特許第5730225号(P5730225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730225
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】情報処理装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/26 20060101AFI20150514BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20150514BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   G06F1/00 330F
   H02J7/00 302A
   H01M10/44 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-37514(P2012-37514)
(22)【出願日】2012年2月23日
(65)【公開番号】特開2013-174941(P2013-174941A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2014年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】311012169
【氏名又は名称】NECパーソナルコンピュータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084250
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】白川 貴久
【審査官】 緑川 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−025382(JP,A)
【文献】 特開2008−154069(JP,A)
【文献】 特開平05−066862(JP,A)
【文献】 特開2005−251225(JP,A)
【文献】 特開2003−167652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/26
H01M 10/44
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給される外部電源又は前記外部電源により充電されるバッテリにより駆動する情報処理装置であって、
所定の基準時間からランダムにずれた時間をバッテリ駆動の開始時間として決定するピークシフト時間決定手段と、
決定した前記開始時間に、前記バッテリ駆動を開始させる制御を行う駆動電源切換手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記バッテリがあらかじめ定められた所定の充電抑止時間帯に充電を開始することを抑止する制御を行うバッテリ充電制御手段を有することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記バッテリ充電制御手段は、充電を抑止する前記充電抑止時間帯であっても、前記情報処理装置が駆動していない場合は、充電を行う制御を行うことを特徴とする請求項2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記駆動電源切換手段は、前記情報処理装置が前記バッテリを使い切ると外部電源駆動を始めることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の情報処理装置。
【請求項5】
外部から供給される外部電源又は前記外部電源により充電されるバッテリにより駆動する情報処理装置の制御方法であって、
所定の基準時間からランダムにずれた時間をバッテリ駆動の開始時間として決定するピークシフト時間決定工程と、
決定した前記開始時間に、前記バッテリ駆動を開始させる制御を行う駆動電源切換工程と、
を含むことを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及びその制御方法に関し、特に、ピーク電力を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電力エネルギーは貯蔵が難しいため、発電された電力を効率的に利用するには、需要のピークを抑えて需要を平準化するとよいということが従来、知られている。このようなピーク電力の低減(ピークカット)を課題にした先行技術としては、例えば、特許文献1がある。
【0003】
特許文献1は、ローカルエリアネットワークで結ばれたコンピュータシステムに管理サーバを設置し、管理サーバが各コンピュータの使用電力を一元管理することなどを開示している。特許文献1では、管理サーバが各コンピュータをいくつかのグループに分け、各グループごとに電力供給量が異なる電力供給ポリシーを割り当てることによって需要のピークを抑えている。電力供給ポリシーは、「バッテリ駆動」、「ACアダプタ駆動且つバッテリ充電する」、「ACアダプタ駆動且つバッテリ充電しない」という3種類である。
