特許第5730245号(P5730245)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730245
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】タップ付きコイル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/10 20060101AFI20150514BHJP
   H01F 29/02 20060101ALI20150514BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20150514BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20150514BHJP
   H01F 5/04 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   H01F41/10 C
   H01F29/02 N
   H01F27/28 K
   H01F5/00 F
   H01F5/04 E
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-154298(P2012-154298)
(22)【出願日】2012年7月10日
(65)【公開番号】特開2014-17387(P2014-17387A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2013年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】597005587
【氏名又は名称】株式会社エス・エッチ・ティ
(74)【代理人】
【識別番号】100066728
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 敏之
(74)【代理人】
【識別番号】100141841
【弁理士】
【氏名又は名称】久徳 高寛
(74)【代理人】
【識別番号】100119596
【弁理士】
【氏名又は名称】長塚 俊也
(74)【代理人】
【識別番号】100100099
【弁理士】
【氏名又は名称】宮野 孝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100114
【弁理士】
【氏名又は名称】西岡 伸泰
(72)【発明者】
【氏名】吉森 平
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 浩二
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−127156(JP,U)
【文献】 特開平06−275448(JP,A)
【文献】 特開平10−064734(JP,A)
【文献】 特開昭61−285704(JP,A)
【文献】 実開昭60−002807(JP,U)
【文献】 実開昭57−108313(JP,U)
【文献】 実開昭58−003008(JP,U)
【文献】 特開2004−207700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00
H01F 5/04
H01F 27/28
H01F 29/00−29/14
H01F 41/00−41/04
H01F 41/08−41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の導線をリング状に巻回してなるコイル本体と、該コイル本体の両端及び途中位置から引き出された複数のタップとを具えたタップ付きコイルの製造方法において、
1本の導線を途中でU字状に屈曲させることより、複数の直線部と、2つの隣接する直線部の間に介在するU字状部とを有する線材を作製する線材作製工程と、
前記線材作製工程によって得られた線材をリング状に巻回することにより、前記複数の直線部がリング状に巻回されてなるコイル本体と、前記U字状部がコイル本体から外側へ突出してなるタップとを形成する線材巻回工程
とを有し、
前記線材作製工程では、前記コイル本体の途中位置から引き出される全てのタップとなる複数のU字状部を形成した後、前記線材巻回工程を実施することを特徴とするタップ付きコイルの製造方法。
【請求項2】
前記線材作製工程では、前記導線の両端部を略直角に屈曲させて2つのI字状部を突設し、前記線材巻回工程では、前記2つのI字状部によってコイル本体の両端から引き出された2つのタップを形成する請求項1に記載のタップ付きコイルの製造方法。
【請求項3】
前記線材巻回工程では前記線材を1層若しくは多層に巻回する請求項1に記載のタップ付きコイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル本体の両端及び途中位置から複数のタップが引き出されたタップ付きコイル及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のタップ付きコイルにおいては、図5に示す如く、導線をリング状に巻回してコイル本体(21)が形成され、該コイル本体(21)の両端及び途中位置から複数のタップT1〜T4が引き出されており、この中から任意の2つのタップを一対の電極として選択することにより、両電極間のインダクタンスを複数の値に変化させることが出来る(特許文献1、2)。
【0003】
従来のタップ付きコイルにおいては、コイル本体(21)を形成する導線(10)の線径が比較的小さい場合、コイル本体(21)を形成するべく導線を巻回している途中で、該導線をコイル本体(21)の外部へ引き出して、端子ピンなどにからげることによって、タップを形成していた。
【0004】
