【文献】
HEPWORTH NJ et al.,Characterizing Gas Bubble Dispersions in Beer,Food Bioprod. Process,2001年 3月,Vol.79, No.C1,pp.13-20
【文献】
鷲ざき俊朗ほか,アンダーカバーガッシングによる高速脱酸素置換の解析,缶詰時報,2009年10月 1日,Vol.88, No.10,pp.34-35
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0014】
本実施形態に係る発泡性飲料製品(以下、「本製品」という。)は、発泡性飲料と、当該発泡性飲料を収容する容器とを有する。すなわち、本製品は、容器入り発泡性飲料の製品である。
【0015】
発泡性飲料は、泡立ち特性及び泡持ち特性を含む泡特性を有する飲料である。すなわち、発泡性飲料は、例えば、炭酸ガスを含む飲料であって、グラス等の飲用容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性とを有する飲料である。
【0016】
発泡性飲料は、発泡性アルコール飲料であることとしてもよい。発泡性アルコール飲料は、エタノール含有量が1体積%以上の発泡性飲料である。発泡性アルコール飲料のエタノール含有量は、例えば、1〜20体積%であることとしてもよい。
【0017】
発泡性飲料は、発泡性ノンアルコール飲料であることとしてもよい。発泡性ノンアルコール飲料は、エタノール含有量が1体積%未満の発泡性飲料である。発泡性ノンアルコール飲料のエタノール含有量は、例えば、0.005体積%未満であることとしてもよい。
【0018】
発泡性飲料は、植物原料を使用して製造されたものであることとしてもよい。植物原料は、飲料の製造に使用できるものであれば特に限られないが、例えば、穀類、豆類及びいも類からなる群より選択される1種以上及び/又は当該群より選択される1種以上を発芽させたものであることとしてもよい。
【0019】
穀類は、例えば、大麦、小麦、米類及びとうもろこしからなる群より選択される1種以上であることとしてもよい。すなわち、植物原料は、例えば、大麦、小麦、米類、とうもろこし、豆類及びいも類からなる群より選択される1種以上及び/又は当該群より選択される1種以上を発芽させたものであることとしてもよい。
【0020】
具体的に、発泡性飲料は、例えば、大麦麦芽及び/又は小麦麦芽を使用して製造されたものであることとしてもよい。また、発泡性飲料は、例えば、大麦麦芽及び小麦麦芽を使用することなく、他の植物原料を使用して製造されたものであることとしてもよい。
【0021】
本製品の容器は、発泡性飲料を収容できるものであれば特に限られないが、例えば、缶、瓶又は樽を好ましく使用することができる。なお、後述する容器内の空寸部は、当該容器のヘッドスペースである。すなわち、空寸部は、例えば、静置されている本製品において、容器内の発泡性飲料の液面と当該容器の内面との間に形成される空間である。
【0022】
容器を構成する材料は、特に限られず、例えば、金属、無機材料(例えば、ガラス、セラミックス)及び有機材料(例えば、樹脂、紙)からなる群より選択される1種以上を使用することができる。
【0023】
すなわち、容器は、例えば、金属(例えば、アルミニウム又はスチール)製の缶であることとしてもよく、ガラス製の瓶又は樹脂製の瓶(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の瓶:PETボトル)であることとしてもよく、金属(例えば、アルミニウム又はスチール)製の樽又は樹脂製の樽であることとしてもよい。
【0024】
容器の容量は、特に限られないが、例えば、1L以下であることとしてもよい。すなわち、容器は、例えば、1L以下の缶、1L以下の瓶又は1以下の樽であることとしてもよい。なお、容器の容量の下限値は特に限られないが、当該容量は、例えば、100mL以上であることとしてもよい。
【0025】
このように容器の容量が比較的小さい場合、例えば、サーバー等の特殊な注出装置を使用することなく、当該容器からグラス等の飲用容器に発泡性飲料を直接注ぐだけで、当該発泡性飲料の優れた泡特性を実現することができる。
【0026】
そして、本製品について特徴的なことの一つは、容器内の空寸部には、次の(a)又は(b)の条件を満たすように、炭酸ガス及び窒素ガスが充填されていることである:(a)炭酸ガス圧が200kPa以上であって、当該炭酸ガス圧に対する窒素ガス圧の比率が0.5以上である;(b)炭酸ガス圧が170kPa以上、200kPa未満であって、当該炭酸ガス圧に対する窒素ガス圧の比率が1.0以上である。
