特許第5730259号(P5730259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5730259ガラスの製造装置およびガラスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730259
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】ガラスの製造装置およびガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/42 20060101AFI20150514BHJP
   C03B 5/43 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   C03B5/42
   C03B5/43
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-215286(P2012-215286)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-69979(P2014-69979A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2014年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】598055910
【氏名又は名称】AvanStrate株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤本 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】▲はま▼谷 貴央
(72)【発明者】
【氏名】日沖 宣之
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−105592(JP,A)
【文献】 特開2012−031053(JP,A)
【文献】 特開2000−302457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00−5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金または白金合金からなる導管と、前記導管に通電する少なくとも一対の電極と、前記導管の外周に設けられた耐火物と、前記耐火物を保持する耐火物保持手段とを備え、前記電極が前記導管と前記耐火物保持手段とに固定されているガラスの製造装置であって、
前記導管と前記耐火物保持手段との熱膨張率差に起因して前記導管に発生する力によって前記導管が変形するのを防止するよう、前記導管を補強する補強部を備え
前記補強部は、前記一対の電極が前記導管に固定された位置ごとに、前記導管の全周に設けられ、前記導管の軸方向に互いに離間していることを特徴とするガラスの製造装置。
【請求項2】
前記補強部において、前記導管に白金または白金合金からなる補強部材が鍛接されている、
請求項1に記載のガラスの製造装置。
【請求項3】
白金または白金合金からなる導管と、前記導管に通電する少なくとも一対の電極と、前記導管の外周に設けられた耐火物と、前記耐火物を保持する耐火物保持手段とを用い、前記電極を前記導管と前記耐火物保持手段とに固定するガラスの製造方法であって、
前記導管と前記耐火物保持手段との熱膨張率差に起因して前記導管に発生する力によって前記導管が変形するのを防止するよう、前記導管を補強する補強部設けられ、
前記補強部は、前記一対の電極が前記導管に固定された位置ごとに、前記導管の全周に設けられ、前記導管の軸方向に互いに離間していることを特徴とするガラスの製造方法。
【請求項4】
前記補強部において、前記導管に白金または白金合金からなる補強部材を鍛接する、
請求項3に記載のガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスの製造装置およびガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板などのガラスは、一般的に、ガラス原料から溶融ガラスを生成させた後、溶融ガラスをガラスへと成形する工程を経て製造される。上記の工程中に、必要に応じて溶融ガラスが内包する微小な気泡を除去する工程(以下、清澄ともいう)が含まれる。清澄は、清澄管を加熱しながら、この清澄管にAs等の清澄剤を配合させた溶融ガラスを通過させ、清澄剤の酸化還元反応により溶融ガラス中の泡が取り除かれることで行われる。より具体的には、粗溶解した溶融ガラスの温度をさらに上げて清澄剤を機能させ泡を浮上脱泡させた後、温度を下げることにより、脱泡しきれずに残った比較的小さな泡は溶融ガラスに吸収させるようにしている。すなわち、清澄は、泡を浮上脱泡させる処理(以下、脱泡処理または脱泡工程ともいう)および小泡を溶融ガラスへ吸収させる処理(以下、吸収処理または吸収工程ともいう)を含む。清澄剤は従来Asが一般的であったが、近年の環境負荷の観点から、SnOやFe等が用いられるようになってきている。