しかしながら、コイル本体(21)を形成する導線の線径が大きくなるにつれて導線の引き回しが困難となるため、比較的大形のタップ付きコイルにおいては、コイル本体(21)を作製した後、該コイル本体(21)のタップ引き出し位置に、別の導線を接続して、該導線によってタップを構成していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−205212号公報
【特許文献2】特開2010−10354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来の比較的大形のタップ付きコイルの製造工程においては、コイル本体(21)にタップ引き出し用の導線を接続する作業が必要となり、工数の増大によって製造コストが嵩む問題があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、コイル本体の作製途中で導線を屈曲させてタップを形成する作業や、コイル本体の作製後にコイル本体にタップ引き出し用の導線を接続する作業が不要となる、新規な構造のタップ付きコイル、並びにその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るタップ付きコイルは、1本の導線(10)をリング状に巻回してなるコイル本体(21)と、該コイル本体(21)の両端及び途中位置から引き出された複数のタップとを具えている。
ここで、前記コイル本体(21)の途中位置から引き出されたタップは、前記コイル本体(21)を形成する導線(10)が途中でコイル本体(21)の外側へ引き出されてコイル本体(21)の途中位置とコイル本体(21)の外側位置との間を往復するU字状部によって形成されている。
【0009】
具体的態様において、前記コイル本体(21)の両端には、コイル本体(21)を形成する導線(10)の両端部を略直角に屈曲させてなる2つのI字状部が突設され、該2つのI字状部によって、コイル本体(21)の両端から引き出された2つのタップが構成されている。
【0010】
又、本発明に係るタップ付きコイルの製造方法は、
1本の導線(10)を途中でU字状に屈曲させることより、複数の直線部と、2つの隣接する直線部の間に介在するU字状部とを有する線材(1)を作製する線材作製工程と、
前記線材作製工程によって得られた線材(1)をリング状に巻回することにより、前記複数の直線部がリング状に巻回されてなるコイル本体(21)と、前記U字状部がコイル本体(21)から外側へ突出してなるタップとを形成する線材巻回工程
とを有している。
【0011】
具体的態様において、前記線材作製工程では、前記導線(10)の両端部を略直角に屈曲させて2つのI字状部を突設し、前記線材巻回工程では、前記2つのI字状部によってコイル本体(21)の両端から引き出された2つのタップを形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るタップ付きコイル及びその製造方法によれば、線材作製工程にて、コイル本体を形成すべき導線を屈曲させて形成されたU字状部が、線材巻回工程でそのままタップとなるので、線材巻回工程にてコイル本体の途中で導線を屈曲させてタップを形成する作業や、線材巻回工程の後にコイル本体にタップとなる導線を接続する作業は不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に係るタップ付きコイルの製造に用いる線材の一部破断平面図である。
図2図2は、本発明に係るタップ付きコイルの製造方法の第1工程を示す斜視図である。
図3図3は、該製造方法の第2工程を示す斜視図である。
図4図4は、該製造方法によって得られるタップ付きコイルの斜視図である。
図5図5は、タップ付きコイルの構成を説明する図である。
図6図6は、U字状部の具体的な形状例を示す平面図である。
図7図7は、導線の断面形状を示す図である。
図8図8は、導線の他の断面形状を示す図である。
図9図9は、中空導線を用いた場合のU字状部の形状を示す斜視図である。
図10図10は、中空導線を用いた場合のU字状部の他の形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明の一実施形態であるタップ付きコイル(2)は、図4に示す如く、導線をリング状に巻回してなる筒状のコイル本体(21)と、該コイル本体(21)の両端及び途中の2箇所から引き出された4つのタップT1〜T4とを具えている。
該タップ付きコイル(2)を形成すべき導線(10)は、図7に示す如く幅寸法W1が厚さ寸法t1よりも大きな矩形の断面形状を有している。
【0015】
該タップ付きコイル(2)の製造工程においては、先ず、図1に示す線材(1)を作製する(線材作製工程)。
該線材(1)は、1本の導線(10)を途中の4箇所で屈曲させてなり、同一直線上を伸びる3つの直線部(12)(14)(16)と、線材(1)の両端にて直線部(12)(14)(16)と直交する方向へI字状に延びる第1及び第2のI字状部(11)(17)と、第1直線部(12)と第2直線部(14)の間にて直線部(12)(14)と直交する方向へU字状に伸びる第1U字状部(13)と、第2直線部(14)と第3直線部(16)の間にて直線部(14)(16)と直交する方向へU字状に伸びる第2U字状部(15)とを具えている。
【0016】
この様な線材(1)は、適当な治具や曲げ加工機を用いて導線(10)を図示する形状に屈曲させることにより、容易に作製することが出来る。
【0017】
該線材(1)において、第1I字状部(11)から第1U字状部(13)までの長さL1は、図5に示すタップT1とタップT2の間のコイル巻線の長さに対応し、第1U字状部(13)から第2U字状部(15)までの長さL2は、図5に示すタップT2とタップT3の間のコイル巻線の長さに対応し、第2U字状部(15)から第2I字状部(17)までの長さL3は、図5に示すタップT3とタップT4の間のコイル巻線の長さに対応している。
