
【0115】
ガス圧を減少させる媒体を活性化する前に、断熱層中にあるガス圧は少なくとも部分的にポンプにより除去できる。本発明の有利な実施態様では、ガス圧を減少させる媒体は、比較的に高いガス圧を本明細書で記載されたメカニズムにより、機械的ポンプを使用することなく極めて低い値に下げるように実施される。この実施は、特に断熱層中のガスの量に対する作用物質の使用量により達成できる。その結果、高いエネルギー要求と結びつく機械的ポンプの必要性がない。更に、真空断熱系を運転する際のエラーを避けることができる。
【0116】
本発明の特殊な態様によれば、ガス圧を減少させる媒体を活性化させる前の断熱層中のガス圧は、少なくとも500mbar、特に有利には少なくとも800mbar及びとりわけ有利には少なくとも950mbarである。
【0117】
このガス圧は、実質的に断熱層中に存在するガスによるものであり、かつこれはガス圧を減少させる媒体により吸収及び/又は吸着される、及び/又はこれらと反応するので、活性化後に極めて低いガス圧を達成できる。本発明の特殊な態様によれば、断熱層中のガスは、二酸化炭素を少なくとも80体積%、特に有利には少なくとも90体積%、更に有利には少なくとも95体積%有する。この場合に特に関心のある実施態様は、断熱層中のガスが二酸化炭素を少なくとも98体積%、特に有利には少なくとも99体積%、更に有利には少なくとも99.5体積%有するものである。
【0118】
部材の断熱層中で反応性ガス、有利には酸性ガス、特に二酸化炭素を使用することにより、機械的ポンプを使用する必要なく廉価に、かつ安全な方法で真空を製造できる系を意外にも首尾良く提供することができる。更に、特殊な準備対策を取る必要なく、この系を長期間にわたり貯蔵できる。加えて、この真空断熱系は特に簡単かつ安全な方法で費用のかかる安全上の予防措置を取ること無く運転することができる。
【0119】
ガス圧を減少させる媒体は、初めに断熱層内の圧力を500mbar以下、特に有利には50mbar以下、更に有利には10mbar以下、とりわけ有利には1mbar以下の値まで下げるのが有利である。これにより系の熱伝導率は著しく下がる。これらの値は、ガス圧を下げるための媒体のタイプと量により達成できる。
【0120】
本発明の特別な態様によれば、ガス層中に存在する分子のモル数の減少につながるこれらのプロセスの速度を制御できるので局所的なオーバーヒーティングを回避できる。例えば、ガス圧を減少させる媒体は部材にわたり細かく分散した形で存在できるので、場合により生じる反応熱は、大きな体積にわたり拡がる。更に、隔離層を用意することもできる。これはそれぞれの反応により一定量のガスを浸透するが、ガスとガス圧を減少させる媒体との直接的な接触を制限できる。
【0121】
本発明によれば、ガス圧を減少させる媒体は活性化可能であるように準備される。ここで、本明細書中は"活性化可能であるように準備される"とは、ガス圧を減少させる媒体が、活性化メカニズムが開始された後に漸く断熱層中に初めに存在したガス圧が下がることを意味する。活性化メカニズムは、ガス圧の減少につながるプロセスとは区別できる。この場合に、活性化メカニズムは、断熱層を包むカバーの気密なシーリングの後に行われる1つ以上の作用により開始される。これによりガス圧の減少につながるプロセスからの活性化のデカップリングは、ガス圧を低いまま維持するために永続的な作用を必要とせずに可能になる。従って、活性化メカニズムを開始するために又はガス圧を下げるために使用される作用は、永続的に行う必要も活性化の後に行う必要も無い。これはガス圧が著しく増大すること無く、後で予定した排気圧力に達することで完了する。特に活性化の後に生じるこのデカップリングは、従来技術には記載されていない。従って、従来技術により行われるガス圧の減少に使用しなくてはならない作用は、これとは対照的に真空を保持すべき期間にわたって保持される。有利には、ガス圧を減少させる媒体の予定する活性化メカニズムは不可逆的、すなわち逆戻り不可能である。EP347367に記載されている方法では、この作用は物品を室温で保持することから成る。物品が密閉される温度まで加熱する際に、系は著しく高い圧力、一般的には大気圧を示すので断熱効果が下がる。ここでの欠点は、冷却の際に真空を保持するために高温が必要であることである。凍結に基づく従来技術によるプロセスでは、低温でラインを通る流体を必要とする。そうでない場合には、ガス圧の低下が達成されない。
