特許第5730318号(P5730318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5730318排ガスセンサの駆動制御のための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730318
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】排ガスセンサの駆動制御のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/419 20060101AFI20150521BHJP
   G01N 27/41 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   G01N27/46 327P
   G01N27/46 325P
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-534675(P2012-534675)
(86)(22)【出願日】2010年10月20日
(65)【公表番号】特表2013-508703(P2013-508703A)
(43)【公表日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】EP2010065760
(87)【国際公開番号】WO2011048121
(87)【国際公開日】20110428
【審査請求日】2012年6月25日
(31)【優先権主張番号】102009050224.6
(32)【優先日】2009年10月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン バルニコウ
(72)【発明者】
【氏名】エッケハート−ペーター ヴァーグナー
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−223856(JP,A)
【文献】 特開昭60−165541(JP,A)
【文献】 特開2003−166968(JP,A)
【文献】 特表2006−500572(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0020587(US,A1)
【文献】 特開平11−174020(JP,A)
【文献】 特公平01−028905(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/419
G01N 27/41
G01N 27/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスセンサの駆動制御のための装置であって、
前記排ガスセンサは限界電流式プローブ(10)として成されており、
前記プローブは排ガスを受け入れる少なくとも1つの基準空洞部と酸素イオン導電性材料からなるセルとを有しており、
前記装置は、少なくとも1つの制御器(36)を有し、前記制御器の入力量は測定されたセンサ電圧(Vs)であり、
前記測定されたセンサ電圧は、基準空洞部内の酸素濃度に依存しており、前記制御器の別の入力量は基準電圧であり、
前記制御器の出力量は排ガスセンサのセルに供給される電流(Ip)であり、該電流によって前記センサ電圧(Vs)が所定の値に制御可能であり、
限界電流式プローブ(10)として構成された排ガスセンサの駆動制御のための装置は、前記制御器(36)の入力量の1つが、供給された電流(Ip)に基づき前記限界電流式プローブ(10)の内部抵抗における電圧降下分だけ補正されるように構成され、前記供給された電流(Ip)がラムダ値に対する尺度となるようにしたことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記限界電流式プローブ(10)駆動制御のための制御器の入力量は、計算によって求められたネルンストセル電圧である、請求項1載の装置。
【請求項3】
限界電流式プローブ(10)して構成され、少なくとも1つの基準空洞部と酸素イオン導電性材料からなるセルとを有している、排ガスセンサの駆動制御のための方法であって、
制御器に入力量としてセンサ電圧(Vs)が供給され、該センサ電圧(Vs)は基準空洞部内の酸素濃度に依存しており、
前記制御器に別の入力量として基準電圧が印加され、