【0027】
すなわち、上記条件(a)に関し、本製品においては、容器内の空寸部において、炭酸ガス圧を200kPa以上に調整し、且つ当該炭酸ガス圧に対する窒素ガス圧の比率(以下、「N
2/CO
2比率」という。)が0.5以上となるように窒素ガスを共存させることにより、発泡性飲料の優れた泡特性を実現することができる。
【0028】
この場合、N
2/CO
2比率は、0.6以上であることとしてもよく、0.7以上であることとしてもよい。また、N
2/CO
2比率は、0.8以上であることが好ましい。すなわち、本製品の空寸部において、炭酸ガス圧を200kPa以上に調整し、且つN
2/CO
2比率が0.8以上となるように窒素ガスを共存させることにより、特に優れた泡特性を実現することができる。さらに、N
2/CO
2比率は、1.0以上であることとしてもよく、1.0超であることとしてもよく、1.1以上であることとしてもよく、1.2以上であることとしてもよく、1.3以上であることとしてもよい。空寸部の炭酸ガス圧が200kPa以上である場合、N
2/CO
2比率の上限値は特に限られないが、例えば、当該N
2/CO
2比率は、2.0以下であることとしてもよい。
【0029】
また、上記条件(b)に関し、本製品においては、容器内の空寸部において、炭酸ガス圧を170kPa以上、200kPa未満に調整し、且つN
2/CO
2比率が1.0以上となるように窒素ガスを共存させることにより、発泡性飲料の優れた泡特性を実現することができる。
【0030】
この場合、N
2/CO
2比率は、1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましい。空寸部の炭酸ガス圧が170kPa以上、200kPa未満である場合、N
2/CO
2比率の上限値は特に限られないが、例えば、当該N
2/CO
2比率は、3.50以下であることとしてもよい。
【0031】
空寸部に含まれる混合ガスは、炭酸ガス及び窒素ガスを含み、上記(a)又は(b)の条件を満たすものであれば特に限られないが、例えば、当該空寸部内において、混合ガス圧(空寸部内圧、全圧、)に対する炭酸ガス圧と窒素ガス圧との合計の割合は、90%以上(90〜100%)であることとしてもよく、95%以上(95〜100%)であることとしてもよい。
【0032】
このような本製品は、例えば、その容器内にウィジェット等のガス保持装置を備えることなく、当該容器からグラス等の飲用容器に発泡性飲料を直接注ぐだけで、当該飲用容器内において当該発泡性飲料の優れた泡特性を実現することができる。
【0033】
また、例えば、本製品の容器の容量が1L以下の場合には、需要者は、サーバー等の注出装置を使用することなく、自らの手で当該容器からグラス等の飲用容器に発泡性飲料を直接注ぐだけで、当該発泡性飲料の優れた泡特性を実現することができる。
【0034】
本実施形態に係る方法(以下、「本方法」という。)は、例えば、発泡性飲料と、当該発泡性飲料を収容する容器と、を有する発泡性飲料製品を製造する方法であって、当該容器内の空寸部に、次の(a)又は(b)の条件を満たすように、炭酸ガス及び窒素ガスを充填することを含む方法である:(a)炭酸ガス圧が200kPa以上であって、前記炭酸ガス圧に対する窒素ガス圧の比率が0.5以上である;(b)炭酸ガス圧が170kPa以上、200kPa未満であって、前記炭酸ガス圧に対する窒素ガス圧の比率が1.0以上である。上述した本製品は、本方法により好ましく製造される。
【0035】
本方法において、容器の空寸部に炭酸ガス及び窒素ガスを充填するタイミング及び方法は、特に限られない。すなわち、炭酸ガス及び窒素ガスの充填は、例えば、発泡性飲料を容器に充填する前に行うこととしてもよく、発泡性飲料を容器に充填した後に行うこととしてもよい。また、炭酸ガス及び窒素ガスは、例えば、発泡性飲料を容器に充填する工程の前に予め当該発泡性飲料に溶け込ませておくこととしてもよいし、当該充填工程において当該発泡性飲料に溶け込ませることとしてもよい。より具体的には、次のような方法により炭酸ガス及び窒素ガスの充填を行うことができる。
【0036】
すなわち、容器が缶の場合、例えば、まず、炭酸ガス、窒素ガス又は炭酸ガスと窒素ガスとの混合ガスを当該缶内に吹き込むことでの空気を追い出すとともに当該缶内を加圧し、次いで、当該缶内に発泡性飲料を充填し、最後に当該缶を巻き締めする。