【0122】
ガス圧を減少させる媒体は、例えば、機械的、化学的、電気的、熱的に及び/又は電磁波で照射することにより活性化できる。すなわち、機械的、化学的、電気的及び/又は熱的作用及び/又は電磁波での照射は、断熱層中でのガス圧の低下につながるプロセスを引き起こすことができる。
【0123】
このメカニズムを引き起こす特殊な実施態様の例は、熱的、機械的、電気的又は化学的作用により、又は照射により変化できるカバー物質である。これらのカバー物質は、同様にガス圧を減少させる媒体中に用意される上記の作用物質にカプセル化することができる。
【0124】
断熱アッセンブリの部分は、例えば断熱すべき部材を通して低温媒体の運搬の開始により冷却でき、これによりカプセル化の収縮及び/又は脆化により活性種が放出され、その際に、ガスモル数の減少を生じるプロセスは、放出された活性種の相互作用により断熱内で開始される。
【0125】
この実施態様は、特にカバーとは異なる熱膨張係数を有する材料により支持できるので、冷却の際にカバー物質又はカプセル化において応力亀裂を生じ、圧力の減少につながるプロセスを可能にする。例えば、水は4℃を下回る降下温度で膨張するのに対して、その他の物質はこの領域で収縮する。このメカニズムは一般的に適用できるので、カプセル化の領域内には、冷却の際にカプセル化が形成される材料(カバー材料とも称する)よりも弱く収縮する材料が存在していてもよい。これにより、カプセル化の上又は領域内に応力を生成することができ、これはカプセルカバーの破壊につながる。このメカニズムは、単独で又は更なるメカニズム、例えばカバー物質の脆化と一緒に用いることができる。
【0126】
更に、断熱アッセンブリの部分は、例えば断熱すべき部材による熱い媒体の運搬開始により、断熱アッセンブリの内部又は上に組込まれた電気的加熱エレメントの電気的加熱により、またマイクロ波照射又は磁気もしくは電気的交番電界により加熱することができる。これによりカバー物質は溶融、脆化、崩壊されるか又は他の方法ではそれらのバリア特性を失う。
【0127】
加熱エレメントは例えば耐熱として実現され、この場合には加熱エレメントは特に断熱層の縁に配置されて、断熱層の断熱性能は不利に影響しないようにする。当然ながら、加熱媒体、特に真空断熱系のカバーの外側に加熱エレメントを用意してもよく、その際、全体の断熱系又は定義づけられた領域の加熱を達成することができる。これは、たとえば熱気扇風機により行うことができる。
【0128】
特異的加熱は、更に特定の電磁界(例えば、マイクロ波、交番磁界及びそのようなもの)又は超音波を作用する際に加熱できる材料により達成できる。このように使用可能な材料の一例は、磁化可能な金属、特に鉄で装填したエボニック・デグサ社から入手可能なMagSilica
(R)シリカ粒子である。
【0129】
これらの材料はガス圧の減少につながる物質(ここでは作用物質とも称される)の付近に用意するか又はカバー物質の付近又はその構成成分として用意でき、これは場合により作用物質を覆う結果、相応の電磁界又は超音波の作用はガス圧を減少させる媒体の活性化につながる極めて局所的な加熱を達成できる。
【0130】
カバーの溶融に加えて、カプセル化の内部で高い熱膨張を有し、場合により気化できる材料を用意することによりカバーを崩壊できる。熱膨張によりカプセル化を壊すことができる。例えば、水をカプセル化の内部に用意できる。水の蒸発により生じる圧力は、カプセル化を崩壊させるために使用できる。更に、例えばプラスチック又は無機ガラス、例えばシリケートガラスから形成される高い熱膨張係数を有する金属をカプセル化の内部に用意することもできる。カバー物質と比べて金属の強力な熱膨張により、カプセル化は熱により崩壊される。
