【文献】
Amaar and Baillie,Nucleic Acids Research,Vol.21, No.18,p.4344-4347(1993)
【文献】
Wakasugi et al.,Proc. Natl. Acad. Sci.,Vol.99, No.1,p.173-177(2002)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
抗炎症活性を有する単離ヒスチジル−tRNAシンテターゼ(HRS)スプライスバリアントポリペプチドであって、該ポリペプチドが、(a)配列番号11のアミノ酸配列、または(b)配列番号11に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、(a)のバリアント、を含み、ここで、該ポリペプチドが、WHEPドメインを含み、機能的アミノアシル化ドメインを欠失している、単離HRSスプライスバリアントポリペプチド。
抗炎症活性を有する単離組換えヒスチジル−tRNAシンテターゼ(HRS)スプライスバリアントポリペプチドであって、該ポリペプチドが、配列番号6のアミノ酸配列から本質的になる、単離組換えHRSスプライスバリアントポリペプチド。
抗炎症活性を有する単離ヒスチジル−tRNAシンテターゼ(HRS)スプライスバリアントポリペプチドであって、該ポリペプチドが、配列番号6のアミノ酸配列から本質的になり、該ポリペプチドが、(a)ペグ化により修飾されているか、(b)Fcフラグメントに融合されているか、または、(c)1つ以上の構成アミノ酸におけるアセチル化、ヒドロキシ化、メチル化、アミド化、グリコシル化および脂質化から選択される少なくとも1つの化学的または酵素的誘導体化を含む、単離HRSスプライスバリアントポリペプチド。
抗炎症活性を有する単離ヒスチジル−tRNAシンテターゼ(HRS)スプライスバリアントポリペプチドであって、該ポリペプチドが、配列番号9または配列番号11のアミノ酸配列から本質的になる、単離HRSスプライスバリアントポリペプチド。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】
図1A〜Bは、ヒト骨格筋ライブラリからのHRS−SV9スプライスバリアントの同定を示す。
図1Aは、PCR反応のためのHRS遺伝子およびプライマー位置のmRNA転写物の図を示す(BPF:フォワードプライマー、P4R:リバースプライマー)。
図1Bは、ヒト骨格筋、IMR32細胞およびHEK293T細胞からのPCR反応生成物のゲル写真を示す。上矢印は、HRS−SV9転写物から増幅されたDNAフラグメントを指す。下矢印は、HRS参照配列から増幅されたDNAフラグメントを指す。
【
図2】
図2A〜Cは、IMR32細胞ライブラリからのおよびヒト脳からの試料中のHRS−SV11スプライスバリアントの同定を示す。
図2Aは、PCR反応のためのHRS遺伝子およびプライマー位置のmRNA転写物の図を示す(BPF:フォワードプライマー、HRS−3’UTR:リバースプライマー)。
図2Bは、IMR32細胞からのPCR反応生成物のゲル写真を示す。下矢印は、HRS−SV11転写物から増幅されたDNAフラグメントを指す。上矢印は、HRS参照配列から増幅されたDNAフラグメントを指す。
図2Cは、HRS−SV11スプライスバリアント転写物がヒト脳組織で同定されたことを示す。
【
図3-1】
図3A〜
図3Dは、mRNA転写物ならびに野生型の全長HRS(HRS ref)、HRS−SV9、HRS−SV11、およびHRS−SV14のタンパク質配列を例証する。
図3Aは、HRS−SV9がイントロン2からの挿入を有し、HRS−SV11がエクソン3からエクソン10までの欠失を有することを示す、mRNA転写物の図を示す。
図3Bは、mRNA転写物によってエンコードされたタンパク質構造情報を示し、HRS−SV9が無処置WHEPドメインを包含するHRSの第1の60アミノ酸のみを有するのに対して、HRS−SV11がアミノアシル化ドメイン全体の欠失を有し、WHEPドメインおよびアンチコドンドメインのみを残していることを示す。
図3Cおよび3Dは、HRS−SV9、HRS−SV11、およびHRS−SV14それぞれの核酸コード配列(配列番号5、8、および10)およびエンコードされたタンパク質配列(配列番号6、9、および11)を示す。
【
図3-2】
図3A〜
図3Dは、mRNA転写物ならびに野生型の全長HRS(HRS ref)、HRS−SV9、HRS−SV11、およびHRS−SV14のタンパク質配列を例証する。
図3Aは、HRS−SV9がイントロン2からの挿入を有し、HRS−SV11がエクソン3からエクソン10までの欠失を有することを示す、mRNA転写物の図を示す。
図3Bは、mRNA転写物によってエンコードされたタンパク質構造情報を示し、HRS−SV9が無処置WHEPドメインを包含するHRSの第1の60アミノ酸のみを有するのに対して、HRS−SV11がアミノアシル化ドメイン全体の欠失を有し、WHEPドメインおよびアンチコドンドメインのみを残していることを示す。
図3Cおよび3Dは、HRS−SV9、HRS−SV11、およびHRS−SV14それぞれの核酸コード配列(配列番号5、8、および10)およびエンコードされたタンパク質配列(配列番号6、9、および11)を示す。
【
図4】
図4A〜Bは、ラット脛骨筋(Tib)、ヒラメ筋(Sol)、C2C12筋管(C2)、成ラット脳(Br)およびHEK293T細胞(293T)において抗HRS抗体を使用する免疫ブロットの結果を示す。
図4Aは、(アミノ酸1−97に対する)N末端HRS抗体による免疫ブロットを示す。参照バンドは、
図4Aの上矢印によって示されている。
図4Aの下矢印は、そのサイズがHRS−SV11スプライスバリアントポリペプチドの予測されたサイズと一致するバンドを指す。
図4Bは、(C末端付近の50−200アミノ酸に対する)C末端HRS抗体による免疫ブロットを示す。上矢印は参照タンパク質を指しているが、下矢印はN末端抗体によって見られるのと類似のサイズを有するバンドを指している。
【
図5】
図5A〜Cは、N末端HRSモノクローナル抗体(野生型ヒトHRSタンパク質のアミノ酸1−97に対して産生された)による免疫沈降実験の結果を示す。
図5Aは、HEK293T細胞、C2C12筋芽細胞(MB)およびC2C12筋管(MT)の結果を示す;下矢印は、HRS−SV9スプライスバリアントポリペプチドの予測サイズと一致するサイズを有するバンドを指している。
図5B−Cは、myc−タグHRS−SV11を過剰発現するIMR32およびHEK293T細胞の全細胞溶解物の結果を示す;細胞は、N末端HRS mAb(
図5B)、またはポリクローナルHRS抗体(野生型ヒトHRSタンパク質のC末端に対して産生された)のどちらかによって免疫ブロットされた(
図5C)。myc−タグHRS−SV11タンパク質よりわずかに高速で移動したタンパク質バンドは、IMR32細胞溶解物中で両方の抗体よって検出され(BおよびCの下矢印)、HRS−SV11タンパク質であることができる。
【
図6】
図6A〜Cは、HEK293T細胞中における組換え産生後のHRS、HRS−SV9およびHRS−SV11の分泌を証明する。野生型の全長HRS(HRS−Ref)、HRS−SV9およびHRS−SV11は、HEK293T細胞中で強制的に発現された。
図6A、上パネルは、全細胞溶解物(TCL)中で過剰発現されたタンパク質を指す矢印を示す。
図6B、下パネルは、培地画分中で3つすべてのタンパク質が検出されたことを示す。HRS−Refは抗Myc抗体によってプローブしたが、HRS−SV9およびHRS−SV11は抗HRS(N末端)抗体によってプローブした。TCLでのチューブリンブロットは、均等なローディングを示し、培地画分のチューブリンブロットは漏出性対照を証明した。
図6Cは、培地画分中のEGFPバンド(約35kDa)の非存在によって指摘されるように、EGFPはHEK293T細胞中で過剰発現されたときに分泌されなかったことを示す。
【
図7】
図7は、組換えHRS−SV9およびHRS−SV11スプライスバリアントポリペプチドが活性化ジャーカットT細胞におけるIL−2分泌を増強することを示す。細胞をPMA(25ng/ml)およびイオノマイシン(250ng/ml)によってHRS−SV9またはHRS−SV11を用いてまたは用いずに処置して、培地を48時間後にELISAによって分析した。
【
図8】
図8は、HRS−SV9がPBMCを刺激して、培養上清中にTNFαを放出させることを示す。LPSを正の対照として使用した。
【
図9】
図9は、HRS−SV11が培養された皮質ニューロンおよびPC12細胞を神経毒6−OHDAから保護したことを示す。
図9Aは、HRS−SV11によるラット皮質ニューロンの前処理が、25μM 6−OHDAによって誘発された皮質ニューロン死を著しく低減させたことを、MTTアッセイによる細胞生存度の測定として示す。HRS−SV11は、MTTアッセイ(
図9B)およびLDHアッセイ(
図9C)によって示すように、PC12細胞も6−OHDA(200μM)誘発細胞死から有効に保護した。
図9Dに示すように、HRS−SV11の保護効果は急性効果であり、短時間の前処置は、24時間の前処置と類似の保護効果を達成した。データは3つの別々の実験からの平均±標準偏差である。tert−ブチルヒドロキノン(tBHQ)およびトリトンX−100(短縮形でトリトン)(2%)は、MTTアッセイおよびLDHアッセイそれぞれで(B、C)、正の対照として作用した。*p<0.05、**p<0.01。
【
図10-1】
図10は、HRS−SV11がアミロイドベータ、グルタミン酸モノナトリウム(MSG)、およびMPP+誘発毒性からニューロンを保護しなかったことを示す。
図10Aは、用量依存方式で皮質ニューロン死を誘発した、β−アミロイド(1−42)(Aβ
42)凝集体による24時間のインキュベーションの結果を示す。
図10Bは、皮質ニューロンの1nM〜1μMのHRS−SV11による24時間の前処置は、MTTアッセイによって測定されたように、保護効果を有さなかったことを示す。
図10Cは、用量依存方式でのグルタミン酸モノナトリウム(MSG)誘発皮質ニューロン死をLDH放出の測定として示し、
図10Dは、HRS−SV11がグルタミン酸モノナトリウム誘発毒性に対して有益な効果を有さなかったことを示す;10μMでのメマンチンは、ニューロン死を著しく防止して、正の対照として作用した。
図10Eは、MTTアッセイによって測定されたような、用量依存方式でのMPP+誘発PC12細胞死を示し、
図10Fは、HRS−SV11が24時間の前処置後に、MPP+ストレスからPC12細胞を保護しなかったことを示す。データは3つの別々の実験からの平均±標準偏差である。
【
図10-2】
図10は、HRS−SV11がアミロイドベータ、グルタミン酸モノナトリウム(MSG)、およびMPP+誘発毒性からニューロンを保護しなかったことを示す。
図10Aは、用量依存方式で皮質ニューロン死を誘発した、β−アミロイド(1−42)(Aβ
42)凝集体による24時間のインキュベーションの結果を示す。
図10Bは、皮質ニューロンの1nM〜1μMのHRS−SV11による24時間の前処置は、MTTアッセイによって測定されたように、保護効果を有さなかったことを示す。
図10Cは、用量依存方式でのグルタミン酸モノナトリウム(MSG)誘発皮質ニューロン死をLDH放出の測定として示し、
図10Dは、HRS−SV11がグルタミン酸モノナトリウム誘発毒性に対して有益な効果を有さなかったことを示す;10μMでのメマンチンは、ニューロン死を著しく防止して、正の対照として作用した。
図10Eは、MTTアッセイによって測定されたような、用量依存方式でのMPP+誘発PC12細胞死を示し、
図10Fは、HRS−SV11が24時間の前処置後に、MPP+ストレスからPC12細胞を保護しなかったことを示す。データは3つの別々の実験からの平均±標準偏差である。
【
図10-3】
図10は、HRS−SV11がアミロイドベータ、グルタミン酸モノナトリウム(MSG)、およびMPP+誘発毒性からニューロンを保護しなかったことを示す。
図10Aは、用量依存方式で皮質ニューロン死を誘発した、β−アミロイド(1−42)(Aβ
42)凝集体による24時間のインキュベーションの結果を示す。
図10Bは、皮質ニューロンの1nM〜1μMのHRS−SV11による24時間の前処置は、MTTアッセイによって測定されたように、保護効果を有さなかったことを示す。
図10Cは、用量依存方式でのグルタミン酸モノナトリウム(MSG)誘発皮質ニューロン死をLDH放出の測定として示し、
図10Dは、HRS−SV11がグルタミン酸モノナトリウム誘発毒性に対して有益な効果を有さなかったことを示す;10μMでのメマンチンは、ニューロン死を著しく防止して、正の対照として作用した。
図10Eは、MTTアッセイによって測定されたような、用量依存方式でのMPP+誘発PC12細胞死を示し、
図10Fは、HRS−SV11が24時間の前処置後に、MPP+ストレスからPC12細胞を保護しなかったことを示す。データは3つの別々の実験からの平均±標準偏差である。
【
図11-1】
図11は、HRS−SV11が6−OHDAからニューロンを保護するために細胞外機構を利用しないことを示す。
図11Aに示すように、HRS−SV11の添加はp−キノンの蓄積を抑制しなかったが、公知の酸化防止剤であるビタミンCは、その蓄積を抑制しなかった。
図11Bは、用量依存方式での過酸化水素(H
2O
2)誘発皮質ニューロン死を示し、
図11Cは、HRS−SV11による前処置がこれらのニューロンを死から保護しなかったことを示す。
図11Dに示すように、HRS−SV11による皮質ニューロンの前処置は6−OHDA攻撃時のニューロン死を低減したが、HRS−SV11の6−OHDAとの同時適用は保護効果を有さなかった。6−OHDA適用の前の、HRS−SV11前処置後の洗浄および培地の補充は、HRS−SV11の保護効果に影響しなかった(
図11Eを参照)。データは3つの別々の実験からの平均±標準偏差である。*p<0.05、**p<0.01。
【
図11-2】
図11は、HRS−SV11が6−OHDAからニューロンを保護するために細胞外機構を利用しないことを示す。
図11Aに示すように、HRS−SV11の添加はp−キノンの蓄積を抑制しなかったが、公知の酸化防止剤であるビタミンCは、その蓄積を抑制しなかった。
図11Bは、用量依存方式での過酸化水素(H
2O
2)誘発皮質ニューロン死を示し、
図11Cは、HRS−SV11による前処置がこれらのニューロンを死から保護しなかったことを示す。
図11Dに示すように、HRS−SV11による皮質ニューロンの前処置は6−OHDA攻撃時のニューロン死を低減したが、HRS−SV11の6−OHDAとの同時適用は保護効果を有さなかった。6−OHDA適用の前の、HRS−SV11前処置後の洗浄および培地の補充は、HRS−SV11の保護効果に影響しなかった(
図11Eを参照)。データは3つの別々の実験からの平均±標準偏差である。*p<0.05、**p<0.01。
【
図12】
図12は、HRS−SV11が、PC12細胞中で6−OHDAによって誘発されたDNAフラグメント化を防止したことを示す。PC12細胞のアポトーシスをHoechst 33258染色によって検査した。
図12Aは、緩衝液対照のみによって処置したPC12細胞を示す;
図12Bは、6−OHDA(200μM)による8時間の処置を示す;および
図12Cは、HRS−SV11(500nM)による24時間の前処置と、それに続く6−OHDA(200μM)による8時間の攻撃を示す。
図12Dに示すように、アポトーシス細胞の数をカウントして(フラグメント化された核の存在によって区別された)、1μM HRS−SV11による前処置によりアポトーシス細胞の数が大きく低減されることが証明された。
【
図13A】
図13は、HRS−SV11のC末端におけるシステイン(Cys)残基の突然変異が保護機能を無効にしたことを示す。
図13Aは、HRS−SV11(配列番号29)が3つのCys残基(C117、C169およびC171)を含有することを示す。中でも、C117およびC171(矢印、
図13A)は、多種多様のHRS配列(配列番号16−24および29)のアミノ酸112から約171の整列によって示されるように、種にわたって高度に保存されている。
図13Bに示すように、C2S(C169およびC171のセリン残基への突然変異)およびdelC(C169およびC171を含む、最後の3つのアミノ酸の欠失)突然変異体はほとんどモノマーであったが、C117S突然変異体はほとんどダイマーであった。野生型HRS−SV11は、モノマーとダイマーとの間にピークを有し、これらの2つの型の間に非常に動的なスイッチがあることを示した。
図13Cに示すように、C169およびC171のセリン残基への突然変異(HRS−SV11_C2S)またはC169およびC171を含む最後の3つのアミノ酸の欠失(HRS−SV11_delC)は、HRS−SV11の神経保護機能を無効にして、これらのCysの重要な役割を示唆した。**p<0.01。
【
図13B】
図13は、HRS−SV11のC末端におけるシステイン(Cys)残基の突然変異が保護機能を無効にしたことを示す。
図13Aは、HRS−SV11(配列番号29)が3つのCys残基(C117、C169およびC171)を含有することを示す。中でも、C117およびC171(矢印、
図13A)は、多種多様のHRS配列(配列番号16−24および29)のアミノ酸112から約171の整列によって示されるように、種にわたって高度に保存されている。
図13Bに示すように、C2S(C169およびC171のセリン残基への突然変異)およびdelC(C169およびC171を含む、最後の3つのアミノ酸の欠失)突然変異体はほとんどモノマーであったが、C117S突然変異体はほとんどダイマーであった。野生型HRS−SV11は、モノマーとダイマーとの間にピークを有し、これらの2つの型の間に非常に動的なスイッチがあることを示した。
図13Cに示すように、C169およびC171のセリン残基への突然変異(HRS−SV11_C2S)またはC169およびC171を含む最後の3つのアミノ酸の欠失(HRS−SV11_delC)は、HRS−SV11の神経保護機能を無効にして、これらのCysの重要な役割を示唆した。**p<0.01。
【
図13C】
図13は、HRS−SV11のC末端におけるシステイン(Cys)残基の突然変異が保護機能を無効にしたことを示す。
図13Aは、HRS−SV11(配列番号29)が3つのCys残基(C117、C169およびC171)を含有することを示す。中でも、C117およびC171(矢印、
図13A)は、多種多様のHRS配列(配列番号16−24および29)のアミノ酸112から約171の整列によって示されるように、種にわたって高度に保存されている。
図13Bに示すように、C2S(C169およびC171のセリン残基への突然変異)およびdelC(C169およびC171を含む、最後の3つのアミノ酸の欠失)突然変異体はほとんどモノマーであったが、C117S突然変異体はほとんどダイマーであった。野生型HRS−SV11は、モノマーとダイマーとの間にピークを有し、これらの2つの型の間に非常に動的なスイッチがあることを示した。
図13Cに示すように、C169およびC171のセリン残基への突然変異(HRS−SV11_C2S)またはC169およびC171を含む最後の3つのアミノ酸の欠失(HRS−SV11_delC)は、HRS−SV11の神経保護機能を無効にして、これらのCysの重要な役割を示唆した。**p<0.01。
【
図14-1】
図14は、JAK2、JNKおよびp38の阻害がHRS−SV11の神経保護効果を抑制したことを示す。
図14A〜Bに示すように、PC12細胞におけるHRS−SV11の神経保護効果は、10μMのSB202190によるJNKのおよび10μMのSP600125によるp38の同時阻害によって(
図14A)、ならびに40μMのAG490のJAK2の阻害によって(
図14B)抑制された。
図14Bは、HRS−SV11の神経保護効果がU73122によるホスホリパーゼC(PLC)の、またはアルクチゲニンによるMKKの阻害によって抑制されないことも示している。
図14C〜Dは、類似の観察が皮質ニューロンによって行われたことを示す。データは3つの別々の実験からの平均±標準偏差である。*p<0.05、**p<0.01。
【
図14-2】
図14は、JAK2、JNKおよびp38の阻害がHRS−SV11の神経保護効果を抑制したことを示す。
図14A〜Bに示すように、PC12細胞におけるHRS−SV11の神経保護効果は、10μMのSB202190によるJNKのおよび10μMのSP600125によるp38の同時阻害によって(
図14A)、ならびに40μMのAG490のJAK2の阻害によって(
図14B)抑制された。
図14Bは、HRS−SV11の神経保護効果がU73122によるホスホリパーゼC(PLC)の、またはアルクチゲニンによるMKKの阻害によって抑制されないことも示している。
図14C〜Dは、類似の観察が皮質ニューロンによって行われたことを示す。データは3つの別々の実験からの平均±標準偏差である。*p<0.05、**p<0.01。
【
図15-1】
図15は、HRS−SV11がCCR5発現HEK293T細胞に結合したが、CCR1発現細胞または非形質移入細胞には結合しなかったことを示す。
図15A〜Bのように、HRS−SV11はHEK293T細胞(
図15A)に結合しなかったが、CCR5発現HEK293T細胞に結合した(
図15B)。
図15Cに示すように、CCR−5発現細胞への結合は、Met−RANTESによる細胞の前処置によって影響されなかった。
図15Dは、結合がCCR5に特異的であったのは、CCR1発現細胞で観察されなかったためであることを示す。対照細胞をFITC−His抗体のみでインキュベートした。
【
図15-2】
図15は、HRS−SV11がCCR5発現HEK293T細胞に結合したが、CCR1発現細胞または非形質移入細胞には結合しなかったことを示す。
図15A〜Bのように、HRS−SV11はHEK293T細胞(
図15A)に結合しなかったが、CCR5発現HEK293T細胞に結合した(
図15B)。
図15Cに示すように、CCR−5発現細胞への結合は、Met−RANTESによる細胞の前処置によって影響されなかった。
図15Dは、結合がCCR5に特異的であったのは、CCR1発現細胞で観察されなかったためであることを示す。対照細胞をFITC−His抗体のみでインキュベートした。
【
図16A】
図16は、HRS−SV14スプライスバリアントの同定およびHRS−SV14の神経保護を示す。
図16Aは、ヒト胎児脳cDNAにおけるヒトHRSの新たなスプライシング変異体の同定を示す(矢印)。
図16A〜Bに示すように、クローニングおよび配列決定により、本HRSスプライシング変異体が野生型HRS転写物(配列番号24−28は、
図16Bの上部から下部への順序である)中のエクソン4からエクソン10までのスキッピングから生じることが明らかにされた。タンパク質レベルでは、HRS−SV14タンパク質は、WHEPドメイン、アンチコドン結合ドメイン、およびアミノアシル化ドメインの第1モチーフを含有することが予測された(
図16Cを参照)。
図16Dは、HRS−SV14が24時間前処置されたときに、6−OHDA誘発ニューロン死からPC12細胞を保護したこと;および効果がHRS−SV11と同程度であったことを示す。データは3つの別々の実験からの平均±標準偏差である。*p<0.05。
【
図16B】
図16は、HRS−SV14スプライスバリアントの同定およびHRS−SV14の神経保護を示す。
図16Aは、ヒト胎児脳cDNAにおけるヒトHRSの新たなスプライシング変異体の同定を示す(矢印)。
図16A〜Bに示すように、クローニングおよび配列決定により、本HRSスプライシング変異体が野生型HRS転写物(配列番号24−28は、
図16Bの上部から下部への順序である)中のエクソン4からエクソン10までのスキッピングから生じることが明らかにされた。タンパク質レベルでは、HRS−SV14タンパク質は、WHEPドメイン、アンチコドン結合ドメイン、およびアミノアシル化ドメインの第1モチーフを含有することが予測された(
図16Cを参照)。
図16Dは、HRS−SV14が24時間前処置されたときに、6−OHDA誘発ニューロン死からPC12細胞を保護したこと;および効果がHRS−SV11と同程度であったことを示す。データは3つの別々の実験からの平均±標準偏差である。*p<0.05。
【
図16C】
図16は、HRS−SV14スプライスバリアントの同定およびHRS−SV14の神経保護を示す。
図16Aは、ヒト胎児脳cDNAにおけるヒトHRSの新たなスプライシング変異体の同定を示す(矢印)。
図16A〜Bに示すように、クローニングおよび配列決定により、本HRSスプライシング変異体が野生型HRS転写物(配列番号24−28は、
図16Bの上部から下部への順序である)中のエクソン4からエクソン10までのスキッピングから生じることが明らかにされた。タンパク質レベルでは、HRS−SV14タンパク質は、WHEPドメイン、アンチコドン結合ドメイン、およびアミノアシル化ドメインの第1モチーフを含有することが予測された(
図16Cを参照)。
図16Dは、HRS−SV14が24時間前処置されたときに、6−OHDA誘発ニューロン死からPC12細胞を保護したこと;および効果がHRS−SV11と同程度であったことを示す。データは3つの別々の実験からの平均±標準偏差である。*p<0.05。
【
図16D】
図16は、HRS−SV14スプライスバリアントの同定およびHRS−SV14の神経保護を示す。
図16Aは、ヒト胎児脳cDNAにおけるヒトHRSの新たなスプライシング変異体の同定を示す(矢印)。
図16A〜Bに示すように、クローニングおよび配列決定により、本HRSスプライシング変異体が野生型HRS転写物(配列番号24−28は、
図16Bの上部から下部への順序である)中のエクソン4からエクソン10までのスキッピングから生じることが明らかにされた。タンパク質レベルでは、HRS−SV14タンパク質は、WHEPドメイン、アンチコドン結合ドメイン、およびアミノアシル化ドメインの第1モチーフを含有することが予測された(
図16Cを参照)。
図16Dは、HRS−SV14が24時間前処置されたときに、6−OHDA誘発ニューロン死からPC12細胞を保護したこと;および効果がHRS−SV11と同程度であったことを示す。データは3つの別々の実験からの平均±標準偏差である。*p<0.05。
【
図17】
図17は、異なる組織および株化細胞におけるHRS−SV11およびSV14転写物の検出を示す。本図は、ヒト成人脳、胎児脳、肺、骨格筋組織ならびにIMR32細胞、ジャーカット細胞およびTHP−1細胞のcDNAからのHARSのエクソン2およびエクソン12にフランキングするPCR生成物の電気泳動を示す。HRS−SV11は、水平矢印によって指摘されるように、胎児脳を除いて、すべての試料に存在した。HRS−SV14は、斜め矢印に指摘されるように、ヒト胎児脳、肺、骨格筋、ジャーカット細胞およびTHP−1細胞にて検出された。
【
図18】
図18は、HRS−SV11組換えタンパク質の保護効果が非タンパク質汚染物質からでなかったことを示す。
図18Aは、プロテイナーゼK消化を伴うまたは伴わない組換えHRS−SV11タンパク質調製物のクマシーブルー染色を示す;プロテイナーゼK処置HRS−SV11調製物では、未処置HRS−SV11調製物と比較して、可視性のタンパク質バンドは検出されなかった(矢印は、HRS−SV11組換えタンパク質を示す)。
図18B〜Cに示すように、プロテイナーゼK消化HRS−SV11による皮質ニューロン(
図18B)およびPC12細胞(
図18C)の前処置は、6−OHDAに対するその保護効果を無効にした。tBHQは正の対照として作用した。NSは、有意でないことを表す。データは3つの別々の実験からの平均±標準偏差である。*p<0.05、**p<0.01。
【
図19】
図19は、SV9がCCL5に対する単球(THP−1細胞)の移動を阻害することを示す。
【
図20】
図20は、SV9がCCL−23に対するTHP−1細胞のCCR1−媒介移動を阻害することを示す。
【
図21】
図21は、SV9によるマクロファージTLRの活性化を示す。LPSは正の対照である。
【
図22】
図22Aおよび22Bは、SV9がTLR2(22A)およびTLR4(22B)の両方を活性化するが、TLR4を優先的に活性化することを示す。
【
図23】
図23は、SV9が単球(THP−1)におけるMIP−1α分泌を刺激することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
発明の詳細な説明
本発明の実施は、特異的に反対に指摘されない限り、当業者の技能範囲内の分子生物学および組換えDNA技法の従来方法を用い、その多くは例証の目的で以下に記載されている。このような技法は、文献で十分に説明されている。たとえばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989);Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982);DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(D.Glover,ed.);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait,ed.,1984);Nucleic Acid Hybridization(B.Hames & S.Higgins,eds.,1985);Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,eds.,1984);Animal Cell Culture(R.Freshney,ed.,1986);A Practical Guide to Molecular Cloning(B.Perbal,ed.,1984)を参照。
【0058】
本明細書で引用されたすべての刊行物、特許および特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられている。
【0059】
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本発明が属する当業者によって普通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載する方法と類似したまたは同等であるいずれの方法および材料も本発明の実施または試験で使用することができるが、好ましい方法および材料が記載される。本発明の目的のために、以下の用語が下で定義される。
【0060】
本明細書および添付請求項で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は状況が別途明らかに指示しない限り、複数形への参照を包含する。1例として、「要素」は、1つの要素または1つを超える要素を意味する。
【0061】
「約」とは、参照数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さまで30、25、20、25、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1%だけ変動する数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さを意味する。
【0062】
「アゴニスト」は、HRSの非カノニカル生物学的活性を強化または模倣する分子を指す。アゴニストは、HRSもしくはその結合パートナーと直接相互作用すること、またはHRSが関わる生物経路の構成要素に作用することのどちらかによって、HRSの活性を調節するタンパク質、核酸、炭水化物、小型分子、またはその他の化合物もしくは組成物を包含し得る。部分アゴニストおよび完全アゴニストが包含される。
【0063】
「アンタゴニスト」という用語は、HRSの非カノニカル生物学的活性を阻害または減弱する分子を指す。アンタゴニストは、HRSもしくはその結合パートナーと直接相互作用すること、またはHRSが関わる生物経路の構成要素に作用することのどちらかによって、HRSまたはその結合パートナーの活性を調節するタンパク質、たとえば抗体、核酸、炭水化物、小型分子、またはその他の化合物もしくは組成物を包含し得る。部分アンタゴニストおよび完全アンタゴニストが包含される。
【0064】
「コード配列」とは、遺伝子のポリペプチド生成物のコードに寄与するいずれの核酸配列も意味する。対照的に、「非コード配列」という用語は、遺伝子のポリペプチド生成物のコードに寄与しないいずれの核酸配列も指す。
【0065】
本明細書を通じて、状況が別途要求しない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含むこと(comprising)」という用語は、述べられたステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群を包含するが、その他のステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群を除外しないことを含意することが理解されるであろう。
【0066】
「からなる」とは、「からなる」という句に続くものをすべて含むことと、続くものすべてに限定されることを意味する。それゆえ「からなる」という句は、挙げられた要素が要求されるまたは必須であることと、他の要素が存在し得ないこととを指摘する。「から本質的に成る」は、句の後に挙げられ、挙げられた要素の開示に規定された活性もしくは作用を妨害しない、またはその活性もしくは作用に寄与しない他の要素に限定されるいずれの要素も含むことを意味する。それゆえ、「から本質的に成る」という句は、挙げられた要素が要求されるまたは必須であるが、その他の要素が任意であり、その他の要素が、挙げられた要素の活性または作用に大いに影響するか否かに応じて、存在し得るもしくは存在し得ないことを指摘する。
【0067】
本明細書で使用する場合、「機能」および「機能性」などの用語は、生物機能、酵素機能、または治療機能を指す。
【0068】
「遺伝子」は、染色体上の特異的遺伝子座を占有し、転写および/または翻訳調節配列および/またはコード領域および/または非翻訳配列(すなわちイントロン、5’および3’非翻訳配列)からなる、遺伝の単位を意味する。
【0069】
「相同性」は、同一であるまたは保存的置換を構成するアミノ酸のパーセンテージ数を指す。相同性は、参照により本明細書に組み入れられている、GAP(Deverauxら、1984,Nucleic Acids Research 12,387−395)などの配列比較プログラムを使用して決定され得る。このようにして、類似のまたは実質的に異なる長さの配列は本明細書で引用する配列に対して、整列へのギャップの挿入によって比較することができ、このようなギャップはたとえばGAPにより使用される比較アルゴリズムによって決定される。
【0070】
「宿主細胞」という用語は、本発明のいずれの組換えベクター(複数可)または単離ポリヌクレオチドのレシピエントであることができる、またはレシピエントであった個別の細胞または細胞培養物を包含する。宿主細胞は、単一の宿主細胞の子孫を包含し、子孫は、天然の、偶発的な、または故意の突然変異および/または変化のために、元の親細胞と(形態がまたは全DNA相補体(complement)が)必ずしも完全に同一であり得ない。宿主細胞は、本発明の組換えベクターまたはポリヌクレオチドによりインビボまたはインビトロで形質移入または感染された細胞を包含する。本発明の組換えベクターを含む宿主細胞は、組換え宿主細胞である。
【0071】
「単離された」とは、材料であって、その未変性状態でその材料に正常には付随する構成要素から実質的にまたは本質的に遊離された材料を意味する。たとえば、「単離ポリヌクレオチド」は本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドであって、その天然型状態でそれにフランキングする配列から精製されたポリヌクレオチド、たとえばDNAフラグメントであって、そのフラグメントに正常には隣接した配列から除去されたDNAフラグメントを包含する。代わりに「単離ペプチド」または「単離ポリペプチド」などは、本明細書で使用する場合、その天然細胞環境からの、および細胞の他の構成要素との会合からの、ペプチドまたはポリペプチド分子のインビトロ単離および/または精製を包含する;すなわちこれはインビボ物質とは著しく関係していない。
【0072】