【0004】
なお、本明細書においては、「AC」は交流のことであり家庭やオフィスの電源コンセントから供給されている電源を指すこととする。一方「DC」は直流のことでありバッテリパック(充電池)から得る直流電流を指すこととする。また、各々の電力使用主体が需要のピークをずらして全体としての電力需要を平準化させることを本明細書では「ピークシフト」と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−172419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、ノートブック型パーソナルコンピュータ(以下、「ノートPC」或いは単に「PC」と呼ぶ)でピークシフトを行う場合、ユーザが手動で行うか、自動で行うにしても一台のみの場合しか考慮せず行っていた。
【0007】
ノートPCは携帯して利用することが考慮されており通常バッテリ駆動可能に作られている。また、バッテリに充電するためのACアダプタを備え、ACアダプタによって駆動することもできる。したがって、ノートPCの電力使用態様は、例えば、バッテリによる駆動(以下、「バッテリ駆動」と呼ぶ)、ACアダプタを介した外部電源による駆動(以下、「外部電源駆動」と呼ぶ)且つバッテリ充電しない、外部電源駆動且つバッテリ充電する、の3種類が考えられ、この順で省電力である。
【0008】
できるだけ省電力駆動させたいが、ノートPCのすべての稼働時間の間、バッテリ駆動させるのは、バッテリ容量が足りず難しい。このため、需要が最大となる最大ピーク付近でノートPCをバッテリ駆動させることが行われる。しかしながら、すべてのノートPCを同一時間帯設定でバッテリ駆動させると、バッテリを使い切るタイミングが類似するため、そのタイミングで、電力消費が大きい外部電源駆動且つバッテリ充電が始まることになる。ピークをシフトさせたはずが、そこに新たなピークがでてしまう。
【0009】
特許文献1のように、各PCをいくつかのグループに分け、グループごとに異なる時間帯を設定することもできるが、設定が煩雑である。また、設定を容易にするためにグループ分けを企業の部門のような論理的単位ごとに行うと、会議などによるPCの利用停止やPCの利用者増減などにより、短期的にも長期的にも、実際に稼働しているPCの台数がグループごとに偏りが起きやすく、この方法では電力需要の平準化ができない。その対処のためには、PCの稼働状態が変化するごとにポリシーの再設定を行う必要があり、さらに処理が煩雑になるだけでなく、その処理による電力消費も想定される。
【0010】
なお、上記においては、ノートブック型パーソナルコンピュータを例にとって多数台の情報処理装置のピークカットにおける課題を考察したが、情報処理装置としては他に例えば、携帯電話機、携帯音楽プレーヤ、携帯型ゲーム機、家庭用ゲーム機、省スペースPC、薄型テレビ等、種々のものが考えられる。上記課題は、これらのものにも共通する課題である。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、ピーク電力の低減を効率的に行うことが可能な情報処理装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、情報処理装置として、外部から供給される外部電源又は前記外部電源により充電されるバッテリにより駆動する情報処理装置であって、所定の基準時間からランダムにずれた時間をバッテリ駆動の開始時間として決定するピークシフト時間決定手段と、決定した前記開始時間に、前記バッテリ駆動を開始させる制御を行う駆動電源切換手段と、を有することを特徴とする装置を提供する。
【0013】
また、上記目的を達成するために本発明は、情報処理装置の制御方法として、外部から供給される外部電源又は前記外部電源により充電されるバッテリにより駆動する情報処理装置の制御方法であって、所定の基準時間からランダムにずれた時間をバッテリ駆動の開始時間として決定するピークシフト時間決定工程と、決定した前記開始時間に、前記バッテリ駆動を開始させる制御を行う駆動電源切換工程と、を含むことを特徴とする方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ピーク電力の低減を効率的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の構成を示すブロック図である。
図2】上記実施形態のランダムピークシフトを説明するための図である。
図3】上記実施形態によりピークシフトした場合の全体の消費電力量を示す図である。
