(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸化触媒複合材で、前記第1のウォッシュコート区分は、前記基材の全体の長さにわたって延在し、前記第2のウォッシュコート区分は、前記第1のウォッシュコート区分の少なくとも一部と重複する請求項1に記載の排気ガス処理システム。
前記酸化触媒複合材で、前記第1のウォッシュコート区分は、前記基材の前記長さの5%〜95%に沿って、前記流入端から延在し、前記第2のウォッシュコート区分は、前記基材の前記長さの5%〜95%に沿って、前記流出端から延在する請求項1に記載の排気ガス処理システム。
前記酸化触媒複合材で、前記第1のウォッシュコート区分および前記第2のウォッシュコート区分のうちの一方は、他方と重複する請求項4に記載の排気ガス処理システム。
前記酸化触媒複合材で、前記触媒材料は、メタン成分を含む、改良型燃焼ディーゼルエンジンから排出されるHCおよびCOを酸化するのに効果的であり、前記第1のウォッシュコート層が、改良型燃焼ディーゼルエンジンの作動に関連した高排出および低温条件下で、COおよびHCを酸化するために作用する請求項1に記載の排気ガス処理システム。
前記酸化触媒複合材で、前記第1の耐火金属酸化物支持体および前記第2の耐火金属酸化物支持体のうちの一方または双方は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、およびそれらの組み合わせのうちの1種以上を含み、前記第2の耐火酸化物支持体は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、およびそれらの組み合わせのうちの1種以上を含む請求項1に記載の排気ガス処理システム。
前記酸化触媒複合材で、前記第1および第2のウォッシュコート層のうちの一方または双方は、ゼオライト、アルカリ土類酸化物、希土類酸化物、および卑金属酸化物のうちの1種以上をさらに含む請求項1に記載の排気ガス処理システム。
前記酸化触媒複合材で、貴金族金属成分を含有していないアンダーコート層をさらに含み、前記アンダーコート層は、前記第1のウォッシュコート区分および前記第2のウォッシュコート区分のうちの一方または双方の真下で、前記担体基材に施用される請求項1に記載の排気ガス処理システム。
前記酸化触媒複合材で、前記第1の支持体は、セリアと、ベータゼオライト、ZSM−5、またはゼオライトYから選択されるゼオライトを含む分子篩とを含む請求項1に記載の排気ガス処理システム。
【背景技術】
【0003】
希薄燃焼エンジン、例えば、ディーゼルエンジンおよび希薄燃焼ガソリンエンジンの作動は、使用者に優れた燃費を提供し、燃料希薄条件の下、高い空燃比でのそれらの作動のため、火花点火式化学量論的ガソリンエンジンと比較して、気相炭化水素および一酸化炭素の排出量が非常に低い。ディーゼルエンジンの排出は、粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NO
x)、未燃焼の炭化水素(HC)、および一酸化炭素(CO)を含む。NO
xとは、窒素酸化物の様々な化学種を説明するために使用される用語であり、特に、一酸化窒素(NO)および二酸化窒素(NO
2)が含まれる。
【0004】
ディーゼルエンジン排気ガスおよびガソリンエンジン排気ガスを処理するために使用される触媒システム間で、大きな差異が存在する。2つの種類のエンジンおよびそれらの作動の間の著しい差異は、ガソリンエンジンが、化学量論的空燃比内で火花点火および作動し、ディーゼルエンジンは大過剰の空気を用いて作動する圧縮点火エンジンであることである。これらの2つの種類のエンジンからの排出は非常に異なり、完全に異なる触媒戦略を必要とする。一般的に、ディーゼル排出の処理は、ディーゼルエンジン中での大量のNOxおよび粒子状物質の形成のために、ガソリンエンジン排出処理よりもより複雑である。
【0005】
排気粒子状物質の2つの主要な成分は、可溶性有機成分(SOF)および煤煙割合(煤煙)である。SOFは層中の煤煙上で凝縮し、未燃焼のディーゼル燃料および潤滑油に由来する。SOFは、排気ガスの温度に応じて、蒸気として、またはエアロゾル(液体凝縮液の微細な液滴)としてディーゼル排気の中に存在することができる。煤煙は、主に炭素の粒子から成る。ディーゼル排気からの粒子状物質は、その微細な粒径のため呼吸可能性が極めて高く、より高い暴露レベルでの健康リスクをもたらす。さらに、SOFは多環式芳香族炭化水素を含有し、そのうちのいくつかは発癌物質であることが疑われている。
【0006】
均質予混合圧縮着火(HCCI)等の新しい改良型燃焼技術を利用するディーゼルエンジンは、エンジンシリンダ内の燃焼火炎温度を下げ、かつ点火前の装荷燃料の均一性および混合を高めることによって、エンジンアウトNO
xおよび粒子状物質(PM)の排出を低減することができるようになる。一般的に、任意の処理前に排出される排気ガスは、従来のディーゼルエンジンから排出される排気ガスと比較して、大幅に低減した粒子状物質およびNO
xを含有する。いくつかの事例において、そのような改良型燃焼ディーゼルエンジンからの排出は、従来のディーゼルエンジンからの排出よりも2〜3倍少ない。しかしながら、燃焼プロセスをより低いNO
xおよびPM排出に変更するプロセスでは、COおよび炭化水素(HC)排出の総量が増加し、形成されるHCの性質が変化し(例えば、より多くのメタンが生成され得る)、排気温度が低下し得る。いくつかの事例において、改良型燃焼ディーゼルエンジンからのCOおよびHC排出は、従来のディーゼルエンジンからのHCおよびCO排出よりも約50%〜約100%高い。これらの排気特徴は、現在のディーゼル排気の触媒技術に対して重大な課題をもたらすので、Euro6およびUS Tier2Bin5等のますます厳しくなる環境規制を満たすために、新しい触媒の調合が必要とされる。
【0007】
これらの汚染物質を触媒することによって炭化水素および一酸化炭素のガス状汚染物質の両方を二酸化炭素および水に変換するために、ディーゼルエンジンの排気を処理する際に耐火金属酸化物支持体上に分散する貴金属を含む酸化触媒を使用することは周知である。当該触媒は、一般的に、ディーゼル酸化触媒(DOC)、またはより単純に触媒コンバータもしくは触媒と呼ばれるユニットの中に含有され、排気を大気中に通気する前に排気を処理するように、ディーゼル動力システムからの排気流路の中に配置される。典型的に、ディーゼル酸化触媒は、その上に1つまたは複数の触媒被覆組成物が蒸着される、セラミックまたは金属基板担体(以下に本明細書で説明する、フロースルーモノリス担体等)の上に形成される。ガス状HCおよびCO排出物、および粒子状物質(SOF部分)の変換に加えて、白金族金属(典型的に、耐火酸化物支持体上に分散する)を含有する酸化触媒は、一酸化炭素(NO)のNO
2への酸化を促進する。
【0008】
内燃エンジンの排気を処理するために使用される触媒は、エンジン作動の最初の低温始動期間等の、比較的に低い温度で作動している間はあまり効果的ではないが、これは、エンジン排気が、排気内の有害成分の有効な触媒変換に対して十分に高い温度ではないからである。耐火金属酸化物支持体上に分散する白金族金属を含む酸化触媒を、ディーゼルエンジンからの排気ガス排出を処理する際に使用することは周知である。白金(Pt)は、希薄条件下かつ燃料硫黄の存在下で、高温エージングの後に、DOCの中でCOおよびHCを酸化させるための有効な金属である。一方で、PdリッチDOC触媒は、典型的に、特に(高硫黄含有燃料からの)高レベルの硫黄を含有する排気を処理するために使用する時に、またはHC吸蔵材料とともに使用する時に、COおよびHCの酸化に対してより高い点火温度を示す。特定の成分に対する「点火」温度とは、その成分の50%が反応する温度である。Pd含有DOCは、Ptが炭化水素を変換する、および/またはNO
