(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングの硬化後に艶消し表面を有する熱硬化性の粉末塗料組成物並びにその簡単な製造方法に関する。熱硬化性の粉末塗料は、塗工時に有機溶剤を放出せず、従って液体塗料に対して明らかに環境的利点を有する。熱中での架橋は、結合剤中に含まれる官能基間での重付加反応もしくは重縮合反応を介して行われる。典型的な結合剤系は、アミン、アミジン、酸、無水物をベースとする硬化剤を有するエポキシ樹脂、エポキシをベースとする硬化剤を有するカルボキシル−ポリエステルもしくはカルボキシル−ポリアクリレート、ブロックトイソシアネートをベースとする架橋剤を有するヒドロキシル−ポリエステルもしくはヒドロキシル−ポリアクリレート、架橋剤としてジカルボン酸を有するエポキシ基を有するポリアクリレート、β−ヒドロキシアルキルアミドをベースとする架橋剤を有するカルボキシル−ポリエステルもしくはカルボキシル−ポリアクリレートなどである。種々の結合剤系は、塗料工学的特性の他に、特に屋外曝露における安定性の点で異なっている。純粋な結合剤系は、一般に、それらが、いわゆるワンショット法で1つだけの反応相手をもって、例えば架橋剤及び樹脂をもって加工され、そして硬化にもたらされる場合には、80を上回る目盛の光沢度(DIN 67530/ISO 2813、入射角60°)を有する高光沢性の表面をもたらす。
【0002】
基材に一様に平坦かつ艶消しの表面を与えるコーティング系は、かなり関心が持たれている。その理由は、十分に実用的な性質のものである。光沢のある表面は、艶消し表面よりもはるかに高い清浄化の程度を必要とする。更に、安全技術的理由から、強く反射する表面を避けることが望ましいことがある。粉末塗料産業の広範な利用分野、例えば建築分野、自動車分野及び金属調度品分野などにおいて、DIN 67530/ISO 2813に従って入射角60°で反射率計値として測定される艶消し(10〜30単位)表面と半艶消し(30〜50単位)表面に対する需要が高まっている。
【0003】
艶消し表面を得るための最も簡単な原理は、粉末塗料に、所望の艶消し効果の程度に応じて、より少量のもしくはより多量の充填剤、例えば白亜、微細な二酸化ケイ素もしくは硫酸バリウムなどの充填剤を混加することにある。しかしながら、これらの添加物は、塗料技術的な塗膜特性、例えば付着性、可撓性、耐衝撃性及び耐化学薬品性の悪化を引き起こす。
【0004】
塗料と非相溶性の物質、例えばワックスもしくはセルロース誘導体などの物質の添加は、たしかに明らかな艶消しをもたらすものの、押出の間の僅かな変化が、表面光沢に変動をもたらし、かつ暗色の色調における、いわゆる"フェード・アウト"をもたらす。艶消し効果の再現性は、保証されていない。
【0005】
EP0698645においては、少なくとも2種の別個に完成されたヒドロキシアルキルアミド粉末塗料の乾式混合(ドライブレンド)によって艶消し粉末コーティングを作成することが記載されている。
【0006】
US3,842,035においては、従って、艶消し塗料被覆は、十分に異なる反応性を有する完成した粉末塗料の、すなわち非常に短いゲル化時間を有する粉末塗料と非常に長いゲル化時間を有する粉末塗料の、いわゆるドライブレンドによって製造することが提案されている。使用される結合剤は、アクリル樹脂、アルキド樹脂及び好ましくはエポキシ樹脂である。
【0007】
WO−A−89/06674においては、半光沢のもしくは艶消しの表面を、異なる結合剤系から構成されている完成した粉末塗料をドライブレンドすることによって、従ってそれらを物理的に混合することによって製造することが記載されている。
【0008】
DE2324696においては、エポキシ基と反応する特殊な硬化剤、つまり環式アミジンと所定のポリカルボン酸との塩を使用することによって艶消し被覆を製造する方法が提案されている。粉末塗料の架橋は、この方法により、種々の反応性をもって、種々の温度で行われ、それによって、表面上には、艶消し表面を有する微細構造が形成される。しかしながら、この方法の使用は、エポキシ系の粉末塗料及びカルボキシル−ポリエステル/エポキシ系の粉末塗料に限定されるため、この方法では、十分な耐候性を有する被覆は製造することができない。
【0009】
EP366608においては、同様に、艶消し表面を有する粉末塗料の製造方法が提案されている。それは、エポキシ樹脂もしくはエポキシ化合物、例えばトリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)と、カルボキシル末端ポリエステル樹脂及びジ−、トリ−もしくはテトラキス−(β−カルボキシエチル)−シクロヘキサノンあるいは−シクロペンタノンからなる混合物とをベースとする粉末塗料に関する。その艶消し効果は、ここでは、架橋剤の脂肪族カルボキシレート基と、カルボキシル末端ポリエステル樹脂の芳香族カルボキシレート基との間の異なる反応性に起因するものである。
【0010】
他の特許文献DE3232463は、ヒドロキシル末端のポリエステル樹脂と、エポキシ化合物、例えばTGICなどの化合物と、特定の可逆的に封鎖される、遊離のカルボキシレート基を有するポリイソシアネートとを一緒に押し出すことによる、艶消し表面を有する粉末塗料を記載している。US4,801,680(EP322834)は、カルボキシレート基を有するポリエステルとβ−ヒドロキシアルキルアミドの粒子混合物からなる熱硬化性の粉末塗料を記載している。この粉末塗料は、支持体上に施与した後に、光沢のある塗料表面をもたらす。US4,801,680の例2によれば、得られた塗料表面は、紫外線照射の使用下での加速耐候試験の実施後に、その塗料表面の損傷を示さない。
【0011】
EP520429は、種々のヒドロキシル価を有するポリエステルからなる樹脂組成物を記載している。記載される樹脂組成物は、本質的にゲル化されていないポリエステルAと、本質的にゲル化されていないポリエステルBと、硬化剤としてのテトラメトキシメチルグリコールウリルと、触媒としての有機スルホン酸とを必ず含む。
【0012】
ヒドロキシアルキルアミド粉末塗料の艶消しのための方策に関しては、数多くの更なる刊行物が刊行されている、例えばR.Franiau,"Advances in β−Hydroxyalkylamide crosslinking chemistry"ECJ,(2002)10,p 409ff;D.Fink,U.Kubilius,"Optimising the Matting of Powder Coatings",Powder Coatings Europe 2002及びR.Guida,"A Novel Approach to Produce Reduced Gloss β−Hydroxyl Alkylamide Powder Coatings"Powder Coating 2002 PCI Conference;D.Beccaria et al."Modeling Gloss Control in Polyester/β−Hydroxyalkylamide Powder Coatings Based on SPM Structure−Property Relationship"Waterborne,High−Solids and Powder Coatings Symposium,Feb.26−28,2003,New Orleans,LA,USAである。
【0013】
公開公報KR 10−2009−0111720(出願番号10−2008−0037454)は、"シクロアルカンジカルボキサミド化合物、その製造及び使用"(同様にJ.Korean Ind.Eng.Chem.,Vol.20,No.2,April 2009,195−200を参照のこと)という翻訳された表題を有し、それは、特に例1において、そこに挙げられる化合物N
1,N
1,N
4,N
4−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサン−1,4−ジカルボキサミド(式3)を開示している。前記化合物は、
図2によれば、ほぼ190℃で最大ピークを有する、DSC分析による1つだけのピークしか有さない。該化合物のシス/トランス含量は、挙げられていない。更に、カルボキシル基を有するポリエステルであって、厳密に定義されておらず、広い範囲の幾つかのパラメータによってのみ示されているポリエステル(ポリエステルは一義的に特徴付けられておらず、市場ではこの粘度で知られていない)は、前記化合物と架橋され、かつ公知のβ−ヒドロキシアルキルアミド、ここでは例3で[N
1,N
1,N
6,N