「mRNA」という用語またはときには「mRNA転写物」による参照は、本明細書で使用する場合、これに限定されるわけではないが、プレmRNA転写物(複数可)、転写物プロセシング中間体、翻訳の準備が整った成熟mRNA(複数可)および遺伝子の転写物(複数可)、またはmRNA転写物(複数可)から誘導された核酸を包含する。転写物プロセシングは、スプライシング、エディティングおよび分解を包含し得る。本明細書で使用する場合、mRNA転写物から誘導された核酸は、mRNA転写物またはそのサブ配列が、その合成のためにテンプレートとして最終的に役割を果たした核酸を指す。mRNAから逆転写されたcDNA、そのcDNAから転写されたRNA、cDNAから増幅されたDNA、増幅されたDNAから転写されたRNAなどは、すべてmRNA転写物から誘導され、このように誘導された生成物の検出は、試料中の元の転写物の存在および/または存在量を指し示している。それゆえmRNAから誘導された試料は、これに限定されるわけではないが、遺伝子(複数可)のmRNA転写物、mRNAから逆転写されたcDNA、cDNAから転写されたcRNA、遺伝子から増幅されたDNA、増幅されたDNAから転写されたRNAなどを包含する。
【0073】
「非カノニカル」活性は、本明細書で使用する場合、概して、アミノアシル化以外である、さらに特異的にはその同族アミノ酸の同族tRNA分子への付加以外である、本発明のHRSポリペプチドによって所有される活性を指す。非カノニカル活性の非制限的な例は、RNA結合、アミノ酸結合、細胞増殖の調節、細胞移動の調節、細胞分化(たとえば造血)の調節、アポトーシスまたは他の形の細胞死の調節、細胞シグナル伝達の調節、血管新生の調節、細胞結合の調節、細胞代謝の調節、サイトカイン産生または活性の調節、サイトカイン受容体活性の調節、炎症の調節などを包含する。
【0074】
「調節すること」という用語は、通例、対照と比較して統計的に有意なまたは生理学的に有意な量で、「上昇させること」または「刺激すること」ならびに「低下させること」または「低減すること」を含む。「上昇した」または「増強した」量は通例、「統計的に有意な」量であり、非組成物(薬剤または化合物が非存在)または対照組成物によって産生された量の1.1倍、1.2倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍以上(たとえば500倍、1000倍)(その間のおよび1を超えるすべての整数および少数点を含む、たとえば1.5、1.6、1.7、1.8など)である上昇を包含し得る。「低下した」または「低減した」量は通例、「統計的に有意な」量であり、非組成物(薬剤または化合物が非存在)または対照組成物によって産生された量の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の低下を含み得て、その間のすべての整数を包含する。「統計的に有意な」量の他の例は本明細書に記載されている。
【0075】
「から得る」とは、試料、たとえばポリヌクレオチド抽出物またはポリペプチド抽出物が被験体の特定の供給源から単離されるまたは被験体の特定の供給源から誘導されることを意味する。たとえば抽出物は、被験体から直接単離された組織または体液から得ることができる。「誘導される」または「から得る」は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の供給源も指すことができる。例として、本発明のHRS配列は、天然にまたは人工的に発生したかにかかわらず、HRSタンパク質分解フラグメントもしくはHRSスプライスバリアント、またはその部分の配列情報から「誘導され」得て、それゆえその配列を含み得る、その配列から本質的に成り得る、またはその配列からなり得る。
【0076】
「配列同一性」という、またはたとえば「に50%同一の配列」を含む列挙は、本明細書で使用する場合、比較ウィンドウにわたってヌクレオチドごとのベースでまたはアミノ酸ごとのベースで同一である程度を指す。それゆえ、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウにわたって2つの最適に整列された配列を比較することと、両方の配列中の同一の核酸塩基(たとえばA、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(たとえばAla、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が現れる位置の数を決定して、適合した位置の数を産することと、適合した位置の数を比較ウィンドウ中の位置の総数(すなわちウィンドウサイズ)で割ることと、結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを産することとによって計算され得る。
【0077】
「スプライス部位」は、本明細書で使用する場合、第1のエクソンの3’端が第2のエクソンの5’端と接合する、成熟mRNA転写物中の領域またはエンコードされたポリペプチドを包含する。領域のサイズは変動し得て、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100またはそれ以上(その間のすべての整数を含む)のヌクレオチドまたはアミノ酸残基を、1つのエクソンの3’端が別のエクソンの5’端を接合するまさにその残基の両側に包含し得る。「エクソン」は、前駆体RNA(イントロン)の部分がシス−スプライシングによって除去された後、または2つ以上の前駆体RNA分子がトランス−スプライシングによってライゲーションされた後のどちらかに、RNA分子の成熟型で表現される核酸配列を指す。成熟RNA分子は、メッセンジャーRNAまたは非コードRNA、たとえばrRNAもしくはtRNAの機能型であることができる。状況に応じて、エクソンはDNAまたはそのRNA転写物中の配列を指すことができる。「イントロン」は、タンパク質に翻訳されない、遺伝子内の非コード核酸領域を指す。非コードイントロン区間は前駆体mRNA(プレ−mRNA)およびいくつかの他のRNA(長い非コードRNAなど)に転写され、続いて成熟RNAへのプロセシングの間にスプライシングによって除去される。
【0078】
「スプライスバリアント」は、RNA(1次遺伝子転写物またはプレmRNA)のエクソンがRNAスプライシングの間に複数のやり方で再結合されるプロセスである、選択的スプライシングによって産生される、成熟mRNAおよびそのエンコードされたタンパク質を指す。得られた異なるmRNAは異なるタンパク質アイソフォームに翻訳され得て、単一の遺伝子に複数のタンパク質をコードさせる。
【0079】
「被験体」とは、本明細書で使用する場合、本発明のHRSポリヌクレオチドまたはポリペプチドによって処置または診断することができる症状を呈する、または症状を呈するリスクに瀕している、いずれの動物も包含する。好適な被験体(患者)は、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、またはモルモットなど)、農場動物、および家畜またはペット(ネコまたはイヌなど)を包含する。非ヒト霊長類、および好ましくはヒト患者が包含される。
【0080】
「処置」または「処置すること」は、本明細書で使用する場合、本明細書に記載するような、HRSポリヌクレオチドまたはポリペプチドの非カノニカル活性によって及ぼすことができる、疾患または状態の症状または病状に対するいずれの所望の効果も含み、処置されている疾患または状態の1つ以上の測定可能なマーカーの最小限の変化または改善さえ包含し得る。本明細書に記載するHRS配列が処置の臨床マーカーを提供する非HRS療法に関する処置も包含される。「処置」または「処置すること」は、疾患もしくは状態、またはその関係する症状の完全な根絶または治癒を必ずしも指摘するものではない。本処置を受ける被験体は、それを必要とするいずれの被験体でもある。臨床改善の例示的なマーカーは、当業者に明らかになるであろう。
【0081】
「ベクター」または「核酸構築物」とは、ポリヌクレオチドを中に挿入またはクローニングすることができるたとえばプラスミド、バクテリオファージ、酵母またはウイルスから誘導された、ポリヌクレオチド分子、好ましくはDNA分子を意味する。ベクターは、好ましくは1つ以上の固有の制限部位を含有し、標的細胞もしくは組織またはその前駆細胞もしくは組織を含む定義された宿主細胞での自律増幅が可能であるか、またはクローン配列が再現できるように、定義された宿主のゲノムを組み込むことができる。したがってベクターは自律複製ベクター、すなわち染色体外実体として存在し、その複製が染色体複製に非依存性であるベクター、たとえば直鎖もしくは閉環状プラスミド、染色体外要素、ミニ染色体、または人工染色体であることができる。ベクターは、確実に自己複製するためのいずれの手段も含むことができる。代わりに、ベクターは、宿主細胞中に導入されるときにゲノム中に組み込まれて、ベクターが組み込まれた染色体(複数可)と共に複製されるベクターであることができる。
【0082】
「野生型」および「天然型」という用語は互換的に使用され、遺伝子または遺伝子産物であって、天然源から単離されたときにその遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物を指す。野生型遺伝子または遺伝子産物(たとえばポリペプチド)は、集団において最も頻繁に観察されるものであり、それゆえ遺伝子の「正常」または野生」型は自由裁量で設計される。
【0083】
HRSスプライスバリアントポリペプチド
上記のように、本発明の1態様によれば、治療的に関連性の非カノニカル活性を有するHRS「スプライスバリアント」ポリペプチド、ならびにそれを含む組成物が提供される。
【0084】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーならびにその変異体および合成類似体を指す。それゆえこれらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が合成非天然型アミノ酸、たとえば対応する天然型アミノ酸の化学類似体であるアミノ酸ポリマーに、ならびに天然型アミノ酸ポリマーに適用される。
【0085】
ポリペプチドは特異的長さに限定されないが、本発明の状況において、通例、全長タンパク質のフラグメントを表現し、翻訳後修飾、たとえばグリコシル化、アセチル化、ホスホリル化など、ならびに天然型および非天然型の両方の、当分野で公知の他の修飾を包含し得る。本発明のポリペプチドおよびタンパク質は、多種多様の周知の組換えおよび/または合成技法のいずれも使用して調製され得て、この例証的な例は下でさらに議論される。
【0086】
「ポリペプチド変異体」という列挙は、参照HRSスプライスバリアントポリペプチド(たとえば配列番号6、9、11)から、少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失、および/または置換により区別され、通例、参照HRSスプライスバリアントポリペプチドの非カノニカル活性を保持する、ポリペプチドを指す。ある実施形態において、ポリペプチド変異体は、参照ポリペプチドから1つ以上の置換によって区別され、置換は本明細書に記載され、当分野で公知であるように、保存的または非保存的であり得る。ある実施形態において、ポリペプチド変異体は保存的置換を含み、この点で、当分野ではポリペプチドの活性の本質を変化させることなく、いくつかのアミノ酸が幅広く類似した特性を有する他のアミノ酸に変更され得ることが十分に理解されている。
【0087】
ある実施形態において、ポリペプチド変異体は、本明細書に記載するように、HRS参照ポリペプチドの対応する配列に対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94% 95%、96%、97%、98%のまたはそれ以上の配列同一性または類似性を有するアミノ酸配列を包含し、参照のポリペプチドの非カノニカル活性を保持する。参照HRS配列とは1の、2の、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150のまたはそれ以上のアミノ酸の付加、欠失、または置換によって異なるが、参照HRSポリペプチドの特性を保持する配列も包含される。他の実施形態において、変異体ポリペプチドは、対応するHRS参照配列とは少なくとも1%の、しかし20%未満の、15%未満の、10%未満のまたは5%未満の残基が異なる。(本比較が整列を必要とする場合、配列は最大類似性のために整列させるべきである。欠失もしくは挿入、またはミスマッチからの「ループ」アウト配列は差異と見なされる)。差異は好適には、非必須残基または保存的置換における差異または変化である。
【0088】
HRS参照ポリペプチドの生物学的活性「フラグメント」も包含される。代表的な生物学的活性フラグメントは概して相互作用、たとえば分子内または分子間相互作用に関わっている。分子間相互作用は、特異的結合相互作用または酵素相互作用であることができる。分子間相互作用は、HRSポリペプチドと細胞結合パートナー、たとえばHRSポリペプチドの非カノニカル活性に関わる細胞受容体または他の宿主分子との間であることができる。
【0089】
通例、生物学的活性フラグメントは、HRS参照ポリペプチドの少なくとも1つの活性を有するドメインまたはモチーフを含み、各種の活性ドメインの1つ以上(いくつかの場合において、すべて)を包含し得て、非カノニカル活性を有するフラグメントを包含し得る。いくつかの場合において、HRSポリペプチドの生物学的活性フラグメントは、特定の切断フラグメントに固有である生物学的活性を有し、全長HRSポリペプチドはその活性を有し得ないようになっている。ある場合において、生物学的活性は、生物学的活性HRSポリペプチドフラグメントを全長HRSポリペプチド配列から分離することによって、または全長HRS野生型ポリペプチド配列のある残基を改変して生物学的活性ドメインをアンマスクすることによって、明らかにされ得る。
【0090】
たとえば、例証的な1実施形態において、HRSスプライスバリアントポリペプチドは、少なくともHRSのWHEPドメイン、またはその活性フラグメントもしくは活性変異体を含むHRSフラグメントである。別の例証的な実施形態において、ポリペプチドは、少なくともHRSのアンチコドン結合ドメイン、またはその活性フラグメントもしくは活性変異体を含むHRSフラグメントである。また別の例証的な実施形態において、ポリペプチドは、少なくともWHEPドメインおよびHRSのアンチコドン結合ドメインを含むHRSフラグメントである。なお別の例証的な実施形態において、ポリペプチドは、アミノアシル化ドメインを欠失して、アミノアシル化活性が実質的にないHRSフラグメントである。
【0091】
さらに特定の実施形態において、HRSスプライスバリアントポリペプチドは、配列番号6、9または11で示す配列を含むポリペプチドである。別の実施形態において、HRSスプライスバリアントポリペプチドは、配列番号6、9または11の活性フラグメント(すなわち配列番号6、9または11によって呈される少なくとも1つの非カノニカル活性を実質的に保持する配列番号6、9または11のフラグメント)を含むポリペプチドである。たとえば、このようなフラグメントは、配列番号6、9または11の少なくとも約5、10、15、20、25、もしくは50、またはそれ以上の隣接アミノ酸残基、ならびにすべての中間長を含み得る。中間長は、その間のすべての整数、たとえば6、7、8など、51、52、53などを含むことを目的としている。加えて、このようなフラグメントは、配列番号9の少なくとも約5、10、15、20、25、50、75、100、125、もしくは150、またはそれ以上の隣接アミノ酸残基、ならびにすべての中間長を含み得る。
【0092】
HRS参照ポリペプチドの生物学的活性フラグメントは、配列番号6、9、または11で示すアミノ酸配列の、たとえば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170またはそれ以上の隣接または非隣接アミノ酸(その間のすべての整数を含む)であるポリペプチドフラグメントであることができる。ある実施形態において、いずれのHRS参照ポリペプチドのC末端またはN末端領域も、切断HRSポリペプチドが参照HRSスプライスバリアントポリペプチドの非カノニカル活性を保持する限り、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180またはそれ以上のアミノ酸(その間のすべての整数および範囲を含む)(たとえば101、102、103、104、105)が切断され得る。好適には、生物学的活性フラグメントは、それが誘導された生物学的活性(すなわち非カノニカル活性)HRS参照ポリペプチドの活性の約1%、10%、25%、または50%以上を有する。
【0093】
他の例証的な実施形態において、配列番号6、9または11のHRSフラグメントは、サイズが約20−30、20−40、20−50、20−60、20−70、20−80、20−90、20−100、20−125、20−150または20−175のアミノ酸長に及び得る。他の実施形態において、フラグメントはサイズが約30−40、30−50、30−60、30−70、30−80、30−90、30−100、30−125、30−150または30−175アミノ酸長に及ぶであろう。他の実施形態において、フラグメントはサイズが約40−50、40−60、40−70、40−80、40−90、40−100、40−125、40−150または40−175アミノ酸長に及ぶであろう。なお他の例証的な実施形態において、フラグメントはサイズが約50−60、50−70、50−80、50−90、50−100、50−125、50−150または50−175アミノ酸長に及ぶであろう。
【0094】
なお他の実施形態において、本発明はHRSスプライスバリアントポリペプチドの活性変異体(たとえば配列番号6、9または11)を提供し、前記変異体は、配列番号6、9または11によって呈される少なくとも1つの非カノニカル活性を実質的に保持する。配列番号6、9または11で示す配列のある例証的な変異体は、配列番号6、9または11に対して少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性(下記のように決定された)をその長さに沿って有する変異体を包含する。
【0095】
変異体は、配列番号6、9または11とは1つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入で異なり得る。このような変異体は、天然型であり得るか、またはたとえば配列番号6、9または11(または配列番号6、9、または11をコードするポリヌクレオチド)を修飾して、当分野で周知のいくつかの技法のいずれかを使用して本明細書に記載するようなその生物学的活性を評価することによって、合成により発生され得る。
【0096】
ある実施形態において、変異体は保存的置換を含有するであろう。「保存的置換」は、ペプチド化学の当業者が実質的に変化しないポリペプチドの2次構造およびハイドロパシー性質を予想するように、アミノ酸が類似の特性を有する別のアミノ酸で置換されることである。修飾は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの構造に行われ得て、所望の特徴を有する変異体または誘導体ポリペプチドをエンコードする機能性分子をなお取得し得る。本発明のHRSスプライスバリアントポリペプチドの等価物、または改良された変異体さえも生成するためにポリペプチドのアミノ酸配列を改変することが望ましいとき、当業者はたとえば、表1によるコードDNA配列のコドンの1つ以上を変化させることができる。
【0097】
あるアミノ酸は、たとえば抗体の抗原結合領域または基質分子上の結合部位などの構造との相互作用的な結合能力を認識できるほど消失することなく、タンパク質構造中の他のアミノ酸で置換され得る。タンパク質の生物機能活性を概して定義するのが、タンパク質の相互作用的能力および性質であるため、あるアミノ酸配列置換はタンパク質配列、およびもちろんその根底にあるDNAコード配列の中で行われ、それにもかかわらず同様の特性を有するタンパク質を取得することができる。それゆえ、開示された組成物のポリペプチド配列、または前記ポリペプチドをエンコードする相当するDNA配列の中で各種の変化が、その望ましい有用性または活性を認識できるほど消失することなく、行われ得ることが考慮される。
【0098】
【表1】
このような変化を行う際に、アミノ酸のハイドロパシー指数も検討され得る。タンパク質に相互作用性生物機能を付与する際のアミノ酸のハイドロパシー指数の重要性は、当分野で概して理解されている(参照により本明細書に組み入れられている、Kyte and Doolittle、1982)。たとえば、アミノ酸の相対的なハイドロパシー特質は結果として生じるタンパク質の2次構造に寄与し、これが今度はタンパク質と他の分子、たとえば酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を定義することが公知である。各アミノ酸は、疎水性および電荷特徴に基づいたハイドロパシー指数を割り当てられている(Kyte and Doolittle,1982)。これらの値は:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/システイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(0.4);トレオニン(0.7);セリン(0.8);トリプトファン(0.9);チロシン(1.3);プロリン(1.6);ヒスチジン(3.2);グルタメート(3.5);グルタミン(3.5);アスパルテート(3.5);アスパラギン(3.5);リジン(3.9);およびアルギニン(4.5)である。
【0099】
あるアミノ酸は、類似のハイドロパシー指数またはスコアを有する他のアミノ酸によって置換され、類似の生物学的活性を有するタンパク質をなお生じ得る、すなわち生物機能性が同等のタンパク質をなお取得し得ることが当分野で公知である。このような変化を行うに際して、ハイドロパシー指数が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のアミノ酸が特に好ましく、±0.5以内のアミノ酸がまたさらに詳細には好ましい。
【0100】
同様のアミノ酸の置換が親水性に基づいて有効に行えることも、当分野で理解される。米国特許第4,554,101号に詳説されているように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパルテート(+3.0 1);グルタメート(+3.0 1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(−0.4);プロリン(−0.5 1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。アミノ酸が類似の親水性値を有する別のアミノ酸と置換されて、生物的に同等のタンパク質をなお取得できることが理解される。このような変化において、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のアミノ酸が特に好ましく、±0.5以内のアミノ酸がまたさらに詳細には好ましい。
【0101】
上で概説したように、アミノ酸置換は、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、たとえばその疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づき得る。各種の上述の特徴を考慮する例示的な置換は、当業者に周知であり:アルギニンおよびリジン;グルタメートおよびアスパルテート;セリンおよびトレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシンを包含する。
【0102】
アミノ酸置換はさらに、極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または残基の両親媒性性質の類似性に基づいて行われ得る。たとえば負に荷電したアミノ酸はアスパラギン酸およびグルタミン酸を包含し;正に荷電したアミノ酸はリジンおよびアルギニンを包含し;ならびに類似の親水性値を有する非荷電極性頭基を有するアミノ酸はロイシン、イソロイシンおよびバリン;グリシンおよびアラニン;アスパラギンおよびグルタミン;ならびにセリン、トレオニン、フェニルアラニンおよびチロシンを包含する。保存的変化を表現し得るアミノ酸の他の群は:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、hisを包含する。変異体は、非保存的変化をさらに、または代わりに含有し得る。好ましい実施形態において、変異体ポリペプチドは未変性配列とは、5またはそれ以下のアミノ酸の置換、欠失または付加で異なる。変異体は、ポリペプチドの2次構造およびヒドロパシー特性に最小限の影響を有するアミノ酸のたとえば欠失または付加によって、さらに(または代わりに)修飾され得る。
【0103】
ポリペプチドは、翻訳と同時にまたは翻訳後修飾にタンパク質の移行を方向付ける、シグナル(またはリーダー)配列をタンパク質のN−末端に含み得る。ポリペプチドはまた、ポリペプチド(たとえばpoly−His)の合成、精製もしくは同定を容易にするために、またはポリペプチドの固体支持体への結合を増強するために、リンカーまたは他の配列にコンジュゲートされ得る。たとえばポリペプチドは、免疫グロブリンFc領域にコンジュゲートされ得る。
【0104】
2つの配列におけるアミノ酸の配列が、下記のように、最大一致となるように整列されたときに同じである場合、ポリペプチド配列を比較するときに2つの配列は「同一」であると言われる。2つの配列間の比較は通例、配列類似性の局所領域を同定および比較するために、比較ウィンドウにわたる配列を比較することによって実行される。「比較ウィンドウ」は本明細書で使用する場合、配列が同じ数の近接位置の参照配列と、2つの配列が最適に整列された後に比較され得る、少なくとも約20、通常、30〜約75、40〜約50の近接位置のセグメントを指す。
【0105】
比較のための配列の最適整列は、たとえばバイオインフォマティクスソフトウェアのLasergene suite(DNASTAR,Inc.、マディソン、ウィスコンシン州)でMegalignプログラムを使用して、デフォルトパラメータを使用して行われ得る。本プログラムは、以下の参考文献:Dayhoff,M.O.(1978)A model of evolutionary change in proteins − Matrices for detecting distant relationships.In Dayhoff,M.O.(ed.)Atlas of Protein Sequence and Structure,National Biomedical Research Foundation,Washington DC Vol.5,Suppl.3,pp.345−358;Hein J.(1990)Unified Approach to Alignment and Phylogenes pp.626−645 Methods in Enzymology vol.183,Academic Press,Inc.,San Diego,CA;Higgins,D.G.and Sharp,P.M.(1989)CABIOS 5:151−153;Myers,E.W.and Muller W.(1988)CABIOS 4:11−17;Robinson,E.D.(1971)Comb.Theor 11:105;Santou,N.Nes,M.(1987)Mol.Biol.Evol.4:406−425;Sneath,P.H.A.and Sokal,R.R.(1973)Numerical Taxonomy − the Principles and Practice of Numerical Taxonomy,Freeman Press,San Francisco,CA;Wilbur,W.J.and Lipman,D.J.(1983)Proc.Nat’l Acad.,Sci.USA 80:726−730に記載された複数の整列スキームを実現する。
【0106】
代わりに、比較のための配列の最適整列は、Smith and Waterman(1981)Add.APL.Math 2:482の局所同一性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443の同一性整列アルゴリズムによって、Pearson and Lipman(1988)Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 85:2444の類似性方法の検索によって、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software PackageのGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、およびTFASTA、Genetics Computer Group(GCG),575 Science Dr.,Madison,WI)のコンピュータ実装によって、または検査によって行われ得る。
【0107】
配列同一性および配列類似性のパーセントを決定するのに好適であるアルゴリズムの例は、それぞれAltschulら(1977)Nucl.Acids Res.25:3389−3402およびAltschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403−410に記載されている、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。BLASTおよびBLAST 2.0をたとえば本明細書に記載するパラメータで使用して、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの配列同一性のパーセントを決定することができる。BLAST解析を実行するソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通じて一般公開されている。アミノ酸配列では、スコアリングマトリクスを使用して累積スコアを計算することができる。各方向へのワードヒットの伸長が停止するのは:累積整列スコアが達成されたその最大値から数量Xだけ低下したとき;負スコアの残基アライメントが1つ以上蓄積したために、累積スコアが0以下になったとき;またはどちらかの配列の端に最後に達したとき;である。BLASTアルゴリズムパラメータW、TおよびXは、整列の感度および速度を決定する。
【0108】
1つの例証的な手法において、「配列同一性のパーセンテージ」は、少なくとも20位置の比較ウィンドウにわたる2つの最適に整列された配列を比較することによって決定され、比較ウィンドウ中のポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適整列のための参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して、20パーセント以下の、通常5〜15パーセントの、または10〜12パーセントの付加または欠失(すなわちギャップ)を含み得る。パーセンテージは、同一のアミノ酸残基が両方の配列に現れる位置の数を決定して適合した位置の数を産することと、適合した位置の数を参照配列中の位置の総数(すなわちウィンドウサイズ)で割ることと、結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを産することとによって計算される。
【0109】
本発明のある実施形態において、融合ポリペプチド、および融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。融合ポリペプチドは、1つ以上の異種ポリペプチド配列(融合パートナー)に直接またはアミノ酸リンカーを介して間接的にどちらかで、共有結合的に連結されている本発明のHRSスプライスバリアントポリペプチドを指す。融合タンパク質を形成するポリペプチドは通例、C末端からN末端に連結されるが、ポリペプチドはC末端からC末端に、N末端からN末端に、またはN末端からC末端に連結されることもできる。融合タンパク質のポリペプチドはいずれの順序でもよい。
【0110】
融合パートナーは、ポリペプチドの所望の活性に悪影響を及ぼさないという条件で、本質的にいずれの望ましい目的のためにも設計および包含され得る。たとえば、1実施形態において、融合パートナーは、未変性組換えタンパク質よりも高い収率でタンパク質の発現を補助する配列(発現エンハンサ)を含む。他の融合パートナーは、タンパク質の溶解度を上昇させるために、またはタンパク質を望ましい細胞内コンパートメントにターゲティングできるようにするもしくは細胞外に分泌できるようにするために選択され得る。なおさらなる融合パートナーは、タンパク質の精製を容易にする親和性標識を包含し得る。
【0111】
さらに概して、異種配列、たとえばFcフラグメントへの融合は、望ましくない特徴を除去するためにまたはHRSポリペプチドの所望の特徴(たとえば薬物動態特性)を改善するために利用され得る。たとえば異種配列への融合は、化学安定性を上昇させ得る、免疫原性を低下させ得る、インビボターゲティングを改善し得る、および/またはHRSポリペプチドの循環の半減期を上昇させる。
【0112】
異種配列への融合を使用して、2機能性融合タンパク質、たとえばHRSポリペプチドを通じて選択された非カノニカル活性を所有するだけではなく、異種ポリペプチドを通じて他の経路を修飾(すなわち刺激または阻害)することもできる2機能性タンパク質も生成され得る。このような経路の例は、これに限定されるわけではないが、自然もしくは適応免疫活性化経路などの各種の免疫系関連経路、または細胞成長制御経路、たとえば血管新生を包含する。ある態様において、異種ポリペプチドはHRSポリペプチドと相乗的に作用して、被験体中の細胞経路を調節し得る。2機能性融合タンパク質を生成するのに利用され得る異種ポリペプチドの例は、これに限定されるわけではないが、生物学的活性フラグメントおよび/またはその変異体に加えて、トロンボポエチン、サイトカイン(たとえばIL−11)、ケモカイン、および各種の造血成長因子を包含する。
【0113】
融合ポリペプチドは概して、標準技法を使用して調製され得る。たとえば望ましい融合のポリペプチド構成要素をコードするDNA配列は、別々に構築され、適切な発現ベクターの中へライゲーションされ得る。1つのポリペプチド構成要素をコードするDNA配列の3’端は、ペプチドリンカーを用いてまたは用いずに、第2のポリペプチド構成要素をコードするDNA配列の5’端にライゲーションされるため、配列の読み枠は一致する(in phase)。このことにより、両方の構成要素ポリペプチドの生物学的活性を保持する単一の融合ポリペプチドの中へ翻訳が可能となる。
【0114】
望ましい場合には、ペプチドリンカー配列を用いて、第1および第2のポリペプチド構成要素が各ポリペプチドをその2次および3次構造に折り畳むのに十分な距離だけ隔離され得る。このようなペプチドリンカー配列は、当分野で周知の標準技法を使用して融合タンパク質の中へ組み込まれる。あるペプチドリンカー配列は、以下の因子:(1)それらが可撓性伸長立体配座を取ることができること;(2)それらが第1および第2のポリペプチド上の機能性エピトープと相互作用できる2次構造を取れないこと;および(3)ポリペプチド機能性エピトープと反応するかもしれない疎水性または荷電残基の欠失に基づいて選定され得る。好ましいペプチドリンカー配列は、Gly、AsnおよびSer残基を含有する。他の中性付近のアミノ酸、たとえばThrおよびAlaもリンカー配列中で使用され得る。リンカーとして有用に用いられ得るアミノ酸配列は、Marateaら、Gene 40:39 46(1985);Murphyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8258 8262(1986);米国特許第4,935,233号および米国特許第4,751,180号に開示されているものを含む。リンカー配列は概して、1〜約50アミノ酸の長さであり得る。第1および第2のポリペプチドが機能性ドメインを隔離して、立体障害を防止するために使用することができる非必須N末端アミノ酸領域を有するときには、リンカー配列は必要とされない。
【0115】
ライゲーションされたDNA配列は、好適な転写または翻訳制御要素に作動的に連結されている。DNAの発現に関係する制御要素は、第1のポリペプチドをコードするDNA配列に対して5’側のみに位置する。同様に、翻訳および転写終結シグナルを終了させるために必要な停止コドンは、第2のポリペプチドをコードするDNA配列の3’側のみに存在する。
【0116】
