(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730285
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】車両用のエネルギ吸収サイドレール
(51)【国際特許分類】
B62D 21/15 20060101AFI20150521BHJP
【FI】
B62D21/15 C
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2012-508428(P2012-508428)
(86)(22)【出願日】2010年4月20日
(65)【公表番号】特表2012-528752(P2012-528752A)
(43)【公表日】2012年11月15日
(86)【国際出願番号】SE2010000102
(87)【国際公開番号】WO2010126423
(87)【国際公開日】20101104
【審査請求日】2013年4月11日
(31)【優先権主張番号】0900567-9
(32)【優先日】2009年4月28日
(33)【優先権主張国】SE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501426943
【氏名又は名称】イェスタムプ・ハードテック・アクチエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ハンス・ボーディン
【審査官】
田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/123506(WO,A1)
【文献】
特開2009−001121(JP,A)
【文献】
特表平05−505016(JP,A)
【文献】
特開2007−062733(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0201256(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/00−21/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の安全ケージの下側に対し添わされ、配置された後部分(14)及び、車両の安全ケージから突出し、バンパーを支えるように適合される一つの部分(15、16)を有し、その突出する部分が1400MPaを上回る引張強度を有する縦方向S−ベンド(15)と端部で800MPa未満の引張強さを有する、S−ベンドから前方に伸びる部分(16)を含む、車両用のサイドレールであって、S−ベンド(15)から伸びる部分(16)が、S−ベンドに向かって連続的に増加する引張強度を有する部分(20、21、22)を有し、S−ベンドから伸びる部分(16)が、少なくとも0.4mの長さにわたって、1000MPa未満の引張強度を有すること、及び1400MPaを上回る引張強度を有する最外側部分(23)を有することを特徴とする、上記サイドレール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の安全ケージから突出し、バンパーを支えるように適合される一つの端部を有し、1400MPaを上回る引張強度を有する、車両用のサイドレールに関する。
【背景技術】
【0002】
車両、例えば乗用車は、一般的に、車両の底部パネルに熔接される、前部と後部との双方にサイドレールを有し、これらのサイドレールはバンパーを支える。特許文献1には、バンパーを支えるための前部サイドレールを備えた乗用車が記載されており、このサイドレールは、衝突の場合に、サイドレールの軸方向変形の変形トリガとして、作動することになっている、複数の幅の狭い、軟質部分を有す。軟質部分が、硬質部分の変形をトリガする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US6820924B2
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、高張力鋼製のサイドレールの場合においても、大きなエネルギ吸収をもたらす、コントロールされた変形を可能にすることである。これは、安全ケージから突出するサイドレールの端部が、少なくとも0.4mの長さにわたって、1000MPa未満の降伏点をもつ、低強度を有することにより達成される。突出する端部は、好都合には、少なくとも0.2mの長さと800MPa未満の引張強度をもつ外側部分、及び外側部分より高い引張強度をもつ内側部分を有する。内側部分と外側部分の双方は、車両の内側に向かって、次第に、引張強度が増えている、2つ又はそれ以上の部分を含んでいてもよい。
【0005】
本発明は請求項により画成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】車両用の短いサイドレールを示す透視図である。
【
図2】閉プロフィルを与えるカバーを有する、
図1に記載のサイドレールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、開いたU字形状断面及び幅の狭いサイドフランジ12,13を備えた、短い前部サイドレールを示す透視図である。サイドレールは、後部分14のサイドフランジ12,13を、車両の底部パネルに、即ち車両の床に、又は床の下側の部材に、熔接することにより、車両に取り付けられる。一対のサイドレールが、バンパーを支えるようになっている場合、サイドレールは、その前端部がバンパーに対して正しい高さになるように、S−ベンド15を有する。サイドレールの端部は、有利には、熔接端部板(図示されていない)を有してよく、バンパーをこの板にボルト留めすることができる。車両は、安全ケージと呼ばれるもの、及び安全ケージの前と後ろにある変形ゾーンを有す。安全ケージは、通常、車両の前端部にあるカウル・ウォール(cowl wall)から、その後端部にある燃料タンクを越えて伸びる。サイドレールの後部分14とそのS−ベンド15は、安全ケージに付属し、一方サイドレールの前部分16は、前部変形ゾーンに付属する。
【0008】
サイドレールは高張力鋼製であり、有利には、プレスハードニングにより製作することができる。即ち、素材をオーステナイト化温度まで加熱し、熱した状態で、冷却した工具対(tool pair)に移し、そこで熱間鍛造し、次いでそれが硬化するまで、数秒間、放置する。この方法により、1400MPaより高い引張強度がもたらされる。急冷、従って製品の特定部分のフルハードニングは、様々な方法で、例えば工具対と仕上げ品との間に隙間を備えることにより、又は他の冷却工具対の選択部分を加熱することにより、防止することが出来る。
【0009】
衝撃の場合、例えば衝突の場合、高張力鋼は、変形すると、亀裂が入る傾向があり、
図1に示されるサイドレールの前部分16は、より軟質の、即ちサイドレールの残りの部分より低強度である、3つの部分20,21,22を有する。部分20は、最も低い強度を有し、部分21はより高い強度を有し、また、部分22はさらにより高い強度を有する。部分22は、1000MPaより下の引張強度を有する。部分16は、1000MPaより小さい破壊強度、即ち0.4mの長さにわたってサイドレールの残りの部分より著しく低い強度を有する。部分16の最外側端部は、1400MPaを上回る引張強度を備えた、高強度部分25からなっていてもよい。全体では、サイドレールは、少なくとも0.2mの長さにわたって、800MPaより下の引張強度を有する。
【0010】
サイドレールの端部に向かっての軸方向の衝突の場合、最も軟質の部分20は、最初に変形し、衝撃エネルギを吸収することになる。一度でもこの部分が変形してしまうと、部分21が、変形し始めることになり、一度部分21が変形してしまうと、部分22が変形し始めることになる。
【0011】
サイドレールの最外側端部25は、ウィッシュ(wish)がサイドレールへの損傷を全く受けない低速衝突の場合、変形を妨げるために、示されている様に高強度であってよい。
【0012】
短い移行ゾーンが部分20,21,22の間に形成されている。あるいは、部分20,21,22の間に短い高強度ゾーンがあってもよく、その場合短い移行ゾーンは次に、高強度ゾーンのいずれかの側に形成される。
【0013】
S−ベンド15が高張力鋼製であり、サイドレールの前端部16が軟質部分を有するという事実の結果、S−ベンドは、軟質部分が変形されるまで、変形されない。サイドレールに高張力鋼製のS−ベンドをもたせることが出来れば、車両設計が簡易になる。
【0014】
図2は、
図1に示されるものと、同じタイプのサイドレール11の前端部を示すが、この実施例においては、サイドレール11は、サイドフランジに熔接された、平らな高強度のカバー27を有する。カバーは、サイドレールの軟質部分20,21,22に対応する、軟質部分28,29,30を有する。カバーは、サイドレールに閉プロフィルを与え、それによって、サイドレールに、より安定した断面を付与し、S−ベンド15をより強固にする。カバー27が、代わりに、強度のより低い鋼製である場合、カバー全体を、同一強度で設計することができる。カバーは平らである必要はなく、例えば、内側方向に曲がっていてよい。
【0015】
実施例は、異なった強度を有する、3つの軟質部分を備えたサイドレールを示し、ここで、端部に近い部分は、その最も近い軟質部分よりも、より低い強度を有する。あるいは、軟質部分が2つ、又は3つより多く存在してもよい。
【0016】
本発明は、前部サイドレールの例を用いて、開示しているが、後部サイドレールにも適用可能である。