特許第5730312号(P5730312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5730312H2濃度の高い燃料を空気と安全に混合するための方法及びガスタービン燃焼システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730312
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】H2濃度の高い燃料を空気と安全に混合するための方法及びガスタービン燃焼システム
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/30 20060101AFI20150521BHJP
   F02C 3/22 20060101ALI20150521BHJP
   F02C 7/22 20060101ALI20150521BHJP
   F02C 3/30 20060101ALI20150521BHJP
   F02C 3/28 20060101ALI20150521BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20150521BHJP
   F23R 3/10 20060101ALI20150521BHJP
   F23R 3/00 20060101ALI20150521BHJP
   F23R 3/12 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   F23R3/30
   F02C3/22
   F02C7/22 B
   F02C3/30 Z
   F02C3/28
   F02C7/18 C
   F02C3/30 B
   F23R3/10
   F23R3/00 A
   F23R3/12
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-529203(P2012-529203)
(86)(22)【出願日】2010年9月1日
(65)【公表番号】特表2013-505417(P2013-505417A)
(43)【公表日】2013年2月14日
(86)【国際出願番号】EP2010062807
(87)【国際公開番号】WO2011032839
(87)【国際公開日】20110324
【審査請求日】2013年8月26日
(31)【優先権主張番号】09170508.7
(32)【優先日】2009年9月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503416353
【氏名又は名称】アルストム テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100167852
【弁理士】
【氏名又は名称】宮城 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】リヒャルト カローニ
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンド ビアジオーリ
【審査官】 寺町 健司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0226299(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0260316(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/00−60
F02C 7/22
F02C 3/22
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン燃焼システム(10,20)においてH2濃度の高い燃料を空気と安全に混合するための方法において、
バーナ空気の第1の流れ及びH2濃度の高い燃料の第2の流れを提供するステップと、
予混合された燃料/空気混合物(C,21)を形成するために全ての燃料を前記バーナ空気の一部と予混合するステップと、
この予混合された燃料/空気混合物(C,21)を主バーナ空気流(D,22)に噴射するステップとを有することを特徴とする、ガスタービン燃焼システム(10,20)においてH2濃度の高い燃料を空気と安全に混合するための方法。
【請求項2】
前記予混合するステップを、望ましくない位置における、特に噴射位置の近くにおける及びバーナにおける火炎アンカリングを回避するような形式で行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記予混合するステップにおいて、λ>1、好適にはλ>1.3の空気過剰率を達成する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
空気を、空気分離ユニット(ASU)によってO2及びN2に分離し、空気分離ユニット(ASU)からのN2の一部を、主バーナ空気(D,22)及び/又は予混合された燃料/空気混合物(C,21)に付加する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