一般に、ポリペプチドおよび融合ポリペプチド(ならびにそのコードポリヌクレオチド)は単離されている。「単離」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、その元の環境から除去されたものである。たとえば天然型タンパク質は、自然系で共存する材料のいくつかまたはすべてから隔離される場合に、単離されている。好ましくはこのようなポリペプチドは、少なくとも約90%の純度、さらに好ましくは少なくとも約95%の純度、最も好ましくは少なくとも約99%の純度である。たとえばポリヌクレオチドが自然環境の一部ではないベクターの中へクローニングされる場合、ポリヌクレオチドを単離することが検討される。
【0117】
なお他の実施形態において、本発明のHRSスプライスバリアントポリペプチドはダイマーの一部であり得る。ダイマーはたとえば、2つの同一のHRSポリペプチド間のホモダイマー、2つの異なるHRSポリペプチド間のヘテロダイマーおよび/またはHRSポリペプチドと異種ポリペプチドとの間のヘテロダイマーを包含し得る。モノマーおよび/またはダイマーは可溶性であり得て、同種になるまで単離または精製され得る。あるヘテロダイマー、たとえばHRSポリペプチドと異種ポリペプチドとのヘテロダイマーは、2機能性であり得る。
【0118】
1つ以上の置換、切断、欠失、付加、化学修飾、またはこれらの改変の組合せのどれによるかかかわらずに、単離HRSモノマー自体と(ホモダイマー化)または第2のHRSポリペプチドと(ヘテロダイマー化)実質的にダイマー化しない単離HRSモノマーを含む、HRSポリペプチドのモノマーも包含される。ある実施形態において、モノマー性HRSポリペプチドは、ダイマー性またはマルチマー性HRSポリペプチド複合体によって所有されない非カノニカル活性を含む、生物学的活性を所有する。
【0119】
他の実施形態において、本発明のHRSポリペプチドは、マルチユニット複合体の一部であり得る。本発明のマルチユニット複合体は、たとえば少なくとも2の、3の、4の、もしくは5のまたはそれ以上のモノマーを包含することができる。本発明のモノマーおよび/またはマルチユニット複合体は可溶性であり得て、同種になるまで単離または精製され得る。マルチユニット複合体のモノマーユニットは、相互に異なり得る、相同性である、実質的に相同性である、または同一性であり得る。しかし、本発明のマルチユニット複合体は、本明細書に記載するようなHRSポリペプチドを含む少なくとも1つのモノマーを、または他の実施形態において、本明細書に記載するような少なくとも2つ以上のHRSポリペプチドを包含する。
【0120】
共有結合的に連結されたモノマーは、直接(結合により)または間接的に(たとえばリンカーを介して)連結されることができる。本明細書のポリペプチドの直接連結では、ポリペプチドを修飾してダイマー化を増強することが有益であり得る。たとえば、HRSポリペプチドの1つ以上のアミノ酸残基は、1つ以上のシステインによる付加または置換(substation)によって修飾され得る。アミノ酸置換、たとえばシステイン置換、または連結を容易にする他の修飾を生成する方法は、当業者に周知である。
【0121】
本発明のある実施形態は、本明細書に記載するような、HRSポリペプチドの望ましい特徴を改良する修飾を含む、修飾HRSポリペプチドの使用も考慮する。本発明のHRSポリペプチドの例証的な修飾は、これに限定されるわけではないが、アセチル化、ヒドロキシ化、メチル化、アミド化を含む側鎖修飾、主鎖修飾、ならびにNおよび/またはC末端修飾を含む1つ以上の構成アミノ酸における化学的および/または酵素的誘導体化、ならびに炭水化物または脂質部分、補因子などの付着を包含する。例示的な修飾は、HRSポリペプチドのペグ化も包含する(たとえば参照により本明細書に組み入れられている、Veronese and Harris,Advanced Drug Delivery Reviews 54:453−456,2002を参照)。
【0122】
ある態様において、化学選択ライゲーション技術を利用して、たとえば部位特異的および調節方式でポリマーを付着することによって本発明のHRSポリペプチドが修飾され得る。このような技術は通例、化学的手段または組換え手段のどちらかと、続いての相補的リンカーを担持するポリマーによる修飾による、タンパク質主鎖の中への化学選択アンカーの組込みに頼っている。結果として、構築プロセスおよび得られたタンパク質−ポリマーコンジュゲートの共有構造は制御され得て、薬物特性、たとえば有効性および薬物動態特性の合理的な最適化が可能となる(たとえばKochendoerfer,Current Opinion in Chemical Biology 9:555−560,2005を参照)。
【0123】
本明細書に記載するHRSポリペプチドは、当業者に公知のいずれの好適な手順によっても、たとえば組換え技法によって調製され得る。たとえば,HRSポリペプチドは:(a)HRSポリペプチドをエンコードして、制御要素に作動的に連結されたポリヌクレオチド配列を含む構築物を調製するステップと;(b)構築物を宿主細胞の中へ導入するステップと;(c)宿主細胞を培養してHRSポリペプチドを発現させるステップと;(d)HRSポリペプチドを宿主細胞から単離するステップとを包含する手順によって調製され得る。組換えHRSポリペプチドは、たとえばSambrookら(1989,上掲)、特にSections 16および17;Ausubelら(1994,上掲)、特にChapters 10および16;ならびにColiganら、Current Protocols in Protein Science(John Wiley & Sons,Inc.1995−1997)、特にChapters 1,5および6に記載されているような標準プロトコルを使用して、便利に調製することができる。
【0124】
組換え産生方法に加えて、本発明のポリペプチド、およびそのフラグメントは、固相技法を使用する直接ペプチド合成(Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154(1963))によって産生され得る。タンパク質合成は、手動技法を使用して、または自動化によって実行され得る。自動合成は、たとえばApplied Biosystems 431Aペプチド合成装置(Perkin Elmer)を使用して達成され得る。代わりに、各種のフラグメントは、別々に化学合成され、化学的方法を使用して組合されて所望の分子を生成し得る。
【0125】
ポリヌクレオチド組成物
本発明は、本明細書に記載するように、本発明のHRSスプライスバリアントポリペプチドをエンコードする単離ポリヌクレオチド、ならびにこのようなポリヌクレオチドを含む組成物も提供する。ある実施形態において、通例、エクソンを新たなまたは例外的なやり方で組合せる、HRSスプライスバリアントの1つだけの性質のために、HRSポリヌクレオチドは固有のまたは例外的なスプライス部位を含む。例示的な参照HRSスプライスバリアントポリヌクレオチドは、配列番号5、8、および10、ならびにその変異体および相補体を包含する。
【0126】
本発明のHRSポリヌクレオチドには、本明細書に記載するように、プライマー、プローブ、アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびこれらの参照ポリヌクレオチドのすべてもしくは部分を含む、これらの参照ポリヌクレオチドのすべてもしくは部分に相補的である、またはこれらの参照ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするRNA干渉因子も包含される。
【0127】
本明細書で使用する場合、「DNA」および「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、特定の種の全ゲノムDNAを含まずに単離されたDNA分子を指す。その結果、ポリペプチドをコードするDNAセグメントは、1つ以上のコード配列を含有するが、またDNAセグメントが取得される種の全ゲノムDNAから実質的に単離された、または全ゲノムDNAを含まずに単離されたDNAセグメントを指す。「DNAセグメント」および「ポリヌクレオチド」という用語には、DNAセグメントおよびこのようなセグメントのより小さいフラグメントが、およびたとえばプラスミド、コスミド、ファージミド、ファージ、ウイルスなどを含む組換えベクターも包含されている。
【0128】
当業者によって理解されるように、本発明のポリヌクレオチド配列は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドなどを発現する、または発現するのに適し得る、ゲノム配列、ゲノム外配列およびプラスミドエンコードされた配列ならびにより小さい改変遺伝子セグメントを包含することができる。このようなセグメントは、天然に単離され得る、または人類の手で合成により修飾され得る。
【0129】
当業者によって認識されるように、ポリヌクレオチドは、単ストランド(コードまたはアンチセンス)または2本ストランドであり得て、DNA分子(ゲノム、cDNAまたは合成)またはRNA分子であり得る。追加のコード配列または非コード配列は、必要はないが、本発明のポリヌクレオチド内に存在し得て、ポリヌクレオチドは、必要はないが、他の分子および/または支持材料に連結され得る。
【0130】
ポリヌクレオチドは、未変性配列(すなわち本発明のHRSポリペプチドまたはその部分をエンコードする内因性配列)を含み得る、または変異体、もしくはこのような配列の生物機能性等価物を含み得る。ポリヌクレオチド変異体は、さらに後述するように、好ましくはエンコードされたポリペプチドの所望の非カノニカル活性が未修飾ポリペプチドと比べて実質的に減弱されないように、1つ以上の置換、付加、欠失および/または挿入を含有し得る。エンコードされたポリペプチドの活性に対する効果は概して本明細書に記載するように、および当分野で認識されるように、影響評価され得る。
【0131】
本発明は、本明細書に記載するような、HRSスプライスバリアントポリヌクレオチド(たとえば配列番号5、8、または10)に同一であるまたは相補的である、各種の長さの近接する一連の配列を含む単離ポリヌクレオチドフラグメントをさらに提供し、単離ポリヌクレオチドは、本発明のHRSスプライスバリアントポリペプチド、またはその活性フラグメントもしくは活性変異体をエンコードする。
【0132】
たとえば本発明により、少なくとも約5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、41、43、44、45、46、47、48、49、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170のまたはそれ以上の、本発明のHRSポリペプチドの近接アミノ酸残基、ならびにすべての中間長をエンコードするポリヌクレオチドが本発明により提供される。「中間長」はこの状況では、引用値の間のいずれかの長さ、たとえば21、22、23など;31、32、33など;41、42、43などを意味することがただちに理解されるであろう。
【0133】
本発明のポリヌクレオチドは、コード配列自体の長さとは無関係に、他のDNA配列、たとえばプロモータ、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、複数のクローニング部位、他のコードセグメントなどと、その全長が相当に変更され得るように組合され得る。その結果、ほぼいずれの長さのポリヌクレオチドフラグメントも用いられ得ることが考慮され;全長は好ましくは、調製の容易さおよび所期の組換えDNAプロトコルでの使用によって限定される。
【0134】
上記のように、ある実施形態は、HRSポリペプチドをエンコードするHRSポリヌクレオチドに関する。他の使用の中でも、これらの実施形態を利用して、望ましいHRSポリペプチドもしくはその変異体が組換えにより産生され得る、または選択した細胞もしくは被験体中でHRSポリペプチドが発現され得る。遺伝暗号の縮重の結果として、本明細書に記載するような所与のHRSポリペプチドをエンコードすることができる多くのヌクレオチド配列があることが、当業者によって認められるであろう。これらのポリヌクレオチドのいくつかは、参照ヌクレオチド配列に対して限定された相同性しか持ち得ない。それにもかかわらず、このようなポリヌクレオチド(すなわち変性変異体ポリヌクレオチド)は、まさに同じポリペプチドをエンコードすることが理解されるであろう。したがって、コドン使用頻度の相違のために変化するポリヌクレオチド、たとえばヒトおよび/または霊長類コドン選択のために最適化されるポリヌクレオチドは、本発明によって特異的に考慮する。
【0135】
さらに、本明細書で提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子は、本発明の範囲内である。対立遺伝子は、1つ以上の突然変異、たとえばヌクレオチドの欠失、付加および/または置換の結果として改変された内因性遺伝子である。得られたmRNAおよびタンパク質は、必要はないが、改変された構造または機能を有し得る。対立遺伝子は、標準技法(たとえばハイブリダイゼーション、増幅および/またはデータベース配列比較)を使用して同定され得る。
【0136】
ポリヌクレオチドおよびその融合物は、当分野で公知および利用可能な多種多様の十分に確立された技法を使用して、調製、操作および/または発現され得る。たとえば本発明のポリペプチド、またはその融合タンパク質もしくは機能性等価物をエンコードする、ポリヌクレオチド配列は、適切な宿主細胞中での本発明のHRSポリペプチドの発現を方向付けるために組換えDNA分子中で使用され得る。遺伝暗号の固有の縮重のために、実質的に同じまたは機能性に同等のアミノ酸配列をエンコードする他のDNA配列が産生され得て、これらの配列が使用されて所与のポリペプチドがクローニングおよび発現され得る。
【0137】
当業者によって理解されるように、いくつかの例において、非天然型コドンを所有するポリペプチドコードヌクレオチド配列を産生することが好都合であり得る。たとえば、特定の原核生物または真核生物宿主により好ましいコドンは、タンパク質発現率を上昇するように、または所望の特性、たとえば天然型配列から発生した転写物の半減期よりも長い半減期を有する組換えRNA転写物を産生するように選択することができる。
【0138】
その上、本発明のポリヌクレオチド配列は、多種多様の理由でポリペプチドコード配列を改変するために、これに限定されるわけではないが、遺伝子産物のクローニング、プロセシング、発現および/または活性を修飾する改変を含む、概して当分野で公知の方法を使用して操作することができる。
【0139】
望ましいポリペプチドを発現させるために、ポリペプチドをエンコードするヌクレオチド配列、または機能性等価物は、適切な発現ベクター、すなわち挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要な要素を含有するベクターの中へ挿入され得る。当業者に周知である方法が使用されて、興味のあるポリペプチドをエンコードする配列ならびに適切な転写および翻訳制御要素を含有する発現ベクターが構築され得る。これらの方法は、インビトロ組換えDNA技法、合成技法、およびインビボ遺伝子組換えを包含する。このような技法は、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(1989)、およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology(1989)に記載されている。
【0140】
多種多様の発現ベクター/宿主系が公知であり、ポリヌクレオチド配列を含有および発現するために使用され得る。これらは、これに限定されるわけではないが、微生物、たとえば組換えバクテリオファージ、プラスミド、またはコスミドDNA発現ベクターによって形質転換された細菌;酵母発現ベクターによって形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(たとえばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(たとえばカリフラワー・モザイク・ウイルスCaMV;タバコ・モザイク・ウイルス、TMV)によって、もしくは細菌発現ベクター(たとえばTiまたはpBR322プラスミド)によって形質転換された植物細胞系;またはウイルスベース発現系を含む動物細胞系を包含する。
【0141】
発現ベクター中に存在する「調節要素」または「制御配列」は、宿主細胞タンパク質と相互作用して転写および翻訳を行う、ベクターのこのような非翻訳領域−−エンハンサ、プロモータ、5’および3’非翻訳領域−−である。このような要素は、その長さおよび特性が変化し得る。利用されるベクター系および宿主に応じて、構成的および誘導性プロモータを含む、いずれの数の好適な転写および翻訳要素も使用され得る。たとえば細菌系でのクローニングの場合、誘導性プロモータ、たとえばPBLUESCRIPTファージミド(Stratagene,La Jolla,Calif.)またはPSPORT1プラスミド(Gibco BRL,Gaithersburg,Md.)などのハイブリッドlacZプロモータが使用され得る。哺乳動物細胞系において、哺乳動物遺伝子からのまたは哺乳動物ウイルスからのプロモータが概して好ましい。ポリペプチドをエンコードする配列の複数のコピーを含有する株化細胞を発生させることが必要である場合、SV40またはEBVに基づくベクターは、適切な選択可能マーカーと共に好都合に使用され得る。
【0142】
特異的開始シグナルは、興味のあるポリペプチドをエンコードする配列のより効率的な翻訳を達成するために使用され得る。このようなシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接配列を包含する。発現効率は、文献に記載されているものなど(Scharf.ら、Results Probl.Cell Differ.20:125−162(1994))の、使用される特定の細胞系に適切であるエンハンサの包含によって増強され得る。
【0143】
加えて宿主細胞株が、挿入された配列の発現を調節するまたは発現されたタンパク質を所望の方式で処理するその能力について選定され得る。ポリペプチドのこのような翻訳後修飾は、これに限定されるわけではないが、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、ホスホリル化、脂質化、およびアシル化を包含する。タンパク質の「プレプロ」型を切断する翻訳後プロセシングは、正しい挿入、折畳みおよび/または機能を容易にするためにも使用され得る。特異的細胞機械およびこのような翻訳後活性に特徴的な機構を有する異なる宿主細胞、たとえばCHO、HeLa、MDCK、HEK293、およびW138が選定されて、外来性タンパク質の正しい修飾およびプロセシングが確実に行われ得る。
【0144】
組換えタンパク質の長期間の高収率産生のためには、安定な発現が概して好ましい。たとえば、興味のあるポリヌクレオチドを安定的に発現する株化細胞は、ウイルス複製起点および/または内因性発現要素を含有し得る発現ベクターならびに同じまたは別々のベクター上の選択可能マーカー遺伝子を使用して形質転換され得る。ベクターの導入後に、細胞は、選択培地に切り換える前に、富化培地で1〜2日間成長され得る。選択可能マーカーの目的は、選択に対する耐性を付与することであり、その存在によって、導入された配列を正しく発現させる細胞の成長および回収が可能となる。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、細胞型に適切な組織培養技法を使用して増殖され得る。
【0145】
いずれの数の選択系が使用されても、形質転換された株化細胞が回収され得る。これらは、これに限定されるわけではないが、tk細胞またはaprt細胞でそれぞれ用いることができる、単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら、Cell 11:223−232(1977))およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、Cell 22:817−823(1990))遺伝子を包含する。代謝拮抗薬、抗生物質、または除草剤に対する耐性;たとえばメトトレキサートに対する耐性を付与するdhfr(Wiglerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.77:3567−70(1980));アミノグリコシド、ネオマイシンおよびG−418に対する耐性を付与するnpt(Colbere−Garapinら、J.Mol.Biol.150:1−14(1981));およびクロルスルフォンならびにホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性をそれぞれ付与するalsまたはpat(Murry、上掲)も選択のための基礎として使用できる。
【0146】
生成物に特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のどちらかを使用して、ポリヌクレオチドエンコードされた生成物の発現を検出および測定する多種多様のプロトコルは、当分野で公知である。例は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光活性化細胞分取(FACS)を包含する。これらのおよび他のアッセイは、他の箇所のなかでも、Hamptonら、Serological Methods、a Laboratory Manual(1990)およびMaddoxら、J.Exp.Med.158:1211−1216(1983)に記載されている。
【0147】
興味のあるポリヌクレオチド配列によって形質転換された宿主細胞は、細胞培養物からのタンパク質の発現および回収に好適な条件下で培養され得る。組換え細胞によって産生されたタンパク質は、使用した配列および/またはベクターに応じて分泌または細胞内に含有され得る。当業者によって理解されるように、本発明のポリヌクレオチドを含有する発現ベクターは、原核生物または真核生物細胞膜を通じてエンコードされたポリペプチドの分泌を方向付けるシグナル配列を含有するように設計され得る。他の組換え構築物が使用されて、興味のあるポリペプチドをエンコードする配列が、可溶性タンパク質の精製を容易にするポリペプチドドメインをエンコードするヌクレオチド配列に接合され得る。
【0148】
組換え産生方法に加えて、本発明のポリペプチド、およびそのフラグメントは、固相技法を使用する直接ペプチド合成(Merrifield、J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154(1963))によって産生され得る。タンパク質合成は、手動技法を使用して、または自動化によって実行され得る。自動合成は、たとえばApplied Biosystems 431Aペプチド合成装置(Perkin Elmer)を使用して達成され得る。代わりに、各種のフラグメントは、個別に化学合成され、化学的方法を使用して組合されて全長分子を生成し得る。
【0149】
本発明の別の態様によれば、本発明のポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチドは、たとえば遺伝子療法技法を使用して、インビボで被験体に送達され得る。遺伝子療法は概して、このような療法が求められる障害または状態を有する哺乳動物、特にヒトのある細胞、標的細胞への異種核酸の移行を指す。核酸は、選択された標的細胞の中へ、異種DNAが発現され、エンコードされた治療生成物がこれにより産生されるような方式で導入される。
【0150】
本明細書で教示されるような遺伝子療法に利用できる各種のウイルスベクターは、アデノウイルス、疱疹ウイルス、ワクシニア、アデノ関連ウイルス(AAV)、または、好ましくはRNAウイルス、たとえばレトロウイルスを包含する。好ましくは、レトロウイルスベクターは、マウスもしくはトリレトロウイルスの誘導体であるか、またはレンチウイルスベクターである。好ましいレトロウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。単一の外来遺伝子を挿入することができるレトロウイルスベクターの例は、これに限定されるわけではないが:モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌腫瘍ウイルス(MuMTV)、SIV、BIV、HIVおよびラウス肉腫ウイルス(RSV)を包含する。いくつかの追加のレトロウイルスベクターは複数の遺伝子を組み入れることができる。これらのベクターのすべては、選択可能マーカーの遺伝子を移行または組み入れできるため、形質導入された細胞を同定および発生することができる。興味のあるジンクフィンガーから誘導されたDNA結合ポリペプチド配列をウイルスベクターに、たとえば特異的標的細胞の受容体のリガンドをエンコードする他の遺伝子と共に挿入することにより、ベクターは標的特異的にされ得る。レトロウイルスベクターは、たとえばタンパク質をエンコードするポリヌクレオチド(ダイマー)を導入することによって、標的特異的にすることができる。例証的なターゲティングは、レトロウイルスベクターをターゲティングする抗体を使用することによって達成され得る。当業者は、ジンクフィンガー−ヌクレオチド結合タンパク質ポリヌクレオチドを含有するレトロウイルスベクターの標的特異的送達を可能にするためにレトロウイルスゲノムに挿入できる特異的ポリヌクレオチド配列を知るであろう、または過度の実験なしにただちに確かめることができる。
【0151】
組換えレトロウイルスは欠陥があるため、組換えレトロウイルスは感染性ベクター粒子を産生するための補助を必要とする。この補助はたとえば、LTR内の制御配列の調節下でレトロウイルスの構造遺伝子すべてをエンコードするプラスミドを含有するヘルパー株化細胞を使用することによって提供することができる。これらのプラスミドには、パッケージング機構がカプセル化のためにRNA転写物を認識できるようにするヌクレオチド配列がない。パッケージングシグナルの欠失を有するヘルパー株化細胞は、これに限定されるわけではないが、たとえばPSI.2、PA317およびPA12を包含する。これらの株化細胞は、ゲノムがパッケージングされていないため、空のビリオンを産生する。レトロウイルスベクターがパッケージングシグナルが、無処置であるが、構造遺伝子が興味のある他の遺伝子によって置き換えられるこのような細胞の中へ導入される場合、ベクターはパッケージングされて、ベクタービリオンを産生することができる。本方法によって産生されたベクタービリオンが次に使用されて、組織株化細胞、たとえばNIH3T3細胞を感染さえて、大量のキメラレトロウイルスビリオンを産生することができる。
【0152】
たとえばDNA−リガンド複合体、アデノウイルス−リガンド−DNA複合体、DNAの直接注入、CaPO
4沈殿、遺伝子銃技法、電気穿孔、リポソーム、リポフェクションなどを含む、遺伝子療法のための「非ウイルス」送達技法も使用することができる。これらの方法のいずれも当業者に広く利用可能であり、本発明での使用に好適であろう。他の好適な方法が当業者に利用可能であり、形質移入の利用可能な方法のいずれを使用しても本発明を達成できることが理解されるべきである。リポフェクションは、単離されたDNA分子をリポソーム粒子内にカプセル化することと、リポソーム粒子を標的細胞の細胞膜と接触させることとによって達成することができる。リポソームは、両親媒性分子、たとえばホスファチジルセリンまたはホスファチジルコリンで成り立つ脂質2重層が周囲の媒体の部分を、脂質2重層が親水性内部を包囲するようにカプセル化する、自己集合性のコロイド状粒子である。単層または多重膜リポソームは、内部が望ましい化学薬物、または、本発明のように、単離されたDNA分子を含有するように構築することができる。
【0153】
ある実施形態は、後述する厳密性条件下で、参照HRSポリヌクレオチド配列に、またはその相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチドを包含する。本明細書で使用する場合、「低厳密性、中厳密性、高厳密性、または超高厳密性条件下でハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件について記載している。ハイブリダイゼーション反応を実行するための案内は、Ausubelら(1998、上掲)、Sections 6.3.1−6.3.6に見出すことができる。水性および非水性方法はその参考文献に記載されており、どちらも使用できる。
【0154】
本明細書での低厳密条件への言及は、少なくとも約1体積/体積%〜少なくとも約15体積/体積%ホルムアミドおよび42℃の少なくとも約1M〜少なくとも約2Mハイブリダイゼーション用塩、および42℃の少なくとも約1M〜少なくとも約2M洗浄用塩を包含および網羅する。低厳密性条件は、65℃でのハイブリダイゼーションについて、1%ウシ血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5M NaHPO
4(pH7.2)、7%SDS、および(i)2×SSC、0.1%SDS;または(ii)0.5%BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO
4(pH7.2)、室温の洗浄用5%SDSも包含し得る。低厳密性条件の1実施形態は、約45℃の6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)でのハイブリダイゼーション、それに続く少なくとも50℃の0.2×SSC、0.1%SDSでの2回の洗浄(洗浄液温度は、低厳密性条件では55℃まで上昇させることができる)を包含する。
【0155】
中厳密性条件は、少なくとも約16体積/体積%〜少なくとも約30%体積/体積ホルムアミドおよび42℃の少なくとも約0.5M〜少なくとも約0.9Mハイブリダイゼーション用塩、および55℃の少なくとも約0.1M〜少なくとも約0.2M洗浄用塩を包含および網羅する。中厳密性条件は、1%ウシ血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5M NaHPO
4(pH7.2)、65℃のハイブリダイゼーション用7%SDS、および(i)2×SSC、0.1%SDS;または(ii)0.5%BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO
4(pH7.2)、60〜65℃の洗浄用5%SDSも包含し得る。中厳密性条件の1実施形態は、約45℃の6×SSCでのハイブリダイゼーション、それに続く60℃の0.2×SSC、0.1%SDSでの1回以上の洗浄を包含する。高厳密性条件は、少なくとも約31体積/体積%〜少なくとも約50体積/体積%ホルムアミドおよび42℃の約0.01M〜約0.15Mハイブリダイゼーション用塩、および55℃の約0.01M〜約0.02Mの洗浄用塩を包含および網羅する。
【0156】
高厳密性条件は、1%ウシ血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5M NaHPO
4(pH7.2)、65℃のハイブリダイゼーション用7%SDS、および(i)0.2×SSC、0.1%SDS;または(ii)0.5%BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO
4(pH7.2)、65℃を超える温度の洗浄用1%SDSも包含し得る。高厳密性条件の1実施形態は、約45℃の6×SSCでのハイブリダイゼーション、それに続く65℃の0.2×SSC、0.1%SDSでの1回以上の洗浄を包含する。超高厳密性条件の1実施形態は、65℃の0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDSでのハイブリダイゼーション、それに続く0.2×SSC、65℃の0.1%SDSでの1回以上の洗浄を包含する。
【0157】
他の厳密性条件は当分野で周知であり、当業者は、各種の因子を巧みに扱ってハイブリダイゼーションの特異性を最適化できることを認識するであろう。最終洗浄の厳密性の最適化は、高度のハイブリダイゼーションを確実にするための役割を果たす。詳細な例については、Ausubelら、上掲、pages 2.10.1〜2.10.16およびSambrookら(1989、上掲)、sections 1.101〜1.104を参照。
【0158】
厳密性洗浄は通例、約42℃〜68℃の温度で行われるが、当業者は、他の温度が厳密性条件に好適であり得ることを認めるであろう。最大ハイブリダイゼーション速度は通例、DNA−DNAハイブリッドの形成のためのT
mより下の約20℃〜25℃にて現れる。Tmが融解温度、すなわち2つの相補的ポリヌクレオチド配列が解離する温度であることは当分野で周知である。T
mを概算する方法は、当分野で周知である(Ausubelら、上掲、page 2.10.8を参照)。
【0159】
一般に、完全に一致したDNAの2本鎖のT
mは、式:T
m=81.5+16.6(log
10M)+0.41(%G+C)−0.63(%ホルムアミド)−(600/長さ)による概算によって予測され得る(式中:Mは、好ましくは0.01〜0.4モルの範囲内のNa
+の濃度である;%G+Cは、塩基の総数のパーセンテージとしての、グアノシン塩基およびシトシン塩基の和であり、30%〜75%G+Cの範囲である;%ホルムアミドは、ホルムアミドの体積パーセント濃度である;長さは、DNA2本鎖中の塩基対の数である)。2本鎖DNAのT
mは、ランダムミスマッチ塩基対の数が1%上昇するごとに、おおよそ1℃低下する。洗浄は概して、高厳密性ではT
m−15℃にて、または中厳密性ではT
m−30℃にて行われる。
【0160】
ハイブリダイゼーション手順の1例において、固定化DNAを含有する膜(たとえばニトロセルロース膜またはナイロン膜)を、標識プローブを含有するハイブリダイゼーション緩衝液(50%脱イオンホルムアミド、5×SSC、5×デンハルト溶液(0.1%フィコール、0.1%ポリビニルピロリドンおよび0.1%ウシ血清アルブミン)、0.1%SDSおよび200mg/mL変性サケ精子DNA)中で42℃にて一晩ハイブリダイズする。次に、膜に2回の連続した媒体による厳密性洗浄(すなわち45℃にて15分間にわたる2×SSC、0.1%SDS、それに続く、50℃にて15分間にわたる2×SSC、0.1%SDS)、それに続く2回の連続したより高い厳密性洗浄(すなわち55℃にて12分間にわたる0.2×SSC、0.1%SDS、それに続く65〜68℃にて12分間にわたる0.2×SSCおよび65〜68℃にて12分間にわたる0.1%SDS溶液)を受けさせる。
【0161】
本発明の実施形態は、検出、増幅、アンチセンス療法、または他の目的のいずれのためにせよ、オリゴヌクレオチドも包含する。これらのおよび関連する目的のために、「オリゴヌクレオチド」または「オリゴ」または「オリゴマー」という用語は、単数の「オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)」ならびに複数の「オリゴヌクレオチド(oligonucleotides)」を網羅することを目的として、本発明の増幅方法、ならびに続いての検出方法での試薬として使用される、ヌクレオチド、ヌクレオシド、核酸塩基または関連する化合物の2つ以上のいずれかのポリマーを指す。オリゴヌクレオチドは、DNAおよび/またはRNAおよび/またはその類似体であり得る。
【0162】
オリゴヌクレオチドという用語は、必ずしも試薬に対するいずれかの特定の機能を表すわけではなく、むしろ総称的に使用されて本明細書に記載するこのような試薬すべてを対象とする。オリゴヌクレオチドは各種の異なる機能を果たし得て、たとえばオリゴヌクレオチドが相補ストランドにハイブリダイズすることが可能であり、核酸ポリメラーゼの存在下でさらに伸長できる場合、プライマーとして機能し得て、オリゴヌクレオチドがRNAポリメラーゼによって認識された配列を含有して、転写を可能にする場合、プロモータを提供し得て、オリゴヌクレオチドが適切に位置および/または修飾されている場合、ハイブリダイゼーションを防止するか、またはプライマー伸長を妨害するように機能し得る。オリゴヌクレオチドは、プローブ、またはアンチセンス剤としても機能し得る。オリゴヌクレオチドは、実質的にいずれの長さでもよく、たとえば増幅反応における、増幅反応の増幅生成物の検出における、またはアンチセンスもしくはRNA干渉用途における、その特異的な機能によってのみ限定することができる。本明細書に記載するオリゴヌクレオチドのいずれも、プライマー、プローブ、アンチセンスオリゴマー、またはRNA干渉剤として使用することができる。
【0163】