図4】一般的なピーク電力の推移と上記実施形態により削減が期待できる電力量を示す図である。
図5】バッテリ充電抑止時間帯を設定することの技術的意義を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明を実施形態により詳細に説明する。図1は、本実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る情報処理装置100は、典型的な例を挙げるとノートブック型パーソナルコンピュータであるが、これに限定されることはなく、他に例えば、携帯電話機、携帯音楽プレーヤ、携帯型ゲーム機、家庭用ゲーム機、省スペースPC、薄型テレビ等、種々のものが考えられる。
【0017】
(機能構成)
情報処理装置100は、交流電源(商用電源)から電力の供給を受けて、駆動するが、バッテリ102も有し、バッテリ102から供給される電源で駆動することもできる。図1に示すように、情報処理装置100は、外部電力による駆動と、内部電力による駆動を切り換える駆動電源切換手段105を有する。
【0018】
外部電源駆動の場合であっても、内部電源駆動の場合であっても、供給された電源は、情報処理装置100の各部(不図示)に供給される。そのような各部としては、一般的なCPU(中央演算装置)やSoC(System−on−a−Chip)などの演算制御装置や一次記憶装置や二次記憶装置などのハードウェアがある。
【0019】
そのようなハードウェア資源を利用して、ソフトウェアプログラムによる情報処理が行われて、図1に図示する各手段が構成される。情報処理装置100は、上述したバッテリ102等の他に、バッテリ充電制御手段104と、ピークシフト時間決定手段106を有する。
【0020】
バッテリ充電制御手段104は、バッテリ102の充電を制御する手段であって、特に、バッテリ充電を抑止する時間帯のバッテリ充電を抑止する制御を行う。このバッテリ充電を抑止する時間帯(バッテリ充電抑止時間帯)は、好ましくはユーザが設定する。
【0021】
情報処理装置100にACアダプタ(不図示)が接続されていると、バッテリ充電制御手段104と駆動電源切換手段105に電力が供給される。駆動電源切換手段105は、外部電源からの電力を用いるか、バッテリ102からの電力を用いるかを切り換える機能を備える。このように情報処理装置がAC接続されていても、強制的にバッテリ駆動に切り換える機能を備える。
【0022】
ピークシフト時間決定手段106は、このような外部電源による駆動から内部電源によるバッテリ駆動への切換のタイミングを判断して、駆動電源切換手段105に通知して、内部電源によるバッテリ駆動への切換を行う機能を備える。
【0023】
(バッテリ充電の制御)
ピーク電力の低減という観点からは、情報処理装置100をユーザが稼働させる間ずっとバッテリ駆動させることが望ましい。しかしながら、現実問題としては、情報処理装置100のすべての稼働時間の間、バッテリ駆動させるのは、バッテリ容量が足りず難しい。通常稼働時間は昼間の10時から17、18時までであるが、ノートPCを7、8時間バッテリ駆動させ続けるのはバッテリ容量の面から見て現実的ではない。
【0024】
このため、従来技術においては、需要が最大となる最大ピーク付近でノートPCをバッテリ駆動させることが行われる。しかしながら、すべてのノートPCを同一時間帯設定でバッテリ駆動させると、バッテリを使い切るタイミングが類似するため、そのタイミングで、電力消費が大きい外部電源駆動且つバッテリ充電が始まることになる。ピークをシフトさせたはずであるのに、外部電源駆動且つバッテリ充電が始まるタイミングに新たなピークがでてしまう。
【0025】
そこで、バッテリ充電制御手段104は、図5に示すように、設定されたバッテリ充電抑止時間帯の間、外部電源によりバッテリ102の充電を行う動作を抑止する制御を行う。図5においては、DC駆動時間帯を含むように充電抑止時間帯が設定されている。また、充電抑止時間帯においては、通常より省電力で外部電源の電力が消費される。
【0026】
図5の従来技術においては、通常のAC駆動に40w、バッテリ充電抑止時間帯における省電力でのAC駆動に20w、パソコンAとパソコンBの2台のパソコンのトータルの消費電力を示している。山形で模式的に示した消費電力のピーク(斜線ハッチング部分)をカットするために、図5ではDC駆動時間帯を含むようにバッテリ充電抑止時間帯を設定する。
【0027】
図5においては、各PCが一斉にバッテリ102を使い切るため、ピークができてしまう。消費電力を抑えたい時間帯の前半の短い時間帯に過度に消費電力を抑え、消費電力を抑えたい時間帯全体の電力需要の平準化という課題を適切に解決できていない。
【0028】
(ランダムピークシフト)
