特許第5730308号(P5730308)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730308
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】ホットプレスによる鋼板の成形方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 24/00 20060101AFI20150521BHJP
   B21D 22/20 20060101ALI20150521BHJP
   B30B 15/34 20060101ALI20150521BHJP
   B30B 13/00 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   B21D24/00 M
   B21D22/20 H
   B21D22/20 Z
   B30B15/34 Z
   B30B13/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-525300(P2012-525300)
(86)(22)【出願日】2011年6月21日
(86)【国際出願番号】JP2011003537
(87)【国際公開番号】WO2012011224
(87)【国際公開日】20120126
【審査請求日】2012年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2010-163717(P2010-163717)
(32)【優先日】2010年7月21日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度及び平成21年度 中国経済産業局委託、財団法人ひろしま産業振興機構再委託、地域イノベーション創出研究開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593149797
【氏名又は名称】株式会社今西製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】504010017
【氏名又は名称】株式会社積層金型
(73)【特許権者】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高末 鉄幹
(72)【発明者】
【氏名】石田 恭聡
(72)【発明者】
【氏名】広中 浩二
(72)【発明者】
【氏名】山崎 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】畠山 健一
(72)【発明者】
【氏名】久留主 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 章博
(72)【発明者】
【氏名】中島 敏治
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−136534(JP,A)
【文献】 特開2005−262235(JP,A)
【文献】 特開2009−072801(JP,A)
【文献】 特開2005−059010(JP,A)
【文献】 特開2003−145224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/00−26/14
B30B 13/00
B30B 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱された鋼板を一次成形用金型の上型と下型とで所定時間圧力を加えて上記上型及び下型の加圧面に沿って塑性変形させる塑性加工を施すことにより一次成形品を成形する一次成形工程と、
上記一次成形品を二次成形用金型に搬入して該二次成形用金型の上型と下型とで所定時間機械加工を施すことにより二次成形品を成形する二次成形工程と、
上記二次成形品をサーボモータ制御による油圧式プレスにセットされた冷却用金型に搬入して該冷却用金型の上型と下型とで上記一次成形工程及び二次成形工程よりも長時間に亘って加圧保持することにより焼き入れが行われた最終成形品を得る焼き入れ工程とを順に連続して行い、
上記焼き入れ工程は、上記一次成形工程及び二次成形工程とは連係せずに単独で行われるように設定され、
上記一次成形用金型及び二次成形用金型の少なくとも一方の温度を、温度調節手段により、上記二次成形品の焼き入れ開始温度より低い場合には上昇させる一方、上記二次成形品の焼き入れ開始温度より高い場合には下降させるように調節し、
上記焼き入れ工程で焼き入れが開始してから終了するまでの間、上記一次成形工程及び二次成形工程は共に完了していて、上記一次成形用金型及び二次成形用金型を型開きさせると同時に上記一次成形用金型の下型及び上記二次成形用金型の下型の少なくとも一方から上端部が尖鋭の支持部材を付勢手段の付勢力で加圧面より上方に複数突出させることにより、上記一次成形工程で塑性加工された一次成形品及び二次成形工程で機械加工が施された二次成形品の少なくとも一方を、下型の加圧面から上方に浮き上がらせて上型及び下型の両加圧面と離間させることを特徴とするホットプレスによる鋼板の成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載のホットプレスによる鋼板の成形方法において、
上記一次成形用金型及び二次成形用金型は、機械式プレスで互いに同期して作動することを特徴とするホットプレスによる鋼板の成形方法。
