特許第5730238号(P5730238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730238
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】統合冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/00 20060101AFI20150514BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   F28F9/00 D
   F28F9/02 301Z
   F28F9/02 301G
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-81048(P2012-81048)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-210152(P2013-210152A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
(72)【発明者】
【氏名】森 栄一
(72)【発明者】
【氏名】松平 範光
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−199206(JP,A)
【文献】 特開2001−304790(JP,A)
【文献】 特開2001−032959(JP,A)
【文献】 米国特許第05379832(US,A)
【文献】 特開2000−028238(JP,A)
【文献】 特表2010−518309(JP,A)
【文献】 米国特許第04168745(US,A)
【文献】 特開2010−127508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
F25B 49/02
F28F 11/00
B60H 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入側タンクおよび流出側タンクの間のコア部で第1冷却媒体を冷却する第1熱交換器を有する第1冷却回路と、
前記流出側タンクの内部に配置されて前記第1冷却媒体で第2冷却媒体を冷却する第2熱交換器を有し、該第2熱交換器での前記第2冷却媒体の圧力が前記第1冷却媒体の圧力より高くなる第2冷却回路と、
を備えた統合冷却システムにおいて、
前記流出側タンクに設けられ、所定圧以上で破断して該流出側タンクの内外を連通可能とする脆弱部と、
第2冷却媒体の第1冷却媒体への漏れを検出する第1異常漏れ検出センサ
前記第2冷却回路からの第2冷却媒体の漏れを検出する第2異常漏れ検出センサと、
前記第1および第2異常漏れ検出センサが異常漏れを検出したとき警報を発する警報器と、
備え、
前記第1異常漏れ検出センサで漏れを検出した場合と前記第2異常漏れ検出センサで漏れを検出したときとで、前記警報器による警報を異ならせたことを特徴とする統合冷却システム。
【請求項2】
請求項1に記載の統合冷却システムにおいて、
前記警報器は、音響機器、クラクション、表示器の少なくとも一つであることを特徴とする統合冷却システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の統合冷却システムにおいて、
前記第1冷却回路は、前記第1冷却媒体である冷却水を流す強電系部品用冷却回路であり、
前記第2冷却回路は、前記第2冷却媒体である空調用冷却媒体を流す空調用冷却回路であることを特徴とする統合冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる冷却媒体をそれぞれ使用する複数の冷却装置を用い、そのうちの一方の冷却装置の冷却媒体で他方の冷却装置の冷却媒体を冷却可能とした統合冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の統合冷却システムとしては、特許文献1に記載のものが知られている。