【0131】
上記のメカニズムにより放出される水は、例えば十分に低いガス圧を達成するために、乾燥剤により気相から再び除去できる。
【0132】
更に、断熱アッセンブリの部材は、例えば断熱すべき部材により熱い媒体の運搬開始により、断熱アッセンブリの内部又は上に組込まれた電気的加熱エレメントの電気的加熱により、又は断熱系の外側からの加熱作用により加熱させ、それにより化学反応に必要な活性化エネルギーを提供することができる(例えば、活性な種を形成するための分解反応、又はガス分子の数を減らす存在する種の間の直接的反応)。断熱アッセンブリの構成エレメントの類似した加熱は、既に記載した方法でマイクロ波照射又は磁気もしくは電気的交番電界などにより達成できる。
【0133】
これらのプロセスは、更に断熱アッセンブリに十分な貫通もしくは透過的イオン化照射を当て、これによりラジカル又は反応性イオン種の形成のような化学反応を開始させ、これが今度はガス分子の数を減らす所望の反応を開始することで始めることができる。
【0134】
本発明の更なる態様では、マイクロ波照射を断熱アッセンブリ中の特定の材料に直接に作用させることで活性化を行い、照射エネルギーを吸収でき、かつそれにより著しく加熱させることができる。加熱により、これらの材料又は隣接する材料を化学的又は物理的に活性化させることができる;例えば、カプセル化の分解/崩壊により、触媒の活性化により、ラジカル又は反応性イオン種の形成などにより活性化させることができ、その際に、ガスモルの数を減少するプロセスは、活性種の共同作用による断熱において開始される。
【0135】
更に、磁気もしくは電気的交番電界を断熱アッセンブリ内の特定の材料に作用させ、それにより前記材料を化学的又は物理的に活性化することができる。その例は、機械的動き(振動)における変位である。これによりカプセル化が崩壊するか、又は固形成分が互いに擦れる(摩擦により引き起こされる反応)か、又は例えば金属含有助剤の誘導的加熱を生じる。その際に、ガスモルの数の減少につながるプロセスは、放出及び/又は活性化種の共同作用により断熱の内部で開始する。
【0136】
既に設置された断熱アッセンブリに機械的作用を及ぼし、活性化すべき材料を、例えば脆いカプセルの破壊により放出することができる。前記のカプセルは、特に無機ガラスから製造されていてよく、外側からの不動態化された又はカプセル化された粒子及びそのような物の粉砕により製造されていてよい。これを達成するための適切な手法は、以下のものが含まれる:外側に設置されたソノトロードによる超音波の作用、設置/施設の際に断熱アッセンブリを覆う最も外側のカバーの屈曲、断熱アセンブリ、又はこれらに導入されたホース及びそのような物の周囲の中空カバーの膨らみ(断熱アッセンブリにおける圧力)などがあり、これによりカプセル化が壊され、かつ圧力の減少が行われる。
【0137】
上記の引き金になるメカニズムの多くは、1つ以上の通常の固体又は液体材料のカバーに基づき、充填ガスと自由に接触する際に自発的に物理化学的プロセスが行われ、それによりガスモルの数が減少する。従って、ガス圧を減少させる媒体を活性可能なようにカバーを準備し、その結果ガスモルの数を減らすプロセスの引き金のコントロールが達成される。まず、覆うことはこれを妨げる。そうでない場合には、自発的プロセス及びこのような周囲圧力の条件で、又は所望の断熱効果を達成するために既に生産された効力のある断熱アッセンブリで必要とするよりも幾分高いガス圧で全体の断熱アッセンブリの簡単な生産を提供する。
【0138】
例えば、ガス圧を下げるための媒体は、塩基性物質、重合触媒/開始剤又は金属及び/又は金属合金を覆うカバー物質の提供により活性化可能であるように準備される。引き金になるメカニズムの運転は、カバー物質により形成されるカバーのバリア特性を引き起こし、予め説明したプロセス(例えば、反応、吸収又は吸着)が行われるように変化させ、その結果、断熱層内のガス圧の減少を生じる。
【0139】