【0003】
高温の溶融ガラスから品位の高いガラス基板を量産するためには、ガラス基板の欠陥の要因となる異物等が、ガラス基板を製造するいずれの装置からも溶融ガラスへ混入しないよう考慮することが望まれる。このため、ガラス基板の製造過程において溶融ガラスに接する部材の内壁は、その部材に接する溶融ガラスの温度、要求されるガラス基板の品質等に応じ、適切な材料により構成する必要がある。たとえば、上述の清澄管を構成する導管の材料は、通常、白金または白金合金等の白金族金属が用いられていることが知られている(特許文献1)。また、清澄管の下流側へ溶融ガラスを移送する移送管を構成する導管の材料にも、通常、白金または白金合金等の白金族金属が用いられている。白金または白金合金は、高価ではあるが融点が高く、溶融ガラスに対する耐食性にも優れている。
脱泡工程時に清澄管を加熱する温度は、成形するべきガラス基板の組成によって相違するが、1000〜1650℃程度である。
清澄管および移送管を構成する導管には、導管に電流を流し、導管の内部を流れる溶融ガラスを加熱するためのフランジ状の複数の電極が固定される。また、導管の周囲には、導管の周囲を覆うアルミナセメント等の耐火物と、この耐火物を保持する耐火物レンガ等の耐火物保持手段が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2006−522001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
清澄管および移送管を構成する導管に固定された複数の電極は、導管の外周面から突出している。そのため、導管の周囲に電極に隣接して耐火物保持手段が配置されると、耐火物保持手段によって電極が固定される。すなわち、電極は導管に対して固定されるだけでなく、耐火物保持手段に対しても固定された状態になる。ここで、耐火物保持手段の熱膨張率と導管の熱膨張率とは異なる。一般に、導管の熱膨張率は、耐火物保持手段の熱膨張率よりも大きい。そのため、電極間の導管の熱膨張が、耐火物保持手段に固定された電極によって規制され、導管に力が発生して導管が座屈、変形あるいは損傷するおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、導管に固定された電極が、導管の周囲の耐火物保持手段に固定されている場合であっても、導管の座屈、変形および損傷を防止することができるガラスの製造装置およびガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、白金または白金合金からなる導管と、前記導管に通電する少なくとも一対の電極と、前記導管の外周に設けられた耐火物と、前記耐火物を保持する耐火物保持手段とを備え、前記電極が前記導管と前記耐火物保持手段とに固定されているガラスの製造装置である。このガラスの製造装置は、前記導管と前記耐火物保持手段との熱膨張率差に起因して前記導管に発生する力によって前記導管が変形するのを防止するよう、前記導管を補強する補強部を備え、前記補強部は、前記一対の電極が前記導管に固定された位置ごとに、前記導管の全周に設けられ、前記導管の軸方向に互いに離間している。
上記の態様のガラスの製造装置は、前記補強部において、前記導管に白金または白金合金からなる補強部材が鍛接されていてもよい。
【0008】
本発明の他の一態様は、白金または白金合金からなる導管と、前記導管に通電する少なくとも一対の電極と、前記導管の外周に設けられた耐火物と、前記耐火物を保持する耐火物保持手段とを用い、前記電極が前記導管と前記耐火物保持手段とに固定されるガラスの製造方法である。このガラスの製造方法では、前記導管と前記耐火物保持手段との熱膨張率差に起因して前記導管に発生する力によって前記導管が変形するのを防止するよう、前記導管を補強する補強部設けられ、前記補強部は、前記一対の電極が前記導管に固定された位置ごとに、前記導管の全周に設けられ、前記導管の軸方向に互いに離間している。
上記の態様のガラスの製造方法は、前記補強部において、前記導管に白金または白金合金からなる補強部材を鍛接してもよい。
【発明の効果】
【0009】
上述の態様のガラスの製造装置およびガラスの製造方法によれば、導管に固定された電極が耐火物保持手段に固定されている場合であっても、導管の座屈、変形および損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態におけるガラスの製造方法の工程の一例を示す図である。
