特許第5730257号(P5730257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730257
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】消泡体
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/02 20060101AFI20150514BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20150514BHJP
   B01F 7/00 20060101ALI20150514BHJP
   B01F 7/02 20060101ALI20150514BHJP
   B01F 7/16 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   B01D19/02
   B01F3/04 C
   B01F7/00 C
   B01F7/02 A
   B01F7/16 F
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-211677(P2012-211677)
(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公開番号】特開2014-64986(P2014-64986A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2014年11月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】代田 博文
(72)【発明者】
【氏名】尾田 誠人
(72)【発明者】
【氏名】萩本 寿生
【審査官】 増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−013464(JP,A)
【文献】 特開昭50−126574(JP,A)
【文献】 特開平09−323082(JP,A)
【文献】 特開平06−106006(JP,A)
【文献】 特開昭50−125967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/02
B01F 3/04
B01F 7/00
B01F 7/02
B01F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する上ディスクと下ディスクとの間に、周方向に所定ピッチで破泡室を形成する複数の羽根を設けた消泡体であって、
前記上ディスクには、前記破泡室の中心側へ連通する孔が形成され、
前記下ディスクには、前記破泡室の中心側へ連通する孔が形成され
前記羽根は、前記上ディスクと下ディスクとの間に、平面視した場合に、扇型をなす形状に破泡室を形成し、
前記上ディスクと前記下ディスクは、側面視した場合に、少なくとも一部が互いに平行か、径方向外方に向かうに従い回転中心軸に沿う方向の距離が拡大するように形成されていることを特徴とする消泡体。
【請求項2】
回転する上ディスクと下ディスクとの間に、周方向に所定ピッチで破泡室を形成する複数の羽根を設けた消泡体であって、
前記上ディスクには、前記破泡室の中心側へ連通する孔が形成され、
前記下ディスクには、前記破泡室の中心側へ連通する孔が形成され、
前記羽根は、前記上ディスクと下ディスクとの間に、側面視した場合に、内周から外周へ向けて次第に拡大する傾斜状をなす破泡室を形成することを特徴とする消泡体。
【請求項3】
回転する上ディスクと下ディスクとの間に、周方向に所定ピッチで破泡室を形成する複数の羽根を設けた消泡体であって、
前記上ディスクには、前記破泡室の中心側へ連通する孔が形成され、
前記下ディスクには、前記破泡室の中心側へ連通する孔が形成され、
前記羽根は、前記上ディスクと下ディスクとの間に、側面視した場合に、内周から外周へ向けて次第に拡大した後縮小する複数の破泡室を形成することを特徴とする消泡体。
【請求項4】
前記破泡室は、平面視した場合に、扇型をなす形状であることを特徴とする請求項2又は3に記載の消泡体。
【請求項5】
前記下ディスクの孔は、被処理液上の泡に接触させ、