「プライマー」という用語は、本明細書で使用する場合、4つの異なるヌクレオシド3リン酸および重合剤、たとえばDNAまたはRNAポリメラーゼまたは逆転写酵素の存在下の、たとえば緩衝液および温度によって定義された好適な条件下でのテンプレート特異的DNA合成の開始点として作用することができる単ストランドオリゴヌクレオチドを指す。プライマーの長さは、いずれの場合でも、たとえばプライマーの使用目的に依存し、概して約15〜30ヌクレオチドに及ぶが、より短いおよびより長いプライマーが使用され得る。短いプライマー分子は概して、テンプレートとの十分に安定なハイブリッド複合体を形成するために、より冷温を必要とする。プライマーはテンプレートの正確な配列を反映する必要はないが、このようなテンプレートとハイブリダイズするために十分に相補的でなければならない。プライマー部位は、プライマーがハイブリダイズするテンプレートの範囲である。プライマー対は、増幅される配列の5’端とハイブリダイズする5’上流プライマーおよび増幅される配列の3’端の相補体とハイブリダイズする3’下流プライマーを含むプライマーのセットである。
【0164】
「プローブ」という用語は本明細書で使用する場合、特定の標的によって認識できる表面固定化分子を指す。プローブと10、12、およびそれ以上の塩基との考えられるすべての組合せを有するアレイの例については、たとえば米国特許第6,582,908号を参照。プローブおよびプライマーは、本明細書で使用する場合、通例、既知の配列の少なくとも10〜15の近接ヌクレオチドを含む。特異性を増強するために、より長いプローブおよびプライマー、たとえばHRS参照配列またはその相補体の少なくとも20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、または少なくとも150ヌクレオチドを含むプローブおよびプライマーも用いられ得る。プローブおよびプライマーは、これらの例よりも相当に長いことがあり得て、当分野の知識ならびに表、図、および配列表を含む本明細書によって裏付けられるいずれの長さも使用され得ることが理解される。
【0165】
プローブおよびプライマーを調製および使用する方法は、参考文献、たとえばSambrook,J.ら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2.sup.nd ed.,vol.1−3,Cold Spring Harbor Press,Plainview N.Y.;Ausubel,F.M.ら(1987)Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publ.Assoc.& Wiley−Intersciences,New York N.Y.;Innis,M.ら(1990)PCR Protocols.A Guide to Methods and Applications,Academic Press,San Diego Calif.に記載されている。PCRプライマー対は、たとえばPrimer(Version 0.5,1991,Whitehead Institute for Biomedical Research,Cambridge Mass.)などのその目的を意図するコンピュータプログラムを使用することによって、公知の配列から誘導することができる。
【0166】
プライマーまたはプローブとして使用するためのオリゴヌクレオチドは、当分野で公知のソフトウェアを使用して選択され得る。たとえばOLIGO 4.06ソフトウェアは、それぞれ100ヌクレオチドまでのPCRプライマー対の選択に、および32キロベースまでの入力ポリヌクレオチド配列からのオリゴヌクレオチドおよび5,000ヌクレオチドまでのより大きいポリヌクレオチドの解析に有用である。Primer3プライマー選択プログラム(Whitehead Institute/MIT Center for Genome Research,Cambridge Mass.から一般に公開されている)によって、ユーザは、プライマー結合部位として避けるべき配列がユーザ指定される「ミスプライミングライブラリ」を入力することができる。上の選択方法のいずれかによって同定されたオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドフラグメントは、ハイブリダイゼーション技術において、たとえばPCRもしくは配列決定プライマー、マイクロアレイ要素、または核酸試料中の完全または部分相補的ポリヌクレオチドを同定する特異的プローブとして有用である。オリゴヌクレオチド選択方法は、本明細書に記載する方法に限定されない。
【0167】
「アンチセンスオリゴマー」または「アンチセンス化合物」または「アンチセンスオリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、塩基対合部分をそれぞれ持つ環式サブユニットの配列を指し、環式サブユニットは、塩基対合部分にワトソン−クリック塩基対合によって核酸(通例RNA)中の標的配列にハイブリダイズさせるサブユニット内連結によって連結されて標的配列内に核酸:オリゴマーヘテロ2本鎖を形成し、通例これによりそのRNAの翻訳を防止する。選択したHRS転写物、たとえばスプライスバリアントもしくはタンパク質分解フラグメント、および/またはその対応するポリペプチドの発現を調節する、その使用方法も包含される。
【0168】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約8〜40サブユニット、通例約8〜25サブユニット、および好ましくは約12〜25サブユニットを含有し得る。ある実施形態において、オリゴヌクレオチドは、下で定義するように、標的配列に対して正確な配列相補性またはほぼ相補性を有し得る。ある実施形態において、標的とアンチセンスターゲティング配列との間の相補性度は、安定な2本鎖を形成するのに十分である。アンチセンスオリゴマーの標的RNA配列との相補性の領域は、8〜11塩基の短さであり得るが、好ましくは12〜15塩基もしくはそれ以上、たとえば12〜20塩基、または12〜25塩基であり、これらの範囲の中間の整数をすべて含む。約14〜15塩基のアンチセンスオリゴマーは概して、選択したHRS転写物をターゲティングする際に、固有の相補的配列を有するために十分な長さである。
【0169】
ある実施形態において、少なくとも最小数の塩基、たとえば10〜12塩基が標的配列に相補的である場合、40塩基ものアンチセンスオリゴマーが好適であり得る。しかし、一般に細胞への促進または能動取り込みは、約30未満のオリゴマー長で最適化される。下でさらに記載されるあるオリゴマーでは、結合安定性および取り込みの最適平衡は一般に、18〜25塩基の長さにて起こる。約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40塩基からなり、少なくとも約6、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40の近接または非近接塩基がそのHRS標的配列、またはその変異体に相補的である、アンチセンスオリゴマー(たとえばPNA、LNA、2’−OMe、MOE、モルホリノ)が包含される。
【0170】
ある実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、オリゴマーとHRS核酸標的配列との間に形成されたヘテロ2本鎖が細胞ヌクレアーゼの作用およびインビボで現れ得る他の分解様態に耐えるほどに十分安定である限り、HRS核酸標的配列に100%相補的であり得るか、またはたとえば変異体を収容するためにミスマッチを包含し得る。ヌクレアーゼによる切断を受けにくいオリゴマー主鎖について下で議論する。ミスマッチは存在する場合、ハイブリッド2本鎖の端領域に向けて、中央よりも不安定でなくなる。許容され得るミスマッチの数は、2本鎖安定性の十分に理解された原理によって、オリゴマーの長さ、2本鎖中のG:C塩基対のパーセンテージ、および2本鎖中のミスマッチ(複数可)の位置に依存するであろう。このようなアンチセンスオリゴマーは、HRS核酸標的配列に必ずしも100%相補的ではないが、核酸標的の生物学的活性、たとえばHRSタンパク質(複数可)の発現が調節されるように、標的配列に安定的におよび特異的に結合することは有効である。
【0171】
オリゴマーと標的配列との間に形成された2本鎖の安定性は、結合Tmと2本鎖の細胞酵素切断に対する感受性との関数である。相補的配列RNAに関するアンチセンスオリゴヌクレオチドのTmは、従来の方法、たとえばHamesら、Nucleic Acid Hybridization,IRL Press,1985,pp.107−108によって記載された、またはMiyada C.G.and Wallace R.B.,1987,Oligonucleotide hybridization techniques,Methods Enzymol.Vol.154 pp.94−107に記載されたような方法によって測定され得る。ある実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、相補的配列RNAに関して、体温を超える、および好ましくは50℃を超える結合Tmを有し得る。60〜80℃またはそれを超える範囲のTmが好ましい。周知の原理によれば、オリゴマー化合物のTmは、相補性に基づくRNAハイブリッドに関して、2本鎖中のC:G対合塩基の比を上昇させることによって、および/またはヘテロ2本鎖の(塩基対中の)長さを上昇させることによって、上昇させることができる。
【0172】
アンチセンスオリゴマーは、mRNAの翻訳を遮断もしくは阻害するように、または天然プリmRNAスプライスプロセシングを阻害するように、またはターゲティングされたmRNAの分解を誘発するように設計することができ、アンチセンスオリゴマーがハイブリダイズする標的配列「に方向付けられた」または「に対してターゲティングされた」と言われることがある。ある実施形態において、標的配列はHRS mRNA転写物のいずれのコードまたは非コード配列も包含し得て、それゆえエクソン内またはイントロン内により得る。ある実施形態において、標的配列は、HRSの中で比較的固有または例外的であり、選択されたHRSタンパク質分解フラグメントまたはスプライスバリアントの発現を選択的に減少させる。ある実施形態において、標的部位は前処理されたmRNAの3’もしくは5’スプライス部位、または分枝点を包含する。スプライス部位の標的配列は、その5’端を有するmRNAを、前処理されたmRNA中のスプライスアクセプタ接合部の1〜約25〜約50塩基対下流またはスプライスドナー接合部の1〜約25〜約50塩基対上流に包含し得る。ある実施形態において、標的配列は、代わりのスプライスHRS mRNAのスプライス部位、たとえば全長HRS中に出現しない、または他のHRSスプライスバリアント中に現れない、またはごくまれにしか現れないかのどちらかという点で、その転写物に固有または例外的であるスプライス部位を包含し得る。オリゴマーはさらに概して、本明細書に記載する方式で標的の核酸に対してターゲティングされているときに、生物関連性標的、たとえば参照HRSポリヌクレオチド「に対してターゲティングされた」と言われる。
【0173】
オリゴヌクレオチドの「サブユニット」は、1つのヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)ユニットを指す。該用語は、サブユニット間連結が付着されたまたは付着されていないヌクレオチドユニットを指し得るが、「荷電サブユニット」を指すときは、電荷は通例、サブユニット間連結(たとえばリン酸もしくはホスホロチオ酸連結またはカチオン性連結)内に属する。
【0174】
オリゴヌクレオチドの環式サブユニットは、リボースもしくは他の5炭糖をベースとし得るか、またはある実施形態において、代わりの基もしくは修飾基であり得る。修飾オリゴヌクレオチド主鎖の例は、制限なく、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含む、メチルおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホロアミダートおよびアミノアルキルホスホロアミダートを含むホスホロアミダート、チオノホスホロアミダート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホロトリエステル、および正常な3’−5’連結を有するボラノホスフェート、これらの2’−5’連結類似体、ヌクレオシドユニットの隣接対が3’−5’から5’−3’または2’−5’から5’−2に連結されている、反転極性を有するものを含み得る。当分野で公知の他のオリゴヌクレオチドの中で、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、2’−O−メチルオリゴヌクレオチド(2’−OMe)、2’−メトキシエトキシオリゴヌクレオチド(MOE)、モルホリノも考慮される。
【0175】
プリンまたはピリミジン塩基対合部分は通例、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、チミンまたはイノシンである。塩基、たとえばピリジン−4−オン、ピリジン−2−オン、フェニル、シュードウラシル、2,4,6−トリメ115トキシベンゼン、3−メチルウラシル、ジヒドロウリジン、ナフチル、アミノフェニル、5−アルキルシチジン(たとえば5−メチルシチジン)、5−アルキルウリジン(たとえばリボチミジン)、5−ハロウリジン(たとえば5−ブロモウリジン)または6−アザピリミジンまたは6−アルキルピリミジン(たとえば6−メチルウリジン)、プロピン、クエオシン(quesosine)、2−チオウリジン、4−チオウリジン、ワイブトシン、ワイブトキソシン、4−アセチルチジン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、5’−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウリジン、β−D−ガラクトシルクエオシン(queosine)、1−メチルアデノシン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアノシン、3−メチルシチジン、2−メチルアデノシン、2−メチルグアノシン、N6−メチルアデノシン、7−メチルグアノシン、5−メトキシアミノメチル−2−チオウリジン、5−メチルアミノメチルウリジン、5−メチルカルボニルメチルウリジン、5−メチルオキシウリジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデノシン、β−D−マンノシルクエオシン(queosine)、ウリジン−5−オキシ酢酸、2−チオシチジン、トレオニン誘導体およびその他(Burginら、1996,Biochemistry,35,14090;Uhlman & Peyman,上掲)も包含される。本態様で「修飾塩基」とは、上で例証されている通り、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、およびウラシル(U)以外のヌクレオチド塩基を意味する;このような塩基は、アンチセンス分子中のいずれの位置でも使用できる。当業者は、オリゴマーの使用に応じて、TおよびUが交換可能であることを認めるであろう。例として、よりRNA様である他のアンチセンス化学物質、たとえば2’−O−メチルアンチセンスオリゴヌクレオチドでは、T塩基はUとして示され得る。
【0176】
オリゴヌクレオチドは通例、標的配列、たとえば標的DNAまたはRNAに相補的である。「相補的」および「相補性」という用語は、塩基対合則が関連するポリヌクレオチド(すなわちヌクレオチドの配列)を指す。たとえば配列「A−G−T」は、配列「T−C−A」に相補的である。相補性は「部分的」であり得て、ここでは核酸の塩基のいくつかのみが塩基対合則によって一致している。または核酸の間に「完全」または「全」相補性(100%)があり得る。核酸ストランドの間の相補性度は、核酸ストランドの間のハイブリダイゼーションの効率および強度に対して著しい効果を有する。完璧な相補性が望ましいことが多いが、いくつかの実施形態は、標的に配列に対して1つ以上の、しかし好ましくは20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1のミスマッチを包含することができる。オリゴマー内のいずれの位置での変動も包含される。ある実施形態において、オリゴマーの末端付近の配列の変動は、概して、内部における変動よりも好ましく、存在する場合、通例、5’および/または3’末端の約10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1ヌクレオチド以内である。
【0177】
「標的配列」という用語は、オリゴヌクレオチドが方向付けられた標的RNAの部分、すなわち相補的配列のワトソン−クリック塩基対合によりハイブリダイズする配列を指す。ある実施形態において、標的配列は、HRS mRNAの近接領域(たとえばHRS mRNAの固有のスプライス部位)であり得て、またはmRNAの非近接領域で成り立ち得る。
【0178】
「ターゲティング配列」またはある実施形態における「アンチセンスターゲティング配列」という用語は、DNAまたはRNA標的分子中の標的配列に相補的である(加えて、実質的に相補的であることを意味する)オリゴヌクレオチド中の配列を指す。アンチセンス化合物の配列全体、または部分のみが標的配列に相補的であり得る。たとえば20〜30塩基を有するオリゴヌクレオチドにおいて、約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29が標的領域に相補的であるターゲティング配列であり得る。通例、ターゲティング配列は近接塩基で形成されているが、代わりに、たとえばオリゴヌクレオチドの対向端から共に配置されているときに標的配列に及ぶ配列を構成する非近接配列で形成され得る。
【0179】
標的配列およびターゲティング配列は、ハイブリダイゼーションが逆平行配置で現れるときに、相互に「相補的」であると記載される。ターゲティング配列は、標的配列に「ほぼ」または「実質的に」相補性を有し得て、本発明の目的のためになお機能し得る、すなわちなお機能的に「相補的」であり得る。
【0180】
オリゴマーが生理学的条件下で、45℃を実質的に超えるTm、好ましくは少なくとも50℃の、および通例60℃〜80℃またはそれ以上のTmによって標的(たとえばHRS参照ポリヌクレオチドまたはその相補体)にハイブリダイズする場合、オリゴヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドに「特異的にハイブリダイズする」。このようなハイブリダイゼーションは好ましくは、厳密性ハイブリダイゼーション条件に相当する。所与のイオン強度およびpHにおいて、Tmは標的配列の50%が相補的ポリヌクレオチドにハイブリダイズする温度である。再度、このようなハイブリダイゼーションは、標的配列へのアンチセンスオリゴマーの「ほぼ」または「実質的な相補性」によって、ならびに正確な相補性によって現れ得る。
【0181】
特異的に結合するまたは特異的にハイブリダイズするという用語は概して、選択されたハイブリダイゼーション条件下で試料中の所期の標的遺伝子配列に結合するだけでなく試料中の他の標的配列には著しく結合せず、これにより標的プール中のその所期の標的と他のすべての標的を判別する、オリゴヌクレオチドプローブまたはポリヌクレオチド配列を指す。その所期の標的配列に特異的にハイブリダイズするプローブは、本明細書に記載するように、選択されたハイブリダイゼーション条件下で濃度差も検出し得る。
【0182】
上記のように、本明細書で提供するあるオリゴヌクレオチドは、ペプチド核酸(PNA)を包含する。「ロックド核酸」(LNA)サブユニットも包含される。LNAの構造は当分野で公知である:たとえばWengelら、Chemical Communications(1998)455;Tetrahedron(1998)54,3607およびAccounts of Chem.Research(1999)32,301);Obikaら、Tetrahedron Letters(1997)38,8735;(1998)39,5401、およびBioorganic Medicinal Chemistry(2008)16,9230。あるオリゴヌクレオチドは、非荷電または実質的に非荷電の連結によって接合された、塩基対合部分を持つモルホリノベースのサブユニットを含み得る。「モルホリノオリゴマー」または「PMO」(ホスホロアミダート−またはホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー)という用語は、モルホリノサブユニット構造で成り立つオリゴヌクレオチド類似体を指し、ここで(i)構造は、1〜3原子の長さ、好ましくは2原子の長さ、好ましくは非荷電またはカチオン性で、1つのサブユニットのモルホリノ窒素を隣接サブユニットの5’環式外炭素に接合するリン含有連結によって共に連結され、(ii)各モルホリノ環は、塩基特異的水素結合によってポリヌクレオチド中の塩基に結合するのに有効な、プリンもしくはピリミジンまたは同等の塩基対合部分を持つ。
【0183】
ある実施形態において、オリゴヌクレオチドは、混合物または非荷電もしくはカチオン性主鎖連結を有するオリゴヌクレオチドの合成に関して、上および下で引用した参考文献に詳説された方法を用いて、段階的な固相合成によって調製することができる。いくつかの場合において、たとえば薬物動態を増強するまたは化合物の捕捉もしくは検出を容易にするために、追加の化学部分をオリゴヌクレオチドに添加することが所望であり得る。このような部分は通例、標準合成方法によれば、オリゴマーの末端に共有結合的に付着され得る。たとえばポリエチレングリコール部分または他の親水性ポリマー、たとえば10〜100のモノマーサブユニットを有するポリマーの付加は、溶解を容易にするのに有用であり得る。1つ以上の荷電基、たとえばアニオン性基、たとえば有機酸は、細胞取り込みを増強し得る。
【0184】
多種多様の検出可能な分子、たとえば放射性同位体、蛍光色素、染料、酵素、ナノ粒子、化学発光マーカー、ビオチン、または直接(たとえば発光により)もしくは間接的に(たとえば蛍光標識抗体の結合により)検出することができる当分野で公知の他のモノマーが使用されて、オリゴヌクレオチドが検出可能にされ得る。
【0185】
ある実施形態は、フラグメントおよびその変異体を含む、HRS参照ポリヌクレオチドの1つ以上のmRNA転写物をターゲティングするRNA干渉(RNAi)剤に関する。選択されたHRS転写物、たとえばHRSスプライスバリアントまたはタンパク質分解フラグメントのレベルを調節するための、その使用方法も包含される。
【0186】
「2本ストランドの」という用語は、鎖の少なくとも部分が水素結合に十分に相補的であり、2重鎖構造を形成する領域を含む、2つの別個の核酸鎖を意味する。「2重鎖」または「2重鎖構造」という用語は、2つの別個のストランドが実質的に相補的であり、それゆえ相互にハイブリダイズする、2本ストランド分子の領域を指す。「dsRNA」は、2つの相補的および抗平行核酸ストランド(すなわちセンスストランドおよびアンチセンスストランドを含む2重鎖構造を有するリボ核酸分子を指す。dsRNAのすべてのヌクレオチドがワトソン−クリック対を呈してはいけないわけではない;2つのRNAストランドは、実質的に相補的であり得る。RNAストランドは、同じまたは異なる数のヌクレオチドを有し得る。
【0187】
dsRNAのストランドは、ハイブリダイズして2重鎖構造を形成するのに十分に相補的である。ある実施形態において、相補的RNAストランドは、30ヌクレオチド未満、長さが25ヌクレオチド未満、または長さがさらに19〜24ヌクレオチドであり得る。ある態様において、相補的ヌクレオチド配列は、長さが20〜23ヌクレオチド、または長さが22ヌクレオチドであり得る。
【0188】
ある実施形態において、RNAストランドの少なくとも1つは、長さが1〜4ヌクレオチドのヌクレオチドオーバーハングを含む。他の実施形態において、ストランドの一方またはそれらの両方は平滑末端である。ある実施形態において、dsRNAは、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドをさらに含み得る。
【0189】
本発明のある実施形態は、マイクロRNAを含み得る。マイクロRNAは、生物中で自然に産生された小型RNAの大きな群を表現し、その一部は標的遺伝子の発現を調節するマイクロRNAは、Dicer(V.Ambrosら、Current Biology 13:807,2003)によって、おおよそ70ヌクレオチド単ストランドヘアピン前駆体転写物から形成される。
【0190】
ある実施形態は、短干渉RNA(siRNA)も用い得る。siRNA剤の各ストランドは、長さが35、30、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、または15ヌクレオチドに等しいまたはそれ未満であることができる。ストランドは、長さは好ましくは少なくとも19ヌクレオチドである。たとえば各ストランドは、長さが21〜25ヌクレオチドであることができる。好ましいsiRNA剤は、17、18、19、29、21、22、23、24、または25ヌクレオチド対の2重鎖領域、および1つ以上のオーバーハング、好ましくは2〜3ヌクレオチドの1または2の3’オーバーハングを有する。
【0191】
「単ストランドRNAi剤」は本明細書で使用する場合、単分子で作られているRNAi剤である。単ストランドRNAi剤は、ストランド内対合によって形成された2重鎖領域を包含し得る、たとえばヘアピンもしくはパンハンドル構造であり得る、またはヘアピンもしくはパンハンドル構造を包含し得る。単ストランドRNAi剤は、長さが少なくとも14、さらに好ましくは少なくとも15、20、25、29、35、40、または50ヌクレオチドである。単ストランドRNAi剤は好ましくは、長さが200、100、または60ヌクレオチド未満である。
【0192】
ヘアピンRNAi調節剤は、少なくとも17、18、19、29、21、22、23、24、または25ヌクレオチド対に等しいまたはそれ未満の2重鎖領域を有し得る。2重鎖領域は好ましくは、長さが200、100、または50に等しいまたはそれ未満であり得る。ある2重鎖領域のある範囲は、長さが15〜30、17〜23、19〜23、および19〜21ヌクレオチド対である。ヘアピンは、好ましくは3’の、および好ましくはヘアピンのアンチセンス側の、単ストランドオーバーハングまたは末端不対領域を有し得る。ある実施形態において、オーバーハングは長さが2〜3ヌクレオチドである。
【0193】
本発明は、リボザイムを用いるオリゴヌクレオチドをさらに網羅する。本明細書に記載するHRSターゲティング配列を発現することができるベクター送達系も包含される。siRNAまたは他の2重鎖形成RNA干渉分子を発現するベクターが包含される。例示的な送達系は、これに限定されるわけではないが、当分野で公知の他の系の中でも、レトロウイルス(たとえばレンチウイルス)ベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、および疱疹ウイルスベクターを包含するウイルスベクター系(すなわちウイルス媒介形質導入)を包含し得る。
【0194】
HRSポリヌクレオチド参照配列またはその相補体の1つ以上の部分をターゲティングするオリゴヌクレオチドおよびRNAi剤は、本明細書に記載され、当業者に明らかである治療、診断、または薬物スクリーニング方法のいずれにおいても使用され得る。
【0195】
抗体組成物、そのフラグメント、および他の結合剤
他の態様によれば、本発明は、本明細書で開示するようなHRSスプライスバリアントポリペプチドもしくはその細胞結合パートナーに、またはその部分、変異体もしくは誘導体に対して結合特異性を示す結合剤、たとえば抗体、その抗原結合フラグメント、可溶性受容体、アプタマー、小型分子など、およびそれを使用する方法をさらに提供する。
【0196】
いくつかの実施形態において、このような結合剤は、本発明のHRSポリペプチドによって媒介される非カノニカル活性の1つ以上を調節するのに有効であるだろう。ある他の実施形態において、たとえば結合剤は、本発明のHRSポリペプチドに結合して、その細胞結合パートナーの1つ以上に結合するその能力を阻害する結合剤である。したがって、このような結合剤が使用されて、本発明のHRSポリペプチドによって媒介、または調節される疾患、障害または他の状態がその活性と拮抗することによって処置または防止され得る。ある実施形態において、たとえば結合剤は、HRSポリペプチドの細胞結合パートナーに結合し、HRSポリペプチドによって媒介される非カノニカル活性をたとえば上昇または作動させることによって、HRSポリペプチド活性を模倣する。したがって、このような結合剤が使用されて、本発明のHRSポリペプチドによって媒介される疾患、障害または他の状態がその活性をたとえば部分的または完全に拮抗または作動することによって診断、処置、または防止され得る。
【0197】
結合剤、たとえば抗体、またはその抗原結合フラグメントは、検出可能なレベルで(たとえばELISAアッセイ内で)ポリペプチドと反応して類似の条件下で関連しないポリペプチドとは検出可能に反応しない場合、本発明のポリペプチドに対して「特異的に結合する」、「免疫学的に結合する」および/または「免疫学的に反応性である」と言われる。
【0198】
免疫学的結合は、本状況で使用する場合、概して、免疫グロブリン分子と免疫グロブリンが特異的である抗原との間に現れる種類の非共有結合性相互作用を指す。免疫学的結合相互作用の強度、または親和性は、相互作用の解離定数(Kd)によって表すことができ、より小さいKdはより大きい親和性を表現する。選択したポリペプチドの免疫学的結合特性は、当分野で周知の方法を使用して定量できる。1つのこのような方法は、抗原結合部位/抗原複合体の形成および解離の速度を測定することを必要とし、ここでこれらの速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、および両方向の速度に等しく影響する幾何パラメータに依存する。それゆえ「オン速度定数」(K
on)および「オフ速度定数」(K
off)の両方は、濃度ならびに会合および解離の実際の速度の計算によって決定することができる。K
off/K
onの比は、親和性に関連しないすべてのパラメータの取り消しを可能にして、それゆえ解離定数K
dに等しい。たとえばDaviesら(1990)Annual Rev.Biochem.59:439−473を参照。
【0199】
抗体の「抗原結合部位」または「結合部分」は、抗原結合に関わる免疫グロブリン分子の一部を指す。抗原結合部位は、重(「H」)および軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。重鎖および軽鎖のV領域内の3つの高度に分岐したストレッチは、「超可変領域」と呼ばれ、「フレームワーク領域」、すなわち「FR」として公知のさらに保存されたフランキングストレッチの間に間置される。それゆえ「FR」という用語は、天然では免疫グロブリンの超可変領域の間に隣接して見出されるアミノ酸配列を指す。抗体分子において、軽鎖の3つの超可変領域および重鎖の3つの超可変領域は、3次元空間に相互に対して並べられ、抗原結合表面を形成する。抗原結合表面は、結合された抗原の3次元表面に相補的であり、重鎖および軽鎖のそれぞれの3つの超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる。
【0200】
結合剤はたとえば、ペプチド構成要素、RNA分子またはポリペプチドを含むまたは含まない、リボソームであり得る。好ましい実施形態において、結合剤は抗体またはその抗原結合フラグメントである。抗体は、当業者に公知の多種多様の技法のいずれかによって調製され得る。たとえばHarlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照。興味のあるポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体は、たとえばKohler and Milstein,Eur.J.Immunol.6:511−519,1976の技法、およびそれに対する改良を使用して調製され得る。本発明のポリペプチドは、精製プロセスで、たとえば親和性クロマトグラフィーステップで使用され得る。
【0201】
「Fv」フラグメントは、IgMの、およびまれな場合にはIgGまたはIgA免疫グロブリン分子の優先的なタンパク質分解切断によって産生することができる。しかしFvフラグメントは、より普通には当分野で公知の組換え技法を用いて誘導される。Fvフラグメントは、未変性抗体分子の抗原認識および結合能力の多くを保持する抗原結合部位を包含する非共有結合性V
H::V
Lヘテロダイマーを包含する。Inbarら(1972)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 69:2659−2662;Hochmanら(1976)Biochem 15:2706−2710;and Ehrlichら(1980)Biochem 19:4091−4096。
【0202】
単鎖Fv(「sFv」)ポリペプチドは、ペプチドコードリンカーによって連結されたV
HおよびV
Lエンコード遺伝子を包含する遺伝子融合物から発現される、共有結合的に連結されたV
H::V
Lヘテロダイマーである。Hustonら(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.US A85(16):5879−5883。自然に凝集され、しかし化学的に分離された抗体V領域からのポリペプチド軽鎖および重鎖を、抗原結合部位の構造に実質的に類似した3次元構造に折り畳まれるsFv分子に変換するための化学構造を見分けるためのいくつかの方法が記載されている。たとえばHustonらへの米国特許第5,091,513号および同第5,132,405号;ならびにLadnerへの米国特許第4,946,778号を参照。
【0203】
上記の各分子は、重鎖および軽鎖FRセットの間にそれぞれ間置され、CDRSに支持を提供して、CDRの空間的関係を相互に対して定義する、重鎖および軽鎖CDRセットを包含する。本明細書で使用する場合、「CDRセット」という用語は、重鎖または軽鎖V領域の3つの超可変領域を指す。重鎖または軽鎖のN末端から開始して、これらの領域はそれぞれ、「CDR1」、「CDR2」、および「CDR3」と表される。抗原結合部位はその結果、各重鎖および軽鎖V領域からのCDRセットを含む、6つのCDRを包含する。単一のCDR(たとえばCDR1、CDR2またはCDR3)を含むポリペプチドは本明細書では、「分子認識ユニット」と呼ばれる。いくつかの抗原−抗体複合体の結晶学的解析は、CDRのアミノ酸残基がCDR結合された抗原との広範な接触を形成し、ここで最も広範な抗原接触は重鎖CDR3とであることを証明している。それゆえ分子認識ユニットは主に、抗原結合部位の特異性に関係する。
【0204】
本明細書で使用する場合、「FRセット」という用語は、重鎖および軽鎖V領域のCDRセットのCDRを組み立てる4つのフランキングアミノ酸配列を指す。いくつかのFR残基は、結合された抗原に接触し得る;しかし、FRは主に、V領域を抗原結合部位、特にCDRSに直接隣接するFR残基に折り畳むことに関係する。FR内では、あるアミノ残基およびある構造的特色は、非常に高度に保存されている。この点で、すべてのV領域配列は、ほぼ90アミノ酸残基の内部ジスルフィドループを含有する。V領域が結合部位に折り畳まれるとき、CDRは、抗原結合を形成する突出ループモチーフとして提示される。概して、精密なCDRアミノ酸配列とは無関係に、ある「カノニカル」構造に折り畳まれたCDRループの形状に影響を及ぼす、FRの保存された構造領域があることが認識されている。さらにあるFR残基が、抗体重鎖および軽鎖の相互作用を安定させる、非共有結合性ドメイン間接触に関わることが公知である。
【0205】
ヒト定常ドメインに融合されたげっ歯動物V領域およびその関係するCDR(Winterら(1991)Nature 349:293−299;Lobuglioら(1989)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:4220−4224;Shawら(1987)J Immunol.138:4534−4538;and Brownら(1987)Cancer Res.47:3577−3583)、適切なヒト抗体定常ドメインとの融合前にヒト支持FR中に移植されたげっ歯類CDR(Riechmannら(1988)Nature 332:323−327;Verhoeyenら(1988)Science 239:1534−1536;およびJonesら(1986)Nature 321:522−525)、および組換えベニヤ化げっ歯類FRによって支持されたげっ歯類CDR(European Patent Publication No.519,596、1992年12月23日公開)を有するキメラ抗体を含む、非ヒト免疫グロブリンから誘導された抗原結合部位を含むいくつかの「ヒト化」抗体分子が記載されている.これらの「ヒト化」分子は、ヒトレシピエントにおけるこれらの部分の治療的利用の継続期間および有効性を制限する、げっ歯動物抗ヒト抗体分子に対する望ましくない免疫学的応答を最小化するように設計されている。