【請求項3】
請求項2に記載のホットプレスによる鋼板の成形方法において、
上記冷却用金型を2つ用意し、一方の冷却用金型で二次成形品を冷却している間に、上記二次成形用金型で次に機械加工が施された二次成形品を他方の冷却用金型に搬入して冷却し、当該他方の冷却用金型で二次成形品を冷却している間に、上記一方の冷却用金型から焼き入れが行われた最終成形品を取り出すことを特徴とするホットプレスによる鋼板の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱した鋼板を塑性加工、機械加工及び冷却を順次行うことにより焼き入れがなされた最終成形品を得るホットプレスによる鋼板の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車業界では、軽量で、且つ、安全性の高い車体構造が求められていて、この要求に対し、板厚を厚くすることなく高強度な車体構造を得るために、ホットプレスによる鋼板の成形方法が注目されている。例えば、特許文献1のホットプレスによる鋼板の成形方法では、1つの金型で複数の工程を経て鋼板から最終成形品を得るようにしている。具体的には、高温に加熱した鋼板を上下から圧力を加えて金型の加圧面に沿って塑性変形させる塑性加工にて一次成形品を得た後、該一次成形品に孔明け等の機械加工を施して二次成形品とし、その後、金型を下死点で保持したまま上記二次成形品を冷却することで焼き入れを行い、高強度の最終成形品を得るようにしている。
【0003】
しかし、特許文献1のホットプレスの場合、塑性加工、機械加工及び冷却を1つの金型で順次行うので、最終成形品を1つ得るのに非常に時間がかかってしまう。
【0004】
そこで、トランスファープレス装置を用いて生産性を高める方法が考えられる。つまり、当該トランスファープレス装置では、塑性加工を施す一次成形用金型、機械加工を施す二次成形用金型及び冷却を行う冷却用金型を順に配置してこれら金型を同期作動させるようになっている。そして、これら金型に鋼板、一次成形品及び二次成形品を順送りすることで、連続して最終成形品を得て生産性を高めている。
【0005】
上記トランスファープレス装置は、一般的に生産性の高い機械式プレスで構成されている。該機械式プレスは、モータによってフライホイールを駆動し、該フライホイールの駆動力をクランク機構により直線運動に変換するようになっている。そして、その動力伝達経路上にクラッチやブレーキが設けられていて、クラッチを繋ぐことによりフライホイールの駆動力がクランク機構に伝わり、プレス機にセットされた金型を上下動させるようになっていて、ブレーキをかけることにより、上記金型の上下動を停止させるようになっている。
【0006】
ところで、ホットプレスにおける二次成形品の冷却(焼き入れ)工程は、他の2つの工程に比べて時間が長くかかる。したがって、トランスファープレス装置で二次成形品を冷却するために冷却用金型を下死点で所定時間保持すると、その他の一次成形用金型及び二次成形用金型も下死点で同じ時間保持されることになり、これでは、一次成形品及び二次成形品が各々の金型に必要以上に接触した状態で保持され、一次成形品及び二次成形品の熱が各々の金型に逃げてしまい、冷却用金型に搬入される直前の二次成形品の温度が焼き入れに必要な焼き入れ開始温度よりも低くなってしまう。
【0007】
これを回避するために、特許文献2のホットプレスによる鋼板の成形方法では、一次成形品及び二次成形品が各々の金型に保持されている状態で、一次成形品及び二次成形品の温度が焼き入れ開始温度より下がることがないように加熱や保温を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−248253号公報(段落0022欄、図2
【特許文献2】特開2007−136533号公報(段落0028欄、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2では、一次成形品及び二次成形品の温度管理に多くのエネルギを費やすため、電気代等のランニングコストが高くなってしまう。
【0010】
また、トランスファープレス装置において冷却工程に機械式プレスを用いると、金型を下死点で停止させようとブレーキをかけても、上型と下型とが接触した際の衝撃により、正規の下死点の停止位置から若干ずれてしまうので、二次成形品を順次冷却用金型で加圧保持する際に、各二次成形品と冷却用金型との接触状態にばらつきが発生してしまい、連続生産において各最終成形品の品質にばらつきが発生してしまうおそれがある。
【0011】
さらに、冷却用金型の上下動の速度を単純に速くすることで生産性向上が見込めるものの、機械式プレスでは、プレス機の動作を速くすると冷却用金型の上下動を停止させるブレーキの効きが悪くなってしまい、加圧保持時の二次成形品と冷却用金型との接触状態にさらにばらつきが発生してしまうおそれがある。
【0012】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エネルギの消費を極力減らしてランニングコストを抑えるとともに、安定した品質の最終成形品を連続して得ることができ、さらには、高い生産性を有するホットプレスによる鋼板の成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、サーボモータ制御の油圧式プレスで冷却用金型の作動を一次成形用金型及び二次成形用金型と連係せずに単独で行うようにしたことを特徴とする。
