(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0009】
先ず、
図1によりこの実施の形態に係るエレベータ装置の基本構成を概略説明する。
図1において、エレベータ装置11は、昇降路12内にそれぞれ昇降可能に設けられた乗りかご13及び釣合錘14を有する。これら乗りかご13及び釣合錘14は、昇降路12の上部の機械室19等に設けられた巻上機20のメインシーブ21に巻き掛けられた主索15により連結され、釣瓶状に昇降駆動される。このエレベータ装置11は、制御盤18によって各部の駆動が制御され、乗りかご13を任意の目的階の乗り場17に移動させ、着床させることができる。
【0010】
乗りかご13と各階乗り場17との間の乗降口25には引き戸式のドア26が開閉可能に設けられている。このドア26は、各階乗り場17側に設けられたホールドア26Aと、乗りかご13側に設け
られたかごドア26Bとで構成される。これらホールドア26A及びかごドア26Bの下方には、
図2及び
図3で示すように、ホールシル27及びカーシル28がそれぞれ設けられている。ホールシル27は各乗場側乗降口25Aの下辺部分に設けられ、ホールドア26A下辺に設けられた図示しない係合片とスライド可能に係合し、ホールドア26Aをそのパネル面に沿う開閉方向に案内する。カーシル28は乗りかご側乗降口25Bの下辺部分に設けられ、かごドア26Bの下辺に設けられた図示しない係合片とスライド可能に係合し、かごドア26Bを、そのパネル面に沿う開閉方向に案内する。
【0011】
かごドア26Bの上部ハンガー部分には、
図2で示すように、ローラ30が設けられ、乗りかご側乗降口25Bの上辺部に設けられたレール31上に転動可能に支持されている。また、かごドア26Bの上部ハンガー部分は、図示を省略したドア開閉機構とも連結しており、かごドア26Bのパネル面に沿う方向に開閉駆動される。ホールドア26Aの上部も、ホール側乗降口25Aの上辺部に構成された図示しない支持機構により、ホール側乗降口25Aに対して開閉可能に構成される。
【0012】
このホールドア26Aは、図示しないインターロック機構を有し、常時閉状態を維持するようにロックされている。このインターロック機構はインターロックローラを有し、乗りかご13が着床すると、このインターロックローラが、かごドア26B側の図示しない係合機構と係合することでロック状態が解除され、開動作可能となる。この状態で、かごドア26Bが開閉動作すると、前述した係合機構によりホールドア26Aも駆動され、かごドア26Bに従動して開閉動作する。
【0013】
ここで、本発明では戸開走行を防止するために、ドア26側に係合用の凸部33を設けると共に、このドア26が全閉状態のとき、凸部33と遊嵌可能な凹部34を有する係止部材35を設けている。そして、ドア26が全閉状態のときは、この凹部34と凸部33との遊嵌により乗りかご13の昇降動作を許容する。また、ドア26が全閉以外の状態では、凸部33が係止部材35と係合することにより、乗りかご13の昇降を係止するように構成している。
【0014】
この実施の形態では、係合用の凸部33が設けられるドア26はホールドア26Aであり、
図2及び
図3で示すように、この係合用の凸部33は、ホールドア26Aの上部及び下部にそれぞれ設けられている。また、係止部材35は、この実施の形態では、
図2で示すように、乗りかご側乗降口25Bの上辺及び下辺部にそれぞれ設けられている。
【0015】
係合用の凸部33は、乗りかご13側の係止部材35との係合により、乗りかご13の昇降を係止するものであるため、係止部材35との係合時に、大きな荷重が加わる。このため、凸部33はホールドア26Aのドアパネルの補強部に強固に取り付けるなど、十分な強度を確保する。また、ドアパネルが持ち上げられて敷居溝から外れないようにホールシル27との間にひっかけ構造などを施す。さらに、乗りかご13の大きさにより、1個の凸部33では荷重を支えられない場合は、所要数の凸部33を設ける。例えば、両開きドアの場合は、反対側のドアパネルにも同様の凸部33部を設けるなど、種々変形実施できる。
ここで、
図2で示すように、乗りかご側乗降口25Bの上辺部に設けられる係止部材35は、この乗降口25Bの上辺部からホールドア26A側に向って取り付けられている。また、乗降口25Bの下辺部に設けられる係止部材35は、
図2、
図3及び
図4で示すように、カーシル28の、ホールシル27と所定の間隔で対峙する縁部を指す。この係止部材35には、前述のように、ホールドア26Aが全閉状態のとき、係合用の凸部33と遊嵌可能な位置に凹部34が設けられている。
【0016】
この凹部34には、乗りかご13の昇降動作時に、ホールドア26A側に設けられた図示しないインターロック機構のイン
ターロックローラを避ける空間として設けられたものを用いる。すなわち、インターロックローラは、前述したように、乗りかご13の着床時に乗りかご側の係合機構と係合してホールドア26Aのロック状態を解除するものであるため、ホールドア26Aから乗りかご側13に臨んだ状態で設けられる。
【0017】
