特許第5730223号(P5730223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730223
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】コンバインド発電システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20060101AFI20150514BHJP
   H01M 8/12 20060101ALI20150514BHJP
   H01M 8/00 20060101ALI20150514BHJP
   F02C 6/00 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   H01M8/04 X
   H01M8/12
   H01M8/00 Z
   F02C6/00 E
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-17331(P2012-17331)
(22)【出願日】2012年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-157218(P2013-157218A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年9月10日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度〜平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体酸化物形燃料電池システム要素技術開発実用性向上のための技術開発 超効率運転のための高圧運転技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】古賀 重徳
(72)【発明者】
【氏名】寺本 雄一
【審査官】 高田 基史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−111127(JP,A)
【文献】 特開2005−135835(JP,A)
【文献】 特開2000−120406(JP,A)
【文献】 特開昭57−074522(JP,A)
【文献】 特開2010−146934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00
H01M 8/04−8/06
H01M 8/12
F02C 1/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と燃焼器を有するガスタービンと、
空気極及び燃料極を有する固体酸化物形燃料電池と、
前記圧縮機で圧縮された吐出空気を前記固体酸化物形燃料電池に供給する空気供給ラインと、
前記固体酸化物形燃料電池から排出された排出空気を前記燃焼器に供給する排出空気供給ラインと、
前記空気供給ラインと前記排出空気供給ラインとに接続され、前記空気供給ラインを流れる前記吐出空気の一部又は全部を、前記固体酸化物形燃料電池をバイパスして前記排出空気供給ラインに供給するバイパス流路とを有し、
前記空気供給ラインには、前記圧縮機側から順に、前記空気供給ラインと前記バイパス流路との接続部と、前記吐出空気の流量を調整する第一流量調整弁とが介装され、
前記排出空気供給ラインには、前記固体酸化物形燃料電池側から順に、前記排出空気の流れを遮断する第一開閉弁と、前記排出空気供給ラインと前記バイパス流路との接続部とが介装され、
前記バイパス流路には、第二流量調整弁が介装され、
更に、前記ガスタービンの出力の値を測定する出力測定装置と、
前記空気供給ラインの前記バイパス流路との接続部下流側の圧力の値を測定する圧力測定装置と、
前記固体酸化物形燃料電池に供給される前記吐出空気の流量を測定する流量測定装置と、
前記出力測定装置、前記圧力測定装置及び前記流量測定装置から出力されるそれぞれの測定値が入力されて、前記第一流量調整弁及び前記第二流量調整弁の開度を調整する制御装置とを有し、
前記第一流量調整弁と前記第一開閉弁とは全閉とされ、かつ前記第二流量調整弁が開放された起動前の状態から、
前記制御装置は、前記出力測定装置の測定値が、前記ガスタービンの下限出力となるように前記第一流量調整弁の開度を調整し、前記圧力測定装置の測定値が目標の圧力に達すると、前記第一開閉弁を開くと共に、前記流量測定装置の測定値に応じて前記第二流量調整弁の開度を調整して起動することを特徴とするコンバインド発電システム。
【請求項2】