直線状の又は僅かに旋回する空気流を生じる円形の通路の形態の予混合器(16)を、再循環領域及び/又はよどみ領域を回避するために使用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
水力直径が消炎距離よりも小さい狭い通路から成る予混合器を使用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
これらの領域の速度を高めるために、特にフィルム空気を使用することによって、前記予混合器(16)における空気流の境界層を励起する、請求項5記載の方法。
【請求項8】
大きな体積のH2/N2燃料を噴射する“ジェットポンプ”効果を介して空気流を付加的に加速する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
霧状の水をH2濃度の高い燃料へ噴射し、噴射された水のその後の蒸発による相対的な冷却により方法の安全性を高める、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
バーナ(17)の中央領域における局所的な静圧が公称バーナ圧力よりも低いことを利用することによって、予混合器(16)における速度をさらに高めるために、スワール安定化バーナ(17)における主スワーラを利用する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10までのうちのいずれか1項記載の方法を適用するためのガスタービン燃焼システム(10,20)において、
燃焼室(13)と、該燃焼室(13)にバーナ空気の流れを噴射するために前記燃焼室(13)へ開口した少なくとも1つのバーナ(17)と、
予混合された燃料/空気混合物(C,21)を提供するための少なくとも1つの予混合器(11,12;16)とを有し、
前記予混合された燃料/空気混合物(C,21)が前記バーナ空気の流れへ噴射されるように、前記少なくとも1つのバーナ(17)と、前記少なくとも1つの予混合器(11,12;16)とが互いに対して配置されていることを特徴とする、請求項1から10までのうちのいずれか1項記載の方法を適用するためのガスタービン燃焼システム(10,20)。
【請求項12】
少なくとも1つの予混合器(16)が、直線状の又は僅かに旋回する空気流を生じる単純な、好適には円形の通路の形態を有する、請求項11記載のガスタービン燃焼システム。
【請求項13】
少なくとも1つの予混合器が、水力直径が消炎距離よりも小さな狭い通路から成る、請求項11記載のガスタービン燃焼システム。
【請求項14】
前記少なくとも1つのバーナが、スワール安定化バーナ(17)である、請求項11から13までのいずれか1項記載のガスタービン燃焼システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスタービンに関する。本発明は、ガスタービン燃焼システムにおいてH2濃度の高い燃料を空気と安全に混合するための方法に関する。
【0002】
従来技術
水素濃度の高い燃料のための現在の燃焼器は、拡散火炎の極めて高いレベルの希釈(例えば不活性化学種、例えばN2及び/又は蒸気を用いる)に依存する(国際公開第2008/135362号、国際公開第2008/155242号)。定格出力低下(つまり火炎温度を低下させること)も一般的に利用される(例えば欧州特許出願公開第0731255号明細書又は欧州特許出願公開第0899438号明細書参照)。エミッションをさらに低減し、かつ高コストの希釈剤を最小限にするために、水素濃度の高い燃料のための希薄予混合燃焼システムを開発する努力がなされてきた。このようなシステムは、高い程度の予混合を必要とする。あいにく、水素濃度の高い燃料は反応しやすく、これらの燃料を安全かつクリーンに燃焼させるためには大幅な変更が必要である。しかしながら、この変更(例えばバーナ速度を高めること、極めて高い燃料ジェット速度を利用すること)は、たいていの場合、現代のガスタービンバーナの要求(低いバーナ圧力損失、低い燃料圧力損失)と両立できない。
【0003】
燃焼の前に良好な空気/燃料混合物を得るために空気にH2濃度の高い燃料を導入することの問題は、図1によって例示されており、図1は、CH4(標準的なガスタービン燃料)と、様々なH2/N2混合物との場合の層流火炎速度を示している。H2濃度の高い層流火炎速度は、以下の点でCH4比較対象と異なる。つまり、
・ピーク火炎速度が少なくとも6倍高い
・利用可能な燃料/空気混合物の全範囲における火炎速度が、CH4よりも高い
・ピーク火炎速度は、約1.0ではなく、約0.6という著しく低い空気過剰率(λ)において生じる。
【0004】
実際には、現実のバーナにおける火炎位置をほとんど決定するのは、乱流燃焼速度である。このパラメータは、乱流燃焼速度がCH4ではなくH2の圧力の関数であるとすると、H2濃度の高い燃料のための状況を悪化させる。
【0005】