【0014】
すなわち、第1の発明では、加熱された鋼板を一次成形用金型の上型と下型とで所定時間圧力を加えて上記上型及び下型の加圧面に沿って塑性変形させる塑性加工を施すことにより一次成形品を成形する一次成形工程と、上記一次成形品を二次成形用金型に搬入して該二次成形用金型の上型と下型とで所定時間機械加工を施すことにより二次成形品を成形する二次成形工程と、上記二次成形品をサーボモータ制御による油圧式プレスにセットされた冷却用金型に搬入して該冷却用金型の上型と下型とで上記一次成形工程及び二次成形工程よりも長時間に亘って加圧保持することにより焼き入れが行われた最終成形品を得る焼き入れ工程とを順に連続して行い、上記焼き入れ工程は、上記一次成形工程及び二次成形工程とは連係せずに単独で行われるように設定され、上記一次成形用金型及び二次成形用金型の少なくとも一方の温度を、温度調節手段により、上記二次成形品の焼き入れ開始温度より低い場合には上昇させる一方、上記二次成形品の焼き入れ開始温度より高い場合には下降させるように調節し、上記焼き入れ工程で焼き入れが開始してから終了するまでの間、上記一次成形工程及び二次成形工程は共に完了していて、上記一次成形用金型及び二次成形用金型を型開きさせると同時に上記一次成形用金型の下型及び上記二次成形用金型の下型の少なくとも一方から上端部が尖鋭の支持部材を付勢手段の付勢力で加圧面より上方に複数突出させることにより、上記一次成形工程で塑性加工された一次成形品及び二次成形工程で機械加工が施された二次成形品の少なくとも一方を、下型の加圧面から上方に浮き上がらせて上型及び下型の両加圧面と離間させることを特徴とする。
【0015】
第2の発明では、第1の発明において、上記一次成形用金型及び二次成形用金型は、機械式プレスで互いに同期して作動することを特徴とする。
【0016】
第3の発明では、第2の発明において、上記冷却用金型を2つ用意し、一方の冷却用金型で二次成形品を冷却している間に、上記二次成形用金型で次に機械加工が施された二次成形品を他方の冷却用金型に搬入して冷却し、当該他方の冷却用金型で二次成形品を冷却している間に、上記一方の冷却用金型から焼き入れがなされた最終成形品を取り出すことを特徴とする
【発明の効果】
【0017】
第1の発明では、二次成形品が冷却用金型で加圧保持されているときに、一次成形用金型及び二次成形用金型で成形した一次成形品及び二次成形品を各々の金型の上型及び下型の少なくとも一方の加圧面と非接触状態にできるので、一次成形品及び二次成形品の熱が各々の金型の上型及び下型の少なくとも一方に逃げてしまって二次成形品の温度が焼き入れ開始温度より低くなってしまう事態を回避でき、特許文献2の如き一次成形品及び二次成形品の温度を高く維持するための加熱等によるエネルギの消費を極力減らしてランニングコストを抑えることができる。また、サーボモータ制御の油圧式プレスで冷却用金型を上下動させることにより、冷却用金型の上下動の速度を上げても正規の位置で冷却用金型が停止するようになるので、冷却用金型を下死点の位置でばらつきなく停止させることができ、冷却用金型に二次成形品を搬入してから焼き入れがなされた最終成形品を取り出すまでの時間が速くなって生産性を高くできるとともに、連続して冷却用金型に搬入される各二次成形品と冷却用金型とをばらつきなく圧接させることにより、安定した品質の最終成形品を得ることができる。
【0018】
また、二次成形品が冷却用金型で加圧保持されているときに、一次成形用金型及び二次成形用金型で成形した一次成形品及び二次成形品が各々の金型における上型及び下型の両加圧面に全く接触しなくなるので、上型及び下型の両加圧面からの熱の逃げを確実に防ぎ、二次成形品の温度が焼き入れ開始温度より低くなってしまう事態を回避して、特許文献2の如き一次成形品及び二次成形品の温度を高く維持するための加熱等によるエネルギの消費を一段と減らしてランニングコストを抑えることができる。
【0019】
さらに、外気温の低い生産始動時で一次成形用金型及び二次成形用金型の温度が低い場合や、連続生産時の摩擦熱により一次成形用金型及び二次成形用金型の温度が高くなる場合において、一次成形用金型及び二次成形用金型を焼き入れ開始温度に調節することが可能となり、冷却用金型に搬入する二次成形品の温度のばらつきを抑えることができる。これにより、冷却用金型での最終成形品の焼き入れをばらつきなく行うことができ、安定した品質の最終成形品を得ることができる。
【0020】
第2の発明では、従来より塑性加工や機械加工で多用されている機械式プレスを用いることにより一次成形品及び二次成形品を支障なく成形することができるとともに、油圧式プレスの如き複雑な制御回路を不要とする機械式プレスを用いることによって、生産ライン全体を安価にできる。
【0021】
第3の発明では、一方の冷却用金型で二次成形品を冷却している間に、一次成形用金型及び二次成形用金型でそれぞれ次の一次成形品及び二次成形品が成形されるようになり、一次成形用金型及び二次成形用金型を増やすことなく生産ライン全体の生産量を2倍にすることができ、コンパクトで高い生産性を有する生産ラインにできる
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の参考実施形態1に係る成形方法が適用された生産ラインのレイアウト図であり、図1(a)は平面図を、図1(b)は側面図をそれぞれ示す。