6−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジパミド]として挙げられるもの(VESTAGON HAA 320又はPRIMID XL 552)、つまり従来技術からの硬化剤及び長年にわたり確立されていた商品であって、周知のように製造されたコーティングの光沢のある表面をもたらすものと比較される。
図3及び4においては、薄板が示されている。艶消しの被覆であることは記載されていない。慣用の硬化剤を用いて光沢のある被覆が得られるので、その可能性もない。
【0014】
艶消しの及び半艶消しの(50単位未満の光沢)の、ヒドロキシアルキルアミドを有する粉末塗料組成物については、つまり先行技術は、いわゆるドライブレンドである。すなわち、β−ヒドロキシアルキルアミドと、異なる酸価を有する樹脂(ポリマー)とをベースとする2種のヒドロキシアルキルアミド粉末塗料を別個に製造し、それらを次いで乾式混合物として磨砕に供給することが必要である。そのことは、かなりの多大な労力をもたらし、結合剤成分が異なる場合に光沢の変動が引き起こされ、その補正はかなりの追加の労力を意味する。更に、これらの乾式混合物は、エンドユーザにおいても、粉末塗料が通常のようにリサイクルされるべき場合には、それにより生ずる光沢の変化を伴い分離する。
【0015】
本発明の課題は、コーティングの硬化後に艶消し表面を有する熱硬化性の粉末塗料組成物並びにその簡単な製造方法を見出すことであった。
【0016】
前記課題は、架橋剤(硬化剤)としての新規の本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミドと本発明による方法によって解決される。
【0017】
本発明の対象は、主として、
A)5〜350mg KOH/gの酸価及び40℃を上回るガラス転移温度T
gを有する、少なくとも1種の、カルボキシレート基を有するポリマーと、
B)1分子当たりに2個もしくは3個もしくは4個のβ−ヒドロキシアルキルアミド基を有する、式I
【化1】
[式中、
R
1、R
2は、互いに独立して、同一もしくは異なる、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基もしくはアルケニル基から選択される基であり、その際、前記基は、ヘテロ原子及び/又は官能基を有してもよく、かつ
R
1は、水素であってもよく、かつ
R
2は、
【化2】
であってもよく、かつ
Aは、
【化3】
であり、
R
3は、互いに独立して、同一もしくは異なる、水素、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基もしくはアルケニル基から選択される基であり、その際、前記基は、ヘテロ原子及び/又は官能基を有してもよく、かつ2もしくはそれより多くの置換基R
3は、互いに結合して環を形成してよい]で示される、少なくとも1種のβ−ヒドロキシアルキルアミドと、
その際、前記β−ヒドロキシアルキルアミドは、150℃未満では固体形で存在する
C)任意に、助剤及び/又は添加剤と、
を含有する粉末塗料組成物であって、β−ヒドロキシアルキルアミド基対カルボキシレート基の比率は、0.5:1〜1.5:1である、前記粉末塗料組成物である。
【0018】
驚くべきことに、式Iによる新規の本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミドを架橋剤として使用することによって、DIN 67530/ISO 2813に従って60°の入射角で反射率計値として測定される艶消し(10〜30単位)の及び半艶消し(30〜50単位)の表面を有するコーティングが得られることが判明した。
【0019】
驚くべきことに、本発明による方法を通じて、いわゆるワンショット作業経路において、つまり全ての成分の一緒の押出によって、カルボキシレート基を有するポリマーと、架橋剤としての本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミドとをベースとする本発明による粉末塗料組成物が得られることが判明した。
【0020】
本発明の範囲において、架橋剤と硬化剤という用語は、同じ意味で使用される。
【0021】
架橋剤としてβ−ヒドロキシアルキルアミドをベースとする、反応性の点で異なる少なくとも2種の粉末塗料の費用のかかる乾式混合(ドライブレンド)は、必要にならない。更に、異なる反応性を有する少なくとも2種の樹脂のポリエステル混合物もしくはポリアクリレート混合物も必要にならない。
【0022】
粉末塗料組成物の製造のために本発明により使用されるβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物のための反応相手としては、カルボキシレート基を有するポリマーA)が考慮される。ポリマーとしては、重合体、重縮合体及び重付加化合物を使用できる。基本的に、少なくとも2つのカルボキシレート基を有し、かつ40℃を上回るガラス転移温度T
gを有する、あらゆるポリマーを使用できる。カルボキシレート基を有するポリマーとしては、5〜350mg KOH/gの酸価、好ましくは15〜150mg KOH/gの酸価、15mg KOH/g未満のOH価を有するものが適している。好ましくは、前記のポリマーは、少なくとも2つの末端位のカルボキシレート基を有する。
【0023】
本発明の範囲においては、カルボキシレート基を有するポリエステル及び/又はポリアクリレートが特に好ましい。
【0024】
カルボキシレート基を有するポリエステルA)は、好ましくは、ポリオール及びポリカルボン酸もしくはその誘導体から製造されるポリエステルポリカルボン酸である。前記の酸性ポリエステルのガラス転移温度T
gは、40〜80℃の範囲、好ましくは40〜70℃の範囲にあり、その酸価は、5〜250mg KOH/gで変動し、好ましくは10〜150mg KOH/gで変動し、有利には12〜120mg KOH/gで変動する。OH価は、15mg KOH/g未満である。前記ポリエステルは、1000〜10000g/モルの、好ましくは1500〜9000g/モルの、特に好ましくは2000〜8000g/モルの平均分子量M
wを有する。
【0025】
本発明により使用されるべきカルボキシレート基を有するポリエステルの製造のためには、ポリカルボン酸、例えばシュウ酸、コハク酸、アジピン酸、2,2,4(2,4,4)−トリメチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、ピロメリト酸が使用される。酸性ポリエステルのためには、ポリオールとして、例えば以下のものが使用される:エチレングリコール、1,2−及び1,3−プロパンジオール、1,2−、1,3−、1,4−及び2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,12−ドデカンジオール、2,2,4(2,4,4)−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリトール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、シクロヘキサン−1,4−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール並びにジプロピレングリコール。当然のように、ヒドロキシル基を含むポリエステルであって、公知の方法に従いポリカルボン酸及びポリオールから製造されるポリエステルも、ポリカルボン酸及び/又はポリカルボン酸無水物と反応して、ポリエステルポリカルボン酸となりうる。
【0026】
カルボキシレート基を有するポリエステル樹脂の製造は、公知の方法に従って、二価及び/又は多価の直鎖状のもしくは分枝鎖状の、脂肪族のもしくは脂環式のポリオールを、多価の、好ましくは二価もしくは多価の脂肪族の、脂環式のもしくは芳香族のカルボン酸又はその無水物あるいはそのエステルで、エステル化触媒又はエステル交換触媒の存在下に、約250℃までの温度で、かつ終わりに向けて低減された圧力下でエステル化もしくはエステル交換することによって行われる。好ましいポリオールは、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、2,2−[ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)]プロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリトリトールなどである。好ましくは、ポリオール成分は、できるだけ高いガラス転移温度を得るために、高い割合のネオペンチルグリコールを含有する。好ましい多価のカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリト酸、アジピン酸及び/又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。好ましいカルボキシレート基を有するポリエステル樹脂の官能性は、二価のカルボン酸と二価より価数の高いカルボン酸との比率によって調整される。