前記第一流量調整弁の開度は、前記固体酸化物形燃料電池の圧力上昇に伴い大きくなるよう調整され、
前記圧力測定装置の測定値が、目標の圧力よりも低い所定の圧力に達すると、前記第一流量調整弁の開度の変化率を大きくすることを特徴とする請求項1に記載のコンバインド発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池及びガスタービンが結合された固体酸化物形燃料電池・ガスタービンコンバインド発電システムの固体酸化物形燃料電池の起動方法に関する。
【0002】
固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)は、用途の広い高効率な燃料電池として知られている。この固体酸化物形燃料電池は、固体電解質のイオン導電性を高めるために作動温度が高く設定されているため、ガスタービンとの相性がよい。このため、例えば、特許文献1に示されるように、高効率を達成できる発電システムとして固体酸化物形燃料電池とガスタービンとを組み合わせたコンバインド発電システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−36872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなコンバインド発電システムでは、ガスタービン単独運転の状態から固体酸化物形燃料電池を起動する場合、ガスタービンの圧縮機からガスタービンの燃焼器に供給されている吐出空気の一部を固体酸化物形燃料電池に供給して、固体酸化物燃料電池を昇圧する必要がある。この時、ガスタービンの運転状態を可能な限り変化させないように、固体酸化物形燃料電池に供給する吐出空気をごく少量としていたために、固体酸化物形燃料電池の起動に時間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑み、ガスタービンの吐出空気を用いて固体酸化物形燃料電池の起動を行うに際して、起動時間の短縮を図ることができるコンバインド発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコンバインド発電システムは、圧縮機と燃焼器を有するガスタービンと、空気極及び燃料極を有する固体酸化物形燃料電池と、前記圧縮機で圧縮された吐出空気を前記固体酸化物形燃料電池に供給する空気供給ラインと、前記固体酸化物形燃料電池から排出された排出空気を前記燃焼器に供給する排出空気供給ラインと、前記空気供給ラインと前記排出空気供給ラインとに接続され、前記空気供給ラインを流れる前記吐出空気の一部又は全部を、前記固体酸化物形燃料電池をバイパスして前記排出空気供給ラインに供給するバイパス流路とを有し、前記空気供給ラインには、前記圧縮機側から順に、前記空気供給ラインと前記バイパス流路との接続部と、前記吐出空気の流量を調整する第一流量調整弁とが介装され、前記排出空気供給ラインには、前記固体酸化物形燃料電池側から順に、前記排出空気の流れを遮断する第一開閉弁と、前記排出空気供給ラインと前記バイパス流路との接続部とが介装され、前記バイパス流路には、第二流量調整弁が介装され、更に、前記ガスタービンの出力の値を測定する出力測定装置と、前記空気供給ラインの前記バイパス流路との接続部下流側の圧力の値を測定する圧力測定装置と、前記固体酸化物形燃料電池に供給される前記吐出空気の流量を測定する流量測定装置と、前記出力測定装置、前記圧力測定装置及び前記流量測定装置から出力されるそれぞれの測定値が入力されて、前記第一流量調整弁及び前記第二流量調整弁の開度を調整する制御装置とを有し、前記第一流量調整弁と前記第一開閉弁とは全閉とされ、かつ前記第二流量調整弁が開放された起動前の状態から、前記制御装置は、前記出力測定装置の測定値が、前記ガスタービンの下限出力となるように前記第一流量調整弁の開度を調整し、前記圧力測定装置の測定値が目標の圧力に達すると、前記第一開閉弁を開くと共に、前記流量測定装置の測定値に応じて前記第二流量調整弁の開度を調整して起動することを特徴とする。
本発明のコンバインド発電システムにおいては、前記第一流量調整弁の開度は、前記固体酸化物形燃料電池の圧力上昇に伴い大きくなるよう調整され、前記圧力測定装置の測定値が、目標の圧力よりも低い所定の圧力に達すると、前記第一流量調整弁の開度の変化率を大きくすることが好ましい。
【0007】
このようなコンバインド発電システムによれば、ガスタービンの出力がガスタービンの許容できる下限の出力となるように制御することで、固体酸化物形燃料電池を起動する際に固体酸化物形燃料電池に供給される圧縮機からの吐出空気の量を多くすることで、SOFCの昇圧時間を、従来よりも大幅に短縮することができる。その結果、固体酸化物形燃料電池の起動時間を短縮化することができ、燃料電池・ガスタービンコンバインド発電システムの効率の向上に寄与する。