xを酸化する活動を害し、また、触媒を、硫黄の毒作用の影響をより受けやすくし得る。これらの特徴が、典型的に、特に大部分の走行条件についてエンジン温度が250℃以下に保たれる軽量ディーゼル用途に対して、希薄燃焼作動におけるPdリッチ酸化触媒の使用を妨げてきた。
【0009】
白金(Pt)は、COおよびHCに対して良好な点火特徴を有し、したがって、歴史的に、ディーゼルエンジン排気を減じるために使用される触媒組成物に選択される好適な貴金属であったが、近年、その比較的に低いコストのため、パラジウム(Pd)に対する関心が高まってきている。いくつかの場合において、パラジウムは、硫黄に対してより敏感であり、かつ重量基準で反応性が幾分低いにもかかわらず、白金の所要量を低減するように、DOC触媒で白金と併用することが好適であることが判明した。実際に、PtおよびPdの組み合わせは、Pt単独よりも活性である。DOC触媒におけるパラジウムのより低い反応性のため、その性能を阻害しない方法でパラジウムをDOC触媒の中に配置することを確実にすることが重要である。
【0010】
該組み合わせが酸化状態のままの白金をもたらすので、セリウム等の酸素吸蔵成分は、典型的に、DOCと混合されない。通常のディーゼルエンジンは、常に希薄条件下で作動するので、白金は、活性金属形態に還元されるいかなる機会も持たない。
【0011】
排出規制がより厳しくなる中で、例えばより低い点火温度といった改善された性能を提供するディーゼル酸化触媒システムを開発するという永続的な目的がある。また、例えばパラジウムといったDOCの成分をできる限り効果的に利用するという目的もある。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のいくつかの例示的な実施形態の説明に先立って、本発明は、以下の説明に記載される構成またはプロセスステップの詳細に限定されるものではないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態に対応することができ、様々な方法で実施または実行することが可能である。
【0025】
本発明の実施形態は、ディーゼルエンジン用途、特に改良型燃焼用途でPt/Pd触媒の性能を増大させることができる、触媒区分化戦略の使用を対象とする。均質予混合圧縮着火(HCCI)等の新しい改良型燃焼技術を利用するディーゼルエンジンは、エンジンシリンダ内の燃焼火炎温度を下げ、かつ点火前の装荷燃料の均一性および混合を高めることによって、エンジンアウトNO
xおよび粒子状物質(PM)の排出を低減することができるようになる。しかしながら、燃焼プロセスをより低いNO
xおよびPM排出に変更する際に、COおよび炭化水素(HC)排出の総量が増加し、形成されるHCの性質が変化し(例えば、より多くのメタンが生成され得る)、排気温度が低下し得る。これらの排気特徴は、現在のディーゼル排気の触媒システムに対して重大な課題をもたらすので、Euro6およびUS Tier2Bin5等のますます厳しくなる環境規制を満たすために、新しい触媒技術が必要とされる。
【0026】
白金は、COおよびHCに対して良好な点火特徴を有し、かつディーゼルエンジン排気を減じるための触媒組成物に好適な貴金属であるが、近年、パラジウムは、その比較的に低いコストのため、関心が高まってきている。改良型燃焼エンジンの場合、パラジウムはまた、白金に勝る複数の性能優位性を有し得る。例えば、白金は、高濃度のCOによる阻害(すなわち、毒作用)の影響を受け易く、Ptは、メタン酸化剤として不十分な性能を呈する。しかしながら、パラジウムは、COによって自己阻害されず、かつメタン酸化について白金よりも効果的であることが知られている。改良型燃焼ディーゼルエンジンからは、COおよびメタン排出の増加が予想されるので、Pdの使用は、顕著な利益を有し得る。
【0027】
触媒ウォッシュコートの区分被覆は、しばしば、過渡的エンジン作動下での触媒性能を高めるために、当業者によって利用される。これは、通常、貴金属組成物および/またはある量の貴金属を、担体基材(例えば、モノリシック触媒ハニカム担体)の全体を通して、特定の位置(または区分)に隔離することによって達成される。加えて、区分被覆は、卑金属酸化物ウォッシュコート材料および他のウォッシュコート添加物を、支持貴金属の性能を最も増大する特定の位置に配置することを可能にする。しばしば、COおよびHC酸化のためのより高速な点火を達成するように、増加した量の貴金属(特にPt)を、担体の前方(流入口)部分に局在化させる。パラジウムは、担体の流出口が、一般的に、触媒点火のためより熱くなり、Pdは、熱焼結に対してPtよりも良好な耐性を有するので、しばしば、担体の後方(流出口)部分に局在化させる。本発明の実施形態は、より高い割合のPdを担体の前方区分中に局在化させ、対応するより高い割合のPtを担体の後方区分中に局在化させることによって、ディーゼル用途でのPt/Pd調合の性能を増大することができる、触媒区分化戦略を使用する。この区分化戦略は、改良型燃料ディーゼルエンジンと関連した高レベルのCOおよびHC(特にメタン)を破壊するのに特に役立ち得る。エンジンからのより高レベルのCOおよびHCがPd強化流入口区分上で反応するので、この場所の中の金属部位において予想される対応するより高い局所温度が、全体的により低い排気温度であっても、メタンの酸化を増大させる。加えて、より高いPd強化流入口は、COおよびHCの濃度が高くなった時に、低排気温度でのCOの毒作用の影響を受け難くなる。
【0028】
本発明の区分化戦略は、焼結がより起こり易い可能性がある、担体の最も熱い部分の中に大部分の白金を配置することによって、一般的な通念に反することになる。パラジウムおよび白金の区分配置は、エージング後であっても、驚くほど高いCOおよびHC変換率を伴う触媒成分をもたらした。
【0029】
本発明の種々の実施形態の範囲は、総パラジウムの約50%超が担体基材の前方(流入口)に適用され、総白金の約50%超が後方(流出口)区分に適用される、全ての触媒ウォッシュコート調合および組み合わせを含む。驚くべきことに、パラジウムを全く伴わない流出口区分が、最も大きいCOおよびHC変換率を示す。最も驚くべきことに、本発明の実施形態は、標準ディーゼルエンジンの優れたCOおよびHC変換を示す。
【0030】
1つまたは複数の実施形態において、第2の区分は、実質的に酸素吸蔵成分を含まない。1つまたは複数の実施形態において、第2の区分は、実質的にパラジウムを含まない。1つまたは複数の実施形態において、第1の区分は、実質的に分子篩またはゼオライトを含まない。1つまたは複数の実施形態において、第2の区分は、実質的に非ゼオライト支持貴金属成分を含まない。1つまたは複数の実施形態において、第1の区分および第2の区分のうちの1つまたは複数は、実質的に非貴金属成分を含まない。1つまたは複数の実施形態において、ディーゼル酸化触媒材料は、実質的にNO
x(窒素酸化物)の吸蔵に好適な量の卑金属を含まない。当該卑金属には、Ba、Mg、K、およびLa等が挙げられるが、これに限定されない。他の実施形態において、触媒材料は、ロジウムを含まない。1つまたは複数の実施形態において、ゼオライトは、ベータゼオライト、ZSM−5、またはゼオライトYを含む。
【0031】
本発明の特定の実施形態において、触媒複合材、触媒システム、および方法は、従来のディーゼルエンジンよりもHCおよびCOの高い(いくつかの事例では、50%〜100%高い)排出を有すること、およびNO