【0027】
好適なカルボキシレート基を有するアクリレートポリマーは、10〜350mg KOH/gの酸価を、好ましくは20〜300mg KOH/gの酸価を有し、かつ40℃を上回るガラス転移温度T
g、好ましくは45〜100℃のガラス転移温度T
gを有し、前記ポリマーは、モノマー混合物の単独重合又は共重合によって製造される。
【0028】
該ポリアクリレートは、カルボン酸基を有し、ホモポリマーもしくはコポリマーであってよい。
【0029】
使用可能なモノマーは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸、メタクリル酸及び/又はアクリル酸のC
1〜C
40−アルキルエステル及び/又はシクロアルキルエステル、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、1,2−エポキシブチルアクリレート、1,2−エポキシブチルメタクリレート、2,3−エポキシシクロペンチルアクリレート、2,3−エポキシシクロペンチルメタクリレート並びに類似のアミドであり、その際、スチレン及び/又はそれらの誘導体を添加してもよい。
【0030】
好ましくは、ブチルアクリレート及び/又はブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート及び/又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、スチレン、(メタ)アクリル酸及び場合により他の不飽和のモノマーが使用され、その際、少なくとも1種のカルボキシレート基を有するモノマーが使用される。
【0031】
更なる好適なモノマーは、(シクロ)アルキル基中に2〜18個の炭素原子を有するアクリル酸もしくはメタクリル酸の(シクロ)アルキルエステルである。好適なもしくは好ましくは好適なモノマーの例は、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ネオペンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート及びステアリルメタクリレートである。
【0032】
モノマーとしては、例えばスチレン、ビニルトルエン及びエチルスチレンが考慮される。その例は、アクリル酸及びメタクリル酸であり、それらはまた好ましく使用され、またクロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸である。
【0033】
該ポリアクリレートは、好ましくは10mg KOH/g未満のOH価を有し、5〜350mg KOH/g、好ましくは20〜300mg KOH/g、特に好ましくは30〜250mg KOH/gの酸価を有し、40〜110℃の、好ましくは45〜100℃のT
gを有し、500〜50000g/モルの、好ましくは1000〜30000g/モルの、特に好ましくは1500〜20000g/モルのM
wを有する。
【0034】
共架橋剤としては、エポキシ樹脂を使用してもよい。その際、例えばグリシジルエーテル及びグリシジルエステル、脂肪族エポキシド、ビスフェノールAをベースとするジグリシジルエーテル及びグリシジルメタクリレートが考慮される。かかるエポキシドのための例は、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC商品名、例えばARALDIT PT 810、Huntsman;TEPIC G、Nissan;Taida TGIC、Anhui Taida)、テレフタル酸ジグリシジルエステル及びトリメリト酸トリグリシジルエステルからなる混合物(商品名、例えばARALDIT PT 910及びPT912、Huntsman)、バーサチック酸のグリシジルエステル(商品名、例えばCARDURA E10、Shell)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ECC)、ビスフェノールAをベースとするジグリシジルエーテル(商品名、例えばEPIKOTE 828、Shell)、エチルヘキシルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ペンタエリトリットテトラグリシジルエーテル(商品名、例えばPOLYPOX R 16、UPPC AG)並びに遊離のエポキシ基を有する他のPolypox型のものである。混合物を使用することもできる。好ましくは、TEPIC G又はARALDIT PT 910及び912が使用される。かかる共架橋剤は、本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミド(艶消し硬化剤)及び共架橋剤からなる使用される硬化剤混合物の50質量%まで使用できる。
【0035】
驚くべきことに、骨格中にシクロヘキサン環を有するβ−ヒドロキシアルキルアミド(その際、該β−ヒドロキシアルキルアミドは、150℃未満で固体形で存在する)は、粉末塗料中のカルボキシル基を有するポリマーのための架橋剤として硬化の後に艶消し表面をもたらすことが判明した。
【0036】
β−ヒドロキシアルキルアミドB)は、種々の出発物質から製造できる。β−ヒドロキシアルキルアミンと、カルボン酸のエステルとの反応が知られており、その際、後者が、基本骨格(A)を生ずる。出発物質の選択に応じて、こうして本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミドを製造できる。
【0037】
代替的はあるが、あまり好ましくない方法は、別のカルボン酸誘導体、例えばカルボン酸、カルボン酸塩化物、カルボン酸無水物又は別の活性化されたカルボン酸誘導体を、β−ヒドロキシアルキルアミンと反応される出発物質として基礎とする。
【0038】
好適なβ−ヒドロキシアルキルアミンは、炭化水素骨格中に少なくとも2から10個までの炭素原子を有するアルキル基を有するものである。該アルキル基は、直鎖状、分枝鎖状又は環式であってもよい。同様に、該アルキル基は、ヘテロ原子、好ましくは酸素、窒素で置換されていてよい。更に、これらのアルキル基は、また、官能基、好ましくはカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ウレタン基を含んでよく、かつ窒素原子上に追加のアルキル基を有してよい。
【0039】
好ましくは本発明においては、β−ヒドロキシアルキルアミドは、N−アルキル−1,2−アルカノールアミンから及び/又はN,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン及びシクロヘキサンジカルボン酸のエステルから製造される。
【0040】
特に好ましくは、式II及び/又はIII:
【化4】
[式中、R
1は、水素、メチル、エチル、プロピルであり、R
2は、メチルである]
【化5】
[式中、R
1は、同時にもしくは互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピルである]のβ−ヒドロキシアルキルアミンが使用される。
【0041】
特に好ましくは、本発明によれば、以下の化合物が、β−ヒドロキシアルキルアミドの製造のための出発物質として使用される:ジエタノールアミン(DEA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、ジ−s−ブタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチル−イソプロパノールアミン。
【0042】
本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミドにおける置換基Aのための出発化合物としては、1,2−、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸誘導体、特にシクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルが適している。その際、出発化合物は、任意のシス/トランス含有量を有してよい。
【0043】
好ましくは、式IV
【化6】
[式中、R
4は、同時にもしくは互いに独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチルである]の化合物が使用される。
【0044】