この従来の統合冷却システムは、自動車の電動モータなどエンジン以外の発熱体を冷却水で冷却する第1空冷熱交換器(サブ・ラジエータ)と、車両空調用の冷却媒体を冷却する第2空冷熱交換器(コンデンサ)と、を備えている。サブ・ラジエータの流出側タンク内に水冷熱交換器を配置し、サブ・ラジエータを循環する冷却水で空調機の冷却媒体を水冷した後にコンデンサへ流すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−127508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の統合冷却システムにあっては、サブ・ラジエータ内部に水冷熱交換器を配置しており、水冷熱交換器の内部には高圧の冷却媒体が流れるようになっているため、水冷熱交換器からサブ・ラジエータ内に冷媒ガスが漏れると、サブ・ラジエータの熱交換効率が低下したり、サブ・ラジエータ側の冷却回路の内部圧力が高まってサブ・ラジエータやこの冷却回路の部品を損傷してしまったりしてしまう。
【0005】
この対策を行うには、水冷熱交換器の液密性およびサブ・ラジエータ側の冷却回路の部品の耐圧力性を高めなければならず、これらを徹底しようとすると非常に高価で、かつ重量や寸法が大きなものになってしまう。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、異なる冷却回路にそれぞれ設けた2つの熱交換器で異なる冷却媒体をそれぞれ冷却するとともに一方の冷却媒体を他方の冷却媒体で冷却するようにした冷却システムにおいて、一方の冷却媒体が他方の冷却媒体中に漏れても、他方の冷却媒体側の冷却回路の部品の損傷を防止できるようにするとともに、その異常状態の発生をユーザーに認知させることができるようにした統合冷却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、請求項1に記載の本発明による統合冷却システムは、流入側タンクおよび流出側タンクの間のコア部で第1冷却媒体を冷却する第1熱交換器を有する第1冷却回路と、前記流出側タンクの内部に配置されて前記第1冷却媒体で第2冷却媒体を冷却する第2熱交換器を有し、該第2熱交換器での前記第2冷却媒体の圧力が前記第1冷却媒体の圧力より高くなる第2冷却回路と、を備えた統合冷却システムにおいて、前記流出側タンクに設けられ、所定圧以上で破断して該流出側タンクの内外を連通可能とする脆弱部と、第2冷却媒体の第1冷却媒体への漏れを検出する第1異常漏れ検出センサ前記第2冷却回路からの第2冷却媒体の漏れを検出する第2異常漏れ検出センサと、前記第1および第2異常漏れ検出センサが異常漏れを検出したとき警報を発する警報器と、備え、前記第1異常漏れ検出センサで漏れを検出した場合と前記第2異常漏れ検出センサで漏れを検出したときとで、前記警報器による警報を異ならせたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の本発明による統合冷却システムは、請求項1に記載の統合冷却システムにおいて、警報器が、音響機器、クラクション、表示器の少なくとも一つであることを特徴とする。
【0011】
また、請求項に記載の本発明による統合冷却システムは、請求項1又は請求項に記載の統合冷却システムにおいて、第1冷却回路が、第1冷却媒体である冷却水を流す強電系部品用冷却回路であり、第2冷却回路が、第2冷却媒体である空調用冷却媒体を流す空調用冷却回路であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の本発明の統合冷却システムにあっては、第2冷却媒体が第1冷却媒体中に漏れても、脆弱部が破損してこれより上の第1冷却媒体を外部へ逃がして圧力を減少させることで第1冷却媒体側の第1冷却回路の部品の損傷を防止できる。また、第1異常漏れ検出センサにて第2冷却媒体の第1冷却媒体への漏れを検出し、警報器で警報を発するので、ユーザーはこの異常状態を認識することができる。また、第2冷却媒体の第1冷却媒体への漏れの警報だけでなく、第2冷却回路の他の部位からの第2冷却媒体の漏れをも警報器でユーザーに警報を与えることができる。さらに、第2冷却媒体の第1冷却媒体への漏れの警報と、第2冷却回路の他の部位からの第2冷却媒体の漏れの警報とを異ならせたので、ユーザーにどちらの漏れが生じているか認知させることができる。
【0013】
請求項2に記載の本発明の統合冷却システムにあっては、警報に音や光を用いることで、ユーザーに容易に異常事態を認識させることができる。また、この統合冷却システムが車載のものであれば、警報器は新たに設けなくとも、車載の機器をそのまま利用することができる。
【0016】
請求項に記載の本発明の統合冷却システムにあっては、ハイブリッド車や電気自動車の空調システムおよび強電系部品の冷却システムに最適に適用することができる。

【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例1の統合冷却システムの全体を示す平面図である。