xの低い(いくつかの事例では、2〜3倍低い)排出を有することを特徴とし、かつこれらによって従来のディーゼルエンジン排気と区別される、改良型燃焼ディーゼルエンジン排気からの排気ガス排出を処理するのに特に好適である。このように、本発明の一実施形態は、改良型燃焼ディーゼルエンジンからの排気ガス排出の処理のための酸化触媒複合材であって、担体基材であって、ある長さ、流入端および流出端、担体上のディーゼル酸化触媒の触媒材料を有し、該ディーゼル酸化触媒の触媒材料は、第1のウォッシュコート区分および第2のウォッシュコート区分を含む、担体基材を備える、酸化触媒複合材に関する。第1のウォッシュコート区分は、白金(Pt)成分およびパラジウム(Pd)成分のうちの1つまたは複数と、第1の耐火金属酸化物支持体とを含む、ウォッシュコート層を備え、第1のウォッシュコート区分は、担体基材の流入端に隣接する。第2のウォッシュコート区分は、白金成分およびパラジウム成分のうちの1つまたは複数と、第2の耐火金属酸化物支持体とを含む、第2のウォッシュコート層を備え、第2のウォッシュコート層は、担体基材の流出端に隣接し、パラジウム成分の合計の少なくとも約50%が、第1のウォッシュコート区分中に設置され、白金成分の少なくとも50%が、第2のウォッシュコート区分中に設置される。
【0032】
より具体的な実施形態において、第2のウォッシュコート層は、実質的にパラジウムを含まない。より具体的な実施形態において、第1のウォッシュコート層は、PtおよびPdの混合物を含有し、かつ改良型燃焼エンジンの作動と関連した高排出および低温の条件下で、COおよびHCを酸化することに対して活性があり、第1のウォッシュコート層から放出された熱は、ディーゼル排気のメタン成分の酸化に寄与するように利用することができる。一実施形態によれば、排気内の排気ガス成分の燃焼は、メタン成分を酸化させるのに十分な局在的な発熱を発生させるのに十分である。具体的な実施形態において、第1のウォッシュコート層は、基材の上流部分に沿って、流入端から延在し、第2のウォッシュコート層は、基材の下流部分に沿って、流出端から延在する。
【0033】
触媒複合材または触媒物品という記述は、例えばHCおよびCOの酸化を触媒するのに有効である貴金属成分といった、触媒成分を含有する1つまたは複数のウォッシュコート層を有する、例えばハニカム基材といった担体基材を含む、触媒物品を意味する。
【0034】
「本質的にない」、「本質的に含まない」、および「実質的に含まない」という記述は、述べられた材料が、述べられた層の中に意図的に提供されないことを意味する。しかしながら、材料は、ごくわずかであるとみなされる微細な量(すなわち、材料の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、さらには1%未満)が、述べられた層に移入または拡散し得ることを認識されたい。
【0035】
耐火金属酸化物支持体とは、20Åより多い孔、および広い孔分布を有する、支持体粒子のことである。本明細書に定義されるように、当該金属酸化物支持体は、分子篩、特異的にゼオライトを除去する。特定の実施形態において、例えば「ガンマアルミナ」または「活性アルミナ」とも称されるアルミナ支持体材料といった、高表面積耐火金属酸化物支持体を利用することができ、典型的に、1グラムあたり60平方メートル(「m
2/g」)を超え、しばしば、最高で約200m
2/g以上のBET表面積を呈する。当該活性アルミナは、通常、アルミナのガンマ相およびデルタ相の混合物であるが、相当量のイータ相、カッパ相、およびシータアルミナ相を含有してもよい。活性化アルミナ以外の耐火金属酸化物は、所定の触媒の中の触媒成分の少なくとも一部の支持体として使用することができる。例えば、バルクセリア、ジルコニア、アルファアルミナ、および他の材料をそのように使用することは周知である。これらの材料のうちの多くが、活性化アルミナよりも著しく低いBET表面積を有するという不利な点を有するが、この不利な点は、得られる触媒のより高い耐久性または性能の強化によって相殺される傾向にある。「BET表面積」とは、通常、N
2の吸着によって表面積を測定するための、Brunauer−Emmett−Teller法に関するものであるという意味を有する。孔直径および孔容積も、BET式N
2吸着または脱着実験を用いて測定することができる。
【0036】
本明細書で使用される場合、ゼオライト等の分子篩は、粒子形態の支持体触媒貴金属であってもよい材料を指し、該材料は、実質的に均一な孔の分布を有し、平均孔サイズは、大きくても20Åである。触媒層における「非ゼオライト支持体」という記述は、分子篩またはゼオライトでなく、かつ結合、分散、含浸、または他の好適な方法を通して、貴金属、安定剤、促進剤、結合剤等を受ける材料を指す。当該支持体の例には、高表面積耐火金属酸化物が挙げられるが、これに限定されない。本発明の1つまたは複数の実施形態は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、シリカ−アルミナ、ジルコニア−アルミナ、チタニア−アルミナ、酸化ランタン−アルミナ、酸化ランタン−ジルコニア−アルミナ、バリア−アルミナ、バリア−酸化ランタン−アルミナ、バリア−酸化ランタン−ネオジミア−アルミナ、ジルコニア−シリカ、チタニア−シリカ、または、ジルコニア−チタニアから成る群より選択される活性化合物を含む、高表面積耐火金属酸化物支持体を含む。
【0037】
「含浸した」という記述は、貴金属含有溶液を、ゼオライトまたは非ゼオライト支持体などの金属の孔の中に入れることを意味する。詳細な実施形態において、貴金属の含浸は、Incipient Wetness法によって達成され、該方法では、希釈した貴金属含有溶液の容積は、支持体本体の孔の容積に等しい。Incipient Wetness法による含浸は、一般的に、材料の孔系の全体を通して、前駆体の溶液の実質的に均一な分散をもたらす。貴金属を添加する他の方法も、当技術分野で周知であり、用いることができる。
【0038】
OSC(酸素吸蔵成分)という記述は、多価状態を有し、かつ酸化条件下で、酸素または亜酸化窒素等の酸化剤と、または還元条件下で、一酸化炭素(CO)または水素等の還元剤と活発に反応することができる材料を意味する。典型的に、酸素吸蔵成分は、1つまたは複数の希土類金属の1つまたは複数の還元可能な酸化物を含む。好適な酸素吸蔵成分の例には、セリア、ジルコニア、およびその組み合わせが挙げられる。プラセオジミアも、OSCまたは促進剤として含むことができる。OSCは、Y、La、Nd、Sm、Pr、およびその組み合わせ等の、1つまたは複数の促進剤または調節剤を含んでもよい。OSCは、いずれかの層の中に、特に、この状況では、それらの層の中に含有されるPdのための活性剤として含むことができる。
【0039】
「改良型燃焼ディーゼルエンジン」という記述は、従来のディーゼルエンジンと区別され、かつ均質予混合圧縮着火(HCCI)、予混合圧縮着火(PCCI)、および低温燃焼(LTC)エンジンを含み、これらは、エンジンシリンダ内の燃焼火炎温度を下げることによって、および点火前の装荷燃料の均一性および混合を高めることによって作動する。改良型燃焼技術の多数の変形例は、当技術分野で周知であり、上記リストは、全ての変形例を含むことを意味していない。改良型燃焼ディーゼルエンジン排気は、従来のディーゼルエンジンよりもHCおよびCOの高い(いくつかの事例では、50%〜100%高い)排出を有すること、およびNO
xの低い(いくつかの事例では、2〜3倍低い)排出を有することを特徴とし、かつこれらによって従来のディーゼルエンジン排気と区別される。より具体的には、改良型燃焼車両からの排出は、典型的に、新排出ドライビングサイクル(NEDC)で、NO
xが0.18g/km
未満、COが2.5g/km超、HCが0.5g/km超であることを特徴とする。改良型燃焼エンジンでは、粒子状物質も大幅に低減することができる。希薄燃焼改良型燃焼ディーゼルエンジンからの排出は、むしろ火花点火式化学量論ガソリンエンジンからの排出に近いが、エンジンの作動モードが完全に異なり、したがって、排気処理戦略も完全に異なる。当業者に理解されるように、従来のディーゼルエンジンおよびガソリン火花点火式エンジンとは異なる、改良型燃焼ディーゼルエンジンの排気ガス特性およびエンジンの作動モードは、ディーゼルエンジンおよび火花点火式エンジンに従来使用されてきたものとは異なる、HC、CO、およびNO
xの有効な処理のための処理戦略および/または触媒組成物を必要とする。
【0040】
