(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アンチモンの含有割合と前記ビスマスの含有割合との合計が、前記はんだ組成物の総量に対して、4.2質量%以上12質量%以下である、請求項5に記載のはんだ組成物。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一観点に係るはんだ組成物は、はんだ合金と、金属酸化物および/または金属窒化物とを含有するはんだ材料である。
【0028】
はんだ合金は、スズ−銀−銅系のはんだ合金であって、ゲルマニウムを実質的に含有することなく、必須成分として、スズ、銀、アンチモン、ビスマス、銅およびニッケルを含有している。
【0029】
なお、ゲルマニウムを実質的に含有しないとは、積極的にゲルマニウムを配合しないことであり、不可避的に混入する不純物としてのゲルマニウムの含有を許容するものである。
【0030】
このようなはんだ合金を含むはんだ組成物において、スズの含有割合は、後述する各成分の残余の割合であって、各成分の配合量に応じて、適宜設定される。
【0031】
銀の含有割合は、はんだ組成物の総量に対して、1.0質量%を超過、好ましくは、1.02質量%以上であり、1.2質量%未満、好ましくは、1.18質量%以下である。
【0032】
上記はんだ組成物は、銀の含有割合を上記範囲に設定しているので、低コスト化を図ることができる。また、他の金属の含有割合を後述する範囲に設定していることから、はんだ組成物における銀の含有割合が上記のように少なく設定されていても、優れた耐クラック性、接合強度、濡れ性、耐衝撃性および耐疲労性を確保することができる。さらに、銀の含有割合を上記のように少なく設定することで、後述する銅による効果(耐侵食性)を有効に発現させることができる。
【0033】
銀の含有割合が上記下限未満である場合には、耐クラック性、接合強度が劣ったり、後述する銅による効果(耐侵食性)の発現が阻害される傾向がある。一方、銀の含有割合が上記上限以上である場合には、はんだ組成物のコスト削減の効果が得られにくくなるとともに、耐クラック性が劣る。また、後述するコバルトが配合される場合において、そのコバルトによる効果(耐衝撃性、耐疲労性)の発現を阻害する。
【0034】
アンチモンの含有割合は、はんだ組成物の総量に対して、0.01質量%以上、好ましくは、0.06質量%以上であり、10質量%以下、好ましくは、9.0質量%以下、より好ましくは、6.5質量%以下である。
【0035】
アンチモンの含有割合が上記範囲であれば、優れた耐クラック性、耐熱性および接合強度を確保することができ、さらに、アンチモンがスズ中に固溶することにより、はんだ組成物の強度を高め、耐疲労性(とりわけ、耐冷熱疲労性)の向上を図ることができる。また、後述するようにソルダペーストにおいて用いる場合に、優れたはんだ濡れ性および耐疲労性を確保することができ、さらに、ボイドの発生を抑制することができる。
【0036】
一方、アンチモンの含有割合が上記下限未満である場合には、耐クラック性、接合強度および耐疲労性(とりわけ、耐冷熱疲労性)に劣り、ボイドが発生しやすくなる。また、アンチモンの含有割合が上記上限を超過する場合には、濡れ性、耐クラック性、接合強度および耐疲労性(とりわけ、耐冷熱疲労性)に劣り、さらには、ボイドが発生しやすくなるという不具合がある。
【0037】
ビスマスの含有割合は、はんだ組成物の総量に対して、0.01質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上、より好ましくは、0.8質量%以上であり、3.0質量%以下、好ましくは、2.5質量%以下、より好ましくは、2.2質量%以下である。
【0038】
ビスマスの含有割合が上記範囲であれば、優れた耐クラック性、接合強度および融点を確保することができる。
【0039】
一方、ビスマスの含有割合が上記下限未満である場合には、耐クラック性、接合強度に劣り、また、融点が高くなりすぎる場合がある。また、ビスマスの含有割合が上記上限を超過する場合には、接合強度および耐クラック性が低下する場合がある。
