特許第5730215号(P5730215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5730215-ガラスをコーティングする方法及び装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730215
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】ガラスをコーティングする方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/25 20060101AFI20150514BHJP
【FI】
   C03C17/25 Z
   C03C17/25 B
【請求項の数】22
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-542855(P2011-542855)
(86)(22)【出願日】2009年12月21日
(65)【公表番号】特表2012-513368(P2012-513368A)
(43)【公表日】2012年6月14日
(86)【国際出願番号】FI2009051022
(87)【国際公開番号】WO2010072898
(87)【国際公開日】20100701
【審査請求日】2012年9月26日
(31)【優先権主張番号】20080675
(32)【優先日】2008年12月23日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】506425734
【氏名又は名称】ベネク・オサケユキテュア
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100139642
【弁理士】
【氏名又は名称】相馬 貴昌
(72)【発明者】
【氏名】ラヤラ,マルック
(72)【発明者】
【氏名】セッペレイネン,エルキ
(72)【発明者】
【氏名】コレリン,トニ
【審査官】 國方 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−034050(JP,A)
【文献】 特開平05−124837(JP,A)
【文献】 特開昭54−116017(JP,A)
【文献】 米国特許第3689304(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/00−17/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にその上に被膜を形成するガラス基板表面(10)の少なくとも一部の上もしくは近くで反応する1種以上の液体原料を使用することによってガラス基板(2)をコーティングする方法であって、
a)ガラス基板(2)を実質的にコーティング温度以上の温度に加熱する工程;
b)1種以上の液体原料を液体エアロゾルに変換し、そして該液体エアロゾルの少なくともごく少量を前記ガラス基板表面(10)の一部の上に堆積させることによってガラス基板表面(10)上に被膜を形成させる工程;
c)工程b)を1回以上繰り返す工程;及び
d)少なくとも1回の工程b)の前にガラス基板表面(10)を加熱する工程;を含み、工程d)におけるガラス基板表面(10)の加熱を、熱伝達が少なくとも10kW/mであるように前記ガラス基板表面(10)に一以上の衝突するガス噴流を向けることによる強制対流加熱によって行うことを特徴とする前記方法。
【請求項2】
前記強制対流加熱工程d)を第1回目の工程b)の前または後で行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記強制対流加熱工程d)を、工程b)のうちの少なくとも2回の工程b)の間で行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記強制対流加熱工程d)を繰り返される工程b)の間ごとに行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1回の強制対流加熱工程が100W/mK以上の対流熱伝達係数を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程d)においてガラス基板表面(10)を実質的にコーティング温度に、又は工程a)において加熱されるガラス基板(2)より高い温度に加熱することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ガラス基板表面(10)を600℃以上に加熱することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