前記上ディスクの孔は、該被処理液の上方の空気を吸入する位置に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の消泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消泡装置の回転軸の先端に取り付ける消泡体に係り、前記回転軸を駆動することで羽根を回転させて被処理液上の泡を破泡させる消泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器内の溶液上に存在して、輸送ポンプへの混入によって輸送量不安定の原因となる泡を消失又は破壊させるための消泡装置が、特許文献1及び2に提案されている。
【0003】
特許文献1に示される消泡装置は、液面上部の水平面内で回転するロータを備えたものである。該ロータは、互いに間隔を有するように配置された上板及び下板と、該上下板間において回転中心部から放射状に配置した複数のフィンとを有し、該ロータの回転によって、該ロータの回転中心側において泡を吸引した後、フィン間を経由して該ロータの外周側にて排出し、これによって消泡処理を行うものである。
【0004】
特許文献2に示される消泡装置は、泡の吸引空間を有しその周囲に回転軸々方向の多数の垂直翼が放射状に配列された多翼ファンのような吸引羽根を有する。この吸引羽根は、その回転動作により吸引された泡を半径方向外方へ高速排出して、壁面に衝突させ、このときの泡の流れに一時的に生ずる圧力差によって泡を破壊又は破裂するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−216113号公報
【特許文献2】特開第3694461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1及び2に示される消泡装置は、いずれも回転体の中心部から吸い込んだ泡を、該回転体の遠心力により外方に高速排出して消泡処理する圧縮型羽根を有する構造である。
しかしながら、溶液に界面活性剤が混入されていることで膜厚の薄い「軽い泡」が発生する場合、泡を遠心力により外方に吹き飛ばしただけでは、泡が割れないばかりか、泡が複数個に分割されて細泡として残存する傾向があった。
すなわち、圧縮型羽根による消泡処理では、「軽い泡」を十分に破泡することができず、消泡のための添加物を加える、又は散水を行うなどの追加的な処理が必要となるという課題があった。
【0007】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、溶液上に界面活性剤が混入されていることで発生する軽い泡を確実に破泡させることができ、消泡のための添加物を加え、あるいは散水を行うなどの追加的な処理を行う必要のない、経済的な消泡装置の消泡体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は以下の手段を提供している。
すなわち、本発明の第一の態様によれば、消泡体は、回転する上ディスクと下ディスクとの間に、周方向に所定ピッチで破泡室を形成する複数の羽根を設けた消泡体であって、前記上ディスクには、前記破泡室の中心側へ連通する孔が形成され、前記下ディスクには、前記破泡室の中心側へ連通する孔が形成され、前記羽根は、前記上ディスクと下ディスクとの間に、平面視した場合に、扇型をなす形状に破泡室を形成し、前記上ディスクと前記下ディスクは、側面視した場合に、少なくとも一部が互いに平行か、径方向外方に向かうに従い回転中心軸に沿う方向の距離が拡大するように形成されていることを特徴とする。
【0009】
そして、この発明によれば、回転する上ディスクと下ディスクとの間に、周方向に所定ピッチで破泡室を形成する複数の羽根を設けた消泡体において、上ディスクに、破泡室の中心側へ連通する孔を形成し、かつ下ディスクに、破泡室の中心側へ連通する孔を形成した。これによって、例えば、下ディスクを被処理液の液面上の泡に接触させ、かつ上ディスクを空気中に位置させた状態で、これら上下ディスクを回転させた場合に、下ディスクの孔からは泡が吸引され、かつ上ディスクの孔からは空気が吸引されることになる。このとき、下ディスクの孔から吸い込まれた泡内に、上ディスクの孔から吸い込まれた空気の取り込みが可能となり、この状態で、当該泡に遠心力が加えられることになる。その結果、取り込まれた空気により泡を膨らませて、その表面積を増大し、さらに、膜厚が薄くなることによって泡に部分的な亀裂が生じて破泡し易くなる。