【発明の効果】
【0008】
上述の態様に係るコンバインド発電システムによれば、固体酸化物形燃料電池の昇圧に要する時間を従来よりも短縮することで、コンバインド発電システムの起動時間を短縮し、コンバインド発電システムの発電効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、固体酸化物形燃料電池・ガスタービンコンバインド発電システムの一態様の概略を示す図である。
図2図2は、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池の起動時における昇圧挙動を示す図である。
図3図3は、従来の固体酸化物形燃料電池の起動時における昇圧挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明によりこの発明が限定されるものではない。また、以下説明における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池・ガスタービンコンバインド発電システムについて、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の固体酸化物形燃料電池・ガスタービンコンバインド発電システムの概略を示す図である。
【0012】
図1に示すように、固体酸化物形燃料電池・ガスタービンコンバインド発電システム(以下、「発電システム」と称する。)10は、ガスタービン11と、ガスタービン11により駆動される発電機12と、固体酸化物形燃料電池(以下、「SOFC」と称する。)13とを有する。この発電システム10は、SOFC13による発電と、ガスタービン11による発電とを組み合わせて、高い発電効率を得るように構成したものである。
【0013】
ガスタービン11は、空気18を圧縮する圧縮機14と、燃焼ガス15を生成するガスタービン燃焼器16と、ガスタービン燃焼器16から供給された燃焼ガス15を膨張させて回転するタービン17とを有する。タービン17と圧縮機14と発電機12とは、同軸に連結されている。
【0014】
ガスタービン燃焼器16は、SOFC13から排出される排出空気18BとSOFC13をバイパスして供給される吐出空気18Aとの一方又は両方、及び別途供給される燃料ガス34、たとえば、都市ガス(天然ガス)を燃焼させて高温高圧の燃焼ガス15を生成するものである。タービン17は、ガスタービン燃焼器16で生成されて供給される燃焼ガス15が膨張する際のエネルギーによって回転して軸出力を発生するものである。圧縮機14は、タービン17により発生された軸出力の一部又は全部を利用して駆動され空気18を圧縮するものである。発電機12は、タービン17により発生された軸出力の一部又は全部を利用して駆動され、該軸出力を電気エネルギーに変換するものである。
【0015】
SOFC13は、空気極と固体電解質と燃料極とを有する。また、SOFC13は、図示しない圧力容器内に配置される。このSOFC13は、空気極に酸化剤としての圧縮空気が供給され、燃料極に還元剤としての燃料ガスが供給されることで発電を行うものである。
【0016】
また、発電システム10は、圧縮機14に空気18を供給する空気導入ラインL1と、圧縮機14で圧縮された吐出空気18AをSOFC13の空気極に供給する空気供給ラインL2と、SOFC13で酸化剤として用いられた排出空気18Bをガスタービン燃焼器16に供給する排出空気供給ラインL3と、空気供給ラインL2と排出空気供給ラインL3とに接続され、空気供給ラインL2を流れる吐出空気18Aの一部又は全部を、SOFC13をバイパスして排出空気供給ラインL3に供給するバイパス流路L4とを有する。
【0017】
空気供給ラインL2には、圧縮機14側から順に、タービン17からの排燃焼ガス15Aと吐出空気18Aとを熱交換させるエアヒータ(AH)19と、空気供給ラインL2とバイパス流路L4との接続部と、吐出空気18Aの流量を調整する第一流量調整弁21が介装されている。また排出空気供給ラインL3には、SOFC13側から順に、SOFC13からガスタービン燃焼器16に供給される排出空気18Bの流れを遮断する第一開閉弁22と、排出空気供給ラインL3とバイパス流路L4との接続部とが介装されている。また、バイパス流路L4には、第二流量調整弁24が介装されている。なお、符号L8は、排出流路を図示する。
【0018】