図2】本発明の参考実施形態1に係る成形方法が適用された生産ラインのブロック図を示す。
図3図1のA−A線断面図であり、上型が上昇した一次成形用金型、二次成形用金型及び冷却用金型に鋼板、一次成形品及び二次成形品が搬入されてきた状態を示す。
図4図3の状態から一次成形用金型、二次成形用金型及び冷却用金型の上型を下降させて、一次成形用金型で鋼板の塑性加工を、二次成形用金型で一次成形品の機械加工を、冷却用金型で二次成形品の冷却(焼き入れ)をそれぞれ行っている状態を示す。
図5図4の状態から、一次成形用金型及び二次成形用金型の上型が上昇して成形された一次成形品及び二次成形品が各々の金型の加圧面と離間する一方、冷却用金型が二次成形品の冷却(焼き入れ)を行っている状態を示す。
図6図5の状態から、冷却用金型の上型が上昇して最終成形品が成形された状態を示す。
図7図6の状態から、最終成形品を冷却用金型から取り出し、二次成形品を二次成形用金型から取り出して冷却用金型に搬入し、一次成形品を一次成形用金型から取り出して二次成形用金型に搬入し、鋼板を一次成形用金型に搬入している状態を示す。
図8】本発明の参考実施形態2の図1相当図である。
図9】(a)は図8のB−B線断面図、(b)は図8のC−C線断面図、(c)は図8のD−D線断面図であり、上型が上昇した一次成形用金型、二次成形用金型及び一方の冷却用金型に鋼板、一次成形品及び二次成形品が搬入されてきた状態を示す。
図10図9の状態から一次成形用金型、二次成形用金型及び一方の冷却用金型の上型を下降させて、一次成形用金型で鋼板の塑性加工を、二次成形用金型で一次成形品の機械加工を、一方の冷却用金型で二次成形品の冷却(焼き入れ)をそれぞれ行っている状態を示す。
図11図10の状態から一次成形用金型及び二次成形用金型の上型が上昇して成形された一次成形品及び二次成形品が各々の金型の加圧面と離間するとともに、二次成形品を二次成形用金型から取り出して他方の冷却用金型に搬入し、一次成形品を一次成形用金型から取り出して二次成形用金型に搬入し、鋼板を一次成形用金型に搬入する一方、一方の冷却用金型が二次成形品の冷却(焼き入れ)を行っている状態を示す。
図12図11の状態から一次成形用金型、二次成形用金型及び他方の冷却用金型の上型を下降させて、一次成形用金型で鋼板の塑性加工を、二次成形用金型で一次成形品の機械加工を、他方の冷却用金型で二次成形品の冷却(焼き入れ)をそれぞれ行っている状態を示す。
図13図12の状態から一次成形用金型、二次成形用金型及び一方の冷却用金型の上型が上昇するとともに、最終成形品を一方の冷却用金型から取り出し、二次成形品を二次成形用金型から取り出して一方の冷却用金型に搬入し、一次成形品を一次成形用金型から取り出して二次成形用金型に搬入し、鋼板を一次成形用金型に搬入している状態を示す。
図14】(a)は、本発明の実施形態1に係る成形方法で使用する一次成形用金型のみを抽出した図3相当図であり、(b)は、(a)の状態から一次成形用金型の上型を下降させて鋼板の塑性加工を行っている状態を、(c)は、(b)の状態から、一次成形用金型の上型が上昇して成形された一次成形品が上型及び下型の両加圧面と離間している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
《発明の参考実施形態1》
図1は、本発明の参考実施形態1の生産ライン1を示す。該生産ライン1は、ホットプレスによる鋼板Sの成形を行えるようになっていて、図2に示すように、当該生産ライン1の上流側から順に、成形前の鋼板Sを蓄えておく搬入工程2と、該搬入工程2から搬入された鋼板Sを加熱する加熱工程3と、該加熱工程3で加熱された鋼板Sを所定時間塑性加工を施す一次成形工程4と、該一次成形工程4で成形された一次成形品p1に所定時間孔明け等の機械加工を施す二次成形工程5と、該二次成形工程5で機械加工を施して成形した二次成形品p2を加圧保持して焼き入れを行う焼き入れ工程6と、該焼き入れ工程6で焼き入れが行われた最終成形品Pを取り出して蓄えておく搬出工程7とが略直線上に順に配置されている。尚、上述の塑性加工とは、ドロー成形、フォーム成形及びベンド成形等の加工のことを言う。また、上記二次成形工程5では、孔明け等の機械加工を施す際に、多少の曲げ加工等を行う場合もある。
【0024】
上記搬入工程2は、図示しない切断工程にて適正な形状に切断加工された鋼板Sを複数積層状態で載置する第1パレット20を有している。上記搬入工程2と上記加熱工程3との間には、産業用ロボットである第1ロボットR1が配設されていて、該第1ロボットR1によって、上記第1パレット20上に積み上げられた複数の鋼板Sを順次上記加熱工程3に搬入するようになっている。
【0025】
上記加熱工程3は、生産ライン1の上流側から下流側に沿って延び、上記鋼板Sを加熱する加熱炉30を備えている。該加熱炉30は、下方に設置された下側炉体32と、該下側炉体32と対向するように上方に位置する上側炉体31とを備え、上記下側炉体32には、図示しないが、モータにより回転駆動する複数のローラと、上記上側炉体31との間の雰囲気ガスの温度を高めるヒータとが設けられている。そして、上記第1ロボットR1により加熱炉30の上流側に搬入する鋼板Sを加熱炉30内の複数のローラによって生産ライン1の下流側へと搬送するようになっていて、その間に、当該鋼板Sをヒータによって温度が高められた雰囲気ガスで約800℃〜1000℃の温度に高めるようになっている。
【0026】