液体−エアロゾルを形成させるために二流体噴霧器を使用することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
液体原料を10μm以下の平均液滴直径を有する液滴に霧化することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程a)においてガラス基板(2)をガラス基板(2)のアニール温度以上に加熱することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程a)においてガラス基板(2)を100℃以上に、好ましくは200℃以上に、最も好ましくは300℃以上に加熱することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ガラス基板(2)上に熱分解により被膜を形成させるための装置であって、
ガラス基板(2)を、コーティング経路に沿って下流方向に移送するためのコンベヤー手段(4);
1種以上の液体物質を液体−エアロゾルに変換し、ガラス基板(2)上に被膜を形成するよう液体−エアロゾルをガラス基板(2)上に噴霧するための、コーティング経路に沿って連続的に配置された少なくとも2つのコーティングユニット(5);
ガラス基板(2)を、被膜を形成させる前に、ガラス基板(2)を実質的にコーティング温度以上の温度に加熱するためのガラス基板加熱手段(3);及び、
ガラス基板表面(10)を加熱するための1つ以上のガラス基板表面加熱手段(8);
を含み、ガラス基板表面加熱手段(8)が、少なくとも10kW/m以上の熱伝達をもたらすためにガス噴流をガラス基板表面(10)の方へ向けることによりガラス基板(2)の強制対流加熱をつくり出すうに配置されていることを特徴とする前記装置(1)。
【請求項13】
ガラス基板表面加熱手段(8)がコーティングユニットの1つの前または後に配置されていることを特徴とする、請求項12に記載の装置(1)。
【請求項14】
ガラス基板表面加熱手段(8)が2つのコーティングユニット(5)の間に配置されていることを特徴とする、請求項12または13に記載の装置(1)。
【請求項15】
ガラス基板表面加熱手段(8)が連続したコーティングユニット(5)の間ごとに配置されていることを特徴とする、請求項12または13に記載の装置(1)。
【請求項16】
ガラス基板表面加熱手段(8)が、ガス流れをつくり出すための、そして該ガス流れをガラス基板表面(10)の方へ向けるための1つ以上のガス噴流を含むことを特徴とする、請求項12に記載の装置(1)。
【請求項17】
ガラス基板表面加熱手段(8)が、ガラス基板表面(10)を、実質的にコーティング温度に、又はガラス基板加熱手段(3)で加熱されるガラス基板(2)より高い温度に加熱するように配置されていることを特徴とする、請求項12〜16のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項18】
ガラス基板表面加熱手段(8)の少なくとも1つが100W/mK以上の対流熱伝達係数hをもたらすことを特徴とする、請求項12〜17のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項19】
コーティングユニット(5)が、液体原料を液体−エアロゾルに変換するための1つ以上の二流体噴霧器を含むことを特徴とする、請求項12〜18のいずれか一項に装置(1)。
【請求項20】
コーティングユニット(5)が、液体原料を10μm以下の平均液滴直径を有する液滴に霧化するように配置されていることを特徴とする、請求項12〜19のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項21】
装置(1)がガラス製造ラインに配置されていることを特徴とする、請求項12〜20のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項22】