すなわち、本発明では、下ディスクの孔から吸い込まれた泡内に、上ディスクの孔から吸い込まれた空気を取り込んだ状態で、該泡に遠心力をかけることで、界面活性剤が混入されていることで発生する軽い泡をも確実に破泡させることができ、消泡のための添加物を加える、又は散水を行うなどの追加的な処理を不要とする経済的な消泡処理が可能となる。
【0011】
そして、この発明によれば、上ディスクと下ディスクとの間でかつ羽根の間に、周方向に所定ピッチで複数の破泡室を形成し、かつこれら破泡室のそれぞれを平面視、扇型をなす形状としたので、下ディスクの孔から吸い込まれた泡に遠心力が加わる際に、該泡を減圧下に置くことができ、これによって泡の表面積を増大し、泡の膜厚を薄くする事により、効率良く消泡処理を行うことができる。
【0012】
また、本発明の第二の態様によれば、消泡体は、回転する上ディスクと下ディスクとの間に、周方向に所定ピッチで破泡室を形成する複数の羽根を設けた消泡体であって、前記上ディスクには、前記破泡室の中心側へ連通する孔が形成され、前記下ディスクには、前記破泡室の中心側へ連通する孔が形成され、前記羽根は、前記上ディスクと下ディスクとの間に、側面視した場合に、内周から外周へ向けて次第に拡大する傾斜状をなす破泡室を形成することを特徴とする。
【0013】
そして、この発明によれば、側面視した場合に、上下ディスク間に形成された羽根間の破泡室を、内周から外周へ向けて次第に拡大する傾斜状をなす形状としたので、下ディスクの孔から吸い込まれた泡に遠心力が加わる際に、該泡に高い圧力変動を与えて効率良く消泡処理を行うことができる。
【0014】
また、本発明の第三の態様によれば、消泡体は、回転する上ディスクと下ディスクとの間に、周方向に所定ピッチで破泡室を形成する複数の羽根を設けた消泡体であって、前記上ディスクには、前記破泡室の中心側へ連通する孔が形成され、前記下ディスクには、前記破泡室の中心側へ連通する孔が形成され、前記羽根は、前記上ディスクと下ディスクとの間に、側面視した場合に、内周から外周へ向けて次第に拡大した後縮小する複数の破泡室を形成することを特徴とする。
【0015】
そして、この発明によれば、側面視した場合に、上下ディスク間に形成された羽根間の破泡室を、内周から外周へ向けて次第に拡大した後縮小する傾斜状をなす形状としたので、下ディスクの孔から吸い込まれた泡に遠心力が加わることで、該泡が減圧されて破泡し、その後、破泡により形成された被処理液を加圧して外部に送り出すことができる。これにより該泡に圧力変動及び衝撃を与えて、効率良く消泡処理を行うことができる。
【0016】
また、上記消泡体では、前記下ディスクの孔は、被処理液上の泡に接触させ、前記上ディスクの孔は、該被処理液の上方の空気を吸入する位置に配置されてよい。
【0017】
そして、この発明によれば、消泡体の下ディスクの孔を、被処理液上の泡に接触させ、かつ上ディスクの孔は、該被処理液の上方の空気を吸入する位置に配置することで、下ディスクの孔から吸い込まれた泡内に、上ディスクの孔から吸い込まれた空気を取り込むことができ、かつこの状態で当該泡に遠心力を加えることができる。これにより、界面活性剤が混入されていることで発生する軽い泡をも確実に破泡させることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回転する上ディスクと下ディスクとの間に、周方向に所定ピッチで破泡室を形成する複数の羽根を設けた消泡体において、上ディスクに、破泡室の中心側へ連通する孔を形成し、かつ下ディスクに、破泡室の中心側へ連通する孔を形成した。これによって、例えば、下ディスクを被処理液の液面上の泡に接触させ、かつ上ディスクを空気中に位置させた状態で、これら上下ディスクを回転させた場合に、下ディスクの孔からは泡が吸引され、かつ上ディスクの孔からは空気が吸引されることになる。このとき、下ディスクの孔から吸い込まれた泡内に、上ディスクの孔から吸い込まれた空気を取り込み可能となり、この状態で、当該泡に遠心力が加えられることになる。その結果、空気が取り込まれた泡が破泡室内にて膨らんで、泡の表面積が増大し、これによって泡に部分的な亀裂が生じて破泡が生じ易くなる。