上記加熱工程3と上記二次成形工程5との間には、二条の搬送レールSrが上記一次成形工程4を貫いて敷設されていて、該搬送レールSrには、図示しない2つの自動搬送機が移動可能に乗載されている。そして、上記各自動搬送機によって、加熱炉30にて加熱された鋼板Sが一次成形工程4に搬入されると同時に一次成形工程4で塑性加工された一次成形品p1が二次成形工程5に搬入されるようになっている。
【0027】
上記一次成形工程4は、機械式プレス41を備えていて、該機械式プレス41には、上下から圧力を加えて鋼板Sを塑性変形させる塑性加工を施す一次成形用金型42がセットされている。上記機械式プレス41は、図3乃至図6に示すように、上記一次成形用金型42の上型43を下型44に対して上下動させるようになっている。
【0028】
上記下型44には、断面略凸状の下側加圧面44aが形成されていて、上記上型43には、上記下型44の下側加圧面44aに対応する断面略凹状の上側加圧面43aが形成されている。そして、加熱された鋼板Sを下型44の下側加圧面44a上にセットして上型43を下死点まで下降させると、鋼板Sから断面略ハット形状の一次成形品p1が塑性加工されるようになっている。
【0029】
上記一次成形用金型42の下型44内部には、図3乃至図6に示すように、配管46が配設されていて、該配管46には、下型44と図外の貯槽との間で温水等の熱媒体を循環させる駆動部47が接続されている。また、上記一次成形用金型42には、温度センサ48が接続されていている。本発明の温度調節手段45は、上記配管46、上記駆動部47及び温度センサ48によって構成されていて、上記温度センサ48によって一次成形用金型42の温度を検出して、当該一次成形用金型42の温度を二次成形品p2の焼き入れ温度(約650℃)より低い場合に上昇させる一方、上記二次成形品p2の焼き入れ温度より高い場合には下降させるように上記配管46を循環する熱媒体の温度を調節している。
【0030】
上記二次成形工程5は、機械式プレス51を備えていて、該機械式プレス51には、一次成形品p1に孔明け加工を行う二次成形用金型52がセットされている。上記機械式プレス51は、図3乃至図6に示すように、上記機械式プレス41と駆動源が同期していて、一次成形用金型42及び二次成形用金型52は、互いに同期しながら作動するようになっている。
【0031】
上記下型54には、一次成形品p1の裏面側の形状に対応した断面略凸状の下側加圧面54aが形成されていて、その頂部には、ピアス形成用穴54bが形成されている。また、上記上型53には、一次成形品p1の表面側の形状に対応した断面略凹状の上側加圧面53aが形成されていて、その底部には、上記ピアス形成用穴54bに対応するピアス形成用突起53bが突設されている。そして、上記一次成形品p1の裏面側を下型54側にして上記一次成形品p1を上記下型54の下側加圧面54aにセットすると、一次成形品p1の裏面側が上記下側加圧面54aに沿うようになっていて、この状態で上型53を下死点まで下降させると、ピアス形成用穴54b及びピアス形成用突起53bで一次成形品p1に孔明け加工がなされて二次成形品p2が成形されるようになっている。
【0032】
上記二次成形用金型52の下型54内部には、図3乃至図6に示すように、配管56が配設されていて、該配管56には、下型54と図外の貯槽との間で温水等の熱媒体を循環させる駆動部57が接続されている。また、上記二次成形用金型52には、温度センサ58が接続されていている。本発明の温度調節手段55は、上記配管56、上記駆動部57及び温度センサ58によって構成されていて、上記温度センサ58によって二次成形用金型52の温度を検出して、当該二次成形用金型52の温度を二次成形品p2の焼き入れ温度より低い場合に上昇させる一方、上記二次成形品p2の焼き入れ温度より高い場合には下降させるように上記配管56を循環する熱媒体の温度を調節している。
【0033】
上記二次成形工程5と上記焼き入れ工程6との間には、産業用ロボットである第2ロボットR2が配設されていて、該第2ロボットR2によって、上記二次成形工程5で成形された二次成形品p2を順次上記焼き入れ工程6に搬入するようになっている。
【0034】
上記焼き入れ工程6は、油圧式プレス61を備えていて、該油圧式プレス61には、冷却を行う冷却用金型62がセットされている。上記焼き入れ工程6は、上記一次成形工程4及び二次成形工程5とは連係せずに単独で行われるように設定されていて、上記油圧式プレス61は、サーボモータによる制御で作動し、上記冷却用金型62の上型63を下型64に対して上下動させるようになっている。
【0035】
上記下型64には、上記二次成形品p2の裏面側の形状に対応した断面略凸状の下側加圧面64aが形成されていて、上記二次成形品p2の裏面側を下型64側にして上記二次成形品p2を上記下型64の下側加圧面64aにセットすると、二次成形品p2の裏面側が上記下側加圧面64aに沿うようになっている。また、上記上型63には、上記二次成形品p2の表面側の形状に対応した断面略凹状の上側加圧面63aが形成されている。そして、上記冷却用金型62の上型63を下死点まで下降させた状態で、上側加圧面63aと下側加圧面64aとの間に形成される隙間Gは、上記二次成形品p2の板厚よりも若干小さめに設定されている。したがって、二次成形品p2を下型64にセットした状態で上型63を下降させると、冷却用金型62と二次成形品p2の表裏面とが圧接するようになっている。
【0036】