装置(1)がスズ浴(3)とガラスアニール炉(9)との間に位置していることを特徴とする、請求項21に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、請求項1の前文に従ってガラス基板をコーティングするための方法、具体的には、その上に被膜(coating)を形成するガラス基板表面の少なくとも一部の上もしくは近くで実質的に反応する1種以上の液体原料を使用することによってガラス基板をコーティングする方法に関する。該方法は、a)ガラス基板を少なくとも実質的にコーティング温度に加熱する工程;b)1種以上の液体原料を液体エアロゾルに変換し、そして該液体エアロゾルの少なくともごく少量を該ガラス基板表面の該一部上に堆積(deposit)させることによってガラス基板表面上に被膜を形成させる工程;c)工程b)を1回以上繰り返す工程;及びd)少なくとも1回の工程b)の前にガラス基板表面を加熱する工程;を含む。本発明はさらに、請求項14の前文に従ってガラス基板上に被膜を形成させるための装置、具体的には、ガラス基板上に熱分解により被膜を形成させるための装置に関する。該装置は、ガラス基板を、コーティング経路に沿って下流方向に移送するためのコンベヤー手段;1種以上の液体物質を液体−エアロゾルに変換し、ガラス基板上に被膜を形成するよう液体−エアロゾルをガラス基板上に噴霧するための、コーティング経路に沿って連続的に配置された少なくとも2つのコーティングユニット;ガラス基板を、被膜を形成させる前に、ガラス基板の実質的にコーティング温度以上の温度に加熱するためのガラス基板加熱手段;及び、ガラス基板表面を加熱するための1つ以上のガラス基板表面加熱手段;を含む。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
被覆ガラスは種々の目的のために製造されており、その被膜は、ガラスにある特定の望ましい特性を付与するように選定される。建築用ガラスや自動車用ガラス向けの被膜の重要な例は、赤外線に関して被覆面の放射率を低減するように設計された被膜〔低放射率被膜(low−e coatings)〕;全太陽エネルギー透過率を低減するように設計された被膜;及び、親水性もしくは自浄式のガラス表面をもたらすように設計された被膜;である。太陽光発電向けには、透明導電性酸化物(TCO)被膜を有するガラスが極めて重要である。例えば、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)又はアルミニウムをドープした酸化亜鉛の被膜は、TCO被膜や低放射率被膜向けにかなり役立ち、酸化チタンの被膜(特に、アナターゼ結晶構造を有するもの)は自浄式コーティング向けに役立ち、鉄−コバルト−クロム系酸化物の被膜は近赤外線反射被膜向けに役立つ、ということが知られている。
【0003】
ガラス上の被膜は、2つの異なるグループ(軟質被膜と硬質被膜)に分けることができる。軟質被膜は通常、スパッタリングによって付与され、ガラス表面に対する軟質被膜の堆積性は、どちらかと言えば良くない。優れた堆積性と高い耐摩耗性を通常有する硬質被膜は、一般的には熱分解法〔例えば、化学蒸着(CVD)や噴霧熱分解〕によって施される。
【0004】
CVDでは、蒸気相中にコーティング前駆体物質が存在し、この蒸気相をコーティングチャンバー中に流入させ、蒸気相が十分に制御された均一状態で流れていくとともに基板がコーティングされる。被膜形成速度はかなり遅く、被膜の成長速度は通常、温度が上昇するにつれて指数関数的に増加するので、このプロセスは、一般に650℃を超える温度で行われる。このような相当の高温が要求されるために、CVD法は、フロートガラス法の外側で行われるガラスコーティング操作のために(すなわち、オフラインのコーティング操作のために)いくぶん不適切なものとなる。
【0005】
厚い被膜(一般には400nm以上の厚さを有する被膜)を約650℃以下の温度で形成させるためには、コーティング前駆体溶液の小滴のストリームを基板上に噴霧するための噴霧コーティング装置を使用するのが普通である。しかしながら、従来の噴霧熱分解システムは、急な温度勾配の生起や被膜の均一性や品質に関する問題などの多くの欠点を有する。本出願者による現在非公開のフィンランド特許出願FI20071003とFI20080217に記載のように、液滴のサイズを小さくすることによって、このプロセスに対する大幅な改良を達成することができる。
【0006】
