【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度〜平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体酸化物形燃料電池システム要素技術開発実用性向上のための技術開発 超効率運転のための高圧運転技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明によりこの発明が限定されるものではない。また、以下説明における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池・ガスタービンコンバインド発電システムについて、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の固体酸化物形燃料電池・ガスタービンコンバインド発電システムの概略を示す図である。
【0012】
図1に示すように、固体酸化物形燃料電池・ガスタービンコンバインド発電システム(以下、「発電システム」と称する。)10は、ガスタービン11と、ガスタービン11により駆動される発電機12と、固体酸化物形燃料電池(以下、「SOFC」と称する。)13とを有する。この発電システム10は、SOFC13による発電と、ガスタービン11による発電とを組み合わせて、高い発電効率を得るように構成したものである。
【0013】
ガスタービン11は、空気18を圧縮する圧縮機14と、燃焼ガス15を生成するガスタービン燃焼器16と、ガスタービン燃焼器16から供給された燃焼ガス15を膨張させて回転するタービン17とを有する。タービン17と圧縮機14と発電機12とは、同軸に連結されている。
【0014】
ガスタービン燃焼器16は、SOFC13から排出される排出空気
18BとSOFC13をバイパスして供給される吐出空気
18Aとの一方又は両方、及び別途供給される燃料ガス34、たとえば、都市ガス(天然ガス)を燃焼させて高温高圧の燃焼ガス15を生成するものである。タービン17は、ガスタービン燃焼器16で生成されて供給される燃焼ガス15が膨張する際のエネルギーによって回転して軸出力を発生するものである。圧縮機14は、タービン17により発生された軸出力の一部又は全部を利用して駆動され空気18を圧縮するものである。発電機12は、タービン17により発生された軸出力の一部又は全部を利用して駆動され、該軸出力を電気エネルギーに変換するものである。
【0015】
SOFC13は、空気極と固体電解質と燃料極とを有する。また、SOFC13は、図示しない圧力容器内に配置される。このSOFC13は、空気極に酸化剤としての圧縮空気が供給され、燃料極に還元剤としての燃料ガスが供給されることで発電を行うものである。
【0016】
また、発電システム10は、圧縮機14に空気18を供給する空気導入ラインL
1と、圧縮機14で圧縮された吐出空気18AをSOFC13の空気極に供給する空気供給ラインL
2と、SOFC13で酸化剤として用いられた排出空気18Bをガスタービン燃焼器16に供給する排出空気供給ラインL
3と、空気供給ラインL
2と排出空気供給ラインL
3とに接続され、空気供給ラインL
2を流れる吐出空気18Aの一部又は全部を、SOFC13をバイパスして排出空気供給ラインL
3に供給するバイパス流路L
4とを有する。
【0017】
空気供給ラインL
2には、圧縮機14側から順に、タービン17からの排燃焼ガス15Aと吐出空気18Aとを熱交換させるエアヒータ(AH)19と、空気供給ラインL
2とバイパス流路L
4との接続部と、吐出空気18Aの流量を調整する第一流量調整弁21が介装されている。また排出空気供給ラインL
3には、SOFC13側から順に、SOFC13からガスタービン燃焼器16に供給される排出空気18Bの流れを遮断する第一開閉弁22と、排出空気供給ラインL
3とバイパス流路L
4との接続部とが介装されている。また、バイパス流路L
4には、第二流量調整弁24が介装されている。なお、符号L
8は、排出流路を図示する。
【0018】
なお、本実施形態では省略しているが、空気供給ラインL
2と排出空気供給ラインL
3とには、吐出空気18Aと排出空気18Bとを熱交換させる空気熱交換器を設けるようにしてもよい。
【0019】