前記制御器の出力量である電流(Ip)がセルに供給され、それによってセンサ電圧(Vs)が所定の値に制御され、
前記制御器(36)の入力量の1つが、供給された電流(Ip)に基づき前記限界電流式プローブ(10)の内部抵抗における電圧降下分だけ補正され、前記供給された電流(Ip)がラムダ値に対する尺度となるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項4】
前記限界電流式プローブ(10)駆動制御のための制御器の入力量として、計算によって求められたネルンストセル電圧が処理される、請求項記載の方法。
【請求項5】
前記制御器(36)に供給される基準電圧が、出力量を求めるための後続処理の前に、前記限界電流式プローブ(10)の内部抵抗における電圧降下分だけ補正される、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
補正された基準電圧と、測定されたセンサ電圧(Vs)との偏差分から、出力量として用いられるべき電流(Ip)が求められる、請求項記載の方法。
【請求項7】
測定されたセンサ電圧(Vs)が、出力量を求めるための後続処理の前に、前記限界電流式プローブ(10)の内部抵抗における電圧降下分だけ補正される、請求項3または4記載の方法。
【請求項8】
基準電圧と、補正されたセンサ電圧(Vs′)との偏差分から、出力量として用いられるべき電流(Ip)が求められる、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排ガスセンサの駆動制御のための装置及び方法に関しており、前記排ガスセンサは限界電流式プローブ又は2セル式プローブとして構成され、それらはそれぞれセラミック材料からなる基準空洞部と酸素イオン導電性材料からなるセルとを含んでいる。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の運転の際には、法的に定められた有害物質排出限界値を維持するために、排ガスセンサが用いられ、それらの信号が内燃機関からの有害物質排出の制御に用いられている。ここで頻繁に用いられる排ガスセンサはリニアーな二値特性のいわゆるラムダプローブとNOxセンサである。このタイプの排ガスセンサは、それぞれイットリウム安定化された二酸化ジルコニウムセラミックからなる加熱型固体電解質を含んでいる。二酸化ジルコニウムからなり、固体電解質を通る酸素イオン流の形態の酸素濃度又はNOx濃度を測定し得る排ガスセンサのもとでは、セラミックの加熱装置が設けられる。この目標温度は、予め定めた値に制御されるか、又は作動点に依存して事前制御される。
【0003】
このベース材料である二酸化ジルコニウムは以下の2つの主要な特性を有する。
1.排ガスセンサの一方の電極において、λ=1の酸素濃度が存在し、排ガスセンサの他方の電極において、λ=無限大(すなわち大気と同じ)であるとき、2つの電極の間には450mVの電圧が生じる。この電圧は物理学者ワルターネルンストにちなんでネルンスト電圧とも称される。
2.排ガスセンサの二酸化ジルコニウムを通って電流が流れると、二酸化ジルコニウムを通って酸素粒子が移送される。
【0004】
リニアーな特性の排ガスセンサの最も広い実施形態は、二酸化ジルコニウムを基礎材料とする相互に接続された2つのセルからなる装置構成で形成される。この場合一方のセル、すなわちいわゆるネルンストセルでは、上記1で述べた特性が有効利用される。またもう一方の、第2のセルはポンプセルとも称され、ここでは上記の2で述べた特性が有効利用される。そのようなリニアーな特性の排ガスセンサでは、2つのセル間に、拡散バリアを通って排ガス流と通じる基準空洞部(いわゆる基準キャビティ)が存在し、該基準空洞部ではλ=1の酸素濃度が生じるものである。酸素濃度がλ=1の値を有する限り、ネルンストセルの電極間では、450mVの電圧が測定される。しかしながら拡散壁を通る酸素粒子の流入又は流出によって排ガス中の理想的な酸素濃度λ=1から偏差が生じると、それに起因して、遮蔽されたセル内で酸素濃度が影響を受ける。これにより、ネルンストセルの電極間の電圧は、所期の450mVから外れる。
【0005】