【0040】
また、このはんだ組成物では、アンチモンの含有割合を、0.01質量%以上、好ましくは、0.06質量%以上とし、また、2.5質量%未満、好ましくは、1.5質量%以下、より好ましくは、0.6質量%以下とすることができる。このような場合には、アンチモンの含有割合とビスマスの含有割合との合計が、はんだ組成物の総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.15質量%以上、より好ましくは、0.8質量%以上であり、例えば、4.2質量%以下、好ましくは、2.8質量%以下、より好ましくは、2.2質量%以下である。
【0041】
アンチモンの含有割合を上記範囲にする場合において、アンチモンの含有割合とビスマスの含有割合との合計が上記範囲であれば、優れた耐クラック性、接合強度を確保することができる。
【0042】
一方、アンチモンの含有割合とビスマスの含有割合との合計が上記下限未満である場合には、耐クラック性、接合強度に劣る場合がある。また、アンチモンの含有割合とビスマスの含有割合との合計が上記上限を超過する場合には、耐クラック性、接合強度が低下する場合がある。
【0043】
また、アンチモンの含有割合を上記範囲にする場合、アンチモンの含有量に対する、ビスマスの含有量の質量比(Bi/Sb)は、例えば、0.5以上、好ましくは、1以上、より好ましくは、10以上であり、例えば、300以下、好ましくは、60以下、より好ましくは、50以下、さらに好ましくは、35以下、とりわけ好ましくは、30以下である。
【0044】
アンチモンとビスマスとの質量比(Bi/Sb)が上記範囲であれば、優れた耐クラック性、接合強度を確保することができる。
【0045】
一方、アンチモンとビスマスとの質量比(Bi/Sb)が上記下限未満である場合には、耐クラック性、接合強度および濡れ性に劣る場合や、ボイドが発生しやすくなる場合がある。また、アンチモンとビスマスとの質量比(Bi/Sb)が上記上限を超過する場合にも、耐クラック性、接合強度に劣る場合がある。
【0046】
一方、このはんだ組成物では、好ましくは、インジウム(後述)を実質的に含有しない場合に、アンチモンの含有割合を、例えば、4.0質量%以上、好ましくは、4.2質量%以上、より好ましくは、4.8質量%以上とし、また、10質量%以下、好ましくは、9.5質量%以下、より好ましくは、9.0質量%以下とすることもできる。このような場合には、アンチモンの含有割合とビスマスの含有割合との合計が、はんだ組成物の総量に対して、例えば、4.1質量%以上、好ましくは、4.2質量%以上、より好ましくは、4.5質量%以上、さらに好ましくは、5.0質量%以上であり、例えば、13質量%以下、好ましくは、12質量%以下、より好ましくは、11質量%以下、さらに好ましくは、10.5質量%以下である。
【0047】
なお、インジウム(後述)を実質的に含有しないとは、積極的にインジウム(後述)を配合しないことであり、不可避的に混入する不純物としてのインジウム(後述)の含有を許容するものである。
【0048】
アンチモンの含有割合を上記範囲にする場合において、アンチモンの含有割合とビスマスの含有割合との合計が上記範囲であれば、優れた耐クラック性、接合強度を確保することができる。
【0049】
一方、アンチモンの含有割合とビスマスの含有割合との合計が上記下限未満である場合には、耐クラック性、接合強度に劣る場合がある。また、アンチモンの含有割合とビスマスの含有割合との合計が上記上限を超過する場合には、耐クラック性、接合強度が低下する場合がある。
【0050】
また、アンチモンの含有割合を上記範囲にする場合、アンチモンの含有量に対する、ビスマスの含有量の質量比(Bi/Sb)は、例えば、0.02以上、好ましくは、0.03以上、より好ましくは、0.05以上であり、例えば、3.0以下、好ましくは、1.5以下、より好ましくは、0.7以下、さらに好ましくは、0.6以下である。
【0051】
アンチモンとビスマスとの質量比(Bi/Sb)が上記範囲であれば、優れた耐クラック性、接合強度を確保することができる。