また、発電システム10は、SOFC13の燃料極に燃料ガス(例えば、都市ガス)31を供給する燃料ガス供給ラインL
5と、SOFC13で一部が還元剤として用いられた排燃料ガス31Aをガスタービン燃焼器16に供給する排燃料ガス供給ラインL
6と、燃料ガス供給ラインL
5と排燃料ガス供給ラインL
6とに接続され、排燃料ガス供給ラインL
6を流れる排燃料ガス31Aの一部又は全部を、燃料ガス供給ラインL
5に再循環させる再循環ラインL
7とを有する。なお、符号L
9は、排出流路を図示する。
【0020】
燃料ガス供給ラインL
5には、燃料ガス31の供給量を制御する第三流量調整弁35が備えられている。また、排燃料ガス供給ラインL
6には、SOFC13側から順に、排燃料ガス供給ラインL
6と再循環ラインL
7との接続部と、排燃料ガス31Aの圧力を調整する圧力制御弁32が備えられている。また、再循環ラインL
7には、再循環ブロア33が介装されている。なお、本実施形態では省略しているが、燃料ガス供給ラインL
5と排燃料ガス供給ラインL
6とには、燃料ガス31と排燃料ガス31Aとを熱交換させて、排燃料ガス31Aの熱を回収する燃料ガス熱交換器を備えるようにしてもよい。
【0021】
また、発電システム10は、出力測定装置37と、流量測定装置39と、圧力測定装置41と、制御装置43とを有する。出力測定装置37は、ガスタービン11の出力の値を測定して制御装置43にその値を出力するものである。圧力測定装置41は、空気供給ラインL
2のバイパス流路L
4との接続部下流側(以下、SOFC13側と称する)の圧力の値を測定して制御装置43にその値を出力するものである。流量測定装置39は、SOFC側に供給される吐出空気18Aの流量を測定して制御装置43にその値を出力するものである。制御装置43は、各測定装置から入力されるそれぞれの値に基づいて、第一流量調整弁21及び第二流量調整弁24の開度を調整するものである。
【0022】
次に、
図1及び
図2を参照して上述の構成を有する発電システム10のSOFC13の起動時の動作を説明する。
図2は、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池の起動時における昇圧の挙動を示す図である。このSOFC13の起動前(
図2におけるT
0までの間)においては、第一流量調整弁21と第一開閉弁22と圧力制御弁32と第三流量調整弁35とは全閉とされ、バイパス流路L
4に介装された第二流量調整弁24のみが開放されている。この状態の下、ガスタービン11は、以下のように運転されている。
【0023】
すなわち、圧縮機14で圧縮され、吐出される吐出空気18Aは、空気供給ラインL
2と、バイパス流路L
4及び排出空気供給ラインL
3とを経由してガスタービン燃焼器16に供給されている。ガスタービン燃焼器16は、この吐出空気18Aを用いて別途供給される燃料ガス34を燃焼させ、高温高圧の燃焼ガス15を生成してタービン17へ供給している。
【0024】
タービン17は、供給された燃焼ガス34を膨張させて回転し、ガスタービン11の軸出力を発生させている。この軸出力は、主として発電機12の駆動に使用されて電気エネルギーを生成するとともに、一部は圧縮機14の駆動に使用されている。燃焼ガス15は、タービン17で仕事をした後でも高温を保っており、エアヒータ19で吐出空気18Aを加熱して、排燃焼ガス15Aとして排出されている。
【0025】
SOFC13の起動時には、まず、制御装置43から出力される信号により第一流量調整弁21が開かれる(
図2におけるT
0)。第一流量調整弁21が開かれると、バイパス流路L
4を介してガスタービン燃焼器16に供給されている吐出空気18Aの一部が、SOFC13側へと供給される。この時、SOFC13側とガスタービン燃焼器16側に分岐する流路において圧力差が発生し、圧力の低い側に位置する第一流量調整弁21の開度によりSOFC13側とガスタービン燃焼器16側に流れる空気量が決定する。第一流量調整弁21を所定の値まで開き、ガスタービン燃焼器16に供給される吐出空気18Aを減少させると、ガスタービン燃焼器16への供給空気流量が減ることから、
図2に示すようにガスタービン11の出力は低下する。
【0026】
なお、
図2におけるT