被膜形成プロセスは表面温度のアレニウス型関数であり、従って速い被膜成長速度を得るには高いガラス表面温度が必要とされる。BTUエンジニアリング・コーポレーションの米国特許第5,124,180号明細書(1992年6月23日発行)は、基板の表面を加熱する工程;金属酸化物前駆体と酸素含有薬剤とビニルフッ素を含有するドーパントとを含む蒸気と該表面とを接触させる工程;及び、該蒸気を熱により反応させてフッ素含有金属酸化物を生成させる工程;を含む、実質的に曇りのないフッ素ドープした金属酸化物被膜を基板上に製造する方法を説明している。該米国特許はさらに、均一な金属酸化物薄膜を基板上に製造するための装置を説明している。この装置は、基板を約450〜600℃に加熱するための加熱器;及び、加熱された基板をインジェクターヘッドに隣接した反応ゾーンに移送するためのコンベヤー;を含む。従って実際には、基板の表面だけでなく基板全体が加熱される。加熱メカニズムについては説明されていないが、該特許の図1Aは、加熱器が移送基板の下に配置されていることを示している。
【0007】
Glaverbelの米国特許第4,917,717号明細書(1990年4月17日発行)は、高温ガラス基板の上表面に金属化合物の被膜を熱分解により形成させるための装置を説明している。この装置は、液体原料を噴霧するための手段、及び噴霧ゾーンに熱を供給するための加熱手段を含む。コーティングチャンバーの噴霧ゾーンを加熱してコーティング前駆体物質の一部を揮発させると、前駆体物質が基板に到達し、噴霧ゾーン中の雰囲気は気化したコーティング前駆体物質で満たされる。
【0008】
液体-エアロゾルベースの被膜(すなわち、前駆体物質がガスと液滴の両方を含む)は一般に、液体の蒸発に熱が必要となるために、蒸気ベースの被膜より多くの熱を必要とする。噴霧コーティング(液滴が大きく、一般には約100μmの直径を有する)は、かなり多くの蒸発エネルギーを必要とするので、噴霧コーティングプロセスは通常、フロートガラスの製造やガラス焼き戻しのような高速プロセスに適用することができない。
【0009】
コーティングプロセスの間、ガラス表面は冷却される。効果的な多段階コーティングを行おうとすると、冷却効果は弱められることになる。ガラスの変形を避けるために、ガラスは、その表面からのみ加熱すべきである。Glaverbelの米国特許第4,655,810号明細書(1987年4月7日発行)は、表面を1100℃未満の黒体温度を有する1つ以上の輻射加熱器に曝露することによって、ガラスの表面層を加熱することを説明している。米国特許第4,536,204号明細書(1985年8月20日発行)には、類似の加熱対策も記載されている。当業者によく知られているように、ソーダ石灰ガラスは、2.5μmより短い波長に対して高い透明度を有する。従ってガラスの表面層だけを加熱する効率的な輻射加熱器は、これより長い波長で(すなわち900℃未満の温度で)稼働しなければならない。コーティングプロセスは約600℃の温度で行うことが多い。従って正味の加熱出力は約70kW/mより低い。
【0010】
透明導電性酸化物(TCO)被膜を製造する場合は、放射加熱を使用することができない。なぜなら、被膜が赤外線を反射し、従ってガラス表面が効果的に加熱されないからである。
【0011】
サンゴバン・インダストリーズ社(Saint−Gobain Industries)の英国特許出願公開第2016444号明細書(1979年9月26日発行)は、フロート炉を出ていくガラス表面を一掃する火炎によってガラスの表面温度を調整することを説明している。このような加熱は、被膜を上に有するガラスには使用することができない。なぜなら、被膜の安定温度が火炎温度未満だからである。
【0012】
フロート製造プロセス中、あるいは高速オフラインコーティングシステムにおいて、熱分解被膜をオンラインで製造するのが好ましい。このようなラインでは、ガラスの速度は、一般には5m/分〜50m/分である。しばしば薄膜が必要とされる。すなわち、光起電性(PV)用途向けガラス上の高効率TCO被膜に対する被膜厚さは約1μmであってよい。種々のケースにおいて、多重被膜が必要とされることがある。すなわち、PV用途向けの積層被膜は、2つの下層と幾つかのTCO層を含んでよい。このような被膜の製造には、ガラス表面(被膜層を含んでよい)の多段階高速加熱が必要となる。このような加熱は、放射加熱のみによっては行うことができない。
【0013】