作用物質の周囲のカバー物質により形成されるカバーは、本発明の有利な変性によれば、出来るだけ僅かなガス透過性を有し、それにより真空断熱系を生産するための部材の長い貯蔵性が保証される。ガス透過性は、カバー材料の種類及びカバーの厚さに左右され、その際に、厚いカバーは一般的に僅かなガス透過性につながる。しかし、正確なガス透過性は用途の種類及び予定する貯蔵期間による。多くの適用に関しては、カバーは比較的に高いガス透過性を有することができる。従って、反応に用意されるガス下に、少なくとも2時間の観察時間の後に活性化の前に最大で5%の圧力減少を示す、ガス圧を減少させる媒体を有すれば多くの場合に十分である。有利には、圧力低下は、少なくとも2時間の観察時間の後に最大で2%、より有利には最大で1%である。これらの値は25℃で測定され、その際にガス圧を減少させる媒体が活性化されない。この場合の初期ガス圧は1000mbarであり、ガスは反応に用意したガスを少なくとも99.5体積%有する。
【0140】
この値は断熱層中に存在するガスに対し、かつガス圧を減少させる媒体を活性化した後に、この媒体により吸収及び/又は吸着され、かつ/又はこの媒体と反応する。有利には、酸性ガス、特に二酸化炭素が使用されるので、これらの値は特に二酸化炭素の透過率に関連する。
【0141】
ガス圧を減少させる媒体の活性化により、カバー物質によって作用物質の周囲に形成されるカバーはガス透過性になる。これに関連して、このカバーはプロセスにおいて完全に崩壊され得ることにも留意するのがよい。活性化後に、場合により作用物質の周囲に存在するカバーの透過率は上がる。従って、活性化後の圧力減少は、活性化前の開始ガス圧に対して、少なくとも2時間後に少なくとも10%である。この場合に2時間の期間は、活性化の開始時間に関する。有利には、圧力減少は少なくとも2時間の時間後に少なくとも20%、特に有利には少なくとも50%である。これらの値を決定するために、出発ガス圧は有利には少なくとも900mbarであり、その際に活性化前の断熱層中に存在するガスは、反応に用意されたガス、有利には酸性ガス、更に有利には二酸化炭素の少なくとも99.5体積%を有する。この場合に圧力は25℃の温度に関するのが有利である。
【0142】
特殊な変法によれば、ガス圧を減少させる媒体のカバーのガス透過性による圧力減少は、活性化後に大幅に増大させることができる。従って、活性化後の圧力減少と、活性化前の圧力減少から得られる比率は、予め断熱層中に存在するガスに対して、少なくとも2、特に有利には少なくとも10、とりわけ有利には少なくとも100であり、かつそれぞれの場合の観察時間は少なくとも2時間であり、その際に、圧力の記載はその都度25℃の温度に対する。
【0143】
カバー物質は、例えば加熱により溶融する結果カバーが分解するワックス又は他の物質であることができる。例えば、ワックスにより予め覆われた塩基性物質は二酸化炭素と反応する。カバー物質として使用できる有利な物質は、30〜150℃の範囲内、より有利には50℃〜70℃の範囲内の融点を有する。有利なカバー物質には、特にワックス、パラフィン、脂肪、油、脂肪族アルコール、脂肪酸、アカシアゴム、アラビアゴム、ポリエチレングリコール及びそれらのコポリマー、ならびにこれらのクラスの2つ以上の混合物が含まれる。カバー物質の例は次のものである:ステアリン酸(約70℃の融点)、パルミチン酸及びマルガリン酸(約62℃の融点)、全てのタイプのVestowax
(R)(約90〜120℃の融点、製造者Evonik Tego GmbH社製)、パーム油(融点約27〜45℃)、蜜ろう(融点62〜65℃)、カルナウバ蝋(融点80〜87℃)、ウールワックス(ラノリン、融点40℃)、セレシン(融点約62〜80℃)。上記の全ての脂肪酸、脂肪、天然ワックスは、複数の製造者から得られる。パラフィンワックスは、特にサゾール(Sasol)社、Shell社から得られ、その他の殆ど全ての石油加工企業は多数の商標名で得られる。
【0144】