【0037】
容器が瓶の場合、例えば、まず、真空ポンプ等の減圧装置を使用して当該瓶内の空気を吸い出し、次いで、炭酸ガス、窒素ガス又は炭酸ガスと窒素ガスとの混合ガスを当該瓶内に吹き込むことで当該瓶内を加圧し、その後、当該瓶内に発泡性飲料を充填する。
【0038】
容器が樽の場合、例えば、まず、窒素ガス又は炭酸ガスと窒素ガスとの混合ガスを当該樽内に吹き込むことで空気を追い出すとともに当該樽内を加圧し、次いで、当該樽内に発泡性飲料を充填する。
【0039】
窒素ガスを充填する方法は特に限られないが、例えば、液体窒素の滴下及び/又は窒素ガスの吹き込みを使用することができ、液体窒素の滴下を好ましく使用することができる。液体窒素は、窒素ガスに比べて体積が非常に小さいため、容器内の窒素ガス圧を効果的に高めることができる。
【0040】
本方法によれば、容器内の空寸部に、上記条件(a)又は(b)を満たすように炭酸ガス及び窒素ガスを充填することにより、優れた泡特性を示す発泡性飲料製品を効果的に製造することができる。
【0041】
また、本方法は、例えば、発泡性飲料と、当該発泡性飲料を収容する容器と、を有する発泡性飲料製品において、当該容器内の空寸部に、次の(a)又は(b)の条件を満たすように、炭酸ガス及び窒素ガスを充填することにより、当該発泡性飲料の泡特性を向上させる方法である:(a)炭酸ガス圧が200kPa以上であって、当該炭酸ガス圧に対する窒素ガス圧の比率が0.5以上である;(b)炭酸ガス圧が170kPa以上、200kPa未満であって、当該炭酸ガス圧に対する窒素ガス圧の比率が1.0以上である。
【0042】
本方法によれば、容器内の空寸部に、上記条件(a)又は(b)を満たすように、炭酸ガス及び窒素ガスを充填することにより、発泡性飲料製品の泡特性を効果的に向上させることができる。
【0043】
すなわち、本方法においては、例えば、発泡性飲料製品の容器内の空寸部に、炭酸ガス圧が200kPa以上であって、当該炭酸ガス圧に対する窒素ガス圧の比率が0.5以上という条件を満たすように、炭酸ガス及び窒素ガスを充填することにより、当該条件を満たさない場合に比べて、当該発泡性飲料の泡特性を効果的に向上させる。
【0044】
また、本方法においては、例えば、発泡性飲料製品の容器内の空寸部に、炭酸ガス圧が170kPa以上、200kPa未満であって、当該炭酸ガス圧に対する窒素ガス圧の比率が1.0以上という条件を満たすように、炭酸ガス及び窒素ガスを充填することにより、当該条件を満たさない場合に比べて、当該発泡性飲料の泡特性を効果的に向上させる。
【0045】
本方法による泡特性の向上は、例えば、形成される泡のきめ細かさ、泡立ち特性及び泡持ち特性からなる群より選択される1つ以上の泡特性の向上である。
【0046】
泡のきめ細かさの向上は、例えば、発泡性飲料の液面に形成される泡の気泡径の縮小である。泡立ち特性の向上は、例えば、発泡性飲料の液面に形成される泡の厚さの増加である。泡持ち特性の向上は、例えば、発泡性飲料の液面に形成された泡の厚さの所定時間内における低下の抑制である。泡持ち特性の向上は、例えば、NIBEM値の増加として評価される。
【0047】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例】
【0048】
[発泡性飲料製品の製造]
麦芽及びホップを含む原料を使用して発酵前液(いわゆる麦汁)を調製し、当該発酵前液にビール酵母を添加してアルコール発酵を行うことにより、ビールを製造した。
【0049】
次いで、このビール350mLを、アルミニウム製の缶に充填するとともに、当該缶の空寸部(容積約21mL)に、炭酸ガス及び窒素ガスを所定の条件を満たすように充填した。
【0050】
すなわち、まず、缶内の空気を炭酸ガスに置換し、次いで、当該缶内にビールを充填し、その後、当該缶内の空寸部に液体窒素を滴下し、最後に当該缶を巻き締めした。
【0051】
こうして、ビールと、当該ビールを収容する缶とを有し、当該缶内の空寸部に炭酸ガス及び窒素ガスが所定の条件を満たすように充填された11種類の発泡性飲料製品を製造した。
【0052】
[炭酸ガス圧及び窒素ガス圧の測定]
市販の溶存窒素・炭酸ガス分析計(モデル511シリーズ、株式会社ハック・ウルトラ製)を使用して、発泡性飲料製品の缶内の空寸部に含まれる炭酸ガス圧及び窒素ガス圧を測定した。
【0053】