【0206】
上記のように、「ペプチド」は結合剤として包含されている。「ペプチド」という用語は通例、アミノ酸残基のポリマーならびにその変異体および合成類似体を指す。ある実施形態において、「ペプチド」という用語は、その間のすべての整数および範囲(たとえば5〜10、8〜12、10〜15)を含む、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸からなり、HRSポリペプチド、その細胞結合パートナー、またはそれらの両方と相互作用するペプチドを含む、比較的短いポリペプチドを指す。ペプチドは、本明細書に記載するように、天然型アミノ酸および/または非天然型アミノ酸で成り立つことができる。
【0207】
結合剤は、ペプチドミメティックまたは他の小型分子を包含し得る。「小型分子」は、合成または生物起源(生体分子)であるが、通例ポリマーではない有機化合物を指す。有機化合物は、分子が炭素を含有する化学化合物の大きなクラスを指し、通例、炭酸塩、炭素の単純酸化物、またはシアニドのみを含有する化合物は除外する。「生体分子」は概して、大型ポリマー分子(生体ポリマー)、たとえばペプチド、多糖類、および核酸、ならびに小型分子、たとえば1次、2次代謝産物、脂質、リン脂質、糖脂質、ステロール、グリセロ脂質、ビタミン、およびホルモンを含む、生体によって産生された有機分子を指す。「ポリマー」は概して、共有結合性化学結合によって通例結合された反復構造ユニットで成り立つ、大型分子または巨大分子を指す。
【0208】
ある実施形態において、小型分子は、1000ダルトン未満の、通例約300〜700ダルトンの分子量を有し、約50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、500、650、600、750、700、850、800、950、または1000ダルトンを含む。
【0209】
アプタマーも結合剤として包含される。アプタマーの例は、核酸アプタマー(たとえばDNAアプタマー、RNAアプタマー)およびペプチドアプタマーを包含する。核酸アプタマーは概して、数回反復されるインビトロ選択または同等方法、たとえばSELEX(指数関数的富化によるリガンドの系統的展開)によって、各種の分子標的、たとえば小型分子、タンパク質、核酸、ならびに細胞、組織および生物にさえ結合するように操作された核酸種を指す。それゆえに、本明細書に記載するHRSポリペプチドおよび/またはその細胞結合パートナーに結合する核酸アプタマーが包含される。
【0210】
通例、ペプチドアプタマーは、通例、ペプチドアプタマーの結合親和性を抗体の結合親和性と同程度のレベル(たとえばナノモル範囲に)まで上昇させる2重構造的拘束物であるタンパク質骨格に、両端で付着された可変ペプチドループを含む。ある実施形態において、可変ループ長は約10〜20アミノ酸(その間のすべての整数を包含する)で成り立ち得て、骨格は良好な溶解度および緻密度特性を有するいずれのタンパク質も包含し得る。ある例示的な実施形態は、細菌タンパク質チオレドキシンAを骨格タンパク質として使用し得て、可変ループは還元活性部位(野生タンパク質中の−Cys−Gly−Pro−Cys−ループ)内に挿入され、2つのシステイン側鎖はジスルフィド架橋を形成することができる。それゆえに、本明細書に記載するHRSポリペプチドおよび/またはその細胞結合パートナーに結合するペプチドアプタマーが包含される。ペプチドアプタマー選択は、酵母ツーハイブリッド系を含む、当分野で公知の各種系を使用して行うことができる。
【0211】
上記のように、本発明のHRSポリペプチドおよび結合剤は、本明細書に記載する診断、薬物発見、または治療方法のいずれにおいても使用することができる。
【0212】
本発明の別の実施形態において、本発明の結合剤、たとえばモノクローナル抗体は、興味のある1つ以上の薬剤にカップリングされ得る。たとえば治療剤は、好適なモノクローナル抗体に直接または間接的に(たとえばリンカー基を介して)のどちらかでカップリングされ(たとえば共有結合的に結合され)得る。治療剤と抗体との間の直接反応は、それぞれが他方と反応することができる置換基を所有するときに可能である。たとえば一方における、アミノ基またはスルフヒドリル基などの求核基は、他方の、無水物または酸ハロゲン化物などのカルボニル含有基と、または良好な脱離基(たとえばハライド)を含有するアルキル基と反応することが可能であり得る。
【0213】
代わりに、リンカー基を介して治療剤および抗体にカップリングすることが所望であり得る。リンカー基は、結合能力との干渉を回避するために、抗体を薬剤から離間するスペーサとして機能することができる。リンカー基は、薬剤または抗体の置換基の化学反応性を上昇させて、それゆえカップリング効率を上昇させる役割を果たすこともできる。化学反応性の上昇は、そうでなければ可能ではないであろう薬剤の、または薬剤の官能基の使用を容易にし得る。
【0214】
多種多様の2機能性または多機能性試薬(ホモおよびヘテロ機能性の両方)(たとえばPierce Chemical Co.,Rockford,ILのカタログに記載されている試薬)は、リンカー基として用いられ得ることが、当業者に明白であろう。カップリングはたとえば、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基または酸化炭水化物残基を通じて果たされ得る。このような方法論を記載する多くの参考文献、たとえばRodwellらへの米国特許第4,671,958号がある。
【0215】
治療剤が、本発明の免疫コンジュゲートの抗体部分から遊離されたときにより強力である場合、細胞中への内部移行の間または内部移行時に切断可能であるリンカー基を使用することが所望であり得る。いくつかの異なる切断可能なリンカー基について記載されている。これらのリンカー基からの薬剤の細胞内放出の機構は、ジスルフィド結合の還元による(たとえばSpitlerへの米国特許第4,489,710号)、光解離性結合の照射による(たとえばSenterらへの米国特許第4,625,014号)、誘導体化アミノ酸側鎖の加水分解による(たとえばKohnらへの米国特許第4,638,045号)、血清補体媒介加水分解による(たとえばRodwellらへの米国特許第4,671,958号)、および酸触媒加水分解による(たとえばBlattlerらへの米国特許第4,569,789号)切断を包含する。
【0216】
1を超える薬剤を抗体にカップリングすることが所望であり得る。1実施形態において、薬剤の複数の分子が1つの抗体分子にカップリングされる。別の実施形態において、1種類を超える薬剤が1つの抗体にカップリングされ得る。特定の実施形態とは無関係に、1を超える薬剤との免疫コンジュゲートは、多種多様のやり方で調製され得る。たとえば1を超える薬剤が抗体分子に直接カップリングされ得るか、または複数の付着のための部位を提供するリンカーを使用することができる。
【0217】
製剤および投与
本発明の組成物(たとえばHRSスプライスバリアントポリペプチド、ポリヌクレオチド、結合剤、抗体などは)は概して、細胞、組織または動物への単独での、または1つ以上の他の様式の療法との併用でのどちらかによる投与のための、製薬的に許容され得るまたは生理学的に許容され得る液剤に製剤される。望ましい場合、本発明の組成物は、たとえば他のタンパク質もしくはポリペプチドまたは各種の製薬活性剤などの他の薬剤との併用でも投与され得ることも理解されるであろう。追加の薬剤が本発明のHRS組成物によって達成されることが望ましい効果に悪影響を及ぼさないという条件で、組成物にまた包含され得る他の構成要素に対する制限は実質的にない。
【0218】
本発明の製薬組成物において、製薬的に許容され得る賦形剤および担体液剤の製剤は、本明細書に記載する特定の組成物をたとえば経口、非経口、静脈内、鼻内、頭蓋内および筋肉内投与ならびに製剤を含む多種多様の処置レジメンで使用するための好適な投薬および処置手法の開発と同様に、当業者に周知である。
【0219】
ある用途において、本明細書で開示する製薬組成物は、経口投与を介して被験体に送達され得る。そのため、これらの組成物は、不活性希釈剤と共に、もしくは同化可能な食用担体と共に製剤され得るか、または組成物は硬質もしくは軟質シェルゼラチンカプセル剤に封入され得るか、または組成物は錠剤に圧縮され得るか、または組成物は食事の食品に直接組み入れられ得る。
【0220】
ある事情において、たとえば米国特許第5,543,158号;米国特許第5,641,515号および米国特許第5,399,363号(それぞれその全体が参照により本明細書に特異的に組み入れられている)に記載されているように、本明細書で開示する製薬組成物を非経口的に、静脈内に、筋肉内に、または腹腔内にさえ送達することが所望であろう。遊離塩基または薬理学的に許容され得る塩としての活性化合物の溶液は、好適にはヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と混合された水で調製され得る。分散剤もグリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物で、ならびに油で調製され得る。普通の貯蔵および使用条件下では、これらの調製物は、微生物の成長を防止する保存料を含有する。
【0221】
注射用使用に好適な製薬形は、滅菌水性液剤または分散剤ならびに滅菌注射用液剤または分散剤の即時調製用の滅菌粉剤を包含する(その全体が参照により本明細書に特異的に組み入れられている、米国特許第5,466,468号)。すべての場合において、該製薬形は滅菌されているべきであり、容易な注入可能性が存在する程度まで流動性であるべきである。該製薬形は、製造および貯蔵条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に抵抗して保存されるべきである。担体は溶媒または分散媒であることができ、たとえば水、エタノール、ポリオール(たとえばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、好適なその混合物、および/または植物油を含有する。適正な流動性は、たとえばレシチンなどのコーティングの使用により、分散剤の場合には要求される粒径の維持により、および界面活性剤の使用により維持され得る。微生物の作用の防止は、各種の抗細菌剤および抗真菌剤、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって容易にすることができる。多くの場合において、等張性剤、たとえば糖または塩化ナトリウムを包含することが好ましいであろう。注射用組成物の長期吸収は、組成物中での吸収を遅延させる薬剤、たとえばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用により引き起こすことができる。
【0222】
水性液剤の非経口投与では、たとえば液剤は必要な場合は好適に緩衝されるべきであり、液体希釈剤は十分な生理食塩水またはグルコースによって最初に等張性にされるべきである。これらの特定の水性液剤は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与にとりわけ好適である。これに関係して、用いることができる滅菌水性媒体は、本開示に照らして当業者に知られるであろう。たとえば1つの投薬形は、等張性NaCl溶液1mlに溶解されて、皮下注入流体1000mlに添加され得るか、または輸液の提案部位に注入され得るかのどちらかである(たとえばRemington’s Pharmaceutical Sciences,15th Edition,pp.1035−1038および1570−1580を参照)。投薬量の多少の変動は、処置される被験体の状態に応じて、必然的に現れるであろう。投与の関係者は、いずれにしても、個々の被験体に対する適切な用量を決定するであろう。その上、ヒト投与の場合、調製物は、FDA生物製剤標準局(FDA Office of Biologics standards)によって要求されるように、滅菌性、発熱性、および一般安全性および純度規格を満足すべきである。
【0223】
滅菌注射用液剤は、要求される量の活性化合物を、必要に応じて上で列挙した各種の他の成分を含む適切な溶媒に組み入れ、それに続いて濾過滅菌することによって調製できる。概して、分散剤は、各種の滅菌活性成分を、基本分散媒および上に列挙されたものから要求される他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み入れることによって調製される。滅菌注射用液剤の調製のための滅菌粉剤の場合、好ましい調製方法は、その先に滅菌濾過した溶液からの活性成分およびいずれかの追加の望ましい成分の粉剤を産する、真空乾燥および凍結乾燥技法である。
【0224】
本明細書で開示する組成物は、中性形または塩形で製剤され得る。製薬的に許容され得る塩は、(タンパク質の遊離アミノ基によって形成された)およびたとえば塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸によって形成された、酸付加塩を包含する。遊離カルボキシル基によって形成された塩も、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第2鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導することができる。製剤時に、液剤は投薬製剤形に適合する方式および治療的に有効なであるような量で投与されるであろう。製剤は、注射用液剤、薬物放出カプセル剤などの多種多様の投薬形で容易に投与される。
【0225】
本明細書で使用する場合、「担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイドなどを包含する。製薬活性物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当分野で周知である。いずれの従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合である場合を除いて、治療組成物でのその使用が考慮される。補助活性成分も組成物に組み入れることができる。
【0226】
「製薬的に許容され得る」という句は、ヒトまたは他の哺乳動物に投与されたときにアレルギーまたは類似の不都合な反応を産生しない分子実体および組成物を指す。タンパク質を活性成分として含有する水性組成物の調製は、当分野で十分に理解されている。通例、このような組成物は、液体液剤または懸濁剤のどちらかとして注射用剤として調製される;注射前に液体への溶解、または懸濁に好適な固体形も調製することができる。調製物を乳化することもできる。
【0227】
ある実施形態において、製薬組成物は、鼻内スプレー、吸入、および/または他のエアゾール送達ビヒクルによって送達され得る。遺伝子、ポリヌクレオチド、およびペプチド組成物を鼻内エアゾールスプレーによって直接肺に送達する方法は、たとえば米国特許第5,756,353号および米国特許第5,804,212号(それぞれその全体が参照により本明細書に特異的に組み入れられている)に記載されている。同様に、鼻内微粒子樹脂(Takenagaら、1998)およびリゾホスファチジル−グリセロール化合物(その全体が参照により本明細書に特異的に組み入れられている、米国特許第5,725,871号)を使用する薬物の送達も、製薬分野で周知である。同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持マトリクスの形の経粘膜薬物送達は、米国特許第5,780,045号(その全体が参照により本明細書に特異的に組み入れられている)に記載されている。
【0228】
ある実施形態において、本発明の組成物の好適な宿主細胞中への導入のために、送達はリポソーム、ナノカプセル剤、微粒子、マイクロスフェア、脂質粒子、ベシクルなどの使用により現れ得る。特に本発明の組成物は、脂質粒子、リポソーム、ベシクル、ナノスフェア、ナノ粒子などのいずれかにカプセル化されて、送達のために製剤され得る。製剤およびこのような送達ビヒクルの使用は、公知のおよび従来の技法を使用して行うことができる。
【0229】
本発明の組成物を含むキット
本発明は、他の態様において、本明細書に記載するような本発明のHRSスプライスバリアントポリペプチド、ポリヌクレオチド、抗体、その組成物などの1つ以上を充填した1つ以上の容器を含むキットを提供する。キットは、このような組成物の使用方法に関する書面の説明書(たとえば細胞シグナル伝達、血管新生、癌、炎症条件などを調節するための)を包含することができる。
【0230】
本明細書のキットは、処置される適応症に好適なまたは望ましい1つ以上の追加の治療剤または他の構成要素も包含し得る。追加の治療剤は、所望ならば、第2の容器に含有され得る。追加の治療剤の例は、これに限定されるわけではないが、抗新生物剤、抗炎症剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、血管新生剤などを包含する。
【0231】
本明細書のキットは、所期の送達様態(たとえばステント、インプラント型デポーなど)を容易にするのに必要もしくは望ましい1つ以上のシリンジ又は他の構成要素も包含することができる。
【0232】
使用方法
本発明の実施形態は、診断、薬物発見、および/または治療目的のための、本明細書に記載するHRS組成物または「薬剤」の使用方法も包含する。HRS「剤」という用語は、概して、本明細書に記載するHRSポリヌクレオチド、HRSポリペプチド、結合剤、および他の化合物を指す。診断目的のために、HRS剤は、異なる細胞の種類または細胞状態を区別する、または関連性のある疾患もしくは状態を有する被験体を同定するなどのために、多種多様の非限定的なやり方で使用することができる。薬物発見目的のために、HRS剤を使用して、HRSポリペプチドの1つ以上の細胞「結合パートナー」を同定する、HRSポリペプチドの1つ以上の「非カノニカル」活性を特徴づけする、HRSポリペプチドとその結合パートナー(複数可)との相互作用を選択的にもしくは非選択的に作動させるもしくは拮抗する薬剤を同定する、および/またはHRSポリペプチドの1つ以上の「非カノニカル」活性を選択的もしくは非選択的に作動させるもしくは拮抗する薬剤を同定することができる。治療目的のために、本明細書で提供されるHRS剤または組成物を使用して、下で詳説する多種多様の疾患または状態を処置することができる。
【0233】
A.診断
上記のように、本明細書に記載するHRS剤は、診断アッセイに使用することができる。これらの実施形態は、1つ以上の新たに同定されたHRSスプライスバリアント、および/またはこれらのスプライスバリアントの1つ以上のスプライス部位の、HRSポリヌクレオチド配列(複数可)またはその対応するポリペプチド配列(複数可)もしくは部分の検出を包含する。ある実施形態において、スプライス部位の少なくとも1つの、ポリヌクレオチドまたは対応するポリペプチド配列(複数可)は、その特定のHRSスプライスバリアントに固有である。ある実施形態において、1つ以上の新たに同定されたHRSスプライスバリアントの存在またはレベルは、通例、そのスプライス接合物のポリヌクレオチドまたは対応するポリペプチド配列によって特徴づけされるように、1つ以上の細胞型または細胞状態に関係または相関している。それゆえに、上記のように、HRSスプライスバリアントまたはそのスプライス部位の存在またはレベルを使用して、異なる細胞型または異なる細胞状態を区別することができる。HRSスプライスバリアントまたはそのスプライス部位の存在またはレベルは、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドベースの診断技法に従って検出することができる。
【0234】
本明細書で提供する方法のいくらかは、細胞、組織、または被験体の状態または状態を特徴づけするために、および他の細胞、組織、または被験体からHRSスプライスバリアントを区別するために、HRSスプライスバリアントの差次的発現に依存する。非制限的な例は、異なる種の細胞または組織、異なる組織または器官の細胞、新生児および成人などの細胞発生状態、細胞分化状態、健康、罹患および処置などの条件、1次細胞培養物および不死化細胞培養物などの他の細胞培養物に加えた細胞内および細胞外画分を区別するための、生物試料中のHRSスプライスバリアントまたはそのスプライス部位の存在またはレベルを検出する方法を包含する。
【0235】
差次的発現は概して、適切な対照の同じ配列の発現レベルと比較した、HRSポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の1つ以上の遺伝子発現レベルの統計的有意差を指す。統計的有意差は、RNAレベル、タンパク質レベル、タンパク質機能、または本明細書に記載するもののような遺伝子発現のその他の関連性尺度によって測定されるような、発現レベルの上昇または低下のどちらかに関連し得る。
【0236】
結果は通例、偶然に現れたと思われない場合には、統計的に有意であると呼ばれる。試験または結果の有意レベルは、伝統的に、頻度論的統計的仮説検定の概念に関する。単純な場合では、統計的有意性は、帰無仮説が実際に真であるときに、帰無仮説を棄却する判定(第1種過誤、すなわち「偽陽性決定」として公知の判定)を行う確率として定義され得る。本判定は、p値を使用してなされることが多い:p値が有意レベルよりも低い場合、ここで帰無仮説は棄却される。p値が小さければ小さいほど、結果はより有意である。ベイズ因子も利用されて、統計的有意性が決定され得る(たとえばGoodman S.,Ann Intern Med 130:1005−13,1999を参照)。
【0237】
より複雑であるが、実際に重要な場合では、検定または結果の有意レベルは、帰無仮説が実際に真であるときに帰無仮説を棄却する判定を行う確率が示された確率を超えない解析を反映し得る。この種の解析は、棄却を判定する確率が帰無仮説内に網羅された数組の仮定の有意レベルよりはるかに小さいことがあり得る、このような利用を可能にする。
【0238】
ある例示的な実施形態において、統計的に有意な差次的発現は、所与のHRS配列の発現レベルが、適切な被験体と比較して、疑わしい生体試料中で少なくとも約1.2×、1.3×、1.4×、1.5×、1.6×、1.7×、1.8×、1.9×、2.0×、2.2×、2.4×、2.6×、2、8×、3.0×、4.0×、5.0×、6.0×、7.0×、8.0×、9.0×、10.0×、15.0×、20.0×、50.0×、100.0×またはそれ以上の発現の差(すなわちより高いまたはより低い発現であり得る差次的発現)を提供し、その間のすべての整数および少数点(たとえば1.24×、1.25×、2.1×、2.5×、60.0×、75.0×など)を含む状況を包含し得る。ある実施形態において、統計的に有意な差次的発現は、所与のHRS配列の発現レベルが、適切な対照と比較して、疑わしい生体試料中で少なくとも約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000パーセント(%)またはそれ以上の発現の差(すなわちより高いまたはより低い発現であり得る差次的発現)を提供し、その間のすべての整数および少数点を含む状況を包含し得る。
【0239】
追加の例として、差次的発現は、Z検定を行うこと、すなわち本明細書に記載され、当分野で公知であるように、絶対Zスコアを計算することによっても決定され得る(実施例1を参照)。Z検定は通例、試料平均と集合平均との有意差を同定するために利用される。たとえば標準正規表(たとえば対照組織)と比較して、95%信頼区間にて(すなわち5%有意レベルにて)、1.96を超える絶対値を有するZスコアは、非ランダム性を指摘する。99%信頼区間では、絶対Zが2.58を超える場合、p<.01であり、差がなおさらに有意である−帰無仮説がより高い信頼度で棄却できることを意味する。これらのおよび関連する実施形態において、その間のすべての少数点(たとえば10.1、10.6、11.2など)を含む、1.96、2、2.58、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ以上の絶対Zスコアは、統計的有意性の強力な尺度を提供し得る。ある実施形態において、6を超える絶対Zスコアは、指数関数的に高い統計的有意性を提供し得る。
【0240】
実質的類似性(similarly)は、概して生物試料と参照対照との間の発現レベルの統計的有意差の欠失に関連する。実質的に類似の発現レベルの例は、所与のSSCIGS発現レベルは、対照試料と比較して、疑わしい生体試料中に約.05×、0.1×、0.2×、0.3×、0.4×、0.5×、0.6×、0.7×、0.8×、0.9×.1.0×、1.1×、1.2×、1.3×、または1.4×未満の発現の差(すなわちより高いまたはより低い発現であり得る差次的発現)を提供し、その間のすべての少数点(たとえば、.15×、0.25×、0.35×など)を含む状況を包含し得る。ある実施形態において、差次的発現は、所与のHRS配列の発現レベルが、対照試料と比較して、疑わしい生体試料中に約0.25.0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50パーセント(%)未満の発現の差(すなわちより高くまたはより低くあり得る差次的発現)を提供し、その間のすべての少数点を含む状況を包含し得る。
【0241】
HRSポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の発現レベルを測定するためのAffymetrix Microarrayを使用するときなどの、ある実施形態において、差次的発現は、通例は1000のスケール平均発現値を用いて、Affymetrix Microarray Suite 5ソフトウェア(Affymetrix,Santa Clara,CA)、または他の類似のソフトウェアによって集計された、平均発現値によっても決定され得る。
【0242】
本発明の実施形態は、HRSポリヌクレオチドもしくはポリペプチド参照配列またはその部分の存在またはレベルを検出して、異なる生物または種の細胞、組織、または他の生物試料を区別する方法を包含し、その配列の存在またはレベルは選択した生物または種と関係する。一般的な例は、ヒトと細菌、真菌、植物、および他の非ヒト動物のいずれかの組合せとを区別する方法を包含する。動物には、ヒトと、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、および非ヒト哺乳動物などの脊椎動物、ならびに昆虫、軟体動物、甲殻類、およびサンゴなどの無脊椎動物を含む、脊椎動物および無脊椎動物のいずれかの組合せとを区別する方法が包含される。非ヒト哺乳動物には、ヒトと、アフリカトガリネズミ目、ハネジネズミ目、ツチブタ目、イワダヌキ目、長鼻目、海牛目、被甲目、有毛目、ツパイ目、皮翼目、霊長目、げっ歯目、ウサギ目、ハリネズミ目、トガリネズミ目、翼手目、センザンコウ目、クジラ目、食肉目、奇蹄目、または偶蹄目からの非ヒト哺乳動物のいずれかの組合せとを区別する方法が包含される。霊長目には、当分野で公知の他のもの中でも、サル、類人猿、ゴリラ、およびチンパンジーが包含される。したがって、本明細書に記載するような、HRSポリヌクレオチドもしくはポリペプチド参照配列または変異体の存在またはレベルが使用されて、これらの生物のいずれかの組合せを区別することによって、またはヒトと、生物の1団などのこれらの生物のいずれか1つ以上とを区別することによって、細胞、組織または器官などの所与の生物試料の供給源が同定され得る。ある実施形態において、所与の生物試料の供給源は、HRS配列またはその部分の存在またはレベルを所定の値と比較することによっても決定され得る。
【0243】
本発明の実施形態は、HRSポリヌクレオチドもしくはポリペプチド参照配列またはその部分の存在またはレベルを検出して、異なる組織または器官を源とする細胞または他の生物試料を区別する方法を包含する。非制限的な例は、皮膚(たとえば真皮、表皮、皮下層)、毛包、神経系(たとえば脳、脊髄、末梢神経)、聴覚系または平衡器官(たとえば内耳、中耳、外耳)、呼吸器系(たとえば鼻、気管、肺)、胃食道組織、胃腸管系(たとえば口、食道、胃、小腸、大腸、直腸)、脈管系(たとえば心臓、血管および動脈)、肝臓、胆嚢、リンパ/免疫系(たとえばリンパ節、リンパ濾胞、脾臓、胸腺、骨髄)、泌尿生殖器系(たとえば腎臓、尿管、膀胱、尿道、子宮頸、ファローピウス管、卵巣、子宮、外陰、前立腺、尿道球腺、副こう丸(epidiymis)、前立腺、精嚢、精巣)、筋骨格系(たとえば骨格筋、平滑筋、骨、軟骨、腱、靱帯)、脂肪組織、乳房、および内分泌系(たとえば視床下部、下垂体、甲状腺、膵臓、副腎)のいずれかの組合せを源とする細胞または他の生物試料を区別する方法を包含する。それゆえに、本明細書に記載するようなHRSポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の会合に基づいて、これらの方法が使用されて、細胞または他の生物試料が誘導される組織または器官が同定または特徴づけされ得る。
【0244】
本発明の実施形態は、HRSポリヌクレオチドもしくはポリペプチド参照配列またはその部分の存在またはレベルを検出して、細胞の発生または分化状態を区別または特徴づけする方法を包含する。生殖細胞、幹細胞、および体細胞を差別化する方法も含有される。発生状態の例は新生児および成人を包含する。細胞分化状態の例は、全能細胞、多能性細胞、複能性前駆幹細胞および成熟した完全分化細胞の間の別個の(discreet)識別可能な段階すべてを包含する。
【0245】
全能細胞はすべての可能性を有し、通例、有性および無性生殖の間に出現して、胞子および接合体を包含するが、ある例では、細胞は脱分化して全能性を回復することができる。多能性細胞は、内胚葉(胃内壁、胃腸管、肺)、中胚葉(筋肉、骨、血液、泌尿生殖器)、および外胚葉(表皮組織および神経系)を包含する3つの胚葉のいずれかに分化する可能性を有する幹細胞を包含する。複能性前駆細胞は通例、限定された数の組織型に分化することができる。複能性細胞の例は、制限なく、赤血球、白血球、および血小板などの免疫細胞を生む骨髄からの造血幹細胞(成人幹細胞)、間質細胞、脂肪細胞、および各種の種類の骨細胞を生む骨髄からの間葉系幹細胞(成人幹細胞)、各種の種類の皮膚細胞を生む上皮幹細胞(前駆細胞)、および分化した筋組織に寄与する筋サテライト細胞(前駆細胞)を包含する。したがって特定のHRSポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列(たとえばHRSスプライスバリアントのスプライス部位)の存在またはレベルを使用して、対照または所定のレベルと比較して、上記の細胞分化状態を区別または特徴づけすることができる。
【0246】
本発明の実施形態は、HRSポリヌクレオチドまたはポリペプチド参照配列の存在またはレベルを検出して、状態または細胞、組織、器官、または被験体を特徴づけまたは診断する方法を包含し、その状態は健常、罹患中、罹患の危機に瀕した、処置済みとして特徴づけされ得る。このような診断目的のために、「診断」または「診断された」という用語は、病態の存在もしくは性質を同定すること、このような状態を発症するリスクを特徴づけすること、および/または療法に応答した病態の変化(または未変化)を測定することを包含する。診断方法は、その感度および特異性で異なり得る。ある実施形態において、診断アッセイの「感度」は、陽性となった罹患細胞、組織または被験体のパーセンテージ(「真陽性」のパーセント)を指す。アッセイによって検出されなかった罹患細胞、組織または被験体は通例、「偽陰性」と呼ばれる。罹患しておらず、アッセイで陰性となる細胞、組織または被験体は、「真陰性」と呼ばれ得る。ある実施形態において、診断アッセイの「特異性」は1マイナス偽陽性率として定義され得て、「偽陽性」率は、疾患がなく陽性となった試料または被験体の割合として定義される。特定の診断方法が状態の確定診断を提供しないことがあるが、該方法が診断を補助する陽性の指標を提供する場合には十分である。
【0247】
ある例において、病態の存在または病態を発症するリスクは、状態に相関する1つ以上の選択されたHRSポリヌクレオチドもしくはポリペプチド参照配列またはその部分の存在またはレベルを、好適な対照に対して、レベルの上昇または低下にかかわらず比較することによって診断することができる。「好適な対照」または「適切な制御」は、たとえば状態の非存在などの正常な特質を呈する、組織または生物の細胞または他の生物試料において、たとえば対照または正常な細胞、組織または生物において決定された値、レベル、特色、特徴または特性を包含する。ある実施形態において、「好適な対照」または「適切な対照」は、定義済みの値、レベル、特色、特徴、または特性である。他の好適な対照は、当業者に明らかになるであろう。疾患および状態の例は、本明細書の別の箇所に記載する。
【0248】
本発明の実施形態は、検出感度のためにある利点を与える、HRSポリヌクレオチドまたは核酸ベースの検出技法を包含する。それゆえに、ある実施形態は、診断方法またはアッセイの一部としてのHRSポリヌクレオチドの使用または検出に関する。HRSポリヌクレオチドの存在および/またはレベルは、中でも、ノーザンブロット、定量もしくは定性ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、定量的もしくは定性的逆転写酵素PCR(RT−PCR)、マイクロアレイ、ドットもしくはスロットブロットなどのハイブリダイゼーションアッセイ、または蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)などのインサイチューハイブリダイゼーションを含む、当分野で公知のいずれかの方法によって測定され得る。これらの方法のいくらかは、下でさらに詳細に記載されている。
【0249】
DNAおよびRNAなどのHRSポリヌクレオチドは、Kingston.(2002 Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publ.Assoc.Inc.& John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY(たとえばNelsonら、Proc Natl Acad Sci USA,99:11890−11895,2002によって記載されたものを参照)および別の箇所に記載されたものなどの、当分野で公知の技法を使用して、血液、体液、組織、器官、株化細胞、または他の関連試料から採取するおよび/または発生させることができる。
【0250】
相補的DNA(cDNA)ライブラリは、Ausubelら(2001 Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publ.Assoc.Inc.& John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY);Sambrookら(1989 Molecular Cloning,Second Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Plainview,NY);Maniatisら(1982 Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory,Plainview,NY)および別の箇所に記載されたものなどの、当分野で公知の技法を使用して、発生させることができる。
【0251】