上記上型63及び下型64の内部には、図3乃至図6に示すように、配管66が配設されていて、該配管66には、上型63及び下型64と図外の貯槽との間で冷水を循環させる駆動部67が接続されている。また、上記冷却用金型62には、温度センサ68が接続されている。本発明の冷却手段65は、上記配管66、駆動部67及び温度センサ68によって構成されていて、上記温度センサ68によって冷却用金型62の温度を検出して、焼き入れの際の設定管理温度より高い場合には下降させるように上記配管66を循環する冷水の温度を調節している。
【0037】
上記焼き入れ工程6と上記搬出工程7との間には、産業用ロボットである第3ロボットR3が配設されていて、該第3ロボットR3によって、上記焼き入れ工程6で成形された最終成形品Pを順次上記搬出工程7に取り出すようになっている。
【0038】
上記搬出工程7は、上記焼き入れ工程6で成形された最終成形品Pを載置する第2パレット70を有していて、上記焼き入れ工程6で順次成形される最終成形品Pを複数積み上げて載置できるようになっている。
【0039】
次に、生産ライン1でホットプレスにより鋼板Sから最終成形品Pを製造する方法について説明する。
【0040】
図3は、一次成形用金型42に加熱炉30で加熱された鋼板Sを、二次成形用金型52に上記一次成形用金型42で成形された一次成形品p1を、冷却用金型62に上記二次成形用金型52で成形された二次成形品p2をそれぞれ搬入した状態を示す。
【0041】
この図3に示す状態から、まず図4に示すように、一次成形用金型42の上型43及び二次成形用金型52の上型53が同期して下降するとともに、冷却用金型62の上型63も上記上型43、53と同じタイミングで下降する。そして、一次成形用金型42で鋼板Sから一次成形品p1が成形され、二次成形用金型52で一次成形品p1から二次成形品p2が成形されるとともに、二次成形品p2が冷却用金型62で加圧保持されて焼き入れが開始される。
【0042】
次に、図5に示すように、冷却用金型62の上型63が下降したままで二次成形品p2の焼き入れがなされている状態で、上記冷却用金型62とは連係せずに、上記一次成形用金型42の上型43と二次成形用金型52の上型53とが互いに同期して上昇し、一次成形工程4で塑性加工が施された一次成形品p1及び二次成形工程5で孔明け加工が施された二次成形品p2は、各々の下型44、54の下側加圧面44a、54aに接触した状態で、各々の上型43、53の上側加圧面43a、53aと離間する。したがって、二次成形品p2が冷却用金型62で加圧保持されているときに、一次成形用金型42及び二次成形用金型52で成形した一次成形品p1及び二次成形品p2を各々の上型43、53の上側加圧面43a、53aと非接触状態にできるので、一次成形品p1及び二次成形品p2の熱が各々の上型43、53の上側加圧面43a、53aに逃げてしまって二次成形品p2の温度が焼き入れ温度より低くなってしまう事態を回避でき、特許文献2の如き一次成形品p1及び二次成形品p2の温度を高く維持するための加熱等によりエネルギの消費を極力減らしてランニングコストを抑えることができる。
【0043】
尚、一次成形工程4で塑性加工が施された一次成形品p1及び二次成形工程5で孔明け加工が施された二次成形品p2が、型開き状態で各々の上型43、53の上側加圧面43a、53aに接触し、各々の下型44、54の下側加圧面44a、54aと離間する状態となるような金型構造の場合においても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0044】
次いで、図5の状態から所定時間経過後、冷却用金型62で焼き入れが終了して最終成形品Pが成形され、図6に示すように、冷却用金型62の上型63が上昇する。しかる後、第3ロボットR3によって冷却用金型62から最終成形品Pを取り出し、第2ロボットR2によって二次成形用金型52から二次成形品p2を取り出して冷却用金型62に搬入し、これと併行して自動搬送機(図示せず)によって一次成形用金型42から一次成形品p1を取り出して二次成形用金型52に搬入し、そして、自動搬送機(図示せず)によって加熱炉30から鋼板Sを取り出して一次成形用金型42に搬入する。このように、一次成形工程4と、二次成形工程5と、焼き入れ工程6とを順に連続して行うことにより、最終成形品Pが流れ作業的に成形される。
【0045】
上記最終成形品Pを連続成形する際、上記温度調節手段45、55は、外気温の低い生産始動時で一次成形用金型42及び二次成形用金型52の温度が低い場合には上昇させるように、連続生産時の摩擦熱により一次成形用金型42及び二次成形用金型52の温度が高くなる場合には下降させるように配管46、56を循環する熱媒体の温度を調節している。したがって、温度調節手段45、55によって、一次成形用金型42及び二次成形用金型52を焼き入れ開始温度に調節することが可能となり、冷却用金型62に搬入する二次成形品p2の温度のばらつきを抑えることができる。これにより、冷却用金型62での最終成形品Pの焼き入れをばらつきなく行うことができ、安定した品質の最終成形品Pを得ることができる。
【0046】
以上より、本発明の参考実施形態1によれば、サーボモータ制御の油圧式プレス61で冷却用金型62を上下動させることにより、冷却用金型62の上下動の速度を上げても正規の位置で冷却用金型62が停止するようになるので、冷却用金型62を下死点の位置でばらつきなく停止させることができ、冷却用金型62に二次成形品p2を搬入してから焼き入れがなされた最終成形品Pを取り出すまでの時間が短くなって生産性を高くできるとともに、連続して冷却用金型62に搬入される各二次成形品p2と冷却用金型62とがばらつきなく圧接されることにより、安定した品質の最終成形品Pを得ることができる。