排ガスセンサと接続された電子制御回路又は駆動制御装置は、次のような課題を有している。すなわちネルンストセルに関する450mVの値から偏差した電圧値を測定し、450mVの適正電圧を再び得るために適切な対抗手段を講じることである。この対抗処置とは、排ガスセンサのポンプセルを通して電流を送ることである。これにより、酸素濃度が再びλ=1に補償されるくらいの酸素粒子が基準空洞部へ移動する。この場合の電流の通流は双方向で行われ得る。なぜなら排ガス中の酸素濃度もλ=1の値から増減する可能性があるからである。
【0006】
制御技術的にみて排ガスセンサは、接続された駆動制御装置によって所定の動作点に維持されなければならない、閉ループ制御区間を表わしている。これにより、前記排ガスセンサと駆動制御装置は1つの閉ループ制御回路を形成し、該閉ループ制御回路内では、駆動制御装置が1つの制御器であるか又は制御器を含んだものであり得る。
【0007】
リニアーな特性の排ガスセンサの別の拡張実施例によれば、基準空洞部の他には、二酸化ジルコニウムを基準材料としたセルが含まれるだけである。それらは限界電流式プローブとも称される。典型的には、唯一つのセルに、可変の電圧が印加される。これらのセルを通る電流は実質的に、印加された電圧のレベルに依存し、拡散壁によって分離された排気管内の酸素濃度にも依存している。この場合の電流は450mV付近の電圧範囲においては比較的一定に維持されるが、450mVの値から著しく外れる場合には大きく変化する特性を有する。この"平坦領域"における電流の大きさは基準空洞部へのガス拡散レートに依存し、これも排ガス中のガス濃度に依存しているため、排ガス中の酸素濃度に対する尺度として利用することが可能である。
【0008】
前述したタイプの異なる2つの排ガスセンサの駆動制御には、それぞれ特定の駆動制御装置が必要とされる。これらの駆動制御装置は大抵は専用の集積回路としてモノリシックに集積される可能性が高いので、これらの駆動制御装置の準備には、高度な組織的及び金銭的なコストが伴ってしまう。
【0009】
それ故本発明の課題は、一方の排ガスセンサと他方の排ガスセンサの間で択一的な作動が可能な、排ガスセンサの駆動制御のための装置並びに方法を提供することにある。特にこの択一的な作動は、高い融通性を得るために、付加的なハードウエア要素なしで可能となるべきものである。
【0010】
この課題は、請求項1の特徴部分に記載の本発明による装置と、請求項7の特徴部分に記載の本発明による方法とによって解決される。有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0011】
本発明によれば、限界電流式プローブ又は2セル式プローブとして構成され、それぞれセラミック材料からなる基準空洞部と酸素イオン導電性材料(例えば酸化ジルコニウム)からなるセルとを含んでいる排ガスセンサの駆動制御のための装置がもたらされる。公知のように、そのようなセルは2つの電極を含み、そのうちの一方の電極は基準空洞部と接続し、他方の電極は稀薄ガス混合気(例えば空気)の充填されたボリューム空間と接続する。この装置は少なくとも1つの制御器を含んでいる。この制御器の一方の入力量は測定されたセンサ電圧であり、もう一方の入力量は基準電圧である。前記センサ電圧は基準空洞部内の酸素濃度に依存している。また前記制御器の出力量は、センサのセルに供給される電流であり、該電流によってセンサ電圧が所定の値に制御可能である。本発明によれば、限界電流式プローブの駆動制御装置が、制御器の入力量の1つにおいて供給された電流を処理するように構成される。
【0012】
また本発明によれば、限界電流式プローブ又は2セル式プローブとして構成され、それらはそれぞれセラミック材料からなる基準空洞部と酸素イオン導電性材料からなるセルとを含んでいる排ガスセンサの駆動制御のための方法が得られる。この方法によれば、制御器の入力量としてセンサ電圧が供給され、このセンサ電圧は基準空洞部内の酸素濃度に依存している。またこの制御器には別の入力量として基準電圧が供給される。前記制御器の出力量である電流は、当該センサのセルに供給される。それにより、センサ電圧は所定の値に制御される。ここでは制御器の入力量の1つにおいて供給された電流が処理される。
【0013】
本発明による方法並びに本発明による装置は、唯一の駆動制御装置を備えた様々なタイプの排ガスセンサの作動を可能にするものであり、それらは実質的に2セル式プローブのコンセプトに基づいている。ここでの本発明が基礎としている考察は、1つの制御ループの中で限界電流式プローブも、2セル式プローブも作動させることである。2セル式プローブと類似のように限界電流式プローブにおいてもセルに関する電圧が測定され、この測定された電圧に依存して電流が当該セル内へ流れる。限界電流式プローブの内部抵抗による測定電圧のエラーを回避するために、出力電流が制御回路の入力量として考慮される。