0において、第一流量調整弁21の開度は、制御装置43によって予め決められた値に制御される。この予め決められた値とは、第一流量調整弁21を開いた際に、ガスタービン11の出力が下限の出力となるようにガスタービン燃焼器16に必要量の空気を供給できる値である。
【0027】
ここで、ガスタービン11の出力が下限の出力となる値とは、ガスタービン11が許容できる下限の出力値(例えば定格が15KW運転の場合、例えば5KW運転にする)のことである。このガスタービン11が許容できる下限の出力とは、圧縮機14の機動力を確保し、且つガスタービン11の安定的な運転が可能である出力である。
【0028】
次に、制御装置43は、出力測定装置37から入力されるガスタービン11の出力の値が所定の値を保つように第一流量調整弁21の開度を制御する(
図2におけるT
0からT
2)。その結果、
図2のT
0からT
1の間における第一流量調整弁21の開度は、ガスタービン燃焼器16側に供給される吐出空気18Aの流量が一定となるように、SOFC13側の圧力上昇と共におおよそ一定の変化率で大きくなる傾向となる。
【0029】
SOFC13側の圧力が所定の圧力に達すると(
図2におけるT
1)、第一流量調整弁21の開度の変化率が大きくなる。これは、SOFC13側の圧力が高くなり、SOFC13側へ供給するために必要な第一流量調整弁21の開度が大きくなるからである。
【0030】
圧力測定装置41によって測定されるSOFC13側の圧力が目標の圧力に達するとSOFC13の昇圧が完了する(
図2におけるT
2)。次に、制御装置43は、第一開閉弁22を開いて、SOFC13から排出される排出空気18Bをガスタービン燃焼器16に供給する。また、制御装置43は、流量測定装置43から入力されるSOFC13側への吐出空気の流量が最適な値となるように第二流量調整弁24の開度を調整する。
【0031】
ガスタービン燃焼器16に、吐出空気18A及び排出空気18Bが十分に供給され、ガスタービン11が定格運転に至ると、エアヒータ19においてタービン17の排燃焼ガス15Aで加熱される吐出空気18Aは、例えば600℃程度まで昇温する。SOFC13は、この吐出空気18Aにより発電可能な温度(例えば、600℃)にまで昇温される。その後、SOFC13は、空気極に供給される吐出空気18Aと別途燃料極に供給される燃料ガス31とを反応させ、電気エネルギーを生成し始める。
【0032】
本実施形態のコンバインド発電システムの運転方法は、SOFCを起動する際に、ガスタービンを最低出力に保持することで、SOFCに供給する空気量を最大化し、SOFCの昇圧を早めることで、SOFCの起動時間を短縮でき、コンバインド発電システム自体の起動を早めることができるので、システム全体の発電効率を高めることができる。
【0033】
[比較例]
本実施形態に係る発電システム10にて、従来の起動方法を利用した場合にSOFC13の昇圧にかかる時間を確認した結果を、
図3を参照して説明する。
図3は、従来の固体酸化物形燃料電池の起動時における昇圧の挙動を示す図である。
【0034】
従来の起動方法において、SOFC13の起動時には、まず制御装置43から出力される信号により第一流量調整弁21が開かれる(
図3におけるT
0)。この時、第一流量調整弁21の開度は、ガスタービンの運転状態を可能な限り変化させないよう十分に小さい値に設定されている。
【0035】
次に、第一流量調整弁21の開度は、制御装置43によって、ガスタービン11の運転状態が定格に戻るために十分に長い時間の間一定に保持される(
図3におけるT
0からT
1)。この時間の経過後、第一流量調整弁21の開度は、制御装置43によって、SOFC13側の圧力が目標の圧力に達するまでの間(
図3におけるT
1からT
2)徐々に大きくされる。この従来の起動方法によりSOFC13の昇圧にかかる時間は、本発明に係る起動方法と比較して約2倍程度長くかかることが分かる。
【0036】
本実施形態に係る
発電システム10によれば、SOFC13側に供給する吐出空気18Aの流量を、ガスタービン11の出力がガスタービン11の許容できる下限の出力となるように制御することで、SOFC13の昇圧時間を、従来よりも大幅に短縮することができる。その結果、SOFC13の起動時間を短縮化することができ、燃料電池・ガスタービンコンバインド発電システムの効率の向上に寄与する。