図2】実施例1の統合冷却システムの要部である水冷熱交換器を内蔵するサブ・ラジエータの流出側タンクの断面図である。
図3】実施例1の統合冷却システムで用いるガイド部材の変形例の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
まず、実施例1の統合冷却システムの全体構成を図1に基づいて説明する。
実施例1の統合冷却システムは、内燃機関と電気モータとを搭載し、いずれか一方および両方での駆動が可能なハイブリッド車に用いられる。
【0020】
この実施例1の統合冷却システムは、空調システムの冷却媒体の空調用冷却回路ACと、電気モータやインバータ等の強電部品を冷却する冷却水の強電系部品冷却回路ECと、を備えている。これらの空調用冷却回路ACと強電系部品冷却回路ECとは、水冷コンデンサ5で互いの冷却媒体間で熱交換が可能なように統合されている。
なお、強電系部品冷却回路ECは本発明の第1冷却回路に、また空調用冷却回路ACは、本発明の第2冷却回路にそれぞれ相当する。
【0021】
空調用冷却回路ACは、空冷コンデンサ1と、エクスパンション・バルブ2と、エバポレータ3と、コンプレッサ4と、水冷コンデンサ5と、 これら間を接続するパイプ等の流路と、を有する。
これらの部品間を流れる冷却媒体としては、たとえばHFC-134a(化学式:CH2FCF3)を用いる。冷却媒体の流れ方向は、図1中、矢印で示してある。
なお、空冷コンデンサ1は、強電系部品冷却回路ECの一部をも構成する。また、冷却媒体HFC-134aは、本発明の第2冷却媒体に相当する。
【0022】
空冷コンデンサ1は、互いに離間した流入側のタンクおよび流出側のタンクと、これら両タンク間を接続する複数のチューブ(あるいは交互に配列したチューブと冷却フィン)を有するコア部と、を有する。流入側タンクから流入した冷却媒体は、流出側タンクへ向かってコア部を流れる間に、冷却媒体と走行風(車両が停止している場合にはモーター・ファンによる強制風)との間で熱交換が行われ、冷却される。
ここで空気冷却された冷却媒体は、流路12を通ってエクスパンション・バルブ2へ流れる。
【0023】
エクスパンション・バルブ2は、空冷コンデンサ1で冷やされ過冷却液となった冷却媒体を低圧にするとともに絞ることで、冷却媒体を低温かつ低圧の霧状の冷媒として気化しやすいようにする。このようにした気化された冷却媒体は、流路13を通ってエバポレータ3へと送られる。
【0024】
エバポレータ3は、車室内に配設され図示を省略したエアコン・ユニットの送風ダクト内に配置されていて、エクスパンション・バルブ2を通過して減圧膨張した低温低圧の冷却媒体を、送風機の空気流を受けて蒸発させ、送風ダクト内を車室へ向けて流れる空気流を冷却する。
エバポレータ3から出た冷却媒体は、流路14を通ってコンプレッサ4の入口へ送り出される。
【0025】
コンプレッサ4は、エバポレータ3から送られてきた冷却媒体を圧縮して高圧にするもので、たとえば吐出容量可変形のコンプレッサで構成し、図示しないコントローラから図示しない容量制御用電磁弁に出力される容量制御信号に対応して吐出容量が変化(数%〜100%)するようにしている。このコンプレッサ4は、図示を省略した電磁クラッチ又はディレクト・プーリ(電磁クラッチなし)を介して図示しない電動モータによってベルト駆動される。
コンプレッサ4の出口から吐き出された冷却媒体は、流路15を通って水冷コンデンサ5の入口へ送られる。
【0026】
水冷コンデンサ5は、流出側タンク8の内部に配置され、この上方側から冷却媒体が流入され、その下方側から流出されるとともに、その水冷コンデンサ5の外周に沿って流出側タンク8内を強電系回路ECの冷却水が流されることで、冷却媒体と冷却水との間で熱交換が行なわれ、冷却媒体を冷却可能としている。
水冷コンデンサ5から流出した冷却媒体は、流路16を通って空冷コンデンサ1へと戻される。
なお、水冷コンデンサ5は、本発明の第2熱交換器に相当する。
【0027】
なお、同図中には明示しないが、空冷コンデンサ1とエクスパンション・バルブ2との間にリキッド・タンクを設けて、空冷コンデンサ1で液化された高圧中温の液化冷媒に含まれる水分やゴミをフィルタ部で取り除くとともに、余分な冷媒を一時的に溜めておき、急冷時等に冷却媒体が十分に供給できるようにしてもよい。
【0028】
一方、強電系冷却回路ECは、水冷コンデンサ5と、サブ・ラジエータ6と、図示しない強電部品冷却部と、これらを接続するパイプ等の流路と、を有し、これらの間を冷却水が流れるようにしてある。