本発明の実施形態によるガス処理物品の構成要素およびシステムの詳細を以下に提供する。
【0041】
担体
1つまたは複数の実施形態によれば、担体は、DOC触媒を調製するために典型的に使用される材料のうちのいずれかであってもよく、好ましくは、金属またはセラミックのハニカム構造を備える。そこを通って流れる流体に対して流路が開口するように、担体の流入面または流出面からそこを通って延在する、複数の微細な並列ガス流路を有する種類のモノリシック担体等の、任意の好適な担体を採用してもよい。それらの流体流入口から流体流出口まで本質的に直線路である通路は、該通路を通って流れるガスが触媒材料と接触するように、触媒材料が「ウォッシュコート」としてその上に被覆される壁によって画定される。モノリシック担体の流路は、台形、長方形、正方形、正弦曲線、六角形、楕円形、円形等の、あらゆる好適な断面形状およびサイズであることができる、薄肉のチャネルである。当該構造は、断面の1平方インチあたり約60〜約600以上のガス流入開口部(すなわち、「セル」)を含有し得る。
【0042】
セラミック担体は、例えばコーディエライト、コーディエライト−アルファアルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュマイト(spodumeite)、アルミナ−シリカマグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、petaHte、アルファアルミナ、アルミノケイ酸塩等の、あらゆる好適な耐火材料でできていてもよい。
【0043】
本発明の層状の触媒複合材に有用な担体は、本質的に金属であってもよく、また、1つまたは複数の金属もしくは合金で構成されていてもよい。金属担体は、波形シートまたはモノリシック形態等の種々の形状で採用されてもよい。好適な金属支持体には、チタニウムおよびステンレス鋼、ならびに鉄が実質的または主要な成分である他の合金等の、耐熱金属および金属合金が挙げられる。当該合金は、ニッケル、クロミウム、および/またはアルミニウムを含有してもよく、これらの材料の総量は、好都合に、合金の少なくとも15重量%を含有してもよく、例えば、10〜25重量%のクロミウム、3〜8重量%のアルミニウム、および最高20重量%のニッケルを含有する。合金はまた、マンガン、銅、バナジウム、チタニウム等の、少量または微量の1つまたは複数の材料を含有してもよい。表面または金属担体は、担体の表面に酸化物層を形成することによって、合金の耐食性を高めるように、例えば1000℃以上といった高温で酸化させてもよい。当該高温誘導の酸化は、担体に対する耐火金属酸化物支持体および触媒促進金属成分の粘着性を増大し得る。
【0044】
触媒複合材の調製
本発明の触媒複合材は、単層または多層で形成されてもよい。いくつかの事例では、それは、触媒材料の1つのスラリーを調製すること、および該スラリーを使用して担体上に多層を形成することに好適であり得る。複合材料は、周知のプロセスによって容易に調製することができる。代表的な方法を以下に記載する。本明細書で使用される場合、「ウォッシュコート」という用語は、当技術分野において、通常、処理されているガス流が通路を通ることを可能にするように十分に多孔性である、ハニカム型担体部材等の基材担体材料に適用される触媒または他の材料の薄い粘着性の被覆を意味する。
【0045】
触媒複合材は、モノリシック担体上の層の中に容易に調製することができる。特定のウォッシュコートの第1の層のために、ガンマアルミナ等の、高表面積耐火金属酸化物の微粉化した粒子を、例えば水といった適切なビヒクルの中でスラリー化する。次いで、担体を当該スラリーの中に1回以上浸漬してもよく、または例えば1浸漬あたり約0.5〜約2.5g/in
3といった所望の金属酸化物の充填量を担体上に蒸着するように、スラリーを担体上に被覆してもよい。貴金属(例えば、パラジウム、ロジウム、白金、および/またはそれら組み合わせ)、および安定剤、ならびに/または促進剤等の成分を組み込むために、当該成分を、水溶性または水分散性の化合物または複合体の混合物として担体を被覆する前に、スラリーに組み込んでもよい。その後に、被覆担体を、例えば400℃〜600℃で約10分〜約3時間、加熱によって焼成する。典型的に、パラジウムが所望される時に、パラジウム成分は、例えば活性アルミナといった耐火金属酸化物支持体上への成分の分散を達成するように、化合物または複合体の形態で利用される。本発明のために、「パラジウム成分」という用語は、焼成時またはその使用時に、通常は金属または金属酸化物である、触媒活性形態に分解あるいは変換する、あらゆる化合物、複合体等を意味する。金属成分を耐火金属酸化物支持体の粒子上に含浸または蒸着するために使用される液体媒体が、触媒成分の中に存在し得る金属、もしくはその化合物、もしくはその複合体、または他の成分と不都合に反応せず、かつ加熱時および/または真空の適用時に蒸発または分解によって金属成分から取り除くことが可能であれば、金属成分の水溶性化合物、または水分散性化合物もしくは複合体を使用してもよい。いくつかの場合において、触媒を使用するために配置して、作動中に起こる高温を受けるまで、液体除去の完了が起こらないことがある。一般的に、経済的側面および環境的側面の双方の観点から、貴金属の可溶性化合物または複合体の水溶液が利用される。好適な化合物の限定的でない例には、硝酸パラジウム、硝酸テトラアンミンパラジウム、塩化白金、および硝酸白金が挙げられる。焼成ステップ中、または少なくとも複合材料の使用の初期段階中に、当該化合物は、金属またはその化合物の触媒活性形態に変換される。
【0046】
本発明の層状触媒複合材の任意の層を調製する好適な方法は、所望の貴金属化合物(例えば、パラジウム化合物)と、後に被覆可能なスラリーを形成するように水と組み合わせられる湿潤固体を形成するために、実質的に全ての溶液を吸収するように十分に乾燥される、例えばガンマアルミナといった、微粉化した高表面積の耐火金属酸化物支持体等の、少なくとも1つの支持体との混合物を調製することである。1つまたは複数の実施形態において、スラリーは、例えば約2〜約7未満のpHを有する、酸性である。スラリーのpHは、十分な量の無機酸または有機酸をスラリーに追加によって下げてもよい。酸および原料の融和性を考慮する時には、両方の組み合わせを使用することができる。無機酸には、硝酸が挙げられるが、これに限定されない。有機酸には、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられるが、これに限定されない。その後、所望であれば、例えば酢酸バリウムといった水溶性もしくは水分散性化合物および/または安定剤、ならびに例えば硝酸ランタンといった促進剤を、スラリーに添加してもよい。
【0047】
一実施形態において、その後、固体の実質的に全てが、平均直径が約20ミクロン未満、すなわち約0.1〜15ミクロンの間の粒径を有するように、スラリーを粉砕する。粉砕は、ボールミルまたは他の類似した装置で達成してもよく、スラリーの固体含量は、例えば、約20〜60重量%、より具体的には、約30〜40重量%であってもよい。
【0048】
担体上への第1の層の蒸着について前述したものと同じ様態で、付加層、すなわち第2および第3の層を調製して第1の層上に蒸着してもよい。
【0049】
被覆した多区分の触媒基材の提供は、例えば米国特許第7,189,376号(参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれる)に記載されているような、当技術分野で周知の方法によって行うことができる。
【0050】