従って、先行技術による多段階の液体−エアロゾルコーティングプロセスと装置がもつ問題点は、ガラスの表面上に噴霧された液体−エアロゾルがガラス表面を冷却し、後続のコーティング段階に悪影響を及ぼす、という点である。先行技術の加熱器と加熱方法は、フロートガラス製造プロセス時にオンラインで行われる熱分解コーティングにおいて、あるいは、ガラスの速度が通常5m/分〜50m/分である高速オフラインコーティングシステムと方法において、ガラス表面を加熱する上で非効率的である。従って、ガラス表面の加熱を含む高速被膜形成が可能な、より優れた液体−エアロゾルベースのコーティングプロセスと装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】フィンランド特許出願FI20071003
【特許文献2】フィンランド特許出願FI20080217
【特許文献3】米国特許第5,124,180号明細書
【特許文献4】米国特許第4,917,717号明細書
【特許文献5】米国特許第4,655,810号明細書
【特許文献6】米国特許第4,536,204号明細書
【特許文献7】英国特許出願公開第2016444号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
発明の簡単な説明
本発明の目的は、上記先行技術の問題点を解消する方法と装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、請求項1の特徴部分に従った方法、具体的には、ガラス基板表面の加熱が対流加熱によって行われる方法によって達成される。本発明の目的はさらに、請求項14の特徴部分に従った装置によって、具体的には、ガラス基板表面の加熱手段が、対流によって熱エネルギーを基板表面に供給するように配置されている装置によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、フロートガラスプロセスにおいて被膜を形成させるための、本発明による装置の実施態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい実施態様が従属クレームに開示されている。
本発明の主たる目的は、ガラスをコーティングをする際(特に液体−エアロゾルをベースとする方法によってガラスをコーティングする際)に使用すべきプロセスであって、これにより均一な被膜を高い被膜成長速度で製造することが可能となるようなプロセスを導入することである。本発明の別の特徴は、ガラス上に均一な被膜を高い被膜成長速度で製造するための装置である。本発明の目的は、その上に被膜を形成するガラス表面の少なくとも一部上で実質的に反応する少なくとも液体原料を使用するプロセスによって達成される。このプロセスでは、高温ガラス基板(すなわち、コーティング温度を有するガラス基板、あるいは該ガラスのアニール点より高い温度を有するガラス基板)の表面が、ガラス体の温度以上に加熱されることになる。このような加熱は対流によって行うのが好ましい。なぜなら対流は、実質的にガラス表面を加熱し、ガラス体は、ガラス表面からの熱伝導と輻射によってのみ加熱され、従ってガラス体は、ガラス表面よりはるかにゆっくりと加熱されるからである。液体原材料は液滴と気体との混合物(すなわち液体−エアロゾル)に変換される。エアロゾルは、加熱ガラス表面の少なくとも一部上に堆積するが、このとき原材料が反応し、被膜が形成される。本発明は、任意の特定の被膜形成メカニズムに限定される。コーティングメカニズムは、例えば、気相中で液滴が気化してからガラス表面にぶつかり、気相から被膜の形成がなされるように実施され得る。被膜の形成は、ガラス表面の加熱とエアロゾルの堆積を繰り返すことを含む、2以上の段階で行うことができる。第一の工程は、加熱ガラス基板上へのエアロゾルの堆積であり、その後に表面加熱−エアロゾル堆積の1回以上のサイクルが実施されることは明らかである。あるいは、被膜は、ガラス基板上に堆積している液体−エアロゾルによって形成される。この場合は、液体−エアロゾル中の原材料が、被膜がガラス基板上に形成されるように、実質的にガラス表面上で反応する。このプロセスでは、本質的に液体−エアロゾルが表面上に堆積する直前にガラス表面が加熱される。
【0019】
ガラス表面の加熱により、ガラスが曲がったり、ガラスがコンベヤーローラーにくっついたり、さもなければガラス基板の光学的特性や他の特性が損なわれるようにガラスが作製されたりする程度に軟らかくなる温度より高い表面温度を適用することが可能となる。本質的にガラス表面加熱プロセスの直後に、液体−エアロゾルをガラス表面上に堆積させる。ガラスの表面が、噴霧、液体の蒸発、及び被膜の形成により引き起こされる対流によって冷却され、従って対流加熱によってガラス中に取り入れられたのと実質的に同じ熱量が、液体−エアロゾルの堆積と被膜形成によって取り出される。このことは、ガラス体(特にガラス体の反対面)がそれほど加熱されず、ガラス基板の特性が実質的には損なわれない、ということを意味している。典型的なフロートプロセスのソーダ石灰ガラスの場合、ガラス表面は、対流によって600℃以上に、好ましくは700℃以上に加熱される。