この分析計は、熱伝導度検出器(TCD:Thermal Conductivity Detector)素子を含む炭酸ガス検出器及び窒素ガス検出器を備えていた。
【0054】
具体的に、上記分析計の炭酸ガス検出器及び窒素ガス検出器に接続された針状のサンプリング部を発泡性飲料製品の缶内の空寸部に刺し込むことにより、当該空寸部内における炭酸ガス圧及び窒素ガス圧を20℃にて測定した。炭酸ガス検出器の測定レンジは0〜10barであり、窒素ガス検出器の測定レンジは0〜350ppmであった。
【0055】
炭酸ガス検出器による測定値(bar)及び窒素ガス検出器による測定値(ppm)は、それぞれPa単位の数値(絶対圧)に換算した。
【0056】
[泡特性の評価]
発泡性飲料製品の350mL缶のプルトップ式蓋を開けて開口を形成し、当該開口から当該缶内の約350mLのビールを、容積約420mLのタンブラーに10秒間で注ぎ出した。そして、15名のパネラーにより、タンブラー内のビールの状態を観察した。
【0057】
すなわち、まず、タンブラー内のビールにおけるサージングの発生を評価した。ここで、一般に、ビール等の発泡性飲料をタンブラー等の容器に注いだときに、当該発泡性飲料の液面付近に形成された泡の下で液体と気体とが滞留している状態でサージングが発生すると、当該発泡性飲料の泡の特性が向上する。したがって、サージングの発生は、容器に注がれた発泡性飲料の泡特性が優れていることを示す指標となる。
【0058】
また、タンブラー内のビールの液面付近に形成された泡の状態を総合的に評価した。すなわち、泡のきめ細かさ(官能検査)、泡立ち(ビールをタンブラーに注いでから1分後及び2分後の泡の厚さ)、泡持ち(ビールをタンブラーに注いだ直後、その1分後及び2分後の泡の厚さ)を総合的に評価した。
【0059】
[結果]
図1には、11種類の発泡性飲料製品(例1〜例11)の各々について、その缶内の空寸部のガス圧と、タンブラーに注がれたビールの泡特性とを評価した結果を示す。すなわち、
図1には、空寸部の炭酸ガス圧(kPa)及び窒素ガス圧(kPa)と、当該炭酸ガス圧及び窒素ガス圧に基づき算出されたN
2/CO
2比率と、タンブラーに注がれたビールにおけるサージング及び泡の状態を評価した結果とを示す。
【0060】
「サージング」欄において、「×」印はサージングがほとんど発生していなかったことを示し、「△」印はサージングが少しだけ発生していたことを示し、「○」印はサージングが発生していたことを示し、「◎」はサージングが十分に発生していたことを示す。なお、サージングの評価は、「官能的な評価」と「ビールをタンブラーに注いでから1分後の泡の厚さ」とを総合的に評価することにより行った。また、「泡の状態」欄において、「△」印はビールに求められる泡特性として問題がなかったことを示し、「○」印はビールに求められる泡特性として優れていたことを示す。なお、「泡の状態」については、ビールに求められる泡として不十分であることを示す「×」印という評価も用意されていたが、当該「×」印と評価された例はなかった。
【0061】
図1に示すように、例1〜例4においては、炭酸ガス圧が170kPa以上、200kPa未満であった。そして、例3においては、N
2/CO
2比率が0.98であり、サージングは「×」印と評価され、泡の状態は「△」印と評価された。
【0062】
これに対し、例4では、N
2/CO
2比率が1.12であり、サージングは「△」印と評価され、泡の状態は「△」印と評価された。また、例1では、N
2/CO
2比率が1.48であり、サージングは「○」印と評価され、泡の状態は「○」印と評価された。さらに、例2では、N
2/CO
2比率が1.81であり、サージングは「◎」印と評価され、泡の状態は「○」印と評価された。
【0063】
また、
図1に示すように、例5〜例11においては、炭酸ガス圧が200kPa以上であり、N
2/CO
2比率は0.5以上であった。そして、例6、例8及び例10では、N
2/CO
2比率が0.56〜0.62であり、サージングは「○」印と評価され、泡の状態は「△」印又は「○」印と評価された。また、例5、例7、例9及び例11では、N
2/CO
2比率が0.80〜1.35であり、サージングは「◎」印と評価され、泡の状態は「○」印と評価された。さらに、
図1には示していないが、サージングの「官能的な評価」においては、例9は「△」印と評価され、例11は「○」と評価され、例5及び例7は「◎」と評価された。すなわち、例9より例11が好ましく、例11より例5及び例7がさらに好ましいと評価された。