なお、サブ・ラジエータ6は本発明の第1熱交換器に、また冷却水は本発明の第1冷却媒体にそれぞれ相当する。
【0029】
水冷コンデンサ5は、上記で説明したように、強電系冷却回路ECを流れる冷却水で空調用冷却回路ACを流れる冷却媒体を冷却可能である。
水冷コンデンサ5から流出した冷却水は、流路を通って強電系部品冷却部7へ送られる。
【0030】
サブ・ラジエータ6は、図示しない内燃エンジン冷却用のメイン・ラジエータの近くに配置され、樹脂製の、離間された流入側のタンク7および流出側のタンク8と、これらの両タンク7、8間を接続する複数のチューブおよび隣り合うチューブ間に配置された冷却フィンを有するコア部6aと、を備えている。冷却水は、流入側タンク7の上方側に設けられたインレット・ポート7aから流入し、コア部6aを通って流出側タンク8の下方側に設けられたアウトレット・ポート8aから流出する。
【0031】
なお、サブ・ラジエータ6の上部には、デガス・タンク9が取り付けられている。デガス・タンク9は、上面に圧力キャップが設けられるとともに、パイプ10aを介して流入側タンク7の上方部分に設けられた流入ポート7aに、またパイプ10bを介して流出側タンク8の下方部分に設けられた流出ポート8aに接続されている。冷却水中の空気や気体をここに集めて溜め、外部へ放出するようにしてある。また、その内部には、冷却水が入っており、強電系部品用冷却回路ECを循環する冷却水の量の変化に応じて冷却水を溜めたり供給したりする。冷却水が過大となったときは外部へ放水するオーバーフロー・パイプ11が取り付けられている。
【0032】
また、サブ・ラジエータ6の流出側タンク8の外側側面の上方位置には、図2に示すように、タンクの肉厚をその部分だけ他の部分より薄くした脆弱部80と、この外周で下方に開口したガイド部材81とが設けられている。ガイド部材81には、放出パイプ17が取り付けられている。
【0033】
万が一、冷却媒体が冷却水に入ったとき、冷却媒体が膨張して強電系部品冷却回路ECの内部圧力が高くなって強電系部品冷却回路ECの部品が破損するのを避けるため、内部圧力が所定値以上になったら、脆弱部80が破損してガイド部材81を介して冷却水や冷却媒体の一部を流出側タンク8の側面上方から外側へ吐き出すように、脆弱部80の破断強度を設定してある。
【0034】
また、流出側タンク8の底部内面から脆弱部80の下端までの距離Lは、脆弱部80が破断して上記冷却水の一部が外部へ流出した場合でも、流出側タンク8の底部内面から脆弱部80の下端までの容積内に、強電系部品冷却回路ECを機能させるのに最低限必要な量の冷却水を確保できる大きさに設定してある。
【0035】
強電系部品冷却部で温められた冷却水は、流入側タンク7から流入して流出側タンク8へ向かってコア部6aを流れる際に、走行風(ただし、車両が停止しているときはモーター・ファンによる強制風)と冷却水との間で熱交換を行い、冷却水を冷却して流路を通って水冷コンデンサ5へ送られる。
【0036】
強電系部品冷却部は、電気モータのケース内部に形成した冷却通路やインバータのケースの底部に形成した冷却通路等であって、これらにサブ・ラジエータ6で冷却された冷却水を流すことで、電気モータやインバータ等の強電系部品で発熱した熱を奪うことでこれらを冷却する。
強電系部品を冷却することで温められた冷却水は、流路を通ってサブ・ラジエータ6へ送られる。
【0037】
前記脆弱部80の箇所には、近接センサ21を設け、脆弱部80が破断したときこれを検出し、その検出信号をコントローラ23に送るようにしてある。この近接センサ21は、本発明の第1異常漏れ検出センサに相当する。
また、コンプレッサ4の出口側の冷却媒体の温度を検出する温度センサ22を設け、ここで温度を検出し、その検出信号をコントローラ23にその検出信号を送るようにしてある。この温度センサ22は、本発明の第2異常漏れ検出センサに相当する。
【0038】
コントローラ23は、近接センサ21および温度センサ22からの検出信号に基づき、空調用冷却回路ACからのすべての部位における冷却媒体の漏れ、および空調用冷却回路ACから強電系部品用冷却回路ECの冷却水への冷却媒体の漏れを判断し、警報器24へ警報信号を発するようにしてある。
警報器24は、車両の音響機器、クラクション、表示器のうちの少なくとも一つを用い、コントローラ23から警報信号を受けたら、音響や光で冷却回路の異常をユーザーに知らせるものである。
【0039】
以上のように構成された統合冷却システムの作用について、以下に説明する。
空調用冷却回路ACでは、冷却媒体は空冷コンデンサ1で空冷されて過冷却液の状態となって流路12を通ってエクスパンション・バルブ2に送られる。