【0014】
この手法の利点は、排ガスセンサ、特にラムダセンサを使用した場合の高い融通性にある。これまでのラムダセンサの所定のタイプへの制限とは異なって、所要の駆動制御装置の定義とその実用化において本発明では選択が可能である。なぜなら限界電流式プローブと2セル式プローブに対して類似の駆動制御が行われるからである。従ってこの種の装置は様々なタイプの排ガスセンサを作動できる。可変の電圧が基準空洞部に印加され、その結果として生じた電流が測定されるこれまでに実用化されたコストのかかる限界電流式プローブの駆動制御に比べて、本発明では、様々な構造形式のリニアーな特性を有するプローブの駆動制御を1つに統一することが可能である。
【0015】
本発明の有利な構成によれば、2セル式プローブを駆動制御するための制御器の入力量がネルンストセル電圧である。相応に本発明による方法では、2セル式プローブを駆動制御するための制御器の入力量としてネルンストセル電圧が処理される。
【0016】
それに対して、限界電流式プローブ又は2セル式プローブを駆動制御するための制御器の入力量は、計算上で求められたネルンストセル電圧である。それに応じて、限界電流式プローブ又は2セル式プローブを駆動制御するための制御器の入力量として、計算上で求められたネルンストセル電圧が処理される。
【0017】
さらに別の構成によれば、限界電流式プローブの駆動制御のための装置が次のように構成されている。すなわち測定されたセンサ電圧又は基準電圧が、出力量を求めるための後続処理の前に、限界電流式プローブの内部抵抗分だけ補正される。相応に本発明による方法では、測定されたセンサ電圧又は基準電圧が出力量を求めるための後続処理の前に、限界電流式プローブの内部抵抗分だけ補正される。これにより、限界電流式プローブの内部抵抗に起因する、測定電圧の改ざんが回避される。この内部抵抗によって引き起こされるプローブにおける電圧降下は、当該内部抵抗値と制御出力量、すなわち閉鎖されたセル内に現われた電流値との積から求められる。この出力量は、例えば電流値自体であってもよいし、電流値のローパスフィルタリングされた値であってもよいしまた択一的に、前記補正は2つの入力量の一方において考慮されるものであってもよい。プローブを流れる電流は排ガスセンサの特徴である平坦電流で直接表わされるものなので、この値は排気管におけるラムダ値(空気過剰率)に対する尺度として直接処理されてもよい。
【0018】
さらに別の有利な実施形態によれば、当該装置が次のように構成される。すなわち補正されたセンサ電圧から、出力量として利用できる電流が求められるように構成される。これに相応して本発明による方法のもとでは、補正されたセンサ電圧から、出力量として用いられる電流が求められる。
【0019】
特に限界電流式プローブの駆動制御のための制御回路の出力量は、ラムダ値に対する尺度となる。本発明による方法によれば、相応の形式で、限界電流式プローブを駆動制御するための制御回路の出力量が、ラムダ値に対する尺度として処理される。
【0020】
以下で本発明を実施例に基づいて、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】限界電流式プローブ又は2セル式プローブとして択一的に構成されている排ガスセンサの駆動制御のための本発明による装置を概略的に示した図
図2】限界電流式プローブの電流/電圧特性曲線を表わした図
【実施例】
【0022】
図1には、限界電流式プローブ10又は2セル式プローブ20の駆動制御のために択一的に用いることのできる駆動制御装置30が概略的に示されている。限界電流式プローブ10ないし2セル式プローブ20はそれぞれ電気的な等価回路として表わされている。
【0023】