【0052】
一方、アンチモンとビスマスとの質量比(Bi/Sb)が上記下限未満である場合には、耐クラック性、接合強度および濡れ性に劣る場合や、ボイドが発生しやすくなる場合がある。また、アンチモンとビスマスとの質量比(Bi/Sb)が上記上限を超過する場合にも、耐クラック性、接合強度に劣る場合がある。
【0053】
銅の含有割合は、はんだ組成物の総量に対して、0.1質量%以上、好ましくは、0.3質量%以上、より好ましくは、0.5質量%以上であり、1.5質量%以下、好ましくは、1質量%以下、より好ましくは、0.8質量%以下である。
【0054】
銅の含有割合が上記範囲であれば、優れた耐クラック性、耐侵食性および接合強度を確保することができる。
【0055】
一方、銅の含有割合が上記下限未満である場合には、耐クラック性、耐侵食性に劣る場合がある。また、銅の含有割合が上記上限を超過する場合には、耐クラック性、耐疲労性(とりわけ、耐冷熱疲労性)に劣る場合や、接合強度に劣る場合がある。
【0056】
ニッケルの含有割合は、はんだ組成物の総量に対して、0.01質量%以上、好ましくは、0.03質量%以上であり、1.0質量%以下、好ましくは、0.2質量%以下、より好ましくは、0.1質量%以下である。
【0057】
ニッケルの含有割合が上記範囲であれば、結晶組織を微細化させることができ、耐クラック性、強度および耐疲労性(とりわけ、耐冷熱疲労性)の向上を図ることができる。
【0058】
一方、ニッケルの含有割合が上記下限未満である場合には、耐クラック性、強度および耐疲労性(とりわけ、耐冷熱疲労性)に劣る場合がある。また、ニッケルの含有割合が上記上限を超過する場合にも、耐クラック性、強度および耐疲労性(とりわけ、耐冷熱疲労性)に劣る場合がある。
【0059】
また、ニッケルの含有量に対する、銅の含有量の質量比(Cu/Ni)は、例えば、25未満、好ましくは、12.5未満、より好ましくは、12以下、通常、5以上である。
【0060】
ニッケルと銅との質量比(Cu/Ni)が上記範囲であれば、優れた耐クラック性、接合強度を確保することができる。
【0061】
一方、ニッケルと銅との質量比(Cu/Ni)が上記下限未満である場合には、耐クラック性、接合強度に劣る場合がある。また、ニッケルと銅との質量比(Cu/Ni)が上記上限以上である場合にも、耐クラック性、接合強度に劣る場合がある。
【0062】
また、上記はんだ合金は、任意成分として、さらに、コバルトを含有することができる。
【0063】
はんだ合金がコバルトを含有すると、はんだ組成物から得られるソルダペーストにおいて、はんだ付界面に形成される金属間化合物層(例えば、Sn−Cu、Sn−Co、Sn−Cu−Coなど)が、厚くなり、熱の負荷や、熱変化による負荷によっても成長し難くなる場合がある。また、コバルトが、はんだ中に分散析出することにより、はんだを強化できる場合がある。その結果、はんだ合金がコバルトを含有する場合には、優れた耐クラック性、耐疲労性および接合強度を確保できる場合がある。
【0064】
コバルトの含有割合は、はんだ組成物の総量に対して、例えば、0.001質量%以上、好ましくは、0.002質量%以上であり、例えば、0.01質量%以下、好ましくは、0.005質量%以下、より好ましくは、0.004質量%以下である。
【0065】
コバルトの含有割合が上記範囲であれば、耐クラック性、接合強度の向上を図ることができる。
【0066】
一方、コバルトの含有割合が上記下限未満である場合には、耐疲労性に劣り、耐クラック性、接合強度の向上を図ることができない場合がある。また、コバルトの含有割合が上記上限を超過する場合には、金属間化合物層が厚くなり、また、硬度が高くなって靭性が低下するため、耐疲労性に劣り、耐クラック性、接合強度の向上を図ることができない場合がある。
【0067】
また、上記はんだ合金は、任意成分として、さらに、インジウムを含有することができる。
【0068】
インジウムの含有割合は、はんだ組成物の総量に対して、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.03質量%以上であり、例えば、0.1質量%以下、好ましくは、0.08質量%以下である。