図2】本実施形態における溶解工程から切断工程までを行う装置の一例を模式的に示す図である。
図3図2に示す装置のうち、溶解槽および清澄管の一例の概略図である。
図4】清澄管の周辺を示す図であり、(a)は清澄管の正面図、(b)は耐火物および耐火物保持手段を含む清澄管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態のガラスの製造方法および製造装置について説明する。図1は、本発明のガラスの製造方法の工程の一例を示す図である。
【0012】
ガラス基板の製造方法は、溶解工程(ST1)と、清澄工程(ST2)と、均質化工程(ST3)と、供給工程(ST4)と、成形工程(ST5)と、徐冷工程(ST6)と、切断工程(ST7)と、を主に有する。この他に、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有し、梱包工程で積層された複数のガラス基板は、納入先の業者に搬送される。
【0013】
溶解工程(ST1)は溶解槽で行われる。溶解工程では、溶解槽に蓄えられた溶融ガラスの液面にガラス原料を投入することにより溶融ガラスを作る。さらに、溶解槽の内壁のうち、平面視で長方形の溶解槽の長手方向に向いてお互いに対向する内壁の一方の底部に設けられた流出口から後工程に向けて溶融ガラスを流す。
【0014】
ここで、溶解槽中の溶融ガラスは溶解槽において電極を用いて通電加熱されることにより溶解槽中で所望の温度を有する溶融ガラスとなる。すなわち、溶解槽の溶融ガラスは、例えば、モリブデン、白金または酸化錫等で構成された少なくとも1対の電極間に電流を流して電極間の溶融ガラスを通電加熱してもよい。また、通電加熱に加えて、バーナーによる火焔を補助的に用いてガラス原料を溶解してもよい。なお、ガラス原料には清澄剤が添加される。清澄剤については、環境負荷低減の点から、SnO(酸化錫)が好適に用いられる。
【0015】
清澄工程(ST2)は、少なくとも白金又は白金合金製の導管を含む清澄管の内部で行われる。清澄工程では、清澄管内の溶融ガラスが昇温される。この過程で、清澄剤は、還元反応により酸素を放出し、後に酸素を吸収する物質となる。清澄剤の還元反応により生じたOの泡は、溶融ガラス中に含まれるCOあるいはSOを含んだ泡を吸収して成長し、溶融ガラスの液面に浮上して破裂して消滅する。泡に含まれたガスは、清澄管に設けられた気相空間を通じて外気に放出される。
【0016】
その後、清澄工程では、溶融ガラスの温度を低下させる。この過程で、清澄剤の還元反応により得られた還元剤が酸化反応をする。これにより、溶融ガラスに残存する泡中のO等のガス成分が溶融ガラス中に再吸収されて、泡が消滅する。
【0017】
均質化工程(ST3)では、清澄管から延びる導管を通って供給された攪拌槽内の溶融ガラスを、スターラを用いて攪拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。これにより、脈理等の原因であるガラスの組成ムラを低減することができる。なお、攪拌槽は1つ設けても、2つ設けてもよい。
供給工程(ST4)では、攪拌槽から延びる導管を通して溶融ガラスが成形装置に供給される。
【0018】
成形装置では、成形工程(ST5)および徐冷工程(ST6)が行われる。
成形工程(ST5)では、溶融ガラスをシートガラスに成形し、シートガラスの流れを作る。成形は、オーバーフローダウンドロー法あるいはフロート法を用いることができる。後述する本実施形態では、オーバーフローダウンドロー法が用いられる。
徐冷工程(ST6)では、成形されて流れるシートガラスが所望の厚さになり、内部歪が生じないように、さらに、反りが生じないように冷却される。
【0019】
切断工程(ST7)では、切断装置において、成形装置から供給されたシートガラスを所定の長さに切断することで、板状のガラスを得る。切断されたガラスはさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス基板が作られる。この後、ガラス基板の端面の研削、研磨が行われ、ガラス基板の洗浄が行われ、さらに、気泡やキズ等の異常欠陥の有無が検査された後、検査合格品のガラス基板が最終製品として梱包される。
【0020】
図2は、本実施形態における溶解工程(ST1)から切断工程(ST7)までを行うガラスの製造装置の一例を模式的に示す図である。当該装置は、図2に示すように、主に溶解装置100と、成形装置200と、切断装置300と、を有する。溶解装置100は、溶解槽101と、清澄管(導管)102と、攪拌槽103と、ガラス供給管(導管)104,105,106と、を有する。
【0021】