限界電流式プローブ10(これは1セル式プローブとも称される)は(当業者にとって周知なように)内部抵抗11と電圧源12によって表わされる。この2つの構成要素は、限界電流式プローブ10の端子18,19間で直列に接続されている。限界電流式プローブ10は(これも当業者には周知なように)、二酸化ジルコニウムを基礎材料としたセルのみからなり、このセルには通常は可変の電圧が印加されている。ここではこの唯一のセルを流れる電流が、印加された電圧の大きさと、拡散バリアによって分離された排ガス管路内の酸素濃度とに依存している。この電流の特性は、次のようなものである。すなわち450mV付近の電圧範囲においては比較的一定に維持され、それに対して450mVから著しく外れている場合には大きく変動するような特性である。この"平坦領域"における電流の大きさは基準空洞部へのガス拡散レートに依存し、これも排ガス中のガス濃度に依存しているため、排ガス中の酸素濃度に対する尺度として利用することが可能である。
【0024】
この関係は図2に概略的に示されており、そこでは種々異なるラムダ値(A/Fレシオ)に対する複数の特性曲線が電流−電圧線図で示されている。ここでは、限界電流式プローブを介して低下した電圧Vpが横軸にプロットされている。また限界電流式プローブを通って流れた電流若しくは出力された電流Ipは縦軸にプロットされている。この描写からみてとれるように、電流/電圧特性曲線は、平坦領域外では、傾斜状に経過しており、その勾配は内部抵抗Riに依存すると共に当該限界電流式プローブ10の閉鎖されたセルの温度にも間接的に依存している。異なる特性曲線の平坦部分の高さは、排気管内の酸素濃度に依存しており、図2の例では、3つの特性曲線が描写されている。これらの特性曲線はそれぞれの異なるラムダ値に対応して、Lambda1、Lambda2,Lambda3で表わしている。センサ素子の内部抵抗とプローブを通過する排気ガスのラムダ値とに応じて、所期の450mVの電圧値が当該平坦領域の中央(特性曲線Lambda3参照)か又は縁部(Lambda1参照)に印加される。しかしながら望ましくは、温度やラムダ値に依存することなく、所期の電圧値が平坦領域の中央に存在することである。
【0025】
2セル式プローブ20は、二酸化ジルコニウムを基礎材料とする相互に接続された2つのセルからなっており、これらのセルはいわゆるネルンストセルNZとポンプセルPZである。ネルンストセルNZは内部抵抗21と電圧源22で形成され、それらは2セル式プローブの端子28,29間で直列に接続されている。相応にポンプセルPZも内部抵抗23と電圧源24とから形成されている。これらの2つの要素も相互に直列に接続され、そこでは当該2セル式プローブ20の端子29とさらなる端子26の間に直列回路が設けられている。端子26とさらなる端子27との間には、抵抗25が設けられており、この抵抗25は較正抵抗を形成する。
【0026】
ネルンストセルNZとポンプセルPZの間には、拡散バリアを通って接続するいわゆる基準空洞部が存在している。この基準空洞部では、λ=1の酸素濃度が存在しており、そこでは燃料混合気が最適に燃焼する。λ=1である限りは、ネルンストセルの電極間では周知のように450mVの電圧が測定される。しかしながら遮蔽されたセル内の酸素濃度は、拡散壁を通る酸素粒子の流入又は流出による排ガス中の理想的な酸素濃度λ=1からの偏差に起因した影響を受ける。これによりネルンストセルの電極間(端子28,29に接続されている)の電圧も450mVから偏差する。
【0027】
駆動制御装置30による2セル式プローブ20の駆動制御のもとでは、ネルンストセルに関する理想的な450mVからの電圧偏差を測定し、適切な対応措置を講ずることにある。この措置は、できるだけ多くの酸素粒子を基準空洞部へ送ることによってポンプセルPZ内へ電流Ipを流すことにあり、それによって酸素濃度が再びλ=1へ補償される。この場合の電流の通流は双方向で行われ得る。なぜなら排ガス中の酸素濃度はλ=1の値から増減する可能性があるからである。それにより2セル式プローブ20は接続された駆動制御装置(これは制御器の機能を有する)によって作動点に維持される制御区間を表わす。ここでの制御器入力量は2セル式プローブ20の駆動制御の場合では450mVのネルンスト電圧であり、それに対して制御器出力量はポンプセルPZを流れるポンプ電流Ipである。ポンプ電流の適切な動的増減によってネルンスト電圧は450mVの電圧値に維持される。
【0028】
本発明による駆動制御装置30は、限界電流式プローブもそのような制御ループ内で作動できるように構成されている。2セル式プローブ20に類似するように、限界電流式プローブ10に関する電圧、すなわち端子18,19における電圧が測定され、この測定された電圧に依存して電流が当該限界電流式プローブに流される。1セル式プローブの内部抵抗による測定電圧のエラーを回避するために、測定された電圧は、後続処理の前に、当該内部抵抗に起因する電圧低下が補正される。これに係わる関係式は以下の通りである。