その活性化メカニズムがカバー物質の溶融を含むカバーの場合には、圧力が減少する全体のプロセスにわたり、圧力が予定した値まで落ちる前に作用物質の周囲に新たなカバーを形成しないようにカバー物質に多くのエネルギー、より有利には熱を供給するのが有利である。ガス圧を減少させる媒体を使用する場合(活性化メカニズムは、カバー物質の溶融を含む)には、これらの媒体と、溶融したカバー物質を吸収できる物質との混合により意外な利点を達成できる。これらの物質には、特に多孔性材料、例えば先に説明した多孔性無機担体材料が含まれる。このような物質が使用される場合には、ガス圧を減少させる媒体:溶融カバー物質を吸収できる物質の比は、100:1〜1:100の範囲内、有利には10:1〜1:10の範囲内、特に有利には2:1〜1:2の範囲内であることができる。特に関心のある実施態様は、ガス圧を減少させる媒体と、溶融したカバー物質を吸収できる物質が、その都度粒子状に形成され、かつ細かく混合されるものである。
【0145】
更に、例えばカバー物質を冷却により脆化させることができるので、例えば塩基性物質用に形成されたカバーは崩壊される。このカバーの崩壊は、例えば先に説明したように機械的作用により増強させることができる。崩壊する材料の例は、特にプラスチック、多くのワックス及び脂肪、ならびにタンパク質及びこれらを構成する材料である。脆化は、有利には20℃を下回る範囲内の温度、有利には5℃を下回る範囲内の温度、なお有利には−30℃を下回る範囲内の温度で達成できる。
【0146】
カバー物質と作用物質の重量比は、カバーの使用により活性化が達成される場合には広い制限の範囲内にあることができる。例えばカバー材料の種類のようなその他の因子を考慮しない限り、カバーが厚いほど、一般的にガス透過性は少なくなる。他方で、場合によっては、極めて厚いカバーは活性化に関して問題を生じる。それというのも、活性化の際にカバーの気密性を著しく下げなくてはならないからである。従って多くの目的で、ガス圧を減少させる媒体を使用するのが有利であり、その際に、圧力を減少させるための媒体がカバー物質を有する場合には、作用物質とカバー物質の重量比は、50:1〜1:10の範囲内、有利には10:1〜1:1の範囲内、特に有利には5:1〜2:1の範囲内である。
【0147】
特別な実施態様によれば、ガス圧を減少させる媒体はカバーを有する。この作用物質のカプセル化は、例えばマトリックスのカプセル化及び/又はコア−シェル−カプセル化により行うことができる。覆い又はカプセル化を特徴とする系の生産は、従来技術から広く周知である。このために様々な方法、特にコアセルベーション、RESS、GAS及び/又はPGSS−法及び同軸ノズル、噴霧乾燥、流動床コーティングを用いるプロセスならびにマイクロカプセル化が適切である。更に、多孔性担体材料が使用される場合には、作用物質で充填された孔を閉じることができる。孔を作用物質で閉じることは、多孔性担体材料を作用物質で装填する方法と同じように行うことができる。
【0148】
重合触媒又は重合開始剤に関しては、多くのラジカル形成剤の半減期が温度によることに留意すべきである。従って、ガス圧を減少させる媒体は、重合触媒又は開始剤から成ることもでき、これはラジカル形成下に目標を定めて加熱され、その際に形成されるラジカルは断熱層中の重合可能なガスを重合する。種々の温度での予め説明した開始剤の半減期は公知である。相応する高さの温度までの加熱は、通常は上記重合反応を引き起こすのに十分な数のラジカルを生じ、これが圧力の減少につながる。
【0149】
多くの場合には、ガス圧を減少させる媒体の予定した活性化メカニズムは不可逆的である。本発明の有利な態様によれば、該部材はガス圧を減少させる媒体を幾つか有していてもよく、これは種々のメカニズム又は種々の作用により目標を定めて活性化させることができる。この態様により、圧力を減少させるプロセスを繰り返し行うことができるようになる。例えば、整備、修復又はそのようなものの後に、予め記載したプロセスにより、すなわち反応、吸収又は吸着により新たに真空を形成できるようにすることが合理的である。これらの実施態様では、試験又は修復された断熱系の断熱層は、初めに適切なガスでフラッシュされ、これは気密に断熱層を閉じた後に反応し、予め記載した方法で化学的又は物理的プロセスにより断熱層から反応、吸収又は吸着される。