図2に示す例の溶解槽101は、ガラス原料の投入が原料投入機101dを用いて行われる。なお、本実施形態では、原料投入機101dとして、スクリューフィーダを用いてガラス原料の投入を行うが、バケットを用いてガラス原料の投入を行ってもよく、ガラス原料の投入方式は特に限定されない。清澄管102には、白金あるいは白金合金製の通気管が設けられている。清澄管102の内部では、少なくとも脱泡処理を行う。脱泡処理では、溶融ガラスMGが液面を有するように気相空間が形成された状態で溶融ガラスMGを通過させる間、清澄管102に設けられた複数の電極間に電流を流して清澄管102を通電加熱し、溶融ガラスMGから気相空間に泡を放出させる。攪拌槽103は、スターラ103aによって溶融ガラスMGを攪拌して均質化する。
成形装置200は、成形体210を含み、清澄管102、攪拌槽103を通過した溶融ガラスMGを、成形体210を用いたオーバーフローダウンドロー法により成形して、ガラスシートSGとする。さらに、成形装置200は、板厚偏差、歪、および反りがガラスシートSGに生じないように、ガラスシートSGを徐冷する。
切断装置300は、徐冷したガラスシートSGを切断してガラス基板とする。
【0022】
図3は、溶解槽および清澄管の一例の概略図である。
溶解槽101でつくられた溶融ガラスMGは、ガラス供給管104を通過中、ガラス供給管104によって加熱され、清澄管102に進入するとき、清澄剤の還元反応により酸素を放出する温度、例えば1650℃程度に加熱される。清澄管102には、外周面の頂部に、通気管102aが設けられている。通気管102aは、清澄管102の外壁面に清澄管102の外方に煙突状に突出しており、清澄管102内の気相空間と外気とを連通させる。
溶融ガラスMGが清澄管102に入ると、清澄剤の放出する酸素の泡が溶融ガラスMG内の泡を吸収して大きな泡となる。一方、高温となり低粘度となった溶融ガラスMGの中で、大きな泡は容易に液面に浮上して破裂する。この泡の破裂により気相空間に放出されたガスは通気管102aを通して外気に放出される。
【0023】
図4は清澄管を示す図であり、(a)は清澄管の正面図、(b)は耐火物および耐火物保持手段を含む清澄管の断面図である。
清澄管102の両端には、フランジ状の電極102e,102fが溶接により固定されている。同様に、清澄管102の中央部にも、電極102gが固定されている。
【0024】
電極102e,102f,102gは、図示されない電源と接続されている。電極102e,102f,102gに電圧が印加されることにより、電極102e,102f,102gの間の清澄管102に電流が流れて、清澄管102が通電加熱される。この通電加熱により、清澄管102の壁は例えば1700℃程度に加熱され、清澄管102を流れる溶融ガラスMGは脱泡に適した温度である例えば1600〜1650℃程度に加熱される。本実施形態では、清澄管102に3つの電極102e,102f,102gが設けられているが、電極の数は特に限定されず、少なくとも一対の電極が設けられていればよい。
【0025】
清澄管102は、電極102e,102f,102gの近傍に、補強部102h,102i,102jを備えている。補強部102h,102iは、清澄管102の両端の電極102e,102fに隣接して設けられている。補強部102jは、清澄管102の中央部の電極102gの両側に設けられている。補強部102h,102i,102jは、清澄管102の熱膨張によって発生する力に耐え得るように、澄管102のその他の部分よりも肉厚が大きくされている。
【0026】
本実施形態において、補強部102h,102i,102jは、白金または白金合金製の帯板状の補強部材を清澄管102の外周に鍛接することにより形成されている。具体的には、補強部材を清澄管102に巻きつけて加熱しながら圧力を加えることで、清澄管102に補強部材を接合し、清澄管102に補強部102h,102i,102jを形成する。清澄管102に対する部分的な応力の集中を避ける観点から、補強部102h,102i,102jは、清澄管102の全周に設けられることが好ましい。
【0027】
補強部102h,102iは、電極102e,102fと清澄管102との溶接線を覆うように、白金または白金合金製の帯板状の補強部材を清澄管102に鍛接することが好ましい。また、清澄管102が複数の短管を溶接することにより形成されている場合には、清澄管102の溶接線を覆うように、補強部材を清澄管102に鍛接することが好ましい。このように、清澄管102の溶接線を覆うように補強部材を鍛接することで、強度的に弱くなる溶接線の近傍を補強することができる。電極102gは、清澄管102に補強部材を鍛接して補強部102jを形成した後に、補強部102j上に溶接されて固定される。
【0028】