Vs′=Vs−(Ri*f(Ip))
制御器の所期量はこのケースでは代替的に固定量に維持してもよく、限界電流式プローブを介して測定された電圧も変更せずに制御器入力量として利用することが可能である。但しこのケースでは制御の所期量として"人為的に算出された"ネルンスト電圧Vs′が用いられる。このネルンスト電圧は以下の計算式、
Vs′=Vs+(Ri*f(Ip))…(1)
に従って全セル電圧の測定から得られる。ここでは限界電流式センサ内で流れた電流Ipが制御器出力量である。この電流は限界電流式センサの特徴である平坦電流を直接示すものなので、排ガス中のラムダ値に対する尺度を表わす。
【0029】
これまでの可変の電圧印加と発生した電流の測定を用いる通常一般の1セル式プローブの駆動制御に比べて、本発明による手法の利点は、制御原理が2セル式センサの制御構想に類似していることである。ここでは正確な電流値とラムダ値を測定可能にするために、制御器の所期電圧をプローブ電流の関数と限界電流式センサのインピーダンスからの積の値分だけ補正するだけでよい。
【0030】
図1には駆動制御装置30内で限界電流式プローブも1つの制御ループ内で作動させるのに必要な構成要素が概略的に示されている。この駆動制御装置30は集積されたチップ若しくはASIC(Application Specific Integrated Circuit)として構成されてもよい。
【0031】
入力増幅器31(これは有利にはA/D変換器として構成されている)の入力側は端子50,51,52に接続されている。前記端子51と52は、図示の描写とは異なった共通の端子で構成されてもよい。前記端子50,51,52を用いて、限界電流式プローブ10の端子18,19乃至2セル式プローブ20の端子28,29が接続される。符号38はインピーダンス測定のための交流電流源を示す。この交流電流源38からは切換えスイッチ41を介して択一的に限界電流式プローブ10又は2セル式プローブ20に、交流電流信号が端子53を介して印加される。前記端子53は2セル式プローブ20の端子28に接続しているが、端子51を介して限界電流式プローブ10の端子18にも接続がなされている。入力増幅器31(これは端子50と接続している)はさらにコンパレータ39と帰還結合されている。このコンパレータの別の入力側は仮想アース40に接続している。この仮想アースは駆動制御装置30に対する基準電位を提供し、それは0〜5Vの間の値である。入力増幅器31の出力側には電圧Vsが印加され、この電圧は、限界電流式プローブ10又は2セル式プローブ20のネルンストセルNZのセル電圧に相応している。
【0032】
この電圧Vsはさらに、周期的かつ永続的に実施されるインピーダンス測定に基づく交流電圧成分を備えた混合信号であってもよいし、その他の実施形式であってもよい。この交流電圧成分は例えば2セル式プローブ20又は1セル式プローブ10のインピーダンス測定によって引き起こされ、それによって温度測定が行われる。そのため、前記入力増幅器31には、さらに電圧Vsを直流電圧成分と交流電圧成分に信号分離させる回路装置32が接続されていてもよい。直流電圧成分Vs′は補償装置33に供給される。交流電圧成分Vacはインピーダンス測定装置34に供給される。この装置は補償装置33に内部抵抗値Rを供給している。
【0033】
補償装置33は、その入力量から人為的に算出されたネルンスト電圧Vs″を求めるように構成されており、ここでは、測定された電圧が、後続処理の前に、内部抵抗に係る電圧降下分だけ補正される。この補正は前記式(1)に従って行われる。人為的に算出されたネルンスト電圧Vs″は制御器35,例えばPID制御器に供給される。この制御器は公知の形式でコンパレータ36に接続されており、このコンパレータの基準入力側には電圧目標値(例えば450mVの電圧)が基準量として印加される。前記コンパレータ36ないし制御器35の出力側には、制御可能な電流源37(又は電流ベースのデジタル/アナログ変換器)が接続されており、これは人為的に算出されたネルンスト電圧Vs″だけ電圧目標値を補償するために、接続されている排ガスプローブないしセンサ10又は20に応じて、電流をそれぞれの接続されているセルに供給する。
図1
図2