特に好ましくは、1,4−置換されたシクロヘキサンジカルボン酸エステル、殊に好ましくはジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートが使用される。
【0045】
本発明により特に好ましい、ジアルキル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートからの、好ましくはジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートからのβ−ヒドロキシアルキルアミドは、70モル%以上の、好ましくは80モル%を上回る、特に好ましくは85モル%を上回る、シクロヘキシル環上のカルボキシル基の位置に対するトランス含量を有する。その際、好ましいβ−ヒドロキシアルキルアミドの製造のためには、任意のトランス含量を有するジアルキル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートを使用することができる。
【0046】
本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミド(I)は、150℃未満で、好ましくは170℃未満で、特に好ましくは180℃未満で、固体形で存在する。
【0047】
特に好ましい本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミドは、以下の式:
【化7】
【0048】
【化8】
[式中、
R
2は、メチル又は
【化9】
であり、その際、R
1Aは、水素であり、かつR
1Bは、メチル、エチル、プロピルであるか、又はR
1Aは、メチル、エチル、プロピルであり、かつR
1Bは、水素であり、かつ
Aは、式
【化10】
の1,4−二置換されたシクロヘキサン環であり、その際、Aのトランス含量は、70モル%以上である]を有し、該β−ヒドロキシアルキルアミドは、150℃未満で固体形で存在する。
【0049】
ジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートとジエタノールアミンとからなる、式XII
【化11】
で示される、1分子当たり4つのβ−ヒドロキシアルキルアミド基を有する、本発明により特に好ましいβ−ヒドロキシアルキルアミドは、70モル%以上の、好ましくは80モル%を上回る、特に好ましくは85モル%を上回るシクロヘキシル環でのトランス含量を有する。
【0050】
粉末塗料組成物の塗料工学的特性を達成するために、β−ヒドロキシアルキルアミド基対カルボキシレート基を有するポリマー中のカルボキシレート基の比率は、好ましくは0.5〜1.5:1、特に好ましくは0.8〜1.2:1である。
【0051】
該粉末塗料組成物には、粉末塗料工学において慣用の助剤及び添加剤C)、例えばレベリング剤、例えばポリシリコーンもしくはアクリレート、光保護剤、例えば立体障害アミン及び/又は吸収剤、ガス抜き剤(例えばベンゾフェノン)、変性されたフェノール樹脂、触媒及び/又は別の助剤、例えばEP669353に記載されたような助剤を、0.1〜10質量%の全量で添加してよい。充填剤及び顔料、例えば二酸化チタンなどの顔料は、全組成物の50質量%までの量で添加してよい。
【0052】
前記粉末塗料組成物は、量的には以下のとおり構成されている:
【表1】
【0053】
本発明による粉末塗料組成物は、粉末塗料について慣用の、30±1℃もしくは40±1℃の温度でのDIN EN ISO 8130−8による貯蔵試験において、良好な貯蔵安定性を有し、それは、30日を上回って貯蔵可能である。
【0054】
本発明の特に好ましい実施形態においては、本発明による粉末塗料組成物中に、
・ 15〜150mg KOH/gの酸価と、少なくとも40℃のガラス化温度を有する、カルボキシレート基を有する少なくとも1種のポリエステルと、
・ 少なくとも2つもしくはそれより多くの、好ましくは4つのβ−ヒドロキシルアルキルアミド基を有する少なくとも1種の本発明によるβ−ヒドロキシルアルキルアミド、又は同じ及び/又は異なる官能性を有するそれらの混合物と、
・ 任意に、粉末塗料について慣用の他の添加剤及び助剤、例えば湿潤剤、レベリング剤もしくはガス抜き剤、熱安定剤もしくは紫外線安定剤、顔料、染料、充填剤、共架橋剤などの添加剤及び助剤と
が含まれている。
【0055】
本発明の対象は、主として、
A)5〜250mg KOH/gの酸価及び40℃を上回るガラス転移温度T
gを有する、少なくとも1種の、カルボキシレート基を有するポリマーと、
B)1分子当たりに2個もしくは3個もしくは4個のβ−ヒドロキシアルキルアミド基を有する、式I
【化12】
[式中、
R
1、R
2は、互いに独立して、同一もしくは異なる、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基もしくはアルケニル基から選択される基であり、その際、前記基は、ヘテロ原子及び/又は官能基を有してもよく、かつ
R
1は、水素であってもよく、かつ
R
2は、
【化13】
であってもよく、かつ
Aは、
【化14】
であり、
R
3は、互いに独立して、同一もしくは異なる、水素、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基もしくはアルケニル基から選択される基であり、その際、前記基は、ヘテロ原子及び/又は官能基を有してもよく、かつ2もしくはそれより多くの置換基R
3は、互いに結合して環を形成してよい]で示される、少なくとも1種のβ−ヒドロキシアルキルアミドと、
その際、前記β−ヒドロキシアルキルアミドは、150℃未満では固体形で存在する
C)任意に、助剤及び/又は添加剤と、
を含有し、β−ヒドロキシアルキルアミド基対カルボキシレート基の比率が、0.5:1〜1.5:1である粉末塗料組成物の製造方法において、溶融物において全成分を80〜150℃の温度で一緒に押出することによって行う前記製造方法である。
【0056】
本発明の対象は、また、成分B)として、式XIIA
【化15】
によるN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドが含まれており、この化合物が、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、70モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表2】
を有する粉末塗料組成物の製造方法である。
【0057】
本発明の対象は、また、成分B)として、式XIIA
【化16】
によるN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドが含まれており、この化合物が、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、70モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表3】
を有し、かつ
5. 前記化合物は、単結晶のX線構造解析によれば、以下のパラメータ:
【表4】
を有する粉末塗料組成物の製造方法である。
【0058】
本発明による粉末組成物の製造は、好ましくは、溶融物において、80〜150℃の温度での全成分A)〜C)の一緒の押出によって行われる。押出物は、引き続き冷却され、粉砕され、そして120μm未満、好ましくは100μm未満の粒度に篩別又は分級される。本発明により製造される熱硬化性で毒性学的に非の打ち所のない粉末塗料組成物は、従って、全成分の一緒の押出によって得られたマトリックスからなる。
【0059】
本発明による効果、つまり入射角60°での50未満のDIN 67530/ISO 2813による光沢度を有する艶消し表面の形成の達成のために、官能性及び反応性の点で異なる、多岐に亘るカルボキシレート基を有するポリマーが、特にカルボキシレート基末端を有するポリエステルもしくはポリアクリレートが使用できる。従って、所望の光沢は、選択された結合剤パートナー(ポリエステル)を介して、同じ配合であっても、かなりの幅(例1〜7)がある本発明によるヒドロキシルアルキルアミドと組み合わせて選択することができる。ポリアクリレートを有する例(8)は、それとは異なるが、それというのも、高められた酸価のためにはより多くの架橋剤が必要であり、予想されるべきより高い脆性に基づいて、より低い顔料着色が選択されたからである。
【0060】
コーティングの製造のための粉末塗料の使用及び施与は、粉末塗料に慣用の方法に従って、好ましくは静電的粉末塗料吹き付け装置によって摩擦電気的な方法もしくはコロナ法によって又は流動床法によって行われる。
【0061】