なお、補強部102h,102i,102jは、必ずしも補強部材の鍛接によって設ける必要はない。例えば、補強部102h,102i,102jに対応する部分の清澄管102の肉厚を予め厚く形成しておいても良い。しかし、施工性、コストなどの観点から、清澄管102に補強部材を鍛接することにより、補強部102h,102i,102jを形成することが好ましい。
【0029】
図4の(b)に示すように、清澄管102の周囲には、アルミナセメント等を用いた耐火物102kが設けられている。耐火物102kは、補強部102h,102i,102jを覆うとともに、清澄管102の外周面を覆っている。また、耐火物102kは、電極102e,102f,102gの側面に密着している。この耐火物102kの外周に、耐火物102kを保持する耐火物保持手段として耐火物レンガ102mが設けられている。耐火物102kおよび耐火物レンガ102mは、通気管102aの周囲にも配置されている。したがって、通気管102aは、耐火物102kおよび耐火物レンガ102mを貫通するように設けられている。
【0030】
耐火物レンガ102mは、電極102e,102f,102gの側面に隣接して設けられる。耐火物レンガ102mは、電極102e,102f,102gの側面に密着していても良い。耐火物レンガ102mと各々の電極102e,102f,102gとの間には、充填材を充填してもよい。この場合、充填材により電極102e,102f,102gが耐火物レンガ102mに固定されてもよい。充填材としては、耐火物102kを用いることができるが、これに限定されず、絶縁性、耐熱性、密封性などを考慮して、適宜選択することができる。耐火物レンガ102mは図示されない基台に載せられている。したがって、清澄管102は、耐火物レンガ102mによって下方から支持されている。本実施形態では、ガラス供給管(導管)104,105,106の外周にも、清澄管102と同様に、耐火物102kおよび耐火物レンガ102mが設けられている。
【0031】
電極102e,102f,102gは、清澄管102に固定され、清澄管102の外周から突出している。清澄管102の軸方向(長手方向)において、電極102e,102f,102gの両側には、電極102e,102f,102gに隣接して耐火物102kおよび耐火物レンガ102mが設けられている。耐火物レンガ102mは、102e,102f,102gの側面に密着しているか、あるいは耐火物レンガ102mと電極102e,102f,102gとの間に充填材が充填されている。そのため、電極102e,102f,102gは、耐火物レンガ102mに固定され、清澄管102の軸方向への移動が規制される。すなわち、電極102e,102f,102gが、耐火物レンガ102mに固定された状態になる。
【0032】
耐火物レンガ102mの熱膨張率と清澄管102の熱膨張率とは異なる。一般に、清澄管102の熱膨張率は、耐火物レンガ102mの熱膨張率よりも大きい。そのため、電極102e,102f,102g間の清澄管102の熱膨張が、耐火物レンガ102mに固定された電極102e,102f,102gによって規制され、清澄管102に軸方向の圧縮力が発生する。
【0033】
補強部102h,102i,102jは、上記のように清澄管102と耐火物レンガ102mとの熱膨張率差に起因して清澄管102に発生する力に対して、清澄管102を補強する。本実施形態では、シミュレーションや応力解析により、清澄管102に発生する力の大きさを求める。通常、清澄管102に発生する力は、電極102e,102f,102gの近傍において大きくなる。そのため、シミュレーションや応力解析の結果に基づき、電極102e,102f,102gの近傍に設ける補強部102h,102i,102jの肉厚および幅(清澄管102の軸方向の長さ)を決定する。
【0034】
補強部102h,102i,102jの肉厚は、清澄管102に発生する力によって、電極102e,102f,102gの近傍の清澄管102が座屈や変形を起こさない厚みに決定する。ただし、補強部102h,102i,102jの肉厚が厚くなりすぎると、補強部102h,102i,102jの電気抵抗が低下して、溶融ガラスMGを加熱するための発熱量が減少する。そのため、補強部102h,102i,102jの肉厚は、清澄管102に発生する力によって、電極102e,102f,102gの近傍の清澄管102が座屈や変形を起こさない必要最低限の厚みに抑えることが好ましい。
【0035】
補強部102h,102i,102jの幅(清澄管102の軸方向の長さ)は、清澄管102に発生する力によって他の部分よりも応力が集中する電極102e,102f,102gの近傍をカバーするように決定する。ただし、補強部102h,102i,102jの幅が大きくなりすぎると補強部102h,102i,102jの電気抵抗が低下して、溶融ガラスMGを加熱するための発熱量が減少する。そのため、補強部102h,102i,102jの幅は、清澄管102に発生する力によって、電極102e,102f,102gの近傍の清澄管102が座屈や変形を起こさない必要最低限の幅に抑えることが好ましい。