【0069】
インジウムの含有割合が上記範囲であれば、優れた耐クラック性、接合強度を確保することができる。
【0070】
一方、インジウムの含有割合が上記下限未満である場合には、耐クラック性、接合強度に劣る場合がある。また、インジウムの含有割合が上記上限を超過する場合には、耐クラック性、濡れ性に劣る場合や、ボイドが発生しやすくなる場合がある。
【0071】
そして、このようなはんだ合金は、上記した各金属成分を溶融炉において溶融(溶解)させ、均一化するなど、公知の方法で合金化することにより得ることができる。
【0072】
金属成分としては、特に制限されないが、均一に溶解させる観点から、好ましくは、粉末状の金属が用いられる。
【0073】
金属の粉末の平均粒子径は、特に制限されないが、レーザ回折法による粒子径・粒度分布測定装置を用いた測定で、例えば、5〜50μmである。
【0074】
なお、はんだ合金の製造に用いられる金属の粉末は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、微量の不純物(不可避不純物)を含有することができる。
【0075】
そして、このようにして得られるはんだ合金の、DSC法(測定条件:昇温速度0.5℃/分)により測定される融点は、例えば、200℃以上、好ましくは、220℃以上であり、例えば、250℃以下、好ましくは、240℃以下である。
【0076】
はんだ合金の融点が上記範囲であれば、ソルダペーストに用いた場合に、簡易かつ作業性よく金属接合することができる。
【0077】
金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ、酸化アルミニウムの水和物を含む。)、酸化鉄、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化チタン(チタニア)、酸化セリウム(セリア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化コバルトなどが挙げられる。また、金属酸化物として、例えば、チタン酸バリウムなどの複合金属酸化物や、さらには、金属イオンがドーピングされている、例えば、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズなどのドープ処理金属酸化物が挙げられる。
【0078】
これら金属酸化物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0079】
金属窒化物としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどの金属窒化物が挙げられる。
【0080】
これら金属窒化物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0081】
金属酸化物および/または金属窒化物として、耐クラック性の向上を図る観点から、好ましくは、金属酸化物が挙げられ、より好ましくは、ジルコニアが挙げられる。
【0082】
また、このような金属酸化物および/または金属窒化物としては、特に制限されないが、好ましくは、粉末状の金属酸化物および/または金属窒化物が用いられる。
【0083】
金属酸化物および/または金属窒化物の平均粒子径は、特に制限されないが、レーザ回折法による粒子径・粒度分布測定装置を用いた測定で、例えば、1nm〜50μmである。
【0084】
金属酸化物および/または金属窒化物の含有割合は、はんだ組成物の総量に対して、例えば、0質量%を超過し、好ましくは、0.0001質量%以上、より好ましくは、0.001質量%以上、さらに好ましくは、0.01質量%以上であり、例えば、1.0質量%以下、好ましくは、0.8質量%以下、より好ましくは、0.5質量%以下である。
【0085】
金属酸化物および/または金属窒化物の含有割合が上記範囲であれば、良好に耐クラック性の向上を図ることができる。
【0086】