【0018】
又、第1I字状部(11)の突出量B1は、図4に示すコイル本体(21)における第1I字状部(11)の引き出し点から所定の突出位置までの距離に対応し、第1U字状部(13)の突出量B2は、図4に示すコイル本体(21)における第1U字状部(13)の引き出し点から所定の突出位置までの距離に対応し、第2U字状部(15)の突出量B3は、図4に示すコイル本体(21)における第2U字状部(15)の引き出し点から所定の突出位置までの距離に対応し、第2I字状部(17)の突出量B4は、図4に示すコイル本体(21)における第2I字状部(17)の引き出し点から所定の突出位置までの距離に対応している。
【0019】
図1に示す線材(1)を作製した後、図2図4に示す如く線材(1)をリング状に巻回することによって、タップ付きコイル(2)を作製する(線材巻回工程)。
図2においては、第1I字状部(11)を巻き始めとして、第1直線部(12)をリング状に複数回、巻回することによって、第1I字状部(11)から離間した位置に、第1直線部(12)に続く第1U字状部(13)が巻き軸方向に突出することになる。
【0020】
図3においては、第1U字状部(13)に続く第2直線部(14)をリング状に複数回、巻回することによって、第1I字状部(11)と第1U字状部(13)の間に、第2直線部(14)に続く第2U字状部(15)が突出することになる。
【0021】
図4においては、第2U字状部(15)に続く第3直線部(16)をリング状に複数回、巻回することによって、第1U字状部(13)の外側に、第3直線部(16)に続く第2I字状部(17)が突出することになる。
【0022】
この結果、第1I字状部(11)、第1U字状部(13)、第2U字状部(15)及び第2I字状部(17)が4つのタップT1〜T4となって、コイル本体(21)と4つのタップT1〜T4とを具えたタップ付きコイル(2)が完成する。
【0023】
上述の様に線材(1)を巻回する工程は、適当な治具や巻線機を用いて容易に実施することが出来る。
【0024】
図4に示すタップ付きコイル(2)によれば、4つのタップT1〜T4の中から任意の2つのタップを一対の電極として選択することにより、両電極間のインダクタンスを複数の値に変化させることが出来る。
【0025】
又、上記タップ付きコイル(2)の製造工程によれば、4つのタップT1〜T4が、線材作製工程にて1本の導線(10)を両端及び途中の2箇所で屈曲させることにより形成されるので、その後の線材巻回工程にてコイル本体の途中で導線を屈曲させてタップを形成する作業や、線材巻回工程の後にコイル本体にタップとなる導線を接続する作業は不要となる。
【0026】
ここで、導線(10)をU字状に屈曲させて2つのU字状部(13)(15)を形成する作業は、従来の様にコイル本体を形成するべく導線を巻回している途中で該導線をU字状に屈曲させる作業や、線材巻回工程の後にコイル本体にタップとなる導線を接続する作業と比較して、遙かに容易である。
【0027】
尚、図2図4に示す例では、単一のコイル層からなるコイル本体(21)が形成されているが、複数のコイル層からなるコイル本体(21)を形成することも可能である。この場合、図2図4に示す工程と同様にして、第1のコイル層の外周面に重ねて第2のコイル層を巻回することが出来る。
【0028】
この様にして作製された本発明のタップ付きコイル(2)は、複数のリアクタンスを選択することが出来る単独のコイルとして用いられ、或いは別の主コイル(図示省略)と接続してリアクタンスを調整するための付属のコイルとして用いられる。
又、本発明に係るタップ付きコイル(2)は、高周波回路におけるリアクタンス要素として用いられ、或いは変圧器を構成する一次コイル若しくは二次コイルとして用いられる。
【0029】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
例えば図6に示すタップ付きコイル(2)においては、2つのU字状部(13)(15)はそれぞれ、2本の脚部と、両脚部の先端を繋ぐ円弧部Rとから構成され、2本の脚部と円弧部との境界位置で導線が90度捻られている。この場合、円弧部Rの直径は2本の脚部の間隔Aと略同一となるが、線材作製工程において円弧部Rを形成する際、導線の屈曲作業が容易なものとなる。
【0030】
又、導線(10)としては、図8に示す如く厚さ寸法t2が幅寸法W2よりも大きな矩形の断面形状を有するものを用いることも可能である。
これによって、線材作製工程における導線(10)の屈曲作業を更に容易なものとすることが出来る。
【0031】
又、導線(10)としては、図9に示す如く導線(10)の長さ方向に貫通する空洞(10a)を有する中空の導線を採用して、タップ付きコイル(2)を形成する導線(10)の一端から他端へ冷却水を流すことが可能である。
【0032】
この場合、線材作製工程においてU字状部(13)(15)を形成する際、円弧部R1にて導線(10)が潰れて空洞(10a)が塞がる虞があるが、例えば図10に示す様に、U字状部(13)(15)の円弧部R2を2本の脚部の間隔Aよりも大きな直径の円弧に屈曲させることにより、導線(10)が潰れて空洞(10a)が塞がることを回避することが可能である。
【0033】
更に又、導線(10)の断面形状としては、矩形に限らず、円形、台形、楕円形などを採用することが出来る。
【符号の説明】
【0034】
(1) 線材
(10) 導線
(11) 第1I字状部
(12) 第1直線部
(13) 第1U字状部
(14) 第2直線部
(15) 第2U字状部
(16) 第3直線部
(17) 第2I字状部
(2) タップ付きコイル
(21) コイル本体
T1〜T4 タップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10