【0036】
次に、本実施形態のガラスの製造装置および製造方法の作用について説明する。
上述のように、清澄管102は、昇温前に周囲に耐火物102kおよび耐火物レンガ102が設けられ、清澄管102に固定された電極102e,102f,102gが耐火物レンガ102に固定されている。ガラスの製造工程においては、上述の溶解工程(ST1)を経て、図2に示すように、溶融ガラスMGが溶解槽101からガラス供給管104を通して清澄管102に供給される。清澄管102では、図4の(a)および(b)に示す電極102e,102f,102gに電圧が印加され、清澄管102が通電加熱される。これにより、清澄管102の壁は、例えば1700℃程度に昇温され、清澄管102の内部で上述の清澄工程(ST2)が実施される。
【0037】
清澄工程(ST2)においては、清澄管102の周囲の耐火物102kおよび耐火物レンガ102mの温度も上昇する。この温度上昇により、清澄管102は周方向および軸方向(長手方向)に熱膨張する。その際、耐火物レンガ102mも熱膨張するが、清澄管102の熱膨張率は耐火物レンガ102mの熱膨張率よりも大きいため、清澄管102の軸方向への電極102e,102f,102gの移動が、耐火物レンガ102mによって規制される。これにより、電極102e,102f,102gの間の清澄管102には、軸方向に圧縮力が生じる。この清澄管102と耐火物レンガ102mとの熱膨張率差に起因して清澄管102に発生する力は、電極102e,102f,102gの近傍に応力集中を生じさせる。しかし、本実施形態においては、上述のように電極102e,102f,102gの近傍の応力集中を生じる部分に対応して、補強部102h,102i,102jが設けられている。したがって、清澄管102と耐火物レンガ102mとの熱膨張率差に起因して清澄管102に発生する力によって、清澄管102が座屈、変形あるいは損傷することを防止することができる。
【0038】
また、清澄管102は、温度の上昇にともなって、周方向にも膨張する。その際、清澄管102に電極102e,102f,102gが固定されていることから、電極102e,102f,102gによって清澄管102の周方向の膨張が規制され、電極102e,102f,102gの近傍において、周方向の圧縮力が発生する。しかし、本実施形態では、上述のように、電極102e,102f,102gの近傍において補強部102h,102i,102jが設けられている。そのため、清澄管102の周方向の圧縮力に対して清澄管102が補強され、清澄管102が周方向の圧縮力によって、座屈、変形あるいは損傷することが防止される。この場合、清澄管102と耐火物レンガ102mとの熱膨張率差に起因して清澄管102に発生する力に加えて、電極102e,102f,102gの周方向の熱膨張率と清澄管102の周方向の熱膨張率との差に起因して清澄管102に発生する力を求めて、補強部102h,102i,102jの肉厚および幅を決定することが好ましい。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のガラスの製造装置およびガラスの製造方法によれば、清澄管102に固定された電極102e,102f,102gが耐火物レンガ102mに固定されている場合であっても、清澄管102に補強部102h,102i,102jを設けて補強することで、清澄管102の損傷を防止することができる。
【0040】
上述の実施形態では、清澄管102に補強部102h,102i,102jを形成した。しかし、補強部は清澄管102に限らず、清澄管102と同様の電極を備えたガラス供給管(導管)104,105,106に設けても良い。ガラス供給管104,105,106の外周にも、清澄管102と同様に耐火物102kおよび耐火物レンガ102mが設けられている。そのため、ガラス供給管104,105,106に補強部を設けることで、上述の清澄管(導管)102と同様の効果を得ることが出来る。
また、上述の実施形態では、3つの電極102e,102f,102gに対応して、3つの補強部102h,102i,102jを形成したが、電極および補強部の数は少なくとも1対(2つ以上)が設けられていればよい。
また、上述の実施形態では、3つの電極102e,102f,102gのすべてが清澄管102に固定されている場合について説明したが、少なくとも1対の電極が清澄管102に固定されていれば良い。例えば、図4に示すように、清澄管102の両端の電極102e,102fが固定されている場合、電極102gは補強部102jに固定されていなくても良い。この場合、電極102gと補強部102jとが通電可能に接触したまま、電極102gが補強部102j上を清澄管102の軸方向に移動可能に設けられる。あるいは、清澄管102の両端部以外には補強部102h、102iを設けず、中央部の電極102gと清澄管102とが通電可能に接触したまま、電極102gが清澄管102上を清澄管102の軸方向に移動できるように設けてもよい。これにより、中央部の電極102gと清澄管102との間に発生する清澄管102の軸方向の力を緩和することができる。