前述のように、パラジウム(Pd)は、その比較的に低いコストのため、DOCでの使用に関心が高まってきている。しかしながら、コストは、自動車用触媒組成物の設計において考慮する唯一の要因ではない。コストに関係なく、特定の触媒材料が、特定のエンジン排気環境の中で毒作用または分解の影響を受けやすい場合、触媒組成物が経時的に害を受ける、または分解するのであれば、その特定の材料は、該触媒組成物に利用されない。改良型燃焼ディーゼルエンジンに関連した実施形態において、Pdは、Ptに勝る複数の性能優位性を有し得る。例えば、Ptは、高濃度のCOによる阻害(すなわち、毒作用)の影響を受け易く、Ptは、メタンの酸化に対して極めて不十分な性能を有する。一方で、Pdは、COによって自己阻害されず、かつメタン酸化についてPtよりも効果的であることが知られている。改良型燃焼ディーゼルエンジンからは、COおよびメタン排出の増加が予想されるので、Pdの使用は、顕著な利益を有し得る。
【0051】
低温始動条件下での不安定な燃焼特性のため、改良型燃焼エンジンは、おそらく、より少ないCOおよびHC排出を生成する従来のモードで始動する。できるだけ迅速に(例えば1〜2分後に)、エンジンを「改良型燃焼モード」にして、エンジンアウトNO
xおよびPM排出を少なくする。触媒は、どちらの作動モード下でも活性を保たなければならず、したがって、非常に極端なCOおよびHC排出を扱うことが可能でなければならない。従来のPtまたはPt/Pdに基づく触媒は、従来のディーゼル作動条件の下で良好なCOおよびHC性能を示しているが、それらの点火温度は、より高いエンジンアウトCOおよびHCレベルとともに大幅に上昇する。さらに、触媒が活性して、「改良型燃焼モード」で作動すると、全体的なエンジンアウト温度が低下しても、これらの成分を効果的に酸化することが可能でなければならない。
【0052】
本発明の1つまたは複数の実施形態に従う触媒複合材は、
図1および2への参照によってより容易に理解することができる。
図1および2は、本発明の一実施形態に従う耐火担体部材2を示す。
図1を参照すると、耐火担体部材2は、円筒状の外面4、上流端面6、および端面6と全く同じである下流端面8を有する円筒形状であり、担体部材2は、その中に形成される複数の微細で平行なガス流路10を有する。
図2に見られるように、流路10は壁12によって形成され、上流端面6から下流端面8まで担体2を通って延在し、流路10は、流体の流れ、例えば、ガス流が、担体2をそのガス流路10を介して縦方向に通ることを可能にするように、遮られていない。
図2でより容易に見られるように、壁12は、ガス流路10が実質的に規則的な多角形、説明される実施形態においては実質的に正方形を有するが、J. C. Dettlingらの1982年6月15日に発行された米国特許第4,335,023号に従って、角丸であるように寸法決めされ、構成されている。当技術分野において、かつ以下でも時に「ウォッシュコート」と称される第1のウォッシュコート層14は、担体部材の壁12上に固着または被膜される。
図2に示されるように、第2のウォッシュコート層16は、上述のように、第1のウォッシュコート層14上に被膜される。一実施形態において、アンダーコート層(図示せず)が、第1のウォッシュコート層の下の基材16に適用されてもよい。
【0053】
図2に示されるように、担体部材は、ガス流路10によって提供される空隙を含み、これらの流路10の断面積および流路を画定する壁12の厚さは、担体部材の種類によって異なる。同様に、かかる担体に適用されるウォッシュコートの重量は、場合によって異なる。故に、ウォッシュコートまたは触媒金属成分あるいは組成物の他の成分の量の説明において、触媒担体の単位体積あたりの成分の重量の単位を使用することが簡便である。したがって、本明細書において、立方インチ当たりのグラム(「g/in
3」)(=0.061g/cm
3)および立方フィート当たりのグラム(「g/ft
3」)(=35.3g/m
3)の単位が、担体部材の空隙の体積を含む、担体部材の体積当たりの成分の重量を意味するために使用される。
【0054】
別の実施形態において、本発明のウォッシュコート層は、第1のウォッシュコート層が上流端上にあり、第2のウォッシュコート層が担体基材の下流端上にあるように区分被膜されてもよい。例えば、上流ウォッシュコート層が、基材の上流領域の一部上を被膜してもよく、下流ウォッシュコート層が、基材の下流部分上を被膜してもよい。かかる実施形態において、本発明の第2または下流ウォッシュコート層は、第1または上流ウォッシュコート層上を少なくとも部分的に被膜してもよい。
【0055】
上流および下流区分を含む触媒複合材の実施形態は、
図3Aから3Dを参照することによってより容易に理解され得る。
図3Aは、エンジンからの排気ガス排出の削減のための酸化触媒複合材20の実施形態を示す。担体基材22、例えば、流入または上流端25、および流出または下流端27、ならびに流入端25と流出端との間で延在している軸長を有するハニカムモノリスは、2つの別個の区分被膜ウォッシュコート層を含む。第1のウォッシュコート層24および第2のウォッシュコート層26が、基材22に適用される。第1のウォッシュコート層24は、流入または上流端25から延在し、1つまたは複数の白金(Pt)およびパラジウム(Pd)成分を含む第1の耐火金属酸化物支持体を含む。第2のウォッシュコート層26は、流出または下流端27から延在し、第2の耐火酸化物支持体、ならびに白金成分およびパラジウム成分のうちの1つまたは複数を備える。
図3Aに示される実施形態において、第2のウォッシュコート区分26は、少なくとも部分的に第1のウォッシュコート区分24と重複する。触媒複合材は、第1のウォッシュコート区分24中に少なくとも約50%の総パラジウム成分、および第2のウォッシュコート区分26中に少なくとも約50%の白金成分を有する。詳細な実施形態において、第2のウォッシュコート層は実質的にパラジウムを含まない。
【0056】
いくつかの具体的な実施形態において、第1のウォッシュコート区分24は基材22の全長を覆い、第2のウォッシュコート区分26で基材22の一部の長さを覆う。他の具体的な実施形態において、第1のウォッシュコート区分24は、基材22の一部の長さを覆い、第2のウォッシュコート区分26は、基材22の全長を覆う。第1のウォッシュコート区分24または第2のウォッシュコート区分26のいずれかがまず基材22に適用されて、他のウォッシュコートをそれと重複させるか、または接触させてもよい。
【0057】
また、上流ウォッシュコート区分24の長さは、上流端から下流端までの触媒部材の長さのパーセントとしても説明することができる。典型的に、上流ウォッシュコート区分24は、基材支持体22の全体の長さの約5%〜約95%から成る。また、例示されるものは、基材22の長さの最大約20%、最大約40%、および最大約60%の上流ウォッシュコート区分24である。下流ウォッシュコート区分26で、基材22の残りの下流部分を覆う。よって、下流ウォッシュコート区分26は、軸長基材22の95%〜約5%から成る。
【0058】
他の実施形態に従って、
図3Bに示されるように、アンダーコート層28が、第1のウォッシュコート区分24または第2のウォッシュコート区分26の前に(最初に適用されるいずれでもよい)、基材に適用されてもよい。具体的な実施形態において、アンダーコート層は、アンダーコート層組成物中に意図的に添加される貴金属成分を有しない。例えば、アンダーコート層は耐火酸化物支持体を含み得る。拡散または移動を通して、第1のウォッシュコート層からのいくつかのパラジウムまたは白金がアンダーコート層28中に存在し得る。第1のウォッシュコート区分24および第2のウォッシュコート区分26の組成物は、
図3Aに関して上述されたとおりであり得る。
【0059】
ここで