すなわち、本発明では、下ディスクの孔から吸い込まれた泡内に、上ディスクの孔から吸い込まれた空気を取り込んだ状態で、該泡に遠心力をかけることで、界面活性剤が混入されていることで発生する軽い泡をも確実に破泡させることができ、消泡のための添加物を加える、又は散水を行うなどの追加的な処理を不要とする経済的な消泡処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る消泡体が取り付けられる消泡装置を示す正断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る消泡体を示す図であって、図2(A)は平面図、図2(B)は図2(A)のII−II線に沿って切断した正断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る消泡体を示す図であって、図3(A)は平面図、図3(B)は図3(A)のIII−III線に沿って切断した正断面図である。
図4】本発明の第3実施形態に係る消泡体を示す図であって、図4(A)は平面図、図4(B)は図4(A)のIV−IV線に沿って切断した正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1及び図2を参照して説明する。
図1は、内部に被処理液Wが貯留される筒状の処理槽1に、消泡装置10(後述する)が設置された状態を示す正断面図である。処理槽1は、排水を濃縮して半固形状にし、最後は焼却する設備の一部に設けられるものであって、給排水装置2を通じて被処理液Wとなる排水が供給又は排出される。
なお、被処理液Wとなる排水には、例えば、エチレングリコールや界面活性剤、アクリルアミドやシアノアクリレート等の接着成分などが含まれ、輸送、撹拌、遠心分離処理などで生じた泡(符号Bで示す)が水面に浮遊した状態となっている。
【0021】
消泡装置10が設けられる処理槽1は、周囲を囲む側壁3とその上部を覆うスラブ4とを有し、このスラブ4の中央に形成された開口部5には、筒状の支持部6が設けられている。この支持部6の上部には取付架台11が設けられており、この取付架台11により前記消泡装置10が支持されている。前記取付架台11の中央部には、駆動モータMが設けられ、この駆動モータMの回転軸12に、本発明に係る消泡体20が取り付けられている。
駆動モータMの回転軸12は、処理槽1の中央上部に上下方向に配置されるものであって、その下端部に、水平となるように消泡体20が取り付けられている。また、回転軸12は、その軸線12Aに沿うように取付架台11に上下方向に移動自在に設けられており、二点鎖線で示す上方位置から、実線で示す下方の消泡処理位置との間を移動することができるようになっている。
【0022】
次に、図2(A)の平面図、図2(B)の正断面図を参照して、消泡装置10のモータ回転軸12先端に取り付けられる、本発明に係る消泡体20について説明する。
【0023】
消泡体20は、互いに間隔をおいて平行な位置関係に設けられた上ディスク21と下ディスク22との間に、周方向に沿って所定ピッチで破泡室23を形成する複数の羽根24を設けた構造である。これら羽根24は、上下ディスク21・22間を連結するように図中上下方向に空間を仕切るように一定のピッチで配置され、これにより該羽根24の間に、破泡室23を形成している。
【0024】
そして、このような構成により、図2(A)に示すように、羽根24の間でありかつ上ディスク21と下ディスク22との間に、半径方向外方に向かうに従い幅広になり、平面視、扇型をなす形状の破泡室23が、周方向に所定ピッチで複数形成されることになる。
【0025】
この消泡体20において、上ディスク21には、羽根24の間に位置する破泡室23の中心側へ連通する孔21Aが形成され、また、下ディスク22には、該孔21Aと対向するように破泡室23の中心側へ連通する孔22Aが形成されている。
また、羽根24の間でありかつ上下ディスク21・22間における破泡室23の外周縁部は、破泡処理した泡Bの液体を処理槽1に戻すための開口部23Aとなっている。
【0026】