【0041】
上記の清澄管102およびガラス供給管104,105,106に流れる溶融ガラスMGは、以下の(A)〜(C)の場合、従来に比べて高温に加熱される。従来に比べて溶融ガラスMGを高温に加熱する場合、本実施形態のように、清澄管102と耐火物レンガ102mとの熱膨張率差に起因して清澄管102に発生する力に対して、清澄管102を補強することによる効果は、より一層大きくなる。
【0042】
(A)従来から清澄剤として用いられてきたAs等に比べてSnOは毒性が少ないので、環境負荷低減の点から、清澄剤としてSnOを用いることが好ましい。しかし、清澄剤として用いられてきたAs等に比べて清澄機能が劣るSnOの清澄機能を効果的に機能させるために、清澄管102内の溶融ガラスMGの温度は従来よりも高温にする。
【0043】
(B)溶融ガラスMGの102.5poiseにおける温度が1500℃以上である場合、溶融ガラスMGは高温粘性が高いため、清澄工程における脱泡処理において従来と同様の粘性を保つために、溶融ガラスMGを高温にする。
【0044】
(C)本実施形態において作製されるガラス基板をフラットパネルディスプレイ用のガラス基板に用いる場合が挙げられる。フラットパネルディスプレイ(液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等)に用いるガラス基板には、その表面にTFT(Thin Film Transistor)を使用される。この揚合、TFTの影響を抑制する観点から、無アルカリガラスを用いた無アルカリガラスガラス板、あるいは、アルカリ成分を微量含有させるアルカリ微量含有ガラスを用いたアルカリ微量含有ガラス板が好適に用いられる。しかし、アルカリ微量含有ガラス板あるいは無アルカリガラス板は、高温粘性が高い。高温粘性が高いガラス板を製造する場合、従来のアルカリガラスのガラス板を製造する場合よりも清澄工程における溶融ガラスMGの温度を高温にする。
【0045】
本実施形態で用いられるガラス基板のガラス組成は例えば以下のものを挙げることができる。以下に示す組成の含有率表示は、質量%である。
SiO:50〜70%、
Al:0〜25%、
:1〜15%、
MgO:0〜10%、
CaO:0〜20%、
SrO:0〜20%、
BaO:0〜10%、
RO:5〜30%(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種であり、ガラス基板が含有するものである)、
を含有する無アルカリガラスであることが、好ましい。
【0046】
なお、本実施形態では無アルカリガラスとしたが、ガラス基板はアルカリ金属を微量含んだアルカリ微量含有ガラスであってもよい。アルカリ金属を含有させる場合、R’Oの合計が0.10%以上0.5%以下、好ましくは0.20%以上0.5%以下(ただし、R’はLi、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種であり、ガラス基板が含有するものである)含むことが好ましい。勿論、R’Oの合計が0.10%より低くてもよい。また、As、SbおよびPbOを実質的に含まないことが好ましい。
また、本発明のガラスの製造方法を適用する場合は、ガラス組成物が、上記各成分に加えて、質量%で表示して、SnO:0.01〜1%(好ましくは0.01〜0.5%)、Fe:0〜0.2%(好ましくは0.01〜0.08%)を含有し、環境負荷を考慮して、As、SbおよびPbOを実質的に含有しないようにガラス原料を調製してもよい。
【0047】
さらに、上述した成分に加え、本実施形態のガラス基板に用いるガラスは、ガラスの様々な物理的、溶融、清澄、および、成形の特性を調節するために、様々な他の酸化物を含有しても差し支えない。そのような他の酸化物の例としては、以下に限られないが、TiO、MnO、ZnO、Nb、MoO、Ta、WO、Y、および、Laが挙げられる。
【0048】
以上、本発明のガラスの製造装置およびガラスの製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0049】
100 溶解装置(ガラスの製造装置)
102 清澄管(導管)
102h,102i,102j 補強部
102k 耐火物
102m 耐火物レンガ(耐火物保持手段)
104,105,106 ガラス供給管(導管)
200 成形装置(ガラスの製造装置)
300 切断装置(ガラスの製造装置)
図1
図2
図3
図4