【0150】
もう1つの変法によれば、種々のメカニズム又は種々の作用により目標を定めて活性化可能であるガス圧を減少させるための様々な媒体を使用する際に、例えば、初めに比較的に少量だけの作用物質と、断熱層中に存在するガスを反応させることにより、過剰な局所的加熱を避けることができる。更なる工程では、相応の冷却によりガス圧を減少させるための更なる媒体が活性される。
【0151】
ガス圧を減少させるための複数の種々の媒体を有する態様により、極めて長い期間にわたり、更に低いガス圧を保証することができる。この場合には、ガス圧を減少させる媒体は作用物質とは異なっていてよい。従って、第一の工程では断熱層中に存在するガス、特に酸性ガス、有利には二酸化炭素の主な部分は、初めに作用物質、有利には塩基性物質と反応し、それにより極めて僅かなガス圧を達成することができる。このガス圧は、有利には最大で50mbar、特に有利には最大で10mbar、とりわけ有利には最大で1mbarである。
【0152】
後の工程では、断熱層中に存在し得る酸素、窒素又は二酸化炭素以外の残分は、更なる作用物質により結合させることができる。断熱層は、活性化前にこれらのガスを少量の割合で含有していてもよい。従って、この部材を生産するために、酸性ガス、特に比較的に低い純度を有する二酸化炭素を使用してもよい。断熱層中の希ガス、特にアルゴンの割合は、最大で0.1体積%、特に有利には最大で0.01体積%、とりわけ有利には最大で0.001体積%である。一般的な工業的グレードの二酸化炭素は、極わずかな希ガスの含有量を有する。更に、酸素又は窒素のようなガスは拡散の結果、一定時間後に断熱層中に形成される。ガス圧を減少させる更なる媒体は、作用物質として、例えばリチウムを有するか又はこれらのガス、特に窒素もしくは酸素に結合するその他の物質を有する。この態様によれば、特に効率的な方法で優れた性能を有する真空断熱系を得ることができる。それに応じて特に有利な系は、活性及び作用物質が異なるガス圧を減少させるための少なくとも2種の媒体を有することに特徴付けられる。
【0153】
従って、有利な変法はガス圧を減少させるための少なくとも2種の異なる媒体を有していてよく、その際に、これは作用物質において異なっているのが有利である。この場合に関心のある変法は、塩基性物質の他に、更なる作用物質、例えば窒素又は酸素を結合する物質を有しているものである。特に有利なことは、塩基性物質:有利に窒素又は酸素に結合する他の作用物質の重量比が、10000:1〜10:1の範囲内、特に有利には1000:1〜50:1の範囲内である場合に意外にも達成される。
【0154】
本発明による部材は、特に真空断熱系を製造するために使用される。真空断熱系という用語は、その遮断性が真空により改善される熱により遮断された系を意味する。これに関連して真空とは、断熱材料中の絶対圧が有利には500mbar以下、特に有利には50mbar以下、更に有利には10mbar以下、とりわけ有利には10mbar以下であることを意味する。これにより、断熱材料の熱伝導率は相当に減少する。
【0155】
有利な真空断熱系は、特に冷たい流体、特に最大で−40℃、特に有利には最大で−100℃、とりわけ有利には−150℃以下の温度を有する液体を輸送するために使用される。
【0156】
冷たい流体の他に、本発明によるライン系は熱い流体、すなわち約25℃の室温を上回る温度を有する流体を輸送するためにも使用できる。熱い流体の温度は、少なくとも50℃、特に有利には少なくとも80℃を有するのが有利である。
【0157】
予め記載した有利なライン系は、流体を運搬できる少なくとも1つのライン又はラインアッセンブリを有する。
【0158】
本発明の範囲内では、ラインアッセンブリという用語は、少なくとも2種の異なるラインを有する系を意味する。例えば、ラインアッセンブリは、液体又はガスを輸送できる2種以上の内部ラインを有していてもよい。更に、ラインアッセンブリは、液体及び/又はガスを輸送するための少なくとも1つの内部ラインと、少なくとも1つのデータライン及び/又は電力ラインを有していてもよい。特に有利なラインアッセンブリは、材料を輸送するための少なくとも2つの内部ラインと、少なくとも1つのデータライン及び/又は電力ラインを有する。