図3Cを参照すると、代替的被膜戦略が示される。この実施形態において、第1のウォッシュコート区分24は、流入端から流出端に向かって延在する。第2のウォッシュコート区分26は、第1のウォッシュコート区分に隣接して、かつ第1のウォッシュコート区分から下流に設置される。第1のウォッシュコート区分24は、第2のウォッシュコート区分と少なくとも部分的に重複し得る。一実施形態において、第1のウォッシュコート区分24は、少なくとも1つまたは複数の白金およびパラジウム成分を含む、第1の耐火金属酸化物支持体を含有する。第2のウォッシュコート区分26は、第2の耐火酸化物支持体、および少なくとも1つまたは複数の白金およびパラジウム成分を備える。詳細な実施形態において、総白金と総パラジウムとの比率は、約10:1〜約1:10の範囲である。いくつかの態様の比率は、約10:1〜約1:4、4:1〜約1:10、または1:4〜約4:1であり得る。また、比率は、約3:1〜約1:3、約2:1〜約1:2、および約1:1の範囲内でもあり得る。第1のウォッシュコート区分は、流入端25から基材22の軸長の約5%まで、かつ最大約95%まで延在することができる。第2のウォッシュコート区分26は流出端27から延在し、第2のウォッシュコート区分26は、基材22の軸長の約5%〜約95%延在できる。
【0060】
図3Dは、第1のウォッシュコート区分24および第2のウォッシュコート区分26が、担体基材22の長さに沿って、並んで設置される実施形態を示す。具体的な実施形態の第1のウォッシュコート区分24は、基材22の長さの約5%および約95%の範囲を介して、基材22の流入端25から延在する。第2のウォッシュコート区分26は、基材の軸長の約5%〜約95%にわたって、基材22の流出端27から延在する。第1および第2のウォッシュコート層の組成物は、
図3A〜3Cに関して上述されたとおりであり得る。
【0061】
第1および第2のウォッシュコート層中の成分の好適な充填は、以下のとおりである。
【0062】
第1のウォッシュコート層中のPd成分は、約10g/ft
3〜200g/ft
3の範囲の量で存在し得る(20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、および190g/ft
3を含む)。Pt成分は、約10g/ft
3〜140g/ft
3の範囲の量で存在し得る(20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130g/ft
3を含む)。いくつかの態様において、パラジウムおよび白金の総充填は、約20g/ft
3〜約400g/ft
3の範囲であり得る(30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、および390g/ft
3を含む)。
【0063】
耐火酸化物支持体、例えば、アルミナは約0.1〜約3g/in
3の範囲で存在し得、約0.5g/in
3〜約2g/in
3のより具体的な範囲を伴う。モレキュラーシーブ、例えば、H−ベータゼオライトは約0.1〜約1g/in
3で存在し得、約0.2〜約0.5g/in
3のより具体的な範囲を伴う。第1のウォッシュコート層および/または第2のウォッシュコート層の双方の支持体の様々な実施形態は、1つまたは複数のゼオライト、アルカリ土類酸化物、希土類酸化物、および卑金属酸化物をさらに含む。他の詳細な実施形態において、支持体は、ベータゼオライト、ZSM−5、またはゼオライトYから選択されるゼオライトを含むセリアおよびモレキュラーシーブをさらに含む。
【0064】
本発明のディーゼル酸化触媒(DOC)複合材料は、ディーゼル排気ガス排出の処理のために、1つまたは複数の追加の成分を備える統合された排出処理システムにおいて使用され得る。例えば、排出処理システムは、煤煙フィルタ成分および/または選択的触媒還元(SCR)触媒物品をさらに備え得る。ディーゼル酸化触媒は、煤煙フィルタおよび/または選択的触媒還元成分から上流または下流に設置され得る。
【0065】
排気を処理することに加えて、本発明の酸化触媒の使用を介した排気ガス排出は、粒子状物質を除去するための煤煙フィルタを採用してもよい。煤煙フィルタは、DOCの上流または下流に設置されてもよいが、典型的に、煤煙フィルタは、ディーゼル酸化触媒の下流に設置される。一実施形態において、煤煙フィルタは、触媒煤煙フィルタ(CSF)である。CSFは、捕捉した煤煙を燃焼させるための、および/または排気ガス流排出を酸化するための、1つまたは複数の触媒を含有するウォッシュコート層で被覆した基材を備えてもよい。一般に、煤煙燃焼触媒は、煤煙を燃焼させるためのあらゆる周知の触媒であることができる。例えば、CSFは、未燃焼の炭化水素およびある程度の粒子状物質の燃焼のために、1つまたは複数の高表面積耐火酸化物(例えば、酸化アルミニウムまたはセリア−ジルコニア)で被覆することができる。煤煙燃焼触媒は、1つまたは複数の貴金属(PM)触媒(白金、パラジウム、および/またはロジウム)を含む、酸化触媒であることができる。
【0066】
一般に、例えば、壁流フィルタ、巻回またはパック繊維フィルタ、連続気泡発泡体、焼結金属フィルタ等を含む、あらゆる当技術分野で周知のフィルタ基材を使用することができ、壁流フィルタが好まれる。CSF組成物を支持するのに有用である壁流基材は、基材の縦軸に沿って延在する、複数の微細で実質的に平行なガス流路を有する。典型的に、各通路は、基材本体の一方の端部で遮断され、別の通路は、対向端面で遮断される。このようなモノリシック担体は、1平方インチの断面あたり最高で700以上の流路(また「セル」)を含有してもよいが、より少ない流路を使用してもよい。例えば、担体は、1平方インチ(「cpsi」)あたり、約7〜600、より一般的には約100〜400のセルを有してもよい。セルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、または他の多角形である断面を有することができる。壁流基材は、典型的に、0.002〜0.1インチ(約0.05〜2.54mm)の間の壁厚を有する。好適な壁流基材は、0.002〜0.015インチ(約0.05〜0.38mm)の間の壁厚を有する。
【0067】
典型的な壁流フィルタ基材は、コーディエライト、α−アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、黝輝石、アルミナ−シリカ−マグネシア、もしくは珪酸ジルコニウム、または多孔性耐火金属等の、セラミック類似の材料で構成される。壁流基材は、セラミック繊維複合体材料で形成されてもよい。好適な壁流基材は、コーディエライトおよび炭化ケイ素から形成される。このような材料は、排気流を処理する際に起こる、特に高温の環境に耐えることが可能である。
【0068】
本発明の排気ガス処理システムは、選択的接触還元(SCR)構成要素をさらに含んでもよい。SCR成分は、DOCおよび/または煤煙フィルタの上流または下流に設置されてもよい。好ましくは、SCR構成要素は、煤煙フィルタ構成要素の下流に設置される。排出処理システムで使用するための好適なSCR触媒構成要素は、600℃を下回る温度でNO
x成分を効果的に触媒することが可能であり、よって、典型的に低排気温度と関連した低充填量という条件下であっても、十分なNO
xレベルを処理することができる。好ましくは、触媒物品は、システムに添加される還元剤の量に応じて、NO
x成分の少なくとも50%をN
2に変換することが可能である。組成物の別の望ましい属性は、NH
3が大気に排出されないように、N
2およびH
2へのO
2と任意の過剰なNH
3との反応を触媒する能力を有する。排出処理システムで使用される有用なSCR触媒組成物は、650℃を超える温度に対する耐熱性も持たなければならない。このような高温は、上流側の触媒煤煙フィルタの再生中に起こり得る。
【0069】
好適なSCR触媒組成物は、例えば、米国特許第4,961,917号および第5,516,497号に記載されており、どちらも参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。米国特許第4,961,917号に記載されている組成物は、促進剤にゼオライトを加えた総重量の約0.1〜30重量%、好ましくは約1〜5重量%でゼオライトの中に存在する、鉄および銅の1つまたは双方を含む。N
2へのNO
xとNH
3との還元を触媒するそれらの能力に加えて、開示された組成物はまた、特により高い促進剤濃度を有する組成物に対して、O