ここで、乗り場17側のホールシル27とのりかご13側のカーシル28との間隔は、構造上の制約から、通常25〜30mm程度である。しかし、乗降口25の床部分に、このような比較的広い間隔が存在することは好ましくないため、乗降口25の床となる部分、すなわち、カーシル28の、ホールシル27と対向する縁部分を、ホールシル27側に延長して(或いはブロック片を追加して)、ホールシル27との間隔が10mm程度となるように構成している。しかし、このように間隔が狭いと、ホールドア26Aから乗りかご側13に臨んだ状態で設けられたインターロックローラが、乗りかご13の昇降動作時にカーシル28の縁部に衝突してしまうので、これを避けるために、カーシル28の縁部に凹部空間を形成している。
【0018】
そこで、この実施の形態では、このインターロックローラを避けるための凹部空間を、前述した戸開防止用の凹部34として用いる。
【0019】
なお、この凹部34は、乗りかご13が着床しているときは、
図3及び
図4で示すように、ホールシル27側に形成した突出部27aと遊嵌し、凹部34におけるホールシル27側との間隔を10mmに保っている。
【0020】
図3及び
図4は、乗りかご側乗降口25Bの下辺部のカーシル28に設けられた係止部材35について示しているが、
図2で示した乗降口25Bの上辺部に取り付けられた係止部材35についても、上述した位置関係で凹部34が設けられている。
【0021】
上記構成において、乗りかご13はある階床の乗り場17に着床し、ホールドア26A及びかごドア26Bは、いずれも開状態であるとする。このとき、ホールドア26Aに設けられた係合用の凸部33は、
図3(実線部分)及び
図4で示すように、凹部34との遊嵌可能な位置から外れている。
【0022】
この状態で、かごドア26B及びホールドア26Aを全閉させ、乗りかご13を次の目的階に向かって移動させる正常動作時には、ホールドア26Aに設けられた凸部33は、乗りかご13の上辺部及び下辺部にそれぞれ設けられた係止部材35の凹部34と、
図3の破線で示すように、遊嵌可能な位置に在る。このため、乗りかご13が昇降動作しても、係止部材35の凹部34は、凸部33に対して遊嵌状態で通過し、乗りかご13の昇降動作を許容する。
【0023】
これに対し、かごドア26B及びホールドア26Aがともに開いた状態のとき、ブレーキ装置の不具合など、何らかの原因により乗りかご13が上昇または下降する、いわゆる戸開走行が生じた場合は、係止部材35と凸部33との係合により、乗りかご13の移動は係止される。すなわち、ホールドア26Aが開いた状態では、
図3(実線)及び
図4で示すように、ホールドア26Aに設けられた係合用の凸部33は、係止部材35の凹部34から外れて位置する。このため、乗りかご13が上昇する場合は、その下辺部に設けられた係止部材35(カーシル28の縁部)の上面が、
図2で示したホールドア26Aの下部に設けられた係合用の凸部33に当接して係合し、その上昇を阻止される。また、乗りかご13が下降する場合は、その上辺部に設けられた係止部材35の下面が、ホールドア26Aの上部に設けられた係合用の凸部33に当接して係合し、その下降を阻止される。すなわち、戸開走行は確実に阻止される。
【0024】
このように戸開走行が生じた場合、ホールドア26Aに設けた凸部33と乗りかご13側に設けた係止部材35との係合関係という簡単な構成で、乗りかご13の移動を確実に阻止できるので、重大な事故の発生を未然に防止できる。また、既設のエレベータ装置に対しても、凸部33の設置等の追加加工や改造で対応できるため、既設設備に対して容易に戸開走行防止機能を持たせることが可能となる。
【0025】
なお、エレベータ装置の保守時に、ドアを開けた状態で乗りかご13を動かす動作を行うことがある。この場合は、着床状態で一旦ドアを全閉にし、乗りかご13を、その係止部材35が凸部33との係合位置以上となるように移動させたのち、ドアを開けば保守時の戸開走行が可能となる。このため、多少の制約は生じるが、これまで通りの保守作業を実施することができる。
【0026】
上記実施の形態では、凸部33を、ホールドア26Aの上部及び下部にそれぞれ設けたが、
図5で示すように、ホールドア26Aの高さ方向中間部に1個設けるだけでもよい。この場合、乗りかご13の上辺部に設けられた係止部材35又は下辺部に設けられた係止部材35が、ホールドア26Aの高さ方向中間部に設けられた凸部33へ係合するまでの乗りかご13の移動距離は、
図2の場合より大きくなるが、凸部33と係止部材35との係合により乗りかご13の移動は確実に阻止できるので重大事故に至ることはなく、安全性は確保できる。
【0027】
また、上記実施の形態では、凸部33を各階乗り場側に設けられたホールドア26Aに設け、係止部材35を乗りかご13側に設けたが、この関係を反対にしてもよい。すなわち、凸部33を乗りかご13側のかごドア26Bに設け、係止部材35は各階乗り場側乗降口25Aの上辺部、下辺部にそれぞれ設けるように構成してもよい。
【0028】
さらに、凸部33及び係止部材35は、既設設備に後付けで追加加工されたものでもよい。これらの追加加工は、容易に実施することができる。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。