そして、はんだ組成物を得るには、特に制限されないが、例えば、上記のはんだ合金を製造するとき、具体的には、各金属成分を溶融炉において溶融(溶解)させるときに、各金属成分とともに、上記の金属酸化物および/または金属窒化物を添加する。これにより、はんだ合金と、金属酸化物および/または金属窒化物とを含有するはんだ組成物を得ることができる。
【0087】
また、はんだ組成物を得る方法は、上記に限定されず、例えば、金属酸化物および/または金属窒化物と、別途製造された上記はんだ合金とを、物理的に混合することもできる。
【0088】
好ましくは、はんだ合金を製造するときに、各金属成分とともに、金属酸化物および/または金属窒化物を添加する。
【0089】
そして、上記はんだ組成物は、銀の含有割合が、1.0質量%を超過し1.2質量%未満と低く、低コスト化を図ることができる。
【0090】
また、上記はんだ組成物は、はんだ合金が、スズ、銀、アンチモン、ビスマス、銅およびニッケルを含有する一方、酸化しやすいゲルマニウムを実質的に含有しておらず、かつ、はんだ組成物の総量に対して、アンチモンの含有割合が0.01質量%以上10質量%以下であり、さらに、ビスマスの含有割合が、0.01質量%以上3.0質量%以下であり、さらに、はんだ合金の他、金属酸化物および/または金属窒化物を、0質量%を超過し1.0質量%以下の割合で含有している。そのため、耐クラック性の向上を図ることができる。
【0091】
すなわち、アンチモンの含有割合が0.01質量%未満、または、10質量%を超過する場合や、例えば、ビスマスの含有割合が0.01質量%未満、または、3.0質量%を超過する場合、さらには、金属酸化物および/または金属窒化物の含有割合が、0質量%の場合や、1.0質量%を超過する場合などには、たとえゲルマニウムを実質的に含有していなくとも、耐クラック性に劣る場合がある。
【0092】
しかしながら、アンチモンの含有割合が0.01質量%以上10質量%以下であり、また、ビスマスの含有割合が、0.01質量%以上3.0質量%以下であり、さらに、金属酸化物および/または金属窒化物の含有割合が0質量%を超過し1.0質量%以下であれば、ゲルマニウムを実質的に含有していない場合に、とりわけ優れた耐クラック性を確保することができる。
【0093】
また、上記はんだ組成物は、各種金属が上記した割合で含有されているため、ボイド(空隙)の発生を抑制することができ、さらに、はんだの接合部における耐疲労性(とりわけ、耐冷熱疲労性)を付与することができ、はんだの濡れ性や耐クラック性を確保することもできる。
【0094】
そのため、このようなはんだ組成物は、好ましくは、ソルダペースト(ソルダペースト接合材)に含有される。
【0095】
具体的には、本発明の他の一観点に係るソルダペーストは、上記したはんだ組成物と、フラックスとを含有している。
【0096】
ソルダペーストにおいて、はんだ組成物は、好ましくは、粉末として含有される。
【0097】
粉末形状としては、特に制限されず、例えば、実質的に完全な球状、例えば、扁平なブロック状、例えば、針状などが挙げられ、また、不定形であってもよい。粉末形状は、ソルダペーストに要求される性能(例えば、チクソトロピー、耐サギング性など)に応じて、適宜設定される。
【0098】
はんだ組成物の粉末の平均粒子径(球状の場合)、または、平均長手方向長さ(球状でない場合)は、レーザ回折法による粒子径・粒度分布測定装置を用いた測定で、例えば、5〜50μmである。
【0099】
フラックスとしては、特に制限されず、公知のはんだフラックスを用いることができる。
【0100】
具体的には、フラックスは、例えば、ベース樹脂(ロジン、アクリル樹脂など)、活性剤(例えば、エチルアミン、プロピルアミンなどアミンのハロゲン化水素酸塩、例えば、乳酸、クエン酸、安息香酸などの有機カルボン酸など)、チクソトロピー剤(硬化ひまし油、蜜ロウ、カルナバワックスなど)などを主成分とし、また、フラックスを液状にして使用する場合には、さらに有機溶剤を含有することができる。
【0101】