そして、このような消泡体20では、下ディスク22の孔22Aを、被処理液W上の泡Bに接触させ、かつ上ディスク21の孔21Aを、該被処理液Wの上方の空気を吸入する位置に配置される。これによって、駆動モータMの駆動によって、消泡体20がその内部の羽根24とともに水平面内で回転した場合に、下ディスク22の孔22Aからは泡Bが吸引され、かつ上ディスク21の孔21Aからは空気が吸引されることになる。
【0027】
以上のように構成された消泡体20の作用について説明する。
図1及び図2に示すように、まず、モータ回転軸12の軸線12Aに沿って上下方向に位置を調整することで、消泡体20の下ディスク22を被処理液Wの液面上の泡Bに接触させ、かつ上ディスク21を空気中に位置するように配置する。なお、上ディスク21のほとんど全部が泡Bに没するように深く配置しても良い。
【0028】
その後、図2に矢印aで示すように、駆動モータMの回転軸12を駆動することにより、上下ディスク21・22を回転させる。これにより、下ディスク22の孔22Aからは、被処理液W上の泡Bが吸引され、かつ上ディスク21の孔21Aからは、被処理液W上方の空気(および/または 上部の泡B)が吸引されることになる。
このとき、下ディスク22の孔22Aから吸い込まれた泡Bの内部に、上ディスク21の孔21Aから吸い込まれた空気が取り込まれ易い状態となり(図2(B)参照)、この状態で、当該泡Bに遠心力が加えられることになる。その結果、空気が取り込まれた泡Bが膨らんで、泡Bの表面積が増大し、これによって泡Bに部分的な亀裂が生じて破泡し易くなる。
また、上ディスク21と下ディスク22との間でかつ羽根24間に、周方向に所定ピッチで複数形成された破泡室23のそれぞれは、半径方向外方に向かうに従い幅広になるように、平面視、扇型をなすように形成されているので、下ディスク22の孔22Aから吸い込まれた泡Bに遠心力が加わる際に、泡Bが外方に移動するに従い周囲の圧力が減少する。その結果、当該泡Bを減圧下に置くことができ効率良く消泡処理を行うことができる。
【0029】
以上詳細に説明したように本実施形態に示される消泡体20では、回転する上ディスク21と下ディスク22との間に、周方向に所定ピッチで破泡室23を形成する複数の羽根24を設けた構造において、上ディスク21に、破泡室23の中心側へ連通する孔21Aを形成し、かつ下ディスク22に、破泡室23の中心側へ連通する孔22Aを形成した。
これによって、例えば、下ディスク22を被処理液Wの液面上の泡Bに接触させ、かつ上ディスク21を空気中に位置させた状態で、これら上下ディスク21・22を回転させた場合に、下ディスク22の孔22Aからは泡Bが吸引され、かつ上ディスク21の孔21Aからは空気が吸引されることになる。このとき、下ディスク22の孔22Aから吸い込まれた泡内に、上ディスク21の孔21Aから吸い込まれた空気を取り込み可能となり、この状態で、当該泡Bに遠心力が加えられることになる。その結果、空気が取り込まれた泡Bが破泡室23にて膨らんで、表面積が増大し、これによって泡Bに部分的な亀裂が生じて破泡が生じ易くなる。
【0030】
すなわち、本実施形態に示される消泡体20では、下ディスク22の孔22Aから吸い込まれた泡内に、上ディスク21の孔21Aから吸い込まれた空気を取り込んだ状態で、該泡Bに遠心力をかけることで、界面活性剤が混入されていることで発生する軽い泡をも確実に破泡させることができ、消泡のための添加物を加える、又は散水を行うなどの追加的な処理を不要とする経済的な消泡処理が可能となる。
【0031】
また、本実施形態に示される消泡体20では、上ディスク21と下ディスク22との間でかつ羽根24間に、周方向に所定ピッチで複数の破泡室23を形成し、かつ該破泡室23のそれぞれを、平面視、扇型をなす形状としたので、下ディスク22の孔22Aから吸い込まれた泡Bに遠心力が加わる際に、該泡Bを減圧下に置くことができ、これによって効率良く消泡処理を行うことができる。
【0032】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について図3を参照して説明する。
【0033】
第2実施形態に示される消泡体30が、第1実施形態に示される消泡体20と構成を異にする点は、孔31A・32Aを有する上下ディスク31・32、及びこれら上下ディスク31・32間に形成された羽根33の形状である。