【0159】
一般的に、これらのライン又はラインアッセンブリは少なくとも1つの内部ラインと、外部ジャケットを含み、その際に、冷たい又は熱い流体は内部ラインを通して導通され、かつ外部ジャケットは環境に対してラインを閉じるので、内部ラインと外部ジャケットの間に真空が形成される。それに応じて、外部ジャケットは特に抑制効果を得るために利用される。
【0160】
バリア特性を改善するために、外部ジャケットに金属層を用意することができる。この金属層は、例えば金属含有ラッカーにより、又は金属フォイルにより金属の蒸発により塗布できる。これは、外表面、内表面又は両方において実施できる。
【0161】
相応する材料の選択により、真空系のライン又はラインアッセンブリを室温で柔軟に準備するのに役立つ。内部ライン及び外部ジャケットを製造するための材料は一般的に公知であり、その際に、これらは特に上記の出版物に挙げられている。有利には、本発明による断熱系のライン又はラインアッセンブリは、20m未満、特に有利には10m未満、更に有利には5m未満、とりわけ有利には1.5m未満の許容曲げ半径を有することができる。曲げ半径は、ライン又はラインアッセンブリに損害を与えずに達成できる最大曲げ率から得られる。損害とは、系が目的にそぐわないことを意味する。
【0162】
上記のラインアッセンブリの他に、特に冷たい又は熱い流体、すなわちガスもしくは液体を運搬するために有用な物の他に、本発明による部材は多くの目的で使用できる。
【0163】
例えば、本発明による部材は、地域暖房、プロセス蒸気系及びその他の熱輸送系の分野、断熱建物、建設技術、熱い水道水ならびに加熱目的の水を通すためのパイプラインを遮断するため、特に工業的目的で使用するための反応器及び装置の組立てにおいて、PCMストアの製造、輸送媒体、特に冷蔵車、飛行機、又は冷却又は加熱技術の他の用途で使用することができる。この場合に比較的に低い値段、優れた加工性及び取扱い性ゆえに、部材を多岐に渡り使用できる。従って、例えば冷蔵庫及び冷凍庫は簡単な方法で製造でき、その際に、複雑な形状でさえも製造の際に長いサイクル時間を受ける必要がなく、安全にかつ簡単に断熱できる。
【0164】
本発明の実施態様を例を用いて説明することにするが、これらに限定されるわけではない。
【0165】
例1
以下の試験では、NaOH上でのCO
2吸収により達成された圧力低下が、断熱材料の熱伝導率を下げることを示した。このために断熱材料をその内側に装入しておいた真空に適切な気密ステンレススチール容器を使用した。これらの断熱材料の熱伝導率は、ホットワイヤー法により測定した(参照:Ebert H. -P., Bock V., Nilsson O., Fricke J.: The Hot-Wire Method Applied to Porous Materials of Low Thermal Conductivity. High Temp-High Press 1993 (25) 391-402)。
【0166】
容器の内部には第二の気密な容器が存在し、その内容積は、外部容器の内容積の1/10であった。内部容器の内容積はバルブを介して外部容器の内容積と連絡できたので、バルブが閉じる場合には、2つのガス空間は互いに分離され、かつバルブが開かれると2つのガス空間は互いに通じた。該バルブは、外部容器の外側から操作できた。従って、圧力減少の媒体は機械的に活性可能であった。
【0167】
外部容器の内部空間には、断熱材料としてシリカとカーボンブラックから成る混合物(Sipernat
(R) 22LS80体積部とFlammruss F101
(R) lamp black20体積部、両者ともエボニック・デグサ社製)を導入した。
【0168】
更に、CO