ある実施形態は、HRSポリヌクレオチド配列を検出するためのハイブリダイゼーション方法を用い得る。ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションアッセイを行うための方法は、当分野で十分に開発されている。ハイブリダイゼーションアッセイ手順および条件は、用途に応じて変動し、Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Ed.Cold Spring Harbor,N.Y.,1989);Berger and Kimmel Methods in Enzymology,Vol.152,Guide to Molecular Cloning Techniques(Academic Press,Inc.,San Diego,Calif.,1987);Young and Davism,P.N.A.S,80:1194(1983)で言及されているものを含む、公知の一般結合方法に従って選択される。反復および制御されたハイブリダイゼーション反応を実行するための方法および装置は、米国特許第5,871,928号、同第5,874,219号、同第6,045,996号、および同第6,386,749号、同第6,391,623号に記載されており、そのそれぞれは参照により本明細書に組み入れられている。
【0252】
ある実施形態は、HRSポリヌクレオチド配列を検出するための核酸増幅方法を用い得る。「増幅」または「核酸増幅」という用語は、所期の特異的標的核酸配列の少なくとも部分を含有する標的核酸の複数のコピーの産生に関する。複数のコピーは、アンプリコンまたは増幅生成物と呼ばれ得る。ある実施形態において、増幅された標的は、決して完全ではない標的遺伝子配列(イントロンおよびエクソン)または発現された標的遺伝子配列(エクソンおよびフランキング非翻訳配列のスプライス転写物)を含有する。たとえば特異的アンプリコンは、標的ポリヌクレオチドの内部位置にハイブリダイズして、該内部位置から重合を開始する増幅プライマーを使用して、標的ポリヌクレオチドの部分を増幅することによって産生され得る。好ましくは、増幅された部分は、多種多様の周知の方法のいずれかを使用して検出され得る検出可能な標的配列を含有する。
【0253】
「選択増幅」または「特異的増幅」は本明細書で使用する場合、本発明による標的核酸配列の増幅を指し、標的配列の検出可能な増幅は、試験されている興味のある核酸試料が寄与して、いくつかの他の試料源、たとえば増幅反応中に使用された試薬中にまたは増幅反応が行われる環境中に存在する汚染物質は寄与しない標的配列の増幅に実質的に限定される。
【0254】
「増幅条件」とは、本発明による核酸増幅を許容する条件を意味する。増幅条件は、いくつかの実施形態において、本明細書に記載するような「厳密性ハイブリダイゼーション条件」よりも厳密でないことがある。本発明の増幅反応で使用されるオリゴヌクレオチドは、増幅条件下でその所期の標的にハイブリダイズするが、厳密性ハイブリダイゼーション条件ではハイブリダイズし得るまたはし得ない。他方では、本発明の検出プローブは通例、厳密性ハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。本発明による核酸増幅を実行するための許容され得る条件は、用いた特定の増幅方法に応じて、当業者が容易に確かめることができる。
【0255】
核酸増幅の多くの周知の方法は、交互に2本ストランド核酸を変性させて、プライマーをハイブリダイズするためにサーモサイクリングを必要とする;しかし、核酸増幅の他の周知の方法は、等温性である。ポリメラーゼ連鎖反応(米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;同第4,800,159号;同第4,965,188号)は普通、PCRと呼ばれ、変性、プライマー対の対向ストランドへのアニーリング、およびプライマー伸長の複数のサイクルを使用して、標的配列のコピー数を指数関数的に上昇させる。RT−PCRと呼ばれる変形では、逆転写酵素(RT)を使用してmRNAから相補的DNA(cDNA)を作製し、次にcDNAをPCRによって増幅してDNAの複数のコピーを産生する。
【0256】
上記のように、「PCR」という用語は、標的核酸種を選択的に増幅する複数の増幅サイクルを指す。定量的PCR(qPCR)、リアルタイムPCR)、逆転写PCR(RT−PCR)が包含され、定量的逆転写PCR(qRT−PCR)は当分野で十分に記載されている。「pPCR」という用語は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応を指し、「qRT−PCR」という用語は、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を指す。qPCRおよびqRT−PCRが使用されて、標的cDNA分子が増幅および同時に定量され得る。これは、選択されたHRS遺伝子または転写物などの、cDNAプール中の特異的配列の検出および定量の両方を可能にする。
【0257】
「リアルタイムPCR」という用語は、DNA結合染料を使用して、PCRにおけるすべての2本ストランド(ds)DNAを結合して染料の蛍光を引き起こし得る。その結果、PCR中のDNA生成物の上昇は、蛍光強度の上昇をもたらし、各サイクルで測定され、それゆえDNA濃度が定量されるようにする。しかし、SYBR GreenなどのdsDNA染料は、すべてのdsDNA PCR生成物に結合するであろう。蛍光はリアルタイムPCRサーモサイクラーで検出および測定され、生成物の指数関数的上昇に対応する幾何級数的増加が使用されて、各反応の閾値サイクル(「Ct」)が決定される。
【0258】
「Ctスコア」という用語は、PCR増幅が閾値レベルを超えたときのサイクルである、閾値サイクル数を指す。試料中に特定の遺伝子でmRNAの量がより高い場合、増幅する開始RNAがより多いため、該遺伝子は低く発現された遺伝子よりも早期に閾値を超えるであろう。その結果、低Ctスコアは試料中での高い遺伝子発現を指摘し、高いCtスコアは低い遺伝子発現を指し示している。
【0259】
ある実施形態は、標的核酸の隣接領域にハイブリダイズする2セットの相補的DNAオリゴヌクレオチドを使用する、普通、LCRと呼ばれるリガーゼ鎖反応(Weiss,R.1991,Science 254:1292)を用い得る。DNAオリゴヌクレオチドは、熱変性、ハイブリダイゼーションおよびライゲーションの反復サイクルにおいてDNAリガーゼによって共有結合的に連結され、検出可能な2本ストランドのライゲーションされたオリゴヌクレオチド生成物が産生される。
【0260】
ある実施形態において、マイクロアレイ分析(Han,M.ら、Nat Biotechnol,19:631−635,2001;Bao,P.ら、Anal Chem,74:1792−1797,2002;Schenaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:10614−19,1996;およびHellerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:2150−55,1997)およびSAGE(遺伝子発現の連続分析)を含む、他の技法が使用されて、特定のcDNAライブラリからの転写物のRNA転写物を評価され得る。MPSSと同様に、SAGEはデジタルであり、多数のシグネチャー配列を発生することができる(たとえばVelculescu,V.E.ら、Trends Genet,16:423−425.,2000;Tuteja R.and Tuteja N.Bioessays.2004 Aug;26(8):916−22を参照)が、MPSSなどの技法から入手できるよりも数桁小さい。
【0261】
ある実施形態において、「マイクロアレイ」という用語は、基質に結合した複数の核酸を有する「核酸マイクロアレイ」を包含し、複数の結合核酸それぞれへのハイブリダイゼーションは個別に検出可能である。基質は、固体または多孔性、平面または非平面、一体型または分散型であることができる。核酸マイクロアレイは、Schena(ed.),DNA Microarrays:A Practical Approach(Practical Approach Series),Oxford University Press(1999);Nature Genet.21(1)(suppl.):1−60(1999);Schena(ed.),Microarray Biochip:Tools and Technology,Eaton Publishing Company/BioTechniques Books Division(2000)でそのように呼ばれるすべてのデバイスを包含する。核酸マイクロアレイは、たとえばBrennerら、Proc.Acad.Sci.USA 97(4):1665−1670(2000)に記載されているように、複数の核酸が一体型の平面基質上ではなく、複数のビーズ上に並べられている、基質に結合した複数の核酸を包含し得る。核酸マイクロアレイの例は、米国特許第6,391,623号、同第同第6,383,754号、同第6,383,749号、同第6,380,377号、同第6,379,897号、同第6,376,191号、同第6,372,431号、同第6,351,712 6,344,316号、同第6,316,193号、同第6,312,906号、同第6,309,828号、同第6,309,824号、同第6,306,643号、同第6,300,063号、同第6,287,850号、同第6,284,497号、同第6,284,465号、同第6,280,954号、同第6,262,216号、同第6,251,601号、同第6,245,518号、同第6,263,287号、同第6,251,601号、同第6,238,866号、同第6,228,575号、同第6,214,587号、同第6,203,989号、同第6,171,797号、同第6,103,474号、同第6,083,726号、同第6,054,274号、同第6,040,138号、同第6,083,726号、同第6,004,755号、同第6,001,309号、同第5,958,342号、同第5,952,180号、同第5,936,731号、同第5,843,655号、同第5,814,454号、同第5,837,196号、同第5,436,327号、同第5,412,087号、および同第5,405,783号に見出され得て、その開示は参照により包含されている。
【0262】
追加の例は、Affymetrix(Santa Clara,Calif.)から商標名GeneChip(商標)で市販されている核酸アレイを包含する。さらなる例示的なアレイの製造および使用方法は、たとえばUS.Pat.Nos.7,028,629;7,011,949;7,011,945;6,936,419;6,927,032;6,924,103;6,921,642;および6,818,394で提供される。
【0263】
本発明は、アレイおよびマイクロアレイに関するように、固体基質に付着されたポリマーへの多くの使用も考慮する。これらの使用は、遺伝子発現の監視、プロファイリング、ライブラリスクリーニング、遺伝子タイピングおよび診断を包含する。遺伝子発現の監視およびプロファイリング方法ならびに遺伝子発現の監視およびプロファイリングに有用な方法は、U.S.Pat.Nos.5,800,992、6,013,449、6,020,135、6,033,860、6,040,138、6,177,248および6,309,822に示されている。遺伝子タイピングおよびその使用は、U.S.Ser.Nos.10/442,021、10/013,598(U.S.Application No.2003/0036069)、およびU.S.Pat.Nos.5,925,525、6,268,141、5,856,092、6,267,152、6,300,063、6,525,185、6,632,611、5,858,659、6,284,460、6,361,947、6,368,799、6,673,579および6,333,179に示されている。本明細書で開示する方法と組合せて使用され得る核酸増幅、標識および分析の他の方法は、U.S.Pat.Nos.5,871,928、5,902,723、6,045,996、5,541,061、および6,197,506で実現されている。
【0264】
当業者に明らかとなるように、ある実施形態は、本明細書に記載するように、増幅または検出のためにプライマーまたはプローブなどのオリゴヌクレオチドを用い得る。オリゴヌクレオチドの設計および配列は、本明細書に記載するようなその機能に依存するが、複数の変数が概して考慮に入れられる。中でも最も関連性であるのは:長さ、融解温度(Tm)、特異性、系における他のオリゴヌクレオチドとの相補性、G/C含有量、ポリピリミジン(T、C)またはポリプリン(A、G)ストレッチ、および3’端配列である。
【0265】
その結果、ある実施形態は、試料中の標的HRSポリヌクレオチドであって、本明細書に記載する参照HRSポリヌクレオチドの配列を含むポリヌクレオチドを検出する方法を通例は包含し、該方法は、a)試料を、試料中の標的ポリヌクレオチドに相補的である配列を含むプローブによってハイブリダイズして、プローブが、ハイブリダイゼーション複合体が前記プローブおよび前記標的ポリヌクレオチドまたはそのフラグメントの間に形成される条件下で、前記標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズすることと;b)前記ハイブリダイゼーション複合体の存在または非存在、および場合により、存在する場合にはその量を検出することと;を含む。また、試料中の標的HRSポリヌクレオチドであって、本明細書に記載する参照HRSポリヌクレオチドの配列を含むポリヌクレオチドを検出する方法を包含し、a)標的ポリヌクレオチドまたはそのフラグメントを増幅することと、b)前記増幅した標的ポリヌクレオチドまたはそのフラグメントの存在または非存在、ならびに場合により、存在する場合にはその量を検出することとを含む。
【0266】
本発明の実施形態は、抗体ベースの検出技法を含む、多種多様のHRSポリペプチドベースの検出技法を包含する。これらの実施形態には、抗体または他の結合剤を発生させるためのHRSポリペプチドの使用が包含され、これは次に他の生物試料、通例被験体からの細胞または他の生物試料中の選択されたHRSポリペプチドを検出または定量するために、診断方法および組成物で使用され得る。
【0267】
ある実施形態は、ウェスタンブロッティングおよび免疫沈降、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、フローサイトメトリー、および免疫蛍光アッセイ(IFA)などの標準方法体系を用い得る。これらの周知の方法は通例、本発明の選択されたHRSポリペプチド、またはそのHRSポリペプチドの固有の領域に特異的に結合して、概して全長HRSポリペプチドなどの他のHRSポリペプチドには著しく結合しない、本明細書に記載するような1つ以上のモノクローナルまたはポリクローナル抗体を利用する。ある実施形態において、HRSポリペプチドの固有の領域は、固有のスプライス部位または新たに同定された選択的スプライスバリアントの特定の3次元構造によってエンコードされ得る。
【0268】
ある実施形態は、「マイクロアレイ」などの「アレイ」を用い得る。ある実施形態において、「マイクロアレイ」は、基質結合コレクションまたは複数のポリペプチドを有する「ペプチドマイクロアレイ」または「タンパク質マイクロアレイ」も指し得て、複数の結合ポリペプチドそれぞれへの結合は別々に検出可能である。代わりに、ペプチドマイクロアレイは、これに限定されるわけではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ファージ提示結合剤、酵母2ハイブリッド結合剤、およびアプタマーを含む複数の結合剤を有し得て、結合剤は本明細書に記載するHRSポリペプチドの結合を特異的に検出することができる。アレイは、たとえばRobinsonら、Nature Medicine 8(3):295−301(2002)に記載されているように、これらのHRSポリペプチドの自己抗体検出に基づき得る。ペプチドアレイの例は、WO 02/31463、WO 02/25288、WO 01/94946、WO 01/88162、WO 01/68671、WO 01/57259、WO 00/61806、WO 00/54046、WO 00/47774、WO 99/40434、WO 99/39210、およびWO 97/42507ならびにU.S.Pat.Nos.6,268,210、5,766,960、および5,143,854に見出され得て、そのそれぞれは参照により組み入れられている。
【0269】
ある実施形態は、HRSポリペプチド配列を診断的に検出するためのMSまたは他の分子量ベースの方法を用い得る。質量分析法(MS)は概して、試料または分子の元素組成を決定する分析的技法を指す。MSは、ペプチドおよび他の化学化合物などの分子の化学構造を決定するためにも使用され得る。
【0270】
概して、MSの原理は、化学化合物をイオン化させて荷電分子または分子フラグメントを発生させることと、次にそれらの質量対電荷比を測定することとからなる。例証的なMSの手順において:試料をMS機器に装填して、気化を受けさせ、試料の構成要素が多種多様の方法の1つによって(たとえば構成要素に電子ビームで衝撃を与えることによって)イオン化され、これにより正に荷電した粒子の形成が生じ、次に正イオンが磁場によって加速されて、イオンが電磁場を移行するときのイオンの動きの詳細に基づいて、粒子の質量対電荷比(m/z)に基づいて計算が行われ、前のステップでm/zに従ってソートされたイオンが検出される。
【0271】
例証的なMS機器は3つのモジュール:気相試料分子をイオンに変換するイオン源(またはエレクトロスプレーイオン化の場合には、溶解して存在するイオンを気相に移動する);電磁場を印加することによってイオンをその質量によってソートする、質量分析器;およびインジケータ量の値を測定して、それゆえ存在する各イオンの存在量を計算するためのデータを提供する、検出器を有する。
【0272】
MS技法は、未知の化合物を同定すること、分子の元素の同位体組成を決定すること、および化合物の構造を、そのフラグメント化を観察することによって決定することを含む、定性的および定量的使用の両方を有する。他の使用は、試料中の化合物の量を定量すること、または気相イオンの化学的性質の基礎を研究すること(真空中のイオンおよび中性体の化学的性質)を包含する。したがってMS技法は、本明細書で提供された方法のいずれかに従って使用され、生物試料中の本発明のHRSポリペプチドの存在またはレベルが測定され、これらのレベルが対照試料または所定の値と比較され得る。
【0273】
B.化合物および治療剤の発見
ある実施形態は、通例、参照HRSの非カノニカル活性の1つ以上を調節する薬剤を同定するための、薬物発見におけるHRSポリペプチドまたはHRSポリヌクレオチド参照配列の使用に関する。たとえばある実施形態は、HRS参照ポリペプチド、またはHRSポリペプチドに関係し、その非カノニカル活性(複数可)に関与する細胞タンパク質または他の宿主分子などのHRS参照配列を含むポリペプチドの、1つ以上の「結合パートナー」を同定する方法を包含する。HRS参照ポリペプチドまたはその活性変異体の非カノニカル活性を、HRSポリペプチドおよび/またはその細胞結合パートナーの1つ以上と相互作用することによって作動させるまたは拮抗する化合物(たとえばポリペプチド)または他の薬剤を同定する方法も包含される。
【0274】
その結果、ある実施形態は、a)HRSポリペプチドを生物試料と好適な条件下で組合せることと、b)HRSポリペプチドの結合パートナーへの特異的結合を検出して、これによりHRS参照ポリペプチドに特異的に結合する結合パートナーを同定することとを含む、HRS参照ポリペプチドの結合パートナーを同定する方法を包含する。a)HRSポリペプチドまたはその結合パートナーを少なくとも1つの試験化合物と好適な条件下で組合せることと、b)ポリペプチドまたは結合パートナーの試験化合物への結合を検出して、これによりポリペプチドまたはその結合パートナーに特異的に結合する化合物を同定することとを含む、HRS参照ポリペプチドまたはHRSポリペプチドの結合パートナーに特異的に結合する化合物をスクリーニングする方法も包含される。ある実施形態において、化合物はポリペプチドまたはペプチドである。ある実施形態において、化合物は小型分子または他の(たとえば非生物)化学化合物である。ある実施形態において、化合物はペプチドミメティックである。
【0275】
タンパク質−タンパク質相互作用を検出するためのいずれの好適な方法も、HRS参照ポリペプチドと相互作用する細胞タンパク質、その細胞結合パートナーの1つ以上と相互作用する細胞タンパク質、またはそれらの両方を同定するのに用いられ得る。用いられ得る伝統的な方法の例は、主にHRSポリペプチドと相互作用する溶解物中のタンパク質を同定するための、同時免疫沈降、架橋、および細胞溶解物または細胞溶解物から得たタンパク質の勾配またはクロマトグラフィーカラムを通じた同時精製を包含し得る。
【0276】
これらのおよび関連する実施形態において、HRSポリペプチドまたはその結合パートナーと相互作用するタンパク質のアミノ酸配列の少なくとも部分は、エドマン分解技法を介してなど、当業者に周知の技法を使用して確かめることができる。たとえばCreighton Proteins:Structures and Molecular Principles,W.H.Freeman & Co.,N.Y.,pp.34 49,1983を参照。得られたアミノ酸配列は、このようなタンパク質をエンコードする遺伝子配列をスクリーニングするのに使用できるオリゴヌクレオチド混合物の発生のための案内として使用され得る。スクリーニングは、本明細書に記載され、当分野で公知のたとえば標準ハイブリダイゼーションまたはPCR技法によって達成され得る。オリゴヌクレオチド混合物の発生およびスクリーニングのための技法は周知である。たとえばAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.,1989;およびInnisらeds.PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications Academic Press,Inc.,New York,1990を参照。
【0277】
加えて方法は、結合パートナーまたは他のポリペプチドをエンコードする遺伝子の同時同定に用いられ得る。これらの方法はたとえば、標識HRSタンパク質、または別のポリペプチド、ペプチドまたは融合タンパク質、たとえばマーカー(たとえば酵素、蛍光、発光タンパク質、または染料)に融合された変異体HRSポリペプチドまたはHRSドメイン、またはIg−Fcドメインを使用する、ラムダ−gt11ライブラリの抗体プロ―ビングの周知の技法に類似した方式の、プロ―ビング発現ライブラリを包含する。
【0278】
インビボでタンパク質相互作用を検出する1つの方法は、ツーハイブリッドシステムである。本システムの例が記載されており(Chienら、PNAS USA 88:9578 9582,1991)、Clontech(Palo Alto,Calif.)から市販されている。ある例において、ツーハイブリッド系または他のこのような方法体系が使用されて、活性化ドメインライブラリが「ベイト」遺伝子産物と相互作用するタンパク質についてスクリーニングされ得る。一例として、限定するためではないが、HRS参照ポリペプチドまたは変異体は、ベイト遺伝子産物として使用され得る。HRS結合パートナーは、「ベイト」遺伝子産物としても使用され得る。全ゲノムまたはcDNA配列は、活性化ドメインをエンコードするDNAに融合される。本ライブラリおよびDNA結合ドメインに融合されたベイトHRS遺伝子産物のハイブリッドをエンコードするプラスミドは、酵母リポーター株に同時形質転換され、得られた形質転換体は、リポーター遺伝子を発現するものについてスクリーニングされる。
【0279】
酵母中のRNA−タンパク質相互作用の検出を可能にする、スリーハイブリッド系も包含される。たとえばHookら、RNA.11:227−233,2005を参照。したがって、これらのおよび関連する方法を使用して、HRSポリペプチドの細胞結合パートナーを同定することができる。これらのおよび関連する方法を使用して、HRSポリペプチド、その細胞結合パートナー、またはそれらの両方と相互作用する結合剤または核酸などの他の化合物を同定することもできる。
【0280】
上記のようにいったん単離されると、結合パートナーを同定することができ、今度は該結合パートナーを標準技法と併せて使用して、該結合パートナーが相互作用するタンパク質または他の化合物を同定することができる。それゆえある実施形態は、a)結合パートナーを少なくとも1つの試験化合物と好適な条件で組合せることと、b)結合パートナーの試験化合物への結合を検出して、これにより結合パートナーに特異的に結合する化合物を同定することとを含む、HRS参照ポリペプチドの結合パートナーに特異的に結合する化合物をスクリーニングする方法に関する。ある実施形態において、試験化合物はポリペプチドである。ある実施形態において、試験化合物は、小型分子化合物またはペプチドミメティックなどの化学化合物である。
【0281】
ある実施形態は、a)ポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と、ポリペプチドの活性に受け入れられる条件下で組合せることと、b)試験化合物の存在下でポリペプチドの活性を影響評価することと、c)試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性を、試験化合物の非存在下でのポリペプチドの活性と比較することとを包含し、試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性の変化がポリペプチドの活性を調節する化合物を指し示す、HRS参照ポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法を包含する。
【0282】
ある実施形態は、a)ポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と、結合パートナーの活性に受け入れられる条件下で組合せることと、b)試験化合物の存在下で結合パートナーの活性を影響評価することと、c)試験化合物の存在下での結合パートナーの活性を、試験化合物の非存在下での結合パートナー活性と比較することとを包含し、試験化合物の存在下での結合パートナーの活性の変化が結合パートナーの活性を調節する化合物を指し示す、HRS参照ポリペプチドの結合パートナーの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法を包含する。通例、これらのおよび関連する実施形態は、HRSポリペプチドまたはその結合パートナーと関わる選択された非カノニカル活性を影響評価することを包含する。細胞培養条件などのインビトロおよびインビボ条件が包含される。
【0283】
ある実施形態は、a)ポリペプチドを含む試料を化合物に曝露させることと、b)通例、HRSポリペプチドの非カノニカル活性の上昇を測定することによって、試料中のアゴニスト活性を検出することとを含む、化合物をHRS参照ポリペプチドまたはその活性フラグメントもしくは活性変異体の完全または部分アゴニストとしての有効性についてスクリーニングする方法を包含する。ある方法は、a)HRSポリペプチドの結合パートナーを含む試料を化合物に曝露させることと、b)通例、HRSポリペプチドの選択された非カノニカル活性の上昇を測定することによって、試料中のアゴニスト活性を検出することとを包含する。ある実施形態は、該方法によって同定されたアゴニスト化合物および製薬的に許容され得る担体または賦形剤を含む組成物を包含する。
【0284】
a)ポリペプチドを含む試料を化合物に曝露させることと、b)通例、HRSポリペプチドの非カノニカル活性の低下を測定することによって、試料中のアンタゴニスト活性を検出することとを含む、化合物をHRS参照ポリペプチドの完全または部分アンタゴニストとしての有効性についてスクリーニングする方法も包含される。ある方法は、a)HRSポリペプチドの結合パートナーを含む試料を化合物に曝露させることと、b)通例、HRSポリペプチドの選択された非カノニカル活性の低下を測定することによって、試料中のアンタゴニスト活性を検出することとを含む。ある実施形態は、該方法によって同定されたアンタゴニスト化合物および製薬的に許容され得る担体または賦形剤を含む組成物を包含する。
【0285】
ある実施形態において、インビトロ系は、HRS参照配列もしくはその結合パートナーと相互作用することができる、またはHRS参照配列もしくはその結合パートナーを調節することができる化合物を同定するように設計され得る。このような系によって同定された化合物のいくらかは、たとえば経路の活性を調製するのに、および経路自体の構成要素を同化するのに有用であり得る。該化合物は、経路の構成要素間の相互作用を混乱させる化合物を同定するためのスクリーンでも使用され得る;またはこのような相互作用を直接混乱させ得る。1つの例示的な手法は、HRSポリペプチドと試験化合物との反応混合物を、2つを相互作用および結合させるのに、それゆえ反応混合物から除去できるおよび/または反応混合物中で検出できる複合体を形成するのに十分な条件および時間にて調製することを包含する。
【0286】
インビトロ・スクリーニング・アッセイは、多種多様のやり方で行うことができる。たとえば、HRSポリペプチド、細胞結合パートナー、または試験化合物(複数可)は、固相上に固定することができる。これらのおよび関連する実施形態において、得られた複合体は、反応の終りに固相上で捕捉および検出され得る。このような方法の1例において、HRSポリペプチドおよび/またはその結合パートナーは、固体表面に固定され、固定されていない試験化合物(複数可)は、直接または間接的にのどちらかで標識され得るので、固体表面上の構成要素による試験化合物の捕捉を検出することができる。他の例において、試験化合物(複数可)が固体表面に固定され、固定されていないHRSポリペプチドおよび/またはその結合パートナーは、検出可能ないくつかのやり方で標識される。ある実施形態において、マイクロタイタープレートは、固相として便利に利用され得る。固定された構成要素(または試験化合物)は、非共有結合性または共有結合性付着によって不動化され得る。非共有結合性付着は、単に固体表面をタンパク質の溶液でコーティングして、乾燥させることによって達成され得る。代わりに、不動化されるタンパク質的に特異的な不動化抗体、好ましくはモノクローナル抗体が使用されて、タンパク質を固体表面に固定し得る。表面は事前に調製されて、貯蔵され得る。
【0287】
例示的なアッセイを行うために、不動化されていない構成要素を、固定構成要素を含有するコート表面に通例添加する。反応が完了した後、未反応構成要素は、形成されたいずれの特異的複合体も固体表面上で不動化されたままであるような条件下で、(たとえば洗浄によって)除去される。固体表面に固定された複合体の検出は、いくつかのやり方で達成することができる。例として、先に不動化されていない構成要素が事前に標識されている場合、表面上での不動化された標識の検出は、複合体が形成されたことを指摘する。先に不動化されていない構成要素が事前に標識されていない場合、間接標識を使用して、たとえば先に不動化されていない構成要素に特異的な標識抗体(今度は、抗体は直接標識され得るか、または標識抗Ig抗体によって間接的に標識され得る)を使用して、表面に固定された複合体を検出することができる。
【0288】
代わりに、試験化合物の結合の存在または非存在は、たとえば表面プラスモン共鳴(SPR)および指数としての共鳴角の変化を使用して決定することができ、ここでHRSポリペプチドまたは細胞結合パートナーは市販のセンサチップ(たとえばBiacore(商標)が製造)の表面上に慣習的な方法によって不動化され、試験化合物がそこに接触して、センサチップが特定の角度からの特定の波長の光によって照明される。試験化合物の結合は、HRSポリペプチドまたは細胞結合パートナーは質量分析計に適応可能なタンパク質チップの表面上に不動化され、試験化合物がチップと接触する方法により、試験化合物に対応するピークの出現を検出することによっても測定でき、MALDI−MS、ESI−MS、FAB−MSなどのイオン化方法は、質量分析計(たとえば2重収束質量分析計、4重極質量分析計、飛行時間質量分析計、フーリエ変換質量分析計、イオンサイクロトロン質量分析計など)と組合される。
【0289】
ある実施形態において、細胞ベースアッセイ、膜ベシクルベースアッセイ、または膜画分ベースアッセイを使用して、選択されたHRSポリペプチドの非カノニカル経路における相互作用を調節する化合物を同定することができる。このために、HRSポリペプチドおよび/もしくは結合パートナー、またはドメインもしくはフラグメントを含有する融合タンパク質(またはその組合せ)を発現する株化細胞、またはこのようなタンパク質(複数可)または融合タンパク質(複数可)を発現するように遺伝子操作された株化細胞(たとえばCOS細胞、CHO細胞、HEK293細胞、Hela細胞など)を使用することができる。非カノニカル活性に影響する試験化合物(複数可)は、対照または所定量と比較して、その活性における変化(たとえば統計的に有意な変化)を監視することによって同定できる。
【0290】
アンチセンス剤およびRNAi剤に関する実施形態では、たとえば、a)HRS参照ポリヌクレオチドを含む試料を潜在的なアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの化合物に曝露させることと、b)HRSポリヌクレオチドの改変された発現を検出することとを含む、HRS参照ポリヌクレオチドの発現を改変する有効性について化合物をスクリーニングする方法も包含される。ある非制限的な例において、これらのおよび関連する実施形態は、当分野の常用技法に従って細胞ベースアッセイに、または細胞遊離翻訳アッセイに用いることができる。このような方法によって同定されたアンチセンス剤およびRNAi剤も包含される。
【0291】
いずれの上の方法、または高スループットスクリーニング(HTS)に適した、当分野で公知の他のスクリーニング方法も包含される。HTSは通例、オートメーションを使用して、候補化合物のライブラリに対するアッセイのスクリーン、例として、本明細書に記載するように、非カノニカル活性の上昇または低下を測定するアッセイを実行する。
【0292】
C.処置方法
別の態様において、本発明は、本明細書に記載するように、組成物により細胞、組織または被験体を処置するための、本発明の組成物の使用方法に関する。本発明によって調節され得る細胞または組織は、好ましくは哺乳動物細胞、またはさらに好ましくはヒト細胞である。このような細胞は、健常状態の細胞または罹患状態の細胞であり得る。
【0293】
したがって、HRSポリペプチド、HRSポリヌクレオチド、HRSポリヌクレオチドベースベクター、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi剤を含む本明細書に記載するHRS剤、ならびにペプチド、抗体および抗原結合フラグメント、ペプチドミメティックおよび他の小型分子などの結合剤を使用して、参照HRSの非カノニカル活性に関連する多種多様の非限定的な疾患または状態を処置することができる。このような非カノニカル活性の例は、細胞増殖の調節、細胞移動の調節、細胞分化(たとえば造血)の調節、アポトーシスまたは他の形の細胞死の調節、細胞シグナル伝達の調節、血管新生の調節、細胞結合の調節、細胞代謝の調節、サイトカイン産生または活性の調節、サイトカイン受容体活性の調節、炎症の調節などを包含する。
【0294】
通例、減少させられなければその非カノニカル活性に寄与する、HRSポリペプチドの特定のスプライスバリアントまたはHRSポリペプチドの細胞結合パートナーなどの標的分子の発現を減少させることに関するアンチセンス療法およびRNAi干渉療法などのポリヌクレオチドベース療法が包含される。アンチセンス療法またはRNAi療法は通例、HRS参照ポリペプチドの発現を減少させることなどにより、非カノニカル活性と拮抗する。HRSポリペプチド、その細胞結合パートナー(複数可)、またはそれらの両方と直接相互作用することなどにより、HRS参照ポリペプチドの非カノニカル活性に作動または拮抗のどちらかを行う、ポリペプチド、抗体、ペプチドミメティック、または他の小型分子ベースの療法も包含される。
【0295】
ある実施形態において、たとえば、細胞を本明細書に記載するようなHRS組成物に接触させることを含む、これに限定されるわけではないが、細胞代謝、細胞分化、細胞増殖、細胞死、細胞動員、細胞移動、免疫系機能、遺伝子転写、mRNA翻訳、細胞インピーダンス、サイトカイン産生などを包含する治療関連性の細胞活性を調節する方法も提供される。したがって、HRS組成物は、1つ以上のこのような活性の調節から恩恵を受けるであろう本質的にいずれの細胞または組織または被験体も処置するのに用いられ得る。
【0296】
HRS組成物は、たとえば新生物性疾患、免疫系疾患(たとえば自己免疫疾患および炎症)、感染性疾患、代謝病、ニューロン/神経疾患、筋肉/心血管疾患、異常造血に関係する疾患、異常血管新生に関係する疾患、異常細胞生存に関係する疾患、およびその他の処置または防止に関連するものを含む、いくつかの治療状況のいずれでも使用され得る。