通常の周囲温度では、本発明により製造された粉末塗料組成物は、良好な貯蔵安定性を有し、150〜220℃で架橋した後に、良好な塗料工学的な特性、光学的に良好に延びる表面及び記載した低い光沢度を示す。
【0062】
先行技術に対して、本発明による粉末塗料組成物を用いると、光学的に非常に美しく良好に延びる(PCI評点表 8〜10)けれども、60°の入射角でDIN 67530/ISO 2813により反射率計値として測定された艶消し(10〜30単位)及び/又は半艶消し(30〜50単位)の表面を有するコーティングが得られるが、乾式混合物(ドライブレンド)もポリエステル混合物もポリアクリレート混合物(ワンショットブレンド)も必要とされない。このバリエーションを越えて、付加的に、60°の入射角でDIN 67530/ISO 2813により測定された反射率計値を、60°の角度で80を上回る目盛の高光沢が回復するまでのより高い値に変更する方策がある。それは、本発明による艶消し硬化剤B)を、種々の官能性を有する2つもしくは2つより多くのβ−ヒドロキシルアルキルアミド基を有する市場で通常のβ−ヒドロキシルアルキルアミド又はそれらの混合物と交換することによって行われる。
【0063】
本発明の対象は、主として、
A)5〜350mg KOH/gの酸価及び40℃を上回るガラス転移温度T
gを有する、少なくとも1種の、カルボキシレート基を有するポリマーと、
B)1分子当たりに2個もしくは3個もしくは4個のβ−ヒドロキシアルキルアミド基を有する、式I
【化17】
[式中、
R
1、R
2は、互いに独立して、同一もしくは異なる、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基もしくはアルケニル基から選択される基であり、その際、前記基は、ヘテロ原子及び/又は官能基を有してもよく、かつ
R
1は、水素であってもよく、かつ
R
2は、
【化18】
であってもよく、かつ
Aは、
【化19】
であり、
R
3は、互いに独立して、同一もしくは異なる、水素、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基もしくはアルケニル基から選択される基であり、その際、前記基は、ヘテロ原子及び/又は官能基を有してもよく、かつ2もしくはそれより多くの置換基R
3は、互いに結合して環を形成してよい]で示される、少なくとも1種のβ−ヒドロキシアルキルアミドと、
その際、前記β−ヒドロキシアルキルアミドは、150℃未満では固体形で存在する
C)任意に、助剤及び/又は添加剤と、
を含有し、β−ヒドロキシアルキルアミド基対カルボキシレート基の比率が、0.5:1〜1.5:1である粉末塗料組成物を、60°の入射角で50未満の、DIN 67530/ISO 2813による光沢度を有する、艶消し表面を有するコーティングを製造するために用いる使用である。
【0064】
本発明の殊に好ましい対象は、成分B)として、式XIIA
【化20】
によるN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの化合物を有する粉末塗料組成物であって、この化合物が、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、70モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表5】
を有する前記組成物である。
【0065】
特に好ましい成分B)の説明:
本発明の特に好ましい対象は、成分B)として、式XIIAによるβ−ヒドロキシアルキルアミドであるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドが含まれている粉末塗料組成物であって、その化合物が、N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、70モル%以上の、好ましくは80モル%を上回る、特に好ましくは85モル%を上回るシクロヘキシル環でのトランス含量を有する前記塗料組成物である。
【0066】
付加的に、前記の本発明による成分B)として使用される、式XIIAによるβ−ヒドロキシアルキルアミドであるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドは、DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピーク、つまり、約160℃の極大値を有する第一のピーク(ピーク1)と、約190℃で極大値を有する他の第二のピーク(ピーク2)を有し、それらは、実施例に対する描写である。好ましくは、第一のピークは、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、第二のピークは、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有する。特に好ましくは、第一のピークは、155〜170℃の範囲にあり、158〜165℃の極大値を有し、第二のピークは、170〜210℃の範囲にあり、180〜205℃の極大値を有する。
【0067】
吸熱ピーク1(約160℃)対吸熱ピーク2(約190℃)のエンタルピーの比率は、1:1〜1:5、好ましくは1:1〜1:3であってよい。
【0068】
DSC測定は、2010年3月のDIN EN ISO 11357−1に従って実施された。製造元Mettler−Toledo社のDSC 821型の熱流量差熱量計を使用した。試験は、−30℃から250℃までで10K/分で1回行われる。
【0069】
粉末状試料のXRPD測定は、X線回折計においてCu Kα線(1.541Å)を用いて実施した。
図9によれば、以下の重要で特徴的な、式XIIAによるβ−ヒドロキシアルキルアミドのN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの6つのピークが見出された:
【表6】
【0070】
殊に、成分B)として、式XIIAによるβ−ヒドロキシアルキルアミドであるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドであって、N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、92モル%以上の、好ましくは94モル%を上回る、特に好ましくは96モル%を上回る、殊に好ましくは98モル%を上回るシクロヘキシル環でのトランス含量を有する前記ジアミドが好ましい。
【0071】
本発明による成分B)として使用される式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミドは、175℃未満で、好ましくは180℃未満で、特に好ましくは185℃未満で固体形で存在する。
【0072】
本発明による成分B)として使用される、特徴1.〜4.を有する式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミドは、単結晶のX線構造解析によって調査された。測定のための詳しい記載は、補足1にまとめられている。単結晶のX線構造解析により、以下の構造についての結果が得られた:
【表7】
【0073】
括弧内の値は、測定精度を、相応する最後の桁もしくは最後の2つの桁について、それぞれプラスマイナスで示す。
【0074】
本発明の殊に好ましい対象は、成分B)として、式XIIA
【化21】
によるN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの化合物を有する粉末塗料組成物であって、この化合物が、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、70モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表8】
を有し、
5. 前記化合物は、単結晶のX線構造解析によれば、以下のパラメータ:
【表9】
を有する前記組成物である。
【0075】
製造
特に好ましい、成分B)として使用される式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドは、種々の方法によって得られる:
まず、まさしく上記のように、式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドは、押出機、強力ニーダー、強力ミキサー又は静的ミキサーにおいて、好ましくは押出機において、好ましくは溶剤不含で製造される。その際、100〜180℃の温度が使用される。それに引き続き、好適な溶剤、好ましくは水中で再結晶化が行われる。20〜100℃の温度で溶解し、晶出させた後に、式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドは、上述のパラメータをもって得られる。これは、次いで引き続き、アルコール、好ましくはメタノールで洗浄され、乾燥させることができる。好ましくは、乾燥は、20〜90℃で行われ、真空で行ってもよい。