すなわち、第2実施形態に示される消泡体30では、図3(A)の平面図及び図3(B)の側断面図に示すように、上ディスク31が、駆動モータMにおける回転軸12の軸線12Aの周囲にて、該軸線12Aに対して直交する位置関係に配置された水平面31Bを有している。また、下ディスク32は、上ディスク31の水平面31Bに対して、下方に向けて先端部が連続的に傾斜する位置関係に配置されている。
また、羽根33は、上下ディスク31・32間を連結するように図中上下方向に空間を仕切るように一定のピッチで配置され、該羽根33の間に、破泡室34を形成している。また、該羽根33は、図3(B)に示すように側面視した場合に、内周から外周へ向けて次第に拡大する傾斜状を有しており、これに伴い、羽根33間に形成された破泡室34も、側面視した場合に、内周から外周へ向けて次第に拡大する傾斜状をなしている。
【0034】
一方、羽根33間に形成された破泡室34は、図3(A)に示すように、平面視した場合に、径方向外方に向かうに従い幅広になるように、扇型をなす形状に形成されている。
すなわち、第2実施形態の破泡室34では、平面視した場合(図3(A)参照)、及び側面視した場合(図3(B)参照)のいずれにおいても、半径方向外方に向かうに従い幅広になるように形成されており、下ディスク32の孔32Aから吸い込まれた泡Bに遠心力が加わる際に、泡Bが外方に移動するに従い周囲の圧力が急激に減少する。その結果、当該泡Bに高い圧力変動を与えて効率良く消泡処理を行うことができる。
【0035】
以上詳細に説明したように第2実施形態に示される消泡体30では、第1実施形態と同様に、下ディスク32を被処理液Wの液面上の泡Bに接触させ、かつ上ディスク31を空気中に位置させた状態で、これら上下ディスク31・32を回転軸12の軸線12Aを中心として回転させた場合に、下ディスク32の孔32Aからは泡Bが吸引され、かつ上ディスク31の孔31Aからは空気が吸引されることになる。このとき、下ディスク32の孔32Aから吸い込まれた泡内に、上ディスク31の孔31Aから吸い込まれた空気を取り込み可能となり、この状態で、当該泡Bに遠心力が加えられることになる。その結果、空気が取り込まれた泡Bが破泡室34にて膨らんで、泡Bの表面積が増大し、これによって泡Bに部分的な亀裂が生じて破泡が生じ易くなる。
また、上記消泡体30では、平面視した場合(図3(A)参照)、及び側面視した場合(図3(B)参照)のいずれにおいても、上下ディスク31・32の羽根33間に形成された破泡室34を、内周から外周へ向けて次第に拡大する傾斜状をなす形状としたので、下ディスク32の孔32Aから吸い込まれた泡Bに遠心力が加わる際に、該泡Bを高い減圧変動下に置くことができ、これによって効率良く消泡処理を行うことができる。
【0036】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について図4を参照して説明する。
【0037】
第3実施形態に示される消泡体40が、第1及び第2実施形態に示される消泡体20・30と構成を異にする点は、孔41A・42Aを有する上下ディスク41・42、及びこれら上下ディスク41・42間に形成された羽根43の形状である。
すなわち、第3実施形態に示される消泡体40では、図4(A)の平面図及び図4(B)の側断面図に示すように、上ディスク41が、駆動モータMにおける回転軸12の軸線12Aの周囲にて、該軸線12Aに対して直交する位置関係に配置された水平面41Bと、該水平面41Bの先端位置にて該水平面41Bと一体に設けられて該水平面41Bに対して下方に傾斜するように配置された傾斜面41Cとから構成されている。
また、下ディスク42は、回転軸12の軸線12Aに対して直交する位置関係に配置された水平面41Bに対して、下方に向けて先端部が連続的に傾斜する位置関係に配置されている。
また、羽根43は、上下ディスク41・42間を連結するように図中上下方向に空間を仕切るように一定のピッチで配置され、該羽根43の間に、破泡室44を形成している。また、該羽根43は、図4(B)に示すように側面視した場合に、内周から外周へ向けて次第に拡大した後縮小する傾斜状を有している。これに伴い、上下ディスク41・42間でかつ羽根43間に形成された破泡室44も、側面視した場合に、内周から外周へ向けて次第に拡大した後縮小する傾斜状をなしている。