燃料が高温空気へ噴射されると、噴射点の近くの領域は極めて不十分な混合を特徴とする。局所的なスケールにおいて、λは0から無限大の間で変化することができる。
【0006】
天然ガス:
燃焼性限界はかなり狭い。高濃度側では、比較的高いλ(図1における≒0.7)においてさえも、火炎を維持することはできない。燃焼速度(及びひいては層流火炎速度)は、特に高濃度消滅限界の近くにおいて、概して低い。噴射領域における着火の危険性は低く、逆火の際に不十分なアンカリング(火炎維持)が存在する(すなわち、火炎は吹き消される)。
【0007】
2濃度の高い燃料:
燃焼性限界はかなり広く、極めて濃度の高い混合物(λ<0.3)が火炎を維持することができる。燃焼速度(及びひいては層流火炎速度)は高い。あいにく、H2濃度の高い燃料のピーク反応度も高濃度領域(通常はλ=0.5付近)にあり、これは、噴射領域における着火の危険性が極めて高く、(火炎のジャンプが生じると)火炎アンカリングが極めて強い。したがって、逆火は永久的な火炎アンカリングを生じ、これは、高いエミッションにつながり、場合によってはハードウェア破壊にもつながる。
【0008】
このような高い燃焼速度、及びその欠点に対処する一般的な方法が以下に列挙される。しかしながら、これらの従来のソリューションはいずれも、極めて濃度の高い燃料/空気混合物の高い燃焼性の決定的な問題に対処していない。
・希釈を利用する。与えられた混合品質において、この作用は燃焼速度を減じるが(図1における点線の二重矢印Aを参照)、十分ではない。さらに、この作用は、ピーク燃焼速度が生じる当量比をシフトさせない。過剰な希釈は、高い燃料圧力損失と、付加的なコストとを生じる(希釈剤は無料ではない。N2の場合、圧力は、空気分離ユニットの圧力から燃料の圧力へ増大されなければならない。蒸気の場合、蒸気サイクルから蒸気を抽出することに関連した効率の損失が存在する)。
・バーナ空気速度を著しく高める。有効であるためには、バーナ速度は大幅に高められなければならず、これによって、バーナにおけるより大きな圧力損失、ひいてはガスタービン効率の低下を生じる。さらに、このような高いバーナ速度は、標準的なバックアップ燃料(例えば天然ガス)と両立しない傾向がある。常により低い空気速度の領域(境界層)が存在し、これが、燃料が噴射される位置の近くにしばしば存在することに注意しなければならない。
・火炎保持を回避するために燃料をより高い速度で噴射する。過剰なジェット速度は燃料システムに高い圧力損失を生じ、より高いコストを生じる。音速限界に近づくと、安定性の問題も課せられる。
【0009】
発明の概要
本発明の課題は、主バーナ空気流(ライナ空気として知られる)に噴射する前に局所的な燃料/空気混合物がピーク燃焼速度(すなわちλ=0.6)を有効にバイパスすることを可能にし、これにより従来技術の欠点を回避する、ガスタービン燃焼システムにおいてH2濃度の高い燃料を空気と安全に混合するための方法を提供することである。
【0010】
前記課題は、請求項1に係る方法によって達成される。本発明による方法は、
・バーナ空気の第1の流れ及びH2濃度の高い燃料の第2の流れを提供するステップと、
・予混合された燃料/空気混合物を形成するために全ての燃料を前記バーナ空気の一部と予混合するステップと、
・予混合された燃料/空気混合物を主バーナ空気流に噴射するステップとを有する。
【0011】
本発明の1つの実施の形態によれば、前記予混合するステップは、望ましくない位置における、特に噴射位置の近くにおける及びバーナにおける火炎アンカリングを回避する形式で行われる。
【0012】
本発明の別の実施の形態によれば、λ>1、好適にはλ>1.3の空気過剰率が、前記予混合するステップにおいて達成される。
【0013】
本発明の別の実施の形態によれば、空気は、空気分離ユニット(ASU)によってO2とN2とに分離され、空気分離ユニット(ASU)からのN2の一部は、主バーナ空気及び/又は予混合された燃料/空気混合物に付加される。
【0014】
本発明の別の実施の形態によれば、再循環領域及び/又はよどみ領域を回避するために、直線状の又は僅かに旋回する空気流を生じる単純な、好適には円形の通路の形態の通路が使用される。
【0015】
本発明の別の実施の形態によれば、水力直径が消炎距離よりも小さい狭い通路から成る予混合器が使用される。
【0016】
本発明の別の実施の形態によれば、前記予混合器における空気流の境界層は、これらの領域における速度を高めるために、フィルム空気を使用することによって励起される。
【0017】
本発明の別の実施の形態によれば、空気流は、大きな体積のH2/N2燃料を噴射する"ジェットポンプ"効果を介して付加的に加速される。
【0018】
本発明の別の実施の形態によれば、H2濃度の高い燃料に霧状の水が噴射され、噴射された水のその後の蒸発による相対的な冷却によって方法の安全性を高める。
【0019】
本発明の別の実施の形態によれば、バーナの中央領域における局所的な静圧が公称バーナ圧力よりも低いということを利用することによって、予混合器における速度をさらに高めるために、スワール安定化バーナにおける主スワーラが使用される。
【0020】