【0020】
ガラス表面は、対流を施すことによって効果的に加熱(又は冷却)することができる。本明細書中の文脈では、対流は、任意のガスの流れによる熱伝達であると定義される。ガスは、数種の異なるガスから構成されていてよく、蒸気(例えば水蒸気)を含有してよい。対流加熱のためのガス混合物を製造する好適な方法は、固体燃料、液体燃料、又はガス燃料を燃焼させるのにバーナーを使用し、且つ対流加熱用の燃焼ガスを使用する、というものである。ガラスが加熱されるときは、ガス流れによって熱が伝達される。次いで熱が、伝導と輻射を介してガラスの中に侵入する。
【0021】
対流によって熱が伝達される場合、プロセスの効率は主として、ガス流れの運動量及びガラスとガスとの間の温度差に依存する。例えば空気の流れによって引き起こされる自然対流と区別するために、意図的な対流加熱に対しては「強制対流」という用語がしばしば使用される。ガラス表面の加熱に対しては強制対流を使用するのが有利であり、最も好ましい方法は衝突するガス噴流を使用する方法である。
【0022】
対流熱伝達は式W/A=h(T−T)で表わされる。ここでhは熱伝達係数(W/mK)であり、Tは加熱用ガスの温度であり、Tは表面の温度である。効率的な加熱のためには、熱伝達W/Aが10kW/mより高くなければならず、50kW/mより高いのがさらに好ましく、100kW/mより高いのが最も好ましい。明らかに、熱伝達係数を調整する上で2つの選択肢がある。すなわち、熱伝達係数を調整すること;あるいはガス表面の温度を調整すること;である。実用性の観点から、できるだけ高い熱伝達係数hを使用するのが好ましい。高速衝突噴流を使用することによって、熱伝達係数を、好ましくは100W/mK以上に、さらに好ましくは300W/mK以上に、そして最も好ましくは500W/mK以上に増大させることができる。液体原材料を霧化してガスと混合し、これによって液体−エアロゾルを形成させる。高速ガス流によって液体を霧化させるという二流体噴霧器が、霧化のための好ましい手段である。好適な液滴密度を有するエアロゾルを一段階で形成させることができるからである。液滴の速やかな蒸発のためには、液体を、小さな液滴に(好ましくは、単峰性の液滴サイズ分布と10μm以下の平均液滴サイズを有する液滴に)霧化させるのが有利である。
【0023】
本発明の有利な点は、オンラインのフロートガラス製造プロセス時に、あるいはガラス速度が通常は5m/分〜50m/分である高速オフラインコーティングシステムと方法の中でガラス表面の効率的な加熱が可能になる、という点である。
【0024】
図面の簡単な説明
次に、添付の原理図面を参照しつつ本発明をさらに詳細に説明する。図1は、フロートガラスプロセスにおいて被膜を形成させるための、本発明による装置の実施態様を示す。
【0025】
わかりやすくするため、図1は、本発明を理解する上で必要な詳細のみを示している。本発明を理解する上で必要のない、そして当業者にとっては明らかである構造と詳細は、本発明の特徴を強調するために図面から省かれている。
【0026】
発明の詳細な説明
本発明によれば、高温のガラス基板表面上に被膜を製造するための方法は、ガラス基板表面の少なくとも一部上で実質的に反応する(これにより表面上に被膜が形成される)1種以上の液体原材料を使用する。この方法では、高温ガラス基板(すなわち、該ガラス基板のアニール点より高い温度を有するガラス基板)の表面を、ガラス体の温度より高い温度に加熱する。言い換えると、ガラス基板表面をガラス基板より高い温度に加熱する。ガラス基板表面とは、この文脈ではガラス基板の表面もしくは表面層を意味する。
【0027】