【0076】
製造の一つの更なる別形は、まさしく上記のように、式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドを、押出機、強力ニーダー、強力ミキサー又は静的ミキサーにおいて、好ましくは押出機において、好ましくは溶剤不含で製造することによって行われる。その際、100〜180℃の温度が使用される。引き続き、熱処理は、50〜100℃の温度で、好ましくは70〜85℃の温度で行われる。時間は、6時間を上回り、好ましくは12時間を上回る。熱処理は、真空中で行ってよい。
【0077】
特に好ましい、成分B)として使用される式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドは、溶剤中で断続的に、つまり回分法で行ってもよい。
【0078】
該反応は、通常の反応器において実施される。その際、無圧で、還流冷却器を使用しつつ、又は圧力下に閉じた反応器で作業してよい。
【0079】
合成は、溶剤中、好ましくはアルコール中、有利にはメタノール中で行われる。添加される溶剤の量は、全ての使用される出発物質(出発物)の全量に対して、10質量%超、好ましくは15質量%超である。その際、還流下で、又はより低い温度でも、より高い温度でも、圧力下に作業することができる。
【0080】
その製造は、20〜120℃の温度で、好ましくは60〜90℃の温度で、特に好ましくは70〜85℃の温度で行われる。
【0081】
晶出させた後に、式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドは、上述のパラメータをもって得られる。
【0082】
更に、式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの製造は、閉じた装置内で圧力下で60〜140℃の温度で溶剤を添加せずに行うことができる。
【0083】
こうして回分法で製造された式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドは、好適な溶剤中で、好ましくは水もしくはアルコール中で、有利にはメタノール中で再結晶化させることができる。
【0084】
更に、式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの製造は、断続的に溶剤を用いずにも行うことができる。該反応は、通常の反応器において実施される。その際、還流冷却器を使用して作業することができる。好ましくは、その製造は、20〜140℃の温度で、好ましくは60〜90℃の温度で、特に好ましくは70〜85℃の温度で行われる。こうして回分法で得られるβ−ヒドロキシアルキルアミドは、次いで、好適な溶剤中で、好ましくは水もしくはアルコール中で、有利にはメタノール中で再結晶化される。晶出させた後に、式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドは、上述のパラメータをもって得られる。N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの製造後の最終生成物中のその全ての異性体の濃度は、75質量%、好ましくは80質量%、特に好ましくは85質量%である。
【0085】
この本願で記載されかつ特徴付けられた式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドは、実施例に示すことができたように、60°の角度で50を下回る目盛の光沢を有する粉末塗料において大幅な艶消しをもたらす。この式XIIAの生成物は、従って、公開公報KR10−2009−0111720により開示されたβ−ヒドロキシアルキルアミド(及びKorean Ind.Eng.Chem.,Vol.20,No.2,April 2009,195−200からのβ−ヒドロキシアルキルアミド)とは明らかに異なり、前記公開公報では第15頁の
図2で、それが約190°でDSC分析による1つだけのピークしか有さないことが裏付けられており、かつ比較例4cは、艶消し表面を有するコーティングをもたらさないことを示している。
【0086】
本発明の対象は、また、成分として、式XIIA
【化22】
によるN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドが含まれており、この化合物が、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、70モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表10】
を有する、上記の粉末塗料組成物を、入射角60°でDIN 67530/ISO 2813に従って反射率計値として測定された50単位未満の光沢を有する艶消し表面を有するコーティングを製造するために用いる使用である。
【0087】
本発明の対象は、また、成分B)として、式XIIA
【化23】
によるN,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドが含まれており、この化合物が、以下のパラメータ:
1. N,N,N′,N′−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの全ての存在する異性体の全量に対して、70モル%以上のシクロヘキシル環でのトランス含量を有し、かつ
2. DSC分析(示差走査熱量測定)による2つの吸熱ピークを有し、その際、ピーク1は、140〜170℃の範囲にあり、155〜165℃の極大値を有し、ピーク2は、170〜210℃の範囲にあり、175〜207℃の極大値を有し、かつ
3. 吸熱ピーク1と吸熱ピーク2とのエンタルピーの比率は、1:1〜1:5であり、かつ
4. Cu Kα線(1.541Å)を用いて測定されたX線回折計での粉末状試料のXRPDスペクトルは、以下のピーク:
【表11】
を有し、かつ
5. 前記化合物は、単結晶のX線構造解析によれば、以下のパラメータ:
【表12】
を有する、上記の粉末塗料組成物を、入射角60°でDIN 67530/ISO 2813に従って反射率計値として測定された50単位未満の光沢を有する艶消し表面を有するコーティングを製造するために用いる使用である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【
図1】
図1は、例3aに記載される式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミドのDSCグラフを示す。
【
図2】
図2は、例3bに記載される式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミドのDSCグラフを示す。
【
図3】
図3は、例4bに記載される式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミドのDSCグラフを示す。
【
図4】
図4は、例4cに記載されるβ−ヒドロキシアルキルアミドのDSCグラフを示す。
【
図5】
図5は、例3aに記載される式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミド(艶消し材料)のXRPD(X線粉末回折)分析を示す。
【
図6】
図6は、例3aに記載される式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミド(艶消し材料)の特徴的なXRPDピーク(2θ角度)を示す。
【
図7】
図7は、例4cに記載されるβ−ヒドロキシアルキルアミド(非艶消し材料)のXRPD(X線粉末回折)分析を示す。
【
図8】
図8は、例4cに記載されるβ−ヒドロキシアルキルアミド(非艶消し材料)の特徴的なXRPDピーク(2θ角度)を示す。
【
図9】
図9は、例4bに記載される式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミド(艶消し材料)のXRPD(X線粉末回折)分析を示す。
【
図10】
図10は、ナンバリングスキームを有するOrtepプロット(50%)を示す。
【
図11】
図11は、N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミド(試料vesta)の単結晶構造測定を基礎とする計算された粉末回折図を示す。
【0089】