エクスパンション・バルブ2では、過冷却液の状態の冷却媒体を低圧化して絞ることにより、低温かつ低圧の霧状の冷媒として気化しやすいようにする。このようにして気化された冷却媒体は、流路13を通ってエバポレータ3へ送られ、ここでエクスパンション・バルブ2を通過して減圧膨張した低温低圧の冷却媒体を、送風機の空気流を受けて蒸発させ、低温になった冷却媒体で、送風ダクト内を車室へ向けて流れる空気流を冷却し、車室内を冷房する。
エバポレータ3で熱交換して温められた冷却媒体は、流路14を通ってコンプレッサ4に送られる。
【0040】
コンプレッサ4では、冷却媒体が圧縮して高圧にされた(したがって温度も上昇する)後、流路15、第1切換えバルブV1を通って水冷コンデンサ5へ送られる。
冷却媒体は、水冷コンデンサ5を通過するとき、強電系部品冷却回路ECの冷却水と熱交換を行って冷却され、流路16を通って空冷コンデンサ1でさらに冷却されて流路12を通ってエクスパンション・バルブ2へ送られる。
このようにして、冷却媒体は、空調用冷却回路ACを循環する。
【0041】
一方、強電系部品回路ECでは、強電系部品冷却部で電気モータやインバータ等の強電系部品を冷却して温められた冷却水は、流路を通ってサブ・ラジエータ6に送られる。冷却水は、サブ・ラジエータ6で空冷され流路を通って水冷コンデンサ5に送られる。
水冷コンデンサ5では、サブ・ラジエータ6で冷却された低温の冷却水と、空調用冷却回路ACのコンプレッサ4から水冷コンデンサ5に流入してきた冷却媒体との間で熱交換が行われ、冷却媒体は冷却水で冷却された後、流路を通って強電系部品冷却部に送られる。
冷却水は、水冷コンデンサ5で若干温められるものの、強電部品を冷却するには十分低い温度であるので、強電系部品を冷却して流路を通ってサブ・ラジエータ6へ戻る。このようにして、冷却水は強電系部品冷却回路ECを循環する。
【0042】
以上が、通常時の作動である。
これに対し、空調用冷却回路ACからこの外部へ冷却媒体が漏れると、コンプレッサ4の出口側の冷却媒体の温度が下がるので、この温度の変化によりコントローラ23が漏れを検知・判断する。この結果、警報器24を作動させ、ユーザーに警告を発する。
なお、この漏れ検知は、空調用冷却回路ACのあらゆる部位からの漏れを検知する。
なお、この漏れで冷却媒体が強電系部品用冷却回路ECの冷却水に流入しないときは、近接センサ21は作動せず、また強電系部品用冷却回路EC内の圧が異常膨張する恐れもない。
【0043】
一方、万が一、空調用冷却回路ACの流出側タンク8内にある部分、すなわち水冷コンデンサ5やこの水冷コンデンサ5に接続された流入側および流出側パイプの流出側タンク8内にある部分が破損して冷却媒体が冷却水中に漏れると、冷却媒体が気化し始め強電系部品冷却回路EC内の内圧が高まって来る。
この内圧が所定圧になると、強電系部品冷却回路ECの一部を構成し、強度が一番弱い、流出側タンク8の脆弱部80を破断する。
【0044】
脆弱部80が破断すると、この脆弱部80の下端より上にある冷却水は、脆弱部80からガイド部材81を介してこの開口から流出側タンク8の外側側面から外部へ放出される。この場合の流出方向は、サブ・ラジエータ6の幅方向外側であるので、他の車載部品にはできるだけ当たらないようにしてある。
【0045】
上記一部冷却水の放出により、強電系部品冷却回路ECの内圧の上昇は抑えられ、強電系部品冷却回路ECの部品の破損は避けられる。
また、冷却水は、流出側タンク8の脆弱部80の下端(そこから距離Lの位置にある)より下の部分は流出しないので、強電系部品冷却回路ECを機能させるのに最低限必要な量は確保される。これにより、空調用冷却回路ACが失陥しても、強電系部品用冷却回路ECの最低限の冷却機能は確保され、強電系部品を冷却し続ける。
【0046】
なお、冷却水に漏れ込んだ冷却媒体はほぼ気化し、一部が流出側タンク8の脆弱部80より上の部分に溜まり、残りが脆弱部80を通ってガイド部材81から外部へ出ていく。
【0047】
また、このように脆弱部80が破断すると、近接センサ21がこれを検出し、この検出信号をコントローラ23に送る。コントローラ23は、この検出信号により冷媒液体が冷却水に漏れこんだことを判断し、警報器24へ警報信号を送る。警報器24では警報音や光による警報表示を行い、ユーザーに異常を認知させる。
なお、この冷却媒体の冷却水への漏れの異常時は、これ以外の他の部位での漏れの場合とは、警報器24による警報音や警報表示を異ならせるようにしてもよい。
【0048】