そして、ソルダペーストは、上記したはんだ組成物からなる粉末と、上記したフラックスとを、公知の方法で混合することにより得ることができる。
【0102】
はんだ組成物(粉末)と、フラックスとの配合割合は、はんだ組成物:フラックス(質量比)として、例えば、70:30〜90:10である。
【0103】
そして、上記ソルダペーストは、本発明の一観点に係るはんだ組成物を含有するので、低コスト化を図れるとともに、耐クラック性の向上を図ることができる。また、ボイド(空隙)の発生を抑制することができ、さらに、はんだの接合部における耐疲労性(とりわけ、耐冷熱疲労性)を付与することができ、はんだの濡れ性を確保することもできる。
【0104】
また、本発明は、上記のソルダペーストによるはんだ付部を備える電子回路基板を含んでいる。
【0105】
すなわち、上記のソルダペーストは、例えば、電気・電子機器などの電子回路基板の電極と、電子部品とのはんだ付(金属接合)において、好適に用いられる。
【0106】
電子部品としては、特に制限されず、例えば、抵抗器、ダイオード、コンデンサ、トランジスタなどの公知の電子部品が挙げられる。
【0107】
そして、このような電子回路基板は、そのはんだ付において、上記のソルダペーストが用いられるので、低コスト化を図れるとともに、優れた接続信頼性を確保することができる。
【0108】
なお、上記はんだ組成物の使用方法は、上記ソルダペーストに限定されず、例えば、やに入りはんだ接合材の製造に用いることもできる。具体的には、例えば、公知の方法(例えば、押出成形など)により、上記のフラックスをコアとして、上記したはんだ組成物を線状に成形することにより、やに入りはんだ接合材を得ることもできる。
【0109】
そして、このようなやに入りはんだ接合材も、ソルダペーストと同様、例えば、電気・電子機器などの電子回路基板のはんだ付(金属接合)において、好適に用いられる。
【実施例】
【0110】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。
【0111】
実施例1〜49および比較例1〜13
・はんだ組成物の調製
表1〜5に記載の各金属の粉末と、金属酸化物および/または金属窒化物の粉末とを、表1〜5に記載の配合割合でそれぞれ混合し、得られた混合物を溶解炉にて溶解および均一化させて、はんだ組成物を調製した。表1〜5に記載のはんだ組成物の配合処方においては、スズ(Sn)の記載を省略した。各実施例および各比較例の配合処方におけるSnの配合割合は、表1〜5に記載の各金属、金属酸化物および金属窒化物の配合割合(質量%)を差し引いた残部である。
【0112】
実施例1のはんだ組成物は、Ag、Cu、Bi、SbおよびNiの各金属と、ZrO
2とを表1に示す割合で配合して、残部をSnとしたものである。実施例2〜4では、実施例1の処方に対して、さらにInおよび/またはCoを配合した。
【0113】
実施例5〜10は、実施例1の処方に対して、Biの配合割合を変えた処方の例である。
【0114】
実施例11〜13は、実施例6の処方に対して、Sbの配合割合およびBiとSbとの配合量の質量比Bi/Sbの値を変えた処方の例である。
【0115】
実施例14は、実施例1の処方に対して、Cuの配合割合を変えた処方の例である。
【0116】
実施例15〜22は、実施例6〜9および11〜14の処方に対して、さらにCoを配合した処方の例である。
【0117】
実施例23〜26、35および比較例2は、実施例1の処方に対して、Sbの配合割合およびBiとSbとの配合量の質量比Bi/Sbの値を変えた処方の例である。
【0118】
実施例27および28は、実施例1の処方に対して、Agの配合割合を変えた処方の例である。
【0119】
実施例29〜32は、Ag、Cu、Bi、Sb、NiおよびCoの各金属を表3に示す割合で配合して、残部をSnとしたものである。
【0120】
実施例33〜36は、実施例1の処方に対して、Biの配合割合およびSbの配合割合を変えた処方の例である。
【0121】
実施例37〜39および比較例9は、実施例1の処方に対して、酸化ジルコニウム(ZrO
2)の配合割合を変えた処方の例である。