なお、本実施形態では省略しているが、空気供給ラインL2と排出空気供給ラインL3とには、吐出空気18Aと排出空気18Bとを熱交換させる空気熱交換器を設けるようにしてもよい。
【0019】
また、発電システム10は、SOFC13の燃料極に燃料ガス(例えば、都市ガス)31を供給する燃料ガス供給ラインL5と、SOFC13で一部が還元剤として用いられた排燃料ガス31Aをガスタービン燃焼器16に供給する排燃料ガス供給ラインLと、燃料ガス供給ラインL5と排燃料ガス供給ラインL6とに接続され、排燃料ガス供給ラインL6を流れる排燃料ガス31Aの一部又は全部を、燃料ガス供給ラインL5に再循環させる再循環ラインL7とを有する。なお、符号L9は、排出流路を図示する。
【0020】
燃料ガス供給ラインL5には、燃料ガス31の供給量を制御する第三流量調整弁35が備えられている。また、排燃料ガス供給ラインL6には、SOFC13側から順に、排燃料ガス供給ラインL6と再循環ラインL7との接続部と、排燃料ガス31Aの圧力を調整する圧力制御弁32が備えられている。また、再循環ラインL7には、再循環ブロア33が介装されている。なお、本実施形態では省略しているが、燃料ガス供給ラインL5と排燃料ガス供給ラインL6とには、燃料ガス31と排燃料ガス31Aとを熱交換させて、排燃料ガス31Aの熱を回収する燃料ガス熱交換器を備えるようにしてもよい。
【0021】
また、発電システム10は、出力測定装置37と、流量測定装置39と、圧力測定装置41と、制御装置43とを有する。出力測定装置37は、ガスタービン11の出力の値を測定して制御装置43にその値を出力するものである。圧力測定装置41は、空気供給ラインL2のバイパス流路L4との接続部下流側(以下、SOFC13側と称する)の圧力の値を測定して制御装置43にその値を出力するものである。流量測定装置39は、SOFC側に供給される吐出空気18Aの流量を測定して制御装置43にその値を出力するものである。制御装置43は、各測定装置から入力されるそれぞれの値に基づいて、第一流量調整弁21及び第二流量調整弁24の開度を調整するものである。
【0022】
次に、図1及び図2を参照して上述の構成を有する発電システム10のSOFC13の起動時の動作を説明する。図2は、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池の起動時における昇圧の挙動を示す図である。このSOFC13の起動前(図2におけるTまでの間)においては、第一流量調整弁21と第一開閉弁22と圧力制御弁32と第三流量調整弁35とは全閉とされ、バイパス流路L4に介装された第二流量調整弁24のみが開放されている。この状態の下、ガスタービン11は、以下のように運転されている。
【0023】
すなわち、圧縮機14で圧縮され、吐出される吐出空気18Aは、空気供給ラインL2と、バイパス流路L4及び排出空気供給ラインL3とを経由してガスタービン燃焼器16に供給されている。ガスタービン燃焼器16は、この吐出空気18Aを用いて別途供給される燃料ガス34を燃焼させ、高温高圧の燃焼ガス15を生成してタービン17へ供給している。
【0024】
タービン17は、供給された燃焼ガス34を膨張させて回転し、ガスタービン11の軸出力を発生させている。この軸出力は、主として発電機12の駆動に使用されて電気エネルギーを生成するとともに、一部は圧縮機14の駆動に使用されている。燃焼ガス15は、タービン17で仕事をした後でも高温を保っており、エアヒータ19で吐出空気18Aを加熱して、排燃焼ガス15Aとして排出されている。
【0025】
SOFC13の起動時には、まず、制御装置43から出力される信号により第一流量調整弁21が開かれる(図2におけるT0)。第一流量調整弁21が開かれると、バイパス流路L4を介してガスタービン燃焼器16に供給されている吐出空気18Aの一部が、SOFC13側へと供給される。この時、SOFC13側とガスタービン燃焼器16側に分岐する流路において圧力差が発生し、圧力の低い側に位置する第一流量調整弁21の開度によりSOFC13側とガスタービン燃焼器16側に流れる空気量が決定する。第一流量調整弁21を所定の値まで開き、ガスタービン燃焼器16に供給される吐出空気18Aを減少させると、ガスタービン燃焼器16への供給空気流量が減ることから、図2に示すようにガスタービン11の出力は低下する。
【0026】
なお、図2におけるT0において、第一流量調整弁21の開度は、制御装置43によって予め決められた値に制御される。この予め決められた値とは、第一流量調整弁21を開いた際に、ガスタービン11の出力が下限の出力となるようにガスタービン燃焼器16に必要量の空気を供給できる値である。