本発明による方法を適用するためのガスタービン燃焼システムは、
燃焼室と、該燃焼室にバーナ空気の流れを噴射するための、前記燃焼室へ開口した少なくとも1つのバーナと、
予混合された燃料/空気混合物を提供するための少なくとも1つの予混合器とを有し、
前記予混合された燃料/空気混合物が前記バーナ空気の流れへ噴射されるように、前記少なくとも1つのバーナと、前記少なくとも1つの予混合器とが互いに対して配置されている。
【0021】
本発明のガスタービン燃焼システムの実施の形態によれば、少なくとも1つの予混合器は、直線状の又は僅かに旋回する空気流を生じる単純な、好適には円形の通路の形態を有する。
【0022】
本発明のガスタービン燃焼システムの別の実施の形態によれば、少なくとも1つの予混合器は、水力直径が消炎距離よりも小さい狭い通路から成る。
【0023】
本発明のガスタービン燃焼システムの実施の形態によれば、前記少なくとも1つのバーナは、スワール安定化バーナである。
【0024】
本発明のガスタービン燃焼システムの実施の形態によれば、前記少なくとも1つのバーナは、いわゆるEVバーナ(例えば欧州特許第0321809号明細書)又はいわゆるAEVバーナ(例えば欧州特許第0704657号明細書)である。
【0025】
本発明のガスタービン燃焼システムの実施の形態によれば、前記少なくとも1つのバーナは、いわゆるSEVバーナ(例えば欧州特許第0620362号明細書、pos.5)である。
【0026】
EVバーナ、AEVバーナ及びSEVバーナに関する全てのこれらの文献並びに全てのこれらの開発された改良、特許出願及び特許は、本特許出願の一体的な構成部分を形成する。
【0027】
ここで本発明を様々な実施の形態によって添付図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】CH4(標準的なガスタービン燃料)と、様々なH2/N2混合物とについて、1atm及び20℃における層流火炎速度を示す図である。
図2】本発明による予混合概念を示す図である。
図3】本発明による予混合概念を含むバーナの典型的な実施の形態を示す図である。
図4】バーナの中央領域における局所的な静圧が公称バーナ圧力よりも低いということを単に利用することによって、予混合器における速度をさらに高めるために、スワール安定化バーナにおける主スワーラを利用することができることを示している。
【0029】
発明の様々な実施の形態の詳細な説明
本発明の課題は、火炎アンカリングを回避する形式で全ての燃料をバーナ空気の一部("予混合空気"と呼ばれる)と予混合し、次いでこの燃料/空気混合物(λ>1、好適にはλ>1.3を特徴とする)を主バーナ空気流(すなわちライナ空気)へ噴射することによって達成され、この噴射は1以上の段階で行うことができる。図2は、("予混合"と呼ばれる)概念を示している。P_pk2及びT_pk2は、それぞれガスタービンの圧縮機出口における圧力及び温度である。P_fuel及びT_fuelはそれぞれ燃料の圧力及び温度であり、T_mixは予混合混合物の温度であるのに対し、P_hood及びT_hoodはそれぞれフード空気(バーナに進入する空気である)の圧力及び温度である。予混合方法は、H2濃度の高い燃料のための従来のソリューションの要素(例えば高い空気速度、高い希釈レベル)を伴うことができるが、否定的な効果はかなり制限されている。なぜならば、これらの方法は、バーナ空気流全体ではなく、バーナ空気全体の一部(すなわち予混合空気)だけに適用されるからである。
【0030】
質量及びエネルギ平衡が示していることは、予混合された燃料/空気が70/30H2/N2燃料(空気温度420℃、燃料温度150℃、T_ad=1750K)の場合にそれぞれ0.6及び1.0のλを有するように、合計バーナ空気の約25%及び約45%が必要とされるということである。
【0031】
(圧縮機空気の一部が予混合器へ逸らされているので)結果的なライナ冷却が不十分である場合、残りのN2をASU(空気分離ユニット)からライナ空気へ付加することができ、ライナ空気の混合物温度は、400℃の標準的なライナ空気温度よりも著しく低い。N2のこの流れは、ASU圧力(低圧装置の場合は約5bar、又は高圧ASUの場合は15bar)からP_pk2圧力(すなわち圧縮機出口における圧力)に圧縮されなければならないだけである。
【0032】
予混合プロセスは、バーナにおける圧力損失よりも大きな圧力損失(ΔP)によって駆動される。図2は、AEV−125バーナ(AEV=Advanced Environmental、最新環境的)のための全負荷条件下での出願人のGT13E2ガスタービンに基づき、一般的に、この圧力損失は、ライナ及びスワーラの圧力損失ΔP_liner及びΔP_swirlerの合計に比例し、ΔP≒2〜3%に達することを示している。
【0033】
予混合概念の別の安全利益が注目される:
・比較的低温の燃料がバーナ空気全体の一部のみと混合され、これは、予混合された混合物温度T_mixが著しく低いことを意味する(燃料が全てのバーナ空気と混合された場合の350℃と比較して、λが0.6及び1.0の場合にそれぞれ278℃及び310℃である(150℃における70/30H2/N2に基づく)。これは、空気/燃料混合物の反応性を著しく減じ、これにより、λ≧1への安全な移行を大きく助ける)。