2による過剰なNH
3の酸化を促進することもできる。システムはさらに、NO
x吸蔵および解放(NSR)触媒物品を備えてもよい。特定の実施形態において、SCRまたはNSR触媒物品のうちのどちらか一方がシステムに含まれる。
【0070】
一実施形態では、本発明は、ディーゼル排気ガス排出を処理するための1つまたは複数の付加的な構成要素を備える、排出処理システムを対象とする。例示される排出処理システムは、本発明のこの実施形態による排出処理システム32の概略的な代表例を示す
図4を参照することによって、より容易に理解され得る。
図4を参照すると、ガス状汚染物質(例えば、未燃焼炭化水素、一酸化炭素、およびNO
x)および粒子状物質を含有する排気ガス流は、エンジン34から、ライン36を介して、本発明のウォッシュコート組成物で被覆したディーゼル酸化触媒(DOC)38に搬送される。DOC38では、未燃焼ガス状で不揮発性の炭化水素(すなわち、SOF)および一酸化炭素が大幅に燃焼されて、二酸化炭素および水を形成する。加えて、NO
x成分のうちのある割合のNOが、DOCの中でNO
2に酸化される。排気流は、次に、ライン40を介して、排気ガス流内に存在する粒子状物質を捕捉する、触媒煤煙フィルタ(CSF)42に搬送される。CSF42は、随意に、受動的な再生のために触媒される。CSF42を介して粒子状物質を除去した後、排気ガス流は、ライン44を介して、NO
xの処理および/または変換のための下流の選択的接触還元(SCR)構成要素16に搬送される。DOC38は、密結合位置に配置されてもよい。
【0071】
本発明の1つまたは複数の実施形態は、CO、HC、およびNO
xを含むディーゼル排気ガス流を処理するための方法を対象とする。排気ガス流は、最初に、白金成分およびパラジウム成分のうちの1つまたは複数と、耐火金属酸化物支持体とを含むウォッシュコート層を備える、第1のウォッシュコート区分を通過する。排気ガスは、次いで、白金成分およびパラジウム成分のうちの1つまたは複数と、第2の耐火金属酸化物支持体とを含む第2のウォッシュコート層を備える、第2のウォッシュコート区分を通過する。金属は、パラジウムの合計の少なくとも約50%が第1のウォッシュコート層の中にあり、白金の合計の少なくとも約50%が第2のウォッシュコート層の中にあるように分散される。
【0072】
他の実施形態において、ディーゼル排気ガス流は、第2のウォッシュコート層に接触した後に、ディーゼル酸化触媒の下流に設置される触媒煤煙フィルタ(CSF)に方向付けられる。さらなる実施形態において、ディーゼル排気ガス流は、触媒煤煙フィルタ(CSF)に接触した後に、触媒煤煙フィルタ(CSF)の下流に設置される選択的接触還元(SCR)構成要素に方向付けられる。
【0073】
本明細書で開示されるDOC触媒組成物は、安定した密結合触媒として有用であり得る。密結合触媒は、できるだけ早く反応物温度に到達することを可能にするように、エンジンの近くに配置される。具体的な実施形態において、密結合触媒は、3フィート(約91.4cm)以内に配置され、より具体的には、エンジンの1フィート(30.5cm)以内に配置され、さらに具体的には、エンジンから6インチ(15.2cm)未満に配置される。密結合触媒は、しばしば、排気ガスマニホールドに直接的に取り付けられる。密結合触媒は、エンジンの近傍にあるため、好ましくは、高温で安定している。
【0074】
本発明による具体的な実施形態を、以下の実施例で説明する。実施例は、例示的なものに過ぎず、いかなる形であれ本開示の残部を限定することを意図していない。本明細書は、ディーゼルエンジンからの汚染物質の酸化に重点を置いているが、本明細書に記載する酸化触媒は、ガソリンエンジンのCOおよび炭化水素の酸化等の、他の触媒反応に有用である。
【0075】
本発明のいくつかの例示的な実施形態の説明に先立って、本発明は、以下の説明に記載される構成またはプロセスステップの詳細に限定されるものではないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、かつ種々の方法で実施することが可能である。以下、単独で、または限定されない組み合わせで列挙される組み合わせ等を含み、その使用について、本発明の他の態様のシステムおよび方法を含む、層状触媒のための好適な設計を提供する。
【実施例】
【0076】
参照サンプルA
直径4.66インチ(約11.8cm)×長さ6インチ(約15.2cm)のコーディエライトハニカムモノリス基材(400cspi、壁厚4mil)上に、PtおよびPd含有水性スラリーを被覆することによって、ウォッシュコートPt/Pd触媒組成物を、OSC上のPdおよびアルミナ上のPtの均一な混合物で調製した。貴金属の総充填量は、110g/ft
3であり、PtとPdとの比率は、1:2であった。PtおよびPd含有水性スラリーを、以下のように調製した。
【0077】
20%のセリア、6%のネオジミア、6%の酸化ランタン、および68%のジルコニアを含み、かつ約90m
2/gのBET表面積を有するOSC材料に、標準Incipient Wetness技術を使用して、水溶性Pd塩を含浸させた。別途、約150m
2/gのBET表面積、約0.4cc/gの孔容積、および約50Åの平均孔サイズを有する高表面積ガンマアルミナに、標準Incipient Wetness技術を使用して、Pt塩を含浸させた。この粉体に、有機酸をさらに含浸させた。得られたPd/OSCおよびPt/アルミナ含浸粉体を、酢酸ジルコニウム(総スラリー固体の5重量%のZrO
2)を伴うDI水の中に置き、得られた水性スラリーのpHを、有機酸の添加によって3.7に下げた。当技術分野で周知の方法を使用して、90%、10μm未満の粒子サイズに低減した後に、スラリーを、同じく当技術分野で周知の蒸着方法を使用して、コーディエライト基材上に被覆した。被覆モノリスを乾燥させ、次いで、550℃で1時間焼成した。焼成後のウォッシュコートの総充填量は、約1.6g/in
3であり、OSC材料を約1.0g/in
3含み、アルミナを0.5g/in
3含んでいた。同様に、第2の層を第1の層上に適用し、2回被覆したモノリスを乾燥させ、再度、550℃で1時間焼成した。第2の層の焼成後のウォッシュコートの総充填量は、約1.6g/in
3であり、OSC材料を約1.0g/in
3含み、アルミナを0.5g/in
3含んでいた。
【0078】
参照サンプルB
直径4.66インチ(約11.8cm)×長さ6インチ(約15.2cm)のコーディエライトハニカムモノリス基材(400cspi、壁厚4mil)上に、PtおよびPd含有水性スラリーを被覆することによって、ウォッシュコートPt/Pd触媒組成物を、OSC上のPd、アルミナ上のPt、およびベータゼオライトの均一な混合物で調製した。貴金属の総充填量は、150g/ft
3であり、PtとPdとの比率は、1:2であった。PtおよびPd含有水性スラリーを、以下のように調製した。
【0079】
20%のセリア、6%のネオジミア、6%の酸化ランタン、および68%のジルコニアを含み、かつ約90m
2/gのBET表面積を有するOSC材料に、標準Incipient Wetness技術を使用して、水溶性Pd塩を含浸させた。別途、約150m
2/gのBET表面積、約0.4cc/gの孔容積、および約50Åの平均孔サイズを有する高表面積ガンマアルミナに、標準Incipient Wetness技術を使用して、Pt塩を含浸させた。この粉体に、有機酸をさらに含浸させた。得られたPd/OSCおよびPt/アルミナ含浸粉体を、酢酸ジルコニウム(総スラリー固体の5重量%のZrO
2)を伴うDI水の中に置き、得られた水性スラリーのpHを、有機酸の添加によって3.7に下げた。当技術分野で周知の方法を使用して、90%、10μm未満の粒子サイズに低減した後に、乾燥H−ベータゼオライトを添加した。90%、9μm未満のスラリーの粒子サイズにさらに低減した後に、スラリーを、同じく当技術分野で周知の蒸着方法を使用して、コーディエライト基材上に被覆した。被覆モノリスを乾燥させ、次いで、550℃で1時間焼成した。焼成後のウォッシュコートの総充填量は、約1.6g/in