【0122】
実施例40〜42および比較例11は、実施例16の処方に対して、酸化ジルコニウム(ZrO
2)の配合割合を変えた処方の例である。
【0123】
実施例43〜45および比較例13は、実施例30の処方に対して、酸化ジルコニウム(ZrO
2)の配合割合を変えた処方の例である。
【0124】
実施例46は、実施例1の処方に対して、酸化ジルコニウム(ZrO
2)に代えて、窒化ジルコニウム(ZnN)を用いた処方の例である。
【0125】
実施例47は、実施例1の処方に対して、酸化ジルコニウム(ZrO
2)に代えて、酸化コバルト(Co
3O
4)を用いた処方の例である。
【0126】
実施例48は、実施例1の処方に対して、金属酸化物および/または金属窒化物として酸化ジルコニウム(ZrO
2)および酸化コバルト(Co
3O
4)を併用した処方の例である。
【0127】
実施例49は、実施例1の処方に対して、酸化ジルコニウム(ZrO
2)の配合割合を変えた処方の例である。
【0128】
比較例1は、実施例1の処方に対して、さらにGeを配合した処方の例である。
【0129】
比較例3は、実施例1の処方に対して、Sbを配合しなかった処方の例である。
【0130】
比較例4は、Sn−Ag−Cu系はんだの標準的組成である、Sn96.5−Ag3.0−Cu0.5で表わされる処方の例である。
【0131】
比較例5〜7は、比較例4の処方に対して、Agの配合割合を変えた処方の例である。
【0132】
比較例8は、実施例1の処方に対して、酸化ジルコニウム(ZrO
2)を配合しなかった処方の例である。
【0133】
比較例10は、実施例16の処方に対して、酸化ジルコニウム(ZrO
2)を配合しなかった処方の例である。
【0134】
比較例12は、実施例30の処方に対して、酸化ジルコニウム(ZrO
2)を配合しなかった処方の例である。
【0135】
・ソルダペーストの調製
得られたはんだ組成物を、粒径が25〜38μmとなるように粉末化し、得られたはんだ組成物の粉末と、公知のフラックスとを混合して、ソルダペーストを得た。
【0136】
・ソルダペーストの評価
<耐クラック性(金属間化合物組織の大きさ)>
各実施例および各比較例において得られたソルダペースト0.3gを、厚さ0.3mm、2.5cm四方の銅板の中央部分(約5mm×5mmの領域)に塗布して、こうして得られた試料をリフロー炉で加熱した。リフロー炉による加熱条件は、プリヒートを150〜180℃、90秒間とし、ピーク温度を250℃とした。また、220℃以上である時間を120秒間となるように調整し、ピーク温度から200℃まで降温する際の冷却速度を0.5〜1.5℃/秒に設定した。なお、このリフロー条件は、一般的なリフローに比べて過酷な条件であって、はんだのスズ中に金属間化合物が析出しやすい条件である。
【0137】
リフローを経た試料を切断して、断面を研磨した。次いで、研磨後の断面を走査型電子顕鏡で観察することにより、リフロー後のはんだ中に析出した金属間化合物組織の大きさを計測して、下記の基準でランク付けした。耐クラック性は、金属間化合物組織の大きさが小さいほど良好である。
【0138】
A+:観察される最大組織の大きさが30μm未満であった。
【0139】
A:観察される最大組織の大きさが30μm以上50μm未満であった。
【0140】
B:観察される最大組織の大きさが50μm以上100μm以下であった。
【0141】
C:観察される最大組織の大きさが100μmを超えていた。
【0142】
評価結果を、表1〜5に併せて示す。
【0143】
<電子回路基板の製造>
上述した各実施例および各比較例において得られるソルダペーストを用いて、3216サイズ(32mm×16mm)、0603サイズ(6mm×3mm)、および、2125サイズ(21mm×25mm)の各種サイズのチップ部品をプリント基板に実装した。その結果、各種サイズのチップ部品に対応し、チップ部品の接続信頼性に優れた電子回路基板を製造することができた。
【0144】
【表1】
【0145】
【表2】
【0146】
【表3】
【0147】
【表4】
【0148】
【表5】