【0047】
また、従来より塑性加工や機械加工で多用されている機械式プレス41、51を用いることにより、一次成形品p1及び二次成形品p2を支障なく成形することができるとともに、油圧式プレス61の如き複雑な制御回路を不要とする機械式プレス41、51を用いることによって、生産ライン1全体を安価にできる。
【0048】
尚、本参考実施形態1では、一次成形用金型42及び二次成形用金型52を温めるのに温水等の熱媒体を用いているが、これに限らず、例えば、通電発熱により温めるようにしてもよい。
【0049】
また、一次成形工程4及び二次成形工程5では、機械式プレス41、51を用いているが油圧式プレスを用いて一次成形品p1及び二次成形品p2を成形してもよい。
【0050】
また、一次成形工程4及び二次成形工程5では、一次成形用金型42及び二次成形用金型52の上型43、53の上下動の動きを互いに同期させているが、それぞれ同期しないようにしてもよい。
【0051】
また、本参考実施形態1の加熱炉30では、雰囲気ガスを高温にすることによって、鋼板Sを加熱するようにしているが、これに限らず、例えば、誘導加熱等による加熱方法を用いてもよい。
【0052】
また、一次成形工程4から二次成形工程5への一次成形品p1の搬入及び加熱工程3から一次成形工程4への鋼板Sの搬入を自動搬送機(図示せず)を用いて行っているが、産業用ロボットを用いて搬入するようにしてもよい。
【0053】
また、本参考実施形態1では、一次成形用金型42及び二次成形用金型52の下型44、54にのみ配管46、56を配設して各金型の温度調節を行うようにしているが、上型43、53に配管46、56を配設して温度調節を行うようにしてもよい。
【0054】
また、一次成形用金型42及び二次成形用金型52に温度調節手段45、55がそれぞれ設けられているが、少なくとも一方の温度を調節できるようにすればよい。
《発明の参考実施形態2》
図8は、本発明の参考実施形態2の生産ライン1を示す。参考実施形態2の生産ライン1は、搬入工程2、加熱工程3、焼き入れ工程6及び搬出工程7がそれぞれ2つ並設されている点が参考実施形態1と異なっていて、その他は同じであるので、異なる部分を詳細に説明する。
【0055】
上記並設された搬入工程2と加熱工程3とのそれぞれの間には、第1ロボットR1がそれぞれ配設され、上記並設された焼き入れ工程6と搬出工程7とのそれぞれの間には、第3ロボットR3がそれぞれ配設されている。また、2つの加熱工程3と一次成形工程4との間には、各加熱工程3から一次成形工程4にまで延びる搬送レールSrが中途で繋がっていて、各加熱工程3で加熱された鋼板Sを順に一次成形工程4へと搬入できるようになっている。
【0056】
次に、参考実施形態2の生産ライン1でホットプレスにより鋼板Sから最終成形品Pを製造する方法について説明する。
【0057】
図9は、一次成形用金型42に加熱炉30で加熱された鋼板Sを、二次成形用金型52に上記一次成形用金型42で成形された一次成形品p1を、2つの冷却用金型62のうちの一方の冷却用金型62に上記二次成形用金型52で成形された二次成形品p2をそれぞれ搬入した状態を示す。
【0058】
この図9に示す状態から、まず図10に示すように、一次成形用金型42の上型43及び二次成形用金型52の上型53が同期して下降するとともに、一方の冷却用金型62の上型63も上記上型43、53と同じタイミングで下降する。そして、一次成形用金型42で鋼板Sから一次成形品p1が成形され、二次成形用金型52で一次成形品p1から二次成形品p2が成形されるとともに、二次成形品p2が一方の冷却用金型62で加圧保持されて焼き入れが開始される。
【0059】
次に、図11に示すように、一方の冷却用金型62の上型63が下降したままで二次成形品p2の焼き入れがなされている状態で、上記一方の冷却用金型62とは連係せずに、上記一次成形用金型42の上型43と二次成形用金型52の上型53とが互いに同期して上昇し、一次成形工程4で塑性加工を施された一次成形品p1及び二次成形工程5で孔明け加工が施された二次成形品p2は、各々の上型43、53の上側加圧面43a、53aと離間する。
【0060】
次いで、第2ロボットR2によって二次成形用金型52から二次成形品p2を取り出して他方の冷却用金型62に搬入し、これと併行して自動搬送機(図示せず)によって一次成形用金型42から一次成形品p1を取り出して二次成形用金型52に搬入し、そして、自動搬送機(図示せず)によって加熱炉30から鋼板Sを取り出して一次成形用金型42に搬入する。
【0061】
しかる後、図12に示すように、一次成形用金型42の上型43及び二次成形用金型52の上型53が同期して下降するとともに、他方の冷却用金型62の上型63も上記上型43、53と同じタイミングで下降し、一次成形用金型42で鋼板Sから一次成形品p1が成形され、二次成形用金型52で一次成形品p1から二次成形品p2が成形されるとともに、二次成形品p2が他方の冷却用金型62で加圧保持されて焼き入れが開始される。
【0062】