本実施形態においては、上述のようにバッテリ充電を抑止する制御を行うことに加え、さらに、ユーザに設定された最大ピーク時間を中心に、正規乱数などの乱数(±)を付与した時間にバッテリ駆動に切り換える制御を行う。このように乱数によりランダムに設定された時間帯にバッテリ駆動して消費電力を低減することを「ランダムピークシフト」と呼ぶ。
【0029】
図2に、ランダムピークシフトを説明するための図を示す。本実施形態においては、各PCごとに、それぞれのピークシフト時間決定手段106がピークシフト時間記憶手段103にあらかじめ記憶された「バッテリ駆動時間の基準時間」を中心に乱数を付与した時間をピークシフト時間として決定し、その時間を駆動電源切換手段105に通知する。駆動電源切換手段105は、当該時間にバッテリ駆動への切換を行う。その結果、図2に示すように各PCごとにランダムな時間にバッテリ駆動が行われる。
【0030】
バッテリ駆動時間の基準時間は、電力需要の最大ピーク時間に設定するとよい。また、乱数によってランダムにずれるバッテリ駆動時間は、バッテリ充電制御手段104によってバッテリ充電が抑止される制御が行われるバッテリ充電抑止時間帯に収まるように、乱数を調整するとよい。上述したバッテリ充電の制御と併用することによって、バッテリ駆動が終了した時点で外部電源駆動(もしくは、外部電源駆動且つバッテリ充電)が開始されて電力需要が大きい時間帯における消費電力が増加することを防止できる。
【0031】
図5図2を比較しつつ見ると明らかなように、充電抑止を行うとともにバッテリ駆動の時間帯を電力需要の最大ピーク時間を中心にランダムにずらす制御を行うと、トータルでの消費電力を平準化することができる(図中の下線部参照)。したがって、本実施形態によれば、ピーク電力の低減を効率的に行うことが可能になる。
【0032】
また、本実施形態においては、各情報処理装置100が有するピークシフト時間決定手段106が、他の装置とは連携せず自律的にピークシフト時間を決定する。そのため、管理サーバが各コンピュータの使用電力を一元管理する方式に比べて、煩雑な設定の必要がなく、管理サーバを用意する必要もない。また、PCの稼働状況が動的に変化した場合も、バッテリ駆動時間がランダムに割り振られているため、特定のピークシフト時間帯の設定に偏ってPCの稼働状況が変化することは起こりづらいという特徴がある。
【0033】
ピークシフト時間決定手段106がピークシフト時間の計算に用いる乱数は、より詳細には、一様乱数ではなく正規分布を持つような正規乱数であることが好ましい。そうすることで、電力消費の実情に沿ったピークシフトを行うことができ、さらに効率的な消費電力の低減が可能となる。
【0034】
図2では、説明を簡便にするため2台のPCでのトータル消費電力の推移を模式的に示したが、さらに多数台で本実施形態によるピークシフトをした場合の全体の消費電力量を図3に示す。図3では、バッテリ駆動時間の基準時間から正規乱数によりランダムにバッテリ駆動時間がずれた複数の情報処理装置100の数を時間に沿って示している。バッテリ駆動する装置の台数が図のように推移すると、複数の装置の全体としての消費電力量は、バッテリ駆動する装置の台数のピークに最も低下する。バッテリ駆動時間の基準時間は、電力需要の最大ピーク時間であるので、電力需要の最大ピーク時間に全体としての消費電力量を低く抑えることができる。
【0035】
上述したバッテリ充電の制御は、バッテリ充電を完全に禁止した場合を例にとって説明したが、バッテリ充電抑止時間帯であっても、処理装置が駆動していないような場合には、バッテリ充電を行う構成としてもよい。また、通常より省電力で充電するようにしてもよい。例えば、いわゆるx86アーキテクチャにおけるS3/S4/S5などのほぼ電力を消費しないモードの状態の場合では、バッテリ充電を許容する構成とすることで、バッテリ稼働時間を長くし、さらなる電力消費の平準化に貢献し、また、使い勝手が非常に向上するという効果がある。
【0036】
図4に、一般的なピーク電力の推移と上記実施形態により削減が期待できる電力量を示す。図3を参照して説明したように、本実施形態によれば電力需要の最大ピーク時間に全体としての消費電力量を低く抑えることができるため、多数台の装置が全体として削減を期待できる電力量は、時間とともに図4のように推移する。
【0037】
一般的に、日本の夏の一日におけるピーク電力の推移は、時刻とともに図4に示したように推移する。したがって、本実施形態のランダムピークシフトは、ちょうどピーク電力が増大する昼間の消費電力削減に貢献できる。すなわち、本実施形態が提供する一様乱数ではない乱数を用いて各情報処理装置100が自律的にランダムな時間にDC駆動を始めるランダムピークシフトは、電力消費の実情に沿った形で、消費電力を効率的に低減することができる。
【符号の説明】
【0038】
100 情報処理装置
102 バッテリ
103 ピークシフト時間記憶手段
104 バッテリ充電制御手段
105 駆動電源切換手段
106 ピークシフト時間決定手段
図1
図2
図3
図4
図5