実施例
以下の実施例並びに第1表、第2表及び第3表は、コーティング系の組成と、その都度のコーティングのその適用及び硬化の後の特性を特徴付けている。
【0090】
使用物質:
1)β−ヒドロキシアルキルアミド
a)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とジエタノールアミンとをベースとする、1分子当たりに4つのβ−ヒドロキシアルキルアミド基を有する式XIIで示されるβ−ヒドロキシアルキルアミド(艶消し硬化剤)は、90%を上回るシクロヘキシル環でのトランス含量を有する(Evonik Degussa GmbH,ドイツ)。
【0091】
【表13】
【0092】
b)VESTAGON(登録商標)HA 320、OH価:660〜740mg KOH/g、溶融範囲:115〜130℃、(Evonik Degussa GmbH,ドイツ)。
【0093】
2)カルボキシレート基を有するポリマー − 樹脂
a)非晶質ポリエステル:
Crylcoat(登録商標)2617−3,酸価:33mg KOH/g、T
g:61℃、(Cytec Inc.,米国)
Crylcoat(登録商標)2618−3,酸価:35mg KOH/g、T
g:61℃、(Cytec Inc.,米国)
Crylcoat(登録商標)E 36988,酸価:30mg KOH/g、T
g:54℃、(Cytec Inc.,米国)
Uralac(登録商標)P 800,酸価:28mg KOH/g、T
g:61℃、(DSM Resins B.V.,オランダ)
Uralac(登録商標)P 865,酸価:35mg KOH/g、T
g:56℃、(DSM Resins B.V.,オランダ)
Pulverol(登録商標)8120,酸価:33mg KOH/g、T
g:60℃、(Neochimiki LV s.a.,ギリシャ)
Pulverol(登録商標)8123,酸価:33mg KOH/g、T
g:60℃、(Neochimiki LV s.a.,ギリシャ)
b)ポリアクリレート
Joncryl(登録商標)819,酸価:75mg KOH/g、T
g:57℃、(BASF AG,ドイツ)
【0094】
3)共架橋剤
a)トリグリシジルイソシアヌレート:
TEPIC(登録商標)G,エポキシ当量:<110g/当量、溶融範囲:90〜125℃,(Nissan Chemical Ind.Ltd.,日本)
【0095】
4)更なる配合成分:
二酸化チタン Kronos(登録商標)2160,(Kronos Titan GmbH社,ドイツ)
Resiflow(登録商標)PV88(Worlee−Chemie GmbH,ドイツ)
ベンゾイン,(Merck−Schuchard,ドイツ)
【0096】
粉末塗料及びコーティング
粉末塗料の製造は、第一に、第1表及び第2表による全成分を室温でMITミキサー中で500rpmで120秒にわたり混合し、引き続き、第二に、溶融物において90℃の温度(ハウジング)で一緒に押し出す(約130℃の材料温度)ことによって行った。ポリエステルもしくはポリアクリレートの酸基対β−ヒドロキシアルキルアミド(硬化剤)のOH基の化学量論比は、約1:1であった。共架橋剤を使用した場合に、これらは、硬化剤量で化学量論的に考慮した。
【0097】
押出物を引き続き冷却し、粉砕し、100μm未満の粒度に篩別した。こうして製造された粉末塗料を、静電式粉末吹き付け装置を用いて60KVで脱脂した鋼板(Krueppel社製のTiefzieh−St 210×70×0.8mm)及び/又はアルミニウム板(Q−panel AL−36 5005 H 14/08 0.8mm)上に適用し、循環空気乾燥キャビネットにおいて160〜220℃で焼き付けた。硬化された塗膜は、約55〜65μmの層厚を有している。実施例のデータは、200℃での20分の焼き付け時間に関するものである。
【0098】
第1表
種々のポリエステル及びポリアクリレートを用いた挙動についての試験
本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミド1a(艶消し硬化剤)及び種々の樹脂を有する配合例
【表14】
【0099】
本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミド1a)と、VESTAGON HA 320などの市場で慣用のβ−ヒドロキシアルキルアミド1b)とを交換するか、又は同じ及び/又は異なる官能性を有する別の商品との混合物とを交換することによっても、光沢は、僅かな混合でも保持でき、又は所望であれば、高められた添加もしくは交換によって、より高い値に変えることができる。ここで例9〜13では、ポリエステルをもとに示されている。
【0100】
本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミド1a(艶消し硬化剤)及び種々の樹脂を有する配合例及び商慣習のβ−ヒドロキシアルキルアミド1b)を有する配合例
第2表
【表15】
【0101】
共架橋剤としては、エポキシ樹脂を使用してもよい。その際、例えばグリシジルエーテル及びグリシジルエステル、脂肪族エポキシド、ビスフェノールAをベースとするジグリシジルエーテル及びグリシジルメタクリレートが考慮される。かかるエポキシドのための例は、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC商品名、例えばARALDIT PT 810、Huntsman;TEPIC G、Nissan;Taida TGIC、Anhui Taida)、テレフタル酸ジグリシジルエステル及びトリメリト酸トリグリシジルエステルからなる混合物(商品名、例えばARALDIT PT 910及びPT 912、Huntsman)、バーサチック酸のグリシジルエステル(商品名、例えばCARDURA E10、Shell)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ECC)、ビスフェノールAをベースとするジグリシジルエーテル(商品名、例えばEPIKOTE 828、Shell)、エチルヘキシルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ペンタエリトリットテトラグリシジルエーテル(商品名、例えばPOLYPOX R 16、UPPC AG)並びに遊離のエポキシ基を有する他のPolypox型のものである。混合物を使用することもできる。好ましくは、TEPIC G又はARALDIT PT 910及び912が使用される。
【0102】
かかる共架橋剤は、艶消し硬化剤及び共架橋剤からなる使用される硬化剤混合物の50質量%まで使用できる。
【0103】
本発明によるβ−ヒドロキシアルキルアミド1a(艶消し硬化剤)及び共架橋剤を有する配合例
第3表
【表16】
【0104】
例3a、例3b;例4a、例4b、例4c、例4d;例5
DSC測定
DSC測定は、2010年3月のDIN EN ISO 11357−1に従って実施された。
【0105】
製造元Mettler−Toledo社のDSC 821型の熱流量差熱量計(シリアル番号:5116131417)を使用した。試験は、−30℃から250℃までで10K/分で1回行われる。
【0106】
測定方法の詳細な説明:
1. 使用されるDSC機器の型(熱流示差熱量計もしくは熱量補償形熱量計)、モデル及び製造元;
2. 使用される坩堝の材質、種類及び型並びに必要であれば質量;
3. 使用されるパージガスの種類、純度及び流量;
4. 較正法の種類並びに、起源、質量及び較正のために重要な他の特性を含む使用される較正物質の詳細;
5. 試料採取、試験体準備及びコンディショニングの詳細
【0107】
1: 熱流示差熱量計
製造元:Mettler−Toledo
モデル:DSC 821
シリアル番号:5116131417
2: 坩堝材料:超純粋アルミニウム
大きさ:40μl、ピンなし
Mettler注文番号:ME−26763
蓋を含んだ質量:約48mg
3: パージガス:窒素
純度:5.0(>99.999体積%)
流量:40ml/分
4: 較正法:簡易
材料1:インジウム
Mettler−Calibrier−Set ME−51119991
質量:正味重量あたり約6mg
温度(開始)及び熱流の較正
材料2:脱塩水
ハウスシステムから取り出す
質量:正味重量あたり約1mg
温度(開始)の較正
5: 試料採取:供給された試料小瓶から
試料正味重量:8〜10mg
試料準備:坩堝の底でスタンプにより押しつける
坩堝蓋:穴あき
測定プログラム:−30℃〜250℃ 10K/分 1×
【0108】
XRPD測定の説明:
粉末状の試料を、粉末ホルダ中に押圧し、Philips社のX線回折計PW1800においてCu Kα線(1.541Å)で以下の条件:
励起:40kV、45mA
測定範囲:3°≦2θ≦40°
ステップサイズ:0.1°(2θ)
ステップ当たりの時間:20秒
回転:1/4回転/秒
受光スリット:粗い
発散スリット:自動
で測定する。
【0109】
【表17】
【0110】
例3a
還流冷却器及びガラス撹拌機を有する3つ口フラスコにおいて、92.24gのジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートを、96.91gのジエタノールアミン、10.84gのメタノール中30%ナトリウムメチレート及び52gのメタノールを装入する。均質な溶液が生じる。
【0111】
該バッチを、オイル加熱浴中で6時間にわたり撹拌しながら還流下に沸騰させる(浴温度80℃)。その際、約0.5時間後に生成物が沈殿し始める。
【0112】
該反応バッチを冷却させ、その際、他の生成物が晶出する。引き続き、沈殿した生成物を濾別によりメタノールと分離し、引き続いて乾燥させる。収率は、理論値の80%超である(第3a表)。
【0113】
従って、
図1によるDSCにおける2つの吸熱ピーク(第一のピークは、約160℃で、第二のピークは、約190℃である)を有し、かつ
図5及び第5表によるXRPDスペクトルを有する式XIIAによるN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドが得られる。こうして製造された生成物は、60°の角度で50を下回る目盛の光沢を有する粉末塗料における大幅な艶消しをもたらす(第3a表)。
【0114】
例3b
例3aで製造された生成物を、沸騰した水に溶かし、次いでゆっくりと再び冷やし、晶出が行われた後に、かるくメタノールで後洗浄する(第3a表)。
【0115】
この生成物は、
図2に見られる2つの吸熱ピークを示し、得られた粉末塗料における60度の角度で29の目盛の艶消し効果が存在する(第3a表)。
【0116】
【表18】
【0117】
【表19】
【0118】
製造例A
ジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレート及びジエタノールアミンからの押出機における式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミドの1つの製造
【表20】
【0119】
3種の物質流で実施した:
物質流1は、DMCDからなる。
【0120】
物質流2は、DEAからなる。
【0121】
物質流3は、メタノール性のナトリウムメチレート溶液である触媒からなる。
【0122】
それらの物質流は、ジメチル−1,4−シクロヘキシルジカルボキシレートとジエタノールアミンとのモル比が1:1.95であるように計量供給した。
【0123】
全配合に対する触媒の全量(ナトリウムメチレートのみ、溶剤不含で計算した)は、0.50〜3.0%であった。
【0124】
物質流1は、10.0kg/hの量で、二軸スクリュー押出機(ZSK30、32d)の第一のハウジングに供給した(該物質流の温度 80〜130℃)。
【0125】
物質流2は、9.9kg/hの量で供給した(物質流の温度 65〜145℃)。
【0126】
物質流3は、押出機への入口から物質流2に噴入させた(0.5〜2.0kg/h)。
【0127】
使用された押出機は、個別に加熱と冷却が可能な8つのハウジングからなる。ハウジング1〜5:160℃、ハウジング6〜8:120〜160℃。
【0128】
ハウジング3、5及び8は、真空ドームを備えていた(100〜600ミリバール)。
【0129】
押出機スクリューは、搬送エレメントを備えていた。真空ドームの前方に混練ブロックが取り付けられていた。
【0130】
全ての温度は、目標温度である。その調節は、電気加熱もしくは水冷によって行った。押出機ヘッドは、同様に電気的に加熱した(100〜160℃)。
【0131】
スクリュー回転数は、300rpmであった。反応生成物は、歯車ポンプによって押出機から搬出された。全流量は、20kg/hであった。
【0132】
最終生成物は、管路を介してもしくは押出機を介して冷却され、冷却ベルトに案内され、再び冷却される。
【0133】
例4a及び例4b
4a
例Aに記載と同様の生成物データ4aを有するN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドを、押出機(Werner und Pfleiderer ZSK 30,32d)において製造する(第4表)。
【0134】
4b
例4aに記載されるように製造された前記の生成物が再結晶化される。このために、例4aからの生成物は、脱塩水中に沸騰させつつ溶解させ、次いでゆっくりと冷やし、晶出させ、ここで再び固体形に変換する。後に、メタノールで洗浄し、そして約20ミリバール及び50℃で真空乾燥キャビネットにおいて乾燥させる(第4表)。
【0135】
従って、DSCにおける2つの吸熱ピーク(第一のピークは、約160℃で、第二のピークは、約190℃である)を有するN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドが得られる。
図3によるDSCにおける2つのピークを有し、かつ
図7によるXRPDスペクトルを有するこの生成物は、60°の角度で30の目盛の光沢を有する粉末塗料における大幅な艶消しをもたらす(第4表)。
【0136】
比較例4c
図4によるDSCを有する本発明によるものではないN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドを製造した。この生成物は、
図4による約190℃での1つだけの吸熱ピークしか示さず、
図6及び第6表によるXRPDスペクトルを示す。そこから製造された粉末塗料は、大幅な艶消しを示さず、60度の角度で95の目盛の光沢を示す(第4表)。
【0137】
例4d
例1に記載と同様の生成物データ4dを有する式XIIAのN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドを、押出機(Werner und Pfleiderer ZSK 30,32d)において製造する(第4表)。
【0138】
こうして製造された生成物は、冷却ベルト上を進み、収集される。
【0139】
この材料を、次いで乾燥キャビネットにおいて80℃で24時間にわたり真空下で熱処理し、こうして得られた生成物を引き続き粉砕する。
【0140】
この生成物は、60°の角度で40の目盛の光沢を有する粉末塗料における大幅な艶消しをもたらす(第4表)。
【0141】
【表21】
【0142】
【表22】
【0143】
【表23】
【0144】
【表24】
【0145】
例5
式XIIAのβ−ヒドロキシアルキルアミドを、例3aと同様に製造した。この化合物から、単結晶を成長させた。式XIIAの本発明による化合物を、単結晶のX線構造解析によって調査した。測定のための詳しい記載は、補足1にまとめられている。
【0146】
補足1
単結晶X線構造解析
解析方法 単結晶X線構造解析"2012−0573602−06D"
報告: WHC 11/11 EKS
試料入荷: 2011−02−22
報告日: 2011−02−25
設題: 単結晶構造の決定
化合物: 式XIIAのN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミド
【化24】
結晶化: 化学者による
結晶サイズ: 無色のブロック、0.50×0.40×0.40mm
3
コード: Vesta
コメント: 半分の分子が不斉単位を含む
図10: ナンバリングスキームを有するOrtepプロット(50%)
【0147】
実験部
単結晶構造の決定は、CCD検出器(Rubyモデル)、Cu
Kα線に関する慣用のX線管、モノクロメータとしてのOsmic Spiegel及びCryojet型の低温装置(T=100K)を備えたOxfor Diffraction社の機器を用いて行った。データ収集は、φスキャン及びωスキャンにおいて実施した。データ収集及びデータ整理は、Crysalis(Oxford Diffraction 2007)で行った。
【0148】
構造解析と精密化は、SHELXTL(V.6.10、Sheldrick、ゲッティンゲン大学、2000)で行った。全ての非水素原子は、異方性で精密化した。水素原子は、ライディングの基として精密化した。
【0149】
【表25】
【0150】
【表26】
【0151】
【表27】
【0152】
図11:
N,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシル−1,4−ジアミドの単結晶構造測定に基づく計算された粉末回折図(試験vesta)