【0297】
たとえば本発明の組成物は、自己免疫および/または炎症性疾患、状態ならびに障害を直接または間接的にのどちらかで媒介する細胞を調節することによって抗炎症性または炎症促進性の適応症を処置するための、免疫調節薬として使用され得る。免疫調節薬としての本発明の組成物の有用性は、たとえば移動アッセイ(たとえば白血球、リンパ球、単球を使用する)、サイトカイン産生アッセイ、細胞生存度アッセイ(たとえばB細胞、T細胞、単球、NK細胞を使用する)などを含む、いくつかの当分野で公知のおよび利用可能技法のいずれかを使用して監視することができる。
【0298】
「炎症」は概して、病原体、損傷細胞(たとえば創傷)、および刺激原などの有害な刺激に対する組織の生物学的応答を指す。「炎症性応答」という用語は、単に例証として、本明細書に記載するおよび当分野で公知の数ある中でも、免疫細胞活性化または移動、サイトカイン産生、血管拡張(キニン遊離、フィブリン溶解および凝固を含む)を含む、炎症が達成および制御される特異的機構を指す。理想的には、炎症は、傷害性刺激の除去および罹患組織または組織(複数可)の治癒プロセスの開始の両方のための、体による保護のための試みである。炎症の非存在下では、創傷および感染は治癒することはなく、組織の進行性破壊が生存を脅かすであろう局面が生じるであろう。他方では、過剰または慢性炎症は、本明細書に記載するおよび当分野で公知の、数ある中でも花粉症、アテローム性動脈硬化、および関節リウマチなどの多種多様の疾患と関係し得る。
【0299】
慢性炎症の臨床徴候は、疾病の継続期間、炎症病変、原因および罹患した解剖学的範囲に依存している。(たとえばKumarら、Robbins Basic Pathology−8th Ed.,2009 Elsevier,London;Miller,LM,Pathology Lecture Notes,Atlantic Veterinary College,Charlottetown,PEI,Canadaを参照)。慢性炎症は、本明細書に記載するおよび当分野で公知の、数ある中でも、たとえばアレルギー、アルツハイマー病、貧血、大動脈弁狭窄、関節リウマチおよび骨関節炎および痛風関節炎などの関節炎、癌、うっ血性心不全、線維筋痛症、線維症、心臓発作、腎疾患、狼瘡、膵臓炎、脳卒中、外科的合併症、炎症性肺疾患、炎症性腸疾患、アテローム性動脈硬化、神経障害、糖尿病、代謝性障害、肥満、および乾癬を含む、多種多様の病態または状態または疾患と関係している。それゆえにHRS組成物が使用されて、慢性炎症が処置もしくは管理され得る、個々の慢性炎症性応答の1つ以上のいずれかが調節され得る、または慢性炎症に関係するいずれか1つの疾患もしくは状態が処置され得る。
【0300】
たとえば許容された臨床基準に従った改良を決定することによる、治療的有効用量が処置経過中に投与されたか否かを決定することなどを含む、鑑別診断を行う目的での、および処置を監視するための、炎症性状態または他の状態の徴候または症状を影響評価するための基準は、当業者に明らかになるであろうし、たとえばBerkowら、eds.,The Merck Manual,16th edition,Merck and Co.,Rahway,N.J.,1992;Goodmanら、eds.,Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th edition,Pergamon Press,Inc.,Elmsford,N.Y.,(2001);Avery’s Drug Treatment:Principles and Practice of Clinical Pharmacology and Therapeutics,3rd edition,ADIS Press,Ltd.,Williams and Wilkins,Baltimore,MD.(1987);Ebadi,Pharmacology,Little,Brown and Co.,Boston,(1985);Osolci al.,eds.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990);Katzung,Basic and Clinical Pharmacology,Appleton and Lange,Norwalk,CT(1992)による教示によって例示されている。
【0301】
自然免疫応答などの免疫応答を調節する方法も包含されている。本明細書で使用する場合、「免疫応答」という用語は、免疫系の1つ以上の細胞によって媒介される、抗原、ワクチン組成物、または免疫調節分子に対する測定可能なまたは観察可能な反応を包含する。免疫応答は通例、免疫系細胞に結合する抗原または免疫調節分子結合によって開始する。抗原または免疫調節分子に対する反応は、抗原または免疫調節分子に最初に結合する細胞および自然体液性細胞媒介免疫応答の媒介に関与する細胞を含む、多くの細胞型によって媒介され得る。
【0302】
「自然免疫応答」は、本明細書で使用する場合、病原体関連分子パターン(PAMP)またはHRSポリペプチドのトル様受容体などの細胞表面受容体への結合を包含し得る。PAMPまたは他のシグナルに応答したトル様受容体およびIpafシグナル伝達経路の活性化は、免疫応答を誘発および/または増強するサイトカインおよび同時刺激分子などの免疫調節分子の産生に至る。自然免疫応答に関わる細胞は、数ある中でもたとえば、樹状細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、および好中球を包含する。
【0303】
ある実施形態は、自然免疫応答を上昇させることに関する。他の実施形態は、自然免疫応答を低下させることに関する。ある態様において、自然免疫応答は1つ以上のトル様受容体(TLR)、たとえばTLR2および/またはTLR4によって媒介される。本発明のあるHRSポリペプチドは、TLR2および/またはTLR4などのTLRに結合する。TLRは、感染性因子を自己から区別して、有効な適応免疫の発症に必要なサイトカインなどの免疫調節分子の産生を媒介するPAMPを認識する(参照により本明細書に組み入れられている、Aderem,A and Ulevitch,R.J.Nature 406:782−787(2000)およびBrightbill,H.D.,Immunology 101:1−10(2000))。トル様受容体ファミリのメンバは、多種多様の抗原型を認識して、病原体を判別することができる。たとえばTLR2は各種の真菌、グラム陽性、およびマイコバクテリア構成要素を認識し、TLR4はグラム陰性生成物リポポリサッカライド(LPS)を認識し、TLR9は細菌DNA中のCpG反復などの核酸を認識する。
【0304】
自然免疫(たとえばTLR2および/または(and/r)TLR4を介して)を刺激するHRS組成物は、単独で、または他の療法と組合されてのどちらかで多岐にわたる状態の処置に有用であることができる。このような状態の特異的な例は、細菌、ウイルス、および寄生虫感染性疾患などの感染性疾患を包含する。自然免疫を刺激するHRS組成物は、ワクチンアジュバントとしても有用であり、生ワクチン、弱毒化ワクチン、または他の種類のワクチンにかかわらず、1次抗原に対する被験体の免疫応答を増強することができる。
【0305】
ウイルス感染性疾患または因子(およびその対応するワクチン)の例は、これに限定されるわけではないが、数ある中でも、本明細書の他の箇所で記載された、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、E型肝炎、カリシウイルス関連下痢、ロタウイルス下痢、ヘモフィルスインフルエンザB型肺炎および感染病、インフルエンザ、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、パラインフルエンザ関連肺炎、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)、ヒト・パピローマ・ウイルス、単純疱疹2型性器潰瘍、HIV/AIDS、デング熱、日本脳炎、ダニ媒介脳炎、西ナイルウイルス関連疾患、黄熱、エプスタイン−バーウイルス、ラッサ熱、クリミア−コンゴ出血熱、エボラ出血熱、マルブルグ出血熱、狂犬病、リフトバレー熱、天然痘、ハンセン病、上および下気道感染、ポリオを包含する。
【0306】
細菌感染疾患または因子の例は、これに限定されるわけではないが、数ある中でも、本明細書の別の箇所で記載された、Bacillus antracis、Borellia burgdorferi、Brucella abortus、Brucella canus、Brucella melitensis、Brucella suis、Campylobacter jejuni、Chlamydia pneumoniae、Chlamydia psitacci、Chlamydia trachomatis、Clostridium botulinum、C.difficile、C.perfringens、C.tetani,Corynebacterium diphtheriae(すなわちジフテリア)、Enterococcus、大腸菌、Haemophilus influenza、Helicobacter pylori、Legionella pneumophila、Leptospira、Listeria monocytogenes、Mycobacterium leprae、M.tuberculosis、Mycoplasma pneumoniae、Neisseria gonorrhea、N.meningitidis、Pseudomonas aeruginosa、Rickettsia recketisii、Salmonella typhi、S.typhimurium、Shigella sonnei、Staphylococcus aureus、S.epidermidis、S.saprophyticus、Streptococcus agalactiae、S.pneumoniae、S.pyogenes、Treponema pallidum、Vibrio cholera、Yersinia pestis、Bordatella pertussis、および中耳炎(たとえばStreptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae、またはMoraxella catarrhalisによって引き起こされることが多い)を包含する。
【0307】
寄生虫感染性疾患の例は、これに限定されるわけではないが、アメーバ症(たとえばEntemoeba histolytica)、鉤虫病(たとえばNecator americanusおよびAncylostoma duodenaleなどの寄生性線虫)、Leishmaniasis、Malaria(4種の寄生性原生動物Plasmodium;P.falciparum,P.vivax,P.ovale、およびP.malariae)、Schistosomiasis(寄生性住血吸虫属;S.mansoni,S.haematobium、およびS.japonicum)、Onchocerca volvulus(河川盲目症)、Trypanosoma cruzi(シャーガス病/アメリカ睡眠病)、およびDracunculus medinensis、リンパ管フィラリアを包含する。
【0308】
あるHRS組成物は、リポポリサッカライド(LPS)などの外来抗原への曝露から生じることが多い内毒素ショックの処置または減少で有用であり得る。内毒素ショックはTLRシグナル伝達によって媒介されることができ、天然型内因性HRSフラグメント(たとえばSV9)はTLRを刺激し得るため、本明細書で提供される結合剤、アンチセンス剤、またはRNAi剤のいくらかは、TLR2および/またはTLR4の内因性HRSフラグメント媒介刺激を拮抗する、またはそうでなければ減少さえることによって、被験体を内毒素ショックに耐性とし得る。
【0309】
あるHRS組成物は、ある免疫活性を減少させる、または拮抗するのに有用であり得る。例として、単球移動などの細胞移動の調節におけるTLRの役割を考えると、TLRを通じてシグナル伝達するHRS組成物も細胞移動を調節し得る。ある態様において、HRS組成物は、単球移動を含む免疫細胞移動などのCCL1媒介活性を低減または拮抗する。1つの実施例として、あるHRS組成物は、ある例において、サイトカイン分泌(たとえばMIP1α)、および関連するサイトカイン受容体(たとえばCCL1)のレベルまたは活性の下方制御をもたらす、TLR2および/またはTLR4などのTLRを活性化し得る。それゆえに、HRS組成物が用いられて、TLRおよびCCL1などのサイトカイン受容体に関係する細胞移動などの免疫活性を調節して、これによりTLRおよび/またはCCR1−媒介疾患または状態が処置され得る。
【0310】
免疫疾患を処置する方法も包含される。本発明によって処置され得る例証的な免疫系疾患、障害または状態は、これに限定されるわけではないが、原発性免疫不全、免疫媒介血小板減少症、川崎病、骨髄移植(たとえば成人または小児の最新の骨髄移植)、慢性B細胞リンパ性白血病、HIV感染(たとえば成人または小児HIV感染)、慢性炎症脱髄多発性神経障害、輸血後紫斑病などが包含され得る。
【0311】
加えて、さらなる疾患、障害および状態は、ギラン−バレー症候群、貧血(たとえば感染(たとえば回帰感染)の高いリスクに瀕した、安定な多発性骨髄腫を有するパルボウイルスB19患者に関係する貧血、自己免疫溶血性貧血(たとえば温式自己免疫溶血性貧血)、血小板減少症(たとえば新生児血小板減少症)、および免疫媒介好中球減少症)、移植(たとえばCMV陽性器官のサイトメガロウイルス(CMV)陰性レシピエント)、低ガンマグロブリン血症(たとえば感染または罹患のリスク因子を有する低ガンマグロブリン症新生児)、てんかん(たとえば難治性てんかん)、全身性血管炎症候群、重症筋無力症(たとえば重症筋無力症における代償不全)、皮膚筋炎、および多発性筋炎を包含する。
【0312】
さらなる自己免疫疾患、障害および状態は、これに限定されるわけではないが、自己免疫溶血性貧血、自己免疫新生児血小板減少症、特発性血小板減少症紫斑、自己免疫性血球減少症、溶血性貧血、抗リン脂質症候群、皮膚炎、アレルギー性脳脊髄炎、心筋炎、再発性多発性軟骨炎、リウマチ性心疾患、糸球体腎炎(たとえばIgA腎症)、多発性硬化症、神経炎、ブドウ膜炎、眼炎、多発性内分泌腺症、紫斑(たとえばヘノッホ−シェーンライン紫斑)、ライター疾患、スティッフマン症候群、自己免疫肺炎症、ギラン−バレー症候群、インスリン依存型真性糖尿病、および自己免疫炎症眼疾患を包含する。
【0313】
追加の自己免疫疾患、障害または状態は、これに限定されるわけではないが、自己免疫性甲状腺炎;たとえば細胞媒介および体液性甲状腺細胞毒性を特徴とする甲状腺炎および橋本甲状腺炎を含む、甲状腺機能低下症;SLE(たとえば循環および局所発生免疫複合体を特徴とすることが多い);グッドパスチャー症候群(たとえば抗基底膜抗体を特徴とすることが多い);天疱瘡(たとえば表皮棘融解抗体を特徴とすることが多い);たとえば,グレーブス病(たとえば甲状腺刺激ホルモン受容体に対する抗体を特徴とすることが多い;たとえばアセチルコリン受容体抗体を特徴とすることが多い、重症筋無力症)などの受容体自己免疫;インスリン抵抗性(たとえばインスリン受容体抗体を特徴とすることが多い);自己免疫溶血性貧血(たとえば抗体感作赤血球の食作用を特徴とすることが多い);および自己免疫性血小板減少性紫斑(たとえば抗体感作血小板の食作用を特徴とすることが多い)を包含する。
【0314】
さらなる自己免疫疾患、障害または状態は、これに限定されるわけではないが、関節リウマチ(たとえば関節における免疫複合体を特徴とすることが多い);抗コラーゲン抗体による強皮症(たとえば核小体抗体および他の核抗体を特徴とすることが多い);混合結合組織病(たとえば抽出核抗原に対する抗体、たとえばリボヌクレオタンパク質を特徴とすることが多い);多発性筋炎/皮膚筋炎(たとえば非ヒストン性抗核抗体を特徴とすることが多い);悪性貧血(たとえば抗壁細胞、抗ミクロゾーム抗体、および抗内因子抗体を特徴とすることが多い);特発性アジソン病(たとえば体液性および細胞媒介副腎細胞毒性を特徴とすることが多い);不妊(たとえば抗精子(antispennatozoal)抗体を特徴とすることが多い);糸球体腎炎(たとえば糸球体基膜抗体または免疫複合体を特徴とすることが多い);原発性糸球体腎炎、IgA腎症;水疱性類天疱瘡(たとえば基底膜中のIgGおよび補体を特徴とすることが多い);シェーグレン症候群(たとえば多組織抗体および/または特異的非ヒストン性抗核抗体(SS−B)を特徴とすることが多い);真性糖尿病(たとえば細胞媒介および体液性膵島細胞抗体を特徴とすることが多い);および喘息または嚢胞性線維症を伴う作動性薬物抵抗性を含む、作動性薬物抵抗性(たとえばベータ作動性受容体抗体を特徴とすることが多い)を包含する。
【0315】
なおさらなる自己免疫疾患、障害または状態は、これに限定されるわけではないが、慢性活性肝炎(たとえば平滑筋抗体を特徴とすることが多い);原発性胆汁性肝硬変(たとえば抗ミトコンドリア抗体を特徴とすることが多い);他の内分泌腺障害(たとえばいくつかの場合において、特異的組織抗体を特徴とする);白班(たとえば抗メラノサイト抗体を特徴とすることが多い);脈管炎(たとえば血管壁の免疫グロブリンおよび補体ならびに/または低血清補体を特徴とすることが多い);心筋梗塞後状態(たとえば抗心筋抗体を特徴とすることが多い);心臓切開症候群(たとえば抗心筋抗体を特徴とすることが多い);蕁麻疹(たとえばIgEに対するIgGおよびIgM抗体を特徴とすることが多い);アトピー性皮膚炎(たとえばIgEに対するIgGおよびIgEに対するIgM抗体を特徴とすることが多い);喘息(たとえばIgEに対するIgGおよびIgM抗体を特徴とすることが多い);炎症性ミオパシー;ならびに他の炎症性、肉芽腫性、変性およびアトピー性障害を包含し得る。
【0316】
異常造血および関連状態を調節する方法も包含されている。本発明のHRSポリペプチドによって調節され得る造血プロセスの例は、制限なく、骨髄性細胞(たとえば赤血球系細胞、マスト細胞 単球/マクロファージ、骨髄樹状細胞、好塩基球、好中球、および好酸球などの顆粒球、巨核球、血小板)および、リンパ球様細胞(たとえばナチュラルキラー細胞、リンパ系樹状細胞、B細胞、およびT細胞)の形成を包含する。ある特異的な造血プロセスは、赤血球生成、顆粒球形成、リンパ球産生、巨核球形成、栓球新生およびその他を包含する。造血幹細胞、前駆細胞、赤血球、顆粒球、リンパ球、巨核球、および栓球を含む、造血細胞の輸送または動員を調節する方法も包含される。
【0317】
造血を調節する方法は、インビボ、インビトロ、エクスビボ、またはそのいずれかの組合せで実施され得る。これらの方法は、造血幹細胞、造血前駆細胞、または造血系に沿って分化することが可能である他の幹細胞もしくは前駆細胞(たとえば脂肪組織由来幹細胞)を含有する、いずれの生物試料、細胞培養物、または組織にも実施することができる。インビトロおよびエクスビボ方法では、幹細胞および前駆細胞は、造血起源かそうでないかにかかわらず、本明細書に記載するおよび当分野で公知の技法および特徴に従って単離および/または同定できる。
【0318】
なお他の実施形態において、本発明のHRS組成物が使用されて、たとえば内皮細胞増殖および/または伝達の調節を介して血管新生が調節され得る。内皮細胞増殖および/または細胞シグナル伝達は、その多くが当分野で公知および利用可能である、適切な株化細胞(たとえばヒト微小血管内皮肺細胞(HMVEC−L)およびヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC))を使用して、および適切なアッセイ(たとえば内皮細胞移動アッセイ、内皮細胞増殖アッセイ、チューブ形成アッセイ、マトリゲル・プラグ・アッセイなど)を使用して監視され得る。
【0319】
その結果、関連する実施形態において、本発明の組成物は、血管新生の調節から恩恵を得るであろう本質的にいずれの細胞または組織または被験体の処置にも用いられ得る。たとえばいくつかの実施形態において、血管新生(たとえば血管新生状態)を経験しているまたは血管新生に感受性である細胞または組織または被験体は、血管新生状態を阻害する本発明の好適な組成物に接触させられ得る。他の実施形態において、不十分な血管新生(たとえば血管新生抑制状態)を経験しているまたは不十分な血管新生に感受性である細胞または組織は、血管新生抑制活性を妨害するためにおよび/または血管新生を促進するために、本発明の適切な組成物と接触させられ得る。
【0320】
血管新生状態の例証的な例は、これに限定されるわけではないが、加齢性黄斑変性(AMD)、癌(固形および血液の両方)、発生異常(器官形成)、糖尿病性失明、子宮内膜症、眼新血管新生、乾癬、関節リウマチ(RA)、および皮膚変色(disclolorations)(たとえば血管腫、火炎状母斑または単純母斑)を包含する。抗血管新生状態の例は、これに限定されるわけではないが、心血管疾患、再狭窄、虚血組織または心不全の再灌流後の組織損傷、慢性炎症および創傷治癒を包含する。
【0321】
他の実施形態において、本発明のHRS組成物が使用されて、細胞増殖および/または生存が調節され、したがって細胞増殖および/または生存の異常を特徴とする疾患、障害または状態を処置または防止され得る。たとえば、ある実施形態において、HRS組成物が使用されて、アポトーシスが調節され得る、および/または異常なアポトーシスに関係する疾患または状態が処置され得る。アポトーシスは、プログラムされた細胞死として公知の細胞シグナル伝達カスケードを説明するために使用される用語である。アポトーシスを誘発する分子の(たとえば癌)、ならびにアポトーシスを阻害する分子の(すなわち脳卒中、心筋梗塞、敗血症など)、各種の治療適応症が存在する。アポトーシスは、たとえばDNAのフラグメント化、膜非対称性の改変、アポトーシスカスパーゼの活性化ならびに/またはシトクロムCおよびAIFの放出を測定するアッセイを含む、当分野で公知および利用可能である、いくつかの利用可能な技法のいずれかによって監視することができる。
【0322】
細胞生存の上昇、またはアポトーシスの阻害に関係する例証的な疾患は、これに限定されるわけではないが、癌(これに限定されるわけではないが、結腸癌、心臓腫瘍、膵臓癌、黒色腫、網膜芽腫、神経膠芽腫、肺癌、腸癌、精巣癌、胃癌、神経芽細胞腫、粘液腫、筋腫、リンパ腫、内皮腫、骨芽細胞腫、骨巨細胞腫、骨肉腫、軟骨肉腫、腺腫、乳癌、前立腺癌、カポジ肉腫および卵巣癌などを含む、濾胞性リンパ腫、癌腫、およびホルモン依存性腫瘍);自己免疫障害(多発性硬化症、シェーグレン症候群、グレーブス病、橋本甲状腺炎、自己免疫性糖尿病、胆汁性肝硬変、ベーチェット病、クローン病、多発性筋炎、全身性エリテマトーデスおよび免疫関連糸球体腎炎、自己免疫性胃炎、自己免疫性血小板減少性紫斑、および関節リウマチなど)およびウイルス感染(疱疹ウイルス、ポックスウイルスおよびアデノウイルスなど),炎症、移植片対宿主病(急性および/または慢性)、急性移植片拒絶、および慢性移植片拒絶を包含する。
【0323】
細胞生存の上昇に関係するさらなる例証的な疾患または状態は、これに限定されるわけではないが、悪性腫瘍の進行および/または転移、ならびに関連障害、たとえば白血病(急性白血病(たとえば急性リンパ性白血病、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、および赤白血病を含む急性骨髄性白血病))および慢性白血病(たとえば慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病)、骨髄異形成症候群 真性赤血球増加症、リンパ腫(たとえばホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病などの関連する疾患、ならびにこれに限定されるわけではないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌腫、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌腫、基底細胞癌腫、腺癌腫、汗腺癌腫、脂腺癌腫、乳頭癌腫、乳頭腺癌腫、嚢胞腺癌腫、髄様癌腫、気管支癌腫、腎細胞癌腫、肝細胞腫、胆管癌腫、絨毛癌腫、精上皮腫、胎生期癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸部癌、精巣腫瘍、肺癌腫、小型細胞肺癌腫、膀胱癌腫、上皮癌腫、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、希突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫などの肉腫および癌腫を含む固形腫瘍を包含する。
【0324】
アポトーシスの上昇に関係する例証的な疾患は、これに限定されるわけではないが、AIDS(HIV誘発性腎症およびHIV脳炎など)、神経変性障害(アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、色素性網膜炎、小脳変性症および脳腫瘍または前の関係する疾患など)、多発性硬化症、シェーグエン症候群、グレーブス病、橋本甲状腺炎、自己免疫糖尿病、胆汁性肝硬変、ベーチェット病、クローン病、多発性筋炎、全身性エリテマトーデス、免疫関連糸球体腎炎、自己免疫性胃炎、血小板減少性紫斑、および関節リウマチなどの自己免疫障害、骨髄増殖性症候群(再生不良性貧血など)、移植片対宿主病(急性および/または慢性)、虚血性傷害(心筋梗塞、脳卒中および再灌流傷害によって引き起こされたものなど)、肝傷害または疾患(たとえば肝炎関連肝傷害、肝硬変,虚血/再灌流傷害、胆汁欝滞(胆管傷害)および肝癌)、毒素誘発性肝疾患(アルコールによって引き起こされたものなど)、敗血症性ショック、潰瘍性大腸炎、悪液質、および拒食症を包含する。
【0325】
なおさらなる実施形態において、本発明の組成物はニューロン/神経疾患または障害の処置に使用され得て、その例証的な例は、パーキンソン病、アルツハイマー病、ピック病、クロイツフェルト−ヤコブ病、ハンチントン舞踏病、交代性片麻痺、筋萎縮性側索硬化症、運動失調、脳性麻痺、慢性疲労症候群、慢性疼痛症候群、先天性神経異常、脳神経疾患、せん妄、認知症、脱髄疾患、自律神経障害、てんかん、頭痛、ハンチントン病、水頭症、髄膜炎、運動障害、筋肉疾患、神経系新生物、神経皮膚症候群、神経変性疾患、神経毒性症候群、眼球運動障害、末梢神経系障害、下垂体障害、孔脳、レット症候群、睡眠障害、脊髄障害、脳卒中、シデナム舞踏病、トゥレット症候群、神経系外傷および傷害などを包含する。ある実施形態において、神経状態は、パーキンソン病などのある神経状態の病因、または関連機構に関わると考えられる神経毒の6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)誘発ニューロン死に関係している。
【0326】
さらに、追加の実施形態は、副腎脳白質ジストロフィ、クラッベ病(球様細胞白質萎縮症)、異染性白質萎縮症、アレキサンダー病、キャナバン病(海綿状変性型白質萎縮症)、ペリツェーウス−メルツバッヒャー病、コケーン症候群、ハーラー病、ロウ症候群、リー病、ウィルソン病、ハレルフォルデン−シュパッツ症候群、テイ−サックス病などの代謝性障害の処置における本発明の組成物の使用に関する。代謝プロセスの調節における本発明の組成物の有用性は、たとえば脂肪細胞脂質生成または脂肪細胞脂肪分解を測定するアッセイを含む、当分野で公知および利用可能な多種多様の技法のいずれかを使用して監視され得る。
【0327】
本発明のさらに特異的な実施形態において、本発明のHRS組成物が使用されて、たとえば細胞シグナル伝達タンパク質を介して細胞シグナル伝達が調節され得る。細胞シグナル伝達は、いくつかの周知のアッセイのいずれを使用しても監視され得る。たとえば一般の細胞シグナル伝達イベントの誘導は、多種多様の標的タンパク質の改変されたホスホリル化パターンを通じて監視することができる。HRSポリペプチドによる細胞の処置に応答した細胞シグナル伝達活性の検出は、その結果、別個の生物効果のインジケータとして作用する。本アッセイに使用される標的タンパク質は、主な細胞シグナル伝達カスケードの主要構成要素を網羅して、これにより細胞シグナル伝達の展望およびその治療関連性のおおまかな状況が提供されるように選択され得る。概して、このようなアッセイは、HRSポリペプチドによる細胞処置、それに続く、標的タンパク質のホスホリル化(活性化)型を特異的に検出する抗体による免疫検出を包含する。
【0328】
治療関連性の細胞シグナル伝達イベントの監視に有用な例証的な標的タンパク質は、これに限定されるわけではないが:p38MAPK(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ;細胞ストレスおよび炎症サイトカインによって活性化された;細胞分化およびアポトーシスに関わる);SAPK/JNK(ストレス活性化タンパク質キナーゼ/Jun−アミノ末端キナーゼ;細胞ストレスおよび炎症サイトカインによって活性化された);Erk1/2、p44/42MAPK(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼErk1およびErk2;多岐にわたる細胞外シグナルによって活性化された;細胞成長および分化の制御に関わる);およびAkt(インスリンおよび各種の成長または生存因子によって活性化される;アポトーシスの阻害、グリコーゲン合成の制御、細胞周期制御および細胞成長に関わる)を包含し得る。チロシン残基の一般的なホスホリル化も、ホスホリル化によって媒介された細胞シグナル伝達の変化の一般的なインジケータとして監視され得る。
【0329】
もちろん、細胞接着分子(たとえばカドヘリン、インテグリン、クローディン、カテニン、セレクチンなど)および/またはイオンチャネルタンパク質などの他のクラスのタンパク質も、本発明の組成物によって調節された細胞イベントまたは活性を監視するためにアッセイされ得ることが認識されるであろう。
【0330】
本発明の他の特異的実施形態において、本発明のHRS組成物が使用されて、細胞によって、たとえば白血球によってサイトカイン産生が調節され得る。サイトカイン産生は、当分野で公知のいくつかのアッセイ(すなわちRT−PCR、ELISA、ELISpot、フローサイトメトリーなど)のいずれを使用しても監視され得る。概して、このようなアッセイは、HRSポリペプチドによる細胞処置、それに続く、サイトカイン産生における変化を測定するためのサイトカインmRNAまたはポリペプチドの検出を包含する。HRSポリペプチドによる細胞の処置に応答したサイトカイン産生の上昇および/または低下の検出は、その結果、別個の生物効果のインジケータとして作用する。本発明のHRSポリペプチドは、サイトカイン産生を調節することによって免疫または炎症応答を誘発、増強および/または阻害し得る。たとえば、本発明のHRSポリペプチドおよび組成物が使用されて、被験体におけるサイトカインプロフィール(すなわち1型対2型)が改変され得る。HRS組成物の生物効果を監視するために測定され得る例証的なサイトカインは、これに限定されるわけではないが、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−10、IL−12、IL−15、IL−18、IL−23、TGF−β、TNF−α、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、RANTES、MIP−1α、MIP−1β、MCP−1、GM−CSF、G−CSFなどを包含する。
【0331】
本明細書で引用されたすべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願がそれぞれ、参照により組み入れられることが特異的および個別に指摘されているかのように、参照により本明細書に組み入れられている。
【0332】
上述の発明は、理解を明瞭にする目的で例証および例示として、いくらか詳細に記載されてきたが、本発明の教示に照らして、添付請求項の精神または範囲から逸脱することなく、本発明にある変化および修飾が行われ得ることが当業者にただちに明らかになるであろう。以下の実施例は、限定するためではなく、例証のためのみに提供される。当業者は、本質的に類似の結果を産するために変化および修飾できる多種多様の重要でないパラメータをただちに認識するであろう。
【実施例】
【0333】
(実施例1)
ヒトヒスチジル−tRNAシンテターゼ(HRS)遺伝子の選択的スプライスバリアント、HRS−SV9の同定
HRS−SV9と呼ばれる、HRS遺伝子の選択的スプライスバリアントを次のようにPCRによって同定した。一方が5’−非翻訳領域およびエクソン1の境界領域を範囲として含み(HRS−BPF:AGTGGACAGCCGGGATGGCAGAGC(配列番号1))、他方がエクソン4の3’端付近である(HRS−P1R:CAGGAAGTCGCCTATCTGAAG(配列番号2))プライマーの対を使用して、University of California Santa Cruz ESTデータベース(EST#BP267368)によって以前に報告されたイントロン2保持スプライシングイベントを探索した。cDNAをテンプレートとして使用するPCR反応生成物は、参照バンド(
図1B、下矢印)よりも大きい別個のバンド(
図1B、上矢印)を生み、このバンドは全長HRS遺伝子から増幅されたフラグメントである(NM_002109.3;配列番号3)。より大きい本バンドはヒト骨格筋cDNAライブラリで検出されたが、HEK293TまたはIMR32細胞からのcDNAライブラリでは検出されず、本スプライスバリアントの組織特異性を指摘している。本バンドを切除して、DNAフラグメントを配列決定のためのゲル精製キットによって抽出した。
【0334】
DNA配列決定により、以前に報告されたようにイントロン2からの挿入を確認したが、エクソン2における報告されたT>C突然変異の証拠がなく、これをHRS遺伝子の別個の選択的スプライスバリアントとした(
図3A)。イントロン2から挿入された配列は、エンコードされたタンパク質配列が全長HRSタンパク質の最初の60アミノ酸のみを有するように、エクソン2の直後に停止コドンを導入する(
図3B)。
図3Cは、HRS−SV9スプライスバリアントの核酸コード配列(配列番号5)およびエンコードされたタンパク質配列(配列番号6)を示す。
【0335】
(実施例2)
ヒトヒスチジル−tRNAシンテターゼ(HRS)遺伝子の選択的スプライスバリアント、HRS−SV11の同定
本実施例において、HRS−SV11と呼ばれる、HRS遺伝子の別の選択的スプライスバリアントも同定された。一方が5’−UTRの3’端およびエクソン1の5’端の境界を範囲として含み(HRS−BPF:AGTGGACAGCCGGGATGGCAGAGC(配列番号1))、他方が3’−UTRの5’端における残基を範囲として含む(HRS−3’−UTR:ATAGTGCCAGTCCCACTTCC(配列番号7))プライマーの対を使用した。cDNAのPCR増幅の後に、参照バンド(
図2B、上矢印)より小さい別個のバンド(
図2B、下矢印)が観察された。バンドを切除して、ゲル精製し、配列決定した。DNA配列決定によって、これがエクソン3〜エクソン10の欠失を含有するHRS遺伝子のスプライスバリアントであることが確認された(
図3A)。本欠失によって、フレームシフトは引き起こされなかった。それゆえタンパク質レベルでは、HRS−SV11は参照HRSタンパク質のN末端WHEPドメインおよびC末端アンチコドンドメインを含むが、アミノアシル化ドメインは消失している(
図3B)。
【0336】
図3Dは、HRS−SV11スプライスバリアントの核酸コード配列(配列番号8)およびエンコードされたタンパク質配列(配列番号9)を示す。
図2Cに示すように、本転写物は、ヒト成人脳、肺、骨格筋およびTHP−1、ジャーカット細胞の全cDNA中に見出された。
【0337】
(実施例3)
スプライスバリアントHRS−SV9およびHRS−SV11は天然型であり得る
これらのスプライスバリアントのタンパク質レベルにおける天然での存在を試験するために、全細胞抽出物を抗HRS抗体によって免疫ブロットした。2つの市販抗体である、アミノ酸1−97からのエピトープを有するモノクローナル抗体(Novus Biologicals)およびC末端付近の50−200アミノ酸中のエピトープを有するポリクローナル抗体(Abcam)を、HEK293T、C2C12、ならびに脛骨筋(速筋を表現する)およびヒラメ筋(遅筋を表現する)を含む成ラットからの筋組織を含む、いくつかの株化細胞によって試験した。N末端抗体およびC末端抗体の両方がHEK293T、成ラット脛骨筋およびヒラメ筋において、HRS−SV11スプライスバリアントポリペプチドの予測されたサイズと一致するサイズを有するバンドを検出した(