3であり、OSC材料を約0.75g/in
3含み、アルミナを0.5g/in
3含み、H−ベータゼオライトを0.25g/in
3含んでいた。同様に、第2の層を第1の層上に適用し、2回被覆したモノリスを乾燥させ、再度、550℃で1時間焼成した。第2の層の焼成後のウォッシュコートの総充填量は、約1.6g/in
3であり、SC材料を約0.75g/in
3含み、アルミナを0.5g/in
3含み、H−ベータゼオライトを0.25g/in
3含んでいた。
【0080】
参照サンプルC
直径4.66インチ(約11.8cm)×長さ6インチ(約15.2cm)のコーディエライトハニカムモノリス基材(400cspi、壁厚4mil)上に、Pt含有水性スラリーを被覆することによって、ウォッシュコートPt単独触媒組成物を、シリカ−アルミナ上のPtおよびベータゼオライトの均一な混合物で調製した。貴金属の総充填量は、110g/ft
3であった。Pt含有水性スラリーを、以下のように調製した。
【0081】
約120m
2/gのBET表面積、約0.7cc/gの孔容積、および約80Å未満の平均孔サイズを有する高表面積シリカ−アルミナ(5%シリカ)に、標準Incipient Wetness技術を使用して、水溶性Pt塩を含浸させた。この粉体に、有機酸をさらに含浸させた。得られたPt/シリカ−アルミナ含浸粉体を、Hベータゼオライトを伴う水の中に置き、得られた水性スラリーのpHを、有機酸の添加によって4に下げた。当技術分野で周知の方法を使用して、90%、12μm未満の粒子サイズに低減した後に、スラリーを、同じく当技術分野で周知の蒸着方法を使用して、コーディエライト基材上に被覆した。被覆モノリスを乾燥させ、次いで、500℃で1時間焼成した。焼成後のウォッシュコートの総充填量は、約1g/in
3であり、シリカ−アルミナを約0.75g/in
3含み、Hベータゼオライトを0.25g/in
3含んでいた。同様に、第2の層を第1の層上に適用し、2回被覆したモノリスを乾燥させ、再度、500℃で1時間焼成した。第2の層の焼成後のウォッシュコートの総充填量は、約1g/in
3であり、シリカ−アルミナ材料を約0.75g/in
3含み、Hベータゼオライトを0.25g/in
3含んでいた。
【0082】
区分化サンプルD〜G
COおよびHCのNEDC性能を測定した後、参照サンプルA〜Cの前方半分および後方半分に対応する、直径4.66インチ(約11.8cm)×長さ3.0インチ(約7.6cm)の2つの被覆モノリスを作成するために、参照サンプルA、B、およびCのそれぞれを、長さに沿って半分に(すなわち、長さに沿った中間地点で)切断した。次いで、異なる区分化構成をシミュレートするために、比較実施例D、E、F、およびGを生成するように、これらを、特定の組み合わせで背中合わせに組み合わせた。比較実施例Dは、参照サンプルC(Pt単独)の前方半分と、参照サンプルAの後方半分とを備えた。逆に、比較実施例Eは、参照サンプルAの前方半分と、参照サンプルC(Pt単独)の後方半分とを備えた。比較実施例Fは、参照サンプルC(Pt単独)の前方半分と、参照サンプルBの後方半分とを備えた。逆に、比較実施例Gは、参照サンプルBの前方半分と、参照サンプルC(Pt単独)の後方半分とを備えた。新しい「区分化した」比較サンプルD〜Gを、以下に説明するように、参照サンプルA〜Cに類似したCOおよびHC性能について評価した。試験結果を、
図5および6、ならびに表1に示す。
【0083】
サンプルの試験
実施例1〜3で調製した被覆触媒組成物を、以下の様態で試験を行った。最初に、被覆モノリスを、ディーゼル試験エンジンの排気流の中に載置し、次いで、高温ポストインジェクション(PI)エージングを受けさせた。これは、触媒の前方面の温度を400℃に保ち、次いで、触媒の前方で周期的に排気ガス流の中に燃料を注入することによって達成した。注入燃料は、触媒を通過させて、燃焼させ、それによって、触媒の後方面において測定される温度を上昇させた。触媒の後方面での温度は、排気流の中に注入される燃料の量を制御することによって制御した。この方法を使用して、触媒の後方での温度を、25時間にわたって15分間隔で、400℃と700℃との間を反復させた(合計50サイクル)。
【0084】
エージング後、被覆モノリスを、欧州軽量自動車証明局の新排出ドライビングサイクル(NEDC)を用いて、試験エンジンに関するCOおよびHCについて評価を行った。NEDCサイクル上で1.6g/kmのCO排出および0.4g/kmのHC排出の標準的なエンジンアウトである、3L BMW M57エンジン(Euro4較正)の排気流の中に、モノリスを個々に載置した。触媒のCOおよびHC変換を算出するために、エンジンをNEDCサイクルの仕様に従って「運転」した時の、COおよびHC濃度を、被覆モノリスの前方および後方で観察した。試験後、前述のように、実施例D〜Gを調製するために、実施例A〜Cで調製したモノリスを半分に切断した。実施例A〜Gで調製した被覆モノリスの試験結果を、
図5および6、ならびに表1に示す。
【0085】
図5および6に示されるように、区分化サンプルD〜Gのディーゼルエンジンベンチ試験は、逆の構成および貴金属分散で区分被覆したモノリスと比較して、前方区分をPt/Pd触媒ウォッシュコート調合で被覆し、後方区分をPt単独ウォッシュコート調合で被覆したモノリスが、700℃での25時間ポストインジェクションエージング後の、COおよびHC酸化について極めて良好な性能を発揮することを示している。実際に、この新規の被覆方法によって、最新技術のPt単独DOC触媒に等しい結果を達成した(参照サンプルCと比較した比較実施例DおよびF)。Ptは、典型的に後方区分の位置と関連した高温発熱から保護することができる前方区分の中に局在化する時により効果的であると一般的に考えられているので、これらの結果は予想外であった。この新規の区分化戦略の利用は、Pt/Pd触媒がPt単独のものに等しい結果を示すので、DOCの総コストを低減するための有意な機会がある。加えて、この区分化戦略の使用は、改良型燃焼エンジンと関連した高レベルのCOおよびHC(特にメタン)を破壊するのに特に有益であり得る。結果を以下の表に要約する。
【0086】
【表1】
【0087】
記載される種々の実施形態は、標準(Euro4)ディーゼルエンジンに関して例証してきたが、本発明は、標準ディーゼル用途および改良型燃焼ディーゼルエンジンの双方に適用することができる。
【0088】
この明細書の全体を通じた「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つまたは複数の実施形態」、または「実施形態」という記述は、実施形態と関連して記載される具体的な特徴、構造、材料、または特性が、本発明に含まれることを意味する。加えて、この明細書の全体を通じて様々な箇所に現れる「1つまたは複数の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」、または「ある実施形態において」等の表現は、必ずしも本発明の同じ実施形態を参照しているとは限らない。さらに、具体的な特徴、構造、材料、または特性は、1つまたは複数の実施形態においてあらゆる好適な様態で組み合わせてもよい。
【0089】
本発明を特定の実施形態に関して本明細書に記載したが、これらの実施形態は、本発明の原理および用途の単なる例示に過ぎないことを理解されたい。当業者には、本発明の方法および装置には、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、種々の修正および変更が行えることが明らかになるであろう。したがって、本発明が、添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内にある修正および変更を含むことを意図している。