以上説明したように、本実施例の統合冷却システムは、以下の効果を有する。
本実施例の統合冷却システムにあっては、サブ・ラジエータ6の流出側タンク8内に水冷コンデンサ5を配置するとともに、強電系部品用冷却回路ECに必要な最低限以上の容量を確保可能な流出側タンク8の高さLに脆弱部80を設けた。
これにより、万が一、サブ・ラジエータ6の流出側タンク8内で強電系部品用冷却回路ECの冷却水に空調用冷却回路ACの冷却媒体が漏れて流れ込んで気化して流出側タンク8内の圧力が上昇したとしても、流出側タンク8の上方に設けた脆弱部80が破断して、漏れた冷却媒体を脆弱部80の下端より上にある冷却水とともに、外部へ放出する。
【0049】
この場合、脆弱部80より下にある冷却水は外部に漏れ続けることはなく、強電系用冷却回路ECに最低限必要な冷却水の量は、確保されるので、電気モータ、インバータ、バッテリ等の強電系部品の冷却を確保し続けることができる。
一方、水冷コンデンサ5が流出側タンク8内に配置されているので、正常時にあっては、サブ・ラジエータ6のコア部6aで冷却されて流出側タンク8へ流入してきた冷却水で冷却媒体を冷却するので、その冷却効率を向上させることができる。
【0050】
また、脆弱部80の近くに近接センサ21を設けて、この脆弱部80の破断を検出して警報器24で警報を発するようにしたので、冷却媒体が冷却水に漏れこんだことをユーザーが認知することができる。
また、温度センサ22で空調用冷却回路ACでのあらゆる部位での漏れを検出して警報器24で警報を発するようにしたので、すべての漏れに対しユーザーに認知させることができる。
なお、この場合、前者と後者での警報を異ならせたので、ユーザーはどちらの漏れが生じたのかを認識することができる。
【0051】
また、脆弱部80を水冷コンデンサ5の上方の位置に設けたので、空調用冷却回路AC内の冷却媒体が漏れても、この空調用冷却回路AC内の冷却媒体が冷却に必要な量が確保されている間は、水冷コンデンサ5内にある冷却媒体をその全周にある冷却水で冷却し続けることが可能となる。
【0052】
また、脆弱部80を流出側タンク8の側面に設けるとともに、脆弱部80とガイド部材81の開口をサブ・ラジエータ6の幅方向、したがって車両幅方向へ向けた。
これにより、脆弱部80を通って外部へ放出される冷却水が他の補機類にかかって不具合を起こすのを避けることが可能となる。
【0053】
以上、本発明を上記実施例に基づき説明してきたが、本発明はこれらの実施例に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更等があった場合でも、本発明に含まれる。
【0054】
たとえば、上記実施例では、ハイブリッド車に搭載する統合冷却システムにつき説明したが、本発明の統合冷却システムは、これに限られず、電気自動車など他のものに適用してもよい。
【0055】
また、本発明の統合冷却システムは、実施例の空調用冷却回路と強電部品用冷却回路とに限られず、互いに異なる冷却媒体を一方の冷却回路が他方の冷却回路より高い圧力となるような統合冷却システムであればよい。
【0056】
また、本発明の第1異常漏れ検出センサは、近接センサ21に限られず、流出側タンク8内の圧力を検出する圧力センサなど他の手段を用いてもよい。
【0057】
なお、ガイド部材81の形状を図3に示すようなガイド部材90に変更し、放出口91を車両前後方向へ向けるようにしてもよい。この場合、脆弱部80を設けた流出側タンク8を変更しなくとも、ガイド部材81、90を交換するだけで、冷却媒体の漏れ時に放出する冷却水の方向を車両幅方向から車両前後方向に変更することで、サブ・ラジエータ6の横に他の補機類がある場合でも、これらに冷却水がかかるのを防ぐことが可能となる。この変更は、ガイド部材81、90だけの変更で済むので安価となる。
なお、補機類の位置によってはこれを避けるため前後斜め方向に放出口91を向けることも可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 空冷コンデンサ
2 エクスパンション・バルブ
3 エバポレータ
4 コンプレッサ
5 水冷コンデンサ(第2熱交換器)
6 サブ・ラジエータ(第1熱交換器)
6a コア部
7 流入側タンク
8 流出側タンク
80 脆弱部
81、90 ガイド部材
9 デガス・タンク
10a、10b パイプ
11 オーバーフロー・タンク
12〜16 流路
17 放出パイプ
21 近接センサ(第1異常漏れ検出センサ)
22 温度センサ(第2異常漏れ検出センサ)
23 コントローラ
24 警報器
図1
図2
図3