図4Aおよび4Bの下矢印)。
【0338】
N末端抗体による免疫沈降によって、分化C2C12筋管において、HRS−SV9スプライスバリアントポリペプチドの予測されたサイズと一致するサイズを有するバンドを検出した(
図5Aの下矢印)。HEK293T細胞またはC2C12分化筋芽細胞ではバンドは検出されなかった。
【0339】
mycタグHRS−SV11を過剰発現するHEK293T細胞の全細胞溶解物も、mycタグHRS−SV11よりわずかに小さいはずである内因性HRS−SV11タンパク質の参照として使用した。
図5Bおよび5Cに示すように、20kDaの辺りを通るが、mycタグHRS−SV11よりもわずかに小さいバンドがIMR32細胞にて両方の抗体によって検出され(BおよびCの下矢印)、内因性HRS−SV11の存在を示唆した。
【0340】
(実施例4)
過剰発現されたときの、HEK293T細胞からのスプライスバリアントHRS−SV9およびHRS−SV11の分泌
本実施例において、HRS−SV9およびHRS−SV11をHEK293T細胞中で強制的に発現させて、これらが細胞から分泌されるか否かを決定した。
【0341】
プラスミド構築のために、野生型HRS、HRS−SV9およびHRS−SV11コード配列を、pCI−neo−myc−myc−Cベクター(Promega,Madison,WI)中にそれぞれEcoRI/XhoIを通じてクローニングした。分泌アッセイでは、HEK293T細胞は、60〜70%コンフルエンシーに達したときに形質移入された。1μgのDNAを125μlのOpti−MEMと混合した。4μlのリポフェクタミン2000を125μlのOpti−MEMと混合した。5分後、DNA−Opti−MEM複合体をリポフェクタミン2000−Opti−MEM複合体に、複数回静かに叩きながら添加した。混合物を室温にて20分間インキュベートして、細胞の上に滴加した。静かにかき混ぜた後、細胞をインキュベータに戻した。細胞培地を6〜7時間後に補充した。形質移入の24時間後、培地を、血清を含まないダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)に変えた。さらに6時間インキュベーションした後に、培地および全細胞抽出物の両方を収集した。培地中のタンパク質を20%TCA(トリクロロ酢酸)によって沈殿させた。培地および全細胞抽出物の両方をNuPAGE Novex 4〜12% Bis−Tris Gel(Invitrogen)で分離して、N末端HRS抗体およびチューブリン抗体(Invitrogen)によって免疫ブロットした。
【0342】
本手法を使用して、HRS−SV9およびHRS−SV11、ならびに全長HRSが培地画分中で検出され、これらがHEK293T細胞から分泌されたことが証明された(
図6)。対照的に、増強された緑色蛍光タンパク質(EGFP)は分泌されなかった(
図6Cを参照)。
図6A〜Bに示すように、チューブリンを漏出性対照として使用した;チューブリンは、全細胞溶解物画分中に存在するが、培地画分中に存在せず、本実験では漏出性は証明されない。
【0343】
(実施例5)
スプライスバリアントHRS−SV9およびHRS−SV11は、活性化T細胞においてIL−2分泌を上昇させる。
【0344】
抗原が抗原提示細胞(APC)によって提示されているとき、T細胞活性化の最も早期に検出可能な応答は、IL−2などのサイトカインの分泌である。自己分泌を通じて、IL−2はT細胞増殖を開始させて、これにより抗原を消失させるのに必要な細胞を生成する。それゆえIL−2分泌の制御因子は、Tリンパ球媒介免疫応答の免疫調節薬として作用する。
【0345】
白血病ジャーカットT細胞(ATCC No:TIB−152)は、活性化の指標としてのIL−2発現および放出を使用する、T細胞活性化研究に幅広く使用されている。T細胞活性化では、ジャーカットT細胞は、ホルボールエステル(PMA)およびイオノマイシン(IOM)によって刺激された。培地中へのIL−2分泌をELISAによって評価した。予想したように、PMAおよびイオノマイシンはジャーカットT細胞を刺激して、用量依存性方式でIL−2を放出させた。
図7に示すように、HRS−SV9およびHRS−SV11は、PMAおよびIOMと同時適用されたときに、IL−2分泌を著しく上昇させた。それゆえHRS−SV9およびHRS−SV11の両方が、予想外の免疫調節活性を呈した。
【0346】
(実施例6)
スプライスバリアントHRS−SV9がPBMCにおけるTNF−
α分泌を刺激する
末梢血単核細胞(PBMC)をヒト血液から単離した。細胞を、10%FBSを有するRPMI培地に1×10
6細胞/mLまで再懸濁させた。細胞100万個を6.25、12.5、25、50、100、および250nMのHRS−SV9によって24時間処置した。PBMCを、1EU/mLリポポリサッカライド(LPS)、PBS、または100nM負の対照タンパク質1もしくは2によっても処置した。24時間後、細胞上清を2000×g、10分間の遠心分離によって採取して、TNF−
α ELISAアッセイ(R&D Systems;Cat.DTA00C)によって評価した。
【0347】
図8に示すように、HRS−SV9はPBMCを刺激して、用量依存性方式でTNF−
αを分泌させた。対照的に、PBSまたは負の対照タンパク質によって処置された細胞は、最小限のTNF−
αを分泌するか、または分泌しなかった((PBS、負の対照1および負の対照2)。TNF−
α分泌の公知の誘発物質であるLPSは1EU/mlにて正のシグナルを生んだ。LPSの最小量がHRS−SV9タンパク質(250nMにて約0.11EU/mL)中に存在していたが、HRS−SV9で観察されたTNF−
αシグナルは、LPSに起因し得るものより上である。本実施例の結果によって、HRS−SV9は、TNF−
α分泌のモジュレータとして作用することが証明される。
【0348】
(実施例7)
HRS−SV11は、ラット皮質ニューロンおよびPC12細胞を6−OHDA誘発ニューロン細胞死から保護する
HRS−SV11転写物はニューロン株化細胞から同定されたため、培養された初代ラット皮質ニューロンおよびPC12細胞を使用することによって、このタンパク質を神経保護アッセイで試験した。使用したアッセイは:(1)パーキンソン病(PD)の病因に関わると考えられている神経毒の6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)誘発ニューロン死;(2)アルツハイマー病を再現する、ベータ−アミロイド(Aβ)誘発ニューロン死(Aβ
1−42型を使用);(3)脳卒中などの多くの神経疾患で観察される、L−グルタミン酸誘発ニューロン死;および(4)MPP+誘発PC12細胞死であった。これらの実験モデルは、徹底的に試験され、ヒト神経疾患に生理学的に関連性であると見なされている。
【0349】
組換えタンパク質の調製。HRS−SV11を停止コドンなしでpET20bベクター(Novagen)のEcoRV/NotI部位にクローニングした。pET2obベクターからのポリヒスチジンタグ(6XHis)をHRS−SV11タンパク質のC末端に付加して、ニッケル−NTAビーズによる精製を可能にした。大腸菌Rosetta株(Novagen)をpET20b−HRS−SV11プラスミドによって形質転換させて、激しく振とうしながらOD
600が0.6〜0.8に達するまで37℃にて成長させた。200μM IPTGを添加して、タンパク質発現を誘発させた。細菌を16℃にて一晩成長させた。
【0350】
次に細菌をペレット化して、1錠の完全EDTA遊離プロテアーゼ阻害薬(Roche)および300mgのリゾチーム(Sigma)を有する50mlの1×Ni−NTA緩衝液(50mMトリス、300mM NaCl、および25mMイミダゾール、pH8.0)に再懸濁させて、回転ホイール上に4℃にて30分間配置した。溶解物は、5”ブレーキを用いた6×10”パルスによって超音波処理した(3サイクルにわたって、振幅を25%から50%から75%へ上昇させる)。次に溶解物を14,000rpm、4℃にて45分間遠心沈殿させた。上清を採取して、50mlカラム内で1ml Ni−NTA樹脂スラリと共に10〜15分間インキュベートした。インキュベーション後、タンパク質ビーズ混合物を、0.1%トリトンX−114を補った1×Ni−NTA緩衝液(50mMトリス、300mM NaCl、25mMイミダゾール、pH8.0)で徹底的に洗浄して、細菌から内毒素を除去した。仕上げ洗浄時に、タンパク質を10ml(1×)のNI−NTA溶離緩衝液(50mMトリス、300mM NaCl、300mMイミダゾール、pH8.0)中で溶離させた。10kDaカットオフslide−a−lyzer(Pierce)中のタンパク質を2×PBSで3回透析して、次に10kDaカットオフAmicon centricon(Fisher)を用いて濃縮した。濃縮したタンパク質を50%グリセロールおよび2mM DTT中で−20℃にて貯蔵した。HRS−SV14および野生型HRSをpET21aベクター中にクローニングして、HRS−SV11と同じやり方で精製した。
【0351】
細胞培養および処置。PC12細胞を8%ウマ血清、8%ウシ胎仔血清、30IU/mlペニシリンおよび30μg/mlストレプトマイシンを補ったダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Invitrogen)中に、37℃、5%CO
2にて維持した。神経保護アッセイでは、PC12細胞を24ウェルプレート中に1.25*10
5細胞/ウェルで播種して、播種の1日後に使用した。
【0352】
初代ラット皮質ニューロンをラット胎仔から胎生期第18日(E18)に単離して、いくつか修正を加えて、先に記載されたように(Brewerら、1995)培養した。簡潔には、皮質を、1mMピルビン酸ナトリウムならびにCa
2+およびMg
2+を含まない10mM HEPES(pH7.4)(Gibco)を補ったハンクス平衡塩類溶液(HBSS)中で切開した。37℃にて15分間トリプシン処理した後に、処置された皮質を平板培地(0.5mM GlutaMAX、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを補った、10%ウマ血清を含むDMEM)で洗浄して、複数回粉砕した。細胞を3分間沈降させて、次に1,200rpm、5分間の遠心分離によってペレット化した。細胞ペレットを1mlの平板培地に懸濁させて、カウントした。1.5×10
5細胞をポリ−L−リジン(0.1mg/ml)コートした24ウェル培養プレートに播種して、37℃、5%CO
2で維持した。4時間後、平板培地を培養培地(Neurobasal培地、0.5mM GlutaMAXおよび(1X)B27サプリメントを補った)と交換した。半分の培地を週1回補充した。別途言及しない限り、実験を第9日にインビトロ(DIV9)で行った。実験の前日に、半分の培地を補充した。
【0353】
薬物処置研究において、薬物を培養培地で希釈して(しかし6−OHDAはH
2Oで希釈した)、次に細胞に適用した。グルタミン酸モノナトリウム(MSG)誘発神経毒性では、ニューロンをMSGに20分間曝露して、培養培地で1回洗浄し、新しい培養培地中で保った。MSGと同時にメマンチンを添加した。ベータ−アミロイド誘発毒性では、Aβ
1−42を37℃にて1日インキュベートして、凝集体を形成して、次に細胞に添加した。過酸化水素誘発毒性では、1錠のH
2O
2を12.5mlのH
2Oに溶解させて、ストックを作製して、次に細胞に添加した。
【0354】
各神経毒のEC
50を決定して、以下の実験で使用した。ニューロンの生存度をMTTおよびLDHアッセイによって測定した。MTTアッセイは、MTTのテトラゾリウム環を切断して、紫色のMTTホルマザン結晶を産する、生存細胞のミトコンドリアデヒドロゲナーゼの利用に基づいているのに対して、LDHアッセイは、膜完全性の破壊による培地中の放出LDHを測定する。MTTアッセイでは、MTTを培地中に0.5mg/mlの最終濃度で添加して、細胞と共に37℃、5%CO
2にて2時間インキュベートした。ミトコンドリアデヒドロゲナーゼは、MTTテトラゾリウム環を切断して、紫色のホルマザン結晶を産する。インキュベーション後、培地を吸引して、500μlのジメチルスルホキシド(DMSO)を添加してホルマザン結晶を可溶化させた。マイクロプレートを静かに振とうして、37℃にて5分間インキュベートした。次に100μlの溶液を取り、96ウェルマイクロプレートを満たして、吸光度を570nm(参照として630nm)にて分光光度計(BMG Labtech,Offenburg,Germany)にて読み取った。相対吸光度(OD570−OD630)を細胞生存度のインジケータとして使用した。
【0355】
LDHアッセイでは、培地中の放出LDHをLDHアッセイキット(Roche)によって、製品説明に従って測定した。培地を採取して、遠心沈殿させた。上清を残し、96ウェルマイクロプレート(MP)の1つのウェルに100μlを満たした。100μlの新たに調製した反応混合物を各ウェルに添加して、培地と共に室温にて15分間インキュベートした。反応混合物の添加後、マイクロプレートに光が当たらないようにした。15分後に、492nmにおける試料の吸光度を分光光度計(BMG Labtech,Offenburg,Germany)によって測定した。200μlのアッセイ培地をバックグラウンド対照として使用した。2%トリトンX−100を正の対照として使用したのは、これがすべての細胞膜を透過して、最大量のLDHを放出するためである。
【0356】
3つの神経保護アッセイの中で、HRS−SV11は、皮質ニューロンをこれらのニューロンがHRS−SV11によって24時間にわたって前処理されたときに、6−OHDA誘発ニューロン死から用量依存性方式で保護したが(
図9A)、Aβ−、L−グルタミン酸−、およびMPP+誘発ニューロン死に対してはほとんど〜まったく効果を有さないことが見出された(
図10)。
【0357】
HRS−SV11は6−OHDA誘発PC12細胞死モデルでも試験したのは、本モデルもPDに関連性があり、十分に特徴づけされているためである。HRS−SV11によるPC12細胞の24時間の前処置の後に、6−OHDAに対して同様の保護が観察された(
図9B〜C)。24時間の前処置に加えて、HRS−SV11はまた、30分間の前処置でも神経保護を及ぼし(
図5D)、HRS−SV11の神経保護には新たなタンパク質合成は必要でないかもしれないことが示唆された。
【0358】
(実施例8)
HRS−SV11は、非細胞外機構を通じてニューロンを保護する
6−OHDAの神経毒性の正確な機構は明らかに理解されていないが、細胞内機構よりもむしろ細胞外機構に有利であるさらなる証拠がある(Blumら、2000;Izumiら、2005;Hanrottら、2006を参照)。6−OHDAは細胞外空間において、p−キノンおよび過酸化水素(H
2O
2)などの反応性酸素種に自動酸化される。HRS−SV11が他の抗酸化剤のように、細胞外空間のH
2O
2およびp−キノンを減少させることによってPC12細胞を保護するか否かを検査するために、細胞遊離系を使用して、p−キノンが490nmにて固有の吸光度を有するという、p−キノンの特性を利用することによって、HRS−SV11の存在下または非存在下でのp−キノンの蓄積を測定した。
【0359】
図11Aに示すように、6−OHDAは試験管中で時間と共に自動酸化され、p−キノンの蓄積を与えた。HRS−SV11の添加によって発生したp−キノンの量は低減されなかったが、公知の酸化防止剤であるビタミンCは、p−キノンの産生を有効に遮断した。本結果は、HRS−SV11が、細胞外空間でp−キノンの発生を直接遮断することによって、6−OHDAの神経毒性を防止するのではなく、代わりに別の機構を利用することを指摘している。
【0360】
HRS−SV11がH
2O
2誘発ニューロン死を遮断するか否かも試験された。H
2O
2は6−OHDAの別の主な酸化生成物であり、6−OHDA誘発PC12細胞死がカタラーゼによって、たいていはH
2O
2を加水分解することによって、遮断されることが示されている(Hanrottら、2006を参照)。
図11Bに示すように、H
2O
2は、皮質ニューロン死を用量依存的に120mM辺りのEC
50で誘発した。しかし、HRS−SV11(1nM〜1μM)によって前処理した皮質ニューロンはH
2O
2(120mM)単独と比較して、ニューロン生存を促進しなかった(
図11C)。本結果は、HRS−SV11が、細胞外空間でのH
2O
2の発生を防止も低減もせず、またはH
2O
2によって開始された細胞内死経路を妨害しないことを示唆している。
【0361】
大半の酸化防止剤は、酸化剤と同時適用されるときに有効である。たとえば、グルタチオンはp−キノンの毒性を無効にして、カタラーゼはH
2O
2の毒性を遮断する。本現象に照らして前の結果を確認するために、HRS−SV11を6−OHDAと同時に適用した。
図11Dに示すように、HRS−SV11の6−OHDAとの同時適用は、皮質ニューロンおよびPC12細胞の両方において救出効果を示さなかった。
【0362】
ウォッシュアウト実験も行った;6−OHDAの適用の前に、ニューロンをPBSで洗浄し、培養培地を補充して、HRS−SV11によるプレインキュベーションの後に残ったいずれのHRS−SV11も除去した。この体制によって、6−OHDAのいずれの直接干渉の確率も低下した。
図11Eに示すように、ウォッシュアウトはHRS−SV11の保護機能に影響しなかった。まとめると、これらのデータによって、HRS−SV11が、6−OHDAまたはその酸化生成物を細胞外で減少させることよりむしろ、代替のシグナル伝達機構を通じて、ニューロン保護を及ぼすことを強く論証する。
【0363】
(実施例9)
HRS−SV11はPC12細胞の6−OHDA誘発アポトーシスを抑制する
アポトーシスは、6−OHDAの毒性の主因であると示唆されてきた(Choiら、1999;Blumら、2001を参照)。核フラグメント化および凝縮は、後期アポトーシスの顕著な特徴である。HRS−SV11の存在下または非存在下の6−OHDAへの曝露後に、Hoechst 33342を使用してアポトーシス細胞を染色および同定した。
図12に示すように、およそ20%のPC12細胞は、200μM 6−OHDAへの8時間の曝露の後に、Hoechst染色によって判別されたように、アポトーシスを被った。HRS−SV11(1000nMにて)の前処置により、アポトーシス細胞の部分が大きく低減された(アポトーシス細胞カウントについては
図12Dを参照)。本結果により、HRS−SV11が、6−OHDAによって誘発されたアポトーシスの抑制を通じてPC12細胞を保護したことが示唆される。
【0364】
(実施例10)
システイン残基がHRS−SV11の神経保護効果に寄与する
HRS−SV11は、3つのシステイン(Cys):Cys117、169および171を含有する。Cys169は最後から3つめのアミノ酸であり、Cys171は最後のアミノ酸である(
図13Aを参照)。Cys169およびCys171は修飾されて、構造研究のためのHRS−SV11の同種モノマー集団を達成した。2つの突然変異体、(1)HRS−SV11_delCおよび(2)HRS−SV11_C2Sが作製された。
【0365】
HRS−SV11_delC変異体(delCと呼ばれる)は、欠失したHRS−SV11中に最後の3つのアミノ酸(Cys169およびCys171を含む)を有する。HRS−SV11_C2S 変異体(C2Sと呼ばれる)は、Cys169およびCys171がセリン残基(Ser)に突然変異した。
【0366】
AKTA FPLCシステム(GE Healthcare)を使用して、タンパク質に分析用ゲル濾過クロマトグラフィーを行った。50mM トリス−HCl pH7.5、100mM NaCl、および1mM DTTを含有する緩衝液によって平衡にされたSuperose 12 10/300 GLカラム(GE Healthcare)に、タンパク質試料を装入した。分析用ゲル濾過によって分析されたように(
図13Bを参照)、HRS−SV11_C2Sはモノマー型に対応する1つのピークを有し、HRS−SV11_delCは2つのピークを有し、大きいピークはモノマーに対応して、小さいピークはダイマーに対応していた。Cys177もSerに修飾され(C117S変異体)、
図13は、本突然変異がHRS−SV11をダイマー型に固定したことを示している。野生型HRS−SV11は、ダイマーとモノマーとの間の型であり、HRS−SV11タンパク質がダイマーとモノマーとの間で動的に切り換わることが示唆された。
【0367】
HRS−SV11突然変異体を6−OHDA誘発PC12細胞死モデルでも試験した。
図13Cに示すように、C2SおよびdelC突然変異体は、野生型HRS−SV11タンパク質で観察された保護機能を消失しており、HRS−SV11の神経保護でのこれらの2つのシステインの重要性が指摘された。
【0368】
(実施例11)
HRS−SV11はJAK2、JNKおよびP38を通じて神経保護を及ぼす
HRS−SV11の神経保護シグナル伝達経路を探査するために、いくつかの特異的化学阻害薬を使用して特異的シグナル伝達分子を妨害した。結果を
図14に示す。阻害薬のパネルから、JAK2(40μM AG490により)、合せたJNKおよびp38(10μM SB202190および10μM SP600125による)の阻害は、HRS−SV11の保護効果を抑制したが、U73122によるホスホリパーゼC(PLC)、またはアルクチゲニンによるMKK、またはJNKもしくはp38単独の阻害は、PC12細胞で効果を有さないことが見出された。これらの結果によって、JAK2、JNKおよびp38のHRS−SV11のシグナル伝達への関与が示唆される。
【0369】
(実施例12)
HRS−SV11はCCR5に結合する
HRS−SV11の神経保護をさらに理解するために、細胞表面上の潜在的な同族受容体を同定した。HRSのアミノ酸1−48(1−48a.a.)を含有する人工フラグメント、ならびに野生型HRSタンパク質は、CCR5発現HEK293T細胞移動を誘発したが、a.a.1−48を含まない欠失突然変異体は誘発しなかった(Howardら、2002)。HRS−SV11は野生型HRSのa.a.1−48を含有しているため、CCR5はHRS−SV11の候補受容体として試験した。
【0370】
ヒトCCR5を増幅して、pEGFP−N1ベクター中にクローニングした。またCCケモカイン受容体である、ヒトCCR1受容体が対照として包含されていた。HEK293T細胞をCCR5−EGFPまたはCCR1−EGFPプラスミドによって形質移入して、形質移入の1日後に細胞をPBSで洗浄し、トリプシンによって培養皿から引き離した。1×10^6細胞をFACSチューブ中の100μl完全培地に入れ、氷上で保った(アッセイの残りの時間、細胞を冷やして保った)。細胞を組換えHRS−SV11タンパク質によって45分間処置した。次に細胞を1mlの染色緩衝液(1×PBS+3%FBS)で1回洗浄して、4℃、400×gにて10分間遠心沈殿した。洗浄後、細胞を100μlの染色緩衝液中の0.3μlの1次抗V5−FITC抗体(3μg/ml)によって暗所にて30分間インキュベートした(アッセイの残りの時間、暗所で保った)。次に細胞を1mlの染色緩衝液で4℃、400×gにて10分間、2回洗浄して、遠心沈殿した。最終洗浄の後、細胞ペレットを800μlの染色緩衝液中に再懸濁させて、FACSによってただちに分析した。
【0371】
CCR5−EGFPおよびCCR1−EGFPタンパク質はどちらも、HEK293T細胞中に形質移入されたときに、予想した通り、細胞膜に適正に局在化された(データは示さず)。蛍光活性化細胞分取(FACS)によって、組換えHRS−SV11タンパク質のCCR5発現HEK293T細胞への適用は、曲線の右へのシフトにより反映されているように、Hisタグ抗体の表面結合を上昇させたが(
図15B)、CCR1発現細胞ではシフトはないことが見出され(
図15D)、CCR5がHRS−SV11の潜在的な受容体であることが示唆された。
図15Cに示すように、このシフトは、CCR5アゴニストであるMet−RANTESによるCCR5発現HEK293T細胞の前処置によって影響されなかった。Met−RANTESはCCR5受容体のN末端に結合するので、本データは、CCR5のN末端が関わるCCR5へのHRS−SV11結合に関わらないことを示唆している。
【0372】
(実施例13)
ヒトヒスチジル−tRNAシンテターゼ(HRS)遺伝子の神経保護選択的スプライスバリアント、HRS−SV14の同定
本実験において、HRS−SV14という名称の、HRS遺伝子の別のスプライシング変異体をヒト胎児脳からネステッドPCRによって同定した(
図16Aを参照、矢印)。第1のPCR反応を設定するために、1μlの第1のストランドcDNA、1×のAdvantage 2 PCR緩衝液(Clontech)、それぞれ200μMのdNTP(Ambion)、それぞれ250pMのフォワードプライマーおよびリバースプライマー(IDT oligo)、ならびに1.25×のAdvantage2ポリメラーゼミックス(Clontech)を含有する10ulの反応混合物を発生させた。第1のPCR用のプライマーは、hsH1−E2F1(5’−TGA AAC TGA AGG CAC AGC TG−3’)(配列番号12)およびhsH1−E13R1(5’−TCT TCT CTT CGG ACA TCC AC−3’)(配列番号13)であった。第1のPCRの熱サイクリンング条件は、95℃にて1分間、続いて95℃にて20秒間を20サイクル、58℃にて30秒間および72℃にて1分間、72℃にて5分間の最終伸長であった。ネステッドPCRのPCR設定および熱サイクリング条件は、ネステッドPCRにおいて、テンプレートが1000倍希釈した第1のPCR生成物であり、プライマーがrnH1−E02F1(5’−AAC AGA AGT TCG TCC TCA AAA C−3’)(配列番号14)およびrnH1−E12J13R2(5’−TCC ACC TCT TCT CTG CTC GTC A−3’)(配列番号15)であることを除いて、第1のPCRと同じであった。ネステッドPCR生成物を電気泳動によって分離した。別個のPCR生成物をNucleoSpin Extract IIキット(Macherey−Nagel)によって単離および精製した。単離PCR生成物は、TOPO TA Cloning Kit for Sequencing(Invitrogen)を使用してクローニングした。PCR生成物が正しく挿入されたプラスミドが得られ、配列決定された。選択的スプライシングイベントを同定するために、PCR生成物の配列をNCBIデータベース中のヒトHARS mRNA配列(アクセション番号NM_002109)に対して整列させた。
【0373】
配列整列は、HRS−SV14転写物がヒトHRS遺伝子のエクソン4からエクソン10まで894bpの欠失を有し(
図16B)、これにより、
図16Cに示すように、HRS−SV14タンパク質が野生型HRSタンパク質のアミノ酸101−398a.a.を欠失することを示した。HRS−SV14は、アミノアシル化ドメインの40a.a.に翻訳されるエクソン3を保持することを除いて、HRS−SV11に類似している。
【0374】
組換えHRS−SV14タンパク質が次に産生され、6−OHDA−誘発PC12細胞死モデルでの神経保護効果について試験した。
図16Dに示すように、500nM HRS−SV14によるPC12細胞の24時間の前処置は、6−OHDAへの曝露時のPC12細胞死を著しく低減し、神経保護のレベルはHRS−SV11の神経保護のレベルと同程度であった。
【0375】
(実施例14)
ヒスチジル−tRNAシンテターゼスプライスバリアントSV9がTHP−1移動を阻害する
ヒスチジル−tRNAシンテターゼのスプライスバリアント(アミノ酸1−60)であるSV9の特性を特徴づけするために、全長ヒスチジル−tRNAシンテターゼおよびそのフラグメント(アミノ酸1−48)の両方について化学誘引特性を示唆する従来の刊行物[Howardら(2002),J.Exp.Med.,196:781−791]に基づいて、移動アッセイを設定した。
【0376】
THP−1細胞(ATCC、カタログ番号TIB−202)を、10%熱不活性化FBS(Invitrogen、カタログ番号10082147)および0.05mM 2−β−メルカプトエタノールを補ったRPMI−1640培地(ATCC、カタログ番号30−2001)中で培養した。細胞密度を2〜4×10
5細胞/mlに保った。移動アッセイの前に、THP−1細胞を遠心分離によって採取して、6×10
6細胞/mlの密度に調整し、6μg/ml Calcein AM(Invitrogen、カタログ番号C3099)を含有する移動緩衝液(0.1%BSAを有するRPMI−1640培地)中で45分間飢餓状態とした。同時に、SV9(または対照としてのPBS)を異なる最終濃度で細胞に添加した。SV9で前処置した100μl細胞(6×10
5細胞を含有)を移動装置の上部チャンバに添加した。600μlのCCL−5を含有する移動緩衝液またはPBS緩衝液を下部チャンバに添加して、細胞を2時間移動させた。下部チャンバに移動した細胞を採取して、100μlのPBSに再懸濁させ、384ウェルの不透明Greinerプレートに移し、プレートリーダーで蛍光を読み取った。
【0377】
図19に示すように、SV9はTHP−1細胞の、CCL−5などの他のリガンドへの移動を予想外に阻害した。
【0378】
(実施例15)
ヒスチジル−tRNAシンテターゼスプライスバリアントSV9がCCR−1媒介THP−1移動を阻害する
SV9の特性をさらに特徴づけするために、CCL−5が3つの受容体CCR1、CCR3およびCCR5に関わっている可能性があるので、移動アッセイを使用して、THP−1細胞の移動の阻害に関わっている受容体SV9を決定した。
【0379】
THP−1細胞(ATCC、カタログ番号TIB−202)を、10%熱不活性化FBS(Invitrogen、カタログ番号10082147)および0.05mM 2−β−メルカプトエタノールを補ったRPMI−1640培地(ATCC、カタログ番号30−2001)中で培養した。細胞密度を2〜4×10
5細胞/mlに保った。移動アッセイの前に、THP−1細胞を遠心分離によって採取して、6×10
6細胞/mlの密度に調整し、6μg/ml Calcein AM(Invitrogen、カタログ番号C3099)を含有する移動緩衝液(0.1%BSAを有するRPMI−1640培地)中で45分間飢餓状態とした。同時に、SV9(または対照としてのPBS)を異なる最終濃度で細胞に添加した。SV9で前処置した100μl細胞(6×10
5細胞を含有)を移動装置の上部チャンバに添加した。600μlの、CCR−1に対する反応性のみが公知であるリガンドであるCCL−23を含有する移動緩衝液、またはPBS緩衝液を下部チャンバに添加して、細胞を2時間移動させた。下部チャンバに移動した細胞を採取して、100μlのPBSに再懸濁させ、384ウェルの不透明Greinerプレートに移し、プレートリーダーで蛍光を読み取った。
【0380】
図20は、SV9がTHP−1細胞のCCL−23への移動を阻害し、その結果、CCR1受容体経路を不活性化する可能性があることを示している。
【0381】
(実施例16)
ヒスチジル−tRNAシンテターゼスプライスバリアントSV9がトル様受容体を活性化する
以前の発見[Parkerら、(2004),J.Immunol.,172:4977−4986]は、トル様受容体活性化がCCR1を下方制御できることを示唆した。我々は細胞ベースリポーターアッセイを使用して、SV9もトル様受容体を活性化するか否かを決定した。
【0382】
各種のトル様受容体を発現するRAW−Blue(商標)細胞(InvivoGen,raw−sp)を、1×HEK−Blue(商標)Selection(InvivoGen,hb−sel)を有する10% FBSを補ったDMEM培地(Invitrogen)中に維持した。アッセイの日に、培地を除去して、細胞をPBSで2回すすいだ。細胞をトリプシン処理するか、またはこすり落として(scrape)、新しい成長培地中に再懸濁させて、おおよそ550,000細胞/mlの細胞懸濁物を調製した。各種の濃度の20μlのSV9、または対照を、内毒素を含まない水などの負の対照を含む平底の96ウェルプレートのウェルに添加した。ウェル当り180μlの細胞懸濁物(おおよそ100,000細胞)を添加して、プレートを37℃にて5%CO
2インキュベータ内で18〜24時間インキュベートした。翌日、QUANTI−Blue(商標)溶液を、メーカーの説明書に従って調製した。160μlの再懸濁QUANTI−Blue(商標)を96ウェルプレートのウェルに移し、続いて40μlの誘発されたRAW−Blue(商標)細胞上清を添加した。次にプレートを37℃にて30分間〜6時間インキュベートした。分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)のレベルを、分光光度計を使用して620〜655nmにて決定した。
【0383】
図21は、SV9タンパク質がRAW−Blue(商標)細胞の表面に存在するトル様受容体を活性化して、SEAPリポーターの産生を刺激することを示す。
【0384】
(実施例17)
ヒスチジル−tRNAシンテターゼスプライスバリアントSV9がトル様受容体4を優先的に活性化する
関わっているトル様受容体SV9をさらに特徴づけするために、TLR−2またはTLR−4のみを発現する細胞を類似のリポーターアッセイで使用した。
【0385】
TLR−2またはTLR−4発現293細胞(InvivoGen、カタログ番号hb2−cells)を、10%FBSおよび1×HEK−Blue(商標)Selection(InvivoGen、カタログ番号hb−sel)を補ったDMEM培地(Invitrogen)中に維持した。アッセイの日に、異なる濃度の20μlのSV9、または対照を平底96ウェルプレートのウェルに添加した。HEK−Blue(商標)−hTLR2またはTLR4細胞の細胞懸濁物を試験培地(DMEM、10%熱不活性化FBS)中5×10
5細胞/mlで調製した。ウェル当り90μlの細胞懸濁物(おおよそ50,000細胞)を添加して、プレートを37℃にてCO
2インキュベータ内で20〜24時間インキュベートした。翌日、QUANTI−Blue(商標)溶液を、メーカーの説明書に従って調製した。180μlの再懸濁QUANTI−Blue(商標)(InvivoGen:カタログ番号rep−qb1)を96ウェルプレートのウェルに移し、続いて20μlの誘発されたHEK−Blue(商標)hTLR2またはTLR4細胞上清を添加した。次にプレートを37℃にて1〜3時間インキュベートした。分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)のレベルを、分光光度計を使用して650nmにて決定した。
【0386】
図22は、SV9タンパク質がTLR2(22A)およびTLR4(22B)の両方を活性化するが、TLR4に対して著しくより強力であることを示している。
【0387】
(実施例18)
ヒスチジル−tRNAシンテターゼスプライスバリアントSV9がMIP−1−アルファ分泌を刺激する
トル様受容体の活性化がMIP−1α分泌を生じて、これが今度は、CCR1の下方制御を開始できることが示されている[Parkerら(2004),J.Immunol.,172:4977−4986]。我々はELISAアッセイを使用して、TLR−2および/またはTLR−4へのSV9の関わりがMIP−1α分泌を生じるか否かを決定した。
【0388】
THP−1細胞(ATCC、カタログ番号TIB−202)を、10%熱不活性化FBS(Invitrogen、カタログ番号10082147)および0.05mM 2−β−メルカプトエタノールを補ったRPMI−1640培地(ATCC、カタログ番号30−2001)中で培養した。
【0389】
細胞を1×10
6/mlの密度で24ウェルプレートに播種して、異なる濃度のSV9またはLPSを各ウェルに添加した。24時間のインキュベーションの後、250gでの遠心分離および上清の除去により、上清を各ウェルから採取した。各試料からのMIP−1αの発現レベルは、メーカーの説明書に従ってヒトCCL3/MIP−1α Immunoassay Quantikineキット(R&D、カタログ番号DMA00)を使用することによって決定した。
【0390】
図23は、SV9がLPSとは異なる動態を有するMIP−1αの分泌を刺激することを示す。
【0391】
上の開示は説明的、例証的、および例示的であり、続いての添付請求項によって定義された範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。