その後、図13に示すように、他方の冷却用金型62の上型63が下降したままで二次成形品p2の焼き入れがなされている状態で、上記他方の冷却用金型62とは連係せずに、上記一次成形用金型42の上型43と二次成形用金型52の上型53とが互いに同期して上昇するとともに、一方の冷却用金型62で焼き入れが終了して最終成形品Pが成形され、一方の冷却用金型62の上型63も上記上型43、53と同じタイミングで上昇する。
【0063】
そして、第3ロボットR3によって一方の冷却用金型62から最終成形品Pを取り出し、これと併行して第2ロボットR2によって二次成形用金型52から二次成形品p2を取り出して一方の冷却用金型62に搬入し、自動搬送機(図示せず)によって一次成形用金型42から一次成形品p1を取り出して二次成形用金型52に搬入し、そして、自動搬送機(図示せず)によって加熱炉30から鋼板Sを取り出して一次成形用金型42に搬入する。このように、一次成形工程4と、二次成形工程5と、2つの焼き入れ工程6とを順に連続して行うことにより、最終成形品Pが流れ作業的に成形される。
【0064】
このように、本発明の参考実施形態2によれば、一方の冷却用金型62で二次成形品p2を冷却している間に、一次成形用金型42及び二次成形用金型52でそれぞれ次の一次成形品p1及び二次成形品p2が成形されるようになり、一次成形用金型42及び二次成形用金型52を増やすことなく生産ライン1全体の生産量を2倍にすることができ、コンパクトで高い生産性を有する生産ライン1にできる。
《発明の実施形態1》
図14は、本発明の実施形態1の生産ライン1で使用する一次成形用金型42を示す。この実施形態1では、上記一次成形用金型42における下型44の構造が参考実施形態1と異なっているだけで、その他は参考実施形態1と同じであるため、以下、参考実施形態1と異なる部分のみを詳細に説明する。
【0065】
実施形態1の下型44には、上下に延びる凹部44cが複数形成されていて、該凹部44cには、離間手段8が収容されている。
【0066】
該離間手段8は、上端部が尖鋭な略三角錐状の支持部材81と、該支持部材81を上方に付勢するコイルバネ82(付勢手段)とを備えている。
【0067】
上記支持部材81は、図14(a)に示すように、一次成形用金型42の型開き状態において、上記コイルバネ82によって上方に付勢されていて、下側加圧面44aより上方に突出している。そして、上記支持部材81は、加熱炉30から搬送された鋼板Sを支持することにより、当該鋼板Sを下側加圧面44aから上方に浮き上がらせて離間させている。
【0068】
また、上記支持部材81は、図14(b)に示すように、一次成形用金型42の型閉じ状態において、上記鋼板S(上型43)で下方に押されることにより、上記コイルバネ82のバネ力に抗して下方に沈み込み、上記凹部44cに収容されている。
【0069】
さらに、上記支持部材81は、図14(c)に示すように、一次成形用金型42が型開きすると同時に上記コイルバネ82によって上方に付勢されて、下側加圧面44aより上方に突出するようになっている。そして、上記支持部材81は、上記一次成形品p1を持ち上げて、当該一次成形品p1を下側加圧面44aから上方に浮き上がらせて離間させている。
【0070】
尚、実施形態1の生産ライン1でホットプレスにより鋼板Sから最終成形品Pを製造する方法については、型開き状態の一次成形用金型42に搬入された鋼板Sが、支持部材81により持ち上げられて下側加圧面44aから上方に離間する点と、一次成形用金型42の型閉じ動作に連動して支持部材81が凹部44cに収容される点と、一次成形用金型42の型開き動作に連動して一次成形品p1が支持部材81により持ち上げられて下側加圧面44aから上方に離間する点とを除いて参考実施形態1と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0071】
このように、本発明の実施形態1によれば、二次成形品p2が冷却用金型62で加圧保持されているときに、一次成形用金型42で成形した一次成形品p1が一次成形用金型42における上型43及び下型44の両加圧面43a、44aに全く接触しなくなるので、上型43及び下型44の両加圧面43a、44aからの熱の逃げを確実に防ぎ、二次成形品p2の温度が焼き入れ開始温度より低くなってしまう事態を回避し、特許文献2の如き一次成形品p1の温度を高くするための加熱等によるエネルギの消費を一段と減らしてランニングコストを抑えることができる。
【0072】
尚、本発明の実施形態1では、一次成形用金型42における下型44に複数の離間手段8を設けたが、二次成形用金型52における下型54に複数の離間手段8を設けて一次成形品p1及び二次成形品p2を下側加圧面54aから離間させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、例えば加熱した鋼板を塑性加工、機械加工及び冷却を順次行うことにより焼き入れがなされた最終成形品を得るホットプレスを行う場合に適している。
【符号の説明】
【0074】
4 一次成形工程
5 二次成形工程
6 焼き入れ工程
41 機械式プレス
42 一次成形用金型
43 上型
43a 上側加圧面
44 下型
44a 下側加圧面
45、55 温度調節手段
51 機械式プレス
52 二次成形用金型
53 上型
53a 上側加圧面
54 下型
54a 下側加圧面
61 油圧式プレス
62 冷却用金型
81 支持部材
82 コイルバネ(付勢手段)
p1 一次成形品
p2 二次成形品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14