【0038】
以上詳細に説明したように第3実施形態に示される消泡体40では、第1、第2実施形態と同様に、下ディスク42を被処理液Wの液面上の泡Bに接触させ、かつ上ディスク41を空気中に位置させた状態で、これら上下ディスク41・42を回転軸12の軸線12Aを中心として回転させた場合に、下ディスク42の孔42Aからは泡Bが吸引され、かつ上ディスク41の孔41Aからは空気が吸引されることになる。このとき、下ディスク42の孔42Aから吸い込まれた泡内に、上ディスク41の孔41Aから吸い込まれた空気を取り込み可能となり、この状態で、当該泡Bに遠心力が加えられることになる。その結果、空気が取り込まれた泡Bが破泡室44で膨らんで、表面積が増大し、これによって泡Bに部分的な亀裂が生じて破泡が生じ易くなる。
また、上記消泡体40では、上下ディスク41・42の羽根43間に形成された破泡室44を、内周から外周へ向けて次第に拡大した後縮小する傾斜状をなす形状としたので、下ディスク42の孔42Aから吸い込まれた泡Bに遠心力が加わることで、該泡Bの表面積を増大して破泡するが、その際、残った該泡Bを被処理液Wと同時に外部へ送り出す時に加圧することで破泡することができる。これにより該泡Bに圧力変動及び衝撃を与えて、効率良く消泡処理を行うことができる。
【0039】
(変形例1)
なお、上記第1〜第3実施形態では、上ディスク21・31・41の孔21A・31A・41Aを同じ大きさに形成したが、泡Bの種類によってその大きさを可変としても良い。つまり、泡Bが最も破泡する空気量が供給されるように、上ディスク21・31・41に形成された21A・31A・41Aの大きさを調整しても良い。また、泡Bが最も破泡する空気量が供給されるように、上ディスク21・31・41に形成された孔21A・31A・41Aの数も適宜調整しても良い。
また、上記に限定されず、下ディスク22・32・42に形成された孔21B・31B・41Bの大きさ及び数も同時に調整しても良い。
【0040】
(変形例2)
また、上記第1〜第3実施形態では、消泡体20・30・40の上ディスク21・31・41及び下ディスク22・32・42の周方向の全周に亙って一定間隔で羽根24・33・43を設けるようにしたが、これに限定されず、泡Bが最も破泡するように、間欠的又は部分的に羽根24・33・43及びこれらの間の破泡室23・34・44を設けるようにしても良い。また、破泡室23・34・44の容積も適宜調整しても良い。
【0041】
(変形例3)
また、上記第1〜第3実施形態では、モータ回転軸12の軸線12Aに沿って上下方向に位置を調整することで、消泡体20・30・40の下ディスク22・32・42を被処理液Wの液面上の泡Bに接触させ、かつ上ディスク21・31・41を空気中に位置するようにしたが、このとき、被処理液Wの液面の位置を検出する液面センサを設け、該液面センサの出力に応じて、消泡体20・30・40の下ディスク22・32・42が被処理液Wの液面上の泡Bに常時接触するように、昇降機構により上下位置を自動調整しても良い。
また、このとき、被処理液W上の泡Bを検出する泡センサを設け、該泡センサの出力に応じて、消泡体20・30・40の下ディスク22・32・42が被処理液Wの液面上の泡Bに常時接触するように、昇降機構により上下位置を自動調整しても良い。
【0042】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、消泡装置の回転軸の先端に取り付ける消泡羽根に係り、該回転軸を駆動することで被処理液上の泡を破泡させる消泡体に関する。
【符号の説明】
【0044】
1 処理槽
10 消泡装置
12 回転軸
20 消泡体
21 上ディスク
21A 孔
22 下ディスク
22A 孔
23 破泡室
24 羽根
30 消泡体
31 上ディスク
31A 孔
31B 水平面
32 下ディスク
32A 孔
33 羽根
34 破泡室
40 消泡体
41 上ディスク
41A 孔
41B 水平面
41C 傾斜面
42 下ディスク
42A 孔
43 羽根
44 破泡室
W 被処理液
B 泡
図1
図2
図3
図4