2を吸収するための不活性材料上に担持した市販のNaOH(Merck 101564: 元素分析用の担体上の水酸化ナトリウム、粒子サイズ1.6〜3mm)1体積部と、シリカ(例えば、エボニック・デグサ社製のAerosil
(R) A300)2体積部から成る混合物で内部容器を充填した。
【0169】
次に、内部容器と外部容器の間に用意しておいたバルブを開き、かつ全体の設備を約1hPaまで機械的に排気した。この低い圧力で真空ポンプを運転しながらこの配置を1時間保持した。
【0170】
その後に、内部容器と外部容器の間に用意しておいたバルブを閉じ、かつ室温で全体の圧力が約1000hpaに達するまで外部容器のガス容積にCO
2を満たした。
【0171】
内部容器中のNaOH:断熱空間に存在するCO
2のモル使用比は、4:1であった。
【0172】
室温で全圧1000hpaでのCO
2雰囲気下では、22mW/(m*k)の断熱材料の熱伝導率が測定された。
【0173】
この状態で系を24時間観察した。外部容器中でガス圧の変化は生じず、同様に断熱材料の熱伝導率も一定のままであった。
【0174】
引き続きバルブを開けた。70秒間の間に、外部容器中のガス圧は約1000hPaから約600hPaに下がり、その2時間後にこの値は20hPaに下がり、かつ4時間後には最後に3hPa未満に達した。この圧力減少の経過で、断熱材料の熱伝導率は2mW/(m*k)まで下がった。すなわち、標準圧での値と比べて90%以上下がった。
【0175】
例2
例1を実質的に繰り返したが、不活性材料上に担持したカプセル化無し又はカバー無しのNaOH粒子の代わりに、溶融可能なカバーを有する粒子と取り替えた。それに応じて、圧力を減少させる媒体は熱的に活性可能であった。
【0176】
これらの粒子は、ステアリン酸層を有する例1に記載された粒子(不活性多孔性担体上のNaOH、粒子サイズ1.6〜3mm;Merck 101564:担体上の水酸化ナトリウム、元素分析用)を用意して得られた。このために、これらの粒子(導入したNaOHの全体量は6g)をステアリン酸(全体量2g)でカプセル化した。このために材料を混合し、かつニーダー中100℃で2時間混合した。
【0177】
得られた熱的に活性化可能な粒子を、粉末状の断熱材料(カーボンブラック、シリカ、タルク)3gと混合し、かつ気密に密封した。引き続き、外部ガス容積を二酸化炭素で充填した。このためにガス容積を1mbar未満の圧力になるまでポンプで3回排気し、かつCO
2でガス処理した(99.9体積%)。
【0178】
ガス交換の後に、全ガス圧は約998mbarであった。その後に、気密容器、カプセル化した粒子を加熱した。75℃以上に気密容器を加熱した後に、圧力における連続的な減少が生じた。約100分後にガス圧は24mbarまで下がった。実験を終了した。
【0179】
例3
例2を実質的に繰り返したが、上記の粒子の代わりに、カバー物質を多く含む圧力を減少させる媒体と置き換えた。
【0180】
この粒子を製造するために、エタノール(99.8%)100ml中にNaOH(無水)10gを溶かし、その後に、20gのSipernat
(R)50を撹拌しながら少しずつ加えた。得られた組成物を1時間ホモジナイズした。次に、この組成物を70℃で24時間乾燥させ、その際に、固体粒子は約33質量%のNaOHを含有していた。引き続き、これらの粒子(30g)をニーダー中100℃でパラフィン(Sasol社製Sasolwax
(R) 6037)20gと2時間混合し、カプセル化を達成した。
【0181】
得られた粒子(NaOH6gに相当)を粉末状の断熱材料(カーボンブラック、シリカ、タルク)3gと混合し、かつ例1の測定装置に導入した。容器中に含有されている空気を二酸化炭素と交換した。このために、容器を1mbar以下の圧力になるまでポンプで3回排気し、かつCO
2ガス(99.9体積%)で処理した。
【0182】
ガスを交換した後に、全ガス圧は約993mbarであった。この後に、気密な容器及びカプセル化した粒子を加熱した。気密な容器を90℃以上まで加熱した後に、圧力の連続的な減少が生じた。約90分後に、ガス圧は36mbarに減少した。実験を終了した。