図1は、基本的には、フロートガラスプロセスにおいて、ガラスリボン(ガラス基板2)上に熱分解被膜を製造するのに装置1が使用される、という実施態様を示している。ガラス基板2が、ローラー4上に載って、コーティング経路に沿って下流方向に移送される。ガラス基板2がスズ浴3からコーティングセクションに達し、従ってフロートガラス製造プロセスにおいて、スズ浴3とガラスアニール炉9との間でコーティングが施される。コーティング経路における最初のコーティングユニット5が、ガラス基板2の上面10上に液体−エアロゾルを噴霧する。コーティングユニット5は、1つ以上の二流体噴霧器を含み、これらの噴霧器において、液体流れ6が高速窒素ガス流れ7によって霧化され、このとき噴霧器の先端におけるガス流れの速度は一般に50〜300m/sである。霧化に対しては、他のガス(霧化用ガス)も使用することができる。液体−エアロゾルプロセスの堆積により、ガラス基板の表面10が冷却され、このとき表面温度は曲線Tで概略的に示される。従って、コーティングユニット5によりガラス基板表面10上に液体−エアロゾルが噴霧され、熱分解被膜が形成される。ガラス基板表面加熱手段8が、最初のコーティングユニット5の後に、コーティング経路に配置される。図1からわかるように、コーティング経路に沿って連続的に配置された幾つかのコーティングユニット5があり、コーティングユニットの間にガラス基板加熱表面加熱手段8が配置されている。
【0028】
ガラス基板表面加熱手段8は、コーティングユニットの1つの前に配置することも、あるいは後に配置することもできる(例えば、最初のコーティングユニットの前、あるいは最後のコーティングユニットの後)。ガラス基板表面加熱手段8はさらに、任意の2つのコーティングユニット5の間に(好ましくは連続したコーティングユニット5ごとに)配置することもできる。ガラス基板表面加熱手段8は、1つ以上の衝突ガス噴流をガラス基板表面10に向けることによって強制対流を生じさせるように配置される。従ってガラス基板表面加熱手段8は、ガス流れをつくり出して、それをガラス基板表面10に向けるための1つ以上のガス噴流を含んでよい。ガラス基板加熱手段8の少なくとも1つが、10kW/m以上の熱伝達をもたらすように配置され、そしてさらに、ガラス基板加熱手段8の少なくとも1つが、ガラス基板表面10の十分な加熱を果たすために、100W/mK以上の対流熱伝達係数hをもたらすように配置される。
【0029】
ガラス基板表面加熱手段8(強制対流ユニット)は高速窒素−水蒸気流れを使用してよく、このときガスの温度は約650℃であり、ガス噴流の出口でのガス速度は30〜200m/sであって、図1の曲線Tに示すようにガラス表面が加熱される。次いで、所望の被膜厚さが得られるまで、ガラス基板表面10のコーティング−加熱を繰り返す。例えば透明導電性酸化物(TCO)被膜を製造する際の被膜厚さは300〜900nmであってよく、また例えば自浄式のアナターゼ被膜を製造する際の被膜厚さは15〜50nmであってよい。
【0030】
その上に被膜を形成するガラス基板表面10の少なくとも一部の上あるいは少なくとも一部の付近で実質的に反応する1種以上の液体原材料を使用することによってガラス基板2をコーティングするための本発明の方法は、幾つかの工程を含む。第一に、ガラス基板2(全ガラス基板)を、実質的にコーティング温度に、あるいは少なくともガラス基板2のアニール温度に加熱する。次いで、1種以上の液体物質を液体−エアロゾルに変換し、この液体−エアロゾルの少なくともごく少量をガラス基板表面10の前記一部の上に堆積させることによってガラス基板表面10上に被膜を形成させる。コーティング工程は、少なくとも1回であってよい。最初のコーティング工程の前、連続するコーティング工程の間、及び/又は最後のコーティング工程の後に、ガラス基板表面10をコーティング温度あるいはガラス基板2より高い温度に加熱する。従って、ガラス基板表面10の加熱は対流加熱によって行われる。
【0031】
ガラス基板2のコーティング温度は、得ようとする被膜とガラス基板の特性に依存する。例として、以下にコーティング材料とコーティング温度を記す。
【0032】
【表1】
【0033】
対流加熱は、最初のコーティング工程の前で後でも、少なくとも2つのコーティング工程の間でも、あるいは好ましくは繰り返されるコーティング工程の間ごとに行うこともできる。
【0034】
技術が進歩するにつれて、本発明の考え方は種々の方法で実施することができることは当業者にとって自明のことである。本発明と本発明の実施態様は、上記の例に限定されず、クレームの範囲内において様々に変動し得る。
【符号の説明】
【0035】
1 装置
2 ガラス基板
3 スズ浴
4 ローラー
5 コーティングユニット
6 液体流れ
7 窒素ガス流れ
8 ガラス基板表面加熱手段
9 ガラスアニール炉
10 ガラス基板表面
T 曲線
図1