【0027】
ここで、ガスタービン11の出力が下限の出力となる値とは、ガスタービン11が許容できる下限の出力値(例えば定格が15KW運転の場合、例えば5KW運転にする)のことである。このガスタービン11が許容できる下限の出力とは、圧縮機14の機動力を確保し、且つガスタービン11の安定的な運転が可能である出力である。
【0028】
次に、制御装置43は、出力測定装置37から入力されるガスタービン11の出力の値が所定の値を保つように第一流量調整弁21の開度を制御する(図2におけるT0からT2)。その結果、図2のT0からT1の間における第一流量調整弁21の開度は、ガスタービン燃焼器16側に供給される吐出空気18Aの流量が一定となるように、SOFC13側の圧力上昇と共におおよそ一定の変化率で大きくなる傾向となる。
【0029】
SOFC13側の圧力が所定の圧力に達すると(図2におけるT1)、第一流量調整弁21の開度の変化率が大きくなる。これは、SOFC13側の圧力が高くなり、SOFC13側へ供給するために必要な第一流量調整弁21の開度が大きくなるからである。
【0030】
圧力測定装置41によって測定されるSOFC13側の圧力が目標の圧力に達するとSOFC13の昇圧が完了する(図2におけるT2)。次に、制御装置43は、第一開閉弁22を開いて、SOFC13から排出される排出空気18Bをガスタービン燃焼器16に供給する。また、制御装置43は、流量測定装置43から入力されるSOFC13側への吐出空気の流量が最適な値となるように第二流量調整弁24の開度を調整する。
【0031】
ガスタービン燃焼器16に、吐出空気18A及び排出空気18Bが十分に供給され、ガスタービン11が定格運転に至ると、エアヒータ19においてタービン17の排燃焼ガス15Aで加熱される吐出空気18Aは、例えば600℃程度まで昇温する。SOFC13は、この吐出空気18Aにより発電可能な温度(例えば、600℃)にまで昇温される。その後、SOFC13は、空気極に供給される吐出空気18Aと別途燃料極に供給される燃料ガス31とを反応させ、電気エネルギーを生成し始める。
【0032】
本実施形態のコンバインド発電システムの運転方法は、SOFCを起動する際に、ガスタービンを最低出力に保持することで、SOFCに供給する空気量を最大化し、SOFCの昇圧を早めることで、SOFCの起動時間を短縮でき、コンバインド発電システム自体の起動を早めることができるので、システム全体の発電効率を高めることができる。
【0033】
[比較例]
本実施形態に係る発電システム10にて、従来の起動方法を利用した場合にSOFC13の昇圧にかかる時間を確認した結果を、図3を参照して説明する。図3は、従来の固体酸化物形燃料電池の起動時における昇圧の挙動を示す図である。
【0034】
従来の起動方法において、SOFC13の起動時には、まず制御装置43から出力される信号により第一流量調整弁21が開かれる(図3におけるT0)。この時、第一流量調整弁21の開度は、ガスタービンの運転状態を可能な限り変化させないよう十分に小さい値に設定されている。
【0035】
次に、第一流量調整弁21の開度は、制御装置43によって、ガスタービン11の運転状態が定格に戻るために十分に長い時間の間一定に保持される(図3におけるT0からT1)。この時間の経過後、第一流量調整弁21の開度は、制御装置43によって、SOFC13側の圧力が目標の圧力に達するまでの間(図3におけるT1からT2)徐々に大きくされる。この従来の起動方法によりSOFC13の昇圧にかかる時間は、本発明に係る起動方法と比較して約2倍程度長くかかることが分かる。
【0036】
本実施形態に係る発電システム10によれば、SOFC13側に供給する吐出空気18Aの流量を、ガスタービン11の出力がガスタービン11の許容できる下限の出力となるように制御することで、SOFC13の昇圧時間を、従来よりも大幅に短縮することができる。その結果、SOFC13の起動時間を短縮化することができ、燃料電池・ガスタービンコンバインド発電システムの効率の向上に寄与する。
【符号の説明】
【0037】
10 燃料電池・ガスタービンコンバインド発電システム
11 ガスタービン
12 発電機
13 固体酸化物形燃料電池(SOFC)
14 圧縮機
15 燃焼ガス
16 ガスタービン燃焼器
17 タービン
18 空気
18A 吐出空気
18B 排出空気
18C SOFCへ導入される吐出空気
21 第一流量調整弁
22 第一開閉弁
24 第二流量調整弁
31 燃料ガス
31A 排燃料ガス
37 出力測定装置
39 流量測定装置
41 圧力測定装置
43 制御装置
図1
図2
図3