・予混合空気流は、ライナ冷却のために使用されないので、フード空気(約20℃)よりも低温である。これは、予混合器における反応度を減じる。
・N2が予混合空気の一部のために使用されるならば、
−より少ないO2、及び
−より低い温度により、
着火の危険性が減じられる。
・予混合された混合物は、(空気質量流量に対するより高い燃料質量流量により)バーナにおける著しくより大きな進入深さを達成することができ、これにより、予混合されていない燃料がバーナに噴射された場合よりも優れた混合を可能にする。
【0034】
所望の予混合を達成するための複数の方法を以下に説明する。もちろん、提案された概念を達成するための他の手段もある。
・予混合器(図4の16)は、直線状の空気流を生じる単純な通路(好適には円形)から成ることができる。空力的に単純な幾何学的形状は、再循環領域及び/又はよどみ領域を回避する。これらの領域における速度を高めるために、境界層を励起することができる(例えばフィルム空気を利用して)。横流におけるジェット及び並行流ジェットを使用することができる。並行流ジェットは火炎アンカリングのリスクを減じる。
−予混合器におけるスワールの欠如は、空気速度が、与えられたΔPを使用して、バーナにおける速度よりも約50%高くなることができる(約120m/s)ことを意味する。
−空気流は、大きな体積のH2/N2燃料を噴射する"ジェットポンプ"効果を介して付加的に加速することができる。
・予混合器は、水力直径が消炎距離よりも小さい小さな通路から成ることができる。これらの小さな通路における燃料の噴射及び予混合は、混合プロセスの間及びより高いλの達成の前に均質な着火が生じてしまうことを回避する。今や安全性が対流ではなく消炎によって促進されるので、空気速度は小さくなることができる。狭い通路における小さな空気速度は、利用できるΔPと両立できる。
・H2濃度の高い燃料への水の噴射及びその後の蒸発による相対的な冷却はさらに、本発明の方法の安全性を高める。
【0035】
図3は、上述の新たな予混合概念を含むバーナの例である。図3によれば、燃焼システム10において、予混合された燃料/空気混合物Cは、予混合器11及び12を通じて、燃焼室13へ開口したバーナ17内へ噴射される。主空気22は、予混合器11,12の出口の近くの主バーナ空気入口14及び15を通じて付加される。予混合概念はもちろん、以下の実施の形態に示すように、AEV及びSEV(SEV=順次環境的)等のより慣用的なバーナに適応させることができる。1つ又は2つ以上の予混合器がバーナごとに設けられていてよい。
【0036】
実施の形態1:
概念を、SEV(すなわち再熱)燃焼にも使用することができる。この場合、予混合器温度利益は、より一層大きくなる。なぜならば、予混合器において使用されるPK2空気は、主バーナ空気の1000℃よりも著しく低温(一般的に400℃〜450℃)であるからである。同様の利益は、伝熱式燃焼システムにおける非再熱希薄予混合バーナへの適用に見られる。
【0037】
実施の形態2:
予混合器において、より少ない空気を使用する。これはλ<1を与えるのに対し、予混合器における局所的混合物温度は著しく低くなる。これは、より濃度の高い燃料/空気混合物に関連したより高い火炎速度を補償することができる。これは、ライナ冷却のためのより多くの空気も残す。
【0038】
実施の形態3:
予混合概念は、拡散バーナに適用することもできる。このような構成は、定格出力低下なしに(拡散バーナはしばしばNOxの理由からより低い燃焼温度で運転しなければならない)及び過剰な希釈の必要なしに、クリーンで安全な運転を可能にする。
【0039】
実施の形態4:
バーナの中央領域における局所的な静圧が公称バーナ圧力よりも低いことを単に利用することによって、予混合器の速度をさらに高めるために、スワール安定化バーナにおける主スワーラを使用することができる(図1における点線B参照)。これは図4に示されている。図4によれば、燃焼システム20は、予混合器16を備えたバーナ17を有する。予混合器16内で形成された予混合された燃料/空気混合物21は、軸方向(軸線19)でバーナ17に進入する。主空気22はフード18を介してバーナ17に進入し、これにより、低い静圧領域24を備えたスワールを発生する。結果的な完全に予混合された燃料/空気混合物23はバーナ17から出て、後続の燃焼室に進入する。概して、主空気流(すなわち"フード"空気又はライナ空気)は、軸方向スワーラ、半径方向スワーラ又は"ハイブリッド"スワーラを介してバーナに進入することができる。
【符号の説明】
【0040】
10,20 燃焼システム
11,12 予混合器
13 燃焼室
14,15 主バーナ空気入口
16 予混合器
17 バーナ
18 フード
19 軸線
21,C 予混合された燃料/空気混合物
22,D 主空気
23 完全に予混合された燃料/空気混合物
24 低い静圧の領域
図1
図2
図3
図4